JP5275583B2 - 医療材料およびその製造法 - Google Patents

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Description

本発明は医療材料およびその製造法に関する。さらに詳しくは、生体適合性が高く、種々の用途に使用しうる医療材料およびその製造法に関する。
特開2004−67547号公報 特開平11−81050号公報 特開2001−25813号公報 特開2001−286239号公報 特開2006−14965号公報 国際公開WO03/094781
チタン金属は、磁性を持たないことからMRI対応の関係で医療分野に多用されている。また、近年の酸化チタンの光触媒作用が注目されていることから、その作用を医療に応用する考えも出始めている。しかし、具体的にはどのようにしてその効果を活用するかと言うことになると、優れたアイデアはまだ出ていない。
特許文献1は、径が100μm未満で、アスペクト比が20以上のチタン金属繊維を絡合して層状に形成したスカフォールド材料を提案している。このスカフォールド材料では、繊維層の表面から内部に至るまで、細胞活動に適し、生体硬組織誘導性および定着性に優れた微細空間が連続的に拡がっている。そのため、生体内の骨や軟骨などの硬組織内、その周囲、あるいは硬組織の欠損部に配置することにより、スカフォールド材料内に、硬組織とチタン金属繊維とが三次元的に協同しあった立体的結合を早期に形成させることができる。また、外傷などによって結合の一部が破損した場合でも、細胞活動によって結合を自己修復させることができる。
また、上記のチタン金属を絡合した立体構造を備えた不織布層は、細胞増殖用培地としても有用であり、本出願人によって「セルハウス(登録商標)」として製造販売されている。
特許文献2には、集束伸線法によって径が5μmから30μmのチタン繊維またはチタン合金繊維を製造する方法が開示されている。特許文献3には同様な金属チタン繊維の集束伸線法が開示されている。
特許文献4には、ゴルフクラブのシャフトや釣り竿の意匠性を出すため、ナイロン繊維、レーヨン繊維等の合成繊維などによって織り込まれた刺繍布を用いることが開示されている。この刺繍布には、合成樹脂の表面にチタンなどの金属を蒸着させ、糸状に裁断して金属蒸着樹脂糸を形成し、その金属蒸着樹脂糸によって模様や文字を刺繍することが開示されている。
また、特許文献5には、合成繊維、カーボン繊維またはガラス繊維からなる布帛の片面または両面に銀または銅の金属蒸着膜を積層して抗菌性被膜を形成し、その上にチタンやタンタルからなる酸化防止膜を積層した消臭性繊維シートが開示されている。この消臭性繊維シートは、カーテン、壁掛け、テーブル掛け、ランプシエードおよび空調用フィルタ等に加工することができ、可視光および紫外線の少なくとも一方が存在すれば、空気中のホルムアルデヒドやアンモニア等の臭気を効率的に分解除去することができるとしている。
特許文献1のチタン金属繊維を絡合して層状ないしウエブに形成したスカフォールド材料は、骨再生能および細胞培養能が高いことが知られている。また、金属チタンは生体内に埋め込んだときに炎症が生じにくいことも知られている。そして繊維径を細くすると、骨細胞の侵入や保持が一層容易になり、骨再生能および細胞培養能がより高くなると推察される。しかしチタン金属は、繊維径が50μm付近であれば安定して作製できるが、繊維径が10μm以下では、特許文献2、3の集束伸線法などを採用するにしても、繊維自体の形成が困難である。しかも得られたチタン金属繊維を不織布に加工する際、真空中で加圧加熱するが、繊維径が細く非常に酸化しやすい状態であるため、わずかな酸化がおこるだけで脆化が起こり、変形が加わる箇所では破断、破壊を起こす可能性があるのできわめて困難である。
一方、チタン粒子が無数に埋入されているポリエステル繊維は1957年以降、縫合糸や医療材料など、生体内に埋め込まれる医療行為に数千万例以上に使用されてきているが、これまでにそれに起因するトラブルは一件も報告されていない。ところが、表面へのチタンが被覆、蒸着された繊維に関する情報は皆無である。一般にチタンを蒸着した繊維で光触媒作用を発揮させると、繊維自体が触媒作用によって劣化して力学的な強度を失う危険性があることから、医療には使用しにくい実情があった。これは、酸化チタンが紫外線などの光刺激によって触媒作用が発揮されると、生体内のアミノ酸などを分解して一酸化窒素(NO)を産生する可能性があるためである。そして、この一酸化窒素(NO)は生体にとって有害であることが知られており、動脈硬化症などを惹起する可能性が示唆されている。このような背景から、チタンの触媒作用が顕著に発揮されるのではなく、ごく僅かに発揮されることが有益であることがわかってきた。
本発明は、繊維径が細く、柔軟性が高く、種々の形態に加工することが比較的容易で、しかも従来のチタン金属繊維を用いたものと同程度の骨再生能や細胞培養能を備えた医療材料を提供することを課題としている。さらに本発明は、そのような医療材料の効率的な製造法を提供することを課題としている。
