JP5277431B2 - 蛍光色素含有ナノシリカ粒子およびその調製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、検出試薬として有用な蛍光色素含有ナノシリカ粒子およびその調製方法に関する。より詳細には、本発明は、粒径が数十nm以下、特に30nm以下や10nm以下などの微粒子でありながらも、高い蛍光強度を有する蛍光色素含有ナノシリカ粒子およびその調製方法に関する。
近年、検出試薬として蛍光色素を含む微粒子を利用した生化学的検査手法が各種研究されており、例えば、パッカード社によりアルファスクリーン技法が商品化されている(非特許文献1、特許文献1〜7)。これは、直径250nmのラテックス製のドナービーズ(登録商標)とアクセプタービーズ(登録商標)を使用したものであり、ドナービーズとアクセプタービーズが結合した後、ドナービーズをレーザーで励起すると、内部の蛍光分子からの蛍光で一重項酸素分子が生成し、これがアクセプタービーズ中の蛍光物質と化学反応して化学発光を生じ、これを観測するというものである。
また、上記のビーズ(微粒子)としてシリカ球を用いた検出試薬も研究されており、内部に蛍光色素分子を入れたシリカ球の製法も各種提案されている。かかるシリカ球は、内部に保持した蛍光色素分子をシリカで囲った形態を備えており、その結果、外部因子による消光(例えば生化学的高分子等による励起エネルギーの吸収)を抑制することができるため、高感度な検出試薬として各種の検査に応用されることが期待されている。
この代表的な試薬の調製方法として、予め3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン〔APS:3-(aminopropyl)triethoxysilane〕に直接フルオレセインイソチオシアネート〔FITC:fluorescein isothiocyanate〕を結合させたAPS-FITC〔N-1-(3-triethoxysilylpropyl)-N’-fluoresceyl thiourea〕を、アンモニアを含むエタノール水溶液中でN-tris(hydroxylmethyl)methyl-2-aminoethane sulfonic acid(TES)と反応させる方法がある(非特許文献2)。この方法によると、高濃度の蛍光色素分子(FITC)をシリカ球内部に保持させることができるが、その一方で、その最大濃度では、シリカ球内部で消光が起こることも報告されている(非特許文献2)。またかかる方法では、FITCとAPSの結合性は余り高くなく製造効率が悪いと共に、粒子サイズが単一であって、しかも数百ナノメーターと比較大きいシリカ球しか得られないという欠点がある。
こうした問題を解消する方法として、本発明者は、スクシンイミドにFITC等の蛍光色素を結合させたスクシンイミジルエステル化合物を用いて、APS等のアミノ基を有するシリカ化合物に蛍光分子を化学結合し、次いでこれにテトラエトキシシラン(TEOS)等のシリカ化合物を重合させていくことによって、蛍光色素を含有するシリカ粒子を調製する方法を既に提案している(特許文献8)。この方法は、比較的大きな蛍光色素含有シリカ粒子の調製には適しているものの、10nm以下のシリカ粒子を原料とする場合には1〜2個の蛍光色素分子しか導入できないなど、いわゆるナノシリカ粒子と呼ばれる粒径の小さいシリカ粒子を用いて高い蛍光強度を有する試薬を調製する方法としては適していない。
US 4918200 A WO 917087 A1 EP 502060 A1 特開平5-501611号公報 US 5252743 A US 5451683 A US 5482867 A WO 2006/070582 Analytica Chimica Acta 1998, 367, 159 A.Imhof, et al., "Spectroscopy of Fluorescein (FITC) Dyed Colloidal Silica Spheres", J. Phys. Chem. B 1999,103, 1408-1415
DNAなどのミクロの分子を修飾する蛍光剤としては、(1)粒径が数十nm以下、特に30nm以下や10nm以下などの微小なサイズを有し、(2)高い蛍光強度を備え、かつ(3)例えばCdSeを用いた蛍光剤などのように毒性が問題とならないものが求められている。しかし、前述するように、従来の方法(例えば特許文献8など)で粒径が10nm以下の蛍光色素含有ナノシリカ粒子を調製すると、蛍光強度が大幅に低下し、高感度な試薬(蛍光剤)が得られないという問題があった。これは、調製するシリカ粒子の体積が小さすぎるため、低分子シリカ化合物を重合させる際に蛍光色素分子を導入するスペースが少なく、シリカ粒子1個あたり1〜2個程度しか蛍光色素分子が入らないことが原因と考えられる。
本発明は、かかる従来方法では調製が困難であった、粒径が30nm以下、特に10nm以下の微小サイズでありながらも、高い蛍光強度を有する蛍光色素含有ナノシリカ粒子を提供することを目的とする。さらに本発明は、かかる蛍光色素含有ナノシリカ粒子を、効率的に、また安定して調製する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために日夜鋭意検討していたところ、粒径数nmサイズの極めて微小なシリカ粒子(ナノシリカ粒子)を核として、その表面にアミノ基(-NH2)、カルボキシル基(-COOH)、イソチオシアネート基(-N=C=S)またはエステル基(-COOR)を有するシランカップリング試薬を結合させ、これらの基を介してシリカ粒子の表面に蛍光色素を結合させて、次いで、その表面の蛍光色素と結合していないアミノ基(-NH2)、カルボキシル基(-COOH)、イソチオシアネート基(-N=C=S)またはエステル基(-COOR)にシリカ化合物を反応させて、蛍光色素で標識されたシリカ粒子の表面にシリカ皮膜を形成することにより、上記目的に適った蛍光色素含有ナノシリカ粒子、すなわち、粒径が数十nm以下、特に30nm以下や10nm以下のサイズでありながらも高い蛍光強度を有する蛍光色素含有ナノシリカ粒子であって、しかもナノシリカ粒子の表面に蛍光色素が安定に保持されてなる標識試薬(蛍光プローブ)が得られることを確認した。また当該方法において、ナノシリカ粒子の表面に蛍光色素を結合させる前に、当該ナノシリカ粒子の表面に、蛍光色素と反応しない分子(本発明では「スペーサー分子」ともいう)を結合させておくことにより、蛍光色素の結合量を調節でき、当該結合量の増加に基づく濃度消光(蛍光強度の低下)が防止できることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
本発明には、下記に掲げる態様が含まれる:
(I)蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製方法
(I-1).下記の工程(a)〜(d)を有する、蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製方法;
(a)ナノシリカ粒子(1)の表面に、そのOH基を介して蛍光色素結合基を導入する工程、
(b)上記工程で得られたナノシリカ粒子(2)に、蛍光色素分子を有する化合物(3)を反応させて、ナノシリカ粒子の表面に蛍光色素を結合させる工程、
(c)上記工程で得られた蛍光色素結合ナノシリカ粒子(4)に、シリカ化合物(5)を反応させて、当該ナノシリカ粒子(4)表面に上記シリカ化合物(5)を導入する工程、および
(d)上記工程で得られたナノシリカ粒子(6)にシラン化合物(7)を反応させて、当該ナノシリカ粒子(6)の表面にシリカ皮膜を形成する工程。
(I-2).上記「蛍光色素分子を有する化合物(3)」としてエステル結合(-CO-O-)を介して蛍光色素分子とスクシンイミドとが結合してなるスクシンイミジルエステル化合物(3)」、
上記「シリカ化合物(5)」として「トリアルコキシシリル基を有するシリカ化合物(5)」、および
上記「シラン化合物(7)」として「テトラアルコキシシラン(7)」を用いる、
(I-1)に記載する蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製方法。
(I-3).上記(a)の工程の後に、下記の工程(a’)を有し、次いで当該工程(a’)で得られたナノシリカ粒子(2’)に対して上記工程(b)を行う、(I-1)または(I-2)に記載する蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製方法:
(a’) 蛍光色素結合基と結合する化合物(8)を、上記工程(a)で得られたナノシリカ粒子(2)と反応させて、当該ナノシリカ粒子(2)表面の蛍光色素結合基の一部を保護する工程。
(I-4).蛍光色素結合基が、アミノ基、カルボキシル基、イソチオシアネート基またはエステル基である、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製方法。
(II)蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製方法
(II-1).ナノシリカ粒子に蛍光色素分子が結合した蛍光色素含有ナノシリカ粒子であって、
前記ナノシリカ粒子の粒径が20nm以上、30nm未満であり、且つ、
前記ナノシリカ粒子1粒子に対して、100分子以上の蛍光色素分子が結合していることを特徴とする蛍光色素含有ナノシリカ粒子。
(II-2).ナノシリカ粒子に蛍光色素分子が結合した蛍光色素含有ナノシリカ粒子であって、
前記ナノシリカ粒子の粒形が10nm以上、20nm未満であり、且つ
前記ナノシリカ粒子1粒子に対して、50分子以上の蛍光色素分子が結合していることを特徴とする蛍光色素含有ナノシリカ粒子。
(II-3).ナノシリカ粒子に蛍光色素分子が結合した蛍光色素含有ナノシリカ粒子であって、
前記ナノシリカ粒子の粒径が10nm未満であり、且つ、
前記ナノシリカ粒子1粒子に対して、2分子以上の蛍光色素分子が結合していることを特徴とする蛍光色素含有ナノシリカ粒子。
(II-4).ナノシリカ粒子に蛍光色素分子が結合した蛍光色素含有ナノシリカ粒子であって、
その分散水溶液での蛍光強度が、当該ナノシリカ粒子に結合している前記蛍光色素分子の濃度と同じ濃度で、前記ナノシリカ粒子に結合していない遊離の蛍光色素分子が分散している水溶液での蛍光強度よりも高いことを特徴とする蛍光色素含有ナノシリカ粒子。
(II-5).ナノシリカ粒子に結合している蛍光色素分子がさらにシリカ層で覆われてなるものである、(II-1)乃至(II-4)のいずれかに記載する蛍光色素含有ナノシリカ粒子。
(II-6).上記(I-1)乃至(I-4)のいずれかの方法によって調製されるものである、(II-1)乃至(II-5)のいずれかに記載する蛍光色素含有ナノシリカ粒子。
