以下、精神疾患解析装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
本願発明は、脳波測定時の被検者の状態や環境が脳波に与える影響を除外するために、被検者の睡眠時に計測した脳波の情報を用いて、被検者の精神疾患の解析を行うようにしたものである。特に、本願発明は、本願の発明者らによる鋭意研究の結果として得られた、健常者の睡眠時の脳波と、鬱病等の精神疾患との関連についてのこれまでに知られていない知見を利用することで、睡眠時の脳波を用いて、被検者の精神疾患の有無の解析を行うようにしたものである。
図1は、本実施の形態における精神疾患解析システム10のブロック図である。
精神疾患解析システム10は、精神疾患解析装置1と脳波取得装置5とを備えている。
精神疾患解析装置1は、格納部101、解析部102、投薬判断部103、および出力部104を備える。
解析部102は、出現状況取得手段1021、判断手段1022、および特定脳波取得手段1023を備える。
投薬判断部103は、γ出現状況取得手段1031、および投与判断手段1032を備える。
格納部101には、被検者の睡眠中の脳波の情報である睡眠時脳波情報が格納される。脳波の情報(以下、脳波情報と称す)は、例えば、脳波の波形を示す情報である。例えば、脳波情報は、時系列に沿って脳から取得された電圧等の強度を示す情報である。睡眠時脳波情報は、エポック等と呼ばれる予め指定された長さの期間で、1以上の区間に区切られていても良い。エポックとしては、例えば、30秒から60秒程度までのいずれかの期間が設定される。ただし、エポックの時間の長さは何秒であってもよく、その長さは問わない。エポックは、脳波を測定する際の測定時間の単位や、脳波に対して演算処理等を行う際の処理単位と考えても良い。エポック等の期間には、例えば、期間の開始時刻や終了時刻の情報が対応付けられていても良い。また、各エポックの取得順番を示す情報や、各エポックの識別情報等が対応付けられていても良い。格納部101に格納されている睡眠時脳波情報は、被検者が睡眠中である期間のうちの、一部の期間の脳波情報であっても良い。例えば、睡眠時脳波情報のうちの、REM睡眠(ここでは、レム睡眠と呼ぶ)期間や、NON−REM睡眠(ここでは、ノンレム睡眠と呼ぶ)期間の情報や、その一部の情報だけが、格納部101に格納されていてもよい。格納部101には、睡眠時脳波情報を含む脳波情報が格納されていてもよい。例えば、格納部101には、睡眠中の脳波情報と、睡眠中の前後の脳波情報とが格納されていても良い。
図2は、格納部101に格納されている一の睡眠時脳波情報を含む脳波情報が示す睡眠の状態を、時系列に沿って示した睡眠経過の概略図である。例えば、図において、「R」や「L」や、「D」で示される部分が睡眠時脳波情報である。なお、この図は、脳波情報そのものを示すものではない。
格納部101には、例えば、被検者の睡眠時脳波情報が、被検者の識別情報と対応付けて格納される。被検者の識別情報とは、被験者名や、被検者に割り当てられた番号や記号等である。格納部101には、脳波計等が取得した睡眠時脳波情報がそのまま格納されていても良いし、1以上の特定の周波数の睡眠時脳波情報が格納されても良い。ここでの周波数は、周波数帯と考えて良い。特定の周波数の睡眠時脳波情報は、例えば、δ波(0.5〜4Hz)、α波(8〜12Hz)、β波(18〜30Hz)、γ波(35〜45Hz)等である。
格納部101に睡眠時脳波情報が蓄積される過程は問わない。例えば、記録媒体を介して睡眠時脳波情報が蓄積されてもよく、通信回線や信号線等を介して送信された睡眠時脳波情報が、図示しない受付部等を介して受け付けられ、格納部101に蓄積されてもよい。本実施の形態においては、格納部101には、後述する脳波取得装置5が取得した被検者の睡眠時脳波情報を含む脳波情報が蓄積される場合を例に挙げて説明する。なお、ここでの蓄積は、一時記憶も含む概念である。格納部101には、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
解析部102は、格納部101に格納されている睡眠時脳波情報について、精神疾患の有無に関連する解析を行う。具体的には、一の被検者の睡眠時脳波情報を用いて、この一の被検者の精神疾患の有無に関する解析を行う。精神疾患とは、例えば、鬱病や、統合失調症や、パニック症候群等である。解析部102が行う精神疾患の有無に関する解析とは、例えば、精神疾患の有無を判断することである。また、睡眠時脳波情報から、精神疾患の有無の判断に利用される脳波に関する情報を取得することを、睡眠時脳波情報についての精神疾患の有無に関する解析と考えても良い。例えば、睡眠時脳波情報の精神疾患の有無に関連がある箇所や睡眠時脳波情報を処理した値等を取得することでも良い。
解析部102は、例えば、睡眠時脳波情報に含まれる予め指定された特定の周波数の脳波情報の出現状況を示す情報を取得する。そして、取得した情報に応じて精神疾患の有無の判断を行う。特定の周波数の脳波情報とは、特定の周波数帯の脳波情報と考えてもよい。特定の周波数の脳波情報とは、例えば、上述したようなδ波、α波、β波、γ波等である。例えば、解析部102は、睡眠時脳波情報に含まれるα波、δ波、またはβ波の出現状況を示す情報を取得し、情報に応じて精神疾患の有無の判断を行う。解析部102は、例えば、睡眠時脳波情報のうちの、解析内容に応じた周波数の脳波情報を用いて解析を行う。精神疾患の有無の判断とは、精神疾患の有無の可能性の判断、あるいは、有無の可能性の高低の判断等と考えても良い。
特定の周波数の脳波情報の出現状況とは、例えば、特定の周波数の脳波情報が出現する頻度や、特定の周波数の脳波情報の強度についての状況や、特定の周波数の脳波情報の振幅についての状況や、特定の周波数の脳波情報の波形の形状についての汚さや乱れ等の状況である。
また、解析部102は、解析の際には、睡眠時脳波情報のうちの、解析内容に応じた特定の期間の脳波情報だけを用いるようにしても良い。特定の期間とは、例えば、レム睡眠期間や、ノンレム睡眠期間や、入眠時刻や起床時刻や、レム睡眠に入った時刻等を基準として指定される期間である。格納部101に、睡眠時脳波情報を含む脳波情報が格納されている場合、解析部102は、例えば、その脳波情報から、睡眠時脳波情報を取得する。また、睡眠時脳波情報内の特定の期間の脳波情報を解析に利用する場合、解析部102は、例えば、この特定の期間の脳波情報を格納部101に格納されている睡眠時脳波情報から取得すればよい。なお、格納部101に、予め、解析に利用される特定の期間の睡眠時脳波情報が格納されている場合、この特定の期間の睡眠時脳波情報を読み出すようにすればよい。解析部102が読み出す睡眠時脳波情報は、上述したエポック単位の情報であっても良い。脳波情報から睡眠時脳波情報や、レム睡眠期間やノンレム睡眠期間等の特定の期間の脳波情報を取得する処理は、例えば、特開2004−173887号公報(段落0016等)において公知であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
本実施の形態においては、一例として、解析部102が、出現状況取得手段1021と、判断手段1022とを備えており、これらを用いて、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるα波の出現状況を示す情報を取得して、取得した情報に応じて精神疾患の有無の判断を行う場合について説明する。
また、解析部102は、睡眠時脳波情報から、予め指定された1以上または2以上の特定の周波数(周波数帯)の脳波情報を取得してもよい。1以上または2以上の特定の周波数の脳波情報は、例えば、バンドパスフィルタ等のフィルタを用いることで、取得可能である。本実施の形態においては、一例として、解析部102が、特定脳波取得手段1023を備えており、これを用いて、1以上または2以上の特定の周波数(周波数帯)の脳波情報を取得する場合について説明する。
解析部102は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。解析部102の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
出現状況取得手段1021は、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるα波の出現状況を示す情報を取得する。例えば、出現状況取得手段1021は、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるα波の出現頻度または強度を示す情報を取得する。ここでは、精神疾患の一つである鬱病の有無の判断を行うために、出現状況取得手段1021が、(1)ノンレム睡眠期間内のα波の紡錘波の出現頻度を示す情報を取得する場合、(2)ノンレム睡眠期間内のα波の出現頻度を示す情報を取得する場合、(3)ノンレム睡眠期間内のα波の強度を取得する場合の例についてそれぞれ説明する。
(1)α波の紡錘波の出現頻度を取得する場合
一般に、健常者のノンレム睡眠期間の脳波には、睡眠紡錘波(スピンドル波)と呼ばれる周波数帯が12から14Hzである紡錘の形に似ている脳波パターン(波形)が、律動的に連続して現れるが、ここでのα波帯の紡錘波(以下、α紡錘波)は、この睡眠紡錘波と形状は似ているが、周波数帯が異なる脳パターンである。本願発明者らの鋭意研究の結果、健常者においては、このような紡錘波がノンレム睡眠期間にはほとんど現れないのに対し、鬱病患者においては、このような紡錘波がノンレム睡眠期間に高い頻度で現れるというこれまでに知られていない知見が得られた。例えば、睡眠時脳波情報が、30秒単位の複数のエポックで構成されている場合、ノンレム睡眠期間中のほぼ全てのエポックにおいて、このα紡錘波が出現するという知見が得られた。
図3は、鬱病患者の睡眠時脳波情報のうちの、ノンレム睡眠期間の一のエポックの脳波の波形の一例を示す図である。
図4は、健常者の睡眠時脳波情報のうちの、ノンレム睡眠期間の一のエポックの脳波の波形の一例を示す図である。
図3に示すように、鬱病患者のノンレム睡眠期間の脳波情報には、多数のα紡錘波61a〜61cが現れているが、健常者のノンレム睡眠期間の脳波情報には、図4に示すように、α紡錘波は、ほとんど現れない。
このため、出現状況取得手段1021は、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報において、α帯域の紡錘波を検出し、紡錘波の出現頻度を示す情報を取得する。出現状況取得手段1021は、ノンレム睡眠期間内の予め指定された一部の期間からα帯域の紡錘波を検出してもよい。例えば、出現状況取得手段1021は、ノンレム睡眠期間内の予め指定された長さの期間や、連続した予め指定された数のエポックから、α紡錘波を検出する。α紡錘波は、睡眠紡錘波と周波数帯が異なる点を除けば、同様の脳波パターンのものであるため、α紡錘波は、例えば、特開昭58−78647号公報等において開示されているスピンドル波を取得する処理と同様の処理を用いることで取得可能である。なお、一のα紡錘波の長さは、例えば、0.5秒から1.5秒である。
出現状況取得手段1021は、検出したα紡錘波の数を、出現頻度を示す情報としても良い。また、検出した紡錘波の数を、検出対象となったエポック数や、検出対象となった期間の時間で除算した値等を出現頻度を示す情報としても良い。また、出現状況取得手段1021は、ノンレム睡眠期間内の予め指定された数のエポックのうちの、1以上のα紡錘波が検出されたエポック数、あるいはこのエポック数の予め指定された数に対する比率を、出現頻度を示す情報としてもよい。
(2)α波の出現頻度を示す情報を取得する場合
上述したように、鬱病患者においては、ノンレム睡眠期間におけるα紡錘波が多いことから、ノンレム睡眠期間におけるα波の出現頻度が高い。
図5は、鬱病患者の睡眠時脳波情報の各エポックに対して高速フーリエ変換を行った際に得られたα波のピークの値を、時系列に沿って並べたグラフの一例を示す図である。図において、斜線で示した部分がノンレム睡眠期間である。
また、図6は、健常者の睡眠時脳波情報の各エポックに対して高速フーリエ変換を行った際に得られたα波のピークの値を、時系列に沿って並べたグラフの一例を示す図である。図において、斜線で示した部分がノンレム睡眠期間である。
図5および図6に示すように、鬱病患者の方が、明らかにノンレム睡眠期間のα波の強度が低いことが分かる。
このため、出現状況取得手段1021は、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報において、α波の出現頻度を示す情報を取得する。ここでは、一例として、出現状況取得手段1021は、フーリエ変換により、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間を構成する複数の期間について、それぞれα波の成分を検出し、α波の成分が検出された期間の出現頻度を示す情報をα波の出現頻度を示す情報として取得する。α波の成分が検出された期間とは、予め指定された閾値以上のα波が検出された期間と考えても良い。睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間を構成する複数の期間は、フーリエ変換の対象とするために、ノンレム睡眠期間を複数に分割して得られた各期間であってもよいし、上述したようなエポック等の予め区切られている期間であっても良い。各期間は、同一の長さの期間であることが好ましい。例えば、出現状況取得手段1021は、ノンレム睡眠期間を構成する予め指定された複数の期間(例えば、エポック)についてそれぞれフーリエ変換を行って周波数のスペクトルを取得する。フーリエ変換としては、例えば、高速フーリエ変換(以下、FFTと称す)を行う。そして、各期間(エポック)についてのFFTの結果(例えば、FFTにより得られたスペクトル)に、α波の成分が含まれるか否かを判断する。出現状況取得手段1021は、例えば、予め指定された閾値以上のレベルのα波の成分が、各期間について得られたFFTの結果に含まれるか否かを判断して、閾値以上のレベルのα波の成分が含まれる場合に、その期間内にα波の成分が含まれると判断するようにしても良い。そして、α波の成分が含まれると判断された期間(エポック)の数、または、この数の上述した予め指定された複数の期間の数に対する比率を、出現頻度を示す情報としても良い。なお、フーリエ変換を用いる代わりに、スペクトルアナライザ等を用いて、各期間におけるα波の有無を検出しても良い。
