JP5277378B2 - 走査型プローブ顕微鏡 - Google Patents

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    • G01Q60/24AFM [Atomic Force Microscopy] or apparatus therefor, e.g. AFM probes
    • G01Q60/32AC mode

Description

本発明は、超音波を利用した非接触式の走査型プローブ顕微鏡に関する。
従来、走査型プローブ顕微鏡(SPM)としては、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)が知られている。AFMは、カンチレバー探針と試料との相互作用で生ずるカンチレバーの力学的振舞い(振幅、位相、共振周波数の変化)を計測し、その計測に基づいて試料の形状や物性マップを得ることができる。
AFMの一つとして、非接触式(non-contact mode)のAFMが知られている。非接触式のAFMは、探針と試料が接触しない状態で使用される。従来の非接触式のAFMは、主に真空中で使用される。真空中では、カンチレバーのQ値を大きくすることができ、その結果、探針と試料間の相互作用を高感度に検出でき、それ故、探針が試料に接触しなくてもイメージングが可能である。一方、液中では、Q値が低くなるため、探針・試料間に斥力が働く状況(すなわち接触状態)でしかイメージングができない。
ここで、Q値(Quality Factor)とは、共振スペクトルの鋭さを表す量である。共振系にかかる粘性抵抗が小さいほどQ値が大きくなり、逆に、粘性抵抗が大きいとQ値が小さくなる。そして、Q値が大きいほど感度が高くなる。
生物試料のように柔らかく脆い試料を測定する場合、探針との接触で試料が破壊されることもありえる。また、生きた細胞膜のように極めて柔らかい表面は、探針との接触により大きく変形し、そのため、表面上の微細構造を観察することはできない。したがって、このような試料は、探針と試料が接触しない状態で測定することが望まれる。しかしながら、従来の非接触式のAFMは、Q値によって使用条件が制限されるので、専ら真空中で使用される。そのため、上記のような生物試料を観察することは難しかった。
ところで、最近、Shekhawat等が、AFMと超音波を組み合わせることにより試料の内部構造(表面下の構造)を観察できることを示した(特許文献1)。図1に示されるように、試料ステージ下から周波数f1の超音波が発射され、カンチレバー支持部から周波数f2の超音波が発射される。これらの超音波が(カンチレバー探針部で)非線形に干渉し、周波数|f1−f2|の音が生ずる。この周波数差をカンチレバーの共振周波数に一致させておくと、カンチレバーが共振する。試料ステージ下から発射された超音波の振幅や位相は、試料表面下の物体により変調される。カンチレバーの共振の振幅や位相も、物体の存在により影響を受ける。従って、試料とカンチレバーを面内方向に2次元走査すると、試料表面下の物体の分布をイメージングできる。この原理を使うことにより、細胞内部の感染した菌や細胞核を観察することができる。
しかし、従来の超音波式SPMは、下記の理由で、生体分子などの微細な物体の形状を非接触モードで計測するのに使えるものではない。
まず、従来の超音波式SPMは、試料内部の物体による超音波の変調を計測している。変調の程度は、例えば、図1に示す厚さa、b、cの合計を表す。したがって、従来技術で得られる情報は、深さ方向の投影像であり、物体の濃淡分布である。また従来技術は高さ方向の走査も行っていない。したがって、従来技術は、高さの情報を得ることができず、物体表面の凹凸形状の計測には使えない。
また、試料内部の物体により超音波の変調が生じるのは、物体が相当に大きいからである。このことは、従来技術が上記のように菌や細胞核といった大きい物しか観察できないことを意味する。そのため、生体分子のような微細な物体の観察には使えない。
また、従来の超音波式SPMは、上記超音波の変調を計測するために探針と試料を接触させている。したがって、非接触状態で生体等の柔らかい物体の形状を計測することはできない。
以上に説明してきたように、従来の非接触式のAFMは、Q値によって使用条件が制限されるので、主に真空中で使用される。そのため、例えば、液中で生物試料を観察するといったことは困難であった。また、従来の超音波式のSPMも、生体分子などの微細な物体の形状を非接触モードで観察するのに使えるものではなかった。
Gajendra S. Shekhawat and Vinayak P. Dravid, Nanoscale Imaging of Buried Structures via Scanning Near-Field Ultrasound Holography, Science, USA, the American Association for the Advancement of Science, (October 7, 2005) VOL310, Pages 89-92.).
本発明は、上記背景の下でなされたものであり、その目的は、カンチレバーのQ値に拘わらず、探針が試料に接触しなくても試料表面を観察することができる走査型プローブ顕微鏡を提供することにある。
本発明の一態様は走査型プローブ顕微鏡であり、探針を有するカンチレバーと、カンチレバー及び試料の相対的な走査を行うスキャナと、試料に対して試料側周波数の超音波を発射する試料側超音波発射部と、試料側周波数と異なるレバー側周波数の超音波をカンチレバーに発射するレバー側超音波発射部と、カンチレバーの振動を表すレバー振動信号を検出するセンサと、レバー振動信号から、非接触状態にある探針及び試料間の距離に応じて変化する特定周波数成分を抽出する抽出部と、特定周波数成分の振幅を検出する振幅検出部と、特定周波数成分の振幅が所定の目標値に一致するようにスキャナのフィードバック制御を行うフィードバック制御部とを備え、フィードバック制御の目標値は、探針と試料が非接触状態で近接しているときの特定周波数成分の振幅に設定されている。
本発明の一態様は、走査型プローブ顕微鏡による試料観察方法であり、探針を有するカンチレバーと試料を近づけて配置し、試料に対して試料側周波数の超音波を発射し、試料側周波数と異なるレバー側周波数の超音波をカンチレバーに発射し、カンチレバーの振動を表すレバー振動信号を検出し、レバー振動信号から、非接触状態にある探針及び試料間の距離に応じて変化する特定周波数成分を抽出し、特定周波数成分の振幅を検出し、特定周波数成分の振幅が所定の目標値に一致するようにカンチレバーと試料の距離のフィードバック制御を行い、フィードバック制御の目標値は、探針と試料が非接触状態で近接しているときの特定周波数成分の振幅に設定されている。
本発明において、特定周波数成分の信号は、試料側周波数及びレバー側周波数の差の絶対値の周波数成分である干渉信号でよい。或いは、特定周波数成分の信号は、試料側周波数成分の信号でよい。或いは、特定周波数成分の信号は、レバー側周波数成分の信号でよい。
本発明の走査型プローブ顕微鏡は、カンチレバーのQ値に拘わらず、探針が試料に接触しなくても試料表面を観察することができる。
以下に本発明の詳細な説明を述べる。以下の詳細な説明と添付の図面は発明を限定するものではない。代わりに、発明の範囲は添付の請求の範囲により規定される。
本発明によれば、上述したように、試料に対して試料側周波数の超音波が発射され、試料側周波数と異なるレバー側周波数の超音波がカンチレバーに発射される。そして、レバー振動信号から特定周波数成分が抽出される。特定周波数成分は、レバー振動信号に含まれており、非接触状態にある探針及び試料間の距離に応じて変化する所定の周波数成分である。さらに、特定周波数成分の振幅が検出され、特定周波数成分の振幅が所定の目標値に一致するようにスキャナのフィードバック制御が行われる。フィードバック制御の目標値は、探針と試料が非接触状態で近接しているときの特定周波数成分の振幅に設定されている。特定周波数成分の信号は、試料側周波数及びレバー側周波数の差の絶対値の周波数成分である干渉信号、或いは、試料側周波数成分の信号、或いは、レバー側周波数成分の信号でよい。
上記のように、本発明は、試料及びカンチレバーにそれぞれ試料側周波数及びレバー側周波数の超音波を発射し、レバー振動信号から特定周波数成分の振幅を検出する。そして、特定周波数成分の振幅が目標値に一致するようにフィードバック制御が行われる。本発明は、探針と試料が接触していなくても特定周波数成分の振幅が探針と試料の距離に応じて変化することに着目し、フィードバック制御の目標値を、カンチレバー(探針)と試料が非接触状態で近接しているときの特定周波数成分の振幅値に設定している。特定周波数成分の振幅変化は、カンチレバーのQ値に拘わらず発生し、例えば液中でも発生する。したがって、本発明によれば、カンチレバーのQ値に拘わらず、探針が試料に接触しなくても試料表面を観察することができる。
また、試料側周波数及びレバー側周波数の差の絶対値がカンチレバーの共振周波数に設定されてよい。これにより、カンチレバーが共振し、干渉による振幅が大きくなるので有利であり、より正確な観察ができる。
また、レバー側周波数が試料側周波数より小さく設定されてよい。これにより、探針と試料の距離に応じた振幅の変化がより明確に現れる。したがって、より正確な観察ができる。
上述したように、特定周波数成分は、試料側周波数及びレバー側周波数の差の絶対値の周波数成分である干渉信号でよい。抽出部は、特定周波数成分の信号として干渉信号を抽出してよく、振幅検出部は、干渉信号の振幅である干渉振幅を検出してよく、フィードバック制御の目標値は、探針と試料が非接触状態で近接しているときの干渉振幅に設定されてよい。干渉振幅を用いる場合のフィードバック制御の好適な構成を下記に説明する。
干渉振幅が目標値より小さいときと比較して、干渉振幅が目標値より大きいときのフィードバックゲインが大きくてよい。探針と試料を近づけたとき、探針試料間の距離が小さくなるほど干渉振幅が増大する。しかし、探針が試料に接触した後は干渉振幅が減少する。そして、接触側で干渉振幅が目標値を下回ると正常な測定が困難になる。本発明は、干渉振幅が目標値より小さいときと比較して、干渉振幅が目標値より大きいときのフィードバックゲインを大きくする。これにより、探針と試料の非接触状態を維持するように図ることができる。また、探針と試料が接触してしまった場合でも、探針と試料がより早く離れることができ、すなわち、より早く非接触状態を回復できる