本発明の医療材料は、柔軟な繊維からなる芯材と、その芯材の周囲に設けられたチタンないしチタン化合物からなる被覆層とを備えた被覆繊維が、多数本互いに隙間をあけて集積されていることを特徴としている(請求項1)。このような医療材料であって、前記被覆層の外周または内周にプラチナまたは銀からなる制菌層を備えているのが好ましい(請求項2)。柔軟な繊維には合成樹脂繊維および天然繊維が含まれる。集積には絡合、編組、紡織が含まれる。前記芯材としては、太さ0.020〜1000μmの合成樹脂のモノフィラメントを採用するのが好ましい(請求項3)。しかし、この寸法以下、以上のものであってもでも構わない。前記被覆層の厚さは0.005〜5μmとするのが好ましい(請求項4)。同様に、この寸法以下、以上のものであっても構わない。
また、前記芯材または被覆繊維はシート状の形態に集積されたもの(請求項5)、あるいは立体的な形態に集積されたもの(請求項6)が好ましい。立体的な形態としては、シートの積層体、ブロック状のもの、シートが立体的に湾曲ないし屈曲しているものなどがあげられ、さらに管状であってもよい(請求項7)。
前記医療材料は、生体外で使用する細胞増殖用培地として形成されたものであってもよい(請求項8)。また、生体内の硬組織導入用材料として形成されたものであってもよい(請求項9)。さらに、生体内の軟組織導入用材料として形成されたものであってもよい(請求項10)。
本発明の医療材料の製造法の第1の態様は、柔軟な繊維からなる芯材に、チタンないしチタン化合物を蒸着して被覆層を形成し、ついで得られた被覆繊維を多数本、互いに隙間があくように集積させることを特徴としている(請求項11)。
本発明の医療材料の製造法の第2の態様は、多数本の柔軟な繊維からなる芯材を互いに隙間があくように集積させ、ついで得られた集積芯材にチタンないしチタン化合物を蒸着して被覆層を形成することを特徴としている(請求項12)。
本発明の医療材料の製造法は、前記いずれかの製造方法によって得られた医療材料の厚みを80%以下に加温圧縮してもよい(請求項13)。また、前記いずれかの製造法によって複数枚のシートを形成し、得られたシートを積層して立体的に構成してもよい(請求項14)。さらに前記いずれかの製造法によってシートを形成し、得られたシートを湾曲ないし屈曲して立体的に構成してもよい(請求項15)。
本発明の医療材料は、芯材が柔軟な繊維であり、その周囲にチタンないしチタン化合物からなる被覆層を備えているので、得られたものも柔軟性が高い。そのため種々の形態に加工することが容易である。また、合成樹脂繊維は10μm以下、またエレクトロスピニング法などを使うことで0.1μm以下の繊維系のものも比較的容易に製造することができ、チタンないしチタン化合物は金属蒸着などの汎用的な方法で形成することができる。また、比較的に加工しやすい金属(例えば、ステンレス鋼、金、プラチナ等)を芯材の金属繊維としてもよい。さらにこの医療材料は、表面にチタンないしチタン化合物からなる被覆層を備えているので、従来のチタン金属の繊維からなる不織布とほぼ同程度の生体適合性を備えており、ほぼ同程度の骨再生能および細胞培養能を有する。また、制菌作用を得ることができる。芯材が金属繊維の場合、表面に、炭化チタン、窒化チタンなど高温で被膜処理が必要な材料の選択性も向上する。さらに、塩化白金酸溶液を使いプラチナを担持させる、あるいは銀を担持させることによりさらに制菌作用を向上させることができる。
そのため、本発明の医療材料は、生体内の硬組織を培養するためのスカフォールド材料、あるいは、インプラントの周囲に設ける骨組織導入用の材料として医療用の骨材として用いることができ、また、生体内あるいは生体外での用いられる細胞増殖用培地としても用いることができる。
前記芯材として、太さ0.020〜1000μmの合成樹脂のモノフィラメントを採用する場合は、均質な性質の被覆繊維を得ることができ、生産性も高い(請求項3)。さらに前記被覆層の厚さを0.005〜5μmとする場合は、柔軟性および加工性が高く、しかも骨再生能や細胞培養能も高い(請求項4)。
また、前記芯材または被覆繊維がシート状の形態に集積されている場合(請求項5)は、所望の形状に切断したり、切断したものを重ね合わせたりすることが容易であり、加工性が優れている。さらに欠損した骨に充填材を配置し、その周囲に巻き付けて安定させるなど、骨再生補助材料として用いることもできる。その場合も扱いやすい。
他方、芯材または被覆繊維が立体的な形態に集積されているもの(請求項6)は、そのままの形態で、あるいは使用目的に応じた立体形状に再加工することにより、細胞増殖用培地あるいは生体内の硬組織導入用材料および軟組織導入用材料として用いることができる。たとえば、シートの積層体およびブロック状のものは骨充填材、軟組織導入用材料、細胞増殖用培地に用いられ、シートが立体的に湾曲ないし屈曲しているものは頭骨、面状の骨などに用いることができる。さらに管状の形態を備えているもの(請求項7)は、生体の内部と外部を連通するチューブを囲む材料、人工血管、あるいは、ステントのカバー材として使用することができる。
生体外で使用する細胞増殖用培地として形成されている医療材料(請求項8)は、培養液に漬けて細胞片を付着させて細胞を培養することができる。その場合、被覆繊維が増殖する細胞を支持することができ、高い細胞増殖能が得られる。また、生体内の硬組織導入用材料として形成された医療材料(請求項9)は、歯科用インプラントの充填材、骨や軟骨の欠損部の充填材などに使用することができ、高い骨再生能を発揮する。また、生体内の軟組織導入用材料として形成された医療材料(請求項10)は、経皮端子、留置カテーテルの経皮カバーなどに使用することができる。なお、生体親和性などの目的には、本発明の範囲外であるが直接、経皮端子、経皮カバーに、チタンまたは酸化チタンを蒸着してもよい。
