〔実施形態1〕
本発明の第1の実施形態について、図1から図6に基づいて説明する。
〈前提条件〉
本実施形態では、入力映像信号が、X階調(黒0〜白(X−1))のRGB3色原色信号で構成されているものとする。すなわち、入力映像信号は、赤色の階調レベルを0〜(X−1)の整数値(階調値)rで表すxビットX階調(X=2x)のデジタル信号Rと、緑色の階調レベルを0〜(X−1)の整数値gで表すxビットX階調のデジタル信号Gと、青色の階調レベルを0〜(X−1)の整数値bで表すxビットX階調のデジタル信号Bとからなる3xビットのカラーデジタル映像信号である。
本実施形態における映像信号は、動画を示す信号であってもよく、静止画を示す信号であってもよい。
なお、本実施形態では、rgbの階調レベルを(2x−1)で除算することにより、それぞれ(0≦r,g,b≦1)の値に規格化して説明する。
以上の前提条件は、実施形態2、3においても同様に成り立つ。
〈装置構成〉
図1に示すように、本実施形態のカラー表示装置100は、多色表示パネル101と、色変換処理回路102と、操作部103とを備えている。
ここで、「多色表示」とは、基本となる表示色(基本色)を4色以上用い、この基本色を適当な割合で混合することによって実現されるカラー表示を意味する。また、「多色表示パネル」とは、上記基本色に対応した画素を有することにより多色表示を実現する表示パネルを意味する。
本実施形態では、多色表示パネル101の基本色が5色である場合を想定している。したがって、本実施形態では多色表示パネル101を5色表示パネル101ということもある。
なお、多色表示パネル101としては、液晶表示パネル、CRT、PDP、液晶プロジェクタなど、多色表示が可能なデバイスであればいずれのものを用いてもよい。
カラー表示装置100に入力される映像信号は、RGB(R:赤、G:緑、B:青)の3原色信号からなる映像信号である。この映像信号は、色変換処理回路102によって5色表示パネル101用の映像信号d1〜d5に変換され、5色表示パネル101に供給される。
カラー表示装置100では、5色表示パネル101に表示される映像の色を調整することができるようになっている。この調整は、操作者が操作部103を操作することによって行われる。操作部103は、このような操作を受け付け、その操作に応じた調整信号を色変換処理回路102に供給する。色変換処理回路102では、操作部103からの調整信号に基づいて映像信号の調整を行う。色変換処理回路102における映像信号の調整の詳細については後述する。
なお、本実施形態では、カラー表示装置100に入力される映像信号としてRGBの3原色からなる映像信号を想定しているが、YMC(Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン)などの他の3原色からなる映像信号であってもよい。また、カラー表示装置100に入力される映像信号としては、上記のような原色からなる信号に限らず、たとえば一般にカラーテレビ信号に用いられているYCrCb信号のように、3原色の映像信号に変換可能な信号であってもよい。この場合、YCrCb信号を3原色の映像信号に変換するための構成を設けておけばよい。
図2に色変換処理回路102のブロック構成を示す。色変換処理回路102は、逆γ補正処理部11と、色成分抽出部12と、マトリクス演算部13と、クリッピング処理部14と、γ補正処理部15と、マトリクス生成部16とを備えている。
逆γ補正処理部11は、色変換処理回路102に入力される映像信号PS0に対して逆γ補正を施す。本実施形態では、色変換処理回路102に入力される映像信号PS0がγ補正された状態で伝送されてくる場合を想定している。γ補正された映像信号では、階調レベルと輝度との関係が非線形となっているので、逆γ補正処理部11によって逆γ補正を施すことにより階調レベルと輝度との関係を線形にする。
なお、色変換処理回路102に入力される映像信号PS0がγ補正されている場合は上述のように逆γ補正を施すことが望ましいが、逆γ補正を施さず、γ補正されたままの映像信号を用いて後段の処理を行っても実用上問題がない場合もある。このような場合には、逆γ補正処理部11を省いてもよい。また、色変換処理回路102に入力される映像信号PS0がγ補正されていない場合にも、逆γ補正処理部11を省くことができる。
色成分抽出部12は、逆γ補正処理部11による逆γ補正処理後の映像信号PS1におけるRGBそれぞれの階調レベルの大小関係に基づいて、映像信号PS1を6つのパターンに分類し、それぞれのパターンに応じて異なる演算処理を行うことにより、赤(ro)、緑(go)、青(bo)、黄(yo)、マゼンダ(mo)、シアン(co)、白(wo)の各色成分を示す映像信号PS2を生成する。
マトリクス演算部13は、5色表示パネル101の基本色数に応じたマトリクス演算により、上記映像信号PS2の色成分を5色表示パネル101の基本色に対応した色成分d1〜d5に再分配し、5色の映像信号PS3を生成する。
クリッピング処理部14は、上記映像信号PS3に対してクリッピング処理を施した映像信号PS4を生成する。クリッピング処理とは、階調レベルが本来取り得る範囲の最大値(1)を超え、または、最小値(0)未満となってしまった階調レベルを、それぞれ最大値または最小値に変換することにより、階調レベルを本来取り得る範囲内に収める処理である。
γ補正処理部15は、上記映像信号PS4に対して、5色表示パネル101のγ特性に適したγ補正を施すことにより、映像信号PS5を生成する。この映像信号PS5が5色表示パネル101に供給される。
マトリクス生成部16は、操作部103から供給される調整信号に基づいて、マトリクス演算部13におけるマトリクス演算に用いるマトリクスを生成し、マトリクス演算部13に供給する。マトリクス生成部16の生成するマトリクスの詳細については後述する。
〈処理内容〉
次に、上記色成分抽出部12、マトリクス演算部13、マトリクス生成部16における具体的な処理の内容について説明する。
映像信号PS1が色成分抽出部12に入力されると、各色信号の階調レベルr、g、bの大小関係が判定される。すなわち、入力された映像信号のr、g、bの値が、
[1]r>g>b、
[2]r>b>g、
[3]b>r>g、
[4]b>g>r、
[5]g>b>r、
[6]g>r>b
の6つのパターンのうちの何れに属しているかが判定される。
なお、上記パターン[1]〜[6]には等号が含まれていないが、実際には、映像信号のr、g、bの全ての組合せがパターン[1]〜[6]の何れか1つにのみ属するように、適宜等号を振り分けて設定すればよい。ここでは、
[1]r≧g≧b、
[2]r≧b>g、
[3]b>r≧g、
[4]b>g>r、
[5]g≧b>r、
[6]g>r≧b
のように等号を設定することとするが、互いの等号の関係が重複しないようにすれば他の設定をしてもよい。
そして、色成分抽出部12は、赤、緑、青、イエロー、マゼンダ、シアン、白の各色成分の階調レベルro、go、bo、yo、mo、co、woを次の要領で算出する。
[1]r≧g≧bの場合
ro=(r−g)
yo=(g−b)
go=bo=mo=co=0
wo=b
[2]r≧b>gの場合
ro=(r−b)
mo=(b−g)
go=bo=yo=co=0
wo=g
[3]b>r≧gの場合
bo=(b−r)
mo=(r−g)
ro=go=yo=co=0
wo=g
[4]b>g>rの場合
bo=(b−g)
co=(g−r)
ro=go=yo=mo=0
wo=r
[5]g≧b>rの場合
go=(g−b)
co=(b−r)
ro=bo=yo=mo=0
wo=r
[6]g>r≧bの場合
go=(g−r)
yo=(r−b)
ro=bo=mo=co=0
wo=b
この色成分抽出部12による演算の意義について図3を用いて説明する。
図3は映像信号PS1の階調レベルr、g、bの大小関係が上記[1]のパターンに含まれるr>g>bの場合について示している。r、g、bの階調レベルを図3における高さ方向に次のように分断して考える。
まず、rとgとbとが共通の部分は白成分ということができる。よって、図3の場合はbの階調レベルに相当する階調レベルをwoとすることができる。同様に、gとbとが共通の部分は黄色成分ということができる。つまり、図3の場合はgとbの差分に相当する階調レベルをyoとすることができる。同様に、図3の場合はrとgとの差分をroとすることができる。