(3)ノンレム睡眠期間内のα波の強度を取得する場合
上述したように、鬱病患者においては、ノンレム睡眠期間におけるα紡錘波が多いことから、ノンレム睡眠期間におけるα波の強度も大きい。このため、出現状況取得手段1021は、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報において、α波の強度を示す情報を取得する。α波の強度とは、例えば、α波の単位時間当たりのエネルギーや、α波の波形の大きさ(例えば、電圧)等である。かかることは、他の周波数帯の脳波情報についても同様である。ここでは、一例として、出現状況取得手段1021は、上記の(2)の場合と同様に、FFT等のフーリエ変換により、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間を構成する1以上の期間について、それぞれα波の成分を検出し、検出したα波成分のピーク等のレベル(値)を、各期間のα波の強度を示す情報として取得する。または、FFTの結果が示すα波帯の強度の合計や強度の積分値をα波の強度を示す情報として取得しても良い。これにより、例えば、各期間を単位とした時系列に沿ったα波の強度の変化を示す情報を取得することができる。なお、フーリエ変換を用いる代わりに、スペクトルアナライザ等を用いて、各期間におけるα波の強度を検出しても良い。
なお、出現状況取得手段1021は、上述した(1)から(3)に示した処理のうちの一つだけを行っても良いし、複数の処理を行っても良い。
出現状況取得手段1021は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。出現状況取得手段1021の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
判断手段1022は、出現状況取得手段1021が取得したα波の出現状況を示す情報に応じて、精神疾患の有無の判断を行う。例えば、判断手段1022は、出現状況取得手段1021が取得したα波の出現頻度または強度を示す情報に応じて精神疾患の有無を判断する。
例えば、出現状況取得手段1021が、上記の(1)のように、ノンレム睡眠期間におけるα波の紡錘波の出現頻度を示す情報を取得する場合、判断手段1022は、予め用意されたα紡錘波の出現頻度の閾値を読み出し、出現状況取得手段1021が取得したα紡錘波の出現頻度を示す値が、この閾値を超えるか否かを判断し、超えた場合、睡眠時脳波情報に対応する被検者が鬱病であると判断する。例えば、この場合の閾値は、2以上であることが好ましい。また、ノンレム睡眠期間内の複数のエポックにおいて、閾値以上のα紡錘波を含むエポックの出現頻度が、閾値以上である場合、鬱病であると判断しても良い。例えば、この場合、2以上のα紡錘波を含むエポックの出現頻度が、対象となるエポック全体の、80%以上、好ましくは90%以上である場合、鬱病である可能性が高いと判断する。鬱病であると判断することは、鬱病である可能性が高いことを判断することも含む概念である。かかることは以下においても同様である。
また、例えば、出現状況取得手段1021が、上記の(2)のように、ノンレム睡眠期間におけるα波の出現頻度を示す情報を取得する場合、判断手段1022は、予め用意されたα波の出現頻度の閾値を読み出し、出現状況取得手段1021が取得したα波が検出された期間の出現頻度を示す値が、この閾値を超えるか否かを判断し、超えた場合、睡眠時脳波情報に対応する被検者が鬱病であると判断する。α波の出現頻度の閾値は、例えば、12%、好ましくは15%に設定すればよいことが本願発明者の研究により分かっている。例えば、判断手段1022は、ノンレム睡眠期間全体あるいは一部の期間内に検出されたα波が検出された時間の比率が、12%以上であれば、鬱病と判断する。
また、例えば、出現状況取得手段1021が、上記の(3)のように、ノンレム睡眠期間におけるα波の成分についての強度を示す情報を取得する場合、判断手段1022は、予め用意されたα波の強度の閾値を読み出し、出現状況取得手段1021が各期間について取得したα波の成分の中に、この閾値を超える強度を有するものがあるか否かを判断し、超えた場合、睡眠時脳波情報に対応する被検者が鬱病であると判断する。α波の強度の閾値は、例えば、1から1.5μV2である。重い鬱病を検出する際には、閾値を2μV2に設定しても良い。あるいは、ノイズや測定ミス等の要因等を考慮して、この閾値を超える強度を示す期間が、予め指定された数以上ある場合に、各期間について取得したα波の成分の中に、この閾値を超える強度を有するものがあると判断するようにしても良い。また、判断手段1022は、各期間のα波の強度の平均値を算出し、この平均値が予め指定された閾値を超えるものであるか否かを判断することで、出現状況取得手段1021が各期間について取得したα波の成分の中に、この閾値を超える強度を有するものがあるか否かを判断するようにしても良い。平均値が閾値を超える場合、当然、閾値を超える値が含まれため、このような判断を行っても、結果的に同様の判断結果が得られる。
なお、判断手段1022は、出現状況取得手段1021が、上述した(1)から(3)に示した処理のうちの複数の処理を行った場合に、それぞれの処理の結果について、上記の判断を個別に行って、それぞれの判断結果を取得しても良い。また、それぞれの判断結果を更に用いて総合的な判断結果を取得しても良い。例えば、複数の処理に対する個別の判断結果において、全ての判断結果が、鬱病であると判断された場合にだけ、鬱病であるという判断結果を取得しても良い。また、複数の処理に対する個別の判断結果の中に、鬱病であるという判断結果と鬱病でないという判断結果が混在した場合に、鬱病の可能性がある等の判断結果を取得しても良い。
判断手段1022は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。判断手段1022の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
特定脳波取得手段1023は、睡眠時脳波情報から、予め指定された1以上の特定の周波数の脳波情報を取得する。特定の周波数とは、特定の周波数帯と考えても良い。この実施の形態においては一例として、睡眠時脳波情報から、α波を取得する。予め指定された1以上の特定の周波数の脳波情報は、上述したα紡錘波が検出された部分であっても良い。特定の周波数の脳波情報を取得するということは、特定の周波数成分だけを示す波形の情報を、バンドパスフィルタ等のフィルタを用いて取り出すことであっても良いし、特定の周波数が含まれる脳波情報を取得することであっても良いし、特定の周波数が含まれる脳波情報を結果的に取得することが可能な情報、例えば、特定の周波数が含まれている期間を示す情報を取得することであっても良い。例えば、睡眠時脳波情報から、特定の周波数の成分が含まれる波形や、この波形が存在する期間を示す時刻の情報(開始時刻や終了時刻)を取得することであっても良い。例えば、睡眠時脳波情報のうちの、α波紡錘波が検出された期間に対応する期間の波形を、特定の周波数の脳波情報として取得しても良い。特定脳波取得手段1023は、例えばノンレム睡眠期間の睡眠時脳波情報から、特定の周波数の脳波情報を取得する。例えば、ノンレム睡眠期間内の、出現状況取得手段1021がα波の出現状況を示す情報の取得対象とする期間内から、特定の周波数の脳波情報を取得する。ここでの取得する特定の周波数の脳波情報は、振幅等の出力が予め指定された閾値以上である部分だけであっても良い。例えば、特定脳波取得手段1023が取得する脳波情報は、特定の周波数の脳波情報を有する非連続な複数の期間の脳波情報であっても良い。また、解析部102は、予め指定された2以上の特定の周波数の脳波情報を取得するようにしても良い。例えば、α波と、β波等の脳波情報を取得するようにしてもよい。
また、特定脳波取得手段1023は、睡眠時脳波情報から、予め指定された特定の周波数の脳波情報の出現状況を示す情報を取得するようにしても良い。この処理は、上述した出現状況取得手段1021と同様の処理である。このため、この処理を行う部分については、出現状況取得手段1021と特定脳波取得手段1023とを併合しても良い。あるいは、出現状況取得手段1021が取得した出現状況を示す情報を、特定脳波取得手段1023が適宜取得しても良い。ここでは、一例として、特定の周波数の脳波情報はα波である。
特定脳波取得手段1023は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。特定脳波取得手段1023の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
投薬判断部103は、格納部101に格納されている睡眠時脳波情報に含まれるγ波の出現状況を示す情報を取得し、この情報に応じて、精神疾患に対する薬の投与の有無を判断する。睡眠時脳波情報に検出されるγ波は、体動の際に、体が大きく揺れることで発生するノイズの波形であり、睡眠時であれば、いわゆる被検者が寝返りを打っている際に発生する波形と考えられる。つまり、γ波を検出することは、被検者の寝返りを打ったタイミングを検出することである。ここで、鬱病の患者に対しては、治療の一環として、抗鬱剤や、抗不安剤等を投与することで、薬剤の効果により睡眠させているケースがあり、このような場合には、睡眠前半においては、特に、寝返りを行わないことが多い。つまり、投薬が行われている場合、γ波の発生が低減される傾向にある。
図7は、鬱病患者の睡眠期間の各エポックに対してFFTを行った際に得られた各エポックにおけるγ波の発生比率を、時系列に沿って並べたグラフの一例を示す図である。
また、図8は、健常者の睡眠期間の各エポックに対してFFTを行った際に得られた各エポックにおけるγ波の発生比率を、時系列に沿って並べたグラフの一例を示す図である。
図7および図8に示すように、鬱病患者の方が、明らかに睡眠期間の前半におけるγ波の発生頻度が健常者に比べて低いことが分かる。
このことを利用して、投薬判断部103は、睡眠時脳波情報に含まれるγ波の出現状況を示す情報を用いて、寝返りの頻度を判断することで、精神疾患に対する薬の投与の有無を判断する。ここでは、一例として、投薬判断部103が、γ出現状況取得手段1031と、投与判断手段1032とを用いて、投薬を判断する場合について説明する。
投薬判断部103は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。投薬判断部103の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
γ出現状況取得手段1031は、格納部101に格納されている睡眠時脳波情報に含まれるγ波の出現状況を示す情報を取得する。γ出現状況取得手段1031は、投薬の効果を考慮すると、例えば、睡眠期間の前半部分の睡眠時脳波情報の一部あるいは全体から、γ波の出現状況を示す情報を取得することが好ましい。出現状況を示す情報は、例えば、出現頻度を示す情報である。γ出現状況取得手段1031は、例えば、上述した(2)の場合において、出現状況取得手段1021がα波の出現頻度を示す情報を取得した場合と同様の処理により、フーリエ変換により、睡眠時脳波情報の複数の期間について、それぞれγ波の成分を検出し、γ波の成分が検出された期間の出現頻度を示す情報をγ波の出現頻度を示す情報として取得する。γ波の成分が検出された期間とは、予め指定された閾値以上のγ波が検出された期間と考えても良い。また、睡眠時脳波情報内の1以上の期間について、上述した(3)の場合と同様に、γ波の強度をγ波の出現状況を示す情報として取得しても良い。
γ出現状況取得手段1031は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。γ出現状況取得手段1031の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
投与判断手段1032は、出現状況取得手段1032が取得したγ波の出現状況を示す情報に応じて、精神疾患に対する薬の投与の有無を判断する。例えば、投与判断手段1032は、予め指定されている閾値を読み出して、γ出現状況取得手段1031が取得したγ波の出現状況を示す情報の値が、この閾値を超えるか否かを判断し、超えない場合に、精神疾患に対する薬の投与が行われていると判断する。例えば、投与判断手段1032は、7〜8時間の睡眠期間中のγ波の出現回数が30回未満であれば、薬の投与が行われていると判断する。また、薬が投与されている場合、睡眠期間の前半におけるγ波の発生が少ないことから、投与判断手段1032は、睡眠期間前半の3時間前後の時間内におけるγ波の出現階数が10回未満であれば、薬が投与されていると判断しても良い。より確実に判断するためには、γ波の出現階数が5回未満であれば、薬が投与されていると判断しても良い。