また、干渉振幅が目標値より大きいときに、干渉振幅と目標値の差に応じてフィードバックゲインを増大させてよい。干渉振幅と目標値の偏差に比例してフィードバックゲインが増大してよい。これにより、干渉振幅と目標値の偏差が小さいときは、フィードバックゲインの調整量を小さくできる。また、偏差が大きくなるほど調整量を徐々に大きくして、調整効果を強めることができる。上記制御により、偏差の正負が切り替わるときにフィードバックゲインが急激に変化するといったことも避けられる。また、探針と試料が近づくほどフィードバックゲインを大きくでき、非接触状態を極力維持できる。こうして、ゲイン調整量を徐々に大きくする滑らか且つ安定した制御を行うことができる。
また、レバー振動信号からカンチレバーの撓みが検出されてよい。フィードバック制御は、撓みに基づいてカンチレバー及び試料を離れさせる処理を行ってよい。既に述べたように、探針と試料を近づけたとき、干渉振幅は非接触領域で増大し、続いて接触領域で減少する。そして、接触側で干渉振幅が目標値を下回ると正常な測定が困難になる。本発明は、探針と試料が過度に接触するのを回避するために、カンチレバーの撓みに着目している。ここで撓みは、平均撓みであり、カンチレバー振動のDC変位に相当し、探針が試料に接触すると撓みが生じる。したがって、撓みが生じたときにカンチレバーと試料を離れさせることにより、探針が試料に過度に接触するのを防止でき、探針と試料が非接触状態に復帰できる。
本発明では、カンチレバーの撓みに基づいて、検出された干渉振幅の検知信号が増大するように調整されてよい。調整された干渉振幅を用いてフィードバック制御が行われてよい。この構成により、フィードバック信号の生成前に干渉振幅の検知信号を増大方向に調整することにより、フィードバック制御を強めることができ、探針と試料を好適に離れさせることができる。
また、本発明では、撓みが所定の振幅調整用のしきい撓みより大きい場合、及び、干渉振幅が所定の振幅調整用のしきい振幅より大きい場合の少なくとも一方にて、干渉振幅の検知信号が調整されてよい。この構成では、撓みのしきい値に加えて干渉振幅のしきい値が用いられる。これにより、探針と試料の非接触状態を維持するように図ることができ、また、探針と試料が接触してしまった場合でも、それらがより早く非接触状態に復帰できる。
また、本発明では、カンチレバーの撓みに基づいて、カンチレバーと試料が離れるようにフィードバック信号が調整されてよい。撓みが所定のフィードバック信号調整用のしきい撓みより大きい場合に、カンチレバーと試料を強制的に引き離す値へとフィードバック信号が調整されてよい。この構成では、フィードバック信号を調整して増大させることにより、探針と試料が接触してしまった場合に、それらがより早く非接触状態に復帰できる。
上記の説明では、特定周波数成分が、試料側周波数及びレバー側周波数の差の絶対値の周波数成分としての干渉信号であった。これに対して、特定周波数成分が、試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の信号でよい。抽出部は、試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の信号を抽出してよく、振幅検出部は、試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の振幅を検出してよく、フィードバック制御の目標値は、探針と試料が非接触状態で近接しているときの試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の振幅に設定されてよい。この場合のフィードバック制御の好適な構成を下記に説明する。
試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の振幅が目標値より大きいときと比較して、試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の振幅が目標値より小さいときのフィードバックゲインが大きくてよい。探針と試料を近づけたとき、探針試料間の距離が小さくなるほど試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の振幅が減少する。本発明は、試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の振幅が目標値より小さいときにフィードバックゲインを大きくする。これにより、探針と試料の非接触状態を維持するように図ることができる。また、探針と試料が接触してしまった場合でも、探針と試料がより早く離れることができ、すなわち、より早く非接触状態を回復できる。
また、試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の振幅が目標値より小さいときに、試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の振幅と目標値の差に応じてフィードバックゲインを増大させてよい。試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の振幅と目標値の偏差に比例してフィードバックゲインが増大してよい。これにより、試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の振幅と目標値の偏差が小さいときは、フィードバックゲインの調整量を小さくできる。また、偏差が大きくなるほど調整量を徐々に大きくして、調整効果を強めることができる。上記制御により、偏差の正負が切り替わるときにフィードバックゲインが急激に変化するといったことも避けられる。また、探針と試料が近づくほどフィードバックゲインを大きくでき、非接触状態を極力維持できる。こうして、ゲイン調整量を徐々に大きくする滑らか且つ安定した制御を行うことができる。
また、レバー振動信号からカンチレバーの撓みが検出されてよい。フィードバック制御は、撓みに基づいてカンチレバー及び試料を離れさせる処理を行ってよい。探針と試料を近づけたとき、試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の振幅が減少する。振幅は、探針と試料が接触した後も減少を続ける。したがって、振幅からは、探針と試料の接触を判別できない。本発明は、探針と試料が過度に接触するのを回避するために、カンチレバーの撓みに着目している。ここで撓みは、平均撓みであり、カンチレバー振動のDC変位に相当し、探針が試料に接触すると撓みが生じる。したがって、撓みが生じたときにカンチレバーと試料を離れさせることにより、探針が試料に過度に接触するのを防止でき、探針と試料が非接触状態に復帰できる。
本発明では、カンチレバーの撓みに基づいて、検出された振幅の検知信号が減少するように調整されてよい。調整された振幅を用いてフィードバック制御が行われてよい。この構成により、フィードバック信号の生成前に振幅の検知信号を減少方向に調整することにより、フィードバック制御を強めることができ、探針と試料を好適に離れさせることができる。
また、本発明では、撓みが所定の振幅調整用のしきい撓みより大きい場合、及び、振幅が所定の振幅調整用のしきい振幅より小さい場合の少なくとも一方にて、振幅の検知信号が調整されてよい。この構成では、撓みのしきい値に加えて振幅のしきい値が用いられる。これにより、探針と試料の非接触状態を維持するように図ることができ、また、探針と試料が接触してしまった場合でも、それらがより早く非接触状態に復帰できる。
また、本発明では、カンチレバーの撓みに基づいて、カンチレバーと試料が離れるようにフィードバック信号が調整されてよい。撓みが所定のフィードバック信号調整用のしきい撓みより大きい場合に、カンチレバーと試料を強制的に引き離す値へとフィードバック信号が調整されてよい。この構成では、フィードバック信号を調整して増大させることにより、探針と試料が接触してしまった場合に、それらがより早く非接触状態に復帰できる。
また、試料側超音波の発生源が、試料ステージと、試料を保持する基体との間に配置されてよい。この構成は、微細な試料の表面形状測定に適している。超音波源から試料表面までの物質密度分布は、超音波の変調を引き起こし、形状測定精度を低下させる。本発明では、超音波発生源が、試料ステージと、試料を保持する基体との間に配置されている。したがって、超音波変調による精度低下を回避でき、形状測定を高精度に行える。
また、特定周波数成分の信号はフーリエフィルタを用いて抽出されてよい。本発明において、フーリエフィルタは、レバー振動信号から、特定周波数成分の信号におけるフーリエ級数の1倍波成分を再構成する。フーリエフィルタは、特定周波数成分の周波数を持つコサイン波信号をレバー振動信号に乗算し、1周期分の積分を行って第1DC値を取得し、コサイン波信号と同じ周波数のサイン波信号をレバー振動信号に乗算し、1周期分の積分を行って第2DC値を取得し、更に、第1DC値にコサイン波信号を乗算した信号と第2DC値にサイン波信号を乗算した信号との和を求めてよい。この構成により、特定周波数成分の信号を好適に抽出できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、本発明が、原子間力顕微鏡(AFM)に適用される。しかし、本発明はAFMに限定されず、他のSPMに適用されてもよい。
まず、本発明の原理を説明する。ここでは、本発明の特定周波数成分(レバー振動信号に含まれており、非接触状態にある探針及び試料間の距離に応じて変化する所定の周波数成分)が、試料側周波数及び前記レバー側周波数の差の絶対値の周波数成分である干渉信号である。ただし、特定周波数成分は他の成分でもよい。特定周波数成分は、例えば、後述するように試料側周波数成分又はレバー側周波数成分でよい。