本発明の医療材料の製造法の第1の態様(請求項11)は、柔軟な繊維に、あらかじめチタンないしチタン化合物からなる被覆層を蒸着し、ついで得られた被覆繊維を多数集合させてシート状に形成するので、繊維の全周にほぼ隙間なく被覆層を蒸着することができる。さらに蒸着された被覆層の厚さが比較的均質である。そのため、使用中に被覆層が剥がれるおそれが少なく、高品質の医療材料を形成することができる。
本発明の医療材料の製造法の第2の態様(請求項12)は、多数本の柔軟な繊維をシート状に形成し、ついでチタンないしチタン化合物からなる被覆層を蒸着するので、効率的に医療材料を量産することができる。また、被覆層を設ける前にシート状に形成するので、絡合して不織布としたり、編組してメッシュあるいは織布にすることが容易である。さらに積層する前のシート状で被覆層を設けるので、繊維同士の隙間空間と外部との連通性も高い。そのため、内部の芯材までチタン金属やチタン化合物を浸透させて被覆層を設けることができる。
前記いずれかの製造法によって得られた医療材料の厚みを80%以下に加温圧縮して製造する場合(請求項13)、内部の繊維まで一層均一にチタンないしチタン化合物からなる被覆層を設けることができる。
前記いずれかの製造法によって得られたシートを複数枚積層して立体的に構成する場合(請求項14)、または、得られたシートを湾曲ないし屈曲して立体的に構成する場合(請求項15)は、比較的厚い立体形状を備えている医療材料を構成することができる。そのため、内部の繊維まで充分にチタン金属ないしチタン化合物が被覆されており、従来のチタン金属の繊維を絡合させたチタン不織布と同様の用途に用いることができ、骨再生能および細胞培養能を発揮することができる。
つぎに図面を参照しながら本発明の医療材料およびその製造法を説明する。図1aは本発明の医療材料の一実施形態を示す斜視図、図1bはその医療材料の拡大断面図、図1cはその医療材料を構成する被覆繊維の交差部の拡大断面図、図2は本発明の医療材料の他の実施形態を示す斜視図、図3は本発明の医療材料の製造法を示す工程図、図4は本発明の医療材料の製造法の他の実施形態を示す工程図、図5は図4の製造法で得られた被覆繊維の交差部の拡大断面図、図6a、b、c、は、本発明の医療材料の使用方法を示す概略図、図7aおよび図7bはそれぞれ本発明の医療材料のさらに他の実施形態を示す概略斜視図および断面図、図8、図9および図10はそれぞれ本発明の医療材料のさらに他の実施形態を示す概略斜視図、図11は本発明の医療材料の実施例(実施例1)を示す顕微鏡写真、図12、図13および図14はそれぞれ図11の倍率を上げた顕微鏡写真、図15および図16は図12の医療材料の製造途中における裏面側から見た顕微鏡写真、図17は本発明の医療材料の他の実施例(実施例2)を示す顕微鏡写真、図18、図19および図20はそれぞれ図17の倍率を上げた顕微鏡写真、図21および図22は図17の医療材料の製造途中における裏面側から見た顕微鏡写真、図23は本発明の医療材料のさらに他の実施例(実施例3)を示す顕微鏡写真、図24および図25はそれぞれ図23の倍率を上げた顕微鏡写真、図26は本発明の医療材料のさらに他の実施例(実施例8)を示す写真、図27は図26の医療材料を試験用豚に挿入した状態を撮影した写真、図28は図27の状態で30日間置いた後の実施例8を示す写真、図29は本発明の医療材料のさらに他の実施例(実施例9)を試験用豚に挿入した状態を撮影した写真、図30は図29の状態で39日間置いた後の実施例9を豚の皮下の内側から撮影した写真、図31は本発明の医療材料のさらに他の実施例(実施例10)を示す写真である。
図1aに示す医療材料10は全体として薄いシート状の形態を備えており、多数本の被覆繊維11を隙間12を開けて平織りにしたメッシュ構造を備えている。それぞれの被覆繊維11は、図1bおよび図1cに示すように、柔軟な繊維からなる芯材13と、その芯材13の周囲にチタンないしチタン化合物を蒸着した被覆層14とを備えている。この実施形態では、平織りして集積芯材を形成した後、その両面からチタンないしチタン化合物を蒸着している。そのため、図1cに示すように、芯材13、13の交差部では、両者の接触している部位15で被覆層14が充分に芯材13を囲んでいない。しかし交差した2本の芯材13、13の全体を被覆層14が囲んでいるので、芯材13は露出しない。さらに接触してる部位15では、被覆層14を介して芯材13、13同士が接合され、接合強度が高くなる。また、それぞれの芯材13は、交差部以外は被覆層14で充分に被覆されている。
前記芯材13を構成する繊維は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアラミッド、メタクリル樹脂、フッ素系樹脂、ポリアセタール、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂が用いられる。ただし、エポキシなどの熱硬化性樹脂でもよい。また、ポリ乳酸、セルロース、デンプン系、ポリブチレンサクシネート系、ポリラクライド系などの生分解性樹脂を採用することもできる。さらに綿、麻、竹、紙などの植物性繊維、羊毛、絹などの動物性繊維など、天然繊維を用いることもできる。
