この発明は、主として変速機の変速切換装置に用いられるリバース歯車に関する。詳しくは、外周の変速用歯車部と内周のクラッチ用歯車部とからなる環状歯車体と軸孔側のボス体とが一体化形成されたリバース歯車であって、外周の変速用歯車部はスパー歯又はヘリカル歯から構成され、かつ、内周のクラッチ用歯車部はスプライン歯から構成されたリバース歯車に関する。
本発明に関わるリバース歯車は、例えば以下のように使用される。変速機は、手動変速機ケース内に設けられ互いに平行に延びて上記変速機ケースに支持されるメイン軸、カウンタ軸、及びリバースアイドル軸と、メイン軸に支持される出力歯車と、カウンタ軸に支持されるリバース歯車と、リバースアイドル軸に軸方向に移動可能となるよう支持されるリバースアイドル歯車とを備えている。従来から、変速用歯車部とクラッチ歯車部とを有する変速用歯車は各種の方法によって製作されている。例えば、円板状又はリング状の素材から熱間鍛造により概略形状に成形され、次いで変速用歯車部とクラッチ用歯車部に、ホブ、又はシェービング等の機械加工を施す。或いは、熱間鍛造により成形された変速用歯車部に機械加工を施して歯車を形成し、次いでこの歯車部に冷間鍛造により成形されたクラッチ用歯車部を電子ビーム溶接を施して一体化する方法がある。他に 熱間鍛造により一体成形された変速用歯車部とクラッチ用歯車部夫々に機械加工を施す方法が提案されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。
その他、変速用歯車部のスパー歯車又はヘリカル歯にクラッチ用のスプライン歯を一体化した変速用歯車部車等が知られている。このような歯車の成形方法としては、以下の方法が採用されている。第一は、変速用歯車部及びクラッチ用歯車部の両方を、ホブカッタ等の工具による切削加工で形成する方法である。第二に、変速用歯車部及びクラッチ用歯車部の中、一方を切削加工で成形し、他方を熱間又は冷間鍛造によって成形する方法である。また、第三に、変速用歯車部及びクラッチ用歯車部の中、一方を熱間鍛造加工によって成形した後に、他方を冷間鍛造加工或いは転造ダイスによって成形する方法がある。
以下に、本発明のリバース歯車に近似する例として、変速用歯車部とクラッチ用歯車部とを機械加工を施すことによって形成し、これに軸孔側のボス体を結合、一体化したリバース歯車の例を図12に示す。本図(a)の断面図では、外周の歯車環状体W10に、これとは別体のボス体W20を内周側から嵌着した結合体をリバース歯車W0として示す。環状歯車体W10は、熱間鍛造品に機械加工を施して外歯及び内歯を同芯状に形成したものである。内周のボス体W20は熱間鍛造によって成形した素材の中心に軸孔3を貫通させたものである。なお、環状歯車体W10の外歯1はホブによる機械加工を施したスパー歯或いはヘリカル歯である。同じく環状歯車体W10の内歯2はギヤシェーパ、或いはブローチによる機械加工を施したスプライン歯である。環状歯車体W10に内周側からボス体W20を嵌着し、この嵌着部位に溶接部Jを有する電子ビーム溶接を施し一体化結合する。本図(b)では内歯2を拡大した断面図を示し、図(c)ではその拡大した正面図を示す。内歯2を構成するスプライン歯の先端部のチャンファ23、23は機械加工を施すことによって左右対称に形成される。ここで、内歯2の全周とも機械加工によるピン角が残るのでシフトフィーリング性に劣り、また、歯根元24が別体になっているので強度に難点がある。さらに、このリバース歯車には以下のような課題がある。環状歯車体W10にボス体W20を電子ビーム溶接するために、超音波探傷検査を施すことによって一体化の信頼性を確認する必要がある。また、環状歯車体W10の外歯及び内歯ともに熱間鍛造の素材に機械加工を施すことによって得られるので、そのために専用の高価な歯切り機械を設備投資する必要があり、しかもこれらは専用機械なので使用頻度が低く投資効率が悪い。他に、内歯のスプライン歯の先端部のチャンファにおいて、その先端部が尖らず平坦に加工され、或いは左右非対称になる等精度上の問題の他、バリが残る等機械加工上の問題が残る。
