JP5273461B2 - レトロウイルス感染抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明はレトロウイルス感染抑制剤に関する。より具体的には、本発明は、あるレチノイド類似体を有効成分として含有する、ヒト免疫不全ウイルス等のレトロウイルスの感染抑制剤に関する。
レトロウイルスは、レトロウイルス科に属するウイルスであって、遺伝子としてRNAを持ち、自身の有する逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)の働きによりRNAを鋳型としてDNAを合成する段階を自己複製の第1段階とするウイルスの総称である。レトロウイルス科は3つの亜科(オンコウイルス、レンチウイルス、スプマウイルス)からなる。レトロウイルスは、鳥類や哺乳類の種々の動物を宿主として感染、増殖し、肉腫、白血病、癌等を引き起こすことが知られている。ヒトを宿主とするレトロウイルスとしては、ヒトT細胞白血病ウイルス(human T-cell leukemia virus、HTLV)および
ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus, HIV)等が報告されている。HIVは重篤な免疫不全症である後天性免疫不全症候群(aquired immunodeficiency syndrome, AIDS)の原因ウイルスであることが分かっている。
AIDSは、HIV複製に必須な逆転写酵素および蛋白分解酵素を阻害する化合物の開発と、それら化合物の併用療法の確立によって、ある程度制圧できるようになった。しかし、耐性ウイルスの出現が大きな問題となっており、逆転写酵素および蛋白質分解酵素以外のHIV複製に必須な機構を阻害する化合物の開発が望まれている。
HIVはヘルパーT細胞やマクロファージ細胞膜に存在するCD4分子を受容体として感染するが、その際、CD4分子と協同してウイルスのエントリーを促進する補助因子(コレセプター)が必要である。コレセプターとしては、現在のところ、ケモカイン(炎症性サイトカイン)受容体のCXCR4とCCR5が同定されている(非特許文献1)。
上述のように、HIVは、標的細胞のCD4およびCXCR4等の一連のケモカインレセプターを認識した後、ウイルスエンベロープと細胞膜の融合によって細胞内に侵入する。そのため、膜の構成成分である脂質の変化が、HIV感染に影響を与えると考えられる。レチノイドの類似体であるフェンレチニド(fenretinide;4−Hydroxyphenylretinoid)は、膜の脂質成分においてセラミドのレベルを特異的に増加させることが知られており、HIVの細胞内侵入を抑制することが既に報告されている(非特許文献2、非特許文献3)。しかし、フェンレチニドは細胞毒性が強く、臨床に応用することが困難である。
Berger, E. A., Doms, R. W., Fenyo, E.- M., Korber, B. T. M., Littman, D. R., Moore, J. P., Sattentau, Q. J., Schuitemaker, H., Sodroski, J.,and Weiss, R. A. 1998. A new classification for HIV-1. Nature 391, 240. Finnegan, C. M., Rawat, S. S., Puri, A., Wang, J. M., Ruscetti, F. W., and Blumenthal, R. 2004. Ceramide, a target for antiretroviral therapy. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101, 15452-15457. Finnegan, C. M., and Blumenthal, R. 2006. Fenretinide inhibits HIV infection by promoting viral endocytosis. Antiviral Res. 69, 116-123. Shidoji, Y., and Ogawa, H. 2004. Natural occurrence of cancer-preventive geranylgeranoic acid in medicinal herbs. J.Lipid Res. 45, 1092-1103. Muto, Y., Moriwaki, H., and Saito, A. 1999. Prevention of second primary tumors by an acyclic retinoid in patients with hepatocellular carcinoma. N.Engl.J.Med. 340, 1046-1047.