なお、ナノ粒子とは、一般に粒径がナノオーダーである1〜100nm程度の粒子を意味する。本発明が対象とするナノシリカ粒子も、かかる技術常識に従って通常粒径1〜100nm程度のものを意味するが、好ましくは100nm未満、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下、とくに好ましくは10nm以下の粒子である。なお、かかる粒子の粒径(直径)の測定方法としては、対象とする粒子を純水中に分散した後、カーボンを蒸着した銅グリッド上に滴下乾燥して電子線で測定する透過型電子顕微鏡法を挙げることができる。
本発明によれば、粒径が数十nm以下、特に30nm以下や10nm以下の微小サイズでありながらも、高い蛍光強度を有する蛍光色素含有ナノシリカ粒子を提供することができる。さらに本発明の方法によれば、かかる蛍光色素含有ナノシリカ粒子を、効率的にまた安定して調製することができる。
本発明が提供する蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、上記特性に基づいて、微小な領域(例えば、細胞などのミクロ領域)でも使用可能な、高感度な標識試薬(蛍光プローブ)として有効に使用することができる。例えば、本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、単独若しくはリガンドと組み合わせて、ハプテン、抗原、抗体、酵素、核酸(DNA、RNA)などの生体物質の検定(免疫検定や核酸検定などを利用した診断または研究)、ならびに親和性精製や細胞分離などに用いることができる。また、疾患との関連性が明らかになりつつある種々の遺伝子多型を検出し同定するための蛍光プローブとして有用である。
本発明が提供する蛍光色素含有ナノシリカ粒子と市場で競合する標識試薬としては、有機色素を用いたナノ粒子、およびCdSe(セレン化カドミウム)を用いたナノ粒子(例えば、Quantum Dot社の「Qdot(登録商標)」など)を挙げることができる。有機色素は蛍光効率や退色性に問題があるため、市場は後者の「Qdot(登録商標)」に置きかわりつつあるが、CdSeは毒性の強い物質であるため環境への問題が懸念されている。これに対して、本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、輝度および退色性に優れるうえに、無毒である酸化物材料を用いているため安全性が高く、環境負荷の低い標識試薬である。しかも、予め粒径が調整された市販のナノシリカ粒子を原料に用いて調製することにより、粒径のそろった均質な蛍光色素含有ナノシリカ粒子を提供することができる。また原料として使用するナノシリカ粒子の粒径を選択することにより、同色発光でサイズの異なるナノ粒子の試薬を作成することが可能であり、用途に適した標識試薬を、ユーザーに提供することができる。
下記表1に、有機色素および「Qdot(登録商標)」と対比した、本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子(本発明品)の優位性を示す。
Figure 0005277431
(1)蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製方法
本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製方法は、核となるナノシリカ粒子(1)を原料として用いる方法であって、下記(a)〜(d)の工程を有することを特徴とする。
(a)ナノシリカ粒子(1)の表面に、そのOH基を介して蛍光色素結合基を導入する工程、
(b)上記工程で得られたナノシリカ粒子(2)に、蛍光色素分子を有する化合物(3)を反応させて、ナノシリカ粒子の表面に蛍光色素を結合させる工程、
(c)上記工程で得られた蛍光色素結合ナノシリカ粒子(4)に、シリカ化合物(5)を反応させて、当該蛍光色素結合ナノシリカ粒子(4)表面の、蛍光色素と結合していない蛍光色素結合基に上記シリカ化合物(5)を導入する工程、および
(d)上記工程で得られたナノシリカ粒子(6)に、シラン化合物(7)を反応させて、当該ナノシリカ粒子(6)の表面にシリカ皮膜を形成する工程。
以下、各工程ごとに、本発明の調製方法を説明する。
工程(a)
本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製において原料として使用するナノシリカ粒子(1)は、その粒径(直径)を特に制限するものではない。粒径(直径)100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下、とくに好ましくは10nm以下といった微小な蛍光色素含有ナノシリカ粒子を調製するという本発明の目的から、通常30nm未満、好ましくは20nm未満、より好ましくは10nm未満、さらに好ましくは9nm以下、8nm以下、5nm以下、とくに好ましくは3nm以下を挙げることができる。
かかる粒径を有するナノシリカ粒子は商業的に入手することができる。例えば、LUDOX(登録商標)TM-50コロイダルシリカ(平均粒径22nm、比表面積140m2/g以下、50wt%懸濁液)、LUDOX(登録商標)HS-40コロイダルシリカ(平均粒径12nm、比表面積220m2/g以下、40wt%懸濁液)、LUDOX(登録商標)HS-30コロイダルシリカ(平均粒径7.2nm、比表面積220m2/g以下、30wt%懸濁液)、およびLUDOX(登録商標)AS-40コロイダルシリカ(平均粒径19.2nm、比表面積135m2/g以下、40wt%懸濁液)〔以上、いずれもLUDOX社製〕を挙げることができる(例えば、B. H. Milosavlievic, S. M. Pimblot, and D. Meisel, J. Phys. Chem. B 108, 6996-7001, 2004.参照))。
なお、当該ナノシリカ粒子(1)は、その表面に後述の蛍光色素結合基を導入する前に、予め珪酸ナトリウム(Na2O・nSiO2:n=0.5〜4)で処理を行ってもよく、かかる処理を行うことによって、ナノシリカ粒子(1)の表面積を大きくして、表面により多くの蛍光色素結合基を導入することができる。かかる蛍光色素結合基は、その名の通り蛍光色素分子との結合部位となるため、より多くの蛍光色素結合基が導入されることによって、より多くの蛍光色素をナノシリカ粒子の表面に結合させることができ、その結果、蛍光強度の増強(高感度化)をはかることができる。
ここで使用される珪酸ナトリウム(Na2O・nSiO2:n=0.5〜4)は、20-30重量%程度のSiO2を含有するアルカリ水溶液であり、具体的にはAldrich 社製の珪酸ナトリウム水溶液(Sodium silicate solution, Contains 〜14% NaOH, 〜27% SiO2)を挙げることができる。ナノシリカ粒子(1)の珪酸ナトリウムによる処理は、制限されないが、一例をあげると、ナノシリカ粒子(1)を含む水溶液に、例えば0.54重量%程度に希釈した珪酸ナトリウム水溶液を、その濃度が0.06〜0.05重量%程度となるような割合で添加して、室温または約60℃の加熱条件下で混合撹拌を10分〜1時間処理することによって行うことができる。
工程(a)は、かかるナノシリカ粒子(1)の表面に、そのOH基を介して蛍光色素結合基を導入する工程である。蛍光色素結合基は、蛍光色素と結合する基であればよく、制限されないが、通常アミノ基(-NH2)、カルボキシル基(-COOH)、イソチオシアネート基(-N=C=S)およびエステル基(-COOR)を挙げることができる。好ましくはアミノ基である。
例えば、ナノシリカ粒子(1)の表面に、蛍光色素結合基としてアミノ基(-NH2)を導入する方法としては、下式で示すようにナノシリカ粒子(1)と3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン、または3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル-トリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどの、アミノ基を有するシリカ化合物とを反応させる方法を挙げることができる。
Figure 0005277431
ナノシリカ粒子(1)とアミノ基を有するシリカ化合物との反応は、水溶性の溶媒を用いて、室温または室温〜60℃程度の加熱条件下で、混合撹拌処理することによって行うことができる。また、反応に使用するナノシリカ粒子(1)とアミノ基を有するシリカ化合物との割合は、制限はされないが、ナノシリカ粒子(1)1モルに対してアミノ基を有するシリカ化合物1〜0.6モル、好ましくは0.5〜0.3モルの範囲を例示することができる。
ナノシリカ粒子(1)の表面に、蛍光色素結合基としてイソチオシアネート基(-N=C=S)を導入する方法としては、ナノシリカ粒子(1)に3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン(3-Thiocyanato propyl triethoxy silane)などのイソチオシアネート基を有するシリカ化合物を反応させる方法を挙げることができる。かかる反応は、上記と同様に、水溶性の溶媒を用いて、室温または室温〜60℃程度の加熱条件下で、混合撹拌処理することによって行うことができる。また、反応に使用するナノシリカ粒子(1)とイソチオシアネート基を有するシリカ化合物との割合は、制限はされないが、ナノシリカ粒子(1)1モルに対してイソチオシアネート基を有するシリカ化合物1〜0.6モル、好ましくは0.5〜0.3モルの範囲を例示することができる。
また、ナノシリカ粒子(1)の表面に、蛍光色素結合基としてカルボキシル基(-COOH)を導入する方法としては、上述のナノシリカ粒子(1)と、3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン(3-Thiocyanato propyl triethoxy silane)などのイソチオシアネート基を有するシリカ化合物と反応させて、表面にイソチオシアネート基(-N=C=S)を導入した後、L-アラニンなどのアミノ基とカルボキシル基を有する化合物とを反応させる方法を挙げることができる。斯くしてナノシリカ粒子(1)表面のイソチオシアネート基と当該化合物のアミノ基とが反応して、当該粒子にカルボキシル基を導入することができる。かかる反応は、前述と同様に、水溶性の溶媒を用いて、室温または室温〜60℃程度の加熱条件下で、混合撹拌処理することによって行うことができる。また、反応に使用するナノシリカ粒子(1)とカルボキシル基を有するシリカ化合物との割合は、制限はされないが、ナノシリカ粒子(1)1モルに対してカルボキシル基を有するシリカ化合物3〜1モル、好ましくは2.6〜1.5モルの範囲を例示することができる。