合成樹脂繊維と天然繊維とを混紡してもよい。さらに合成樹脂繊維を用いた被覆繊維と天然繊維を用いた被覆繊維とを合わせて織り合わせてもよく、束として使用してもよい。さらに柔軟であれば、ガラス繊維やカーボン繊維でもよく、アルミナ(Al)などのセラミックス系繊維、さらにステンレス、鋼、アルミニウム、金、プラチナなどの金属繊維も使用しうる。芯材13はチタンあるいはチタン化合物によって被覆されるが、部分的に被覆が充分でない部位が生じたり、剥離したりすることを考慮して、生体適合性がよいもの、少なくとも生体に害がないものを用いる。
芯材13として合成樹脂繊維を用いる場合は、通常はモノフィラメントが用いられる。このようなモノフィラメントは溶融紡糸法などの方法で作成することができる。モノフィラメントに代えて、紡糸した撚り糸や束ねた繊維束を用いてもよい。天然繊維は長さや太さがばらつくことが多いため、通常は紡糸した糸が用いられる。ただしマルチフィラメントでもよい。芯材13の太さは通常は0.020〜1000μmであり、好ましくは3〜80μmである。引張強度は40〜350N/mm程度のものが使用される。太すぎる場合、柔軟性が不充分になり、細すぎる場合、引張強度は向上するも、破断荷重が低下して織り作業などの取り扱いが困難になるからである。とくに強度が必要な場合は芯材の太さは3〜80μm程度とする。また、とくに高い柔軟性が要求される場合は0.05〜10μm程度とする。
エレクトロスピニング法を用いれば、20〜1000nm程度の繊維の作製が可能である。図1a〜cでは、芯材13の断面形状は円形であるが、矩形、三角形、多角形などの角形、あるいはそれらに丸みを持たせたものなど、種々の断面形状を採用することができる。芯材13の断面形状が円形の場合は、被覆層14が均一につくられるので好ましい。他方、角形の場合は、被覆層14に平面が作られ、細胞との接触面積が増えるため好ましい。
被覆層14の材質は純チタン(Ti)のほか、酸化チタン(TiO)、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、チタン−6アルミ−4バナジウム合金(Ti−6Al−4V)などのチタン化合物またはチタン合金が採用される。これらは他の金属に比して生体適合性が高く、細胞増殖能や骨再生能が高いためである。そのため生体外で細胞増殖用の基盤として使用したり、折れた骨の継ぎ目に巻き付けて補強したり、欠損した骨に埋め込んだ充填材を囲んで補強したりすることに使用する。また、柔軟なシート状であり、抗炎症能も発揮するので、人工心臓や人工肛門など、人工臓器の基材として使用することもできる。なお、チタン−6アルミ−4バナジウム合金などのチタン合金は純チタンに比して強度が高いため、その用途に応じて使いわけてもよい。
さらに、チタンまたは酸化チタンなどのチタン化合物にプラチナ(白金)、または銀を担持させてもよい。このように組み合わせることにより、制菌作用を向上させることができる。担持は、極微量でもよく、チタンまたは酸化チタンなどのチタン化合物の上層または下層に担持させてもよい。
酸化チタンを蒸着して被覆層14を形成する場合、細菌の増殖抑制効果が得られる。そのため、この周囲に線維芽細胞が付着しやすく、周囲への瘢痕組織形成が少なく、生体親和性が向上し、感染巣を形成する頻度が低下する。一般的に酸化チタンを蒸着する場合、ルチル型の蒸着層が得られるといわれるが、被覆層14としては、ルチル型であっても、アナターゼ型であっても構わないと考えられる。しかし、アナターゼ型は光触媒作用を有するため、生態のアミノ酸等を分解し、一酸化窒素を発生する可能性があり、ルチル型の酸化チタンを被覆層14として用いる方が好ましい。
また、ポリエステル布にチタン蒸着する場合、酸化チタンの顕著な触媒作用が抑えられ、生体内に埋入しても副作用が起こりにくく、ごく僅かな効果が持続的に発揮される。さらに、ポリエステル表面の濡れ性(親水性)が得られるため、疎水性のポリエステル表面が生体内において異物として認識されにくくなる。そのため、細胞の侵入に有効であり、この組み合わせは医療材料として特に、好ましい。
なお、生体親和性などの目的には、本発明の範囲外であるが、ダイヤモンドライクカーボン、アルミナ等のセラミックス、アパタイト、βリン酸第三カルシウム(β−TCP)などの被覆層を設けてもよい。被覆層14の厚さは通常は0.05〜10μmであり、好ましくは1〜5μm程度である。厚く過ぎると柔軟性が不充分となり、薄すぎると剥離し易くなり、さらに細胞増殖能や骨再生能が不充分になるためである。とくに柔軟性が必要とされる場合は0.1〜1μm程度の厚さとすることができる。
被覆層14は、たとえば物理気相成長法(PVD)など、真空蒸着により形成しうる。芯材13を損なわない温度など、環境条件が適切であれば、PVD法のほか、チタンあるいはチタン化合物を溶解あるいは分散させた液体を塗布し、乾燥させて設ける塗膜形成法、溶射、電気化学的反応、イオンスパッタ、マグネトロンスパッタなどの他の方法を採用することもできる。ただし被膜の密着強度、均一な製膜を考えて、真空蒸着が好ましい。蒸着のとき、チタンやチタン化合物は、線材の表面だけでなく、いくらか内部まで入り込むことがある。その場合は被覆層14が芯材13から一層剥がれにくくなるので好ましい。
図1のメッシュ構造では、被覆繊維11のピッチPは1〜500μm程度、とくに10〜200μm程度が好ましい。それにより隙間12は被覆繊維11の太さの1〜10倍程度、とくに2〜5倍程度となる。この場合、平面視での空隙率は90〜50%、とくに80〜70%程度である。また、医療材料10の厚さは、図1bは、図1bから分かるように、被覆繊維11の太さの略2倍程度である。面積当たり重量は10〜100g/cm程度である。
