JP5268611B2 - 炭酸カルシウム−シリカ複合体の製造方法 - Google Patents

炭酸カルシウム−シリカ複合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は炭酸カルシウムの優れた特性と合成シリカの優れた特性とを併せ持つ炭酸カルシウム−シリカ複合材料とその好適な製造方法に関する。詳しくは、高い白色度等の炭酸カルシウムの優れた機能と、高比表面積、高吸油性等のシリカの優れた機能とを合わせ持つことを特徴とする炭酸カルシウム−シリカ複合体の製造方法に関する。
製紙に際しては、紙の改質を目的として、パルプ繊維以外の無機系材料からなる微粒子を添加することが多い。これらに用いられる無機系材料は無機填料と呼ばれており、白色度等の光学的性質を改善する、填料自身の高吸油性による印刷時のインクの裏抜けを防止する、紙の平滑性を向上させるなどの目的に従い、各々の種類の無機填料の持つ特性によって各用途に用いられている。
近年、環境問題への対応や輸送時のコスト削減の必要性、紙ユーザーからの品質向上への要求などから、低密度(嵩高)で印刷適性が高い紙への需要が高まっており、このような性能を向上させる填料の開発が望まれている。低密度な紙を抄紙する方法として、多くの細孔を持つ嵩高な填料をパルプ繊維の間に入り込ませ、填料由来の細孔を紙に持たせる方法がある。
また、紙の印刷適性を向上させる方法としては、白色度の高い填料を用いて紙の白色度と不透明度を向上させる方法や、吸油性が高い填料を用いて、印刷時におけるインクを吸収させてインクの裏抜けやにじみなどを防止する効果を向上させる方法がある。填料の吸油性は、填料の持つ細孔容積の分布とその細孔容積に依存することが特許文献1に開示されている。
抄紙に用いられている填料には、タルク、クレー、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカなどがある。近年、pH4.5付近で紙を抄く酸性抄紙から、pH7.0〜8.5で紙を抄く中性抄紙に移行されている。炭酸カルシウムは、酸と反応、分解してしまうため酸性抄紙条件では用いられないが、中性抄紙においては他の填料と比較して安価であり、また高い白色度を持つという特徴のため汎用されている。
炭酸カルシウムには、鉱山で採掘した結晶質石灰石を粉砕・分級して得られる重質炭酸カルシウムと、水酸化カルシウムを二酸化炭素もしくは炭酸ナトリウムと炭酸化反応させることで製造される軽質炭酸カルシウムとがある。この軽質炭酸カルシウムは後述するシリカに比べ、填料として加えることによる紙の強度低下が少ないため、高配合することが容易であり、これによる嵩高効果を得ることができる。このように安価で経済性に優れることや白色度の高さ、中性域での安定性の高さなどの特徴から、中性抄紙には軽質炭酸カルシウムが多く利用されている。
しかし、炭酸カルシウムを用いて抄紙した紙の印刷適性は、紙の白色度、不透明度が向上していることによる裏写り防止効果は大きいが、インクの吸収性が不十分であるためにインクの裏抜けに対する改善が不十分であるという問題がある。
一方、中性抄紙における紙の填料としてはシリカも使用されている。填料として用いるシリカはアルカリ性であるケイ酸アルカリと、硫酸を代表とする鉱酸との中和反応により製造する方法が一般的である。即ち、このようにして製造されたシリカは一次粒子が凝集した、非晶質構造の二次凝集粒子であるため、決まった形状を持たず、多孔性物質である。この多孔性という特質により高比表面積であり、高い液体吸着能が得られ、また吸着力も高い。そのためシリカを填料として用いて抄紙した場合には、他の填料と比較して嵩高で、印刷時のインクの裏抜けの防止効果が高い紙を抄紙することができる。しかしながらシリカは、炭酸カルシウムに比べるとその白色度は低い。
これら炭酸カルシウムとシリカ両方の特徴を活かすことにより、高い白色度と吸油性を持つ材料を得ることを目的として研究が行われてきた。例えば、炭酸カルシウム存在下でケイ酸アルカリを鉱酸によって中和し、炭酸カルシウム粒子の表面にシリカを担持もしくは被覆させた材料が提案されている(例えば特許文献2〜4参照)。しかし、熟成に昇温工程が必要であることや、反応時〜反応終了時のpHをアルカリ性とするために、析出したシリカの一次粒子が大きくなりすぎ、吸油性が高くならず、また、細孔容積も高くならないため、紙の嵩高効果も出にくいという問題があった。さらに上記製造方法では、鉱酸として一般的である硫酸を用いた場合、炭酸カルシウムとの反応が生じ、シリカ析出と共に不純物として硫酸カルシウムが生成析出することがスケーリングの原因となることや、塩酸を用いた場合は、炭酸カルシウムが反応により塩化カルシウムとなって溶出してしまうなどの問題もある。
さらに水酸化カルシウムを炭酸ガスで炭酸化して炭酸カルシウムを製造する工程中に、シリカ粒子を添加して炭酸カルシウム−シリカ複合体を製造する技術も提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながらこの方法では、炭酸カルシウムに担持出来るシリカが少なく、炭酸カルシウムとシリカとのモル比が55:45〜99:1となる。炭酸カルシウムに対するシリカの比率が低いと複合体の細孔容積が少なくなるため、紙に抄紙したときのインクの吸収性、嵩高効果が低くなるという問題がある。
また、炭酸カルシウムとシリカによる材料を得る他の技術として、カルシウム質原料とケイ酸ソーダとの反応によりケイ酸カルシウムを得て、該ケイ酸カルシウムと炭酸ガスを反応させることにより、炭酸カルシウム-シリカ複合体を得る技術がある。
しかし該方法において、カルシウム質原料として塩化カルシウムを用いた場合には、得られる炭酸カルシウム-シリカ複合体は、細孔径分布において細孔半径1000〜3000オングストロームと小さい範囲にピークを持つため、全体の細孔容積が低いものにしかならない。
また、カルシウム質原料として硫酸カルシウムを用いた場合には、全体の細孔容積は高くなるが、細孔が大きすぎて細孔内に油分を保持できず、高い吸油性を得ることが困難である。
また、硫酸カルシウムとケイ酸ソーダとの反応で得られたケイ酸カルシウムを、水熱反応により結晶質を変化させ、より細孔容積を高くする技術なども研究されているが、水熱反応にかかる熱量や耐圧設備などコストが高くなるという問題があった。