本発明は、HIV等のレトロウイルスの細胞内侵入を標的としたレトロウイルス感染抑制剤の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、フェンレチニドとは異なる非環式レチノイドにHIV感染抑制作用を見出した。さらにその細胞毒性がフェンレチニドと比較して顕著に低減されていることを確認して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]式(I)で表される化合物又はその塩、式(II)で表される化合物又はその塩、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する、レトロウイルス感染抑制剤。
[2]式(I)で表される化合物若しくはその塩、又は式(II)で表される化合物若しくはその塩を有効成分として含有する、上記[1]記載の剤。
[3]レトロウイルスがヒト免疫不全ウイルスである、上記[1]又は[2]記載の剤。
[4]レトロウイルス感染抑制が、CXCR4の発現低下作用によるものである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の剤。
[5]式(I)で表される化合物又はその塩、式(II)で表される化合物又はその塩、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する、HIV感染症の治療剤。
[6]式(I)で表される化合物又はその塩、式(II)で表される化合物又はその塩、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの化合物の有効量を、その投与を必要とする対象に投与することを含む、レトロウイルス感染を抑制する方法。
[7]式(I)で表される化合物若しくはその塩、又は式(II)で表される化合物若しくはその塩の有効量を、その投与を必要とする対象に投与することを含む、上記[6]記載の方法。
[8]レトロウイルスがヒト免疫不全ウイルスである、上記[6]又は[7]記載の方法。
[9]レトロウイルス感染抑制が、CXCR4の発現低下作用によるものである、上記[6]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10]式(I)で表される化合物又はその塩、式(II)で表される化合物又はその塩、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの化合物の有効量を、その投与を必要とする対象に投与することを含む、HIV感染症の治療方法。
本発明によって提供されるレトロウイルス感染抑制剤は、レトロウイルス、特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)の細胞内侵入を阻害し、従来のものに比べてその細胞毒性が低減されている。
フェンレチニドのHIV感染に及ぼす影響を示すグラフである。 フェンレチニドの細胞増殖に及ぼす影響を示すグラフである。 GGAのHIV感染に及ぼす影響を示すグラフである。 GGAの細胞増殖に及ぼす影響を示すグラフである。 NIK−333のHIV感染に及ぼす影響を示すグラフである。 NIK−333の細胞増殖に及ぼす影響を示すグラフである。 HeLa/CD4細胞におけるフェンレチニドとGGAのCD4発現に及ぼす影響を示すグラフである。 NP2/CD4/X4細胞におけるGGAのCD4発現に及ぼす影響を示すグラフである。 HeLa/CD4細胞におけるフェンレチニドとGGAのCXCR4発現に及ぼす影響を示すグラフである。 NP2/CD4/X4細胞におけるGGAのCXCR4発現に及ぼす影響を示すグラフである。 GGAのHIV感染及び細胞増殖に及ぼす影響を示すグラフである。 フェンレチニドのHIV感染及び細胞増殖に及ぼす影響を示すグラフである。 NIK−333のHIV感染及び細胞増殖に及ぼす影響を示すグラフである。 レチノイドのVSV感染に及ぼす影響を示すグラフである。A:GGA、B:フェンレチニド、C:NIK−333 レチノイドのCCR5指向性HIV感染に及ぼす影響を示すグラフである。 レチノイドのシンシチウム形成に及ぼす影響を示すグラフである。 GGAのCD4細胞表面発現及びCXCR4細胞表面発現に及ぼす影響を示すグラフである。 フェンレチニドのCD4細胞表面発現及びCXCR4細胞表面発現に及ぼす影響を示すグラフである。 NIK−333のCD4細胞表面発現及びCXCR4細胞表面発現に及ぼす影響を示すグラフである。
文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと同様又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及したすべての刊行物及び特許は、例えば、記載された発明に関連して使用されうる刊行物に記載されている、構築物及び方法論を記載及び開示する目的で、参照することにより本明細書に組み入れられる。
本発明に有効成分として含められる、式(I)で表される化合物は、薬草中に含まれるゲラニルゲラノイル酸(geranylgeranoic acid;GGA)として知られ、膜脂質のセラミドレベルを増加させること、ならびに肝臓癌細胞のアポトーシスを引き起こすことから癌治療薬又は癌予防薬として期待できることが報告されている(非特許文献4)。本明細書では、式(I)で表される化合物をGGAと略することもある。GGAは、公知化合物であり、以前に報告された方法に従って、あるいはそれに準じて合成することができる。