また、被覆層14の外周に想像線で示すようにプラチナまたは銀からなる制菌層14aを設けても良い。銀は、制菌性または抗菌性を有しているため、菌の繁殖あるいは感染を防止する。また、このコート14aは、被覆層14と芯材13の間に設けても良い。
図1aでは被覆繊維12は平織りにしているが、メリヤス織りなど、他の織り方あるいは編み方で、織布や編布などのシート状に成形してもよい。さらに図2に示す医療材料18のように、多数の被覆繊維11を隙間12があくように絡合した不織布の構造とすることもできる。被覆繊維12は、連続する1本の被覆繊維を往復させながら絡合して、多数の繊維が絡合した形態としてもよい。特許請求の範囲における「多数本」には、このような、実質的には1本ないし数本で、特定の箇所で見れば多数本に見える場合も含む。
図2の医療材料18の被覆繊維12の材質および構成は、図1a〜1cの医療材料10と同様である。図2の医療材料18の平面視での空隙率は40〜90%、とくに70〜80%程度である。医療材料18の厚さは、被覆繊維11の太さの略2〜10倍程度である。面積当たり重量は5〜100g/m程度である。
図1aの医療材料10を製造するには、図3に示すように、芯材を形成し(第1ステップS1)、ついで多数の芯材を平織りなどの織り加工ないし編み加工によりシート状に形成し(第2ステップS2)、ついでシートの全体にチタンあるいはチタン化合物をコーティングする(第3ステップS3)。コーティングは片面だけに蒸着することにより行うこともできる。この場合もチタンないしチタン化合物は裏側にも蒸着される。ただし片面から蒸着した後、他面にも蒸着などのコーティングを施すのが好ましい(第4ステップS4)。そのほうが被覆層が均一になる。なお、両面同時に蒸着してもよい。
図2に示す不織布構造の医療材料18は、図3におけるシート状に成形する第2ステップS2で芯材を絡合させてシート状に成形するほかは、前述の織り構造(メッシュ)の医療材料10と実質的に同じ方法で製造しうる。なお、第2ステップS2で厚いウエブにすることもできる。しかし厚くすると、つぎのコーティング工程(第3ステップS3)で内部の芯材まで深く製膜することが困難になる。そのため、薄いシートにしておくのが好ましい。
図3に示す製造法では、芯材にチタンないしチタン化合物をコーティングする前に織り加工ないし絡合するので、芯材が熱可塑性樹脂繊維の場合は、この状態で加圧して合成樹脂の軟化温度まで加熱することにより、芯材の接触する部位同士を熱接合させることができる。それにより形状維持性が高いシートが得られる。接着剤で接合させてもよい。
図4に示す製造法では、芯材を製造し(第1ステップS1)、ついであらかじめ芯材の周囲にチタンないしチタン合金をコーティングして被覆繊維を製造しておく(第2ステップS2)。そして得られた被覆繊維を織り加工あるいは絡合して、シート状ないしウエブ状に成形する(第3ステップS3)。この方法では、すでに芯材にコーティング処理が施されているので、複数の層に絡合して厚いウエブを成形することができる。第2ステップS2では片面のみにコーティングしてもよいが、コーティング漏れをなくすため、両面にコーティングするほうが好ましい。
この製造法では、図5に示すように、芯材13の周囲の全体に被覆層13が形成された医療材料20が得られる。すなわち被覆繊維11同士が交差している部位21でも、芯材13同士が直接接触せず、それぞれの芯材13に被覆層14が設けられている。そのため、図1cの医療材料10よりさらに生体適合性が高く、骨再生能および細胞誘導能が高い。しかし織り加工あるいは絡合した状態でチタンないしチタン化合物の溶融温度まで加熱すると、芯材が熱負荷に耐えられないので、加圧・加熱による接触点の接合はできない。なお、シートを加圧し、被覆層に電流を流して接触部のみにジュール熱を発生させ、芯材に影響を与えないように接合してもよい。それによりシートの形状維持性が向上する。接着剤を用いて接触部同士を接合させてもよい。
前述の製造法で得られたシート状の医療材料10、18、20は、そのまま、あるいは適切な形状の切断して使用することができる。たとえば肋骨などの骨の欠損部に従来のチタンウエブや後述するシートを重ねたブロックなどの充填材を当てがい、その上からシート状の医療材料を巻き付けて充填材を固定するために使用することができる。また、皮膚などの薄い細胞組織を再生させるための基材として、あるいは腹部透析用経皮端子16など、皮膚17を介して体内に挿入する機器の経路となる経皮端子の端部表面16aに形成してもよく(図6a、b参照)、また、生体の皮膚17と接触するカテーテル19の部位19aに巻いてもよく(図6a、c参照)、さらに、ステントや、人工血管のカバーなどとして、使用することができる。このようにシート状の医療材料10、18、20を形成することにより、生体に配置された器具を生体が異物反応を起こしにくく、炎症等を防ぐことができる。
さらに歯科用インプラントの周囲に巻き付けて歯槽内に埋め込むことにより、歯槽骨の骨細胞が成長するときの足場とすることができる。また、人工心臓などの人工臓器の周囲に配置して、生体組織との生着性を向上するために使用したり、人工肛門や、胃などの消化器系内臓と外部とを連通する経皮通路を形成する器具などの種々の医療器具の周囲に巻き付けて使用することもできる。それらの場合はシートのチタンあるいはチタン化合物の生体適合性が高く、抗炎症能が高いので、医療器具と生体の間に介在させることにより、医療器具の生体に対する侵襲を緩和することができ、生体細胞の早期の再生を促すことができる。