特公昭49−11543号公報
特公平6−73712号公報
特開平4−366028号公報
以上の通りであって、特許文献に代表されるように、従来の変速用歯車部車には次のような問題点がある。
従来の技術では、外周の環状歯車体と内周のボス体とを一体化するために電子ビーム溶接を施すが、剥離、脱落等結合度の信頼性に問題があるので、超音波探傷検査を施すことによって内外一体化の信頼性を確認する必要がある。また、環状歯車体の外歯及び内歯ともに熱間鍛造の素材に機械加工を施すことによって得られので、そのために専用の高価な歯切り機械を設備投資する必要があり、しかもこれらは専用機械なので使用頻度が低く投資効率が悪い。他に、内歯のスプライン歯の先端部のチャンファにおいて、その先端部が尖らず平坦に加工され、或いは左右非対称になる等精度上の問題の他、バリが残る等機械加工上の問題が残る。また、内歯の機械加工においては、ホブ切り、ギヤシェーピング加工、或いはシェービング等を施すので、鍛造により形成されたファイバフローが切断されることになり、歯車の強度が低下する。
本発明は以上のような課題に着目してなされたもので、シフトフィーリング性がよく、剥離や脱落がないことはもちろん歯車強度が高く、製造工程が簡素で経済的なリバース歯車を提供することを目的としている。
近年では鍛造技術の進歩により全ての形状の歯車を鍛造によって成形し、機械加工を省くことが可能となってきた。そこで、本発明者等は、鍛造により形成されたファイバフローをそのまま生かすことに着目し、冷間鍛造後の機械加工を省いて歯車を試作したところ耐久性に優れるといいう知見を得た。
本発明のリバース歯車はかかる知見を基に具現化したもので、請求項1の発明は、外周にスパー歯またはヘリカル歯の外歯が形成されるとともにその内周側にスプライン歯の内歯が形成され、中心部に軸孔を有するボスが一体的に形成されたリバース歯車において、該外歯は熱間鍛造および冷間鍛造によって形成され、該内歯は該外歯とボスとの間に同芯に形成した沈み溝の外周側に該外歯の歯端面より沈んで形成され、軸方向に対して逆テーパで、先端にはチャンファを有し、歯根元は沈み溝の底面まで直立して該底面と一体化されていることを特徴とするリバース歯車である。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明の上記特徴に加えて、前記内歯のチャンファは、歯先部が対象ではなく片側にズレた形状、または、片側のみ面取りした形状としたことを特徴とする請求項1記載のリバース歯車である。
外周の環状歯車体と内周のボス体とは鍛造により一体化成形されるので、剥離、脱落等が生じることがなく強度の信頼性に問題がない。また、変速用歯車部又は/及びクラッチ用歯車部を鍛造によって形成するので、工程が簡素化されて製造コストを下げることができる。その他、鍛造によりクラッチ用歯車部のチャンファを形成するので対称性等の精度が良好であるとともに、チャンファの形状設計に自由度があり、また、機械加工を省くことによってバリの発生を無くすことができるとともに、鍛造成形によるファイバフローと称する繊維組織を歯形内に残して歯車の強度を良好に保持することができる。
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