式(II)で表される化合物は、NIK−333とも称される公知化合物であるが、抗癌作用及び発癌予防作用を有することが知られている(非特許文献5)。本明細書では、式(II)で表される化合物をNIK−333と略することもある。
本発明の感染抑制剤に有効成分として含められる式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物は、そのレトロウイルス感染抑制作用を有している限り誘導体化されていてもよい。誘導体化することにより、その特異性や効果、薬物動態等の点でより効果的な化合物となりうる。誘導体化は、所望する改変に応じて当分野で通常実施されている種々の方法、反応により行うことができる。式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物、ならびにそれらの誘導体をあわせて本発明化合物とも称する。
本発明化合物は、無機塩基との塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩)、有機塩基との塩(例えばトリエチルアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩等の有機アミン塩)、無機酸付加塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)、有機カルボン酸・スルホン酸付加塩(例えばギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等)、塩基性あるいは酸性アミノ酸(例えばアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)との塩等の、塩基との塩または酸付加塩等として用いることができる。
本発明化合物は溶媒和物(例えば水和物等)であっても無溶媒和物であってもよく、いずれも本発明化合物に包含される。
本発明化合物はプロドラッグとして用いることもできる。ここでプロドラッグとは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により本発明化合物、すなわち生体内で酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして本発明化合物に変化する化合物である。例えば、本発明化合物の分子内に存在し得るカルボキシル基(COOH)、水酸基(OH)、アミノ基(NH、アミドも含む)、メルカプト基(SH)等の部位が修飾されたものをいう。
本発明の感染抑制剤が対象とするレトロウイルスとしては、RNAの転写により生命維持をしているウイルス類を包含するものであり、例えば、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)等のヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、肝炎ウイルス(HBV、HCV等)等が挙げられる。好ましくはHIV及びHTLVである。特に本発明の感染抑制剤はHIV感染症に対して有用である。HIV感染症とはエイズ、症候性又は無症候性のHIV感染症(エイズ関連症候群:ARCを含む)を含めてHIVに感染している病態をいう。
本発明においてレトロウイルス感染抑制剤、特にHIV感染抑制剤は、HIV感染症をはじめとした各種レトロウイルス感染症の治療用の薬剤として用いることができる。「治療」とは症状の改善、緩和又は治癒を目的とする処置を含む。例えばHIV感染症の治療とは、HIV感染による症状の改善、緩和又は治癒、エイズ発症の予防又は遅延を目的とした処置を含む。具体的には、CD4陽性リンパ球数の増加又は減少の抑制、NK細胞活性の増加又は低下の抑制、ARCの予防、改善、緩和又は治癒、エイズ発症の予防又は遅延、日和見感染症の予防、改善、緩和又は治癒、エイズの症状の改善、緩和又は治癒を目的とした処置を含む。ARCの症状には、リンパ節腫脹、食欲不振、下痢、体重減少、発熱、倦怠感、発疹、気管支喘息等が含まれる。
本発明の感染抑制剤はヒト、サル、ウシ及びネコを含む哺乳類、好ましくはヒトに投与することができる。
本発明の感染抑制剤は経口投与又は注射投与、直腸内投与、点鼻投与、経皮投与、経粘膜投与、舌下投与等の非経口投与のいずれでも使用することができる。本発明化合物は、経口投与、直腸内投与、注射投与、点鼻投与、経皮投与、経粘膜投与、舌下投与等の投与方法に適した固体又は液体の医薬的に許容される無毒性の担体と混合して慣用の医薬製剤の形態で投与することができる。医薬製剤における本発明化合物の使用量は、経口投与する場合には、一日あたりの投与量は、本発明化合物の有効量として、通常、体重1kgあたり0.001g〜0.1g程度である。非経口投与の場合には、一日あたりの投与量は、本発明化合物の有効量として、通常、体重1kgあたり0.0001g〜0.01g程度である。実際に投与される化合物の量は、化合物の選択、各種製剤形態、患者の年齢、体重、性別、疾患の程度、投与経路等によって決定され、適宜変更可能である。本発明のレトロウイルス感染抑制剤、特にHIV感染抑制剤は毒性が低く、副作用が少ない。
本発明の感染抑制剤の剤型としては、経口用剤(例えば、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤等)、注射剤、坐薬、点鼻薬、経皮投与用製剤(例えば、軟膏剤、クリーム剤、貼付剤等)、経粘膜投与用製剤、舌下剤、噴霧剤、吸入剤等が挙げられる。