また、このr>g>bの場合では、go、bo、mo、coに相当する色成分が存在しないため、これらの階調レベルを0とすることができる。
上記[1]のパターン以外のパターン[2]〜[6]についても、ほぼ同様の考え方によって色成分の変換ができ、上記パターン[1]〜[6]についてそれぞれ上述した演算によってro、go、bo、yo、mo、co、woが算出される。
マトリクス演算部13は、色成分抽出部12によって算出されたro、go、bo、yo、mo、co、woを用いて数式(1)の演算を行うことにより、d1からd5によって構成される映像信号PS3を生成する。
数式(1)において、A5x7は5行7列の行列であり、数式(2)のように表される。
数式(2)における行列A5x7の要素(マトリクス係数)aijは、5色表示パネル101の基本色に応じて定められ、かつ、調整信号に基づいて調整される。このマトリクス係数は、マトリクス生成部16によって設定される。このマトリクス係数の設定方法を次に説明する。
図4は、d1からd5に対応する5色表示パネル101の基本色を色度図上の点D1からD5として示すとともに、映像信号PS1が想定している原色を色度図上の点R、G、Bとして示し、さらに、そこから予想されるイエロー、マゼンタ、シアン、白の色度図上の点Y、M、C、Wを示したものである。ここで、点Y、M、C、Wは、それぞれ(r=g、b=0)、(r=b、g=0)、(g=b、r=0)、(r=g=b)を満たす色度図上の点である。
なお、本実施形態では、5色表示パネル101の5つの基本色が、赤(D1)、緑(D2)、青(D3)、黄(D4)、シアン(D5)である場合を想定している。
一般に、多色表示パネルは、3原色表示パネルと比較して広い色再現範囲を実現できることが利点である。したがって、多色表示パネルの色再現範囲は、3原色の入力信号(映像信号PS0又はPS1)が想定している色再現範囲に対して広く設定されていることが多い。そのため、図4に示すように、色度図上において、入力信号の3原色の点と、多色表示パネルの各基本色の点とは異なっている場合が多い。その結果、入力信号の3原色を多色表示パネルの各基本色に単に変換しただけでは、多色表示パネルに映し出される映像の色が、違和感のあるものとなったり、不十分に感じるものとなったりすることがある。
このような問題を解決するために、本実施形態では調整信号によって映像信号の調整を行う。この調整は、具体的にはマトリクス係数を調整することによって実現される。
ここで、説明のため、まずは入力信号の3原色の点と多色表示パネルの各基本色の点とが図5に示すような関係、つまりR、G、B、Y、Cの各点とD1、D2、D3、D4、D5の各点とが色度図上で一致しており、さらにそれらの輝度値も同じ場合を考える。
この場合、マトリクス係数は、数式(3)のように設定すればよい。
数式(3)を用いて数式(1)を展開すると、
d1=ro+mo+wo
d2=go +wo
d3=bo+mo+wo
d4=yo +wo
d5=co +wo
となる。
この展開した式からわかるように、d1からd5にそれぞれ対応する色成分を配分するとともに、d1からd5のすべてに共通の白成分を加算し、さらに、moの成分をd1とd3とに均等に配分して加算することによって5色の映像信号PS3を得ることができる。moの成分をd1とd3とに均等に配分して加算した理由は、5色表示パネル101ではMに相当する基本色の点が存在していないので、moの成分をD1とD3とによって表すためである。このような演算を行うことにより、d1からd5の映像信号PS3を生成することができる。
しかしながら、図4に示したように、実際の5色表示パネル101における基本色の点D1からD5は、入力信号が想定しているRGBYMCWの点と一致していない。そのため、数式(3)のマトリクス係数に対して調整を施すことが望ましい。
たとえば、YとD4との関係が図6のようになっている場合を想定する。図6は図4のY周辺部分をクローズアップしたものである。図6に示すように、WとYとを結ぶ直線に対してD4がR側にずれている場合、上記d4(=yo+wo)では入力信号の想定しているイエローよりも赤みがかったイエローが再現されることになる。
このような色相のずれを調整するためには、d4にyoを配分するとともに、d2の算出式においてyoにある係数を掛けた値を加算し、d1の算出式においてyoにある係数を掛けた値を減算すればよい。すなわち、係数a14、a24を変更することによってイエローの色相を調整することができる。
また、図6に示すように、GとRとを結ぶ直線に対してD4が外側、つまりWとは反対側にある場合、入力信号の想定しているイエローよりも彩度(色純度)の高いイエローが再現されることになる。
このような彩度のずれを調整するためには、d1、d2、d3、d5それぞれの算出式において、yoにある係数を掛けた値を加算すればよい。この場合、d1、d2、d3、d5の輝度レベルが上がることになるので、全体の輝度レベルを補償するために、d4の算出式においてyoに掛ける係数を小さくしてもよい。すなわち、イエローの彩度を調整するためには、a14、a24、a34、a54、の各係数を調整するとともに、この調整による全体の輝度の変化を補償するために、a44の係数を調整すればよい。
また、D4の輝度がYの輝度に比べて高い場合、入力信号の想定している輝度よりも高いイエローが再現されることになる。
このような輝度のずれを調整するためには、d4の算出式におけるy1の係数を下げればよい。すなわち、a44の値を調整することによってイエローの輝度を調整することができる。
ここではイエローを例にとって説明したが、他の色についても同様に色相、彩度、輝度を調整することができる。このような調整を行う場合のマトリクス係数の具体例を表1に示す。なお、色相、彩度、輝度の各調整パラメータは表2に示すように定義している。
ここで、表2に示した各調整パラメータは整数である。そして、色相の調整パラメータが正/負の場合は、それぞれ、色度図上において色相が時計周り/反時計回りに調整される。また、彩度の調整パラメータが正/負の場合は、それぞれ、彩度が低下する/向上するように調整される。また、輝度の調整パラメータが1以上/1以下の場合は、それぞれ、輝度が向上する/低下するように調整される。
なお、ここではd1からd5の階調レベルが整数となるように各調整パラメータを整数としているが、映像信号PS3が必ずしも整数値ではなくてもよい場合や、d1からd5の算出後に算出結果を整数化する処理を含める場合には、各調整パラメータは必ずしも整数でなくてもよい。
上述したマトリクス係数の調整方法は一例であり、他の方法によって調整することも可能である。
たとえば、赤の彩度の調整に関しては、上記具体例のようにa51にSrを加算してa11からSrを減算する以外に、a21、a23にSrを加算してa11からSrを減算するようにしてもよい。
また、上記具体例においてa51にSrを加算してa11からSrを減算するという演算は平均輝度を保つために行っているが、これはそもそも図4のD1とD5とが同じ輝度であると仮定しているからであり、実際の5色表示パネル101においてD1とD5とが異なる輝度であるのであれば、Srにそれぞれ輝度の差を考慮した補正係数を乗算することが望ましい。
また、必ずしも入力信号の想定する原色と5色表示パネル101の基本色とが色度図上で一致している必要はなく、実際の表示に違和感がなくなるように調整すればよい。また、逆に彩度や輝度が本来の値からずれていても構わないから見映えを重要視して彩度や輝度を強調させたい場合もあり、そのような場合においても、所望する表示となるようにマトリクス係数を調整すればよい。
なお、マトリクス係数の設定によっては、マトリクス演算部13の生成するd1からd5の値が1を超え、あるいは0未満になってしまうことがある。この場合には、クリッピング処理部14によってクリッピング処理を施すことにより、d1からd5を0≦d1,d2,d3,d4,d5≦1の範囲内に収めるようにする。