投与判断手段1032は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。投与判断手段1032の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
出力部104は、解析部102による解析結果の出力を行う。例えば、出力部104は、解析部102(ここでは、特に、判断手段1022)による精神疾患の有無の判断結果を出力する。精神疾患の有無の判断結果は、精神疾患名を含む情報であっても良い。更に、出力部104は、投薬判断部103(ここでは、特に、投与判断手段1032)の判断結果を出力してもよい。例えば、投薬の有無を示す判断結果を出力しても良い。
また、出力部104は、例えば、解析部102(ここでは、特に特定脳波取得手段1023)が取得した特定の周波数の睡眠時脳波情報を示す出力を行ってもよい。特定の周波数の睡眠時脳波情報を示す出力とは、解析部102が、フィルタ処理等により取得した特定の周波数の波形、例えば、α波の波形をそのまま出力することであっても良いし、睡眠時脳波情報のうちの、解析部102が取得した特定の周波数が含まれる部分や期間を示す出力を行うことであっても良い。このような出力を行うことで、異常箇所を見つけやすくなる。
出力部104は、例えば、解析部102(ここでは、特に特定脳波取得手段1023)が取得した特定の周波数の睡眠時脳波情報と、この睡眠時脳波情報の取得元となる睡眠時脳波情報とを示す出力を行ってもよい。このことは、例えば、フィルタ処理等により取得した特定の周波数の波形、例えば、α波の波形と、その取得元となる睡眠時脳波情報の波形とを出力することであっても良いし、睡眠時脳波情報の、特定の周波数の波形が取得された部分を、他の部分と異なる表示態様となるよう出力(例えば、ハイライト出力)することであっても良い。
また、出力部104は、例えば、解析部102(ここでは、特に特定脳波取得手段1023)が取得した2以上の特定の周波数の睡眠時脳波情報を示す出力を行う。このことは、例えば、フィルタ処理等により取得した2以上の特定の周波数の波形、例えば、α波の波形とβ波の波形とを出力することであっても良いし、睡眠時脳波情報の、2以上の特定の周波数の波形が含まれている部分だけを出力することであっても良い。
また、出力部104は、例えば、解析部102(ここでは、特に特定脳波取得手段1023)が取得した出現状況を示す情報の出力を行うようにしても良い。例えば、睡眠時脳波情報に含まれる連続した複数の期間(例えば、エポック)についてそれぞれ取得した特定の周波数の強度を、時系列のグラフで表した情報を、出現状況を示す情報として出力しても良い。
ここで述べる出力とは、ディスプレイへの表示、プロジェクターを用いた投影、プリンタへの印字、外部の装置への送信、記録媒体への蓄積、他の処理装置や他のプログラムなどへの処理結果の引渡しなどを含む概念である。出力部104は、ディスプレイやスピーカー等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。出力部104は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
脳波取得装置5は、被検者の睡眠時の脳波を測定する。測定により取得された睡眠時脳波情報を、ネットワーク経由や信号線経由で精神疾患解析装置1に送信したり、図示しない記憶媒体等に蓄積する。脳波取得装置5は、例えば、脳波計である。
図9は、本実施の形態における精神疾患解析装置の動作を示すフローチャートである。以下、動作について説明する。なお、ここでは、睡眠時脳波情報は、複数のエポックで構成された情報であるとする。
(ステップS901)精神疾患解析装置1は、睡眠時脳波情報の解析を行う指示を受け付けたか否かを判断する。この指示は、例えば、図示しない受付部等を介して受け付ける。解析を行う指示は、被検者を識別する情報や、解析対象となる睡眠時脳波情報を識別する情報を有していても良い。例えば、格納部101には、被検者の睡眠時脳波情報が、被検者を識別する情報や、睡眠時脳波情報を識別する情報と対応付けて蓄積されている。解析を行う指示を受け付けた場合、ステップS902に進み、受け付けていない場合、ステップS901に戻る。
(ステップS902)出現状況取得手段1021は、格納部101に格納されている睡眠時脳波情報から、ノンレム睡眠期間のn(nは2以上の整数)個のエポックの脳波情報を読み出す。例えば、ノンレム睡眠期間の開示時点から所定時間経過した位置から、連続したn個のエポックを読み出す。出現状況取得手段1021は、例えば、解析を行う指示が示す被検者の識別情報に対応付けられた睡眠時脳波情報、あるいは、解析を行う指示が有する識別情報に対応した睡眠時脳波情報からエポックを読み出す。読み出した脳波情報は、図示しないメモリ等に一時記憶する。
(ステップS903)出現状況取得手段1021は、カウンターmに1を代入する。また、カウンターkに0を代入する。
(ステップS904)出現状況取得手段1021は、カウンターmの値がnより大きいか否かを判断する。大きくない場合、ステップS905に進み、大きい場合、ステップS913に進む。
(ステップS905)出現状況取得手段1021は、m番目のエポックにおいて、α紡錘波を検出する。
(ステップS906)出現状況取得手段1021は、m番目のエポックにおいて、p(pは1以上の整数)以上のα紡錘波が検出されたか否かを判断する。pの値としては、例えば「2」等が用いられる。なお、pの値は、実験結果等に応じて、最適化することが好ましい。検出された場合、ステップS907に進み、検出されていない場合、ステップS909に進む。
(ステップS907)出現状況取得手段1021は、カウンターkの値を1インクリメントする。カウンターkは、α紡錘波が検出されたエポック数をカウントするカウンターである。
(ステップS908)特定脳波取得手段1023は、ステップS905で検出された1以上のα紡錘波の出現している期間を示す情報を取得する。期間を示す情報は、例えば、期間の開始時刻と終了時刻である。取得した情報は、図示しない記憶媒体等に蓄積する。
(ステップS909)出現状況取得手段1021は、m番目のエポックについて高速フーリエ変換を行う。
(ステップS910)出現状況取得手段1021は、高速フーリエ変換の結果から、α波の強度を取得する。例えば、α波帯のピークのレベルを強度として取得する。
(ステップS911)出現状況取得手段1021は、取得したα波の強度を、m番目のエポックと対応付けて、図示しない記憶媒体等に蓄積する。出現状況取得手段1021は、取得したα波の強度を、例えば、m番目のエポックの開始時刻や、m番目のエポックの識別情報や読み出し順番等と対応付けて蓄積する。
(ステップS912)出現状況取得手段1021は、カウンターmの値を1インクリメントする。そして、ステップS904に戻る。
(ステップS913)判断手段1022は、カウンターkの値が閾値以上であるか否かを判断する。この閾値としては、例えば、nの値の8割〜9割の値が用いられる。例えば、判断手段1022は、カウンターkの値が、0.8×n以上であるか否かを判断する。閾値以上であれば、ステップS914に進み、閾値以上でなければ、ステップS916に進む。なお、kの値が閾値以上であるか否かを判断する代わりに、k÷nが閾値以上であるか否かを判断してもよい。この場合の閾値としては、例えば、0.8から0.9までの値の値が用いられる。
(ステップS914)判断手段1022は、ステップS910で取得したエポックごとのα波の強度の平均値を算出し、平均値が、予め用意された閾値以上であるか否かを判断する。この判断は、α波の強度についての鬱病であるか否かの判断である。閾値以上である場合、ステップS915に進み、以上でなければ、ステップS916に進む。
(ステップS915)判断手段1022は、解析対象となる被検者が鬱病であると判断する。そして、ステップS917に進む。
(ステップS916)判断手段1022は、解析対象となる被検者が鬱病でないと判断する。そして、ステップS918に進む。
(ステップS917)投薬判断部103は、解析対象となっている睡眠時脳波情報に対応する被検者に対して、脳波情報取得時に、薬の投与が行われていたか否かの判断処理を行い、判断結果を取得する。なお、この処理の詳細については、後述する。
(ステップS918)特定脳波取得部1023は、ステップS911で出現状況取得手段1021が蓄積したエポックごとに対応付けられたα波の強度を示す情報を読み出す。
(ステップS919)出力部104は、ステップS915やステップS916において判断手段1022が取得した判断結果を示す情報を出力する。また、出力部104は、ステップS918で取得したエポックごとのα波の強度を示す情報を用いて生成した、強度を高さで示した時系列に沿ったグラフを出力する。また、出力部104は、解析の対象となっている睡眠時脳波情報を格納部101から読み出し、これを用いて、ステップS908で取得した期間の表示態様を、他の期間と異なる表示態様とした睡眠時脳波情報を生成して、出力する。また、ステップS917による薬の投与の判断結果を出力する。そして、ステップS901に戻る。
なお、図9のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
図10は、本実施の形態における精神疾患解析装置の、投薬判断処理の動作を示すフローチャートであり、図9のステップS917の処理に相当するものである。以下、動作について説明する。
(ステップS1001)投薬判断部103は、ステップS902で読み出した睡眠時脳波情報と同じ睡眠時脳波情報から、睡眠期間の前半のj(jは、2以上の整数)個のエポックの脳波情報を読み出す。例えば、入眠時から所定時間経過したい位置から、連続したj個のエポックを読み出す。読み出した脳波情報は、図示しないメモリ等に一時記憶する。
(ステップS1002)γ出現状況取得手段1031は、カウンターiに1を代入する。また、カウンターgに0を代入する。
(ステップS1003)γ出現状況取得手段1031は、カウンターiの値がjより大きいか否かを判断する。大きくない場合、ステップS1004に進み、大きい場合、ステップS1008に進む。
(ステップS1004)γ出現状況取得手段1031は、j番目のエポックについて高速フーリエ変換を行う。
(ステップS1005)γ出現状況取得手段1031は、高速フーリエ変換の結果から、γ波成分があるか否かを判断する。ある場合、ステップS1006に進み、ない場合、ステップS1007に進む。
(ステップS1006)γ出現状況取得手段1031は、カウンターgの値を1インクリメントする。
(ステップS1007)γ出現状況取得手段1031は、カウンターiの値を1インクリメントする。そして、ステップS1003に戻る。
(ステップS1008)投与判断手段1032は、カウンターgの値が閾値以上であるか否かを判断する。閾値以上であれば、ステップS1010に進み、閾値以上でなければ、ステップS1009に進む。
(ステップS1009)投与判断手段1032は、薬が投与されていると判断する。そして、判断結果を上位の処理にリターンする。
(ステップS1010)投与判断手段1032は、薬が投与されていないと判断する。そして、判断結果を上位の処理にリターンする。
以下、本実施の形態における精神疾患解析装置1の具体的な動作について説明する。ここでは、精神疾患解析装置1が鬱病を判断する装置である場合を例に挙げて説明する。ここでは、格納部101に、脳波取得装置5により取得された複数の被検者についての睡眠時脳波情報が格納されているものとする。
図11は、格納部101に格納されている睡眠時脳波情報を管理する脳波情報管理表である。脳波情報管理表は、「被験者名」、「睡眠時脳波情報」という項目を有している。「睡眠時脳波情報」は、睡眠時脳波情報のファイル名を示している。睡眠時脳波情報は、ここでは、エポック単位の脳波情報が複数集まって構成されているものとする。なお、エポックの長さは、ここでは、30秒であるとする。
ここで、例えば、ユーザが、被験者名が「木村A」である被検者の睡眠時脳波情報を解析する指示を、図示しない受付部等を介して精神疾患解析装置1に与えたとする。
出現状況取得手段1021は、図11に示した脳波情報管理表の「被験者名」が「木村A」であるレコードで管理されている睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間から、n(nは1以上の整数)個のエポックを読み出す。ここでは、例として、nの値が「20」であるとする。また、ここでは、例えば、ノンレム睡眠期間の開始から、予め指定されたエポックが経過した時点からのエポックを読み出すものとする。そして、読み出したエポック単位の睡眠時脳波情報を、各エポックの開始時刻と対応付けて図示しないメモリ等の記憶媒体に一時記憶する。
次に、出現状況取得手段1021は、読み出したエポック単位の睡眠時脳波情報の、開始時刻が一番早い1番目のエポックについて、α紡錘波の検出を行う。α紡錘波の検出は、上述したような睡眠紡錘波を取得する公知技術を応用した処理等により行われる。