医薬的に許容される担体としては、乳糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、ソルビトール、マンニトール、マルトース、トレハロース、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等の賦形剤;メチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、ショ糖脂肪酸エステル等の結合剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等の増粘剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸等の滑沢剤;ポリエチレングリコール、カカオ脂等の坐剤基剤;蒸留水、注射用蒸留水、滅菌精製水、生理食塩水、植物油(オリーブ油、ゴマ油、ダイズ油、トウモロコシ油、ラッカセイ油)、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール等の無機又は有機溶剤等が挙げられる。さらに本発明の医薬製剤には、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等の保存剤;モノステアリン酸グリセリン等の乳化剤;塩酸、クエン酸、酢酸、酒石酸、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の緩衝剤を含むpH調整剤等の添加剤を添加してもよい。
また、本発明の感染抑制剤と他の薬剤とを組み合わせて用いることも可能である。すなわち、AIDSに合併した日和見感染に対する治療薬、他の種類の抗HIV剤、免疫機能を改善する薬剤等と併用し得る。具体的には、抗ウイルス剤、抗生物質、免疫増強剤等が挙げられる。
本発明の感染抑制剤と組み合わせて用いることができる抗ウイルス剤の好適な例としては、AZT(逆転写酵素阻害剤)、ジデオキシイノシン(ddI)、ジデオキシシチジン(ddC)、ジデオキシアデノシン(ddA)、ラミブジン(3TC)、スタブジン(d4T)等のヌクレオシド誘導体、インジナビル(IDV)、サキナビル、リトナビル(RTV)、ネルフィナビル等のプロテアーゼ阻害剤、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ等のインターフェロンが挙げられる。これらの抗ウイルス剤の1種又は2種以上と本発明のHIV感染抑制剤とを組み合わせて用いることができる。
本発明の感染抑制剤と組み合わせて用いることができる抗生物質としては、抗菌剤、抗真菌剤(カンジダ症、カリニ肺炎等に対する抗真菌剤を含む)等が挙げられる。好適な抗菌剤の例としては、ペニシリン系抗生物質、セフェム系抗生物質、マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、ホスホマイシン系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、ニューキノロン系抗菌剤等が挙げられる。好適な抗真菌剤の例としては、ポリエン系抗真菌薬、イミダゾール系抗真菌薬、トリアゾール系抗真菌薬、アリルアミン系抗真菌薬、フルシトシン(5−FC)系抗真菌薬等が挙げられる。これらの抗菌剤、抗真菌剤は2種以上を合剤として用いてもよい。
本発明の感染抑制剤と組み合わせて用いることができる免疫増強剤としては、Tリンパ球の刺激等による免疫増強作用を有すると考えられる薬剤が挙げられる。具体的には、ノイロトロピン、グリチルリチン、レンチナン、イソプリノシン等が挙げられる。
さらに、レトロウイルス感染、例えばHIV感染によりもたらされる疾患の諸症状に対する対症療法に用いられ得る種々の薬剤もまた、本発明の感染抑制剤と併用することができる。
本発明の感染抑制剤と併用する薬剤の投与は本発明の感染抑制剤と同時に投与することができるが、別々に投与してもよい。その投与量は各々期待される効果を達成するのに必要な量であり、各薬剤ごとに既に報告されているであろう情報に基づいて決定することができる。
さらに、本発明は、レトロウイルス感染を抑制する方法、特にHIV感染を抑制する方法を提供する。これらの方法によって、HIV感染症をはじめとした各種レトロウイルス感染症の治療が可能となる。
以下、実施例にそって本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。
実施例1:HIV感染抑制作用及び細胞増殖抑制作用−1
方法
(1)試薬
フェンレチニド(BIOMOL Research Laboratories Inc.)、GGA(県立長崎シーボルト大学の四童子博士より供与された)、NIK−333(興和創薬)を、それぞれ5mM、5mM、50mMになるようにエタノールに溶解しストック溶液を調製した。ストック溶液は1回使用分ずつを小分けして使用時まで−20℃で保存した。
(2)細胞