また、5色表示パネル101はγ特性を持っているため、クリッピング処理した後の映像信号PS4に対してγ補正処理部15によってγ補正処理を行う。
以上のように、色変換処理回路102は、3原色信号を5色信号に変換する色信号変換装置である。なお、本実施形態では多色表示パネル101として5色の画素を有する表示パネルを想定しているため、色変換処理回路102も5色信号への変換を行っているが、多色表示パネル101としてはn色(n≧4)の画素を有する表示パネルを想定することができ、この場合、色変換処理回路102も画素の色の数にあわせたn色信号への変換を行うことになる。
そして、色変換処理回路102は、3原色信号を等色変換することにより、n色信号の各色成分とそれぞれ同等色の色成分を含んだm色成分(m≧n)からなるm色信号を生成する第1色信号生成手段としての色成分抽出部12を備えている。ここで、同等色の色成分とは、図4に示したRとD1、GとD2、BとD3、YとD4、CとD5のように、色度図上における互いの位置が比較的近く、感覚的に同系色の色として捉えることができる2つの色成分をいう。
また、色変換処理回路102は、m色信号の各色成分の1次結合によってn色信号の各色成分をそれぞれ生成する第2色信号生成手段としてのマトリクス演算部13を備えている。ここで、各色成分の1次結合とは、上記数式(1)のように、各色成分にそれぞれ係数を乗じて加算することをいう。
m色信号の各色成分の1次結合によるn色信号の各色成分の生成は、次のようにすることができる。
m色信号の各色成分には、n色信号の各色成分とそれぞれ同等色の色成分が含まれているため、これらの色成分については、それぞれ対応するn色信号の色成分として配分することができる。また、m色信号の各色成分のうち、n色信号に対応するものが存在しない色成分(余剰の色成分)がある場合には、この余剰の色成分をn色信号の各色成分に適宜配分することができる。これらの配分は、上記数式(1)のマトリクス係数を上記数式(3)のように設定することによって実現できる。
さらに、n色信号の各色成分に関する色相、彩度、輝度をパラメータとして上記の配分を調整することにより、これらのパラメータに応じてn色信号によって表される色を調整することができる。この調整は、上記数式(1)のマトリクス係数を上記表1のように設定することによって実現できる。
このように、色変換処理回路102では、n色信号によって表される色の調整を、n色信号の各色成分に関する色相、彩度、輝度をパラメータとして行うことができる。n色信号の各色成分に関する色相、彩度、輝度は感覚的に理解しやすい。したがって、色変換処理回路102では、感覚的に理解しやすいパラメータを用いて、変換後の信号によって表される色の調整が可能となる。
なお、色成分抽出部12は、3原色信号の各原色成分と、各原色成分にそれぞれ対応する各補色成分と、無彩色成分とを、上記m色成分としている。これにより、上記[1]から[6]のパターンにおいて示したように、3原色信号の各原色成分同士の減算などの簡単な演算によってm色信号を生成することができる。
また、色変換処理回路102は、マトリクス演算部13におけるマトリクス係数を変更する係数変更手段としてのマトリクス生成部16をさらに備えている。色変換処理回路102はマトリクス生成部16を必ずしも備えている必要はなく、この場合、上述した調整は、色変換処理回路102の製造段階などにおいて、マトリクス生成部16及び操作部103の構成に相当する調整用の装置を用いて行うようにしてもよい。しかし、色変換処理回路102にマトリクス生成部16を組み込んでおき、また、操作部103を設けておくことによって、カラー表示装置100の工場出荷後においても調整が随時可能となる。
なお、色変換処理回路102の特徴点を次のように表現することもできる。すなわち、色変換処理回路102は、3次元の映像信号をn色(n≧4)の画素を有する多色表示パネル101に入力されるn次元の映像信号に変換する信号変換装置であって、3次元の映像信号の各階調レベルの大小関係に基づいて分類される6つのパターンの中から、実際に入力される3次元の映像信号のパターンを判定し、いずれのパターンに属するかによって異なる演算処理を行うことにより複数の色成分を抽出し、多色表示パネル101への入力信号として再配分するものである。また、色変換処理回路102は、3次元の映像信号の階調レベルから6つのパターンを判定し、そのパターンに応じて異なる演算処理をおこなうことにより、赤(ro)、緑(go)、青(bo)、黄色(yo)、シアン(co)、マゼンダ(mo)および白(wo)の成分を抽出する第1の手段と、上記nに応じたマトリクス演算により、上記成分を再分配する第2の手段により多次元の映像信号を作成するものである。
これによれば、一般に普及している3次元の映像信号に基づいて演算処理を行うことにより、多色表示装置に対応した多次元の映像信号を生成することができる。
なお、上記数式(2)に示したマトリクス係数を、色成分抽出部12によって判定した6つのパターンの判定結果に対応して変化させるようになっていてもよい。
また、色成分抽出部12によって算出された上記ro、go、bo、yo、mo、co、woを、一旦非線形処理を施した後、マトリクス演算部13によりマトリクス演算するようになっていてもよい。
〔実施形態2〕
本発明の第2の実施形態について、図7から図9に基づいて説明する。
図7に示すように、本実施形態のカラー表示装置200は、多色表示パネル201と、色変換処理回路202と、操作部103とを備えている。
本実施形態では、実施形態1の5色表示パネル101とは異なる多色表示パネル201を備えている。多色表示パネル201は、RGBの3原色に白を加えた4色の基本色を有するものである。したがって、本実施形態では多色表示パネル201を4色表示パネル201ということもある。
また、図8に示すように、本実施形態では、実施形態1の色変換処理回路102とは異なる色変換処理回路202を備えている。色変換処理回路202は、多色表示パネル201に対応した処理回路であり、そのブロック構成は図2に示した実施形態1の色変換処理回路102に類似している。色変換処理回路202が色変換処理回路102とは異なる点は、主に、マトリクス演算部13及びマトリクス生成部16とは異なる処理を行うマトリクス演算部23及びマトリクス生成部26を備えている点にある。また、色変換処理回路202では、映像信号PS3からPS5がd1からd4によって構成されている点も色変換処理回路102とは異なっている。
なお、操作部103、及び色変換処理回路202における上記以外の構成は、実施形態1の対応する構成とほぼ同等のものであるため、実施形態1の場合と同一符号を用いることとし、その説明を省略する。
図9は、d1からd4に対応する4色表示パネル201の基本色を色度図上の点D1からD4として示すとともに、映像信号PS1が想定している原色を色度図上の点R、G、Bとして示し、さらに、そこから予想されるイエロー、マゼンタ、シアン、白の色度図上の点Y、M、C、Wを示したものである。図9に示すように、多色表示パネル201の基本色の1つである白に対応する点D4は、D1からD3で作る色度領域内に含まれている。
色変換処理回路202におけるマトリクス演算部23は、色成分抽出部12によって実施形態1の場合と同じようにして算出されたro、go、bo、yo、mo、co、woを用いて数式(4)の演算を行うことにより、d1からd4によって構成される映像信号PS3を生成する。
数式(4)において、A4x7は4行7列の行列であり、数式(5)のように表される。
数式(5)における行列A4x7の要素(マトリクス係数)aijは、4色表示パネル201の基本色に応じて定められ、かつ、調整信号に基づいて調整される。このマトリクス係数は、マトリクス生成部26によって設定される。このマトリクス係数は、実施形態1の場合と同じような考え方によって表3のように設定することができる。なお、色相、彩度、輝度の各調整パラメータは表4に示すように定義している。なお、ここでは、d4に対応する白は調整する必要がないものとしている。
もちろん、この例はあくまで一例であることは、実施形態1で述べた通りである。