ここで、例えば、出現状況取得手段1021は、1番目のエポックから、二つのα紡錘波を検出したとする。そして、出現状況取得手段1021は、この検出した数が、予め指定されている数であるp(pは1以上の整数)以上であるか否かを判断する。このpは閾値と考えて良い。例えば、ここでは、pが「1」であったとすると、出現状況取得手段1021は、検出したα紡錘波の数「2」が、予め指定された数p以上であると判断する。このため、出現状況取得手段1021は、α紡錘波が検出されたエポック数をカウントするためのカウンターkの値を、1インクリメントする。仮に、予め指定された数p未満であれば、カウンターkの値はインクリメントしない。なお、本実施の形態においては、この閾値は、図示しない記憶媒体等に予め格納されているものとする。かかることは、他の閾値に関しても同様である。
また、特定脳波取得手段1023は、検出した二つのα紡錘波のそれぞれについて、始点と終点の時刻を、睡眠脳波情報から取得して、図示しない記憶媒体等に蓄積する。
次に、出現状況取得手段1021は、1番目のエポックに対して高速フーリエ変換(FFT)を行う。そして、変換結果におけるα波のピークの値を取得する。なお、ここでは、1番目のエポックを4秒ごとに8つに分割し、それぞれに対して高速フーリエ変換を行って得られた8つの値の平均値を、1番目のエポックに対して高速フーリエ変換を行って得られた値として用いている。かかることは2番目以降のエポックについても同様である。なお、ここでは一のエポックが30秒であるため、一のエポックを4秒ごとに分割すると、2秒しかない部分が生じるが、この2秒の部分については、そのまま高速フーリエ変換を行い、これにより得られた値を2倍した値を、この部分の高速フーリエ変換の値として用いている。例えば、ここで取得したピークの値が、「1.5μV2」であったとする。そして、ピークの値を、1番目のエポックの開始時刻と対応付けて、図示しない記憶媒体等に蓄積する。なお、ピークの値を取得する代わりに、FFTにより得られたα波の強度の積分値を取得しても良い。また、エポックの開始時刻と対応付ける代わりに、エポックの順番を示す番号等のエポックの識別情報と対応付けて蓄積するようにしても良い。
同様にして、出現状況取得手段1021および特定脳波取得手段1023は、2番目からn番目までのエポックについても同様の処理を繰り返す。処理の繰り返しの結果、カウンターkの値は、「20」になったとする。
図12は、特定脳波取得手段1023が、上記の処理の繰り返しの結果取得したα紡錘波の開始時刻と終了時刻とを管理するα紡錘波管理表を示す図である。
図13は、出現状況取得手段1021が、上記の処理の繰り返しの結果取得した各エポックにおけるα波の強度と、各エポックの開始時刻とを管理するα強度管理表を示す図である。
次に、判断手段1022は、α紡錘波が検出されたエポックの出現回数を示すカウンターkの値が予め指定されたα紡錘波が検出されたエポック数に関する閾値以上であるか否かを判断する。ここでは、閾値が「10」であったとすると、カウンターkの値「20」は、閾値を超えていると判断する。
また、判断手段1022は、図13に示したα強度管理表において、「α強度」の値の平均値を算出する。算出した平均値が「1.45μV2」であるとする。そして、その平均値が、予め指定されているα波の強度についての閾値以上であるか否かを判断する。例えば、ここでは、閾値が「1.0μV2」であったとすると、平均値は、閾値以上であると判断される。
判断手段1022は、α紡錘波が検出されたエポックの出現回数が閾値以上であり、かつ、α波の強度の平均値が閾値以上であるため、被検者が鬱病患者であるという判断結果を取得する。なお、仮に、いずれか一方でも閾値以下であれば、鬱病患者でないという判断結果を取得する。
鬱病患者であると判断されたため、γ出現状況取得手段1031は、図11に示した脳波情報管理表の「被験者名」が「木村A」であるレコードで管理されている睡眠時脳波情報のうちの睡眠期間の前半部分から、j(jは1以上の整数)個のエポックを読み出す。ここでは、例として、jの値が「20」であるとする。また、ここでは、例えば、睡眠期間の開始から、予め指定されたエポックが経過した時点からのエポックを読み出すものとする。そして、読み出したエポック単位の睡眠時脳波情報を、各エポックの開始時刻と対応付けて図示しないメモリ等の記憶媒体に一時記憶する。
次に、γ出現状況取得手段1031は、読み出したエポック単位の睡眠時脳波情報の、開始時刻が一番早い1番目のエポックについて、高速フーリエ変換を行う。そして、FFTの結果についてγ波が検出されたか否かを判断する。ここでは、閾値以上のレベル(強度)のγ波が検出されたか否かを判断する。検出された場合、カウンターgの値を1インクリメントする。また、検出されない場合、カウンターgの値はインクリメントしない。
γ出現状況取得手段1031は、同様の処理を、読み出した全てのエポックについて行う。そして、投与判断手段1032は、得られたカウンターgの値が、予め指定された閾値以上であるか否かを判断する。得られたカウンターgの値が「1」であり、閾値が「3」であったとすると、カウンターgの値が閾値未満の値であるため、投与判断手段1032は、薬の投与が行われていると判断して、判断結果を示す情報を取得する。なお、閾値以上であれば、薬の投与が行われていないと判断して、判断結果を示す情報を取得する。
出力部104は、判断手段1022が取得した「鬱病患者である」という判断結果を示す情報を、図示しないモニタ等に表示する。また、出力部104は、図13に示したα強度管理表を用いてα波の強度を高さで示した時系列に沿ったグラフを生成して、図示しないモニタ等に表示する。また、出力部104は、解析の対象となっている「木村A」に対応する睡眠時脳波情報のうちの、解析対象となっている複数のエポックの近傍の期間の情報を格納部101から読み出す。そして、この睡眠時脳波情報から、図12に示したα紡錘波管理表の各レコードにおいて開始時刻と終了時刻とで示されているα紡錘波が取得された期間の脳波情報を取得し、取得した脳波情報の部分の表示態様が、他と異なる表示態様となるようにした睡眠時脳波情報の波形図を生成して、図示しないモニタ等に表示する。例えば、背景色及び波形を示す線の色を、他の領域に対して反転させた波形図を生成する。また、投与判断手段1032が取得した、薬剤が投与されていることを示す薬の投与の判断結果を出力する。
図14は、出力部104による睡眠時脳波情報の解析結果の表示例を示す図である。図において、領域141は、判断手段1022が取得した判断結果についての表示である。また、領域142は、α強度のグラフである。また、領域143は、α紡錘波を、解析元の睡眠時脳波情報とともに示した表示である。また、領域144は、投与判断手段1032が取得した薬の投与の判断結果を示す表示である。
以上、本実施の形態によれば、睡眠時の脳波情報を用いて精神疾患の有無を判断するため、被検者に対する外部からの作用等によって生じる脳波への影響を極力減らして、正確な精神疾患の判断を行うことができる。特に、ノンレム睡眠期間におけるα波の出現状況によって、精神疾患を正確に診断することが可能となる。
また、睡眠前半におけるγ波の出現頻度によって、被検者に対する精神疾患に関連した投薬の有無を判断することができる。
また、解析元となる睡眠時脳波情報とともに、この睡眠時脳波情報から検出されたα紡錘波を出力することができ、精神疾患の診断等に有用な情報を提示することができる。また、精神疾患解析装置1による精神疾患の判断理由を確認することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態は、上記実施の形態において、解析部102の代わりに、睡眠時脳波情報のδ波を利用して精神疾患の有無を判断する解析部202を用いるようにしたものである。
図15は、本実施の形態における精神疾患解析システム20のブロック図である。この精神疾患解析システム20は、図1に示した精神疾患解析システム10において、解析部102を備えた精神疾患解析装置1を用いる代わりに、解析部202を備えた精神疾患解析装置2を用いるようにしたものであり、解析部202以外の構成については、上記実施の形態の構成と同様である。
解析部202は、出現状況取得手段2021と、判断手段2022と、特定脳波取得手段1023とを備えている。特定脳波取得手段1023については、上記実施の形態1の特定脳波取得手段1023と同様のものであり、ここでは説明は省略する。
解析部202は、上記実施の形態において示した解析部102のように、ノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるα波の出現状況を示す情報を取得して、取得した情報に応じて精神疾患の有無の判断を行う代わりに、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるδ波の出現頻度または強度を示す情報を取得し、取得した情報に応じて精神疾患の有無を判断するようにしたものである。その他の構成等について、上述した解析部102と同様であるのでここでは説明は省略する。
出現状況取得手段2021は、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるδ波の出現状況を示す情報を取得する。例えば、出現状況取得手段2021は、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるδ波の出現頻度または強度を示す情報を取得する。ここでは、精神疾患の一つである鬱病の有無の判断を行うために、出現状況取得手段2021が、(4)ノンレム睡眠期間内のδ波の出現頻度を示す情報を取得する場合、(5)ノンレム睡眠期間内のδ波の強度を取得する場合の例についてそれぞれ説明する。
(4)δ波の出現頻度を示す情報を取得する場合
本願発明者らの鋭意研究の結果、鬱病患者においては、ノンレム睡眠期間においては、δ波の出現がまれであるのに対し健常者においては、ノンレム睡眠期間におけるδ波の出現頻度が高いというこれまでに知られていない知見が得られた。
図16は、鬱病患者の睡眠時脳波情報のうちの、ノンレム睡眠期間の一のエポックの脳波の波形の一例を示す図である。
図17は、健常者の睡眠時脳波情報のうちの、ノンレム睡眠期間の一のエポックの脳波の波形の一例を示す図である。図において、期間171は、δ波が検出されている部分を示す。
図16に示すように、鬱病患者のノンレム睡眠期間の脳波情報には、ほとんどδ波が現れないが、健常者のノンレム睡眠期間の脳波情報には、図17に示すように、δ波が検出される。
このため、出現状況取得手段2021は、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報において、δ波の出現頻度を示す情報を取得する。ここでは、一例として、出現状況取得手段2021は、フーリエ変換により、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間を構成する複数の期間について、それぞれδ波の成分を検出する。なお、ここでの処理等については、上述した(2)の場合の出現状況取得手段1021の処理と、取得する周波数帯がδ波である点を除けば同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
(5)ノンレム睡眠期間内のδ波の強度を取得する場合
本願発明者らの鋭意研究の結果、健常者のノンレム睡眠期間におけるδ波の強度は、鬱病患者に対して十分に大きいというこれまでに知られていない知見が得られた。例えば、レム睡眠期間であれば、強度は、高くても約1μV2/分であるのに対し、ノンレム睡眠期間であれば、約7〜10μV2/分程度に上昇するという知見が得られた。
図18は、鬱病患者の睡眠時脳波情報の各エポックに対してFFTを行った際に得られたδ波のピークの値を、時系列に沿って並べたグラフの一例を示す図である。図において、斜線で示した部分がノンレム睡眠期間である。
また、図19は、健常者の睡眠時脳波情報の各エポックに対してFFTを行った際に得られたα波のピークの値を、時系列に沿って並べたグラフの一例を示す図である。図において、斜線で示した部分がノンレム睡眠期間である。
図18および図19に示すように、健常者の方が、明らかにノンレム睡眠期間のδ波の強度が高いことが分かる。
このため、出現状況取得手段2021は、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報において、δ波の強度を示す情報を取得する。ここでは、一例として、出現状況取得手段2021が、フーリエ変換により、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間を構成する1以上の期間について、それぞれδ波の成分を検出し、検出したδ波成分のピーク等のレベル(値)を、各期間のδ波の強度を示す情報として取得する。なお、この処理等については、上述した(3)の場合の出現状況取得手段1021の処理と、取得する周波数帯がδ波である点を除けば同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
なお、出現状況取得手段2021は、上述した(4)または(5)に示した処理のうちの一つだけを行っても良いし、複数の処理を行っても良い。
出現状況取得手段2021は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。出現状況取得手段2021の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