上記課題を解決する方法として、本発明者らは、塩化カルシウムと硫酸カルシウムとをモル比で30:70〜55:45の範囲で含むスラリーに対してケイ酸ソーダ水溶液を混合してケイ酸カルシウムを生じさせ、ついで該ケイ酸カルシウムと二酸化炭素とを反応させることにより、細孔容積分布のピークが概ね細孔半径2700〜10000オングストロームの範囲にある炭酸カルシウム−シリカ複合体が得られ、このようにして得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体が高い吸油量を有することを見出し、既に提案している(特願2007-203857)。
特許第3084125号公報 特開2006−307229号公報 特開2007−70164号公報 特開2005−281925号公報 特開2003−20223号公報
しかしながら上述の製造方法を用いても、なお吸油量を200mL/100gを超える炭酸カルシウム−シリカ複合体とすることは困難であり、通常は、170mL/100gを下回るものであった。従って、本発明の目的は、紙の嵩高効果が高い炭酸カルシウム-シリカ複合体であって、よりいっそう印刷適性を向上させるために、さらに吸油性の高い炭酸カルシウム-シリカ複合体を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために前記発明の改良について鋭意研究を続けてきた。そして当該方法において、ケイ酸アルカリ金属塩を混合する前の塩化カルシウムと硫酸カルシウムとを含むスラリーのCa濃度を低くすることにより、得られる炭酸カルシウム-シリカ複合体の吸油量が高くなることを見出し、さらに検討を進め、該濃度条件における塩化カルシウムと硫酸カルシウムとの混合割合、ケイ酸アルカリ金属塩を混合する際のモル比(SiO/NaO)などの条件を検討し本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、炭酸カルシウム−シリカ複合体の製造方法であって、
(1)塩化カルシウムと硫酸カルシウムとがモル比で10:90〜75:25の範囲にあり、かつCaO換算でのCa濃度が1.0〜6.0g/100mlの範囲にある水性スラリーに対して、AO・nSiO(nは2.0〜3.5であり、Aはアルカリ金属を示す)で示されるケイ酸アルカリ金属塩水溶液を、CaO/AO(Aはアルカリ金属を示す)がモル比で0.8〜1.2の範囲となるように混合してケイ酸カルシウム含有スラリーとし、ついで(2)該スラリーに対して、スラリーのpHが少なくとも6.5以下になる量の二酸化炭素を接触させることを特徴とする、吸油量が170〜280ml/100gの炭酸カルシウム−シリカ複合体の製造方法である。
本発明は、特定の条件を組合わせることによって大きな細孔容積と小さな平均粒子径を有し、その結果、高い吸油性を有する炭酸カルシウム−シリカ複合体を製造することを可能にしたものである。この複合体は、高吸油性であることからインク吸収性に優れる。また、多くの細孔を持つことから嵩高であるため、填料として抄紙した場合、嵩高で印刷適性が高い紙を得ることができる。
本発明の製造方法は以下の2つの工程を含んでなる。即ち第一の工程は、塩化カルシウムと硫酸カルシウムとをモル比で10:90〜75:25の範囲で含むスラリーに対してケイ酸アルカリ金属塩を混合してケイ酸カルシウム(を含むスラリー)を生じさせる工程であり、第二の工程は、該ケイ酸カルシウムを含むスラリーに二酸化炭素を接触させて、炭酸カルシウム−シリカ複合体を生じさせる工程である。なお以下の記載においては、Ca、Naなどの濃度は、その実際の存在形態に係らず酸化物(CaO、NaOなど)としての換算値で示す場合がある。
当該方法においては、まず、塩化カルシウム及び硫酸カルシウムからなるカルシウム原料を水に分散させて水性スラリー(以下、「カルシウム質原料スラリー」ともいう)とする。該カルシウム質原料スラリーは塩化カルシウムと硫酸カルシウムのモル比を10:90〜75:25とする必要がある。塩化カルシウムと硫酸カルシウムの比率がこの範囲を外れた場合、細孔容積が充分なものとならず高い吸油性と嵩高性を発揮できない。さらに好適には20:80〜40:60の割合である。なお、該スラリーにおいては、通常は、塩化カルシウムは完全に溶解しており、硫酸カルシウムの粒子が分散した状態のスラリーとなっている。
また上記カルシウム質原料スラリーにおける分散媒は、少なくとも水を含む必要があるが、必要に応じてアルコール等の有機溶媒が混合された分散媒でもよい。溶解性、反応性、廃液処理等を考慮すると好ましくは分散媒は工水、蒸留水、水道水等の実質的に有機溶媒を含まない水である。
本発明の製造方法では、該カルシウム質原料中のCa濃度を、CaO換算でのCa濃度(以下、単に「Ca濃度」ともいう)を1.0〜6.0g/100mlとする必要がある。Ca濃度が6.0g/100mlを超えると、生成する該ケイ酸カルシウムの平均粒子径が大きくなり、その結果として、この後の二酸化炭素との反応後に得られる炭酸カルシウム−シリカ複合体(以下、単に「複合体」ともいう)の平均粒子径も大きくなる。そのためであると推測されるが、得られる複合体の吸油量が充分なものとならず、また加えて、紙用填料として好ましくない粒子径150μm以上の粗大粒子が出来やすくなるという問題も生じやすい。一方、1.0g/100ml未満の濃度では、製造量に対する該ケイ酸カルシウム含有スラリー容量が膨大になるため、工業的には現実的ではない。より好適には1.5〜4.5g/100ml、特に4.0g/100ml以下である。
該カルシウム質原料スラリーの調製方法は限定されないが、好適には塩化カルシウム水溶液に硫酸カルシウム分散させた後、水を加え容量を調整する方法により、簡便に目的濃度のスラリーに調製することができる。分散させる硫酸カルシウムは、平均粒子径が30〜500μm程度のもの、より好ましくは50〜200μmが好適である。用いる硫酸カルシウム粒子としては、無水、半水、二水のものが使用できるが、二水の硫酸カルシウムが特に好ましい。
当該方法においては、上記のようなカルシウム質原料スラリーに対してケイ酸アルカリ金属塩を混合する。この混合により反応液(混合液)中にケイ酸カルシウムが生じ、ケイ酸カルシウム含有スラリーが得られる。なお逆にケイ酸アルカリ金属塩に対してカルシウム質原料スラリーを混合すると、カルシウム原料を核とした凝集物が生じ、反応が不完全となるという問題を生じる。用いるケイ酸アルカリ金属塩は、AO・nSiO(nは2.0〜3.5でありより好適には2.5〜3.0、Aはアルカリ金属を示す)で示されるものである。なお以下では上記式で示される組成を有するケイ酸アルカリ金属塩を単にケイ酸アルカリ金属塩という。
上記ケイ酸アルカリ金属塩におけるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム等が挙げられるが、好ましくはナトリウム又はカリウムであり、特にナトリウムであることが好ましい。