図2及び図3を参照する。本発明者は、SPMにて超音波干渉を利用すると、探針が試料表面に接触していなくても試料表面を観察できると考えた。図2では、基板表面に生体分子などの試料が載せられており、試料基板下から周波数f1の超音波が発射されている。またカンチレバーに周波数f2の超音波が発射されている。周波数f1を試料側周波数と呼び、周波数f2をレバー側周波数と呼ぶ。周波数f1、f2の差の絶対値は、カンチレバーの共振周波数とほぼ等しく設定されている。
図示のように、試料に超音波を発射すると、超音波の波面は試料表面を覆う(或いは、なぞる)形になる。別の言い方をすると、試料表面が上下に超音波振動する(図中では振動が波線で示されているが、実際には縦波が生じる)。この超音波振動が、カンチレバー支持部から発射された超音波と探針先端部で干渉する。探針が試料に接触していなくても、両者がある程度近い距離にあれば、干渉が生じる。したがって、非接触で試料表面を観察することができる。
上記の干渉は非線形であり、周波数Δf(=|f1―f2|、試料側周波数f1とレバー側周波数f2の差の絶対値)を持つ信号として現れる。この周波数Δfの信号を、本発明では干渉信号と呼び、さらに干渉信号の振幅を干渉振幅と呼ぶ。周波数Δfがカンチレバーの共振周波数に設定されており、カンチレバーは周波数Δfで共振する。
図3は、図2の配置においてカンチレバーを試料基板に近づけていったときの干渉振幅の計測結果である。図3は、更に、カンチレバーの撓みも示している。本発明においてカンチレバーの撓みとは、平均の撓み量であり、カンチレバー振動のDC変位に相当する。図3において、横軸は探針試料距離(探針と試料の距離)であり、縦軸は、撓み(左側)及び干渉振幅(右側)である。
まず、横軸の探針試料距離について説明する。カンチレバーの振動は、干渉信号Δfの成分と、試料側周波数f1の成分と、レバー側周波数f2の成分を含む複合的な振動である。上記複合信号の最下点にて探針が試料に接触しているとき、探針試料距離が0である。探針と試料の接触は撓みから判別される。探針が試料に近づき、接触したときに、撓みが発生し始める。撓み開始点が、探針試料距離=0に相当し、探針試料距離の基準点になる。そして、基準点からの移動量が、探針試料距離である。
次に、図3を参照して、干渉振幅の特性を検討する。図3に示すように、探針を試料に近づけていったとき、探針が試料から約2nm離れたところから、カンチレバーが周波数Δfで振動し始め、干渉信号が現れた。探針を更に近づけると、干渉振幅が増大した。図3により、探針と試料が完全に非接触であっても、超音波の干渉振幅が探針試料距離に応じて変化することが明らかになり、そして、試料表面形状を検出できることが明らかになった。干渉振幅は、探針が試料に接触すると減少する。これについては後述にて検討する。
本発明は、上記原理に基づき、試料とカンチレバーの高さ方向(Z方向)のフィードバック制御を行う。フィードバック制御のセットポイント(目標値)が、図3に示すように、カンチレバーと試料が非接触状態で近接しているときの干渉振幅に設定される。これにより、カンチレバーと試料の距離を一定に保つフィードバック制御が可能になる。
上記の超音波による非線形干渉は、カンチレバーのQ値に拘わらず計測できる。したがって、本発明によれば、カンチレバーのQ値に拘わらず、探針が試料に接触しなくても試料表面を観察することができる。本発明は、従来は困難であった計測を可能にできる。例えば、液中における非接触での生体分子の形状観察が可能になる。
さらに、本発明によれば、生体等の柔らかい物体を非接触状態で計測できる。このことは、カンチレバーをより硬くできることを意味し、これにより、共振周波数を増大でき、SPMを高速化できる。
また、上述したように、本発明では、Δf(試料側周波数f1及びレバー側周波数f2の差の絶対値)がカンチレバーの共振周波数に一致するように好適に設定される。この周波数設定は、超音波の干渉によりカンチレバーを共振させ、干渉による振幅を増大するので有利であり、感度を増大し、より正確な観察を可能にする。ただし、本発明の範囲内で、周波数Δfがカンチレバーの共振周波数と一致していなくてもよく、例えば、周波数Δfが共振周波数よりある程度小さく設定されていてもよい。この場合でも、感度が下がるものの、超音波の干渉を利用した上記形状測定は可能である。
また、本発明は、従来の超音波式のSPMとは全く異なっている。従来は、探針と試料を接触させて、試料による超音波の変調を計測している。測定されるのは、試料内部の密度分布であり、表面形状の高さ情報は得られない。高さ情報を得るためのフィードバック制御も行われていない。また、超音波の変調は物体内部の菌や細胞核などの大きな物体でのみ生じるので、従来は大きな物体のみを計測可能である。
本発明は、物体内部での超音波の変調ではなく、物体表面の超音波振動による非線形干渉を非接触状態で計測する。この計測のため、本発明は、非接触状態での干渉振幅をフィードバック目標値に設定して、高さ方向のフィードバック制御を行い、高さの情報を得ている。これにより、本発明は、試料表面形状を測定し、特に生体分子等の微細な形状を測定する。
従来技術は、このような微細な表面形状は測定できない。微細な表面形状によっては、計測可能な超音波変調が生じないからである。
また、従来技術で利用される試料表面下の物体による超音波の変調は、本発明ではむしろ形状測定の障害になる。そこで、図2の例では、超音波発生源の上に基板が載せられ、基板に試料が載っている。密度分布を持たないガラス基板等を用いることにより、変調を避けられる。変調が起きない状況で測定を行うことにより、微細な物体の表面形状を測定できる。
要するに、従来技術と本発明では、測定対象の現象が異なり、それ故に構成も異なっている。従来技術は物体内部の密度分布を計測しており、そのために超音波の変調を計測している。本発明は、物体表面の超音波振動を試料高さ方向のフィードバック制御によって計測し、試料の表面形状の情報を得ており、従来技術とは全く異なっている。
本発明者は、基板に載せた試料を非接触でイメージングできるかどうかを実際に調べた。試料は、マイカ基板に載せたミオシンV分子(タンパク質)である。カンチレバーの共振周波数が590kHz(水中)であり、試料側周波数f1が1600kHzに設定され、レバー側周波数f2が1010kHzに設定された。図3に示したように、周波数Δfの干渉信号の振幅値に、セットポイントが設定された。そして、試料ステージのXY走査時に、干渉振幅がセットポイントに一致するように試料ステージのZ方向のフィードバック走査が行われた。このZ方向の走査量が試料の高さ情報として用いられた。その結果、ミオシンVの像が観察され、非接触イメージングが可能であることが示された。
「フィードバック制御の改良」
本発明では、超音波を使ったフィードバック制御が、好ましくは、更に下記に説明されるように改良される。
図4は、図3の干渉振幅曲線及び撓み曲線を単純化した図である。図3及び図4に示されるように、探針試料距離の関数として干渉振幅は、2相性を示す。すなわち、探針試料距離が小さくなる過程で、干渉振幅が増大し、それから低下する。より詳細には、干渉振幅は非接触領域で増大し、接触領域で低下する。そのため、干渉振幅は、非接触領域の点aと接触領域の点bとの2点で、フィードバック制御のセットポイントと一致する。
フィードバック制御は、探針試料距離が接触領域にある限り、正しい方向にフィードバックをかけることができる。また、探針試料距離が接触領域に入っても、点bより大きければ、フィードバックが正しい方向に働く。
しかし、例えば背の高い試料をイメージングした場合には、点bの位置を超えて探針が試料に強く接触してしまう可能性がある。このような現象が生じると、フィードバッ走査が正しい方向に行われず、探針と試料の接触がますます強くなり、イメージングが不可能になる。
このような事態を避けるため、非接触状態をできる限り保持することが望まれる。また、接触状態が発生した場合でも、素早く非接触状態に復帰することが望まれる。本発明は、このような要求に応えるために、フィードバック制御を更に改良する。
(1)フィードバックゲインの可変制御
本発明は、干渉振幅がセットポイントより小さいときと比較して、干渉振幅が目標値より大きいときのフィードバックゲインを増大させる。これにより、干渉振幅がセットポイントより大きくなったときに、探針と試料をより早く離れさせることができる。
好適には、干渉振幅が目標値より小さいときは、フィードバックゲインが固定されていてよく、干渉振幅が目標値より大きいときに、干渉振幅と目標値の差に応じてフィードバックゲインが増大される。干渉振幅と目標値の差に比例してフィードバックゲインが増大してよい。
これにより、干渉振幅と目標値の偏差が小さいときは、フィードバックゲインの調整量を小さくできる。また、偏差が大きくなるほど調整量を徐々に大きくして、調整効果を強めることができる。上記制御により、偏差の正負が切り替わるときにフィードバックゲインが急激に変化するといったことも避けられる。また、探針と試料が近づくほどフィードバックゲインを大きくして、非接触状態を極力維持できる。こうして、ゲイン調整量を徐々に大きくする滑らか且つ安定した制御を行うことができる。
(2)カンチレバーの撓みを利用した制御
干渉振幅がセットポイント付近にあるときは、上記の制御により、非接触状態が極力保たれる。しかし、試料形状等が原因で、干渉振幅がセットポイントから離れてしまうこともあり得る。このような場合に下記の制御が有効に機能する。
本発明は、カンチレバーの平均の撓みに着目する。カンチレバーが試料に接触すると撓みが生じる。したがって、撓みが生じたときにカンチレバーと試料を離れさせることにより、探針が試料に過度に接触するのを防止できる。
具体的構成としては、干渉振幅の検出値が調整され、調整後の干渉振幅を用いてフィードバック信号が生成されてよい。また、フィードバック信号の生成時又は生成後に、フィードバック信号が調整されてよい。ここでフィードバック信号とは、干渉振幅を目標値に保つようにアクチュエータ(スキャナ)を駆動するための制御信号である。具体例として下記の制御が考えられる。これら制御を実現する構成については、後述の実施の形態で詳しく説明する。
(2.1)上限振幅A1、第1上限撓みD1