また、白色の色を調整したい場合は、マトリクス係数の7列目を調整することにより実現できる。たとえば、入力信号の白が想定している白よりも黄色がかっている場合には、a37の係数を1より大きな値にする、または、a17及びa27の係数を1より小さな値にすればよい。あるいは、平均輝度を考えて、a37の係数を1より大きな値にし、かつ、a17及びa27の係数を1より小さな値にしてもよい。
このように、色変換処理回路202は、白の画素を含んだ多色表示パネル201に対応する映像信号を生成することもできる。また、色変換処理回路202は、d1からd3の色相、彩度、輝度の調整が可能となっている。
以上のように、色変換処理回路202は、3原色信号を白を含む4色信号に変換する色信号変換装置である。なお、本実施形態では多色表示パネル101として4色の画素を有する表示パネルを想定しているため、色変換処理回路202も4色信号への変換を行っているが、多色表示パネル201としてはn色(n≧4)の画素を有する表示パネルを想定することができ、この場合、色変換処理回路202も画素の色の数にあわせたn色信号への変換を行うことになる。
そして、色変換処理回路202は、3原色信号を等色変換することにより、n色信号の各色成分とそれぞれ同等色の色成分を含んだm色成分(m≧n)からなるm色信号を生成する第1色信号生成手段としての色成分抽出部12を備えている。ここで、同等色の色成分とは、図9に示したRとD1、GとD2、BとD3、WとD4のように、色度図上における互いの位置が比較的近く、感覚的に同系色の色として捉えることができる2つの色成分をいう。なお、同等色の色成分には、WとD4のように、同一の色成分、つまり、色度図上における位置が一致する2つの色成分も含むものとする。
これにより、色変換処理回路202では、実施形態1と同様に、感覚的に理解しやすいパラメータを用いて、変換後の信号によって表される色の調整が可能となる。
また、色変換処理回路202は、実施形態1と同様、マトリクス演算部23におけるマトリクス係数を変更する係数変更手段としてのマトリクス生成部26をさらに備えている。
なお、色変換処理回路202の特徴点を次のように表現することもできる。すなわち、色変換処理回路202は、3次元の映像信号をn色(n≧4)の画素を有する多色表示パネル201に入力されるn次元の映像信号に変換する信号変換装置であって、3次元の映像信号の各階調レベルの大小関係に基づいて分類される6つのパターンの中から、実際に入力される3次元の映像信号のパターンを判定し、いずれのパターンに属するかによって異なる演算処理を行うことにより複数の色成分を抽出し、多色表示パネル201への入力信号として再配分するものである。また、色変換処理回路202は、3次元の映像信号の階調レベルから6つのパターンを判定し、そのパターンに応じて異なる演算処理をおこなうことにより、赤(ro)、緑(go)、青(bo)、黄色(yo)、シアン(co)、マゼンダ(mo)および白(wo)の成分を抽出する第1の手段と、上記nに応じたマトリクス演算により、上記成分を再分配する第2の手段により多次元の映像信号を作成するものである。
これによれば、一般に普及している3次元の映像信号に基づいて演算処理を行うことにより、多色表示装置に対応した多次元の映像信号を生成することができる。
なお、上記数式(5)に示したマトリクス係数を、色成分抽出部12によって判定した6つのパターンの判定結果に対応して変化させるようになっていてもよい。
また、色成分抽出部12によって算出された上記ro、go、bo、yo、mo、co、woを、一旦非線形処理を施した後、マトリクス演算部23によりマトリクス演算するようになっていてもよい。
〔実施形態3〕
本発明の第3の実施形態について、図10から図13に基づいて説明する。
図10に示すように、本実施形態のカラー表示装置300は、多色表示パネル101と、色変換処理回路302と、操作部103とを備えている。
本実施形態では、実施形態1の色変換処理回路102とは異なる色変換処理回路302を備えている。操作部103及び5色表示パネル101は、実施形態1の対応する構成とほぼ同等のものであるため、実施形態1の場合と同一符号を用いることとし、その説明を省略する。
図11に示すように、色変換処理回路302が色変換処理回路102とは異なる点は、主に、色成分抽出部12、マトリクス演算部13、及びマトリクス生成部16とは異なる処理を行う色成分抽出部32、マトリクス演算部33、及びマトリクス生成部36を備えている点にある。また、色変換処理回路302では、赤(ro)、緑(go)、青(bo)、黄(yo)、マゼンダ(mo)、シアン(co)、白(wo)の各色成分を示す信号に加えて、これらの中間色(後述)を示す信号が映像信号PS2に含まれている点も色変換処理回路102とは異なっている。
なお、色変換処理回路302における上記以外の構成は、実施形態1の対応する構成とほぼ同等のものであるため、実施形態1の場合と同一符号を用いることとし、その説明を省略する。
色成分抽出部32は、逆γ補正処理部11による逆γ補正処理後の映像信号PS1におけるRGBそれぞれの階調レベルの大小関係に基づいて、映像信号PS1を6つのパターンに分類し、さらに各パターンを2つのサブパターンに分類し、それぞれのパターン、サブパターンに応じて異なる演算処理を行うことにより、赤(ro)、緑(go)、青(bo)、黄(yo)、マゼンダ(mo)、シアン(co)、白(wo)に加え、これらの中間色である赤−黄(ry)、赤−マゼンタ(rm)、青−マゼンタ(bm)、青−シアン(bc)、緑−シアン(gc)、緑−黄(gy)の合計13種類の色成分を示す映像信号PS2を生成する。
具体的には、映像信号PS1が色成分抽出部12に入力されると、実施形態1と同様にして入力された映像信号のr、g、bの値が、
[1]r≧g≧b、
[2]r≧b>g、
[3]b>r≧g、
[4]b>g>r、
[5]g≧b>r、
[6]g>r≧b
の6つのパターンのうちの何れに属しているかが判定される。そして、上記13種類の色成分の階調レベルro、go、bo、yo、mo、co、wo、ry、rm、bm、bc、gc、gyを次の要領で算出する。
[1]r≧g≧bの場合
ro=(r−g)
yo=(g−b)
wo=b
go=bo=mo=co=0
〈1〉ro≧yoの場合 ry=yo
〈2〉ro<yoの場合 ry=ro
gy=gc=bc=bm=rm=0
[2]r≧b>gの場合
ro=(r−b)
mo=(b−g)
wo=g
go=bo=yo=co=0
〈3〉ro≧moの場合 rm=mo
〈4〉ro<yoの場合 rm=ro
ry=gy=gc=bc=bm=0
[3]b>r≧gの場合
bo=(b−r)
mo=(r−g)
wo=g
ro=go=yo=co=0
〈5〉bo≧moの場合 bm=mo
〈6〉bo<moの場合 bm=bo
ry=gy=gc=bc=rm=0
[4]b>g>rの場合
bo=(b−g)
co=(g−r)
wo=r
ro=go=yo=mo=0
〈7〉bo≧coの場合 bc=co
〈8〉bo<coの場合 bc=bo
ry=gy=gc=bm=rm=0
[5]g≧b>rの場合
go=(g−b)
co=(b−r)
wo=r
ro=bo=yo=mo=0
〈9〉go≧coの場合 gc=co
〈10〉go<coの場合 gc=co
ry=gy=bc=bm=rm=0
[6]g>r≧bの場合
go=(g−r)
yo=(r−b)
wo=b
ro=bo=mo=co=0
〈11〉go≧yoの場合 gy=yo
〈12〉go<yoの場合 gy=go
ry=gc=bc=bm=rm=0
この色成分抽出部32による演算の意義について図12及び図13を用いて説明する。
上記の演算では、抽出されたro、go、bo、yo、mo、co、wo成分に対してもう一度大小関係を比較してサブパターン〈1〉から〈12〉の分類を行っている。
図12は映像信号PS1の階調レベルr、g、bの大小関係が上記[1]のパターンに含まれるr>g>bの場合について示している。また、図13は上記[1]によって算出されたro、yoが上記〈1〉のサブパターンに含まれるro>yoの場合について示している。
図13からわかるように、ro>yoの場合、yoの階調レベルは、roとyoの共通レベルと考えることができる。したがって、yoの階調レベルは、赤と黄との中間色(オレンジ色)である赤−黄(ry)に相当すると考えることができる。同様の考え方により、色成分抽出部32においてry、rm、bm、bc、gc、gyを算出することができる。