さらにまた、ナノシリカ粒子(1)の表面に、蛍光色素結合基としてエステル基(-COOR)を導入する方法としては、ナノシリカ粒子(1)と上述のナノシリカ粒子(1)と、3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン(3-Thiocyanato propyl triethoxy silane)などのイソチオシアネート基を有するシリカ化合物と反応させて表面にイソチオシアネート基(-N=C=S)を結合させ、次いで、L-アラニンなどのカルボキシル基とアミノ基を有する化合物の当該アミノ基とナノシリカ粒子(1)表面のイソチオシアネート基を反応させて、カルボキシル基を導入した後、N-ヒドロキシスクシンイミド(N-hydroxysucinimide)などのエステル基を有するシリカ化合物を、WSCを触媒として表面のカルボキシル基を結合させてエステル化させる方法を挙げることができる。かかる反応も、前述と同様に、水溶性の溶媒を用いて、室温または室温〜60℃程度の加熱条件下で、混合撹拌処理することによって行うことができる。また、反応に使用するナノシリカ粒子(1)とエステル基を有するシリカ化合物との割合は、制限はされないが、ナノシリカ粒子(1)1モルに対してエステル基を有するシリカ化合物3〜1モル、好ましくは2.6〜1.5モルの範囲を例示することができる。
工程(b)
工程(b)は、上記工程(a)で調製された、表面に蛍光色素結合基を有するナノシリカ粒子(2)に、蛍光色素分子を有する化合物(3)を反応させて、ナノシリカ粒子の表面に蛍光色素を結合させる工程である。
蛍光色素分子を有する化合物(3)としては、一例としてエステル結合(-CO-O-)を介して蛍光色素分子とスクシンイミドとが結合してなるスクシンイミジルエステル化合物(3)を挙げることができる、ここで、当該スクシンイミジルエステル化合物(3)としては、下記の一般式で示される化合物を挙げることができる。
Figure 0005277431
ここで、Rは蛍光色素分子を意味する。より詳細には、Rは、下式に示すように、エステル結合(-CO-O-)を介してスクシンイミドと結合することができるものである。
Figure 0005277431
(式中、Rは蛍光色素分子、R’は水素原子または任意の基を意味する。)
具体的には、上記Rとしては、上記式に示すように、側鎖として-COOR’基(R’は水素原子または任意の基を意味する)を結合することによってカルボン酸またはその誘導体を形成するものを挙げることができる。上記において化合物(0)として示されるカルボン酸またはその誘導体としては、例えば、5-カルボキシ-フルオレセイン、6-カルボキシ-フルオレセイン、5(6)-カルボキシ-フルオレセイン、6-カルボキシ-2’,4,4’,5’,7,7’-ヘキサクロロフルオレセイン、6-カルボキシ-2’,4,7,7’-テトラクロロフルオレセイン、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン、5-カルボキシ-ローダミン、6-カルボキシ-ローダミン、5(6)-カルボキシ-ローダミン、Alexa Fluor 350 カルボン酸、Alexa Fluor 405 カルボン酸、Alexa Fluor 430 カルボン酸、Alexa Fluor 488 カルボン酸、Alexa Fluor 500カルボン酸、Alexa Fluor 514カルボン酸、Alexa Fluor 532 カルボン酸、Alexa Fluor 546カルボン酸、Alexa Fluor 555カルボン酸、Alexa Fluor 568 カルボン酸、Alexa Fluor 594 カルボン酸、Alexa Fluor 610 カルボン酸、Alexa Fluor 633カルボン酸、Alexa Fluor 647カルボン酸、Alexa Fluor 660カルボン酸、Alexa Fluor 680 カルボン酸、Alexa Fluor 700 カルボン酸、Alexa Fluor 750 カルボン酸、Alexa Fluor 790カルボン酸、等を挙げることができる。好ましくは赤色色素である5-カルボキシ-ローダミン、6-カルボキシ-ローダミン、5(6)-カルボキシ-ローダミンである。
なお、本発明の工程(b)で用いるスクシンイミジルエステル化合物(3)は、上記式に示すように、カルボン酸またはその誘導体〔化合物(0)〕とN−ヒドロキシスクシンイミドとを定法に従ってエステル化反応することによって調製することができる。但し、簡便には商業的に入手することも可能である。
スクシンイミジルエステル化合物(3)として具体的には、上記カルボン酸またはその誘導体〔化合物(1)〕に対応して、5-スクシンイミジルエステル-フルオレセイン、6-スクシンイミジルエステル-フルオレセイン、5(6)- スクシンイミジルエステル-フルオレセイン、6-スクシンイミジルエステル-2’,4,4’,5’,7,7’-ヘキサクロロフルオレセイン、6-スクシンイミジルエステル-2’,4,7,7’-テトラクロロフルオレセイン、6-スクシンイミジルエステル-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン、5-スクシンイミジルエステル-ローダミン、6-スクシンイミジルエステル-ローダミン、5(6)-スクシンイミジルエステル-ローダミン、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 350、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 405、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 430、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 488、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 500、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 514、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 532、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 546、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 555、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 568、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 594、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 610、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 633、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 647、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 660、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 680、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 700、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 750、スクシンイミジルエステル-Alexa Fluor 790 あるいはDYOMICS社のDY-495/5-MHS-Ester,DY-495/6-NHS-Ester,DY-500-XL-NHS-EsterDY-505/5-NHS-Ester,DY-505/6-NHS-Ester,DY-550-NHS-Ester,DY-555-NHS-Ester,DY-610-NHS-Ester,DY-615-NHS-Ester,DY-630-NHS-Ester,DY-631-NHS-Ester,DY-633-NHS-Ester,DY-635-NHS-Ester,DY-636-MHS-Ester,DY-650-NHS-Ester,DY-651-NHS-Ester,DYQ-660-NHS-Ester,DYQ-661-NHS-Ester,DY-675-NHS-Ester,DY-676-NHS-Ester,DY-680-NHS-Ester,DY-681-NHS-Ester,DY-700-NHS-Ester,DY-701-NHS-Ester,DY-730-NHS-Ester,DY-731-NHS-Ester,DY-750-NHS-Ester,DY-751-MHS-Ester,DY-776-NHS-Ester,DY-781-NHS-Ester,DY-782-NHS-Ester,等を挙げることができる。好ましくはRhodamin Red-X, succinimidylester(Molecular Probes R6160、Invitorgen社)を例示することができる。
スクシンイミジルエステル化合物(3)とナノシリカ粒子(2)との反応は、DMSOや水等の溶媒に溶解した後、室温条件下で攪拌しながら反応することによって行うことができる。反応に使用するスクシンイミジルエステル化合物(3)とナノシリカ粒子(2)との割合は特に制限されないが、好適にはナノシリカ粒子(2)1モルに対して、スクシンイミジルエステル化合物(3)3〜1モル、より好適には2.6〜1.5モルの割合を挙げることができる。
ナノシリカ粒子(2)が表面にアミノ基(-NH2)を有するものである場合、下式に示すように、スクシンイミジルエステル化合物(3)のカルボニル基とナノシリカ粒子(2)のアミノ基とがアミド結合(-NH-CO-)することによって蛍光色素分子が結合し、表面に蛍光色素が結合したナノシリカ粒子(4)が生成する。
Figure 0005277431
ナノシリカ粒子(2)が表面にアミノ基(-NH2)を有するものである場合は、上記アミド結合(-NH-CO-)のほか、ウレタン結合(-NH-CO-O-)を介して蛍光色素分子を固定することもできる。
この場合、具体的には、ナノシリカ粒子(2) のアミノ基とスクシンイミジルエステル化合物(3)のカルボニル基とがウレタン結合(-NH-CO-O-)することによって、ナノシリカ粒子(2)の表面に蛍光色素分子が結合して、蛍光色素結合ナノシリカ粒子(4)が生成される。より具体的には、上述した方法によってシリカ粒子表面にアミノ基を導入固定した後、同水溶液中にスクシンイミジルエステル化合物(3)を、ナノシリカ粒子1モルに対してスクシンイミジルエステル化合物(3)3〜1モル、より好適には2.6〜1.5モルの割合で加え、室温または室温〜60℃程度の加熱条件下で10分から1時間混合撹拌することで、シリカ粒子表面にウレタン結合(-NH-CO-O-)を介して蛍光色素分子を固定する。