またケイ酸アルカリ金属塩は通常は固体であるが、カルシウム質原料スラリーとの混合の行い易さ等を考慮すると、水溶液の状態として混合することが特に好ましい。また該ケイ酸アルカリ金属塩水溶液は、シリカ(SiO)濃度が、3.0〜10.0[g/100mL]であることが好ましい。3.0[g/100mL]未満では添加するケイ酸ソーダの薬液量が増加し現実的ではなく、15.0[g/100mL]を超えると反応で生じた該ケイ酸カルシウムスラリー濃度が高くなり、粒子径が大きくなるため、粗大粒子が増える傾向にある。
ケイ酸アルカリ金属水溶液をカルシウム質原料スラリーに混合する際には、カルシウム質原料スラリーを十分に攪拌しながら、これへケイ酸アルカリ金属塩(の水溶液)を連続で添加して、該ケイ酸カルシウム含有スラリーを得る方法が好ましい。
本発明の製造方法においては、該カルシウム質原料スラリーに対して、ケイ酸アルカリ金属塩を全量添加した後のCaO/AOが、モル比で0.8〜1.2の範囲となるようにケイ酸アルカリ金属を混合する。該モル比が1.2を越す場合は、続いて行う二酸化炭素との接触後に生じる炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量が充分なものとならない。また、モル比が0.8未満の場合にも炭酸カルシウム−シリカ複合体におけるシリカに対する炭酸カルシウムの割合が増加し、十分な吸油性が得られなくなる。また反応液のpHが9以上となるように、ケイ酸アルカリ金属塩の添加量、及び前記nの値を調整することが好ましい。
加えて、該ケイ酸アルカリ金属塩は50分から70分の時間で添加を行うことが好ましい。これは、該ケイ酸カルシウムの生成速度に影響するためで、50分未満もしくは70分を越える時間で該ケイ酸ソーダの添加反応を終了させると、炭酸化した後の細孔容積分布が、高い吸油量を示すために好適な範囲から外れる傾向がある。
本発明の製造方法においては、上記のようにして得たケイ酸カルシウム含有スラリーと二酸化炭素(炭酸ガス)とを接触させる。この接触により両者が反応(炭酸化反応)して、炭酸カルシウム−シリカ複合体が生じる。
該接触に際し、ケイ酸カルシウムと炭酸ガスとを接触・反応させる方法は特に制限されないが、好適には、上記のようにしてカルシウム質原料スラリーにケイ酸ソーダを混合して得たケイ酸カルシウム含有スラリーを、そのまま原料とし、該スラリーへ炭酸ガスを吹き込めばよい。
当該吹込みにより接触と炭酸化反応を行う場合には、常温下で十分に攪拌しながらの炭酸ガスを吹き込むことが好ましい。炭酸化反応は常温で十分に進むことから、温度操作の必要はない。むしろ、高温のスラリー中では炭酸ガスが溶解しにくくなり、炭酸化反応に非常に長い時間がかかるため効率的ではない。
二酸化炭素(炭酸ガス)との接触は、スラリーのpHが少なくとも6.5以下になるまで行う。このpHとなるまで二酸化炭素を接触させることにより、実質的にスラリー中のすべてのケイ酸カルシウムが炭酸カルシウム(及びシリカ)に変換される。スラリー中のpHは、pHメーターにより把握できる。
このとき、スラリーのpHを6.5以下となるまでにかける時間は100分以上とすることが好ましく、より好ましくは240分以上とする。この時間が100分未満である場合には、急激な炭酸化により細孔容積が低くなり、高い吸油性が得られない場合がある。一方で、必要以上に長時間かけても実質的な利点はなく、通常は400分以下、多くの場合330分以下で充分である。
このようにして接触させて得たスラリーには、炭酸カルシウムとシリカが相互に凝集した粒子(炭酸カルシウム−シリカ複合体)が懸濁した状態となって含まれている。
上記本発明の製造方法により得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体は、高い吸油量を示し、吸油量が170〜280[mL/100g]となる。さらにカルシウム質原料スラリー中の塩化カルシウムと硫酸カルシウムの比率を20:80〜40:60の範囲とし、またCa濃度を4.0g/100ml以下とすることにより250[mL/100g]以上とすることも可能である。吸油量が170[mL/100g]以上あることにより、填料として用いて抄紙した場合、インクの裏抜け、にじみに対する効果が十分となる。
なお本発明において吸油量は、上記の炭酸カルシウム−シリカ複合体含有スラリーをろ過、水洗し、ろ過物を110℃で乾燥した後、JIS K5101−13−1によって測定される値である。
上記のようにして得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体が高い吸油量を示す理由は以下のようであると推測される。即ち、上記本発明の製造方法によれば、カルシウム質原料スラリー中のCa濃度を比較的低濃度にすることにより平均粒子径が40μm以下となり、また塩化カルシウムと硫酸カルシウムの比率を適切に調整することによって、細孔容積が非常に大きなものとなる。この平均粒子径の小ささと細孔容積の大きさが、従来に無い高い吸油量を与えていると推定される。
本発明の製造方法で得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体は、濾過せずにスラリーのまま使用してもよい(例えば、抄紙工程等)が、固液分離を行った後に使用することが好ましい。これは、スラリーのままの状態では副生成物である塩類が溶解しており、この塩類が用途によっては様々なトラブルの要因となる可能性があるためである。例えばこの塩類が抄紙工程においては難溶性の金属塩などに変化し、スケールなどのトラブルの原因となるおそれがある。また、固液分離を行い得られたケークを水洗するなど、余分な塩を除く操作を行うことがより好ましい。当該固液分離及び水洗は、定法に従って行えばよく、例えば小規模であればろ紙やメンブランフィルター、大規模であればベルトフィルタやドラムフィルタなどによることができる。
また本発明の製造方法によると、二酸化炭素との接触を完了した状態での複合体の平均粒子径は通常10〜40μmとなる。高い吸油量を得るためには、塩化カルシウムと硫酸カルシウムの比率やカルシウム質原料スラリー中のCa濃度、二酸化炭素と接触させてpH6.5以下とするまでの時間等を調整して、20〜25μmとすることが好ましい。
また本発明の製造方法により製造される炭酸カルシウム−シリカ複合体は上記の通り平均粒子径が小さく、例えば中性紙抄紙に填料として用いる場合、パルプ繊維への歩留まりが最も良い範囲となっている。このため、篩い分けによる粗大粒子の除去を行わなくても、このまま用いることが出来る。