マトリクス演算部33は、色成分抽出部32によって算出されたro、go、bo、yo、mo、co、wo、ry、rm、bm、bc、gc、gyを用いて数式(6)の演算を行うことにより、5色表示パネル101の基本色数に応じたマトリクス演算により、上記映像信号PS2の色成分を5色表示パネル101の基本色に対応した色成分d1〜d5に再分配し、d1からd5によって構成される映像信号PS3を生成する。
数式(6)において、A5x13は5行13列の行列であり、数式(7)のように表される。
数式(7)における行列A5x13の要素(マトリクス係数)aijは、5色表示パネル101の基本色に応じて定められ、かつ、調整信号に基づいて調整される。このマトリクス係数は、マトリクス生成部36によって設定される。このマトリクス係数は、実施形態1の場合と同じような考え方によって表5のように設定することができる。なお、色相、彩度、輝度の各調整パラメータは表6に示すように定義している。
もちろん、この例はあくまで一例であることは実施形態1で述べた通りである。他の例としては、中間色である赤−黄、赤−マゼンタ、青−マゼンタ、青−シアン、緑−シアン、緑−黄の色調を調整するためのマトリクス係数も考えられる。
例えば、赤の画素(D1)に比べて黄色の画素(D4)の輝度が極端に高いパネルの場合、中間色である赤−黄のうち赤に近い色が所望の色よりも黄色っぽくなってしまう。これを解消するためには、調整パラメータQry,Qry’を用い、d4からQry×ryを減算する、あるいはd2からQry’×ryを減算することにより、赤−黄領域の黄色っぽさを軽減することができる。逆に、調整パラメータPryを用い、d1からPry×ryを減算することにより、赤−黄領域の赤っぽさを軽減することができる。
このような調整を行うためには、数式(6)における行列A5x13のマトリクス係数を表7のように設定すればよい。なお、各中間色の色調を調整するための調整パラメータは表8に示すように定義している。また、これら調整パラメータにより調整される色を色度図上に示せば図14のようになる。
このように、色変換処理回路302においても、実施形態1と同様にマトリクス係数を調整することにより、感覚的に理解しやすいパラメータを用いて、変換後の信号によって表される色の調整が可能となる。また、色変換処理回路302では、実施形態1の色変換処理回路102や実施形態2の色変換処理回路202に比べて、色成分抽出部32がより多くの色成分を抽出しているため、より詳細な調整が可能になる。
以上のように、色変換処理回路302は、3原色信号を5色信号に変換する色信号変換装置である。なお、本実施形態では多色表示パネル101として5色の画素を有する表示パネルを想定しているため、色変換処理回路302も5色信号への変換を行っているが、多色表示パネル101としてはn色(n≧4)の画素を有する表示パネルを想定することができ、この場合、色変換処理回路302も画素の色の数にあわせたn色信号への変換を行うことになる。
そして、色変換処理回路302は、3原色信号を等色変換することにより、n色信号の各色成分とそれぞれ同等色の色成分を含んだm色成分(m≧n)からなるm色信号を生成する第1色信号生成手段としての色成分抽出部32を備えている。ここで、同等色の色成分とは、図4に示したRとD1、GとD2、BとD3、YとD4、CとD5のように、色度図上における互いの位置が比較的近く、感覚的に同系色の色として捉えることができる2つの色成分をいう。
これにより、色変換処理回路302では、実施形態1と同様に、感覚的に理解しやすいパラメータを用いて、変換後の信号によって表される色の調整が可能となる。
なお、色成分抽出部32は、3原色信号の各原色成分と、各原色成分にそれぞれ対応する各補色成分と、原色成分及び補色成分の間の中間色成分と、無彩色成分とを、上記m色成分としている。これにより、上記[1]から[6]のパターン、及び〈1〉から〈12〉のサブパターンにおいて示したように、3原色信号の各原色成分同士の減算などの簡単な演算によってm色信号を生成することができる。
また、色変換処理回路302は、実施形態1と同様、マトリクス演算部33におけるマトリクス係数を変更する係数変更手段としてのマトリクス生成部36をさらに備えている。
なお、色変換処理回路302の特徴点を次のように表現することもできる。すなわち、色変換処理回路302は、3次元の映像信号をn色(n≧4)の画素を有する多色表示パネル101に入力されるn次元の映像信号に変換する信号変換装置であって、3次元の映像信号の各階調レベルの大小関係に基づいて分類される6つのパターンの中から、実際に入力される3次元の映像信号のパターンを判定し、いずれのパターンに属するかによって異なる演算処理を行うことにより複数の色成分を抽出し、多色表示パネル101への入力信号として再配分するものである。また、色変換処理回路302は、3次元の映像信号の階調レベルから6つのパターンを判定し、そのパターンに応じて異なる演算処理をおこなうことにより、赤(ro)、緑(go)、青(bo)、黄色(yo)、シアン(co)、マゼンダ(mo)および白(wo)の成分を抽出するとともに、これらから12のサブパターンを判定し、そのパターンに応じて異なる演算処理をおこなうことにより、赤−黄(ry)、赤−マゼンタ(rm)、青−マゼンタ(bm)、青−シアン(bc)、緑−シアン(gc)、緑−黄(gy)の成分を抽出する第1の手段と、上記nに応じたマトリクス演算により、上記成分を再分配する第2の手段により多次元の映像信号を作成するものである。
これによれば、一般に普及している3次元の映像信号に基づいて演算処理を行うことにより、多色表示装置に対応した多次元の映像信号を生成することができる。
なお、上記数式(6)の行列におけるマトリクス係数を、色成分抽出部32によって判定した6つのパターン及び12のサブパターンの判定結果に対応して変化させるようになっていてもよい。
また、色成分抽出部32によって算出された上記ro、go、bo、yo、mo、co、wo、ry、rm、bm、bc、gc、gyを、一旦非線形処理を施した後、マトリクス演算部33によりマトリクス演算するようになっていてもよい。
次に、上記マトリクス係数の変形例について説明する。
〈混色による補助発光〉
一般に、1ピクセルを4色以上の画素に分割する場合、3色に分割する場合に比べて開口率が減少してしまうため、各画素の輝度が相対的に減少してしまうという問題がある。そのため4色以上の画素において赤、緑、青色に相当する画素に関しては、輝度の減少は一般には避けられない。しかしながら、イエロー、シアン、マゼンダに相当する画素に関しては、次の方法により輝度の減少を低減できる。
例えば、イエローを表示する場合に、Y画素により表示すべき輝度を補助するために、R,G画素による補助発光を行うことによりイエローの輝度を表現するようにすればよい。なぜなら、イエローは赤と緑との加法混色でも表現できるからである。同様に、シアンは緑と青との加法混色で表現でき、マゼンダは赤と青との加法混色で表現できる。
このような調整を行うためには、数式(6)における行列A5x13のマトリクス係数を表9のように設定すればよい。表9のマトリクス係数は、表7のマトリクス係数と比較して、a14,a24にVyが加算され、a26,a36にVcが加算されている点が異なっている。ここで、Vyは、イエローを表示する場合にY画素だけではなくR,G画素も用いるための調整パラメータであり、Vcは、シアンを表示する場合にC画素だけではなくG,B画素も用いるための調整パラメータである。なお、本実施形態における5色表示パネル101の基本色にはマゼンタが含まれていないので、マゼンタについてはもともとR,B画素を用いて表示するようになっている(表7参照)。