本発明の実施例1について、図1〜図5を参照しながら説明する。図1は、本実施例に関わるリバース歯車の製造工程図である。図2は、リバース歯車の斜視図である。図3は、リバース歯車の断面図及びスプライン歯からなる内歯の拡大図である。図4は、スプライン歯からなる内歯を冷間鍛造する実施形態を示す説明図である。図5は、スプライン歯からなる内歯先端のチャンファ形状を示す図である。ここで、スプライン歯とは、溝の外周壁に形成されるクラッチ歯のことを言う。
本実施例のリバース歯車の製造プロセスを、図1の工程図に基づいて説明する。先ず、工程(1)に示すように、リバース歯車に適した円柱素材を所定の軸長に例えばビレットシャーによって切断した素材W1を得る。この場合、素材の材質として、例えば、SC鋼、SCR鋼、SCM鋼、SNC鋼、SNCM鋼等を使用することができる。次に、工程(2)に示すように、素材W1を例えば1200℃に加熱して熱間鍛造を施すことによって円盤状の素材W2を得る。次に、工程(3)に示すように、素材W2に熱間鍛造を施して上端面側にドーナツ状の溝W31及び、中央に断面円形に凹んだ軸凹部W32を形成した素材W3を得る。ここで、この溝W31には外周壁W33を備える。次に、工程(4)に示すように、軸凹部W32の中バリを打ち抜いて荒軸孔30が貫通した素材W4を得る。次に、工程(5)において、素材W4に焼きなましの熱処理、ショットブラスト処理及び潤滑処理を施した素材W5を得る。次に、工程(6)において、溝W31の外周壁W33に冷間鍛造を施して内歯としてストレートの荒スプライン歯201及び荒ボス50を形成し、その間に深く凹んだドーナツ状の沈み溝4を形成した素材W6を得る。この時、荒スプライン歯201及び荒ボス50の上端面は鍛造したままのフリー面となる。次に、工程(7)において、素材W6に焼準処理を施した後、必要に応じて前の熱間鍛造による内部応力を除去するために焼きならしの熱処理を施すとともに、荒スプライン歯201の上端面に切削加工を施して寸法を揃えた荒スプライン歯202を有する素材W7を得る。この時、荒スプライン歯202の上端面の切削形状は、次々工程におけるチャンファ形状を形成する際に充満度を高めるため、歯先側が高くなるような10〜30度の勾配面を設ける。次に、工程(8)においてショットブラスト処理及び潤滑処理を施して素材W8を得る。次いで、工程(9)において冷間鍛造によって荒スプライン歯202の上端面部にチャンファを形成した荒スプライン歯203を有する素材W9を得る。次に、工程(10)において、冷間鍛造によってチャンファから歯根元に向かって細くなる逆テーパのスプライン歯からなる内歯2が完成し、素材W10を得る。次の工程(11)において荒軸孔30の内周上下に面取りを施した素材W11を得て、次の工程(12)において外周にホブ切りと面取りシェービングの機械加工を施したスパー歯からなる外歯1が完成し、素材W12を得る。次に浸炭熱処理とショットブラスト処理を施して素材W13を得る。ここで、外歯1はスパー歯の他にヘリカル歯でもよく、以降の説明でも同様である。最後に、工程(14)において、内径及び荒ボス50に研削処理を施して、軸孔3及びボス5を有するリバース歯車Wを得る。以上の工程をまとめると、工程(2)、(3)、(4)は熱間鍛造であり、工程(6)、(9)(10)は冷間押し出し成形、或いは冷間コイニング成形による冷間鍛造である。なお、前述した工程(10)における歯形成の詳細については図4を参照しながら後述する。ここで、荒スプライン歯とは、溝の外周壁に形成される内スプライン歯のことを言い、形成途中のストレート歯である。実施例2についても同様である。
以上の工程を経て最終仕上げ加工を施されたリバース歯車Wの詳細形状を斜視図として図2に示す。外周に歯筋が軸方向に対して平行なスパー歯からなる外歯1が構成され、この内周側に軸方向に対して逆テーパのスプライン歯からなる内歯2が構成される。内歯2の内側には深く凹んだ沈み溝4が同芯円上に形成され、内歯2の先端にはチャンファ23、23を有し、その歯根元24は沈み溝4の底面上に形成される。更に、内周側にはボス5が同軸状に突設され、中心を軸孔3が上下に貫通する。以上、外歯と内歯を備える環状歯車部と軸孔を備えるボス部とが一体に構成され、外歯は機械加工によりスパー歯が形成されるとともに、内歯は冷間鍛造によってスプライン歯が形成されたリバース歯車である。