判断手段2022は、出現状況取得手段2021が取得したδ波の出現状況を示す情報に応じて、精神疾患の有無の判断を行う。例えば、判断手段2022は、出現状況取得手段2021が取得したδ波の出現頻度または強度を示す情報に応じて精神疾患の有無を判断する。
例えば、出現状況取得手段2021が、上記の(4)のように、ノンレム睡眠期間におけるδ波の出現頻度を示す情報を取得する場合、判断手段2022は、予め用意されたδ波の出現頻度の閾値を読み出し、出現状況取得手段2021が取得したδ波が検出された期間の出現頻度を示す値が、この閾値を超えるか否かを判断し、超えた場合、睡眠時脳波情報に対応する被検者が鬱病でないことを判断する。例えば、判断手段2022は、睡眠の第一周期のノンレム睡眠期間におけるδ波の発生頻度が、1割以上である場合、被検者が鬱病でないことを判断する。また、1エポックが30秒であるとすると、複数のエポックにそれぞれ含まれるδ波の積分値の平均が、1.5μV2以上である場合、被検者が鬱病でないと判断しても良い。
また、例えば、出現状況取得手段2021が、上記の(5)のように、ノンレム睡眠期間におけるδ波の成分についての強度を示す情報を取得する場合、判断手段2022は、予め用意されたδ波の強度の閾値を読み出し、出現状況取得手段2021が各期間について取得したδ波の成分の中に、この閾値を超える強度を有するものがあるか否かを判断し、超えた場合、睡眠時脳波情報に対応する被検者が鬱病でないと判断する。また、例えば、判断手段2022は、予め用意されたδ波の強度の閾値を読み出し、出現状況取得手段2021が各期間について取得したδ波の成分の中に、この閾値を超える強度を有するものがあるか否かを判断し、超えた場合、睡眠時脳波情報に対応する被検者が鬱病でないと判断してもよい。この場合の強度の閾値は、例えば、5μV2である。あるいは、ノイズや測定ミス等の要因等を考慮して、この閾値を超える強度を示す期間が、予め指定された数以上ある場合に、各期間について取得したδ波の成分の中に、この閾値を超える強度を有するものがあると判断するようにしても良い。また、判断手段2022は、各期間のδ波の強度の平均値を算出し、この平均値が予め指定された閾値を超えるものであるか否かを判断することで、出現状況取得手段2021が各期間について取得したα波の成分の中に、この閾値を超える強度を有するものがあるか否かを判断するようにしても良い。平均値が閾値を超える場合、当然、閾値を超える値が含まれため、このような判断を行っても、結果的に同様の判断結果が得られる。
なお、判断手段2022は、出現状況取得手段2021が、上述した(4)または(5)に示した処理のうちの複数の処理を行った場合に、それぞれの処理の結果について、上記の判断を個別に行って、それぞれの判断結果を取得しても良い。また、それぞれの判断結果を更に用いて総合的な判断結果を取得しても良い。例えば、複数の処理に対する個別の判断結果において、全ての判断結果が、鬱病であると判断された場合にだけ、鬱病であるという判断結果を取得しても良い。また、複数の処理に対する個別の判断結果の中に、鬱病であるという判断結果と鬱病でないという判断結果が混在した場合に、鬱病の可能性がある等の判断結果を取得しても良い。
判断手段2022は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。判断手段2022の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
図20は、本実施の形態における精神疾患解析装置の動作を示すフローチャートである。以下、動作について説明する。なお、図20において、図9と同一符号は同一または相当するステップを示す。
(ステップS2001)出現状況取得手段2021は、m番目のエポックについて高速フーリエ変換を行う。
(ステップS2002)出現状況取得手段2021は、ステップS2001の高速フーリエ変換の結果について、δ波が含まれているか否かを判断する。この判断は、予め指定された強度以上の強度のδ波が含まれているか否かの判断としても良い。含まれている場合、ステップS907に進み、含まれていない場合、ステップS2003に進む。
(ステップS2003)出現状況取得手段2021は、ステップS2001の高速フーリエ変換の結果から、δ波の強度を取得する。
(ステップS2004)出現状況取得手段2021は、取得したδ波の強度を、m番目のエポックと対応付けて図示しない記憶媒体等に蓄積する。
(ステップS2005)判断手段2022は、ステップS2003で取得したエポックごとのδ波の強度の平均値を算出し、平均値が、予め用意された閾値以上であるか否かを判断する。閾値以上である場合、ステップS2006に進み、以上でなければ、ステップS2007に進む。
(ステップS2006)判断手段2022は、解析対象となる被検者が鬱病でないと判断する。そして、ステップS2008に進む。
(ステップS2007)判断手段2022は、解析対象となる被検者が鬱病でないと判断する。そして、ステップS2008に進む。
(ステップS2008)特定脳波取得手段1023は、ステップS2004で出現状況取得手段2021が蓄積したエポックごとに対応付けられたδ波の強度を示す情報を読み出す。
(ステップS2009)出力部104は、ステップS2006やステップS2007において判断手段2022が取得した判断結果を示す情報を出力する。また、出力部104は、ステップS2008で取得したエポックごとのδ波の強度を示す情報を用いて生成した、強度を高さで示した時系列に沿ったグラフを出力する。また、出力部104は、ステップS917による薬の投与の判断結果を出力する。そして、ステップS901に戻る。
なお、図20のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
以下、本実施の形態の具体例について説明する。ここでは、上記実施の形態1の具体例と同様に、被検者の睡眠時脳波情報を解析する指示が与えられ、ノンレム睡眠期間から読み出された1番目のエポックについて、FFTが行われたとする。
出現状況取得手段2021は、検出した脳波情報において、δ波が検出されたか否かを判断する。ここでは、例えば、ピークの値が5μV2以上のδ波が検出されたか否かを判断するものとする。ここでは、閾値以上のδ波が検出されたとする。このため、出現状況取得手段2021は、カウンターkの値を1インクリメントする。また、出現状況取得手段2021は、FFTの結果が示すδ波のピークの値を、このエポックの開始時刻等と対応付けて、図示しない記憶媒体等に蓄積する。
そして、同様にして、出現状況取得手段2021は、2番目からn番目までのエポックについても同様の処理を繰り返す。処理の繰り返しの結果、カウンターkの値は、「18」になったとする。出現状況取得手段2021が取得したδ波の強度を示す情報は、例えば、図13と同様のδ強度管理表等で管理される。
次に、判断手段2022はカウンターkの値が予め指定された閾値以上であるか否かを判断する。ここでは、閾値が「15」であったとすると、カウンターkの値「18」は、閾値を超えていると判断する。
また、判断手段1022は、出現状況取得手段2021が、各エポックについて取得したδ波の強度について、平均値を算出する。そして、その平均値が、予め指定されている閾値以上であるか否かを判断する。例えば、ここでは、閾値が「1.0μV2」であったとすると、平均値は、閾値以上であると判断される。
判断手段1022は、δ波が検出されたエポックの出現回数が閾値以上であり、かつ、δ波の強度の平均値が閾値以上であるため、被検者が鬱病患者でないという判断結果を取得する。鬱病患者でないという判断結果は、鬱病患者でない可能性が高いという判断結果と考えても良い。かかることは、他においても同様である。なお、仮に、いずれか一方でも閾値以下であれば、鬱病患者であるという判断結果を取得する。
その後の処理については、上記実施の形態1の具体例と同様であるので、説明は省略する。
以上、本実施の形態によれば、睡眠時の脳波情報を用いて精神疾患の有無を判断するため、被検者に対する外部からの作用等によって生じる脳波への影響を極力減らして、より正確な精神疾患の判断を行うことができる。特に、ノンレム睡眠期間におけるδ波の出現状況によって、精神疾患を正確に診断することが可能となる。
(実施の形態3)
本実施の形態は、上記実施の形態1において、解析部102の代わりに、睡眠時脳波情報のβ波を利用して精神疾患の有無を判断する解析部202を用いるようにしたものである。
図21は、本実施の形態における精神疾患解析システム30のブロック図である。この精神疾患解析システム30は、図1に示した精神疾患解析システム10において、解析部102を備えた精神疾患解析装置1を用いる代わりに、解析部302を備えた精神疾患解析装置3を用いるようにしたものであり、解析部302以外の構成については、上記実施の形態の構成と同様である。
解析部302は、出現状況取得手段3021と、判断手段3022と、特定脳波取得手段1023とを備えている。特定脳波取得手段1023については、上記実施の形態1の特定脳波取得手段1023と同様のものであり、ここでは説明は省略する。
解析部302は、上記実施の形態において示した解析部102のように、ノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるα波の出現状況を示す情報を取得して、取得した情報に応じて精神疾患の有無の判断を行う代わりに、睡眠時脳波情報のうちのレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるβ波の出現頻度または波形の大きさの変化を示す情報を取得し、取得した情報に応じて精神疾患の有無を判断するようにしたものである。その他の構成等について、上述した解析部102と同様であるのでここでは説明は省略する。
出現状況取得手段2021は、睡眠時脳波情報のうちのレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるδ波の出現状況を示す情報を取得する。例えば、出現状況取得手段2021は、睡眠時脳波情報のうちのレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるβ波の出現頻度または波形の大きさの変化を示す情報を取得する。ここでは、精神疾患の一つである鬱病の有無の判断を行うために、出現状況取得手段2021が、(6)レム睡眠期間内のβ波の出現頻度を示す情報を取得する場合、(7)レム睡眠期間内のβ波の波形の大きさの変化を示す情報を取得する場合の例についてそれぞれ説明する。
(6)β波の出現頻度を示す情報を取得する場合
本願発明者らの鋭意研究の結果、レム睡眠期間におけるβ波の出現する割合が、鬱病患者においては非常に高いというこれまでに知られていない知見が得られた。β波の出現する割合とは、例えば、出現した全ての周波数の脳波情報に対する、β波の出現する割合である。β波の出現する割合は、例えば、全ての周波数の脳波情報の強度の合計に対する、β波の強度の割合と考えても良い。
図22は、鬱病患者の睡眠時脳波情報の各エポックに対してFFTを行った際に得られたβ波の割合を、時系列に沿って並べたグラフの一例を示す図である。図において、斜線で示した部分がレム睡眠期間である。
また、図23は、健常者の睡眠時脳波情報の各エポックに対してFFTを行った際に得られたβ波の割合を、時系列に沿って並べたグラフの一例を示す図である。図において、斜線で示した部分がレム睡眠期間である。
図22および図23に示すように、鬱病患者の方が、明らかにレム睡眠期間のβ波の割合が高く、30%を超えるものも多いことが分かる。これに対し、健常者のβ波の割合は、30%を超えていない。
このため、出現状況取得手段3021は、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報において、β波の出現頻度を示す情報を取得する。ここでは、一例として、出現状況取得手段2021は、フーリエ変換により、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間を構成する複数の期間について、それぞれβ波の成分の出現する割合を取得し、取得した割合が、予め閾値以上である期間の出現頻度を示す情報を、β波の出現頻度を示す情報として取得する。なお、この処理等については、上述した(2)の場合の出現状況取得手段1021の処理と、取得する周波数帯がδ波である点等を除けば同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
(7)レム睡眠期間内のβ波の波形の大きさまたは大きさの変化を示す情報を取得する場合
本願発明者らの鋭意研究の結果、鬱病患者のレム睡眠期間において出現するβ波の形状が乱れており、その結果、波形の大きさが大きくなったり、大きさの変化が激しいというこれまでに知られていない知見が得られた。
図24は、鬱病患者の睡眠時脳波情報のうちの、レム睡眠期間の一のエポックの脳波の波形の一例を示す図である。
図25は、健常者の睡眠時脳波情報のうちの、レム睡眠期間の一のエポックの脳波の波形の一例を示す図である。
図24および図25に示すように、レム睡眠期間の脳波情報には、健常者の場合も鬱病患者の場合も、β波が現れているが、鬱病患者のβ波は、健常者のβ波と比べて、出力が大きく、また、波形の変化も大きく、波形に乱れが生じている。