なお、上記のような加法混色による補助発光を行う方法は、特にイエローを表現する場合に有効である。なぜなら、通常の画像では、特にイエローに関して濃くかつ輝度の高い色が必要とされるからである。このことは、ポインターの論文(M.R.pointer,The Gamut of Real Surface Colors, COLOR research and application Vol.5 Number 3, Fall(1980) p.145)より明らかである。この論文は、世の中に存在するすべての色と輝度を色空間上にプロット点で表したものである。この論文のプロット点によると、シアン及びマゼンダはあまり輝度を必要としないのに対し、黄色は高い輝度を必要とすることを読み取ることができる。
また、イエローを表示する場合に、Y画素だけではなくR,G画素も用いることによりイエローの輝度を表現する場合、赤−黄領域の黄色っぽさを低減するためには、d4からのQry×ryの減算よりも、d2からのQry’×ryの減算の割合を大きくする、すなわち、Qry<Qry’とすることが望ましい。これにより、高輝度のイエローの色再現範囲の低下を抑制することができる。
〈マトリクス係数を関数化について〉
以上の調整では、数式(6)における行列A5x13のマトリクス係数は調整信号により変更可能な定数であったが、上記マトリクス係数を関数としてもよい。上記マトリクス係数を関数とする場合の例について以下に説明する。
まず、階調レベルが本来取り得る範囲の最大値(1)をできるだけ超えないようにするためのマトリクス係数の関数化について説明する。
例えば、表7のマトリクス係数を用いた場合では、d1を算出するための演算に含まれるVr×roの項において、調整パラメータVrが1よりも大きい値に設定されたときには、図15に示すように、Vr×roの演算結果は、d1が本来取り得る範囲の最大値(1)を超えることになる。このとき、最大値(1)を超えたd1の値はクリッピング処理により最大値(1)に設定されるので、この範囲における階調表現ができなくなってしまう。
そこで、調整パラメータVrの代わりに、調整関数Fr(ro)(Fr(ro)は、roの値に対して単調増加、かつ、Fr(1)=1、図15参照)を用いることにより、d1の値が最大値(1)をできるだけ超えないようにすることができる。
このような調整を行うためには、数式(6)における行列A5x13のマトリクス係数を表10のように設定すればよい。表10のマトリクス係数は、表7のマトリクス係数と比較して、調整パラメータVr,Vg,Vb,Vy,Vm,Vcの代わりに、調整関数Fr(ro),Fg(go),Fb(bo),Fy(yo),Fm(mo),Fc(co)が用いられている点が異なっている。これら調整関数Fr(ro),Fg(go),Fb(bo),Fy(yo),Fm(mo),Fc(co)は、それぞれro,go,bo,yo,mo,coの値に対して単調増加、かつ、Fr(1)=1,Fg(1)=1,Fb(1)=1,Fy(1)=1,Fm(1)=1,Fc(1)=1となる関数である。
これら調整関数Fr(ro),Fg(go),Fb(bo),Fy(yo),Fm(mo),Fc(co)は、予め定められた関数であってもよく、調整信号によって変更される関数であってもよい。
次に、上述した、混色による補助発光(表10参照)の変形例について説明する。
例えば、Y画素単独で点灯したときに表示される色の色度点と比較して、R,Gの加法混色で表示される色の色度点は、彩度の低い側によってしまうので、混色による輝度の調整を行った場合には、画素の色度点により本来表現できる色再現範囲よりも実際に表現される色再現範囲の方が狭くなってしまうことがある。これは、図16に示すように、Y画素の色度と比較して、R,Gの加法混色で作られるイエローの色度が白側にあるためである。
これに対して、数式(6)における行列A5x13のマトリクス係数を次のように設定することにより、上記のような色再現範囲の低下を抑制することができる。
例えば、Y画素のみで表現できるような輝度の低い黄色に関してはY画素のみで表現することとし、それ以上の輝度の高い黄色が必要になった場合のみR,Gの加法混色による黄色を加算することにより輝度をかせぐようにすればよい。
これにより、低輝度付近では色再現範囲は本来表現できる色再現範囲を維持することができるのと同時に、色再現範囲は若干狭くなるが高輝度の黄色も表現できるようになる。これはシアン、マゼンダの色を表現する場合にも同じく適用できる。
このような調整を行うためには、数式(6)における行列A5x13のマトリクス係数を表11のように設定すればよい。表11のマトリクス係数は、表10のマトリクス係数と比較して、a14,a24に調整関数Fy’(yo)が加算され、a26,a36に調整関数Fc’(co)が加算されている点が異なっている。
ここで、調整関数Fy(yo)と調整関数Fy’(yo)とは、例えば図17及び図18のように設定される。すなわち、イエローを表示する場合、yoの値が閾値Yshに達するまではY画素のみでイエローを表現し、yoの値が閾値Yshに達するとR,Gの混色によるイエローの嵩上げを行うようにすればよい。閾値Yshとしては、Y画素の輝度を最大にしたときに表現できるyoの階調値とすればよい。なお、調整関数Fc(co)及びFc’(co)も同じように設定すればよい。
〔変形例〕
〈減法混色について〉
上述した各実施形態では、加法混色信号を想定し、3原色信号の原色成分が赤、緑、青色成分であり、補色成分がイエロー、マゼンタ、シアン成分であり、無彩色成分が白色成分であることを前提として説明した。
本発明は、加法混色信号に限らず、減法混色信号の場合であっても成立する。この場合、3原色信号の原色成分がイエロー、マゼンタ、シアン成分であり、補色成分が赤、緑、青色成分であり、無彩色成分が白色成分となる。
減法混色信号の場合、実施形態1又は2の色成分抽出部12は、次のような処理を行うことになる。すなわち、映像信号PS1がYMC信号であり、それらの階調レベルがy、m、c(0≦y,m,c≦1)としたとき、色成分抽出部12は、赤、緑、青、イエロー、マゼンダ、シアン、白の各色成分の階調レベルro、go、bo、yo、mo、co、woを次の要領で算出する。
[1]y≧m≧cの場合
ro=(m−c)
yo=(y−m)
go=bo=mo=co=0
wo=1−y
[2]y≧c>mの場合
go=(c−m)
yo=(y−c)
ro=bo=mo=co=0
wo=1−y
[3]c>y≧mの場合
go=(y−m)
co=(c−y)
ro=bo=yo=mo=0
wo=1−c
[4]c>m>yの場合
bo=(m−y)
co=(c−m)
ro=go=yo=mo=0
wo=1−c
[5]m≧c>yの場合
bo=(c−y)
mo=(m−c)
ro=go=yo=co=0
wo=1−m
[6]m>y≧cの場合
ro=(y−c)
mo=(m−y)
go=bo=yo=mo=0
wo=1−m
なお、実施形態1又は2におけるマトリクス演算部13又は23は、色成分抽出部12によって算出されたro、go、bo、yo、mo、co、woを用いて、実施形態1又は2と同様に上記数式(1)の演算を行うことにより、d1からd5又はd1からd4によって構成される映像信号PS3を生成する。数式(1)におけるマトリクス係数は、実施形態1又は2に準じて設定することができる。
また、減法混色信号の場合、実施形態3の色成分抽出部32は、次のような処理を行うことになる。すなわち、映像信号PS1がYMC信号であり、それらの階調レベルがy、m、c(0≦y,m,c≦1)としたとき、色成分抽出部32は、赤、緑、青、イエロー、マゼンダ、シアン、白、赤−黄、赤−マゼンタ、青−マゼンタ、青−シアン、緑−シアン、緑−黄の各色成分の階調レベルro、go、bo、yo、mo、co、wo、ry、rm、bm、bc、gc、gyを次の要領で算出する。
[1]y≧m≧cの場合
ro=(m−c)
yo=(y−m)
go=bo=mo=co=0
wo=1−y
〈1〉ro≧yoの場合 ry=yo
〈2〉ro<yoの場合 ry=ro
gy=gc=bc=bm=rm=0
[2]y≧c>mの場合
go=(c−m)
yo=(y−c)
ro=bo=mo=co=0
wo=1−y
〈3〉go≧yoの場合 gy=yo
〈4〉go<yoの場合 gy=go
ry=gc=bc=bm=rm=0
[3]c>y≧mの場合
go=(y−m)
co=(c−y)
ro=bo=yo=mo=0
wo=1−c
〈5〉go≧coの場合 gc=co
〈6〉go<coの場合 gc=co
ry=gy=bc=bm=rm=0
[4]c>m>yの場合