更に、このリバース歯車Wの詳細を断面図として図3に示す。外歯1は軸方向に対して平行なスパー歯であり、内歯2はこれと同芯円上に軸方向に平行で、かつ、逆テーパのスプライン歯から構成される。内歯2の軸孔側にドーナツ状に深く凹んだ沈み溝4が同芯円上に形成され、かつ、内歯2の歯根元24は沈み溝4の底面まで直立して形成される。内歯2の内周側にはボス5が同軸上に突設され、軸孔3が貫通する。また、内歯2は外歯1の歯端面14より沈んで形成される。本図(b)には内歯2を拡大した断面図を示し、歯根元24が沈み溝4の底面から直立して形成される。本図(c)には内歯2の正面図を示し、歯根元24が沈み溝4の底面から直立して形成される。内歯2は、歯筋方向に歯先面21、その左右に歯面22、22、先端が左右対称に尖ったチャンファ23と23、沈み溝4の歯根元24、逆テーパの歯面22及び歯底面26から構成される。歯面22の先端部に左右対称のチャンファ23、23を示す。ここで、内歯2の全周ともR面取りを施すのでシフトフィーリングが良好になるとともに、歯根元24は沈み溝4の底面と一体化されているので強度が向上する。
ここで、工程(10)における冷間鍛造による内歯の形成の詳細について図4を参照しながら説明する。金型は上ラム側と下ベッド側に分離して構成される。上ラム側は外側の上パンチP1と内側の上パンチP2が主要部で、上パンチP2にスプリングS1を内蔵する。下ラム側は外側のダイ型Q1と内側のダイ型Q2及びダイプレートQ3が主要部で、ダイ型Q2は内歯2の歯数分に分割されてダイプレートQ3の上を放射状に可動する構造になっており、先端部にストレートの荒歯に逆テーパ歯面を形成する歯型T2を設け、これらの中心部先端にテーパP31を有するマンドレルP3が位置する。ダイ型Q2及びダイプレートQ3は下方からスプリングS2によって浮揚されるとともに、外側からスプリング3によって中央へ押しつけられ、これらの下方にエジェクタP4及びP5が位置する。
本図の左半分は前の素材と金型との関係を断面図で示し、右半分は歯形を仕上げ済みの状態を示す。先ず、左半分の歯形の仕上げ前について以下に説明する。工程(9)で得られた素材W9を上下逆に内歯を下向きにしてダイ型Q2の上にセットする。素材W9の内周には工程(6)、(7)、(9)を経た荒スプライン歯203が形成されており、ダイ型Q2の歯型T2に荒スプライン歯203を合わせて位置決めする。次いで、本図の右半分において、上方から上パンチP1と上パンチP2が下降し、先に上パンチP2がスプリングS2を介して素材W9をダイ型Q2に加圧、保持し、次に上ラムに固定されたP1が下側に配置されたマンドレルP3のテーパ面31と内径面が継合したダイ型Q2を押し下げる。このダイ型Q2はテーパ面P31によって外側に放射状に拡開されて逆テーパ歯型T2によってストレートの荒スプライン歯203の歯面に逆テーパが形成される。このようにして、工程(10)において、逆テーパに形成されたスプライン歯からなる内歯2が完成し、素材W10が得られる。
次に、本図右半分のスプライン歯の形成後について説明する。成形が完了すると上パンチP1が上昇し、次いで圧縮状態のスプリングS1が開放されて上パンチP2も上昇する。次に、下方のエジェクタP4によってピン5が上方へ突き出され、スプリングS2とともにダイプレートQ3を押し上げると、マンドレルP3のテーパ面P31に沿ってダイ型Q2がスプリングによって放射状に押し戻され、逆テーパ歯型T2が逆テーパ成形面から離れて素材W10がダイ型Q2から取り出される。