このため、出現状況取得手段3021は、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報において、β波の波形の大きさや大きさの変化を示す情報を取得する。例えば、レム睡眠期間の1以上の期間について、フィルタ等を用いて、睡眠時脳波情報からβ波の波形を取り出し、取り出したβ波の隣接する波同士の振幅の差を示す情報を、波形の大きさの変化を示す情報として取得する。あるいは、取得した振幅等の差の合計を波形の大きさの変化を示す情報として取得する。あるいは、振幅や波高値のばらつきを示す分散値等の値を波形の大きさの変化を示す値として取得しても良い。なお、レム睡眠期間の脳波情報を全てβ波と考えるようにして、上述したフィルタ等によりβ波を取り出す処理を省略しても良い。
なお、出現状況取得手段3021は、上述した(6)または(7)に示した処理のうちの一つだけを行っても良いし、複数の処理を行っても良い。
出現状況取得手段3021は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。出現状況取得手段3021の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
判断手段3022は、出現状況取得手段3021が取得したβ波の出現状況を示す情報に応じて、精神疾患の有無の判断を行う。例えば、判断手段3022は、出現状況取得手段3021が取得したβ波の出現頻度または波形の変化の大きさを示す情報に応じて精神疾患の有無を判断する。
例えば、出現状況取得手段3021が、上記の(6)のように、レム睡眠期間におけるβ波の出現頻度を示す情報を取得する場合、判断手段3022は、予め用意されたβ波の出現頻度の閾値を読み出し、出現状況取得手段3021が取得したβ波が検出された期間の出現頻度を示す値が、この閾値を超えるか否かを判断し、超えた場合、睡眠時脳波情報に対応する被検者が鬱病であることを判断する。β波の出現頻度の閾値は、例えば、約35%以上である。重い鬱病患者を判断するためには、閾値を約50%としてもよい。
また、例えば、出現状況取得手段3021が、上記の(7)のように、レム睡眠期間におけるβ波の波形の大きさの変化を示す情報を取得する場合、判断手段2022は、予め用意されたβ波の波形の大きさの変化や強度についての閾値を読み出し、この閾値を用いて、睡眠時脳波情報に対応する被検者が鬱病であるか否かを判断する。例えば、β波の強度が予め指定された閾値以上である場合に、鬱病であると判断しても良い。例えば、β波の強度の閾値は、0.3μV2である。また、例えば、上述したように、β波の波形の大きさの変化を示す情報が、1以上の期間内の隣接する波同士の振幅や波高値の差の情報である場合、この振幅や波高値の差の中に、閾値を超えるものがあるか否かを判断し、超えるものがある場合、被検者が鬱病であると判断する。超えるものがない場合は、鬱病でないと判断するようにしても良い。ここでの閾値を超えるものがあるか否かとは、閾値を超えるものが、予め指定された数以上あるか否かということと解釈しても良い。また、例えば、β波の波形の大きさの変化を示す情報が、上述したような振幅等の差の合計や、振幅の差の分散等の値等の値である場合、この値が、閾値を超えるか否かを判断し、超える場合、鬱病であると判断しても良い。
なお、判断手段3022は、出現状況取得手段3021が、上述した(6)または(7)に示した処理のうちの複数の処理を行った場合に、それぞれの処理の結果について、上記の判断を個別に行って、それぞれの判断結果を取得しても良い。また、それぞれの判断結果を更に用いて総合的な判断結果を取得しても良い。例えば、複数の処理に対する個別の判断結果において、全ての判断結果が、鬱病であると判断された場合にだけ、鬱病であるという判断結果を取得しても良い。また、複数の処理に対する個別の判断結果の中に、鬱病であるという判断結果と鬱病でないという判断結果が混在した場合に、鬱病の可能性がある等の判断結果を取得しても良い。また、鬱病患者では、ノンレム睡眠期間とレム睡眠期間とではβ波の強度が大きく変化することから、判断手段3022は、ノンレム睡眠期間とレム睡眠期間とのβ波の強度の変化が、予め指定された閾値以上である場合に、鬱病であるという判断結果を取得してもよい。
判断手段3022は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。判断手段3022の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
図26は、本実施の形態における精神疾患解析装置の動作を示すフローチャートである。以下、動作について説明する。なお、図26において、図9および図20と同一符号は同一または相当するステップを示す。
(ステップS2600)出現状況取得手段3021は、格納部101に格納されている睡眠時脳波情報から、レム睡眠期間のn(nは2以上の整数)個のエポックの脳波情報を読み出す。読み出した脳波情報は、図示しないメモリ等に一時記憶する。
(ステップS2601)出現状況取得手段3021は、ステップS2001の高速フーリエ変換の結果について、β波の割合が、予め指定された閾値以上であるか否か判断する。ここでの割合は、例えば、FFTで得られた全ての波形の強度の合計に対するβ波の割合である。含まれている場合、ステップS907に進み、含まれていない場合、ステップS2602に進む。
(ステップS2602)出現状況取得手段3021は、ステップS2001の高速フーリエ変換の結果から、β波の強度を取得する。
(ステップS2603)出現状況取得手段3021は、取得したβ波の強度を、m番目のエポックと対応付けて図示しない記憶媒体等に蓄積する。
(ステップS2604)出現状況取得手段3021は、レム睡眠期間の睡眠時脳波情報の予め指定された時間の長さの期間について、β波の波形の大きさの変化を示す情報を取得する。ここでは、例えば、ステップS902で読み出したエポックのうちの1番目のエポックにおいて、フィルタ等を用いてβ波を取り出し、隣接する波同士の振幅の差を順次算出する。そして、この振幅の差を、波形の大きさの変化を示す情報として取得する。
(ステップS2605)判断手段3022は、ステップS2604で取得した波形の大きさの変化を示す値の中に、予め指定された閾値以上のものがあるか否かを判断する。ここでは、例えば、閾値以上のものが、予め指定された数以上あるか否かを判断しても良い。閾値以上のものがある場合、ステップS915に進み、以上でなければ、ステップS916に進む。
(ステップS2606)特定脳波取得手段3023は、ステップS2603で出現状況取得手段3021が蓄積したエポックごとに対応付けられたβ波の強度を示す情報を読み出す。
(ステップS2607)出力部104は、ステップS915やステップS916において判断手段3022が取得した判断結果を示す情報を出力する。また、出力部104は、ステップS2606で取得したエポックごとのβ波の強度を示す情報を用いて生成した、強度を高さで示した時系列に沿ったグラフを出力する。また、出力部104は、ステップS917による薬の投与の判断結果を出力する。そして、ステップS901に戻る。
以下、本実施の形態の具体例について説明する。ここでは、上記実施の形態1の具体例と同様に、被検者の睡眠時脳波情報を解析する指示が与えられ、レム睡眠期間から読み出された1番目のエポックについて、FFTが行われたとする。
出現状況取得手段1021は、FFTで得られた全ての波形の強度の合計に対するβ波の割合をβ波の出現する割合として取得し、この割合が予め指定された閾値以上であるか否かを判断する。ここでは、例えば、β波の割合が30%以上であるか否かを判断する。ここでは、閾値以上のβ波が検出されたとする。このため、出現状況取得手段3021は、カウンターkの値を1インクリメントする。また、出現状況取得手段3021は、FFTの結果が示すβ波のピークの値を、このエポックの開始時刻等と対応付けて、図示しない記憶媒体等に蓄積する。
そして、同様にして、出現状況取得手段3021は、2番目からn番目までのエポックについても同様の処理を繰り返す。処理の繰り返しの結果、カウンターkの値は、「18」になったとする。出現状況取得手段3021が取得したβ波の強度を示す情報は、例えば、図13と同様のδ強度管理表等で管理される。
次に、判断手段3022はカウンターkの値が予め指定された閾値以上であるか否かを判断する。ここでは、閾値が「15」であったとすると、カウンターkの値「18」は、閾値を超えていると判断する。
次に、出現状況取得手段3021は、上記の1番目のエポックについて、フィルタ等を用いてβ波を取り出し、取得したβ波において隣接する波同士の振幅の差を順次算出する。
そして、判断手段3022は、出現状況取得手段2021が算出した振幅の差の絶対値のそれぞれについて、その値が、予め指定された閾値以上であるか否かを判断し、閾値以上である振幅の差の数をカウントしていく。そして、この数が予め指定されている値以上であるか否かを判断する。例えば、ここでは、予め指定されていた値を超えていたとする。
判断手段3022は、β波の出現する割合が、閾値以上であるエポックの出現回数、即ち、カウンターkの値「18」が閾値以上であり、かつ、β波の波形の大きさの変化を示す情報、即ち隣接する波同士の振幅の差の情報において、閾値以上のものが予め指定された数以上存在しているため、被検者が鬱病患者であるという判断結果を取得する。なお、仮に、いずれか一方でも閾値以下であれば、鬱病患者であるという判断結果を取得する。
その後の処理については、上記実施の形態1の具体例と同様であるので、説明は省略する。
以上、本実施の形態によれば、睡眠時の脳波情報を用いて精神疾患の有無を判断するため、被検者に対する外部からの作用等によって生じる脳波への影響を極力減らして、より正確な精神疾患の判断を行うことができる。特に、レム睡眠期間におけるβ波の出現状況によって、精神疾患を正確に診断することが可能となる。
なお、上記各実施の形態においては、解析部が、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるα波の出現頻度または強度を示す情報と、睡眠時脳波情報のうちのノンレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるδ波の出現頻度または強度を示す情報と、睡眠時脳波情報のうちのレム睡眠期間内の睡眠時脳波情報に含まれるβ波の睡眠時脳波情報の出現頻度または波形の大きさの変化を示す情報とのうちの2以上の情報を取得し、取得した情報の組合せに応じて、精神疾患の有無を判断するようにしても良い。つまり、上記各実施の形態で説明した睡眠時脳波情報を解析する処理の2以上を適宜組み合わせて行うようにし、これらの解析結果の組合せに応じて、精神疾患を判断するようにしても良い。例えば、上記のような2以上の情報を取得し、それぞれについて、上記と同様に精神疾患の有無を判断し、これらの判断結果によって、最終的に精神疾患の有無を判断してもよい。例えば、これらの全ての判断結果が、精神疾患があることを示す場合にだけ、精神疾患があると判断しても良い。あるいは、これらの全ての判断結果が、精神疾患があることを示さない場合にだけ、精神疾患がないと判断しても良い。また、精神疾患であることを示す判断結果と、精神疾患でないことを示す判断結果とが混在している場合に、精神疾患の可能性があることを示す情報等を出力してもよい。
なお、このような構成を得るためには、例えば、精神疾患解析装置に対して、上記各実施の形態において示した解析部102、解析部202、および解析部302の構成と同様の構成を有する解析部を設けるようにすればよい。なお、この場合、共通の動作を行う構成については、共用するようにしても良い。
また、このような場合においては特に、上述したように解析部の特定脳波取得手段が睡眠時脳波情報から複数の特定の周波数帯の脳波情報を取得するようにして、出力部104が、この複数の周波数帯の脳波情報を出力しても良い。このようにすることで、精神疾患の診断等に有用な情報を提示することができるとともに、精神疾患解析装置による精神疾患の判断理由を確認することが可能となる。
(実施の形態4)
本実施の形態に係る発明は、睡眠時の脳波を用いて、被検者の精神疾患の有無の判断を行う際に利用されるものである。つまり、睡眠時の脳波の波形が、精神疾患患者と健常者とでは異なるという知見に基づき、これらの波形を被検者の睡眠時の脳波の波形と比較しやすくなるよう出力することで、精神疾患であるか否かの適切な判断に役立てようとするものである。
図29は、本実施の形態における脳波情報出力装置1000のブロック図である。
脳波情報出力装置1000は、健常脳波格納部11、疾患脳波格納部12、受付部13、出力部14を備える。