また、前述のシート状の医療材料10は、図7a、図7bなどのように、立体的な形態に加工することにより、さらに種々の用途に使用することができる。図7aの医療材料22は、図1aの薄いシート状の医療材料10を重ね合わせてウエブに形成したものである。図2の医療材料18、図5の医療材料20を重ねてもよい。このように重ねたものを糸や繊維で縫合して一体化したり、ニードルパンチやウォータジェットで繊維同士を絡合させて一体化することもできる。
とくに3〜10枚のシートを積層して厚さ0.5〜3mm程度のブロック状にしたものは、生体外での細胞増殖の基板として好適に使用できる。ブロック状にしたもの、切断などにより種々の形態に加工することが容易である。平面形状が連続的あるいは不連続的に変化するように、形状を変えた多数のシートを形成し、それらのシートを順に重ね合わせて一体化することにより、種々の立体形状を備えた医療材料を構成することもできる。
このような細胞増殖の基板としても用いる場合、被覆層として酸化チタンを用いることにより、制菌効果が得られる。そのため、ばい菌等がその基板に付着しても増殖せず、細菌感染を防ぐことができる。
図8の医療材料23は、シート状の医療材料10を丸めて端縁同士を接合し、円筒状に形成したものである。1枚のシートを円筒状に形成するほか、あらかじめチタンあるいはチタン合金を製膜したシートを複数枚重ねて円筒状にしたり、図7a、図7bのようにあらかじめ重ねて一体化した厚手のシートやウエブを円筒状にしたりしてもよい。このように円筒状にすることにより、血管、尿管、胆管、その他の管状臓器の補強や再生に使用しやすくなる。人工血管に用いる場合は、あらかじめ生体外で細胞を増殖させ、あるいはフィブリノーゲンなどの生体由来物質で編み目を充填しておく。人工肛門などの生体の内部と外部を連通するポート器具の材料、あるいは生体外で管状臓器を再生する場合にも使用しうる(図9参照)。円筒のほか、角筒状に形成してもよい。
図9の医療材料24は、図1aなどのシート状の医療材料10を凸湾曲面の立体形状に成形し、加熱・加圧などによりその形状で固定したものである。図2の不織布の構造を備えた医療材料18の場合は、所定の形状の台座の上に繊維を分散配置し、加熱加圧して繊維同士の交点を溶着することにより、容易に製造することができる。
図10の医療材料25は、被覆繊維11をマンドレルの周囲に筒状に編組したものである。あらかじめ芯材をマンドレルの周囲に編組して筒状に構成し、その後、チタンないしチタン化合物を製膜してもよい。マンドレルには、径が伸縮するゴム製の棒状ないし筒状のものを用い、軸方向に引っ張って縮径したり、内部に圧力を加えて拡径たりした後、弾力で元に戻るものを用いると、筒状の医療材料25のマンドレルへの着脱が容易である。この医療材料25も図8の医療材料23と同様の用途に使用することができる。さらに図10の医療材料25は継ぎ目がないため、安定した形状保持性がある。
次に、本発明の医療材料の他の製造方法を示す。
一般にスパッタするとき、試料の空隙率の高い方が、試料の内部まで安定してコートできることが知られている。
本発明の医療材料の他の製造方法としては、柔軟な繊維からなる空隙率の高い布に、チタンないしチタン化合物をスパッタコートする。その後、加温しながら圧縮する。これにより、繊維全体に均一に安定してスパッタコートが設けられた空隙率の低い布からなる医療材料が得られた。
[実施例1]
径50〜60μmのポリエチレン繊維をピッチ180〜220μmで平織りにしたメッシュ(理論的厚さ120μm)を準備し、(株)神戸製鋼製のUBMS(アンバランスドマグネトロン)スパッタ装置で片面にチタンを蒸着したものを実施例1として作製した。カソード前で搬送台を10回移動(5往復)させる移動成膜をした。被覆層の厚さは80〜120nm程度である。得られたメッシュは図11および図12の写真に示すように、表面が均一であった。また、拡大写真(図13、図14)から分かるように、欠けた部位や蒸着のムラはなかった。また、繊維がポリエチレン繊維であっても、繊維が溶けることなくチタンを蒸着することができた。
図15および図16は、前記メッシュに片面だけ蒸着した状態で撮影した裏面側の写真である。これらから分かるように、片面側から蒸着するだけでも、裏面の中心部(白い線状の部分)以外ではほぼ完全に蒸着されており、欠けている部分がない。このように片側から蒸着させる場合も、チタンイオンが回り込んでほぼ裏側まで蒸着できることが分かる。このような回り込みは、繊維の断面形状が円形であること、チャンバー内が完全な真空でなく、いくわかチャンバー内部に残っている気体が対流したことに基づくと推察される。ただし両面から蒸着させる方が、より確実に繊維の全周に被覆できることが分かる。
[実施例2]
径10〜15μmのポリエチレン繊維を乾式法で絡合させた不織布を作製した。ついで実施例1と同様の方法で両面にチタンを蒸着し、実施例2のシート状医療材料とした。得られた不織布を図17、図18の写真で示す。これらの写真および図19、図20の拡大写真から、ポリエチレン繊維が溶けておらず、表面にほぼ均一なTiの被覆層が形成されていることが分かる。また、この不織布では繊維の重なりが多いにも関わらず、内部の繊維まで蒸着されていることが分かる。