本実施例によるリバース歯車は以上のように構成され、以下に作用について説明する。
本実施例によれば内歯2は逆テーパ状に形成され、かつ、歯の先端部に傾斜したチャンファが形成されるので、以下の作用効果を奏するものである。本実施例のリバース歯車では、一体構造なので外歯1と内歯2との同軸度を確保することが容易であり、軸アライメント誤差の無いリバース歯車を製造することができる。内歯2は、逆テーパ状のスプライン歯を冷間鍛造によって成形するので、歯面近傍のファイバフローが切断されることがなく、歯車の強度が向上するとともに、機械加工による製造コストアップを回避し低廉に抑えることができる。そして、図5に示すように、歯面22の歯幅に対して先端のチャンファ23、23が交わる中央線の位置精度が良好なので運転者にとって手動変速機におけるシフト操作性に優れる。そして、歯の先端部にチャンファを有するクラッチ歯を鍛造によって成形し、かつ、歯面に精度の高い逆テーパ面を形成できることと相俟って、歯面の滑らかさ故歯形同士の嵌め合いが良好となりシフト操作性に優れ、シフトフィーリング性の良好な変速用歯車部車を得ることができる。即ち、シフトチェンジの際のひっかかり感及びゴリゴリ感が生ずることなくスムーズなシフト操作性が得られる。加えて、本実施例のクラッチ用のスプライン歯の歯面は逆テーパを有するので、歯車同士が噛み合ったら外れ難いという形状効果を奏する。更に、歯先面21と両側の歯面22、22及び先端のチャンファ23、23が夫々交差する稜線部が鍛造によって小さい曲率半径を有するR面取り形状に成形されるので、このことによっても歯形同士の噛み合いが滑らかとなる。
本発明の実施例2について、図6〜11を参照しながら説明する。図6は、本実施例に関わるリバース歯車の製造工程図である。図7は、冷間鍛造によって内歯及び外歯を成形する実施形態を示す説明図である。図8は、冷間鍛造によって内歯をチャンファ成形及び外歯を成形する実施形態を示す説明図である。図9は、冷間鍛造によって内歯を逆テーパ成形する実施形態を示す説明図である。図10は、同上、鍛造におけるファイバフローの分布を示す模式図である。図11は、スプライン歯からなる内歯における種々のチャンファ形状を示す図である。本実施例の実施例1との相違点は、内歯は勿論外歯も鍛造によって成形するところにある。以下実施例1と相違する箇所について主に説明する。
本実施例のリバース歯車の製造プロセスを、図6の工程図に基づき説明する。工程(1)及び工程(2)は実施例1と同様なので、以下工程(3)以降について説明する。工程(3)に示すように、素材W2に熱間鍛造を施して外歯としてヘリカル歯からなる荒ヘリカル歯101を荒形成し、同時に、上端面側にドーナツ状の溝W31及び、中央に断面円形に凹んだ軸凹部W32を形成し、溝W31には外周壁W33を備える。また、荒ヘリカル歯101の形成に際に上面外周に鍔状にはみ出したバリW34を有する素材W301を得る。ここで、外歯はヘリカル歯の他にスパー歯でもよく、以降の説明でも同様である。次に、工程(4)に示すように、鍔状のバリW34の出っ張り部を除去するとともに、軸凹部W32の中バリを打ち抜いて荒軸孔30が貫通した素材W401を得る。次に、工程(5)において、更に荒ヘリカル歯101の上端部のバリを除去して素材W501を得る。次に、工程(6)において、素材W501に焼鈍の熱処理、ショットブラスト処理及び潤滑処理を施した素材W601を得る。次に、工程(7)において、溝W31に冷間鍛造を施し、内歯としてストレートの荒スプライン歯201及び荒ボス50を形成し、荒ヘリカル歯101にシゴキ成形を施すとともに下端部に面取りW71を施した荒ヘリカル歯102が形成され、素材W701を得る。この時、荒スプライン歯201及び荒ボス50の上端面は鍛造したままのフリー面である。