bo=(m−y)
co=(c−m)
ro=go=yo=mo=0
wo=1−c
〈7〉bo≧coの場合 bc=co
〈8〉bo<coの場合 bc=bo
ry=gy=gc=bm=rm=0
[5]m≧c>yの場合
bo=(c−y)
mo=(m−c)
ro=go=yo=co=0
wo=1−m
〈9〉bo≧moの場合 bm=mo
〈10〉bo<moの場合 bm=bo
ry=gy=gc=bc=rm=0
[6]m>y≧cの場合
ro=(y−c)
mo=(m−y)
go=bo=yo=mo=0
wo=1−m
〈11〉ro≧moの場合 rm=mo
〈12〉ro<yoの場合 rm=ro
ry=gy=gc=bc=bm=0
なお、実施形態3におけるマトリクス演算部33は、色成分抽出部32によって算出されたro、go、bo、yo、mo、co、wo、ry、rm、bm、bc、gc、gyを用いて、実施形態3と同様に上記数式(6)の演算を行うことにより、d1からd5によって構成される映像信号PS3を生成する。数式(6)におけるマトリクス係数は、実施形態1に準じて設定することができる。
〈色成分抽出部における演算について〉
上記実施形態で用いられている色成分抽出部12・32は、rgbやymcの大小関係から6パターンに分離し、その領域毎に異なる差分を演算することにより行っている。しかしながら、必ずしもこの演算だけが色成分抽出の手段ではない。その他の色成分抽出方法について具体例を示す。
たとえば、下記に示すような計算を行うことによっても色成分抽出を行うことができる。入力r、g、bに対して色成分ro,go,bo,yo,mo,co,woは、
rg=r−g
rb=r−b
gr=g−r
gb=g−b
br=b−r
bg=b−g
ここで、rg、rb、gr、gb、br、bgがそれぞれ負の値の場合は0にする。
ro=min(rg,rb)
go=min(gr,gb)
bo=min(br,bg)
yo=min(rb,gb)
mo=min(rg,bg)
co=min(gr,br)
wo=min(r,g,b)
(但し、関数min()は、括弧内の値の最も小さい値が返される関数である。)
として算出できる。ここで算出される各成分は、上記実施形態で使用するものと同一の値として使用することができる。
例えばr>g>bの場合、rg、rb、gbは正、gr、br、bgは負の値をとる。負の値の場合は0にするので、結果的にgr、br、bgは、0になる。次に各成分の計算を行うroは、rgとrbの小さいほうが選ばれる、この場合r>g>bの関係なのでrgが選ばれることになる。つまり、ro=rg=(r−g)となる。同様にyo=(g−b)、wo=bとなり、その他の成分は関数min()の中に必ず0が存在するので0となる。
このように、rgbの大小関係から6領域を分離しなくても色成分抽出できることがわかる。
もちろん、この色成分から、実施形態3のようにさらサブパターンに分類し各色成分の中間色を生成することも可能である。
また、減法混色においても以下に示すような式を用いることによって色成分抽出が可能である。たとえば、
ym=y−m
yc=y−c
my=m−y
mc=m−c
cy=c−y
cm=c−m
ここで、ym、yc、my、mc、cy、cmがそれぞれ負の値の場合は0にする。
ro=min(yc,mc)
go=min(ym,cm)
bo=min(my,cy)
yo=min(ym,yc)
mo=min(my,mc)
co=min(cy,cm)
wo=min(1−y,1−m,1−c)
(但し、関数min()は、括弧内の値の最も小さい値が返される関数である。)
の様な演算でも色成分を抽出することができる。
〈表示装置以外の適用例について〉
実施形態1から3では、本発明の色信号変換装置としての色変換処理回路102・202・302をカラー表示装置に適用する場合について説明したが、本発明の色信号変換装置は、これに限らず、3原色信号をn色信号(n≧4)に変換する構成を必要とする装置等に広く適用することができる。たとえば、本発明の色信号変換装置は、プリンタやコピー機などの画像形成装置にも適用することができる。
〈色信号変換プログラムについて〉
実施形態1から3の色変換処理回路102・202・302が備えている各機能ブロック、つまり、逆γ補正処理部11、色成分抽出部12、マトリクス演算部13・23、クリッピング処理部14、γ補正処理部15、マトリクス生成部16・26は、ハードウェアによって実現できるほか、これらの一部又は全部をソフトウェアによって実現することもできる。
上記各機能ブロックをソフトウェアによって実現する場合、コンピュータを用いて色変換処理回路102・202・302を構成すればよい。このコンピュータは、各種プログラムを実行するためのCPU(central processing unit)や、それらのプログラムを実行するためのワークエリアとして機能するRAM(random access memory)などを備えるものである。そして、上記各機能ブロックを実現するための色信号変換プログラムを上記コンピュータにおいて実行し、上記コンピュータを上記各機能ブロックとして動作させる。
色信号変換プログラムは、そのプログラムを記録した記録媒体から上記コンピュータに供給されてもよく、通信ネットワークを介してコンピュータに供給されてもよい。
色信号変換プログラムを記録する記録媒体は、上記コンピュータと分離可能に構成してもよく、上記コンピュータに組み込むようになっていてもよい。この記録媒体は、記録したプログラムコードをコンピュータが直接読み取ることができるようにコンピュータに装着されるものであっても、外部記憶装置としてコンピュータに接続されたプログラム読み取り装置を介して読み取ることができるように装着されるものであってもよい。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)/EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
上記色信号変換プログラムを通信ネットワークを介して供給する場合、上記色信号変換プログラムは、そのプログラムコードが電子的な伝送で具現化された搬送波あるいはデータ信号列の形態をとる。
なお、本発明は上述した各実施形態、変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態、変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
上記特許文献1の技術では、RGBを一旦色度図上に展開してパラメータ係数を作成する必要があるため、比較的正確な色再現が望める。しかしながら、この技術では、係数が感覚的に理解しにくく、パラメータの調整が困難である。したがって、この技術は実用的なものとは言いがたい。
本発明は、感覚的に理解しやすいパラメータを用いて、変換後の信号によって表される色の調整が可能な色信号変換装置等を提供することができる。
本発明に係る色信号変換装置は、3原色信号をn色信号(n≧4)に変換する色信号変換装置であって、上記課題を解決するために、前記3原色信号を等色変換することにより、前記n色信号の各色成分とそれぞれ同等色の色成分を含んだm色成分(m≧n)からなるm色信号を生成する第1色信号生成手段と、前記m色信号の各色成分の1次結合によって前記n色信号の各色成分をそれぞれ生成する第2色信号生成手段とを備えてもよい。
また、本発明に係る色信号変換方法は、3原色信号をn色信号(n≧4)に変換する色信号変換方法であって、上記課題を解決するために、前記3原色信号を等色変換することにより、前記n色信号の各色成分とそれぞれ同等色の色成分を含んだm色成分(m≧n)からなるm色信号を生成する第1色信号生成処理と、前記m色信号の各色成分の1次結合によって前記n色信号の各色成分をそれぞれ生成する第2色信号生成処理とを含んでもよい。
上記の構成及び方法では、元信号である3原色信号を等色変換することにより、所望とするn色信号の各色成分とそれぞれ同等色の色成分を含んだm色成分(m≧n)からなるm色信号を生成する。ここで、等色変換とは、ある色を表現する色成分の組合せを、表現される色を変化させることなく他の色成分の組合せに変換することをいう。また、同等色の色成分とは、色度図上における互いの位置が比較的近く、感覚的に同系色の色として捉えることができる2つの色成分をいう。なお、同等色の色成分には、同一の色成分、つまり、色度図上における位置が一致する2つの色成分も含むものとする。