健常脳波格納部11には、1以上の健常脳波情報が格納される。健常脳波情報とは、健常者の睡眠時の脳波情報である。ここで述べる健常者とは、例えば、少なくとも予め指定された精神疾患がない人である。予め指定された精神疾患とは、例えば、鬱病や、統合失調症や、パニック症候群等である。脳波情報は、脳波の情報である。脳波情報は、例えば、脳波計等の出力の情報である。脳波情報は、例えば、時系列に対応付けられた脳波計の1以上の出力値(例えば電圧値)を有する情報である。脳波情報は、例えば、脳波をサンプリングした時間(時刻)と、脳波の出力値とを有する情報であっても良い。なお、脳波情報は、脳波の波形を示す画像データであっても良い。かかることは以下においても同様である。この画像データはベクタデータでもラスタデータであってもよい。また、脳波情報は、実際に脳波計等で取得した実測値に対して、ノイズ除去等の処理を行って得られたデータであっても良い。かかることは以下においても同様である。健常脳波情報は、一の健常者の睡眠中に取得した脳波情報の一部であっても、全部であっても良い。また、健常脳波情報は、睡眠時の予め指定された周期や、フェーズや、期間等の一部の脳波情報であっても良い。例えば、睡眠第一周期の脳波情報や、レム睡眠時の脳波情報や、ノンレム睡眠時の脳波情報や、睡眠開始から、所定時間経過後の脳波情報等であっても良い。また、健常脳波情報は、睡眠時の脳波情報のうちの、予め指定された周波数帯の脳波情報であっても良い。予め指定された周波数帯の脳波情報は、例えば、α波や、β波、γ波、δ波等である。なお、健常脳波格納部11には、異なる周期や、フェーズ等で取得された脳波情報や、異なる周波数帯の脳波情報が混在していてもよく、このような場合、どの周期、フェーズ、期間等の脳波情報であるかを示す識別情報や、どの周波数帯の情報であるかを示す識別情報を、健常脳波情報が有しているようにしても良い。健常脳波情報は、健常者の代表的な睡眠時の脳波情報であることが好ましい。また、健常脳波情報の予め指定された周期やフェーズや期間の開始位置(開始時間)や終了位置(終了時間)には、頭出し等に利用可能な、いわゆるインデックスの情報や、マーカー等の情報が対応付けられているようにしても良い。健常脳波格納部11は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
疾患脳波格納部12には、1以上の疾患脳波情報が格納される。疾患脳波情報は、精神疾患患者の睡眠時の脳波情報である。ここで述べる精神疾患患者とは、例えば、少なくとも予め指定された精神疾患を有する人である。予め指定された精神疾患とは、例えば、上記と同様の、鬱病や、統合失調症や、パニック症候群等である。疾患脳波情報は、一の精神疾患患者の睡眠中に取得した脳波情報の一部であっても、全部であっても良い。また、疾患脳波情報は、睡眠時の予め指定された周期や、フェーズや、期間等の一部の脳波情報であっても良い。また、疾患脳波情報は、睡眠時の脳波情報のうちの、予め指定された周波数帯の脳波情報であっても良い。なお、疾患脳波格納部12には、異なる周期や、フェーズ等で取得された脳波情報や、異なる周波数帯の脳波情報が混在していてもよく、このような場合、どの周期、フェーズ、期間等の脳波情報であるかを示す識別情報や、どの周波数帯の情報であるかを示す識別情報を、疾患脳波情報が有しているようにしても良い。また、健常脳波情報の予め指定された周期やフェーズや期間の開始位置(開始時間)や終了位置(終了時間)には、頭出し等に利用可能な、いわゆるインデックスの情報や、マーカー等の情報が対応付けられているようにしても良い。また、疾患脳波格納部12には、異なる精神疾患を有する患者の睡眠時の脳波情報が格納されていても良い。この場合、精神疾患を識別する識別情報を、疾患脳波情報が有しているようにしても良い。疾患脳波格納部12は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
受付部13は、1以上の被検者脳波情報を受け付ける。被検者脳波情報は、被検者の睡眠時の脳波情報である。ここでの被検者とは、予め指定された精神疾患の判断対象となる人である。被検者脳波情報については、上述した健常脳波情報や、疾患脳波情報等と同様であるので、ここでは、詳細な説明は省略する。被検者脳波情報は、被検者の識別情報や、判断対象となる精神疾患の識別情報等を有していても良い。ここでの受け付けとは、図示しない記憶媒体等からの読み出しや、脳波計や、他の装置等から送信される被検者脳波情報の受信も含む概念である。受付部13は、記憶媒体から情報を読み出す手段のデバイスドライバーや、通信手段や、これらの制御ソフトウェア等で実現され得る。
出力部14は、健常脳波格納部11に格納されている健常者脳波情報と、疾患脳波格納部12に格納されている疾患脳波情報とを読み出し、読み出した健常脳波情報が示す波形(以下、健常脳波波形と称す)と、疾患脳波情報が示す波形(以下、疾患脳波波形と称す)とを並べて出力する。出力部14は、各波形に対して、更に、目盛りや凡例やタイトル等を表示するようにしても良い。出力部14は、各波形を並べて出力する際、横軸や縦軸の単位や、目盛りの間隔等は同じものとすることが好ましい。ここで述べる出力とは、例えば、波形のモニタ等への表示や、波形の紙や樹脂製のシート等への印刷である。また、表示や、印刷用のデータ(例えば画像データや電子文書形式のデータ等)を生成して送信したり、図示しない記憶媒体等に蓄積することであっても良い。出力部14による出力は、例えば、精神疾患の判断等に用いられる。出力部14は、例えば、横軸を時間軸、縦軸を波形出力の値をした健常脳波波形と疾患脳波波形とを出力する。出力部14は、波形を出力する際に、時間軸や、波形出力の値を示す軸を生成し、出力するようにしても良い。出力部14は、例えば、健常脳波波形と疾患脳波波形とを、縦に並べて出力する。また、健常脳波波形と疾患脳波波形とを重ねて出力しても良い。出力部14は、健常脳波波形と、疾患脳波波形とを、異なる色や、線種等で、出力しても良い。
出力部14は、健常脳波情報および疾患脳波情報が、上述したような周期やフェーズ等の識別情報や周波数帯の識別情報等を有している場合、これらの識別情報の少なくとも一部が一致する健常脳波情報および疾患脳波情報の波形を出力するようにしても良い。また、健常脳波情報および疾患脳波情報に対応付けられているインデックス等の頭出しに利用可能な情報が一致する箇所の波形を、出力しても良い。また、出力部14は、ユーザにより指定された、周期や、フェーズや、周波数帯等の識別情報を有する健常脳波情報および疾患脳波情報の波形を出力しても良い。また、出力部14は、健常脳波情報および疾患脳波情報の、ユーザが入力した指示により指定されたインデックス等の頭出しに利用可能な情報が付けられた箇所の波形を出力してもよい。あるいは、ユーザが入力した指示により指定された時間(期間)の健常脳波情報及び疾患脳波情報が示す波形を出力しても良い。なお、ユーザからの指示は、例えば、指示を受け付けるための指示受付部(図示せず)等から受け付けるようにすればよい。また、健常脳波情報と疾患脳波情報とが上述したような精神疾患の識別情報を有する場合、同じ精神疾患の識別情報を有する健常脳波情報を示す波形と疾患脳波情報を示す波形とを出力するようにしても良い。
また、出力部14は、受付部13が受け付けた被検者脳波情報が示す波形(以下、被検者脳波波形)を、上記の健常脳波情報及び疾患脳波情報と並べて出力するようにしても良い。例えば、出力部14は、健常脳波波形と疾患脳波波形と被検者脳波波形を、縦に並べて出力してもよい。特に、縦に並べて出力する際には、出力部14は、被検者脳波波形を、健常脳波波形と疾患脳波波形との間に挟まれた位置に配置して出力することが好ましい。このようにすることで、被検者脳波波形が、健常者の脳波の波形と精神疾患者の脳波とのどちらに近いかを判断しやすくなる。
出力部14は、ディスプレイやプリンタ等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。出力部14は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
図30は、脳波情報出力装置1000の出力部14が出力した、健常脳波波形と疾患脳波波形とを表したシートの一例を示す図である。このような健常脳波波形と疾患脳波波形とを少なくとも表したシートは、精神疾患の判断を行うために用いられるシートであることから、ここでは、このようなシートを精神疾患診断用シートと呼ぶ。この精神疾患診断用シート21においては、シート22上に、健常脳波波形23と疾患脳波波形24とが表されている。シート22の材質は、紙であってもシート上の受信であっても良い。シート22の厚さや、大きさは問わない。また、シート22の色等は問わない。シート22は、透明なシートであることが好ましい。被検者の睡眠時の脳波の波形と重ね合わせた比較ができるからである。精神疾患診断用シート21において、健常脳波波形23および疾患脳波波形24は、例えば、それぞれ、横軸を時間、縦軸を波形の出力(例えば電圧)とした波形の図として示されている。また、健常脳波波形23と疾患脳波波形24とは、縦方向に(即ち縦軸方向に)並べて表示されている。
図31は、脳波情報出力装置1000の出力部14が出力した、健常脳波波形と疾患脳波波形と被検者脳波波形とを表した精神疾患診断用シートの一例を示す図である。この精神疾患診断用シート31においては、上記と同様のシート22上に、健常脳波波形33と疾患脳波波形34と被検者脳波波形35とが表されている。精神疾患診断用シート31において、健常脳波波形33、疾患脳波波形34、および被検者脳波波形35は、例えば、それぞれ、横軸を時間、縦軸を波形の出力(例えば電圧)とした波形の図として示されている。また、健常脳波波形33、疾患脳波波形34、および被検者脳波波形35は、被検者脳波波形35が、健常脳波波形33と疾患脳波波形34との間に位置するように、縦方向に(即ち縦軸方向に)並べて表示されている。
次に、脳波情報出力装置1000の動作について図32のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)脳波情報出力装置1000は、健常脳波波形と疾患脳波波形とを出力する指示を受け付けたか否かを判断する。受け付けた場合、ステップS102に進み、受け付けていない場合、ステップS105に進む。
(ステップS102)出力部14は、健常脳波格納部11から健常脳波情報を読み出す。
(ステップS103)出力部14は、疾患脳波格納部12から疾患脳波情報を読み出す。
(ステップS104)出力部14は、ステップS102およびステップS103で読み出した健常脳波情報と疾患脳波情報とがそれぞれ示す波形とを並べて出力する。例えば、健常脳波波形と疾患脳波波形とを並べて表した精神疾患診断用シート21を出力する。そして、ステップS101に戻る。
(ステップS105)脳波情報出力装置1000は、健常脳波波形と疾患脳波波形と被検者脳波波形とを出力する指示を受け付けたか否かを判断する。受け付けた場合、ステップS106に進み、受け付けていない場合、ステップS101に戻る。
(ステップS106)受付部13は、被検者脳波情報を受け付けたか否かを判断する。受け付けた場合、ステップS107に進み、受け付けていない場合、ステップS106に戻る。
(ステップS107)出力部14は、健常脳波格納部11から健常脳波情報を読み出す。
(ステップS108)出力部14は、疾患脳波格納部12から疾患脳波情報を読み出す。
(ステップS109)出力部14は、ステップS106で受け付けた被検者脳波情報が示す波形と、ステップS107およびステップS108で読み出した健常脳波情報と疾患脳波情報とがそれぞれ示す波形とを並べて出力する。例えば、健常脳波波形と疾患脳波波形との間に、被検者脳波波形を並べて表した精神疾患診断用シート31を出力する。そして、ステップS101に戻る。
なお、図32のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
以下、本実施の形態における脳波情報出力装置1000の具体的な動作について説明する。
図33は、脳波情報出力装置1000の概念図である。図において、脳波情報出力装置1000の出力部14は、出力デバイスであるプリンタ1001と、モニタ1002と接続されている。
図34は、健常脳波格納部11に格納されている健常脳波情報の一例を示す図である。健常脳波情報は、サンプリングした時間(秒)である「時間」と、取得された脳波の出力(μV)である「出力」という項目を有している。ここでの「時間」は、脳波情報の測定開始からの経過時間であるとする。ただし、実際の時刻であっても良い。なお、ここでは、一例として、健常脳波格納部11には、一の健常脳波情報だけが格納されている場合について説明するが、複数の健常脳波情報が格納されており、出力対象となる一の健常脳波情報をユーザの指示により選択できるようにしても良い。
また、疾患脳波格納部12にも、ここでは、図34と同様の一の疾患脳波情報が格納されているものとする。ただし、この疾患脳波格納部12にも、健常脳波格納部11の場合と同様に、複数の疾患脳波情報が格納されており、出力対象となる一の疾患脳波情報をユーザの指示により選択できるようにしても良い。
まず、ユーザが、キーボードやマウス等を操作して、入力メニュー等を介して、脳波情報出力装置1000の図示しない指示受付部等に、健常脳波波形と疾患脳波波形とを出力する指示を入力したとする。また、ここでは、出力先を、プリンタ1001とモニタ1002とのいずれかに指定する情報も入力したとする。
出力部14は、図34に示した健常脳波情報と、図34と同様の疾患脳波情報とを、それぞれ、健常脳波格納部11と、疾患脳波格納部12とから読み出す。
そして、出力部14は、読み出した情報を、上記で入力された出力先に出力する。例えば、出力先としてプリンタ1001が選択された場合、読み出した健常脳波情報と疾患脳波情報とをプロットして得られる波形の画像情報、即ち、健常脳波波形の画像情報と、疾患脳波波形の画像情報とをそれぞれ生成し、これらを縦に並べて配置した画像情報を生成する。例えば、予め用意されたテンプレート等に、波形の画像が配置される。そして、生成された画像情報を、プリンタ1001を介して、例えば、透明なシート(例えば、透明なフィルム等)に印刷する。
これにより、図30に示すような精神疾患診断用シート21が得られる。ただし、ここで得られる精神疾患診断用シート21のシート22は、透明なシートである。