NP2細胞は、ヒトglioma由来細胞株であり、TE671細胞はヒトrhabdomyosarcoma由来細胞株であり、HeLa細胞はヒト子宮癌由来細胞株である。ヒトNP2細胞およびHIVの感染受容体であるCD4とCXCR4を発現するNP2細胞(NP2/CD4/X4細胞)は、群馬大学の星野博士から供与された(Soda, Y., Shimizu, N., Jinno, A., Liu, H. Y., Kanbe, K., Kitamura, T., and Hoshino, H. 1999. Establishment of a new system for determination of coreceptor usages of HIV based on the human glioma NP-2 cell line. Biochem.Biophys.Res.Commun. 258, 313-321.)。CD4を発現するヒトTE671細胞(TE671/CD4細胞)およびHeLa細胞(HeLa/CD4細胞)は、CD4を持つマウス白血病ウイルスベクターをTE671細胞(理化学研究所・天沼博士より供与された)あるいはHeLa細胞(国立感染症研究所・佐藤博士より供与された)に感染させることによって作製した。すなわち以下のようにして行った。マウス白血病ウイルスベクタープラスミドであるpMX−puro(東京大学・北村博士より分与された)にCD4遺伝子を挿入し、そのプラスミドDNAをCD4−puroと名付けた。得られたCD4−puroプラスミド、マウス白血病ウイルスのgag−pol発現プラスミドpGP(タカラから購入)及びpLP/VSVG(Invitrogenから購入)の3種類のプラスミドを293T細胞にトランスフェクションし、その培養上澄をTE671細胞及びHeLa細胞に接種した。ピュロマイシン選択により生き残った細胞をそれぞれTE671/CD4細胞、HeLa/CD4細胞とした。ヒト293T細胞(Pear, W. S., Nolan, G. P., Scott, M. L., and Baltimore, D. 1993. Production of high-titer helper-free retroviruses by transient transfection. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90, 8392-8396.)、NP2/CD4/X4細胞、TE671/CD4細胞、HeLa/CD4細胞及び293T細胞は、8%ウシ胎児血清および抗生物質を含むダルベッコ−改良イーグル培地(シグマまたは和光)において5%二酸化炭素存在下37℃で培養した。
(3)プラスミドDNAの調製:
env遺伝子を除くHIVベクター作製に必要なHIV遺伝子を発現するプラスミドDNA(pLP1,pLP2)はInvitrogenから購入した。CXCR4指向性のHIV−1(HXB2)のenv遺伝子を発現するプラスミドDNAとCCR5指向性のHIV−1(JRFL)のenv遺伝子を発現するプラスミドDNAは、それぞれ名古屋国立医療センターの横幕博士より供与された(Yokomaku, Y., Miura, H., Tomiyama, H., Kawana-Tachikawa, A., Takiguchi, M., Kojima, A., Nagai, Y., Iwamoto, A., Matsuda, Z., and Ariyoshi, K. 2004. Impaired processing and presentation of cytotoxic-T-lymphocyte (CTL) epitopes are major escape mechanisms from CTL immune pressure in human immunodeficiency virus type 1 infection. J.Virol. 78, 1324-1332.)。マーカー遺伝子としてLacZを持つHIVベクターゲノムを発現するプラスミドDNA(pLenti6/V5−GW/lacZ)はInvitrogenから購入した。これらのプラスミドDNAをコンピテント大腸菌(タカラ)に導入し、アンピシリン存在下で培養した。こうして増やした大腸菌からプラスミドDNAを精製した(Viogene)。
(4)CXCR4指向性HIVベクター作製
10cm培養ディッシュにおいて培養した293T細胞にpLP1、pLP2、pLenti6/V5−GW/LacZ及びHXB2 envプラスミドDNAをそれぞれ3μgずつlipofection法(MirusまたはInvitrogen)によりトランスフェクションした。24時間後、新鮮な培地に交換した。更に24時間培養し、その培養液を標的細胞(NP2/CD4/X4細胞、TE671/CD4細胞、HeLa/CD4細胞)への接種に用いた。培養液中にCXCR4指向性HIVベクターが存在する。
(5)HIVベクターの感染価の測定
HIVベクター接種後24時間培養し、新鮮な培地に交換した。さらに24時間培養した。細胞をグルタールアルデヒドにより固定し、X−Galにより一晩染色した。青く染まった細胞の数を数え、その値を感染価とした。
(6)細胞毒性試験
細胞数を数えることにより、細胞増殖に対する効果を観察した。
結果
(1)フェンレチニドによるHIV感染抑制と細胞増殖抑制
フェンレチニドがHIV感染を抑制することは既に報告されている(Finnegan, C. M., Rawat, S. S., Puri, A., Wang, J. M., Ruscetti, F. W., and Blumenthal, R. 2004. Ceramide, a target for antiretroviral therapy. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101, 15452-15457.;Finnegan, C. M., and Blumenthal, R. 2006. Fenretinide inhibits HIV infection by promoting viral endocytosis. Antiviral Res. 69, 116-123.)が、本実験系においても既報どおりフェンレチニドがHIVベクター感染を抑制するかどうか確認した。