ナノシリカ粒子(2)が表面にイソチオシアネート基(-N=C=S)を有するものである場合も同様に、そのイソチオシアネート基(-N=C=S)とアミノ基を有する蛍光色素分子がチオウレア結合(-NH-CS-NH-)することによって蛍光色素分子が結合し、表面に蛍光色素が結合したナノシリカ粒子(4)が生成する。具体的には、上述した方法と同様の方法によって、3-Thiocyanato propyl triethoxy silaneを混合してナノシリカ粒子表面にイソチオシアネート基を固定した後、アミノ基を有する化合物を、ナノシリカ粒子1モルに対してアミノ基を有する化合物3〜1モル、より好適には2.6〜1.5モルの割合で加え、室温または室温〜約60℃程度の加熱条件下で10分から1時間混合撹拌することで、シリカ粒子表面にチオウレア結合(-NH-CS-NH-)を介してアミノ基を有する蛍光色素分子を固定する。
ナノシリカ粒子(2)が表面にカルボキシル基、またはエステル基を有するものである場合も同様に、そのカルボキシル基とカルボジイミド(例えばWSCI)などの縮合剤を用いてN-hydroxysuccinimideを結合させてスクシンイミジルエステル基を導入した後、アミノ基を有する蛍光色素分子がアミド結合(-NH-CO-)することによって蛍光色素分子が結合し、表面に蛍光色素が結合したナノシリカ粒子(4)が生成する。具体的には、上述した方法と同様の方法によって、カルボジイミド(例えばWSCI)などの縮合剤を用いてN-hydroxysuccinimideを結合させてスクシンイミジルエステル基を導入後、アミノ基を有する化合物を、ナノシリカ粒子1モルに対してアミノ基を有する化合物3〜1モル、より好適には2.6〜1.5モルの割合で加え、室温または室温〜約60℃程度の加熱条件下で10分から1時間混合撹拌することで、シリカ粒子表面にアミド結合(-NH-CO-)を介してアミノ基を有する蛍光色素分子を固定する。
かかる(b)工程の反応は、(a)工程で得られたナノシリカ粒子(2)に対して直接行うこともできるが、(a)工程で得られたナノシリカ粒子(2)の表面に、予めスペーサーとなる分子を導入し、当該スペーサー分子を導入したナノシリカ粒子(2’)に対して(b)工程を行ってもよい。ナノシリカ粒子(2)の表面に、スペーサー分子を導入することによって、ナノシリカ粒子(2)の表面に蛍光色素が密集して結合することによって生じる濃度消光(蛍光強度の低下)を防止することができる。
スペーサー分子としては、ナノシリカ粒子(2)の表面の蛍光色素結合基、具体的にはアミノ基(-NH2)、カルボキシル基(-COOH)、イソチオシアネート基(-N=C=S)またはエステル基(-COOR)と反応してこれらの基に結合する化合物(8)を挙げることができる。さらに当該化合物は、蛍光色素結合基と結合することによって、次の工程(b)における蛍光色素分子を有する化合物(3)(スクシンイミジルエステル化合物(3))との反応から当該蛍光色素結合基を保護することのできる化合物であることが好ましい。
例えば、ナノシリカ粒子(2)が表面にアミノ基(-NH2)を有するものである場合に使用されるスペーサー分子としては、スクシンイミジルエステル基を有する化合物であって蛍光を発しない化合物を挙げることができる。かかる化合物として、具体的には、カルボキシル基(-COOH)を有する安息香酸にカルボジイミド(例えばWSCI)などの縮合剤を用いてN-hydroxysuccinimideを結合させてスクシンイミジルエステル基を導入した化合物を例示することができる。また、ナノシリカ粒子(2)が表面にカルボキシル基(-COOH)を有するものである場合に使用されるスペーサー分子としては、アミノプロピルエトキシシラン(APS)、アミノアゾベンゼン、アミノ安息香酸などのアミノ基を有する化合物を挙げることができる。これらの化合物は、カルボジイミド(例えばWSCI)などの縮合剤によってナノシリカ粒子表面のカルボキシル基(-COOH)とN-hydroxysuccinimideとを結合させた後に加えることによって、ナノシリカ粒子の表面に固定することができる。また、ナノシリカ粒子(2)が表面にイソチオシアネート基(-N=C=S)またはエステル基(-COOR)を有するものである場合に使用されるスペーサー分子としては、アミノプロピルエトキシシラン(APS)、アミノアゾベンゼン、アミノ安息香酸などのアミノ基を有する化合物を挙げることができる。
蛍光色素分子を有する化合物としては、シリカ粒子表面に結合する特性を有する基あるいは静電的に結合する基を含む化合物でもよい。
工程(c)
工程(c)は、上記工程(b)で調製された蛍光色素結合ナノシリカ粒子(4)にシリカ化合物(5)を反応させる工程である。かかる処理によって、当該蛍光色素結合ナノシリカ粒子(4)の表面の、蛍光色素と反応していない蛍光色素結合基〔アミノ基(-NH2)、カルボキシル基(-COOH)、イソチオシアネート基(-N=C=S)またはエステル基(-COOR)〕に、上記シリカ化合物(5)を導入することができる。なお、当該シリカ化合物(5)としては、トリアルコキシシリル基〔-Si(OR)3〕を有するシリカ化合物(5)、ケイ酸ナトリウム水溶液(〜27%SiO2)、および3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートを挙げることができる。
好ましくはトリアルコキシシリル基〔-Si(OR)3〕を有するシリカ化合物(5)である。ここで、トリアルコキシシリル基〔-Si(OR)3〕として、好ましくはトリエトキシシリル基(TEOS基)を挙げることができる。
例えば、ナノシリカ粒子(4)の表面に残存するアミノ基(-NH2)にシリカ化合物(5)を導入する方法としては、下式で示すように、ナノシリカ粒子(4)に、3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン(CNS)などの、-Si(OEt)3基を有するシリカ化合物(5)を反応させる方法を挙げることができる。なお、-Si(OR)3基を有するシリカ化合物(5)は、上記の3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン(CNS)に限らず、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、または3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル-トリエトキシシランなどを用いることもできる。
Figure 0005277431
かかる反応は、水溶性の溶媒を用いて、室温または室温〜60℃程度に加熱条件下で、混合撹拌することによって行うことができる。反応に使用するナノシリカ粒子(4)とシリカ化合物(5)との割合は、特に制限されないが、好適にはナノシリカ粒子(4)1モルに対して、シリカ化合物(5)3〜1モル、より好適には2.6〜1.5モルの割合を挙げることができる。
また、ナノシリカ粒子(4)の表面に残存するカルボキシル基(-COOH)にシリカ化合物(5)を導入する方法としては、ナノシリカ粒子(4)に、N-hydroxysuccinimideを加え、カルボジイミド(例えばWSCI)などの縮合剤によってスクシンイミジルエステルとした後、アミノ基と-Si(OR)3基を有するシリカ化合物 、例えばAPSを反応させる方法を挙げることができる。かかる反応は、水溶性の溶媒を用いて、室温または室温〜60℃程度の加熱条件下で混合撹拌することによって行うことができる。反応に使用するナノシリカ粒子(4)とシリカ化合物(5)との割合は、特に制限されないが、好適にはナノシリカ粒子(4)1モルに対して、シリカ化合物(5)3〜1モル、より好適には2.6〜1.5モルの割合を挙げることができる。
ナノシリカ粒子(4)の表面に残存するイソチオシアネート基(-N=C=S)にシリカ化合物を導入する方法としては、ナノシリカ粒子(4)に、アミノ基を有するAPSなどの-Si(OR)3基を有するシリカ化合物(5)を反応させる方法を挙げることができる。かかる反応は、水溶性の溶媒を用いて、室温または室温〜60℃程度の加熱条件下で混合撹拌することによって行うことができる。反応に使用するナノシリカ粒子(4)とシリカ化合物(5)との割合は、特に制限されないが、好適にはナノシリカ粒子(4)1モルに対して、シリカ化合物(5)3〜1モル、より好適には2.6〜1.5モルの割合を挙げることができる。
さらにナノシリカ粒子(4) に残存する表面のエステル基(-COOR)にシリカ化合物(5)を導入する方法としては、ナノシリカ粒子(4)に、N-hydroxysuccinimideを加えカルボジイミド(例えばWSCI)などの縮合剤によってスクシンイミジルエステルとした後、アミノ基と-Si(OR)3基を有するシリカ化合物 、例えばAPSを反応させる方法を挙げることができる。かかる反応は、水溶性の溶媒を用いて、室温または室温〜60℃程度の加熱条件下、混合撹拌することによって行うことができる。反応に使用するナノシリカ粒子(4)とシリカ化合物(5)との割合は、特に制限されないが、好適にはナノシリカ粒子(4)1モルに対して、シリカ化合物(5)3〜1モル、より好適には2.6〜1.5モルの割合を挙げることができる。
斯くして、ナノシリカ粒子(4)の表面に、蛍光色素を結合させるとともに、シリル基、特にトリアルコキシシリル基(-Si(OR)3基)を有するナノシリカ粒子(6)を調製することができる。
工程(d)
工程(d)は、上記工程(c)で調製されたナノシリカ粒子(6)の表面に形成されたシリル基、特に好ましくはトリアルコキシシリル基〔-Si(OR)3〕に、シラン化合物(7)を反応させる工程である。かかるシラン化合物(7)として、好適には、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、およびテトラアルコキシシラン〔Si(OR)4〕を挙げることができ、この場合の反応を下式に示す。なお、ここでテトラアルコキシシラン(7)としては、好ましくはテトラエトキシシラン(TEOS)を挙げることができる。
Figure 0005277431
かかる反応によって、表面に蛍光色素(上記式中、「R」で示される)を結合したナノシリカ粒子(4)〔ナノシリカ粒子(6)〕の表面に、蛍光色素の層を覆うようにシリカ皮膜を形成することができる。
当該反応に使用されるナノシリカ粒子(6)とシラン化合物(7)との割合は、特に制限されないが、通常核となるナノシリカ粒子の粒径とシリカ層の厚みに応じて適宜設定することができる。すなわち、核(原料)として用いるナノシリカ粒子の大きさとその周りに形成するシリカ層の厚みによって規定される。例えば、ナノシリカ粒子(6)1モルに対するテトラアルコキシシラン(7)のモル比として、表のような数値を挙げることができる。
Figure 0005277431
この反応は、アルコール、水及びアンモニアの存在下で行われる。ここでアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の低級アルコールを挙げることができる。かかる反応系における水とアルコールの割合は、特に制限されないが、好ましくは水1容量部に対してアルコールを0.5〜8容量部、好ましくは1〜5容量部、より好ましくは1〜2容量部の範囲を挙げることができる。アンモニアの量も特に制限されないが、例えば、反応させるテトラアルコキシシラン(7)1モルに対して、モル比で、1〜30モル、好ましくは3〜24モル、より好ましくは6〜18モルの割合を挙げることができる。なお、この反応において、これらの反応溶液中に珪酸ナトリウムを含有させてもよい。