また、本発明の炭酸カルシウム−シリカ複合体は、中性紙用填料に限らず、高い吸油量を要求される他の用途、例えばゴム用充填材、感熱紙用のフィラーなどにも使用することができる。
なお上記本発明の製造方法により得られる複合体は、炭酸カルシウムとシリカによって構成される複合材料であり、単に炭酸カルシウムとシリカを混ぜ合わせたものではなく、炭酸カルシウムとシリカが相互に凝集した状態で粒子を形成している複合体である。
さらに本発明者らは、上記製造方法で得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体は、下記に示す特徴を有することを見出している。
即ち、(1)炭酸カルシウムとシリカとがモル比で20:80〜40:60、より好適には20:80〜30:70であり、
(2)該複合体が有する細孔の細孔半径rを下記式
r = 10(16+a)/8オングストローム
で表したとき、上記aが−3〜23の範囲の細孔半径を有する細孔の細孔容積を、水銀圧入法によって測定した場合に、該範囲における細孔容積の合計が2.0cc/g以上であって、かつaの差が1となるように区分した各細孔半径範囲ごとの細孔容積Vを比較すると、該Vが最大である細孔半径範囲はaが11〜20の範囲内、好ましくは13〜19の範囲内、特に好ましくは15〜18の範囲内にあり、さらに
(3)複合体の平均粒子径が10〜40μm、好ましくは15〜25μmの範囲内にある複合体である。(以下、「本発明の複合体」ともいう。)
上記条件を満たす複合体が高い吸油量を示す理由は明らかではないが、以下のように推測している。
まず第一に、本発明の複合体を構成するシリカは非晶質であり、細孔を多く持つため、高い吸油性を発揮する。しかしながら複合体を構成するシリカの割合が多ければ吸油量が高くなるというわけではなく、炭酸カルシウムとシリカそれぞれに由来する細孔のバランスにより、複合体の細孔分布がちょうど吸油に適した状態となるためであると推測される。換言すれば、炭酸カルシウムとシリカとの割合が上記範囲を外れると、以下に述べるような細孔分布や容積の複合体とすることができず、よって高い吸油量を得ることが困難となる。
また全細孔容積が大きいほど、吸油量も大きくなる傾向があるが、細孔半径が小さずぎる細孔や大きすぎる細孔は吸油量に対する寄与が相対的に小さくなる。さらに複合体の機械的強度を考慮すると、全細孔容積は無制限に大きくはならない(細孔が多すぎる場合には、機械的強度が低下し、結局、つぶれてしまう)。そのため吸油に適した細孔半径を有する細孔が充分な量存在するためには、前記式において、aが11〜20の範囲内に細孔容積の分布のピークが存在することになる。この範囲内に細孔半径を有する細孔の細孔容積の合計は1.5cc/g以上であることが好ましく、1.8cc/g以上であることがより好ましい。さらにaが15〜18の範囲内に細孔半径を有する細孔の細孔容積の合計は0.8cc/g以上であることが好ましい。
むろんaが11未満や20を超えるものであっても吸油に全く寄与しないわけではないから、aが−3〜23までの範囲にある細孔の細孔容積の合計も多いほうが好ましい。当該範囲における細孔容積の合計は1.8cc/g以上であることが好ましく、2.0cc/g以上であることがより好ましく、2.5cc/g以上であることが特に好ましい。
なおVは、細孔半径rが10(16+a−1)/8オングストロームを超え10(16+a)/8オングストローム以下の範囲にある細孔の細孔容積の合計を示す。
一方、上限は特に定められないが、細孔容積が大きくなりすぎると、前述のように複合体の強度が低下し、填料として用いた際に細孔が潰れてしまうなどの問題が生じる場合もあるため、aが−3〜23までの範囲にある細孔の細孔容積の合計が4.0cc/g以下であることが好ましく、3.5cc/g以下であることがより好ましい。
さらに複合体の平均粒子径が40μm以下であることも重要である。平均粒子径が大きすぎると前記条件を満足しても高い吸油量が得られない。好ましくは30μm以下である。一方、平均粒子径が小さいものは扱い難く、また本発明の製造方法による生産性も悪いため10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることが好ましい。
なおさらに用途によっても好ましい平均粒子径の範囲があり、例えば前述したように、中性紙抄紙に填料として用いる場合には20〜40μm、特に20〜25μmであることが好ましい。
以下、本発明を更に具体的に説明するため実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。本発明における炭酸カルシウム-シリカ複合材料の各特性値の測定方法を下記に示す。
炭酸カルシウムとシリカのモル比:蛍光X線分析装置(リガク製 ZSX PrimusII)を用いて分析した。
細孔容積分布の測定:水銀ポロシメーター(Thermo Electron Pascal240)を用いて、JIS R1655に基づいて行った。測定結果の評価は、細孔半径rを下記式
r = 10(16+a)/8オングストローム
で表し、上記aが−3〜23の範囲で、上記式においてaの差が1となるように区分した細孔半径範囲ごとに、各々区分範囲における細孔容積Vを算出した。即ち、aが−3〜−2となる細孔半径(42〜56オングストローム)を有する細孔の細孔容積(V−2)、aが−2〜−1となる細孔半径(56〜75オングストローム)を有する細孔の細孔容積(V−1)、・・・・、aが22〜23となる細孔半径(56234〜74989オングストローム)を有する細孔の細孔容積(V23)を各々求めた。なお、各区分細孔容積Vaの算出においては、区分点となる細孔半径値を有する細孔の細孔容積は、該区分点よりも小さい細孔半径を有する側の細孔容積に含めるものとした。なお、この測定での有効数字は3桁である。
吸油量:JIS K5101−13−1による。
粒子径:粒度分布測定装置(コールター社 LS230)を用い、算出にはシリカの屈折率1.458を用いた。平均粒子径は体積平均粒子径である。
実施例1