図4に示すように、干渉振幅の上限設定値として、上限振幅A1が設定される。また、撓みの1段目の上限設定値として、第1上限撓みD1が設定される。上限振幅A1は、本発明の振幅調整用のしきい振幅に相当し、第1上限撓みD1は、本発明の振幅調整用のしきい撓みに相当する。第1上限撓みD1は、図示のように、探針の接触直後に対応する小さい値に設定されている。
本発明によれば、干渉振幅が上限振幅A1より大きくなるか、あるいは、撓みが第1上限撓みD1より大きくなると、干渉振幅の検知信号が増大するように調整される。これにより、探針の接触寸前又は接触直後に振幅検知信号の増大調整が行われる。したがって、探針と試料の非接触状態を維持するように図ることができ、また、探針と試料が接触してしまった場合でも、より早く非接触状態に復帰できる。
ここでは干渉振幅の検知信号が調整されたが、既に述べた通り、干渉振幅の代わりにフィードバック信号が調整されてもよい。
(2.2)第2の上限撓みD2
また、図4に示されるように、撓みの2段目の上限設定値として、第2上限撓みD2が設定される。第2上限撓みD2は、第1上限撓みD1より大きく設定され、ノイズ等を考慮しても確実に接触状態が生じているときの撓みに設定されている。第2上限撓みD2は、本発明のフィードバック信号調整用のしきい撓みに相当する。
本発明によれば、カンチレバーの撓みが第2上限撓みD2より大きい場合、カンチレバーと試料を強制的に引き離す値へとフィードバック信号が調整される。これにより、探針と試料が接触してしまった場合に、より早く非接触状態を回復できる。探針と試料が図4の点bを超えて接触してしまう事態を好適に回避できる。
ここではフィードバック信号が調整されたが、既に述べた通り、フィードバック信号の代わりに干渉振幅の検知信号が調整されてもよい。
以上に本発明の原理について説明した。次に、本発明のSPMの具体的構成例を説明する。既に述べたように、本実施の形態では、本発明がAFMに適用される。また、本実施の形態では、本発明の特定周波数成分が、上述の干渉信号である。
図5は、本実施の形態に係るAFMの構成を示している。AFM1は、カンチレバー3と、試料が載せられる試料ステージ5とを有し、試料ステージ5はXYZ方向のスキャナ7に搭載されている。
カンチレバー3は、窒化シリコン製であり、自由端に探針を有しており、レバー側圧電体9に取り付けられている。また、試料ステージ5には試料側圧電体11が載せられており、試料側圧電体11に試料基板13が載せられ、試料基板13に試料が載せられる。
試料側圧電体11及びレバー側圧電体9は、本発明のレバー側超音波発射部及び試料側超音波発射部に対応し、試料側周波数f1及びレバー側周波数f2の超音波を、試料(基板)及びカンチレバー3にそれぞれ発射する。試料側周波数f1とレバー側周波数f2は異なっており、周波数f1、f2の差の絶対値Δf(図2参照)がカンチレバー3の共振周波数に設定されている。また、本実施の形態ではf1>f2に設定されている。
試料側圧電体11は、超音波を発生できるような薄い板状の圧電体であり、スキャナ7に用いられる圧電体とは異なっている。同様に、レバー側圧電体9も、超音波を発生できるような薄い板状の圧電体であり、一般的なレバー励振用の圧電体とは異なっている。
試料側圧電体11及びレバー側圧電体9は、発振器15に接続されており、発振器15から供給される信号に従って振動することにより超音波を発生する。より詳細には、発振器15は、試料側のドライバ及びレバー側のドライバに、発射すべき超音波の周波数f1、f2を持つ励振信号を供給する。そして、試料側ドライバ及びレバー側ドライバが、それぞれの励振信号を増幅して、試料側圧電体11及びレバー側圧電体9に供給する。
AFM1は、さらに、レーザユニット21、センサ23、抽出部25、振幅検出部27、フィードバック制御部29、コンピュータ31及びモニタ33を有する。
センサ23は、レーザユニット21と共に、光てこ式の変位センサを構成している。レーザユニット21が、レーザ光をカンチレバー3に照射する。レーザ光はカンチレバー3で反射してセンサ23に届く。センサ23は、フォトダイオードで構成されており、カンチレバー3の変位信号を出力する。変位信号は、カンチレバー3の振動を表しており、本発明のレバー振動信号として処理される。図では、センサに関連したレンズ等の光学系の構成は省略されている。
抽出部25は、カンチレバー3のレバー振動信号から、干渉信号を抽出する。本発明において、干渉信号は、既に説明したように、試料側周波数f1及びレバー側周波数f2の差の絶対値の周波数成分の信号であり、すなわち、周波数Δf(=|f1−f2|)の信号である。本発明の原理として説明したように、試料に超音波が発射されると、超音波の波面が試料表面を覆い、試料表面が超音波振動する。この超音波振動が、カンチレバー3に発射された超音波と非線形に干渉する。この干渉により干渉信号が生じる。抽出部25は、ローパスフィルタであってもよい。抽出部25は、より好ましくは、後述するフーリエフィルタで構成される。
振幅検出部27は干渉信号の振幅、すなわち干渉振幅を検出する。干渉振幅は、フィードバック制御部29へと供給される。フィードバック制御部29は、干渉振幅が予め設定されたセットポイント(目標値)と一致し続けるように、スキャナ7をZ方向に制御する。フィードバック制御部29は、干渉振幅からセットポイントを減算して偏差信号を生成する減算器と、偏差信号を増幅するPID回路とを有し、スキャナ7を制御するためのフィードバック信号を生成する。フィードバック制御部29の構成は後述にて更に詳細に述べる。
スキャナ7は、圧電素子(ピエゾ素子)で構成されており、試料ステージ5をX、Y、Z方向に動かして、試料をカンチレバー3に対して相対的に走査する。XY方向は、水平面上で直交する方向であり、Z方向は鉛直方向であり、試料の凹凸方向(高さ方向)である。XY方向の走査はコンピュータ31により制御され、Z方向の走査は上記のようにフィードバック制御部29により制御される。より詳細には、制御信号がスキャナドライバに供給され、増幅されてスキャナ7に供給される。
コンピュータ31は、パーソナルコンピュータ等で構成され、AFM1の全体を制御する。コンピュータ31はユーザインターフェース機能も提供する。ユーザの各種の指示がコンピュータ31に入力され、コンピュータ31はユーザの入力に従ってAFM1を制御する。コンピュータ31は、発振器15を制御して、試料側周波数f1及びレバー側周波数f2を制御する。フィードバック制御のセットポイントも、コンピュータ31からフィードバック制御部29に供給される。また、コンピュータ31は試料表面の画像を生成してモニタ33に出力する。
次に、AFM1の動作を説明する。コンピュータ31に制御されて、スキャナ7が、XY方向に試料ステージ5を走査する。XY方向の走査中、発振器15が、試料側周波数f1の励振信号及びレバー側周波数f2の励振信号を試料側圧電体11及びレバー側圧電体9にそれぞれ供給し、試料側圧電体11及びレバー側圧電体9が試料側周波数f1の超音波及びレバー側周波数f2の超音波を試料及びカンチレバー3にそれぞれ発射する。このようにして、試料及びカンチレバー3に超音波を発射しながら、カンチレバー3と試料が相対的にXY方向に走査される。
XY方向の走査中、センサ23がカンチレバー3のレバー振動信号を検出し、抽出部25に供給する。抽出部25がレバー振動信号から干渉信号を抽出して振幅検出部27に供給し、振幅検出部27が干渉振幅を検出してフィードバック制御部29に供給する。フィードバック制御部29は、検出された干渉振幅がセットポイントと一致するようにフィードバック制御を行う。
フィードバック制御では、干渉振幅とセットポイントの差に応じたフィードバック信号が生成され、スキャナ7に供給される。スキャナ7は、フィードバック信号に従ってZ方向に動作する(より詳細にはスキャナドライバがフィードバック信号に従ってスキャナ7を駆動する)。
図3を用いて説明したように、干渉振幅は、カンチレバー3と試料との距離に応じて変化する。したがって、フィードバック制御により、カンチレバー3と試料の距離が一定に保たれる。
このようにして、カンチレバー3と試料の距離を一定に保ちながら、XY走査が行われる。フィードバック信号は、コンピュータ31にも供給される。フィードバック信号は、スキャナ7をZ方向に駆動する信号であり、試料のZ方向の高さに対応している。また、試料上のXY方向の位置は、コンピュータ31により制御されている。コンピュータ31は、XY走査の制御データと、入力されるフィードバック信号とに基づいて、試料表面の画像を生成してモニタ33に表示する。3次元画像が好適に生成され、表示される。
「抽出部」
次に、図5のAFM1における抽出部25の構成について更に説明する。カンチレバー3のレバー振動信号は、レバー側周波数f2の成分と、試料側周波数f1の成分と、超音波の非線形干渉により生じた周波数Δf(=|f1−f2|)の成分とを含んでいる。周波数Δfの成分が、本発明の干渉信号であり、抽出部25により抽出される。抽出部25はローパスフィルタであってもよいが、好ましくは抽出部25は、下記のフーリエフィルタを有する。
図6は、本発明にて好適に用いられる抽出部25の構成を示している。発振器15は、図5を用いて説明したように、試料側圧電体11及びレバー側圧電体9に試料及びカンチレバー3に超音波を発射させるための構成であり、試料側周波数f1の励振信号sin(2πf1t)を試料側圧電体11に供給し、レバー側周波数f2の励振信号sin(2πf2t)をレバー側圧電体9に供給する。
抽出部25は、フィルタ発振器41を有する。フィルタ発振器41は発振器15と同期しており、抽出のための基準の信号として、周波数Δf(=|f1−f2|)のコサイン波信号及びサイン波信号を生成する。フィルタ発振器41は発振器15と一体に構成されてもよい。
コサイン波信号cos(2πΔft)は、乗算器43にてカンチレバー3のレバー振動信号に掛けられ、更に積分器45にて1周期分の積分が行われて、第1DC値aが得られる。また、サイン波信号sin(2πΔft)が乗算器47にてレバー振動信号に掛けられ、更に積分器49にて1周期分の積分が行われて、第2DC値bが求められる。