この反応は室温または室温〜60℃程度の加熱条件下で行うことができる。また制限されないが、攪拌しながら行うことが好ましい。通常、数十分〜数十時間の反応で、シリカ皮膜が形成でき、本発明が目的とする蛍光色素分子を含有するナノシリカ粒子を調製することができる。
なお、当該工程(d)において、使用するテトラアルコキシシラン(7)の濃度を調整したり、反応時間を調整することにより、調製するシリカ球の大きさ(直径)を適宜調節することができる。使用するテトラアルコキシシラン(7)の濃度を多くしたり、また反応時間を長くすることにより、より大きいナノシリカ粒子を調製することができる(例えば、Blaaderen et al., “Synthesis and Characyerization of Monodisperse Collidal Organo-silica Spheres”, J. Colloid and Interface Science 156, 1-18.1993参照)。このように本発明の方法によれば、得られる蛍光色素含有ナノシリカ粒子の粒径(直径)を、所望の大きさに、例えば十数nmオーダーから数十nmオーダーへと自在に調整することができる。具体的には、本発明の方法によれば、後述する実施例に示すように、数〜数十nmサイズ、具体的には10nm以下から30nmといった微小な大きさを有する蛍光色素含有ナノシリカ粒子を調製することも可能である。また必要に応じて、その後の限界ろ過膜などを利用した分画操作により、希望する粒子径分布となるように調整することもでき、斯くして所望の粒子径分布範囲にあるナノシリカ粒子を得ることもできる。
例えば、粒径が30nm以下の蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、例えば、ろ過膜アミコンYM100(分画分子量100kDa)(日本ミリポア社製)など限外ろ過フィルター(ディスク)を備えた限外ろ過装置を用いることにより取得することができる。また、粒径が10nm以下の蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、例えば、上記ろ過膜アミコンYM100(分画分子量100kDa)(日本ミリポア社製)による限外ろ過処理で回収した蛍光色素含有ナノシリカ粒子を、さらにろ過膜アミコンYM10(分画分子量10kDa)(日本ミリポア社製)を備えた限外ろ過装置で処理することにより取得することができる。
このようにして得られる蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、必要に応じて、透析などの慣用の方法を利用して共存イオンや共存する不要物を除いて精製してもよい。
後述する実施例に示すように、本発明の方法によれば、蛍光色素を化学結合したシリカ化合物を順次重合していく方法(化学結合法)に比べて、1粒子あたりに配合できる蛍光色素分子量が多く、有意に高い蛍光強度を有する標識試薬(蛍光プローブ)を調製することができる。また、本発明の方法、特にスペーサー分子の導入工程〔(a’)工程〕を有する本発明の方法によれば、自己消光(濃度消光)を起こすことなく、多くの蛍光色素分子をシリカ粒子表面に固定することができる。このため、本発明の方法によると、微小な領域でも使用可能な、高感度な検出試薬を提供することが可能である。
(2)蛍光色素含有ナノシリカ粒子
本発明は、高い蛍光強度を有する蛍光色素含有ナノシリカ粒子を提供する。かかる蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、核となるナノシリカ粒子(便宜上、以下「核粒子」という)に蛍光色素分子が結合してなるものである。さらに、本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、当該核粒子に結合した蛍光色素分子がさらにシリカ層で覆われてなることを特徴とする。
当該蛍光色素含有ナノシリカ粒子には、核粒子の粒径が30nm未満であって、当該核粒子1粒子に対して蛍光色素分子が100分子以上の割合で結合してなるナノシリカ粒子が含まれる。当該蛍光色素含有ナノシリカ粒子には、具体的には核粒子の粒径が20nm以上30nm未満であって、当該核粒子1粒子中に蛍光色素分子が100分子以上、好ましくは120分子以上、好ましくは200分子以上、より好ましくは500分子以上の割合で結合してなるナノシリカ粒子が含まれる。なお、当該蛍光色素分子の結合数の上限は制限されないが、1500分子程度を挙げることができる。
また本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子には、核粒子の粒径が20nm未満であって、当該核粒子1粒子に対して蛍光色素分子が50分子以上の割合で結合してなるナノシリカ粒子が含まれる。当該蛍光色素含有ナノシリカ粒子には、具体的には核粒子の粒径が10nm以上20nm未満であって、当該核粒子1粒子中に蛍光色素分子が50分子以上、好ましくは60分子以上、好ましくは70分子以上、より好ましくは75分子以上の割合で結合してなるナノシリカ粒子が含まれる。なお、当該蛍光色素分子の結合数の上限は制限されないが、1000分子程度、好ましくは100分子程度を挙げることができる。
さらに本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子には、核粒子の粒径が10nm未満であって、当該核粒子1粒子に対して蛍光色素分子が2分子以上の割合で結合してなるナノシリカ粒子が含まれる。当該蛍光色素含有ナノシリカ粒子には、具体的には核粒子の粒径が2nm以上10nm未満であって、当該核粒子1粒子中に蛍光色素分子が2分子以上、好ましくは4分子以上、好ましくは6分子以上、より好ましくは10分子以上の割合で結合してなるナノシリカ粒子が含まれる。なお、当該蛍光色素分子の結合数の上限は制限されないが、100分子程度、好ましくは50分子程度を挙げることができる。
なお、核粒子1粒子に対して結合している蛍光色素の分子数、言い換えると、蛍光色素含有ナノシリカ粒子1粒子中に含まれる蛍光色素の分子数は、当該ナノシリカ粒子を分散させた水溶液(水分散液)の当該ナノシリカ粒子の濃度([SiO2]p)と、その水分散液の吸収スペクトルを測定して得られるピーク吸光度に基づいてLambert-Beerの法則から算出される蛍光色素分子の濃度(C)から下式(1)に従って求めることができる。
Figure 0005277431
かかる本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、その分散水溶液の蛍光強度が、当該ナノシリカ粒子に結合している蛍光色素分子の濃度と同じ濃度で、遊離の蛍光色素分子(すなわち、ナノシリカ粒子に結合していない蛍光色素分子)が分散している水溶液での蛍光強度よりも高いことを特徴とする。これは、本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子の1粒子の蛍光強度が、当該1粒子に含まれている蛍光色素の分子数と同じ分子数からなる遊離の蛍光色素の蛍光強度よりも高いことを意味する。
かかる微小且つ高感度な蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、制限はされないが、例えば前述する本発明の方法により調製することができる。
斯くして調製される蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、好ましくは50nm以下の粒径を有しており、所望の孔径を有する膜(例えば限外濾過膜など)を用いて濾別するなどの方法によって、所望の粒径を有する蛍光色素含有ナノシリカ粒子を調整することができる。例えば、具体的な方法として、実施例で説明する方法、すなわち、分画分子量100kDaを有する限外濾過膜(ろ過膜アミコンYM100、日本ミリポア製)を装着した限外ろ過装置を使用して濾過することによって、粒径が30nm以下の蛍光色素含有ナノシリカ粒子を取得することができる。また、斯くして調整した蛍光色素含有ナノシリカ粒子(粒径が30nm以下)を、さらに分画分子量10kDaを有する限外濾過膜(ろ過膜アミコンYM10、日本ミリポア製)を装着した限外ろ過装置を使用して濾過することによって、粒径が10nm以下の蛍光色素含有ナノシリカ粒子を取得することができる。
なお、シリカ粒子は、一般に、化学的に不活性であると共に、その修飾が容易であることが知られている。本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子もまた、容易に所望の分子を表面に結合させることが可能であり、またその表面をメソポーラスや平滑状にすることもできる。
以下、本発明を詳細に説明するために、実施例を記載する。但し、本発明はこれらの実施例に何等限定されるものではない。
なお、下記の実施例において使用する下記の用語の意味は、次の通りである:
CNS:3-チオシナトプロピルトリエトキシシラン
APS:アミノプロピルエトキシシラン
TEOS:テトラエトキシシラン
YM100:ろ過膜アミコンYM100(分画分子量100kDa)(日本ミリポア社製)
YM10:ろ過膜アミコンYM10(分画分子量10kDa)(日本ミリポア社製)
DMSO:ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)
HS-30:核粒子として使用した粒径7nmのナノシリカ粒子(LUDOX HS-30 colloidal silica、30%懸濁液)
HS-40:核粒子として使用した粒径12nmのナノシリカ粒子(LUDOX HS-40 colloidal silica、40%懸濁液)
TM-50:核粒子として使用した粒径22nmのナノシリカ粒子(LUDOX TM-50 colloidal silica、50%懸濁液)
WSCI:1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide, hydrochloride
NHS:N-hydroxy-succinimide
実施例1
(1)蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製
市販のナノシリカ粒子の懸濁液〔(1)粒径7nm:LUDOX HS-30 colloidal silica、30%懸濁液、(2)粒径12nm:LUDOX HS-40 colloidal silica、40%懸濁液、(3)粒径22nm:LUDOX TM-50 colloidal silica、50%懸濁液〕を10倍希釈した水溶液を1μl採取し、蒸留水1mlに加えた後、珪酸ナトリウム水溶液〔NaSixO2-x(0.54% SiO2)水溶液〕を10〜100μl加えて、約60℃で混合撹拌処理して、ナノシリカ粒子の表面を活性化した。このナノシリカ粒子含有溶液に、3-チオシナトプロピルトリエトキシシラン(CNS)とアミノプロピルエトキシシラン(APS)との混合液1μL(CNSとAPSを体積比1:1の割合で混合した溶液20μLとDMSO 200μlとの混合液220μLの1μL)を加えて、スペーサー溶液10μLを加えて撹拌し、約60℃の条件で10分〜1時間混合撹拌して反応させた。なお、スペーサー溶液として、安息香酸3.7mg、WSCI 1mg、NHS 3.7mg、およびAPS 1.8μlをDMSO 1mlに加えて室温で1時間撹拌反応させて調製した安息香酸シリケート(=スペーサー)を含む溶液を用いた。