次に、工程(8)において、荒スプライン歯201の上端面に切削加工を施して寸法を揃えた荒スプライン歯202を形成し、素材W801を得る。この時、荒スプライン歯202の上端面の切削形状は、次々工程におけるチャンファ形状を形成する際に充満度を高めるため、歯先側が高くなるような10〜30度の勾配面を設ける。次に、工程(9)において、素材W801にショットブラスト処理及び潤滑処理を施した素材W901を得る。次に、工程(10)において、冷間鍛造によってストレートの荒スプライン歯202の上端にチャンファを形成した荒スプライン歯203を得る。同時に、荒ヘリカル歯102に冷間鍛造の仕上げ成形によってヘリカル歯を形成するとともに、荒ヘリカル歯102の上端部に面取りW1011を施すと、ヘリカル歯からなる外歯1が完成し、素材W101を得る。次に、工程(11)において、荒スプライン歯203に冷間鍛造を施して逆テーパのスプライン歯からなる内歯2が完成し、素材W111を得る。次に、工程(12)において、軸孔W30の上下に面取り加工を施して面取りW1211、面取りW1212を形成した軸孔31からなる素材W121を得る。次に、工程(13)において、素材W131に浸炭熱処理、ショットブラスト処理を施した素材W131を得る。最後に、工程(14)において、軸孔W30の内周に研削処理を施した軸孔3とともに、荒テーパコーン61の内周面に研削処理を施した内テーパコーン6を有する素材W141を得る。以上の工程をまとめると、工程(2)、(3)、(4)は熱間鍛造であり、工程(7)、(10)、(11)は冷間押し出し成形、或いは冷間シゴキ成形による冷間鍛造である。なお、工程(7)における歯形成の詳細については図7を参照しながら後述する。また、工程(10)における歯形成の詳細については図8を参照しながら後述し、工程(11)における歯形成の詳細については図9を参照しながら後述する。
工程(7)における歯形成の詳細について図7を参照しながら説明する。本図の左半分は前の素材と金型との関係を断面図で示し、右半分は内歯を形成済の状態を示す。先ず、左半分の歯形の形成前について以下に説明する。上パンチP11の先端外周にはスプライン歯の歯型T21が設けられ、ダイ型Q11の開口の内周には、ヘリカル歯の歯型T1が設けられている。工程(6)で得られた素材W601の内歯を上向きにして下パンチP21の上にセットする。素材W601の外周には工程(3)を経た荒ヘリカル歯101が形成されており、ダイ型Q11の歯型T11に 荒ヘリカル歯101を合わせて位置決めする。本工程(7)において、上方から上パンチP11と、下方のダイ型Q11のキャビティの中で素材W601が押しつぶされて、図の右半分のように歯形が形成される。即ち、外周に荒ヘリカル歯101が冷間鍛造のシゴキ成形によって荒ヘリカル歯102が形成され、溝W31には冷間鍛造によって荒スプライン歯201が形成される。この時荒ヘリカル歯101の下端面は面取りW71が形成され、本工程(7)では冷間鍛造によって素材W701が得られる。
次に、工程(10)における歯形成の詳細について図8を参照しながら説明する。本図の左半分は前の素材と金型との関係を断面図で示し、右半分は歯形を形成した後を示す。先ず、左半分の歯形の形成前について以下に説明する。下パンチP31の上端外周にはスプライン歯の歯型T22が設けられ、ダイ型Q12の開口の内周には、ヘリカル歯の歯型T12が設けられている。工程(9)で得られた素材W901の内歯を下向きにして下パンチP31の上にセットする。素材W901の内周には工程(7)、(8)を経た荒スプライン歯202が形成されており、下パンチP31の歯型T22に荒スプライン歯202を合わせて位置決めする。本工程(10)において、上方から上パンチP12と、下方のダイ型Q12のキャビティの中で素材W901が押しつぶされて、図の右半分のように歯形が形成される。本工程(10)において、冷間鍛造によってストレートの荒スプライン歯202の先端にチャンファを形成した荒スプライン歯203を得る。同時に、荒ヘリカル歯102に冷間鍛造の仕上げ成形によってヘリカル歯からなる外歯1が完成する。この時、荒ヘリカル歯102の端部には面取りW1011が形成され、本工程(10)では冷間鍛造によって素材W101が得られる。