次に、乗算器51が、第1DC値aに、コサイン波信号cos(2πΔft)を乗算し、a・cos(2πΔft)を求める。乗算器53は、第2DC値bに、サイン波信号sin(2πΔft)を乗算し、b・sin(2πΔft)を求める。加算器55が、a・cos(2πΔft)とb・sin(2πΔft)の和を求め、干渉信号として出力する。
このような構成により、抽出部25は、レバー振動信号から、f1やf2 の振動成分を除去し、周波数Δfの成分だけを抽出した振動信号である干渉信号を得る。図6の構成は、周波数Δfを持つ信号におけるフーリエ級数の1倍波成分を再構成することにより、レバー振動信号から干渉信号を抽出している。本発明では、このようなフィルタを、フーリエフィルタと呼ぶ。このようなフィルタは、通常のローパスフィルタより高速に干渉信号を抽出できる。また、周波数Δfのサイン波信号及びコサイン波信号は、フィルタ発振器41からの供給される信号であり、ほとんどノイズを持たない。したがって、フーリエフィルタを用いることにより、高速で、ノイズの少ない干渉信号を抽出できる。
「振幅検出部」
振幅検出部27は、既に説明したように、干渉信号の振幅、すなわち本発明の干渉振幅を検出する。振幅検出部27は、(a2+b21/2(図6におけるaの2条とbの2条の和の平方根)を求める回路であってよい。しかし、より好ましくは、振幅検出部27の回路は、干渉信号の1周期内の最高点(山)と最低点(谷)(又は最低点と最高点)が出力されてから半周期以内の最高点及び最低点の差を出力する。これにより、振幅検出を高速化できる。
上記の高速検出を実現するため、振幅検出部27は、例えば、位相シフタとゼロクロス比較回路を有してよい。干渉信号が、位相シフタによって90°遅らされる。そして、遅延信号がゼロクロス比較回路を用いて処理され、ゼロクロス点にてパルス信号が生成される。このパルス信号がサンプリングタイミングとして用いられて、干渉信号のサンプリングが行われ、最高点と最低点の値が得られる。最高点と最低点の差が干渉振幅として出力される。この振幅計測技術は、特開2003−42931号公報に開示されており、この文献は、引用することにより全体としてここに組み込まれているものとする。
「フィードバック制御部」
図7は、本実施の形態におけるフィードバック制御部29の好適な構成を示している。フィードバック制御部29は、減算回路61、ダイナミックPID回路63及びフィードバックゲイン調整回路65を有している。
減算回路61は、セットポイントから干渉振幅を減算することにより、偏差信号を求める。既に説明したように、セットポイントはコンピュータ31から供給される。偏差信号は、ダイナミックPID回路63及びフィードバックゲイン調整回路65に入力される。
ダイナミックPID回路63は、ゲインを変更可能なPID回路であり、減算回路61から入力される偏差信号を増幅する。フィードバックゲイン調整回路65はダイナミックPID回路63のゲインを調整する。
フィードバックゲイン調整部65は、偏差信号が正のとき(干渉振幅が目標値より小さいとき)と比較して、偏差信号が負のとき(干渉振幅が目標値より大きいとき)のフィードバックゲインを大きくする。具体的には、偏差信号が正のときは、フィードバックゲインの調整は行われず、したがって、フィードバックゲインが固定されている。偏差信号が負のときは、偏差信号に応じてフィードバックゲインが増大される。この調整は、偏差信号に比例してフィードバックゲインを増大させる。
上記のフィードバック制御により、図4を用いて説明した利点が得られる。図4に示されるように、探針を試料に近づけていったとき、干渉振幅は非接触領域で増大してセットポイントを超え、極値に達し、接触領域に至る。本発明によれば、干渉振幅がセットポイントより小さいときと比較して、干渉振幅がセットポイントより大きいときのフィードバックゲインが大きくなる。干渉振幅がセットポイントを超えて接触領域が近づくと、フィードバックゲインが増大され、探針を試料から引き離す制御が強められる。したがって、非接触状態を極力維持することができる。
また、本発明では、調整の対象が、PID回路のフィードバックゲインである。これにより、調整効果を瞬時に得ることができ、このことも非接触領域の維持に寄与できる。
また、本発明では、干渉振幅がセットポイントより大きいときに、偏差信号に応じて、より詳細には偏差信号に比例して、フィードバックゲインが増大する。この制御によれば、干渉信号がセットポイントを超えても、偏差信号が小さいときは、フィードバックゲインの調整量を小さくできる。偏差信号が大きくなるほど調整量を徐々に大きくして、調整効果を強めることができる。上記制御により、偏差信号が正から負になるときにフィードバックゲインが急激に変化するといったことを避けられる。また、探針と試料が近づくほどフィードバックゲインを大きくできる。こうして、ゲイン調整量を徐々に大きくする滑らか且つ安定した制御を行うことができる。
ここで、ダイナミックPID回路63でのゲイン調整について更に説明する。PID回路では、P(比例)、I(積分)、D(微分)の3系統にて偏差信号に対して別々にゲインがかけられる。ゲインがかかった後で、P、I、Dの成分が加算されて、加算信号がフィードバック信号として出力される。
本実施の形態では、P、I、Dのゲインを別々に調整することが好適である。探針と試料の接触状態を避けるためには、ダイナミックPID回路63が、通常のP、I、Dのゲインの割合を維持しない方がよい。通常のゲイン配分は、偏差信号が正のとき(つまり接触が起こりそうもないとき)に適用される。通常のゲイン配分では、I(積分)が大きな割合を占める。しかし、Iは応答が遅いので、緊急時にはP(比例)を少し強調することが有効である。そこで、偏差信号が負のときは、Iのフィードバックゲインと比較してPのフィードバックゲインが大きく増大するようにフィードバックゲインが好適に調整される。
また、PID回路におけるP、I、Dの3系統のうち、Iのゲイン調整回路部は積分回路の前段に置くのが適切である。後段に置くと、積分値(試料の高さに相当する電圧)そのものが補正されてしまうからである。Dのゲインは微分回路の前段でも後段でも構わない。ただし、微分回路自身のゲインを高周波まで上げることは困難なので、大きな電圧を微分回路が扱わなくても済むように微分回路の後段にゲイン回路を入れるのが好ましい。以上により、ゲイン調整はIについては積分回路の前段で、Dについては微分回路の後段で好適に行われる。
なお、微分回路の前段にてDのゲイン調整を行うのであれば、P、I、Dのゲインが別々に調節されなくてよい。この場合、PID回路とその前段の減算回路の間に、1つの可変ゲイン回路がフィードバックゲイン調整回路として置かれてよい。
また、上記の説明では、フィードバック制御部29がPID回路を備えていた。しかし、フィードバック制御部29はこれに限定されない。例えば、フィードバック制御部29がPI回路で構成されてもよい。この場合も、フィードバックゲインが、干渉振幅とセットポイントの偏差に応じて好適に調整される。
「第2の実施の形態」
次に、本発明の別の実施の形態を説明する。この実施の形態は、図4を用いて説明したようにカンチレバーの撓みを利用したフィードバック制御を行う。
最初の実施の形態で図7を用いて説明したように、フィードバックゲインの調整により、探針と試料の非接触状態を保つように図ることができる。しかし、例えば試料の凹凸が大きい場合には、探針と試料が接触する可能性がある。このような場合を考慮し、本実施の形態は、非接触状態を極力維持し、仮に接触状態が発生しても極力早く非接触状態に復帰できるフィードバック制御を実現する。
図8は、本実施の形態のAFMを示している。図8のAFM71は、図5のAFM1の構成に加えて、撓み検出部73を有している。また、フィードバック制御部75が、図5のフィードバック制御部29と異なっている。撓み検出部73は、カンチレバー3のレバー振動信号から、カンチレバー3の平均の撓みを検出し、撓みをフィードバック制御部75に出力する。
フィードバック制御部75には、コンピュータ31から上限振幅A1、第1上限撓みD1及び第2上限撓みD2がセットポイントと共に供給される。フィードバック制御部75は、これらの設定値と、干渉振幅及び撓みといった検出値を用いて、フィードバック制御を行う。
図9は、撓み検出部73及びフィードバック制御部75の構成を示している。図示のように、撓み検出部73は、ローパスフィルタ81及びハイパスフィルタ83を有する。カンチレバー3のレバー振動信号がローパスフィルタ81にて処理されて、DC変位が得られる。DC変位が平均の撓み量に相当する。撓み信号は更にハイパスフィルタ83に通され、低周波ノイズが除去されて、フィードバック制御部75へと出力される。
フィードバック制御部75は、図5のフィードバック制御部29と同様に減算回路61、ダイナミックPID回路63及びフィードバックゲイン調整回路65を有する。フィードバック制御部75は、更に、振幅調整部91及びフィードバック信号調整部93を有する。
振幅調整部91は、減算回路61の前段で干渉振幅の検知信号を調整する回路である。振幅調整部91は、比較器101、103、OR回路105、スイッチ回路107及び乗算回路109を有する。
比較器101には、干渉振幅及び上限振幅A1(図4)が入力される。比較器101は、これら信号を比較し、干渉振幅が上限振幅A1より大きい場合に「1」をOR回路105へ出力する。
比較器103には、撓みの検出値と第1上限撓みD1(図4)が入力される。比較器103は、これら信号を比較し、撓みの検出値が第1上限撓みD1より大きい場合に「1」をOR回路105へ出力する。
OR回路105の出力は、比較器101、103からの入力に応じて変わり、OR回路105の出力に応じてスイッチ回路107が切り替わる。スイッチ回路107の出力は、干渉振幅のゲインとして乗算回路109に供給される。
比較器101、103の両方から「0」が入力されている場合、OR回路105の出力も「0」であり、スイッチ回路107が「×1」側に切り替わる。これにより、ゲイン「1」が乗算回路109に出力される。乗算回路109では、干渉振幅の検知信号がゲイン「1」と掛けられ、したがって、干渉振幅の検知信号がそのまま調整されずに減算回路61へと供給される。