2%ウシ胎児血清および抗生物質を含むダルベッコ−改良イーグル培地(シグマまたは和光)に様々な濃度になるようにフェンレチニドを加え、標的細胞を2日間5%二酸化炭素存在下37℃で培養した。その細胞にHIVベクター(HIVベクターを含む培養上清、上述)を接種し感染価を測定した。
一方で、フェンレチニドの細胞増殖に及ぼす影響を定量的に解析するため、TE671/CD4細胞、NP2/CD4/X4及びHeLa/CD4細胞の細胞数を測定した。各細胞は、それぞれの化合物で感染価の測定時と同様にして処理し、2日間培養した。
感染価測定の結果を図1に、細胞増殖測定の結果を図2に示す。測定結果は、フェンレチニドを含まない(0μM)時の値を1として相対値で示した。図1に示すように、フェンレチニドは濃度依存的にHIVベクターの感染性を抑制したが、図2に示すように、NP2/CD4/X4細胞およびTE671/CD4細胞に対しては細胞毒性が見られた。これらの結果から算出された、各細胞におけるHIV感染を50%に抑制する濃度と、細胞増殖を50%抑制する濃度を表1に示す。
HeLa/CD4細胞では、フェンレチニドはHIV感染抑制効果の方が細胞増殖抑制効果よりも強かったが、TE671/CD4細胞では同程度、NP2/CD4/X4細胞ではむしろ細胞増殖抑制効果の方が強かった。
(2)GGAによるHIV感染抑制と細胞増殖抑制
フェンレチニドと同様に標的細胞をGGAにより処理し、HIVベクターを接種した。感染価測定の結果を図3に、細胞増殖測定の結果を図4に示す。測定結果は、GGAを含まない(0μM)時の値を1として相対値で示した。図3に示すように、GGAは濃度依存的にHIVベクター感染を抑制することがわかった。HIVベクター感染を抑制する効果において、GGAはフェンレチニドよりも低かったが、調べたすべての細胞においてGGAによる細胞毒性はフェンレチニドよりも低かった(図4)。
GGAについて、各細胞におけるHIV感染を50%に抑制する濃度と、細胞増殖を50%抑制する濃度を表1(上記)に示す。
表1に示すように、GGAはいずれの細胞においても、HIV感染抑制効果と細胞増殖抑制効果は同程度であった。
(3)NIK−333によるHIV感染抑制と細胞増殖抑制
フェンレチニド及びGGAと同様にして標的細胞をNIK−333により処理し、HIVベクターを接種した。感染価測定の結果を図5に、細胞増殖測定の結果を図6に示す。測定結果は、NIK−333を含まない(0μM)時の値を1として相対値で示した。さらに、NIK−333について、各細胞におけるHIV感染を50%に抑制する濃度と、細胞増殖を50%抑制する濃度を表1(上記)に示す。
図5及び図6の結果より、NIK−333も、HIV感染抑制作用及び細胞増殖抑制の作用を持っていることが示された。さらに、表1に示すように、NIK−333は、フェンレチニド及びGGAと異なり、いずれの細胞においても、HIV感染抑制効果の方が細胞増殖抑制効果よりも強かった。
実施例2:HIV感染受容体発現に及ぼす影響
方法
2%ウシ胎児血清および抗生物質を含むダルベッコ−改良イーグル培地(シグマまたは和光)にフェンレチニドは2μMとなるように、GGAは20μMとなるようにそれぞれ加え、この培地中で、標的細胞(HeLa/CD4細胞又はNP2/CD4/X4細胞)を2日間、5%二酸化炭素存在下37℃で培養した。HeLa/CD4細胞及びNP2/CD4/X4細胞は実施例1で用いたものと同様のものである。フェンレチニド又はGGAで処理した細胞をFITCがコンジュゲートした抗CD4抗体(シグマ)で染色した。対照として、抗体を用いないこと以外は同様の処理をした細胞(Ab(−))、フェンレチニドやGGAによる処理を行わないこと以外は同様の処理をした細胞(Ab(+))についても調べた。cytometer(Coulter)により各細胞の蛍光強度を測定し、CD4の細胞表面発現量として評価した。同様に、フェンレチニド又はGGAで処理した細胞をラット抗CXCR4抗体(Tanaka, R., Yoshida, A., Murakami, T., Baba, E., Lichtenfeld, J., Omori, T., Kimura, T., Tsurutani, N., Fujii, N., Wang, Z. -X., Peiper, S. C., Yamamoto, N., and Tanaka, Y. 2001. Unique monoclonal antibody recognizing the third extracellular loop of CXCR4 induces lymphocyte agglutination and enhances human immunodeficiency virus type 1-mediated syncytium formation and productive infection. J.Virol. 75, 11534-11543.)、続いてFITCがコンジュゲートした抗ラットIgG抗体(シグマ)で染色し、cytometer(Coulter)により各細胞の蛍光強度を測定し、CXCR4の細胞表面発現量として評価した。
結果