次いで、これに、エステル結合を介してローダミンとスクシンイミドとが結合してなるRhodamin Red-X, N-hydroxysuccinimidyl ester(Molecular Probes Co. Ltd.)を50μL(75μg)添加し、約60℃の加熱条件で、10分から1時間かけて混合撹拌して反応させた。さらに、これにエタノール4ml、テトラエトキシシラン(TEOS)10μlおよびアンモニア水100μlを加えて室温で24時間攪拌した。
斯くして得られたローダミン含有ナノシリカ粒子を、分画分子量100kDaを有する限外濾過膜(ろ過膜アミコンYM100、日本ミリポア製)を装着した限外ろ過装置を使用して濾過して、粒径が30nm以下のローダミン含有ナノシリカ粒子を取得した。次いで、斯くして調製した蛍光色素含有ナノシリカ粒子を、さらに分画分子量10kDaを有する限外濾過膜(ろ過膜アミコンYM10、日本ミリポア製)を装着した限外ろ過装置を使用して濾過して、粒径が10nm以下のローダミン含有ナノシリカ粒子を取得した。
(2)蛍光色素含有ナノシリカ粒子の評価
(2-1) (1)粒径7nmのナノシリカ粒子(HS-30)、(2)粒径12nmのナノシリカ粒子(HS-40)、および(3)粒径22nmのナノシリカ粒子(TM-50)を原料として上記で調製した、ローダミン含有ナノシリカ粒子(粒径30nm以下、および粒径10nm以下)について、それを水に分散させた水溶液(水分散液)を調製し、(a)当該水分散液中のローダミン含有ナノシリカ粒子の濃度([SiO2]p)、(b) 当該水分散液中のローダミンの濃度([Rhodamin])、(c) ローダミン含有ナノシリカ粒子1粒子あたりのローダミン色素分子の数、および(d)当該粒子濃度における蛍光強度を測定した。なお、(d)蛍光強度は下記のようにして測定し、これからLambert-Beerの法則から(b) 当該水分散液中のローダミンの濃度([Rhodamin])を算出して、前述する式(1)に従って(c)ローダミン含有ナノシリカ粒子1粒子あたりのローダミン色素分子の数を求めた。
<蛍光強度の測定方法>
容器に、蛍光色素含有ナノシリカ粒子の分散水溶液を0.1ml採取して、蛍光分光光度計(島津RF5300PC)を用いて蛍光スペクトルを測定し(測定条件:SLIT(EX/EM)=1.5NM/1.5NM, Low sensitivity)、その最大ピークの蛍光強度を求める。なお、蛍光強度は、上記蛍光分光光度計に限らず、1μL蛍光スペクトロメーター(例えば、ナノドロップ社製ND-3300)を用いて測定することもできる。この場合、被験試料として蛍光色素含有ナノシリカ粒子の分散水溶液1μLを用いる。
結果を表3に示す。
Figure 0005277431
なお、上記で蛍光色素として使用したローダミン(遊離のローダミン)について、それを水に溶解した水溶液中のローダミン濃度と蛍光強度との関係を示す図1に示す。このグラフから、0.098μMのローダミンの蛍光強度は、1.7706となる。
(2-2)(1)で調製した蛍光色素含有ナノシリカ粒子(粒径30nm以下)の分散水溶液を光路長1cmの石英セルにいれて、1500WのXeランプ(Nihon bunko FP-6500)を120分間にわたって照射しながら、蛍光強度(励起波長:570nm、測定波長:595nm)を測定した。結果を図2に示す。図中、「TKR-1」は(1)粒径7nmのナノシリカ粒子(HS-30)、「TKR-2」は(2)粒径12nmのナノシリカ粒子(HS-40)、および「TKR-3」は(3)粒径22nmのナノシリカ粒子(TM-50)を、それぞれ原料として調製したローダミン含有ナノシリカ粒子の結果を示す。図に示すように、120分間にわたって光照射しても、蛍光強度が92%以上も維持されていることから、本発明の方法で調製された蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、光に対して極めて安定であることがわかる。
(2-3) 粒径22nmのナノシリカ粒子(TM-50)を原料として調製したローダミン含有ナノシリカ粒子(粒径30nm以下)を、成人胸腺細胞(Adult thymocytes)と混合した後、その蛍光強度を、フローサイトメーターを用いて測定した。結果を図3に示す。なお、図3中、横軸は蛍光強度(FL3-H)、縦軸は粒子数(Counts)を示す。図3中、右図は本発明のローダミン含有ナノシリカ粒子を用いて行った実験の結果であり、左図は、ローダミン含有ナノシリカ粒子を加えないで測定したNegative controlの結果である。
図3に示すように、ローダミン含有ナノシリカ粒子と成人胸腺細胞を反応させることにより、ピーク値(縦軸のカウント値が最大の時の横軸(蛍光強度))が、Negative controlの5から20
に増加した。このことから、成人胸腺細胞に本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子が吸着し、濃縮された結果、蛍光強度が増加したと考えられた。
(2-4) (1)粒径7nmのナノシリカ粒子(HS-30)、(2)粒径12nmのナノシリカ粒子(HS-40)、および(3)粒径22nmのナノシリカ粒子(TM-50)をそれぞれ原料として調製したローダミン含有ナノシリカ粒子(粒径30nm以下)をアガロースゲル電気泳動にかけた。具体的には、これらの蛍光色素含有ナノシリカ粒子を、アガロースゲルのマイナス極側に滴下して高電圧(100V)をかけ、ローダミンの蛍光を検出することにより、当該ナノシリカ粒子の移動度を測定した(BioRad molecular Imager FX Proを使用)。結果を図4に示す。図4に示すように、いずれのローダミン含有ナノシリカ粒子もアガロースゲルのプラス極側(左側)に移動した。このことから、上記で調製されたローダミン含有ナノシリカ粒子はいずれもマイナスに帯電していること、すなわちその表面が、-Si-O-結合を有するシリカ(マイナスに帯電)で被覆された粒子として形成されていることがわかる。なお、移動度は通常、粒子の大きさに依存するが、今回、粒子の移動距離にほとんど差が出なかったのは、粒子が小さすぎるためと考えられた。
(2-5) 各粒子濃度(μM)における蛍光強度(島津分光光度計RF5300PCで測定)を表4に示す。比較のため、市販の有機色素(CdSe)を用いたナノ粒子(Qdot525、Qdot605:いずれもQuantmDot社製、「Qdot」は登録商標)の各粒子濃度(μM)における蛍光強度も併せて示す。
Figure 0005277431
この結果から、Qdotの大きさと同じあるいはそれ以下の大きさにおいて、本発明の蛍光色素含有ナノシリカ粒子の蛍光強度(粒子濃度に対する蛍光強度)が勝っていることがわかる。
(2-6) (1)粒径7nmのナノシリカ粒子、(2)粒径12nmのナノシリカ粒子、および(3)粒径22nmのナノシリカ粒子を原料としてそれぞれ調製した蛍光色素含有ナノシリカ粒子(粒径30nm以下)約1mLを、1.5mLのチューブに加えた後、遮光箱にいれて放置した(1000時間)。経時的に、各蛍光色素含有ナノシリカ粒子の蛍光スペクトルを測定し(測定条件:(Slit(Ex/Em)=1.5nm/1.5nm、 Low sensitivity、励起波長573nm、測定波長585nm)、その蛍光ピークの強度を算出した。結果を図5に示す(縦軸に放置時間、横軸に蛍光強度)。
この図に示すように、本発明の方法によって調製した蛍光色素含有ナノシリカ粒子はいずれも、1000時間にわたって安定であった。
実施例2
(1)蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製
粒径約3nmのナノシリカ粒子および粒径22nmのナノシリカ粒子をそれぞれ原料とし、蛍光色素として上記実施例1で使用したローダミンに代えて、フルオレセイン、DY485、DY521(以上、DYOMICS社)またはAlexa647(Molecular Probes社)を用いて、実施例1の方法に従って、同様に反応させて、蛍光色素含有ナノシリカ粒子を調製した。なお、DY485およびDY521の化学式を下式に示す。
Figure 0005277431
Figure 0005277431
なお、本発明において使用する「蛍光色素を有する化合物(3)」(具体的には、スクシンイミジルエステル化合物(3))は、上記DY485およびDY521を、N-ヒドロキシスクシンイミドとエステル化反応することによって調製することができる。
粒径22nmのナノシリカ粒子は、市販のナノシリカ粒子の懸濁液〔粒径22nm:LUDOX TM-50 colloidal silica、50%懸濁液〕を用いた、また粒径約3nmのナノシリカ粒子は、粒径22nmのナノシリカ粒子の懸濁液〔粒径22nm:LUDOX TM-50 colloidal silica、50%懸濁液〕を、YM-100でろ過し、その溶出液を、さらにYM-10(2.6nmポアサイズ)でろ過し、ろ過されずに残った溶液から調製した。
(2)蛍光色素含有ナノシリカ粒子の評価
斯くして得られた、蛍光色素含有ナノシリカ粒子の特性(1粒子あたりの蛍光色素の分子数、蛍光強度など)を実施例1の方法に従って求めた。結果を表5に示す。
Figure 0005277431
粒径22nmのナノシリカ粒子を原料として調製した蛍光色素含有ナノシリカ粒子の結果を、表の上段に、粒径約3nmのナノシリカ粒子を原料として調製した蛍光色素含有ナノシリカ粒子の結果を、表の下段に示す。この結果からわかるように、粒径22nmのナノシリカ粒子を原料としてFluorescein、DY-485XL、DY-485XL+DY-521XL、およびAlexa647の4種類の蛍光色素を配合した蛍光色素含有ナノシリカ粒子が調製できた。また、粒径3nmのナノシリカ粒子を原料として、Fluorescein、DY-521XL、およびAlexa647の3種類の蛍光色素を配合した蛍光色素含有ナノシリカ粒子が調製できた。なお、核が粒径22nmの蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、Alexa647の場合を除いて1粒子中に蛍光色素分子が200分子以上固定されていることがわかる。従来公知の方法(WO2006/070582)による1粒子あたりの固定数は100分子であるので、上記の結果はこの2倍以上に相当する。また、核が粒径3nmの蛍光色素含有ナノシリカ粒子は、1粒子中に2分子以上の蛍光分子を含んでいた。これは従来法(WO2006/070582)の2倍以上に相当する。