比較器101、103の少なくとも1方から「1」が入力されている場合、OR回路105の出力が「1」であり、スイッチ回路107が「×g」側に切り替わる。これにより、ゲイン「g(>1)」が乗算回路109に出力される。乗算回路109では、干渉振幅の検知信号がゲイン「g」と掛けられ、したがって、干渉振幅の検知信号がg倍に増大する。この調整後の干渉振幅が、減算回路61へと供給される。
フィードバック信号調整部93は、ダイナミックPID回路63の後段でフィードバック信号(Z方向のスキャナ制御信号)を調整する回路である。フィードバック信号調整部93は、比較器111、スイッチ回路113及び加算回路115を有する。
比較器111には、撓みの検出値と第2上限撓みD2(図4)が入力される。比較器111の比較の結果に応じてスイッチ回路113が切り替えられる。スイッチ回路113の出力は、加算回路115に供給されて、ダイナミックPID回路63で生成されたフィードバック信号に加算される。
撓みの検出値が第2上限撓みD2より小さい場合、比較器111の出力は「0」であり、スイッチ回路113はアース側に切り替えられる。スイッチ回路113の出力はゼロになり、加算回路115は、フィードバック信号をそのまま調整せずにスキャナ7へ向けて出力する。より詳細には、フィードバック信号はスキャナ7のドライバへと出力される。
撓みの検出値が第2上限撓みD2より大きい場合、比較器111の出力は「1」であり、スイッチ回路113は引離し設定値側へ切り替えられる。引離し設定値は、予め設定された電圧値であり、探針と試料を確実かつ早急に引き離せる値に設定されている。引離し設定値も、コンピュータ31からフィードバック制御部75に供給されてよい。探針と試料が離れるときはスキャナ7が後退するので、引離し設定値の電圧は負(−)側の大きな値に設定されている。
撓みの検出値が第2上限撓みD2より大きい場合、スイッチ回路113が引離し設定値側へ切り替えられ、引離し設定値が加算回路115にてフィードバック信号に加算され、これによりフィードバック信号が調整される。加算回路115が調整後のフィードバック信号をスキャナ7に供給し、スキャナ7が、フィードバック信号に従って探針と試料を引き離す。
以上に図8の実施の形態について説明した。上限振幅A1は、フィードバック制御のセットポイントより大きな値に設定されており、また、第1上限撓みD1より第2上限撓みD2が大きく設定されている(図4参照)。これらの設定値は、AFM71を下記のように動作させる。
まず、干渉振幅がセットポイント付近の値であるときは、上限振幅A1には届かない。この領域では、干渉振幅とセットポイントの偏差に応じてフィードバックゲインが調整される。偏差が負のときは、偏差に応じてフィードバックゲインが増大し、これにより非接触状態の維持が図られる。
しかし、試料の凹凸が大きいときなどに、探針が試料に接触しそうになると、干渉振幅がセットポイントから離れて大きくなり、上限振幅A1を超える。さらに探針が試料に少し接触すると、撓み検出値が第1上限撓みD1を超える。振幅調整部91は、干渉振幅が上限振幅A1を超えるか、撓み検出値が第1上限撓みD1を超えた場合に、干渉振幅の検知信号にゲインg(>1)を掛ける。このようにして、探針と試料が接触しそうになったか、少し接触したときには、振幅調整によって探針と振幅が引き離される。
上記制御が間に合わず、探針と試料が強く接触したとする。この場合、干渉振幅は減少するが、平均の撓み量は大きくなる。したがって、このような状況では撓み量を制御に使うことが有利である。そこで、第2上限撓みD2(2段目の撓み上限値)が、ノイズ等を考慮しても確実に探針が試料に接触しているときの撓み値に設定されている。撓み検出値が第2上限撓みD2を超えた場合、フィードバック信号調整部93が、探針と試料を強制的に引き離せるような大きな値へと、フィードバック信号を調整する。これにより、探針と試料が接触してしまった場合に、より早く非接触状態を回復できる。
上記のフィードバック信号調整部93は、ダイナミックPID回路63と並列に配置されている。本実施の形態によれば、探針と試料が強く接触し、強制的な引離しが必要な場合には、並列な構成によってフィードバック信号を即座に大きくできる。
なお、本発明の範囲内で、同様の効果が得られる範囲で、干渉信号とフィードバック信号のどちらが調整されてもよい。干渉振幅又はフィードバック信号は、本実施の形態のように生成後に調整されてもよく、或いは、生成処理の中で調整されてもよい。また、同様の効果が得られる範囲で、他の信号が調整されてもよい。例えば、上限振幅A1及び第1上限撓みD1に基づく調整が、フィードバック信号に対して行われてもよい。また、第2上限撓みD2に基づく調整が、振幅信号に対して行われてもよい。上限振幅A1及び第1上限撓みD1が組み合わされなくてもよく、すなわち、上限振幅A1及び第1上限撓みD1の一方が用いられてよい。
「干渉信号以外の特定周波数成分」
(試料側周波数f1又はレバー側周波数f2の成分)
本発明は、レバー振動信号から、非接触状態にある探針及び試料間の距離に応じて変化する特定周波数成分を抽出し、特定周波数成分の振幅のフィードバック制御を行う。特定周波数成分は、上記の干渉信号以外の信号でもよい。以下に説明するように、特定周波数成分として、試料側周波数成分又はレバー側周波数成分を利用可能である。
カンチレバーは、非線形干渉が起こる前(すなわち、カンチレバーと試料が近接していないとき)、試料側周波数f1及びレバー側周波数f2で振動している。すなわち、レバー振動の検出信号が試料側周波数f1の成分及びレバー側周波数f2の成分を含んでいる。探針が試料表面に非接触で接近すると、上述のように非線形干渉が起こり、周波数Δf(=|f1−f2|)の振動が現れる。この観察において、本発明者は、試料側周波数f1の振動とレバー側周波数f2の振動も同時に調べた。その結果、探針が試料表面に非接触で接近すると、試料側周波数f1の成分の振動の振幅が減少することが見つかった。ここでは、試料側周波数f1の成分の振幅を、単にf1振幅と呼ぶ。
図10は、図2の配置においてカンチレバーを試料基板に近づけていったときのf1振幅の測定結果である。図10のように、カンチレバーが試料基板に近づくと、f1振幅が減少する。このような現象が生じるのは、試料側周波数f1の振動エネルギーの一部が干渉信号(周波数Δf=|f1−f2|)の振動エネルギーに変換されているためと考えられる。すなわち、f1振幅の変化も、超音波干渉によって生じていると考えられる。
上記のように、試料側周波数f1の成分の信号も、非接触状態で探針試料間の距離に応じて変換する成分であり、本発明の特定周波数成分に相当する。そして、f1振幅を用いたフィードバック制御により、試料形状の非接触イメージングが可能である。具体的には、フィードバック制御の目標値が、非接触状態で探針と試料が近接しているときのf1振幅に設定され、f1振幅の検出値が目標値に一致するようにフィードバック制御が行われ、これにより非接触イメージングが行われる。
本発明者が行った測定結果では、f1振幅の変化は、上述の干渉振幅(周波数|f1−f2|)の変化よりも安定していた。この点で、試料側周波数f1の成分をフィードバック制御に用いることは有利であると考えられる。
「フィードバック制御の改良(f1振幅を用いる場合)」
また、図3に示したように、干渉信号は、2相性を有しており、すなわち、非接触領域で増大、それから接触領域で減少した。これに対して、f1振幅は、探針が試料表面に接触した後も更に減少し続ける特性を有し、つまり2相性を示さない。そのため、振幅のみからは、探針が試料表面に接触したかどうかが分からない。この場合でも、干渉信号を用いる場合と同様の原理を適用することによりフィードバック制御が好適に改良され、非接触状態が好適に保たれる。
ただし、探針と試料が近づくとき、干渉振幅が増大するが、f1振幅は減少する。この相違に伴い、フィードバック制御も変更される。以下、f1振幅を用いる場合のフィードバック制御の改良について説明する。
(1)フィードバックゲインの可変制御
本発明は、f1振幅がセットポイントより大きいときと比較して、f1振幅が目標値より小さいときのフィードバックゲインを増大させる。好適には、f1振幅が目標値より大きいときは、フィードバックゲインが固定されていてよい。f1振幅が目標値より小さいときに、f1振幅と目標値の差に応じてフィードバックゲインが増大される。f1振幅と目標値の差に比例してフィードバックゲインが増大してよい。
上記のゲイン可変制御により、干渉信号を用いる場合と同様の利点が得られる。すなわち、f1振幅がセットポイントより大きくなったときに、探針と試料をより早く離れさせることができる。さらに、ゲイン調整量を徐々に大きくする滑らか且つ安定した制御を行うことができる。
(2)カンチレバーの撓みを利用した制御
干渉振幅を用いる場合、撓みを利用した制御が好適に行われた。f1振幅を用いる場合にも撓みが好適に利用される。すなわち、本発明は、撓みが生じたときにカンチレバーと試料を離れさせることにより、探針が試料に過度に接触するのを防止できる。具体的には、f1振幅の検出値が調整され、調整後のf1振幅を用いてフィードバック信号が生成されてよい。また、フィードバック信号の生成時又は生成後に、フィードバック信号が調整されてよい。ここでフィードバック信号とは、f1振幅を目標値に保つようにアクチュエータ(スキャナ)を駆動するための制御信号である。具体例を下記に挙げる。
(2.1)下限振幅A2、第1上限撓みD1
図11に示すように、f1振幅の下限設定値として、下限振幅A2が設定される。また、撓みの1段目の上限設定値として、第1上限撓みD1が設定される。下限振幅A2は、本発明の振幅調整用のしきい振幅に相当し、第1上限撓みD1は、本発明の振幅調整用のしきい撓みに相当する。第1上限撓みD1は、図示のように、探針の接触直後に対応する小さい値に設定されている。
本発明によれば、f1振幅が下限振幅A2より小さくなるか、あるいは、撓みが第1上限撓みD1より大きくなると、f1振幅の検知信号が減少するように調整される。これにより、探針の接触寸前又は接触直後に振幅検知信号の減少調整が行われる。したがって、探針と試料の非接触状態を維持するように図ることができ、また、探針と試料が接触してしまった場合でも、より早く非接触状態に復帰できる。
ここではf1振幅の検知信号が調整されたが、既に述べた通り、f1振幅の代わりにフィードバック信号が調整されてもよい。