反応槽(内径190mmで高さ320mm、邪魔板付)に、塩化カルシウム水溶液を入れた後、平均粒子径が130μmである硫酸カルシウムを分散させ、さらに希釈水を加えて全量が2Lとして、CaO換算濃度で3.66[g/100mL]、CaClとCaSOのモル比が25:75に調整されたスラリーを調製した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.0となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.70、SiO濃度が5.67[g/100mL])3.7Lを1時間かけて連続で添加し、pH10.2のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを炭酸化用容器(内径125mmで高さ495mmH、邪魔板付)にいれ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを75[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。330分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了とした。
市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が24:76、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は3.26[cc/g]であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は1.46[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは17<a≦18となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V18)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は265[mL/100g]、平均粒子径は23.69[μm]であった。なおこれら各区分範囲における細孔容積(V)は表4に示した。
実施例2
実施例1と同様の方法で、CaO換算濃度で3.66[g/100mL]CaClとCaSOのモル比が25:75、全量が2Lとなるスラリーを調整した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.0となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.70、SiO濃度5.67[g/100mL])3.7Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、pH10.2のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを100[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。210分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が23:77、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.85[cc/g]であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は1.27[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは17<a≦18となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V15)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は260[mL/100g]、平均粒子径は23.27[μm]であった。
実施例3
実施例1と同様の方法で、CaO換算濃度で3.66[g/100mL]、CaClとCaSOのモル比が25:75、全量が2Lとなるスラリーを調製した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.0となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.70、SiO濃度5.67[g/100mL])3.7Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりpH10.3のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを150[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。180分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が24:76、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.75[cc/g] であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は1.23[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは、17<a≦18となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V18)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は260[mL/100g]、平均粒子径は21.74[μm]であった。
実施例4
実施例1と同様の方法で、CaO換算濃度で4.12[g/100mL]、CaClとCaSOのモル比が25:75、全量が2Lとなるスラリーを調製した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.0となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.72、SiO濃度9.20[g/100mL])2.6Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりpH10.4のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを100[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。300分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が24:76、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.74[cc/g] であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は1.16[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは、17<a≦18となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V18)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は210[mL/100g]、平均粒子径は26.28[μm]であった。