次に、工程(11)における歯形成の詳細について図9を参照しながら説明する。本図の左半分は歯形を形成する前の素材と金型との関係を断面図で示し、右半分は内歯を形成済みの状態を示す。先ず、左半分の歯形の形成前について以下に説明する。ダイ型Q21の中央部外周にはスプライン歯の歯型T23が設けられている。工程(10)で得られた素材W101の内歯を下向きの逆にしてダイ型Q21の上にセットする。素材W101の内周には工程(10)を経た荒スプライン歯203が形成されており、ダイ型Q21の歯型T23に荒スプライン歯203を合わせて位置決めする。次いで、本図の右半分において、上方から上パンチP13と上パンチP14が下降し、先に上パンチP14がスプリングを介して素材W101をダイ型Q21に加圧、保持し、次に上ラムに固定されたP13が下側に配置されたマンドレルP310のテーパ面P311と内径面が継合したダイ型Q21を押し上げる。このダイ型Q21はテーパ面P311によって外側に放射状に拡開されて逆テーパ歯型T23によってストレートの荒スプライン歯203の歯面に逆テーパが形成される。上方から上パンチP13、P14と、下方からダイ型Q21のキャビティの中で素材W101が押しつぶされて、図の右半分のように歯形が形成される。即ち、内周には冷間鍛造によってスプライン歯からなる内歯2が逆テーパに形成され、本工程(11)では冷間鍛造によって素材W111が得られる。
本実施例によるリバース歯車は以上のように構成され、以下に作用について説明する。
外周のヘリカル歯と内周側のクラッチ歯を熱間鍛造及び冷間鍛造によって一体化成形することが可能となるため、以下の作用効果を奏するものである。ヘリカル歯とクラッチ歯とを一体化成形し、その後で歯元部に機械加工を施さないので、生じたファイバフローが切断されることがなく歯車の強度を向上させることができ、かつ、歯切り加工が不要なので材料歩留まりが向上するとともに製造コストを低廉に抑えることができる。以下に、外歯或いは内歯におけるファイバフローの形成の詳細について図10を参照しながら説明する。熱間鍛造及び冷間鍛造により形成されたヘリカル歯、或いはクラッチ歯の夫々歯形内に、ファイバフローと称する鍛流線が繊維組織状に形成される。図(a)は熱間鍛造及び冷間鍛造における歯形内における鍛流線の分布を模式的に示す。繊維組織の流れである鍛流線Fが外周から内に向けて多層に形成されている。一方図(b)では比較のため鍛造後ホブ加工、シェービング加工、あるいはその他の切削加工を行う場合を模式的に示し、歯形の表面において切削加工面Mによって鍛流線Fが切断されている。本実施例によるスプライン歯からなる内歯及びヘリカル歯からなる外歯は鍛造成形の儘なので、ファイバフローが切断されることがなく歯形面の耐久性に優れる。換言すれば、鍛造後の切削加工を省略することができるので製造コストアップが回避されるとともに、機械強度の高い歯面を得ることができる。