(2.2)第2の上限撓みD2
また、図11に示されるように、撓みの2段目の上限設定値として、第2上限撓みD2が設定される。第2上限撓みD2は、第1上限撓みD1より大きく設定され、ノイズ等を考慮しても確実に接触状態が生じているときの撓みに設定されている。第2上限撓みD2は、本発明のフィードバック信号調整用のしきい撓みに相当する。本発明によれば、カンチレバーの撓みが第2上限撓みD2より大きい場合、カンチレバーと試料を強制的に引き離す値へとフィードバック信号が調整される。これにより、探針と試料が接触してしまった場合に、より早く非接触状態を回復できる。
ここではフィードバック信号が調整されたが、既に述べた通り、フィードバック信号の代わりにf1振幅の検知信号が調整されてもよい。
上記のように、f1振幅のフィードバック制御でも撓みが好適に用いられる。特に、干渉振幅は2相性を示すが、f1振幅は2相性を示さない。したがって、f1振幅のみからは、探針と試料の接触を判別できない。しかし、本発明は、撓みを利用して、上述のような処理を行い、探針が試料に過度に接触するのを防止でき、探針と試料が非接触状態に好適に復帰できる。
「f1振幅を用いるSPMの構成」
次に、f1振幅を用いる場合のSPMの構成の具体例を説明する。
ここでは、前述の実施の形態と同様、本発明がAFMに適用される。このAFMの構成は、基本的には図5に示される前述の実施の形態のAFMと同様でよい。ただし、前述の実施の形態では、抽出部25がレバー振動信号から干渉信号を抽出し、振幅検出部27が干渉振幅を検出し、干渉振幅がフィードバック制御部29でフィードバック制御に用いられた。本実施の形態では、抽出部25がレバー振動信号から試料側周波数f1の成分を抽出し、振幅検出部27が、試料側周波数f1の成分の振幅、すなわちf1振幅を検出し、フィードバック制御部29がf1振幅を用いてフィードバック制御を行う。フィードバック制御のセットポイントは、上述の実施の形態とは異なり、探針と試料が非接触状態にあるときの適当なf1振幅に設定される(図10)。セットポイントは、コンピュータ31から供給される。
前述の実施の形態では、抽出部25の好適な構成は、図6のフーリエフィルタであった。本実施の形態でも、図6のフーリエフィルタにより抽出部25が好適に構成される。ただし、本実施の形態では、フィルタ発振器41が、試料側周波数f1の信号を出力する。すなわち、フィルタ発振器41が、cos(2πf1t)を乗算器43、51に出力し、sin(2πf1t)を乗算器47、53に出力する。そして、これらの信号cos(2πf1t)、sin(2πf1t)がフィルタ処理に用いられる。その他の構成は前述の実施の形態と同様でよい。
また、前述の実施の形態では、フィードバック制御部29は、図7に示されるようにダイナミック制御を行う構成を有していた。本実施の形態でも、フィードバック制御部29が図7の構成を有してよい。
ただし、本実施の形態では、干渉振幅の代わりにf1振幅が減算回路61に入力される。また、セットポイントが前述の実施の形態と異なっている。更に、減算回路61は、前述の実施の形態とは逆に、f1振幅からセットポイントを減算する。これは、探針と試料が近づくときに、干渉振幅は増大するが、f1振幅は減少するからである。
また、フィードバックゲイン調整回路65は、偏差信号が正のとき(f1振幅が目標値より大きいとき)と比較して、偏差信号が負のとき(f1振幅が目標値より小さいとき)のフィードバックゲインを大きくする。具体的には、偏差信号が正のときは、フィードバックゲインの調整は行われず、したがって、フィードバックゲインが固定されている。偏差信号が負のときは、偏差信号に応じてフィードバックゲインが増大される。この調整は、偏差信号に比例してフィードバックゲインを増大させる。
上記のフィードバック制御により、前述の実施の形態と同様、非接触状態を極力維持することができる。また、ゲイン調整量を徐々に大きくする滑らか且つ安定した制御を行うことができる。
「f1振幅を用いるSPMの構成」
(カンチレバーの撓みを用いる場合)
次に、カンチレバーの撓みを用いる場合のSPMの構成を説明する。
ここでも、SPMは前述の実施の形態と同様にAFMである。このAFMの構成は、基本的には図8及び図9に示される前述の実施の形態のAFMと同様でよい。ただし、抽出部25はレバー振動信号から試料側周波数f1の成分を抽出し、振幅検出部27はf1振幅を検出し、フィードバック制御部75は干渉振幅の代わりにf1振幅を処理する(この点は既に説明した通りである)。
さらに、振幅調整部91の比較器101は、f1振幅を下限振幅A2(図11)と比較する。そして、比較器101は、f1振幅が下限振幅A2より小さい場合に「1」をOR回路105に出力する。また、スイッチ回路107から乗算回路109へは、1より小さいゲインgが供給される(g<1)。
したがって、本実施の形態では、振幅調整部91は、f1振幅が下限振幅A1を下まわるか、撓み検出値が第1上限撓みD1を超えた場合に、f1振幅の検知信号にゲインg(<1)を掛け、検知信号を小さくする。このようにして、探針と試料が接触しそうになったか、少し接触したときには、振幅調整によって探針と振幅が引き離される。
その他、本実施の形態でも、減算回路61、ダイナミックPID回路63及びフィードバックゲイン調整回路65が、f1振幅の処理に適合するように変更される。この点は既に説明した通りである。
「レバー側周波数f2の成分の利用」
最後に、レバー側周波数f2の成分を利用する構成について述べる。非接触状態で探針と試料が近づくとき、試料側周波数f1の成分の振幅だけでなく、レバー側周波数f2の成分の振幅も減少する。このような現象の原因は、試料側周波数f1の成分と同様に考えられる。すなわち、レバー側周波数f2の振動エネルギーの一部が干渉信号(周波数Δf=|f1−f2|)の振動エネルギーに変換されていると考えられる。そして、レバー側周波数f2の成分の振幅変化も、超音波干渉によって生じているといえる。
上記のように探針試料距離の減少に伴ってレバー側周波数f2の成分の振幅も減少する。すなわち、レバー側周波数f2の成分の信号も、本発明の特定周波数成分に相当する。したがって、上記のフィードバック制御とイメージングは、試料側周波数f1の成分の代わりにレバー側周波数f2の成分を用いて同様に行われてよい。すなわち、抽出部25がレバー振動信号からレバー側周波数f2の成分を抽出してよく、振幅検出部27がレバー側周波数f2の成分の振幅を検出してよく、フィードバック制御部29がレバー側周波数f2の成分の振幅を用いてフィードバック制御を行ってよい。フィードバック制御の改良も、同様に行われてよい。ただし、本発明者の測定結果では、レバー側周波数f2の成分の振幅よりも、試料側周波数f1の成分の振幅の方が、探針試料距離に応じて顕著に変化する。したがって、試料側周波数f1の成分を用いることで、形状測定をより正確に行える。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明した。しかし、本発明は上述の実施の形態に限定されず、当業者が本発明の範囲内で上述の実施の形態を変形可能なことはもちろんである。
以上のように、本発明にかかる走査型プローブ顕微鏡は、生体分子等の観察に有用である。
従来の超音波を利用するSPMを示す図である。 本発明の実施の形態に係るSPMの原理を示す図である。 カンチレバーの干渉振幅及び平均撓み量の、探針・試料間距離に対する依存性を示す図である。 干渉振幅と平均撓みを用いた好適なフィードバック制御を説明する図である。 本実施の形態のAFMの構成を示す図である。 レバー振動信号から干渉信号を抽出する回路を示す図である。 フィードバック制御部の構成を示す図である。 別の実施の形態のAFMの構成を示す図である。 図8の実施の形態における撓み検出部及びフィードバック制御部の構成を示す図である。 カンチレバー振動における試料側周波数成分振幅及び平均撓み量の、探針・試料間距離に対する依存性を示す図である。 試料側周波数成分振幅と平均撓みを用いた好適なフィードバック制御を説明する図である。
符号の説明
1、71 原子間力顕微鏡(AFM)
3 カンチレバー
5 試料ステージ
7 スキャナ
9 レバー側圧電体
11 試料側圧電体
13 試料基板
15 発振器
21 レーザユニット
23 センサ
25 抽出部
27 振幅検出部
29 フィードバック制御部
31 コンピュータ
33 モニタ
61 減算回路
63 ダイナミックPID回路
65 フィードバックゲイン調整回路
73 撓み検出部
75 フィードバック制御部
91 振幅調整部
93 フィードバック信号調整部
f1 試料側周波数
f2 レバー側周波数

Claims (23)

  1. 探針を有するカンチレバーと、
    前記カンチレバー及び試料の相対的な走査を行うスキャナと、
    前記試料に対して試料側周波数の超音波を発射する試料側超音波発射部と、
    前記試料側周波数と異なるレバー側周波数の超音波を前記カンチレバーに発射するレバー側超音波発射部と、
    前記カンチレバーの振動を表すレバー振動信号を検出するセンサと、
    前記レバー振動信号から、非接触状態にある前記探針及び前記試料間の距離に応じて変化する特定周波数成分の信号として、前記試料側周波数及び前記レバー側周波数の差の絶対値の周波数成分である干渉信号を抽出する抽出部と、
    前記干渉信号の振幅である干渉振幅を検出する振幅検出部と、
    前記干渉振幅が所定の目標値に一致するように前記スキャナのフィードバック制御を行うフィードバック制御部とを備え、