実施例1から明らかなようにある種のレチノイド類似体にHIV感染抑制作用が見られた。この感染抑制作用のメカニズムを知るため、HIV受容体であるCD4及びCXCR4の細胞表面発現に及ぼすレチノイド類似体の影響を解析した。結果、HeLa/CD4細胞とNP2細胞においてフェンレチニド及びGGAはいずれもCD4発現を増加させることがわかった(図7、図8)。一方、CXCR4発現は、フェンレチニド及びGGA処理により低下することがわかった(図9、図10)。
結論
フェンレチニド、GGA、NIK−333ともHIV感染抑制効果(抗HIV活性)、細胞増殖抑制効果(細胞毒性)を持っていた。フェンレチニドは、HeLa/CD4細胞では、抗HIV活性の方が強かったが、その他の細胞では、細胞毒性の方が強いかもしくは同程度であった。GGAの抗HIV活性と細胞毒性は、いずれの細胞においても、同程度であった。又、GGAの細胞毒性はフェンレチニドに比べて低かった。NIK−333は、いずれの細胞においても、抗HIV活性の方が細胞毒性に比べて強かった。これらの結果から、レチノイド類の中で、特にNIK−333が有効な抗HIV活性を有していることが示された。
実施例3:HIV感染抑制作用及び細胞増殖抑制作用−2
方法
実施例1と同様にして、レチノイドであるGGA、フェンレチニド、NIK−333のHIV感染抑制作用と細胞増殖抑制作用を調べた。NP2/CD4/X4細胞、TE671/CD4細胞及びHeLa/CD4細胞について調べた。GGAのHIV感染抑制作用と細胞増殖抑制作用を図11に、フェンレチニドのHIV感染抑制作用と細胞増殖抑制作用を図12に、NIK−333のHIV感染抑制作用と細胞増殖抑制作用を図13に、それぞれ示した。
いずれのレチノイドもNP2/CD4/X4細胞、TE671/CD4細胞、HeLa/CD4細胞において、濃度依存的にCXCR4指向性HXB2 HIV−1ベクター感染を抑制した。これらのレチノイドは、細胞増殖も抑制した。例えば、NP2/CD4/X4細胞を20μMのGGAによって処理した時、HIV−1ベクター感染は10%にまで抑制されたが、細胞増殖は55%しか抑制されなかった(図11)。同様に、NP2/CD4/X4細胞を5μMのNIK−333によって処理した時、HIV−1ベクター感染は20%にまで低下したが、細胞増殖はほとんど影響を受けなかった(図13)。この結果は、GGAとNIK−333が、細胞増殖抑制効果よりもHIV−1ベクター感染抑制効果の方が強いことを示している。一方、NP2/CD4/X4細胞を2μMのフェンレチニドによって処理した時、細胞増殖は10%にまで低下したが、HIV−1ベクター感染は40%しか抑制されなかった。フェンレチニドは、HIV−1ベクター感染抑制効果よりも、細胞増殖抑制効果の方が強いこと示している。すなわち、フェンレチニドはHIV−1感染を抑制することが既に報告されているが、フェンレチニドよりもGGAおよびNIK−333の方が副作用の少ない効率的なHIV−1感染抑制剤であることがわかった。
実施例4:VSV感染抑制作用
レチノイドによるHIVベクター感染の抑制が、HIV−1 Env蛋白質による感染特異的かどうかを知るため、水泡性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis virus;VSV)−G蛋白質による感染におけるレチノイドの効果を観察した。VSVは、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、ヴェシキュロウイルス属(Vesiculovirus)のウイルスであり、膜(エンベロープ)に包まれている。遺伝子は、11,162塩基からなる一本鎖(−)RNAである。
HIVベクターの代わりにVSVベクターを用いること以外は、実施例1と同様にして、各種の細胞におけるVSV感染抑制作用について調べた。
VSVベクター作製
293T細胞に以下の4種類のプラスミドDNA(pLP1、pLP2、pLenti6/V5−GW/LacZ、pLP/VSVG)をそれぞれ3μgずつlipofection法(MirusまたはInvitrogen)によりトランスフェクションした。24時間後、新鮮な培地に交換した。更に24時間培養し、その培養液を標的細胞への接種に用いた。培養液中にVSVベクターが存在する。
結果、TE671/CD4細胞においては、VSV−G蛋白質による感染もこれらレチノイドによって抑制されることがわかった(図14、A〜C)。NP2/CD4/X4細胞におけるVSV−G蛋白質による感染は、影響を受けなかった(図14、A及びC)。HeLa/CD4細胞におけるVSV−G蛋白質による感染も、あまり影響を受けなかった(図14、A〜C)。HeLa/CD4細胞を10μMのNIK−333によって処理した時、VSV−G蛋白質による感染が抑制されたが(図14、C)、この結果は、細胞増殖も同様に抑制されたことによって生じたのかもしれない(図13)。これらの結果は、NP2/CD4/X4細胞およびHeLa/CD4細胞において、用いたレチノイドはHIV−1 Env蛋白質による感染を抑制するが、VSV−G蛋白質による感染は抑制しないことを示している。
実施例5:CCR5指向性HIV感染に及ぼすレチノイドの影響
実施例1〜3は、CXCR4指向性HIV−1ベクター感染に対するレチノイドの影響を観察したものであったが、CCR5指向性HIV−1ベクター感染にも同様な影響を示すかどうかを知るために、CCR5指向性HIV−1であるJRFL株のEnv蛋白質による感染に対する影響を観察した。