実施例3
市販のナノシリカ粒子の懸濁液〔(1)粒径7nm:LUDOX HS-30 colloidal silica、30%懸濁液、(2)粒径12nm:LUDOX HS-40 colloidal silica、40%懸濁液、(3)粒径22nm:LUDOX TM-50 colloidal silica、50%懸濁液〕を10倍希釈した水溶液を1μl採取し、蒸留水900μLまたは1mlに加えた後、珪酸ナトリウム水溶液〔NaSixO2-x(0.54% SiO2)水溶液〕を10〜100μl, 1μLスペーサー溶液10μLを加えて撹拌し、室温で混合撹拌処理して、ナノシリカ粒子の表面を活性化した。なお、スペーサー溶液として、安息香酸3.7mg、WSCI 1mg、NHS 3.7mg、およびAPS 1.8μlをDMSO 1mlに加えて室温で1時間撹拌反応させて調製した安息香酸シリケート(=スペーサー)を含む溶液を用いた。次いで、これにアミノプロピルエトキシシラン(APS)を1μlと3-Thiocyanato propyl triethoxy silane (CNS)を2μl加えてから、室温の条件で10分〜1時間混合撹拌して反応させた。
次いで、エステル結合を介してローダミンとスクシンイミドとが結合してなるRhodamin Red-X, N-hydroxysuccinimidyl ester(Molecular Probes Co. Ltd.)を、50μL(75μg)添加し、室温または約60℃の加熱下の条件で、10分〜1時間混合撹拌して反応させた。その後、YM-10でろ過して蒸留水で洗浄し、蛍光スペクトル(島津蛍光分光光度計RF5300PC)及び吸収スペクトル測定(島津UV-1700)を行った。なお、斯くして調製された試料(No.73:原料HS-30使用、No.75:原料HS-40使用、No.76:原料TM-50使用)は、各原料ナノシリカ粒子表面に蛍光色素(ローダミン)とスペーサー分子(CNS)を固定しただけのものであり、その表面にシリカ層は形成されていない。
次いで、この試料に、エタノール4mlとテトラエトキシシラン(TEOS)10μlおよびアンモニア水100μlを加えて室温で24時間攪拌した(シリカ層の形成)。斯くして得られたローダミン含有ナノシリカ粒子を、分画分子量100kDaを有する限外濾過膜(ろ過膜アミコンYM-100、日本ミリポア製)を装着した限外ろ過装置を使用して濾過して、粒径が30nm以下の蛍光色素含有ナノシリカ粒子を取得した。その後、YM10でろ過して蒸留水で洗浄し、これを蒸留水に分散させて調製した水分散液の蛍光スペクトル及び吸収スペクトルを測定した(No.73’:原料HS-30使用、No.75’:原料HS-40使用、No.76’:原料TM-50使用)。
吸収スペクトル測定の結果から、水分散液中のローダミンの濃度([Rhodamin])を、Lambert-Beerの法則により計算して横軸に、また縦軸にその濃度における蛍光強度をプロットしたグラフを図6に示す。前述する式(1)に従って、ローダミン含有ナノシリカ粒子1粒子中に含まれる蛍光色素(ローダミン)の分子数([Rhodamin]/[SiO2]p)を求めた。
結果を下記に示す。なお、[SiO2]pは、ローダミン含有ナノシリカ粒子の分散水溶液に含まれる当該ナノシリカ粒子の濃度である:
ローダミン含有ナノシリカ粒子1粒子中に含まれるローダミンの分子数([Rhodamin]/[SiO 2 ]p)
No.73’(原料HS-30使用):2
No.75’(原料HS-40使用):12
No.76’(原料TM-50使用):190。
この結果から、蛍光色素含有ナノシリカ粒子の表面をシリカ層で被覆することによって蛍光強度が増大することがわかる。その理由として、ローダミン分子の表面をシリカ層で覆うことによってローダミン分子が外界(水溶液)から保護されためであると考えられる。
実施例4
上記実施例3で調製したローダミン含有ナノシリカ粒子No.73’(原料HS-30使用)について、(1)粒径、および(2)水分散液中での蛍光寿命を評価した。
(1)粒径
(株)東レリサーチセンター形態科学研究部に依頼して、ローダミン含有ナノシリカ粒子No.73’(原料HS-30使用)の透過電子顕微鏡像(TEM像)を得るとともに、TEM像をネガティブ染色(PTA(リンタングステン酸)染色)した。その結果を、図7に示す。図7からわかるように、粒子が多くの分岐をもち、数珠状に連なって凝集しているのが観察された。一次粒子径は約5nm〜13nmであり、不定形であった。次いで、得られたTEM像について、目視で粒子を判別し、粒度分布を分析した。結果を図8に示す。一次粒子径は、8.2±0.5 nm (n=146)であった。
(2)水分散液中での蛍光寿命
(株)東レリサーチセンターに依頼して、ローダミン含有ナノシリカ粒子No.73’(原料HS-30使用)の水分散液の蛍光寿命を測定した〔測定装置:NAES-1100時間分解分光光度計(堀場製作所)、励起波長550nm、積算時間6時間〕。結果を図9に示す。
図からわかるように、1成分解析により得られた蛍光寿命は、4.09±0.02nsecであった。この値は、ローダミンの色素分子そのものの、水分散液中での蛍光寿命1.9nsecよりも長く、かつエタノール中での蛍光寿命2.9nsecよりも長かった(F. L. Arbeloa et al., J. of Luminescence, 44, 1989, 105)。このことから、ローダミン含有ナノシリカ粒子No.73’において、シリカナノ粒子(HS-30)表面に結合集積したローダミン蛍光分子は、消光することなく、エネルギー移動の起こらない状態で存在していることを示している。
実施例5 カルボキシル基を組み込んだローダミン含有シリカナノ粒子の調製
市販のナノシリカ粒子の懸濁液〔(1)粒径7nm:LUDOX HS-30 colloidal silica、30%懸濁液、(2)粒径12nm:LUDOX HS-40 colloidal silica、40%懸濁液、(3)粒径22nm:LUDOX TM-50 colloidal silica、50%懸濁液〕を10倍希釈した水溶液を1μl採取し、これに10mMのクエン酸10μl、5μl、10μl、または100μlを加え、蒸留水900μLまたは1mlに加えた後、珪酸ナトリウム水溶液〔NaSixO2-x(0.54% SiO2)水溶液〕を10〜100μl ,1μLスペーサー溶液10μLを加えて撹拌し、室温で混合撹拌処理して、ナノシリカ粒子の表面を活性化した。なお、スペーサー溶液として、安息香酸3.7mg、WSCI 1mg、NHS 3.7mg、およびAPS 1.8μlをDMSO 1mlに加えて室温で1時間撹拌反応させて調製した安息香酸シリケート(=スペーサー)を含む溶液を用いた。次いで、これにアミノプロピルエトキシシラン(APS)を1μlと3-Thiocyanato propyl triethoxy silane (CNS)を2μl加えてから、室温の条件で10分〜1時間混合撹拌して反応させた。
次いで、エステル結合を介してローダミンとスクシンイミドとが結合してなるRhodamin Red-X, N-hydroxysuccinimidyl ester(Molecular Probes Co. Ltd.)を、50μL(75μg)添加し、室温または約60℃の加熱下の条件で、10分〜1時間混合撹拌して反応させた。その後、YM-10でろ過して蒸留水で洗浄し、蛍光スペクトル(島津蛍光分光光度計RF5300PC及びナノドロップ1μ蛍光スペクトロメーター)及び吸収スペクトル測定(島津UV-1700)を行った。なお、斯くして調製された試料(No.73:原料HS-30使用、No.75:原料HS-40使用、No.76:原料TM-50使用)は、各原料ナノシリカ粒子表面に蛍光色素(ローダミン)とスペーサー分子(CNS)を固定しただけのものであり、その表面にシリカ層は形成されていない。
次いで、この試料に、エタノール4mlとテトラエトキシシラン(TEOS)10μlおよびアンモニア水100μlを加えて室温で24時間攪拌した(シリカ層の形成)。斯くして得られたローダミン含有ナノシリカ粒子はその表面にクエン酸を有している。このナノシリカ粒子を、分画分子量100kDaを有する限外濾過膜(ろ過膜アミコンYM-100、日本ミリポア製)を装着した限外ろ過装置を使用して濾過して、粒径が30nm以下の蛍光色素含有ナノシリカ粒子を取得した。その後、YM10でろ過して蒸留水で洗浄し、これを蒸留水に分散させて調製した水分散液の蛍光スペクトルを測定した。
図10に、原料HS-30を用いて調製したローダミン含有ナノシリカ粒子について、横軸に使用した10mMクエン酸量(μl)を、縦軸にナノドロップ1μ蛍光スペクトロメーターで測定したナノシリカ粒子の相対蛍光量(RFU)をプロットした。図10にみられるように、原料HS-30に対してクエン酸(10mM)を10μl用いた場合に相対蛍光強度が最大になった。
図11に、原料HS-30, HS-40, またはTM-50を用いて調製した各ローダミン含有ナノシリカ粒子について、横軸にローダミン分子濃度(10-8M)、縦軸にナノドロップ1μ蛍光スペクトロメーターで測定した相対蛍光強度(RFU)をプロットした。なお加えたクエン酸(10mM)は10μlである。図11に見られるように、原料としてHS-40を用いて調製したローダミン含有ナノシリカ粒子が、同じローダミン分子濃度で最小となることがわかる。
このようにクエン酸量と原料のシリカナノ粒子の大きさが蛍光強度に影響を与えることから、クエン酸分子が蛍光色素を覆うシリカ層に取り込まれることを示している。クエン酸分子は、シリカ層に取り込まれ、表面にはカルボキシル基(-COOH)を有する。
実施例6 フルオレセイン含有ナノシリカ粒子の調製
2.0mgの5(6)-Carboxy-fluorecein-N-hydroxy succinimide ester (FLUOS, Roche Co. Ltd.)を1.5mlのDMSOに溶解した溶液から10μLを採取して、フルオレセイン含有ナノシリカ粒子の調製に用いた。まず、1μLのナノシリカ粒子の懸濁液〔粒径7nm:LUDOX HS-30 colloidal silica、1/10希釈〕に1mLの蒸留水を加えて混合した後、珪酸ナトリウム水溶液(NaSixO2-x(0.54wt%のSiO2)水溶液)10μL、APSとCNSの混合溶液(10μL+10μL in 200μL DMSO)1μL、スペーサー溶液10μLを加えて撹拌し、約60℃で15分加熱しながらさらに撹拌混合した。なお、スペーサー溶液として、安息香酸3.7mg、WSC 1mg、NHS 3.7mg、およびAPS 1.8μlをDMSO 1mlに加えて室温で1時間撹拌反応させて調製した安息香酸シリケート(=スペーサー)を含む溶液を用いた。
その後、この水溶液にエタノール4mLとTEOS溶液0.01ml、アンモニア水溶液0.1mlを加えて撹拌し、さらに15分間約60℃で加熱し撹拌した。得られた溶液をYM-100でろ過洗浄し、粒径が10nm未満のフルオレセイン含有シリカナノ粒子を得た。
比較例
ローダミン含有シリカ化合物の調製、及びこれを用いたナノシリカ粒子〔ローダミン含有ナノシリカ粒子〕(化学結合型)の調製