実施例5
実施例1と同様の方法で、CaO換算濃度で1.80[g/100mL]、CaClとCaSOのモル比が25:75、全量が2Lとなるスラリーを調製した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.0となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.74、SiO濃度3.88[g/100mL])2.7Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりpH10.2のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを50[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。270分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が24:76、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.63[cc/g] であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は0.46[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは、15<a≦16となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V18)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は260[mL/100g]、平均粒子径は23.41[μm]であった。
実施例6
実施例1と同様の方法で、CaO換算濃度で3.63[g/100mL]、CaClとCaSOのモル比が50:50、全量が2Lとなるスラリーを調製した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.20、SiO濃度4.98[g/100mL])3.1Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりpH10.7のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを360[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。55分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が29:71、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.35[cc/g] であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は0.22[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは、13<a≦14となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V14)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は200[mL/100g]、平均粒子径は19.31[μm]であった。
実施例7
実施例1と同様の方法で、CaO換算濃度で3.50[g/100mL]、CaClとCaSOのモル比が60:40、全量が2Lとなるスラリーを調製した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.20、SiO濃度4.98[g/100mL])3.0Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりpH10.6のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを360[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。50分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が31:69、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.09[cc/g] であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は0.21[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは、12<a≦13となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V13)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は185[mL/100g]、平均粒子径は25.25[μm]であった。
実施例8
実施例1と同様の方法で、CaO換算濃度で3.50[g/100mL]、CaClとCaSOのモル比が70:30、全量が2Lとなるスラリーを調整した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.20、SiO濃度4.98[g/100mL])3.0Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりpH10.6のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを360[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。55分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が33:67、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.83[cc/g] であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は0.16[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは、11<a≦12となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V12)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は170[mL/100g]、平均粒子径は25.21[μm]であった。