TE671/CD4細胞にCCR5を導入し(TE671/CD4/R5細胞)、その細胞において実験を行った。使用する細胞をCCR5発現細胞と、ベクターをCCR5指向性HIV−1としたこと以外は実施例1と同様にしてウイルス感染に及ぼす影響を調べた。
TE671/CD4/R5細胞は以下のようにして作製した。ネオマイシン耐性遺伝子とCD4をコードするプラスミドDNAをTE671細胞にトランスフェクションし、ネオマイシンによって処理した。ネオマイシン耐性細胞の中で、CD4を発現している細胞クローンを選択した。この細胞をTECD4−1と命名した。TE671/CD4細胞の作製方法と同様にして、TECD4−1細胞にCCR5をコードするマウス白血病ウイルスベクターを感染させ、ピュロマイシン処理によって生き残った細胞をTE671/CD4/R5細胞とした。
CCR5指向性HIVベクター作製
10cm培養ディッシュにおいて培養した293T細胞にpLP1、pLP2、pLenti6/V5−GW/LacZ、JRFL envプラスミドDNAをそれぞれ3μgずつlipofection法(MirusまたはInvitrogen)によりトランスフェクションした。24時間後、新鮮な培地に交換した。更に24時間培養し、その培養液を標的細胞への接種に用いた。培養液中にCCR5指向性HIVベクターが存在する。
結果を図15に示す。用いたレチノイドは、CCR5を強発現させた細胞におけるCCR5指向性HIV−1ベクター感染に影響しないことが示された(感染受容体を強発現させた細胞では、HIV−1感染抑制物質の効果が低下する結果は、しばしば観察されている)。
実施例6:レチノイド類のHIV−1感染受容体に及ぼす影響
HIV−1は、Env蛋白質によるウイルス膜と宿主細胞膜の膜融合によって細胞内に侵入する。このEnv蛋白質の膜融合活性により、Env蛋白質を発現する細胞は、宿主細胞と細胞融合を起こし、シンシチウムを形成する。そのため、Env蛋白質のシンシチウム形成能は、HIV−1の細胞内侵入を反映していると考えられ、シンシチウムを形成する割合を測定することによりHIV−1の細胞内侵入を定量することが可能である。
使用したプラスミドDNAの作製
pLenti6/V5−GW/LacZプラスミドDNA(Invitrogenから購入)からのLacZ配列を含むDNAフラグメントをHIV−1 LTR配列(名古屋国立医療センターの横幕博士より供与された)と連結し、pBR322プラスミド(タカラから購入)においてクローン化した。このプラスミドDNAをLTR−LacZと命名した。
シンシチウム形成の定量的測定方法
HeLa/CD4細胞にLTR−LacZプラスミドDNA 3mgをトランスフェクションし、LTR−LacZを持つ細胞を選択した(HeLa/CD4/LacZ細胞と命名)。LTRはHIV−1のTAT蛋白質がないと転写を開始しないので、この細胞はLacZを発現しない。感染実験の場合と同様に、HeLa/CD4/LacZ細胞をフェンレチニド、GGA、NIK−333により処理した。一方、293T細胞にHXB2 envプラスミドDNA 3mgをトランスフェクションした。HXB2 envプラスミドDNAはenvと同時にTATもコードしている。トランスフェクションして24時間後、細胞数を合わせて、これらの細胞を混合した。293T細胞において発現するenv蛋白質の働きにより、293T細胞とHeLa/CD4/LacZ細胞は細胞融合を起こす。するとTAT蛋白質が初めてLTRに作用し、転写が開始され、LacZ遺伝子が発現する。そこでLacZ活性をHigh sensitive beta-galactosidase assay kit (Stratageneから購入)により定量し、その値をシンシチウム形成効率とした。
結果、これらのレチノイドは、HIV−1 Env蛋白質による細胞融合を抑制することがわかった(図16)。すなわち、用いたレチノイド類によるHIV−1ベクター感染抑制は、HIV−1の細胞内侵入過程が阻害されることによって起こっていることを示唆している。

これらのレチノイド類によるHIV−1ベクター感染の抑制が、HIV−1の感染受容体であるCD4およびCXCR4の発現に影響することによって起こったのかどうかを知るために、CD4とCXCR4の発現をFACSによって解析した。具体的な手順は実施例2と同様である。黒い領域が抗体が存在しない場合のデータを示し、白い領域が抗体が存在する場合の領域を示している。
結果、GGA(図17)、フェンレチニド(図18)、NIK−333(図19)はCD4の細胞表面発現を増加させ、CXCR4の細胞表面発現を低下させる傾向にあることがわかった。

本出願は、日本で出願された特願2006−312040を基礎としておりそれの内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (2)

  1. 式(I)で表される化合物又はその塩、及び式(II)で表される化合物又はその塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する、レトロウイルス感染抑制剤であって、レトロウイルス感染抑制が、CXCR4の発現低下作用によるものであり、該レトロウイルスがヒト免疫不全ウイルスである、剤。
  2. 式(I)で表される化合物若しくはその塩、又は式(II)で表される化合物若しくはその塩を有効成分として含有する、請求項1記載の剤。
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