外歯又は内歯については、熱間或いは冷間鍛造によってニアネットシェイプ歯形を成形した後、冷間しごき或いは冷間コイニング成形による冷間鍛造によって歯形の精度出しをすることを基本とする。まとめると、歯面、歯先面、歯底面又は歯端面が交差して形成される全ての稜線部位は冷間鍛造のままで、角のないフルR面取り部が形成されるので歯形面の耐久性に優れ、特に、歯底面の稜線部においても、冷間鍛造のままのフルR面取り部が施されるので段差を生じることなく応力集中を回避する効果がある。この時、フルR面取り部の歯内部においてファイバフローが密に形成されたままなので歯車の曲げ強度が高い。また、ホブ加工による歯切り或いは旋削による歯幅寸法加工後のバリ取りが不要となり、加工コストを低減できるという効果を奏する。また、内側から外周側へ、軸孔、ボス、沈み溝、内歯、及び外歯が、夫々同軸上に一体化構成され、内外歯の一体の型鍛造なので、軸アライメント誤差がなく同軸度を確保することができる。
本実施例1及び実施例2では、内歯のクラッチ歯を鍛造型によって形成するので、設計の自由度が高い。内歯の各種のチャンファ形状について、図11を参照しながら説明する。鍛造型によってスプライン歯を種々の形状に成形することができ、以下に歯の正面から見た投影図として示す。
同図(a1)に示すように、歯先部が対称ではなく歯先の頂点が片側にずれたズレチャンファを形成することができる。また、同図(a2)に示すように歯根元側を細くした形状とし、他に同図(a3)に示すように片側のみ面取りした片チャンファ等の異形状のものも実現できる。このようにして、スプライン歯のチャンファ形状に工夫を加えてシフトフィーリング性を改善することができる。
本発明のリバース歯車は外歯と内歯からなる環状歯車体とボス体とを一体化した構造なので強度信頼性に優れる。また、鍛造により歯形が形成されるので、ホブ切り、ブローチ、或いはシェービング等の機械加工により鍛造面が削り取られるようなことがなく、内部のファイバフローをそのまま保持して歯車の耐久性を向上させることができる。従って、本発明のリバース歯車は自動車のトランスミッションの用途に限らず、工作機械、荷役建設機械、ロボット等の各種の機械装置等に用途を拡大できる。
本発明の実施例1に関わるリバース歯車の製造工程図である。
同上、リバース歯車の斜視図である。
同上、リバース歯車の断面図及び内歯の拡大図である。
同上、スプライン歯からなる内歯を冷間鍛造成形する実施形態を示す説明図である。
同上、スプライン歯からなる内歯先端のチャンファ形状を示す図である。
本発明の実施例2に関わるリバース歯車の製造工程図である。
同上、冷間鍛造によって内歯及び外歯を成形する実施形態を示す説明図である。
同上、冷間鍛造によって内歯のチャンファ及び外歯を成形する実施形態を示す説明図である。
同上、冷間鍛造によって内歯を逆テーパ成形する実施形態を示す説明図である。
同上、鍛造におけるファイバフローの分布を示す模式図である。
同上、スプライン歯からなる内歯における種々のチャンファ形状を示す図である。
従来例を示すもので、リバース歯車の断面図である。
F ファイバフロー、M 機械加工面
J 溶接部
P1、P2、P11、P12、P13、P14 上パンチ
P21、P31、P41、P51 下パンチ
P3、P310 マンドレル、P31、P311 テーパ
P4 エジェクタ、P5 ピン
Q1、Q2、Q11、Q12、Q21 ダイ型
Q3、Q31 ダイプレート
S1、S2、S3 スプリング
T1 、T2 、T11、T21、T21、T22、T23 歯型
W、W0 リバース歯車
W1、W2、W3、W4、W5、W6、W7、W8、W9、W10、W11、W12、W13 、W301、W401、W501、W601、W701、W801、W901、W101、W111、W121、W131、W141、W151、W161素材
W30 荒軸孔、W31 溝、W32 軸凹部、W33 外周壁
W10 環状歯車体、W20 ボス体
1 外歯
101、102 荒ヘリカル歯
14 歯端面
2 内歯
21 歯先面、22 歯面、23 チャンファ、24 歯根元
201、202、203 荒スプライン歯
3 軸孔
30、31 荒軸孔
4 沈み溝
5 ボス、50 荒ボス
6 内テーパコーン、61 荒テーパコーン