比較例1
実施例1と同様の方法で、CaO換算濃度で6.71[g/100mL]、CaClとCaSOのモル比が20:80、全量が2Lとなるスラリーを調整した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.57、SiO濃度10.27[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりpH10.6のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを360[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。180分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が37:63、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.11[cc/g] であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は0.97[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは、17<a≦18となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V18)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は120[mL/100g]、平均粒子径は55.07[μm]であった。
比較例2
実施例1と同様の方法で、CaO換算濃度で6.19[g/100mL]、CaClとCaSOのモル比が50:50、全量が2Lとなるスラリーを調整した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.65、SiO濃度10.97[g/100mL])3.2Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりpH10.3のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを360[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。150分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が29:71、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.91[cc/g] であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は0.12[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは、13<a≦14となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V14)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は165[mL/100g]、平均粒子径は87.27[μm]であった。
比較例3
CaCl濃度で48.19[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液780mLを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加え、CaO換算濃度で9.50[g/100mL]とした。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.6となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.61、SiO濃度9.64[g/100mL])3.4Lを2時間かけて連続で添加し、反応によりpH10.5のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを360[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。150分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が27:73、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.22[cc/g] であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は0.05[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは、8<a≦9となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は135[mL/100g]、平均粒子径は95.08[μm]であった。
比較例4
実施例1と同様の方法で、CaO換算濃度で3.50[g/100mL]、CaClとCaSOのモル比が80:20、全量が2Lとなるラリーを調整した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.20、SiO濃度4.98[g/100mL])3.0Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりpH10.5のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを360[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。55分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が35:65、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.41[cc/g] であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は0.05[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは、8<a≦9となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は150[mL/100g]、平均粒子径は31.30[μm]であった。