    前記フィードバック制御の前記目標値は、前記探針と前記試料が非接触状態で近接しているときの前記干渉振幅に設定されていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  2. 前記試料側周波数及び前記レバー側周波数の差の絶対値が前記カンチレバーの共振周波数に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  3. 前記レバー側周波数が前記試料側周波数より小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  4. 前記フィードバック制御部は、前記干渉振幅が前記目標値より小さいときと比較して、前記干渉振幅が前記目標値より大きいときのフィードバックゲインを大きくすることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  5. 前記フィードバック制御部は、前記干渉振幅が前記目標値より大きいときに、前記干渉振幅と前記目標値の差に応じて前記フィードバックゲインを増大させるフィードバックゲイン調整部を有することを特徴とする請求項4に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  6. 前記レバー振動信号から前記カンチレバーの撓みを検出する撓み検出部を有し、前記フィードバック制御部は、前記撓みに基づいて前記カンチレバー及び前記試料を離れさせる処理を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  7. 前記フィードバック制御部は、前記カンチレバーの前記撓みに基づいて、前記振幅検出部により検出される前記干渉振幅の検知信号を増大させる振幅調整部を有し、前記フィードバック制御部は、前記振幅調整部により調整された前記干渉振幅を用いて前記フィードバック制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  8. 前記振幅調整部は、前記撓みが所定の振幅調整用のしきい撓みより大きい場合、及び、前記干渉振幅が所定の振幅調整用のしきい振幅より大きい場合の少なくとも一方にて、前記干渉振幅の検知信号を調整することを特徴とする請求項7に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  9. 前記フィードバック制御部は、前記カンチレバーの前記撓みに基づいて、前記カンチレバーと前記試料が離れるように前記フィードバック制御部により生成されるフィードバック信号を調整するフィードバック信号調整部を有することを特徴とする請求項6に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  10. 前記フィードバック信号調整部は、前記撓みが所定のフィードバック信号調整用のしきい撓みより大きい場合、前記カンチレバーと前記試料を強制的に引き離す値へと前記フィードバック信号を調整することを特徴とする請求項9に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  11. 探針を有するカンチレバーと、
    前記カンチレバー及び試料の相対的な走査を行うスキャナと、
    前記試料に対して試料側周波数の超音波を発射する試料側超音波発射部と、
    前記試料側周波数と異なるレバー側周波数の超音波を前記カンチレバーに発射するレバー側超音波発射部と、
    前記カンチレバーの振動を表すレバー振動信号を検出するセンサと、
    前記レバー振動信号から、非接触状態にある前記探針及び前記試料間の距離に応じて変化する特定周波数成分の信号として、試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の信号を抽出する抽出部と、
    前記試料側周波数成分又は前記レバー側周波数成分の振幅を検出する振幅検出部と、
    前記試料側周波数成分又は前記レバー側周波数成分の振幅が所定の目標値に一致するように前記スキャナのフィードバック制御を行うフィードバック制御部とを備え、
    前記フィードバック制御の前記目標値は、前記探針と前記試料が非接触状態で近接しているときの前記試料側周波数成分又は前記レバー側周波数成分の振幅に設定されていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  12. 前記フィードバック制御部は、前記試料側周波数成分又は前記レバー側周波数成分の振幅が前記目標値より大きいときと比較して、前記試料側周波数成分又は前記レバー側周波数成分の振幅が前記目標値より小さいときのフィードバックゲインを大きくすることを特徴とする請求項11に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  13. 前記フィードバック制御部は、前記試料側周波数成分又は前記レバー側周波数成分の振幅が前記目標値より小さいときに、前記試料側周波数成分又は前記レバー側周波数成分の振幅と前記目標値の差に応じて前記フィードバックゲインを増大させるフィードバックゲイン調整部を有することを特徴とする請求項12に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  14. 前記レバー振動信号から前記カンチレバーの撓みを検出する撓み検出部を有し、前記フィードバック制御部は、前記撓みに基づいて前記カンチレバー及び前記試料を離れさせる処理を行うように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  15. 前記フィードバック制御部は、前記カンチレバーの前記撓みに基づいて、前記振幅検出部により検出される前記振幅の検知信号を減少させる振幅調整部を有し、前記フィードバック制御部は、前記振幅調整部により調整された前記振幅を用いて前記フィードバック制御を行うことを特徴とする請求項14に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  16. 前記振幅調整部は、前記撓みが所定の振幅調整用のしきい撓みより大きい場合、及び、前記振幅が所定の振幅調整用のしきい振幅より小さい場合の少なくとも一方にて、前記振幅の検知信号を調整することを特徴とする請求項15に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  17. 前記フィードバック制御部は、前記カンチレバーの前記撓みに基づいて、前記カンチレバーと前記試料が離れるように前記フィードバック制御部により生成されるフィードバック信号を調整するフィードバック信号調整部を有することを特徴とする請求項14に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  18. 前記フィードバック信号調整部は、前記撓みが所定のフィードバック信号調整用のしきい撓みより大きい場合、前記カンチレバーと前記試料を強制的に引き離す値へと前記フィードバック信号を調整することを特徴とする請求項17に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  19. スキャナに取り付けられる試料ステージを有し、
    前記試料側超音波発射部の超音波発生源が、前記試料ステージと、前記試料を保持する基体との間に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項11に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  20. 前記抽出部は、前記レバー振動信号から、前記特定周波数成分の信号におけるフーリエ級数の1倍波成分を再構成するフーリエフィルタを含むことを特徴とする請求項1又は請求項11に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  21. 前記フーリエフィルタは、前記特定周波数成分の周波数を持つコサイン波信号を前記レバー振動信号に乗算し、1周期分の積分を行って第1DC値を取得し、前記コサイン波信号と同じ周波数のサイン波信号を前記レバー振動信号に乗算し、1周期分の積分を行って第2DC値を取得し、更に、前記第1DC値に前記コサイン波信号を乗算した信号と前記第2DC値に前記サイン波信号を乗算した信号との和を求めることを特徴とする請求項20に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  22. 探針を有するカンチレバーと試料を近づけて配置し、
    前記試料に対して試料側周波数の超音波を発射し、
    前記試料側周波数と異なるレバー側周波数の超音波を前記カンチレバーに発射し、
    前記カンチレバーの振動を表すレバー振動信号を検出し、
    前記レバー振動信号から、非接触状態にある前記探針及び前記試料間の距離に応じて変化する特定周波数成分の信号として、前記試料側周波数及び前記レバー側周波数の差の絶対値の周波数成分である干渉信号を抽出し、
    前記干渉信号の振幅である干渉振幅を検出し、
    前記干渉振幅が所定の目標値に一致するように前記カンチレバーと前記試料の距離のフィードバック制御を行い、前記フィードバック制御の前記目標値は、前記探針と前記試料が非接触状態で近接しているときの前記干渉振幅に設定されていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡による試料観察方法。
  23. 探針を有するカンチレバーと試料を近づけて配置し、
    前記試料に対して試料側周波数の超音波を発射し、
    前記試料側周波数と異なるレバー側周波数の超音波を前記カンチレバーに発射し、
    前記カンチレバーの振動を表すレバー振動信号を検出し、
    前記レバー振動信号から、非接触状態にある前記探針及び前記試料間の距離に応じて変化する特定周波数成分の信号として、試料側周波数成分又はレバー側周波数成分の信号を抽出し、
    前記試料側周波数成分又は前記レバー側周波数成分の振幅を検出し、
    前記試料側周波数成分又は前記レバー側周波数成分の振幅が所定の目標値に一致するように前記カンチレバーと前記試料の距離のフィードバック制御を行い、前記フィードバック制御の前記目標値は、前記探針と前記試料が非接触状態で近接しているときの前記試料側周波数成分又は前記レバー側周波数成分の振幅に設定されていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡による試料観察方法。
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