(1)ローダミン含有シリカ化合物(化学結合型)の調製
下式に従って、ローダミン含有シリカ化合物を調製した。
Figure 0005277431
〔式中、Rはローダミン(標識分子)を意味する。R中、*はエステル基との結合部を意味する。〕
具体的には、まずスクシンイミジルエステル化合物として、エステル結合を介してローダミンとスクシンイミドが結合してなる5-carboxyltetramethylrhodamin succinimidyl ester(9)(Molecular Probes社製)約5mgを、1mlのDMSO溶液に溶解した後、アミノ基を有するシリカ化合物として3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン(APS)(2) を、上記スクシンイミジルエステル化合物(9)と等モルになるように約1.2μl加えて、約1時間スターラーピースを用いて攪拌して反応させて、スクシンイミジルエステル化合物(9)のカルボニル基とシリカ化合物(2)のアミノ基がアミド結合してなるローダミン(標識分子)含有シリカ化合物(10)を調製した。
(2)ローダミン含有ナノシリカ粒子(化学結合型)の調製
下式に従って、ローダミン含有シリカ化合物(10)からローダミン含有ナノシリカ粒子(12)を調製した。
Figure 0005277431
〔式中、Rはローダミンを意味する。〕
具体的には、上記で得られた反応溶液〔ローダミン含有シリカ化合物(10)〕のDMSO溶液0.05mlに、テトラエトキシシラン(TEOS)0.05ml、水1ml及びエタノール3.95mlを加えて(エタノール:水=4:1、容量比)、これに約30%のアンモニア水0.1mlを加えて、一日撹拌しながら室温条件下に放置した。得られた溶液(反応終了液)を、限外ろ過装置〔アミコン(登録商標)攪拌式セル〕(フィルター;UFディスクYM100ウルトラセルRC100K NMWL)(販売会社:MILLIPORE)〔Nominal Molecular Weight Limit(NMWL):100 kDa〕を使用してろ過し、蒸留水を使用したろ過洗浄を数回繰り返して、ローダミン含有ナノシリカ粒子(11)(粒径20nm)を調製した。さらにこのろ液をさらにYM-10でろ過洗浄して、粒径10nm程度のローダミン含有ナノシリカ粒子を調製した。
上記実施例5で得られた蛍光色素含有ナノシリカ粒子および参考例で得られた蛍光色素含有ナノシリカ粒子(化学結合型)の1粒子あたりの蛍光色素分子数と蛍光強度をそれぞれ測定した(島津蛍光分光光度計RF5300PC)。その結果を、実施例1で調製した蛍光色素含有ナノシリカ粒子と併せて、表6に示す。また、比較のため、市販のCdSe標識剤の蛍光強度も併せて示す。
Figure 0005277431
遊離(free)のローダミンについて、それを水に溶解した水溶液中のローダミン濃度と蛍光強度との関係を示すグラフである。 実施例1(1)で調製した蛍光色素含有ナノシリカ粒子(粒径30nm以下)の分散水溶液に1500WのXeランプ(Nihon bunko FP-6500)を120分間にわたって照射しながら、蛍光強度(励起波長:570nm、測定波長:595nm)を測定した結果を示す。図中、「TKR-1」は(1)粒径7nmのナノシリカ粒子(HS-30)、「TKR-2」は(2)粒径12nmのナノシリカ粒子(HS-40)、および「TKR-3」は(3)粒径22nmのナノシリカ粒子(TM-50)を、それぞれ原料として調製したローダミン含有ナノシリカ粒子の結果を示す。 実施例1(1)で粒径22nmのナノシリカ粒子(TM-50)を原料として調製したローダミン含有ナノシリカ粒子(粒径30nm以下)を、成人胸腺細胞(Adult thymocytes)と混合した後、その蛍光強度を、フローサイトメーターを用いて測定した結果を示す。横軸は蛍光強度(FL3-H)、縦軸は粒子数(Counts)を示す。図中、右図は本発明のローダミン含有ナノシリカ粒子を用いて行った実験の結果であり、左図は、ローダミン含有ナノシリカ粒子を加えないで測定したNegative controlの結果である。 実施例1(1)で(1)粒径7nmのナノシリカ粒子(HS-30)、(2)粒径12nmのナノシリカ粒子(HS-40)、および(3)粒径22nmのナノシリカ粒子(TM-50)をそれぞれ原料として調製したローダミン含有ナノシリカ粒子(粒径30nm以下)をアガロースゲル電気泳動にかけた結果を示す。 実施例1(1)で(1)粒径7nmのナノシリカ粒子(HS-30)、(2)粒径12nmのナノシリカ粒子(HS-40)、および(3)粒径22nmのナノシリカ粒子(TM-50)を原料としてそれぞれ調製した蛍光色素含有ナノシリカ粒子(粒径30nm以下)の、経時的な蛍光強度の変化を示す(測定条件:(Slit(Ex/Em)=1.5nm/1.5nm、 Low sensitivity、励起波長573nm、測定波長585nm)。(縦軸:放置時間(hour)、横軸:蛍光強度)。 実施例3で調製したローダミン含有ナノシリカ粒子(シリカ層被覆なし;No.73(原料HS-30使用)、No.75(原料HS-40使用)、No.76(原料TM-50使用)、およびシリカ層被覆あり;No.73’(原料HS-30使用)、No.75’(原料HS-40使用)、No.76’(原料TM-50使用))の水分散液中のローダミンの濃度([Rhodamin])(横軸)とその濃度における蛍光強度(縦軸)の関係を示す。 実施例3で調製したローダミン含有ナノシリカ粒子No.73’(原料HS-30使用)の透過電子顕微鏡像(TEM像)のネガティブ染色(PTA(リンタングステン酸)染色)画像である(実施例4)。 実施例3で調製したローダミン含有ナノシリカ粒子No.73’(原料HS-30使用)の粒度分布を示す(実施例4)。図中、棒グラクで示される「B」は、ローダミン含有ナノシリカ粒子の個数を意味し、その粒子の分布をガウス近似した結果が、図中、線グラフで示される「フィット」である。 実施例3で調製したローダミン含有ナノシリカ粒子No.73’(原料HS-30使用)について、水分散液中での蛍光寿命を評価した結果を示す(実施例4)。 原料HS-30を用いて調製したローダミン含有ナノシリカ粒子について、横軸に使用した10mMクエン酸量(μl)を、縦軸にナノドロップ1μ蛍光スペクトロメーターで測定したナノシリカ粒子の相対蛍光量(RFU)をプロットした図である(実施例5)。 原料HS-30, HS-40, またはTM-50を用いて調製した各ローダミン含有ナノシリカ粒子について、横軸にローダミン分子濃度(10-8M)、縦軸にナノドロップ1μ蛍光スペクトロメーターで測定した相対蛍光強度(RFU)をプロットした図である(実施例5)。

Claims (9)

  1. 下記の工程(a)〜(d)を、(a),(b),(c)及び(d)、または(a),(c),(b)及び(d)の順にて実施する、蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製方法;
    (a)ナノシリカ粒子(1)の表面に、そのOH基を介して蛍光色素結合基を導入する工程、
    (b)工(a)または(c)で得られたナノシリカ粒子(2)に、蛍光色素分子を有する化合物(3)を反応させて、ナノシリカ粒子の表面に蛍光色素を結合させる工程、
    (c)工(b)または(a)で得られた蛍光色素結合ナノシリカ粒子(4)またはナノシリカ粒子(2)に、トリアルコキシシリル基を有するシリカ化合物(5)を反応させて、当該ナノシリカ粒子(4)または(2)の表面に上記シリカ化合物(5)を導入する工程、および
    (d)工程(a),(b)及び(c)または(a),(c)及び(b)で得られたナノシリカ粒子(6)にテトラアルコキシシラン(7)を反応させて、当該ナノシリカ粒子(6)の表面にシリカ皮膜を形成する工程。
  2. 上記「蛍光色素分子を有する化合物(3)」として「エステル結合(-CO-O-)を介して蛍光色素分子とスクシンイミドとが結合してなるスクシンイミジルエステル化合物(3)」及び上記「トリアルコキシシリル基を有するシリカ化合物(5)」として3−チオシアナトプロピルトリエトキシシランまたはアミノプロピルトリエトキシシランの少なくとも一方を用いる、
    請求項1に記載する蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製方法。
  3. 上記工程(a)または工程(a)及び(c)の後に、下記の工程(a’)を有し、次いで当該工程(a’)で得られたナノシリカ粒子(2’)に対して上記工程(b)を行う、請求項1または2に記載する蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製方法:
    (a’) 蛍光色素結合基と結合する化合物(8)を、上記工程(a)または工程(a)及び(c)で得られたナノシリカ粒子(2)と反応させて、当該ナノシリカ粒子(2)表面の蛍光色素結合基の一部を保護する工程。
  4. 蛍光色素結合基が、アミノ基、カルボキシル基、イソチオシアネート基またはエステル基である、請求項1乃至3のいずれかに記載する蛍光色素含有ナノシリカ粒子の調製方法。
  5. ナノシリカ粒子に蛍光色素分子が結合し、さらに当該蛍光色素分子がシリカ層で覆われてなる蛍光色素含有ナノシリカ粒子であって、
    前記ナノシリカ粒子の粒径が20nm以上、30nm未満であり、且つ、
    前記ナノシリカ粒子1粒子に対して、100分子以上の蛍光色素分子が結合していることを特徴とする蛍光色素含有ナノシリカ粒子。
  6. ナノシリカ粒子に蛍光色素分子が結合し、さらに当該蛍光色素分子がシリカ層で覆われてなる蛍光色素含有ナノシリカ粒子であって、
    前記ナノシリカ粒子の粒が10nm以上、20nm未満であり、且つ
    前記ナノシリカ粒子1粒子に対して、50分子以上の蛍光色素分子が結合していることを特徴とする蛍光色素含有ナノシリカ粒子。
  7. ナノシリカ粒子に蛍光色素分子が結合し、さらに当該蛍光色素分子がシリカ層で覆われてなる蛍光色素含有ナノシリカ粒子であって、
    前記ナノシリカ粒子の粒径が10nm未満であり、且つ、
    前記ナノシリカ粒子1粒子に対して、2分子以上の蛍光色素分子が結合していることを特徴とする蛍光色素含有ナノシリカ粒子。
  8. ナノシリカ粒子に蛍光色素分子が結合し、さらに当該蛍光色素分子がシリカ層で覆われてなる蛍光色素含有ナノシリカ粒子であって、
    その分散水溶液での蛍光強度が、当該ナノシリカ粒子に結合している前記蛍光色素分子の濃度と同じ濃度で、前記ナノシリカ粒子に結合していない遊離の蛍光色素分子が分散している水溶液での蛍光強度よりも高いことを特徴とする蛍光色素含有ナノシリカ粒子。
  9. 請求項1乃至4のいずれかに記載する調製方法を用いて得られる蛍光色素含有ナノシリカ粒子である、請求項5乃至8のいずれかに記載する蛍光色素含有ナノシリカ粒子。
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