比較例5
実施例1と同様の方法で、CaO換算濃度で3.50[g/100mL]、CaClとCaSOのモル比が90:10、全量が2Lとなるスラリーを調整した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.20、SiO濃度4.98[g/100mL])3.0Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりpH10.0のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを360[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。50分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が37:63、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.24[cc/g] であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は0.04[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは、7<a≦8となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は145[mL/100g]、平均粒子径は43.01[μm]であった。
比較例6
実施例1で使用したものと同じ反応槽に平均粒子径が130μmである硫酸カルシウムと全量が2Lとなるように希釈水を加え、CaO換算濃度で3.50[g/100mL]となるスラリーを調製した。このスラリーを常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/NaO=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.19、SiO濃度5.40[g/100mL])2.8Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりpH10.3のケイ酸カルシウムスラリーとした。
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを360[mL/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。40分後にスラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が35:65、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は0.78[cc/g] であり、そのうちaが16〜20の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17からV20までの合計値)は0.41[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vを比較した場合、Vが最大となるのは、17<a≦18となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V18)であった。
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は100[mL/100g]、平均粒子径は16.33[μm]であった。
なお上記実施例1〜8、比較例1〜6で得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体の各区分範囲における細孔容積(V)を表3に示した。
比較例7〜13
各種反応条件を表1に示すように変化させて実験を行った。結果を表2に示す。なお用いたケイ酸ナトリウム塩の物性等は表3に示す。
Figure 0005268611
Figure 0005268611
Figure 0005268611
Figure 0005268611

Claims (3)

  1. (1)塩化カルシウムと硫酸カルシウムとがモル比で10:90〜75:25の範囲にあり、かつCaO換算でのCa濃度が1.0〜6.0g/100mlの範囲にある水性スラリーに対して、AO・nSiO(nは2.0〜3.5であり、Aはアルカリ金属を示す)で示されるケイ酸アルカリ金属塩を、CaO/AOがモル比で0.8〜1.2の範囲となるように混合してケイ酸カルシウム含有スラリーとし、ついで(2)該スラリーに対して、スラリーのpHが少なくとも6.5以下になる量の二酸化炭素を接触させる、吸油量が170〜280ml/100gの炭酸カルシウム−シリカ複合体の製造方法。
  2. 請求項1記載の方法で炭酸カルシウム−シリカ複合体を製造し、ついで該炭酸カルシウム−シリカ複合体をパルプスラリーと混合後、該混合物を原料として紙を抄造する、炭酸カルシウム−シリカ複合体を填料として含む中性紙の製造方法。
  3. 炭酸カルシウム−シリカ複合物であって、
    (1)炭酸カルシウムとシリカがモル比で20:80〜40:60の範囲にあり、
    (2)該複合物の有する細孔の細孔半径rを下記式
    r=10(16+a)/8オングストローム
    で表し、上記aが−3〜23の範囲の細孔半径を有する細孔の細孔容積を水銀圧入法よって測定した場合に、該範囲における細孔容積の合計が2.0cc/g以上であって、かつaの差が1となるように区分した各細孔半径範囲ごとの細孔容積Vを比較すると、該Vが最大である細孔半径範囲は、aが11を超え20以下である区分範囲内にあり、かつ
    (3)平均粒子径が10〜40μmの範囲にある
    ことを特徴とする炭酸カルシウム−シリカ複合体。
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