この精神疾患診断用シート21は、透明なシートであるため、この精神疾患診断用シート21に示されている健常脳波波形や、疾患脳波波形を、この精神疾患診断用シート21とは別に出力した被検者脳波波形と重ね合わせて比較することが可能となる。これにより、比較の際に使いやすく、なおかつ、正確な判断を行うことが可能となる。
また、出力先をモニタ1002に指定した場合、図30に示した精神疾患診断用シート21に表示されている画像と同様の、健常脳波波形と疾患脳波波形とを縦に並べた画像がモニタ1002に表示される。
また、ユーザが、キーボードやマウス等を操作して、入力メニュー等を介して、脳波情報出力装置1000の図示しない指示受付部等に、健常脳波波形と疾患脳波波形と被検者脳波波形とを出力する指示を入力したとする。また、ここでは、出力先を、プリンタ1001とモニタ1002とのいずれかに指定する情報も入力したとする。
この指示が入力されると、モニタ1002上に、出力対象となる被検者脳波情報をユーザに指定することを求める情報が表示される。そして、ユーザが、予め脳波情報出力装置1000の図示しない記憶媒体等に予め格納されている被検者脳波情報を指定する情報(例えば、被検者脳波情報のファイル名やパス名)を図示しない指示受付部等に入力したとする。なお、被検者脳波情報は、予め、脳波情報出力装置1000の図示しない記憶媒体等に格納されているものとする。また、この被検者脳波情報は、図34に示した健常脳波情報と同様の情報であるとする。
図示しない指示受付部等が被検者脳波情報の指定を受け付けると、出力部14は、指定された被検者脳波情報を読み出す。また、上記と同様に、健常脳波情報と、疾患脳波情報とを、それぞれ、健常脳波格納部11と、疾患脳波格納部12とから読み出す。
そして、出力部14は、読み出した情報を、上記で入力された出力先に出力する。例えば、出力先としてプリンタ1001が選択された場合、読み出した被検者脳波情報と健常脳波情報と疾患脳波情報とをプロットして得られる波形の画像情報、即ち、被検者脳波波形の画像情報と、健常脳波波形の画像情報と、疾患脳波波形の画像情報とをそれぞれ生成し、これらを、被検者脳波波形が健常脳波波形と疾患脳波波形との間に位置するよう、縦に並べて配置した画像情報を生成する。例えば、予め用意されたテンプレート等に、波形の画像が配置される。そして、生成された画像情報を、プリンタ1001を介して、ここでは、透明なシート(例えば、透明なフィルム等)に印刷する。
これにより、図31に示すような精神疾患診断用シート31が得られる。なお、ここで得られる精神疾患診断用シート31のシート22は、透明なシートである。また、被検者脳波情報に、被検者の名前等の識別情報が含まれている場合、これを、被検者脳波波形の画像の近傍に表示指定もよい。
この精神疾患診断用シート31は、精神疾患診断用シート21と同様の使い方ができるとともに、この精神疾患診断用シート31だけでも、被検者脳波波形と、健常脳波波形および疾患脳波波形との比較を行うことが可能となる。また、被検者脳波情報が、健常脳波波形および疾患脳波波形と間に位置しているため、比較するもの同士の位置が近く、また、その間に他の波形が表示されていないため、非常に比較がしやすい。
また、出力先をモニタ1002に指定した場合、図31に示した精神疾患診断用シート31に表示されている画像と同様の、被検者脳波波形と健常脳波波形と疾患脳波波形とを縦に並べた画像がモニタ1002に表示される。
以上、本実施の形態によれば、健常脳波波形と疾患脳波波形とを並べて出力することができるため、例えば、医師等が、この出力結果が示すそれぞれの波形と被検者の脳波情報が示す波形との目視による比較を行うことで、被検者の脳波情報が示す波形が、精神疾患を有する者のものであるか否かをより正確に、かつ容易に判断することが可能となる。
また、健常脳波波形と疾患脳波波形と被検者脳波波形とを並べて出力することができるため、例えば、医師等が、この出力結果が示す被検者脳波波形と、他の脳波波形とを、目視による比較を行うことで、被検者の脳波情報が示す波形が、精神疾患を有する者のものであるか否かをより正確に、かつ容易に判断することが可能となる。
特に、被検者脳波波形を、健常脳波波形と疾患脳波波形との間に配置して、これらの波形を縦に並べるようにしたことで、被検者脳波波形と、健常脳波波形および疾患脳波波形とのそれぞれとの距離が近くなるため、被検者脳波波形と、健常脳波波形および疾患脳波波形との比較がより容易になる。
また、特に、透明なシートに、これらの波形を印刷したことによりに、このシートに印刷された健常脳波波形と、疾患脳波波形とを、被検者の脳波波形と重ね合わせて、どちらにより近いかを判断することでき、精神疾患の有無の判断を容易に行うことが可能となる。
なお、上記各実施の形態においては、精神疾患解析装置が、脳波取得装置の取得した脳波情報の値を1/5倍した(即ち、振幅を1/5倍した)脳波情報を用いるようにし、かつ、出現状況取得手段が、30秒である一のエポックを、4秒ごとに8つに分割し、それぞれに対してフーリエ変換を行って得られた8つの値の平均値を、この一のエポックに対してフーリエ変換を行って得られた結果として用いるようにした状況における例について説明した。上記各実施の形態において示されている閾値等の値は、このような場合に応じて設定された値である。上記のように脳波情報の感度設定を小さくすることや、フーリエ変換の対象となる時間幅を短くすることは、脳波計等の脳波取得装置のノイズレベルが高い場合(例えば、10μV程度)等においては高品質な解析を行うためには適切である。
しかしながら、ノイズレベルが3μV程度以下である高性能な脳波取得装置を用いる場合、本願発明においては、上記のように脳波情報の感度設定を小さくする必要はなく、脳波取得装置が取得した脳波情報をそのまま用いるようにしても良い。また、上記のように、エポックを多分割した各時間についてフーリエ変換を行ってその平均値を取得する代わりに、エポック全体に対して一のフーリエ変換を行って得られた結果を、そのまま、エポックに対してフーリエ変換を行って得られた結果として用いてもよい。このようにすることで、より高品質な解析が可能となる。
なお、脳波取得装置が取得した脳波情報をそのまま用いるようにし、出現状況取得手段がエポック全体についてフーリエ変換を行うことで得た結果を、エポックに対するフーリエ変換の結果として用いる場合、上記各実施の形態において説明した出現状況取得手段がフーリエ変換により取得した値や、精神疾患の判断等に用いられる閾値等の値を適宜変更する必要がある。具体的には、脳波情報の出力値は、1/5から1に変更されることにより5倍の値となり、フーリエ変換の対象となる時間幅も、エポックを分割した時間幅である4秒からエポック全体の時間幅である30秒に変更されることにより7.5倍となる。このため、フーリエ変換によって得られるα波や、β波や、δ波等の強度の値や、これらの値に関する閾値等は、上記各実施の形態においてそれぞれ示した値の52×7.5(=187.5)倍となる。
具体的には、以下のように、出現状況取得手段がフーリエ変換により取得する値や、精神疾患の判断等に用いられる閾値等の値を変更する。
上記実施の形態1において説明した、被検者が鬱病であるか否かを判断する際に判断手段1022が用いるα波の強度の閾値は、例えば、187.5から281.25μV2となり、重い鬱病を検出する際の閾値は、例えば、375μV2となる。また、上記実施の形態1において例示した、出現状況取得手段1021が高速フーリエ変換によって取得したα波のピークの値である1.5μV2は、281.25μV2となる。
また、図13に示したα強度管理表の「α強度」の値は、全て、187.5倍した値に変更される。また、判断手段1022が、この「α強度」の値の平均値として算出する値は、「271.875μV2」に変更される。また、α波の強度の閾値として実施の形態1で例示した値「1.0μV2」は、「187.5μV2」に変更される。
また、実施の形態2において例示されている、δ波のレム睡眠期間の強度の値である約1μV2/分は、約187.5μV2/分に変更され、ノンレム睡眠期間の強度の値である約7〜10μV2/分は、1312.5〜1875μV2/分に変更される。
また、実施の形態2において例示されている、被検者が鬱病でないと判断するための、複数のエポックにそれぞれ含まれるδ波の積分値の平均の値である1.5μV2以上は、281.25μV2に変更される。
また、実施の形態2において例示されている、鬱病でないと判断するための、δ波の出現回数を判断する際に用いられるδ波の強度の閾値である「5μV2」は、「937.5μV2」に変更され、δ波の強度の平均値に対する閾値「1.0μV2」は、「187.5μV2」に変更される。
また、実施の形態2において、出現状況取得手段2021が各エポックについて取得したδ波の強度の平均値が閾値以上であるか否かを判断する際に、判断手段1022が用いる閾値「1.0μV2」は、「187.5μV2」に変更される。
また、実施の形態において示したβ波の強度の閾値は、56.25μV2に変更される。
また、図5,図6、図13、図14、図18、図19に示したグラフに示されている強度の値は、全て187.5倍した値に変更される。
また、図34に示した健常脳波情報の「出力」の値は、全て5倍した値に変更される。
なお、上記各実施の形態において、一のエポックを4秒に設定した場合、例えば、上記各実施の形態において説明した出現状況取得手段がフーリエ変換により取得した値や、精神疾患の判断等に用いられる閾値等の値等はそのまま利用可能である。
なお、上記各実施の形態において、各処理(各機能)は、単一の装置(システム)によって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置によって分散処理されることによって実現されてもよい。
また、上記各実施の形態では、精神疾患解析装置がスタンドアロンである場合について説明したが、精神疾患解析装置は、スタンドアロンの装置であってもよく、サーバ・クライアントシステムにおけるサーバ装置であってもよい。後者の場合には、出力部や受付部は、通信回線を介して入力を受け付けたり、画面を出力したりすることになる。
なお、上記各実施の形態における精神疾患解析装置を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、被検者の睡眠中の脳波の情報である睡眠時脳波情報が格納される格納部にアクセス可能なコンピュータを、格納部に格納されている睡眠時脳波情報について、精神疾患の有無に関連する解析を行う解析部と、解析部による解析結果の出力を行う出力部として機能させるためのプログラムである。
また、このプログラムは、健常者の睡眠時の脳波情報である健常脳波情報が格納される健常脳波格納部と、精神疾患患者の睡眠時の脳波情報である疾患脳波情報が格納される疾患脳波格納部と、にアクセス可能なコンピュータを、健常脳波情報が示す波形と、疾患脳波情報が示す波形とを並べて出力する出力部として機能させるためのプログラムである。
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を取得する取得部や、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には含まれない。
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
図27は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態による精神疾患解析装置を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
図27において、コンピュータシステム900は、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ905、FD(Floppy(登録商標) Disk)ドライブ906を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
図28は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。図28において、コンピュータ901は、CD−ROMドライブ905、FDドライブ906に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM(Random Access Memory)913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、LANへの接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
コンピュータシステム900に、上記実施の形態による精神疾患解析装置等の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM921、またはFD922に記憶されて、CD−ROMドライブ905、またはFDドライブ906に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD−ROM921やFD922、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。
プログラムは、コンピュータ901に、上記実施の形態による精神疾患解析装置の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。