また、上記の構成及び方法では、上記のようにして生成されたm色信号の各色成分の1次結合によって、変換後の信号であるn色信号の各色成分をそれぞれ生成する。ここで、各色成分の1次結合とは、各色成分にそれぞれ係数を乗じて加算することをいう。
m色信号の各色成分の1次結合によりn色信号の各色成分を生成するようにすると、n色信号によって表される色を調整するためのパラメータとして、感覚的に理解しやすいパラメータを用い、これらパラメータの簡単な演算によって上記1次結合の係数を決定することができる(表1〜8参照)。上記パラメータとしては、例えば、m色信号又はn色信号に含まれる色成分それぞれの色相、彩度、輝度を示す値(表2,4,6参照)や、これら色成分の中間色成分についてどちらの傾向を強調するのかを示す値(表8参照)を用いることができる。
このように、上記の構成及び方法では、変換後のn色信号によって表される色の調整を、感覚的に理解しやすいパラメータを用いて行うことができるようになる。
本発明に係る色信号変換装置は、上記の色信号変換装置において、前記第2色信号生成手段における1次結合の係数を変更する係数変更手段をさらに備えることが望ましい。
上記の構成では、n色信号の各色成分を生成するための1次結合における係数を係数変更手段によって変更することができる。上述した調整は、本色信号変換装置の製造段階において調整用の装置を用いて行うようになっていてもよいが、上記の構成のように、本色信号変換装置に係数変更手段を組み込んでおくことによって、調整が随時可能となる。このように、上記の構成では、利用者などによって随時の調整が可能となる。
本発明に係る色信号変換装置は、上記の色信号変換装置において、前記第1色信号生成手段は、前記3原色信号の各原色成分と、前記各原色成分にそれぞれ対応する各補色成分と、無彩色成分とを、前記m色成分とすることが望ましい。
上記の構成では、3原色信号の各原色成分同士の減算などの簡単な演算によってm色信号を生成することができる。
本発明に係る色信号変換装置は、上記の色信号変換装置において、前記第1色信号生成手段は、前記3原色信号の各原色成分と、前記各原色成分にそれぞれ対応する補色成分と、前記原色成分及び補色成分の間の中間色成分と、無彩色成分とを、前記m色成分としてもよい。
上記の構成では、中間色成分をも用いて上記調整を行うことができるため、より詳細な調整が可能となる。
なお、前記3原色信号が加法混色信号である場合、前記原色成分が赤、緑、青色成分であり、前記補色成分がイエロー、マゼンタ、シアン成分であり、前記無彩色成分が白色成分であってもよい。
また、前記3原色信号が減法混色信号である場合、前記原色成分がイエロー、マゼンタ、シアン成分であり、前記補色成分が赤、緑、青色成分であり、前記無彩色成分が白色成分であってもよい。
本発明に係る色信号変換装置は、上記の色信号変換装置において、ガンマ補正された3原色信号に対して逆ガンマ補正を施して前記第1色信号生成手段に供給する逆ガンマ補正手段をさらに備えていてもよい。
上記の構成では、ガンマ補正された3原色信号を、上述した処理を行う前に逆ガンマ補正しておくことができる。ガンマ補正された3原色信号では、階調レベルと輝度との関係が非線形となっている。上記のように予め逆ガンマ補正しておくことにより、階調レベルと輝度との関係を線形にすることができるので、より適切な信号変換が可能となる。
本発明に係る色信号変換装置は、上記の色信号変換装置において、前記n色信号に対してガンマ補正を施すガンマ補正手段をさらに備えていてもよい。
上記の構成では、本色信号変換装置の後段に設ける表示パネルのガンマ特性に対応するように、変換後の信号であるn色信号をガンマ補正することができる。
本発明に係る表示ユニットは、上記何れかの色信号変換装置と、前記n色信号の各色成分に対応するn色の画素を有する表示パネルとを備えることを特徴としている。
上記の構成では、上述した色信号変換装置の作用により、感覚的に理解しやすいパラメータを用いて表示色の調整が可能な表示ユニットを実現することができる。
本発明に係る表示ユニットは、上記の表示ユニットにおいて、前記n色信号の色成分には、第1及び第2色成分と、これら第1及び第2色成分の混色により得られる第3色成分とが含まれており、前記m色信号の色成分には、前記第3色成分と同等色の第3同等色成分が含まれており、前記m色信号における第3同等色成分を前記表示パネルにより表現する際、前記第3色成分に対応する画素の発光を補助するために、前記第1及び第2色成分にそれぞれ対応する画素による補助発光を行うようになっていてもよい。
上記の構成では、第1及び第2色成分にそれぞれ対応する画素を補助発光させることにより、これらが混色され第3色成分が得られるので、第3色成分に対応する画素の発光を補助することができる。これにより、第3色成分に対応する画素の発光輝度が不十分な場合でも、第3色成分を十分な輝度で表示することができる。
本発明に係る表示ユニットは、上記の表示ユニットにおいて、前記m色信号における第3同等色成分の階調値が低い場合には前記補助発光を行わず、前記階調値が高い場合には前記補助発光を行うようになっていてもよい。
一般に、第1及び第2色成分にそれぞれ対応する画素を補助発光させることにより得られる第3色成分は、第3色成分に対応する画素を発光させることにより得られる第3色成分と比較して彩度が低い。そこで、第3色成分に対応する画素の発光輝度が十分な場合、すなわち、第3色成分の階調値が低い場合には補助発光を行わないことにより、彩度の低下を回避することができる。
なお、前記第1及び第2色成分はそれぞれ赤及び緑であり、前記第3色成分はイエローである場合が特に有効である。なぜなら、通常の画像では、特にイエローに関して濃くかつ輝度の高い色が必要とされるからである。
また、本発明は、上記何れかの色信号変換装置をコンピュータによって実現するための色信号変換プログラムであって、コンピュータを前記各手段として動作させることを特徴とする色信号変換プログラムとしても実施でき、この色信号変換プログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体としても実施できる。
本発明に係る色信号変換装置は、3原色信号を等色変換することにより、n色信号の各色成分とそれぞれ同等色の色成分を含んだm色成分(m≧n)からなるm色信号を生成する第1色信号生成手段と、m色信号の各色成分の1次結合によってn色信号の各色成分をそれぞれ生成する第2色信号生成手段とを備える構成であってもよい。
また、本発明に係る色信号変換方法は、3原色信号を等色変換することにより、n色信号の各色成分とそれぞれ同等色の色成分を含んだm色成分(m≧n)からなるm色信号を生成する第1色信号生成処理と、m色信号の各色成分の1次結合によってn色信号の各色成分をそれぞれ生成する第2色信号生成処理とを含む方法であってもよい。
上記の構成及び方法では、元信号である3原色信号を等色変換することにより、所望とするn色信号の各色成分とそれぞれ同等色の色成分を含んだm色成分(m≧n)からなるm色信号を生成する。また、上記の構成及び方法では、上記のようにして生成されたm色信号の各色成分の1次結合によって、変換後の信号であるn色信号の各色成分をそれぞれ生成する。
m色信号の各色成分の1次結合によりn色信号の各色成分を生成するようにすると、n色信号によって表される色を調整するためのパラメータとして、感覚的に理解しやすいパラメータを用い、これらパラメータの簡単な演算によって上記1次結合の係数を決定することができる(表1〜8参照)。上記パラメータとしては、例えば、m色信号又はn色信号に含まれる色成分それぞれの色相、彩度、輝度を示す値や(表2,4,6,8参照)、これら色成分の中間色についてどちらの傾向を強調するのかを示す値を用いることができる。
このように、上記の構成及び方法では、変換後のn色信号によって表される色の調整を、感覚的に理解しやすいパラメータを用いて行うことができるようになるという効果を奏する。