図21および図22は、不織布に片面からだけチタンを蒸着した状態で撮影した裏面側の写真である。これらから分かるように、繊維の重なりが多いにも関わらず、片面側から蒸着するだけでもチタンイオンが回り込んで内部の繊維まで蒸着できる。ただし一部の繊維では、裏面側の中心部(白い線状の部分)に被覆層が形成されていない。したがって両面から蒸着することにより、ほぼ全体の繊維の周囲にチタンの被覆層が確実に形成されることが分かる。
[実施例3]
図23は極細繊維の織布(東レ株式会社製ワイピングクロス:トレシー(登録商標))にチタンを片面から蒸着したものを示す。1本の繊維は、厚さが5μmで、幅が10μmと、いくらか扁平な断面形状を有する。そして、繊維を束ねた糸(ロービング)をメリヤス編み(メリヤス織り)して織布(ないしニット地)を構成している。織布全体の理論厚さは0.5mmである。なお、図23の右側の白い部分はカッティングのときに裏面側が折り返された部分である。
図24および図25の拡大写真から分かるように、繊維同士が比較的密に詰まっている織布であっても、チタンの被覆層が充分に形成されている。ただし図23から分かるように、裏面側ではチタン被覆層が充分には形成されていない。そのため、両面にそれぞれ充分にチタンを蒸着するのが好ましい。また、織布の場合は、繊維同士の密度を少なくするか、織布の厚さを50〜100μm程度に薄くするほうがよい。
[実施例4〜6]
次の3つの繊維性布にチタン蒸着を行った。一つ目の布は東レ製のエクセーヌ原糸である5〜10μm程度の繊維径をもつポリエステル繊維性の布である。これは緻密に織られていて、更にごく繊維が起毛されているため、片面のチタン蒸着の影響が裏面には及ばない構造となっている。この布にチタン蒸着した医療材料を実施例4とする。次の布は、50μm程度の繊維径をもつポリエチレン製で繊維間隙が約0.2ミリのメッシュ構造を持つ布である。この布へ蒸着すれば、片面からの蒸着であっても裏面まで蒸着効果が及ぶ。この布にチタン蒸着した医療材料を実施例5とする。三つ目の布は、50μm程度の繊維径をもつポリエチレン製で繊維間隙が平均で0.1mm以下のポリエステル繊維製の不織布である。この布への蒸着では、最初の布と2番目のメッシュとの中間程度であり、蒸着の影響が僅かに裏面に及ぶ程度である。この布にチタン蒸着した医療材料を実施例6とする。
これら実施例4〜6の布を0.5×2.0cmのサイズに切り出し、イヌの背部皮下組織に埋植した。このとき、5mm程度を皮膚から出すような位置で挿入を止めて、その位置で皮膚に布を固定した。すなわち、個々の布は皮膚を貫通するような形で皮下組織内へ向かって挿入されている。対照として、蒸着をしていない布(比較例1)を、同じサイズに切り出し、同じ様にイヌの背部の皮膚に植え込み、一部を体外に出すような位置で固定した。なお、手術前後及び手術中に抗生物質投与は一度も行わなかった。この様な処置を行って、4週間の間、毎日、皮膚の状況を観察して、感染の有無をチェックした。動物飼育室は一日の内で18時間蛍光灯を点灯しており、温度は約21℃であった。このようにして4週間後に試料を採取し、試料の入っている部分の周囲組織を含めて固定してヘマトキシリン・エオジン染色し、細胞と布との関係を検討した。
その結果、3つの布の種類にかかわらず、実施例4〜6の蒸着をしていない布(比較例1)の対象群は4週間後も布が湿潤状態であって、侵出液が僅かに付着しており、布と周囲組織との癒着が生じていなかった。しかし、実施例4〜6のチタン蒸着布は3種類とも布が周囲組織に硬く癒着していて、乾燥状態であった。布付近の組織と共に切り出して切片を作製して光学顕微鏡で観察した結果、チタンを蒸着している布では、いずれの布も繊維間隙に線維芽細胞が侵入しており、その周囲にコラーゲン繊維が付着して、細胞と線維からなる組織によってチタン蒸着を受けた線維が埋没されていた。
一方、比較例1のチタン蒸着をしていない布では、線維芽細胞を散見するものの、多くの場所では布の繊維は侵出液に浮いた状態であって、癒着はしていなかった。そして繊維間隙には好中球が少数ではあったが見られた。この結果、チタンを蒸着した布では感染が全く生じていないのに対して、蒸着していない布ではごく僅かではあるが感染が生じていると考えられる。但し、布の一部が体外に露出しているので、膿が貯留することはなく、微量ずつでも体外に流れ出るため、感染が広がらずに、軽度で持続していると考えられた。以上の結果、チタン蒸着繊維では線維芽細胞の侵入には悪影響を及ぼす事はなく、そして感染を押さえる作用が有ると推測された。そして、体温程度の温度と蛍光灯の光によってチタンの触媒作用がごく僅か発揮されたと考えられ、その程度の効果発揮が細菌感染を防ぐことに効果があると考えられることから、繊維へのチタン蒸着の有用性が明らかとなった。
[実施例7]
堺化学工業株式会社製の酸化チタンビーズ20gを50mlのビーカーに入れ、そこに0.001%に希釈したメチレンブルーを20ml入れ、周囲をアルミホイルで包んだ。これを3セット作製し、一つは4℃の冷蔵庫へ、一つは22℃の室内へ、残りの一つは37℃の保温器内に、それぞれ5日間、保存した。その結果、冷蔵庫内ではメチレンブルーの色調は変わらず薄い青色であったが、室温では軽度に脱色し、37℃では明らかな脱色が見られた。この結果、室温や体温程度の温度刺激によっても、酸化チタンの触媒作用がごく僅か発揮させる事が明らかとなった。
[実施例8]
径が20μmのポリエステル繊維性の布を用意し、その布に厚さが100nmのチタンコートを設けた試料を作製した。この試料を、幅10mm×長さ20mmのサイズに切り出し、チタンボルトに巻きつけて実施例8を作成した(図26参照)。
この実施例8のボルトを、35kgの家畜用SPF豚(LWD系、雌)の腸骨に開けた直径3.5mmの孔へ挿入し、腸骨内で固定した。チタンコートを設けた試料が、腸骨内で固定されているのが、図27でわかる。
図28に示すように、埋め込み後30日で、実施例8のボルトおよびその周辺組織を採取した。埋め込んだボルト付近の組織に炎症および壊死は見られなく、実施例8のボルトは、硬組織である骨に取り囲まれ、固定されていた。
[実施例9]
径が20μmのポリエステル繊維性の布を用意し、その布に厚さが100nmのチタンコートを設けた試料を作製した。この試料を幅10mm×長さ35mmのサイズに切り出した(実施例9)。
この実施例9の試料を、35kgの家畜用SPF豚(LWD系、雌)の腰部分の皮下に挿入した。このとき、試料の約5mmを皮膚外に残した(図29参照)。
埋め込み後30日で、実施例9の試料の周辺組織を採取した。埋め込んだ試料付近の組織に炎症および壊死は見られなかった。実施例9の試料は、軟組織である皮膚および皮下組織に取り囲まれ、固定されていた(図30参照)。
[実施例10]
径が30μmのポリエステル繊維からなり、空隙率が95%以上ある布を用意し、その布にチタンを厚さが100nmとなるようにスパッタコートした。その試料を幅10mm×長さ20mm×厚さ10mmのサイズに切り出した。その後、図31に示すように、130℃で、厚さを10mmから2mmに圧縮した(実施例10)。
この実施例10の試料は、内部の繊維までチタンが安定してコートされており、緻密なチタンコートされた繊維からなる布であった。
図1aは本発明の医療材料の一実施形態を示す斜視図、図1bはその医療材料の拡大断面図、図1cはその医療材料を構成する繊維の拡大断面図である。 本発明の医療材料の他の実施形態を示す斜視図である。 本発明の医療材料の製造法を示す工程図である。 本発明の医療材料の製造法の他の実施形態を示す工程図である。 図4の製造法で得られた繊維の拡大断面図である。 図6a、b、c、は、本発明の医療材料の使用方法を示す概略図である。 図7aおよび図7bはそれぞれ本発明の医療材料のさらに他の実施形態を示す概略斜視図および断面図である。 本発明の医療材料のさらに他の実施形態を示す概略斜視図である。 本発明の医療材料のさらに他の実施形態を示す概略斜視図である。 本発明の医療材料のさらに他の実施形態を示す概略斜視図である。 本発明の医療材料の実施例(実施例1)を示す顕微鏡写真である。 図11の倍率を上げた顕微鏡写真である。 図11のさらに倍率を上げた顕微鏡写真である。 図11のさらに倍率を上げた顕微鏡写真である。 図11の医療材料の製造途中における裏面側から見た顕微鏡写真である。 図15の倍率を上げた顕微鏡写真である。 本発明の医療材料の他の実施例(実施例2)を示す顕微鏡写真である。 図17の医療材料の倍率を上げた顕微鏡写真である。 図17の医療材料のさらに倍率を上げた顕微鏡写真である。 図17の医療材料のさらに倍率を上げた顕微鏡写真である。 図17の医療材料の製造途中における裏面側から見た顕微鏡写真である。 図17の医療材料の製造途中における裏面側から見た倍率を上げた顕微鏡写真である。 本発明の医療材料のさらに他の実施例(実施例3)を示す顕微鏡写真である。 図23の医療材料の倍率を上げた顕微鏡写真である。 図23の医療材料のさらに倍率を上げた顕微鏡写真である。 本発明の医療材料のさらに他の実施例(実施例8)を示す写真である。 図26の医療材料を試験用豚に挿入した状態を撮影した写真である。 図27の状態で30日間置いた後の実施例8示す写真である。 本発明の医療材料のさらに他の実施例(実施例9)を試験用豚に挿入した状態を撮影した写真である。 図29の状態で39日間置いた後の実施例9を豚の皮下の内側から撮影した写真である。 本発明の医療材料のさらに他の実施例(実施例10)を示す写真である。
符号の説明
10 医療材料(シート状)
11 被覆繊維
12 隙間
13 芯材
14 被覆層
15 接触している部位
16 腹部透析用経皮端子
16a 経皮端子の端部
17 皮膚
19 カテーテル
19a カテーテルの一部位
18 医療材料(シート状)
20 医療材料(蒸着後編組)
21 交差している部位
22 医療材料(積層シート)
23 医療材料(円筒状)
24 医療材料(凸湾曲面)
25 医療材料(継ぎ目なし円筒状)

Claims (8)

  1. 柔軟な繊維からなる芯材と、その芯材の周囲に設けられたチタンないしチタン化合物からなる被覆層とを備えた被覆繊維が、多数本互いに隙間をあけて集積されている医療材料であって、前記被覆層同士が接触し、前記被覆層同士が接合されている部位を有する医療材料
  2. 前記被覆層の外周または内周にプラチナまたは銀からなる制菌層を備えた、請求項1記載の医療材料。
  3. 前記芯材または被覆繊維がシート状の形態に集積されている請求項1または2のいずれか記載の医療材料。
  4. 前記芯材または被覆繊維が立体的な形態に集積されている請求項1または2のいずれか記載の医療材料
  5. 前記立体的な形態が管状である請求項記載の医療材料。
  6. 生体外で使用する細胞増殖用培地として形成された請求項1〜のいずれか記載の医療材料。
  7. 生体内の硬組織導入用材料として形成された請求項1〜のいずれか記載の医療材料。
  8. 生体内の軟組織導入用材料として形成された請求項1〜のいずれか記載の医療材料。
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