JP5268048B2 - 遺伝子導入剤及びその製造方法 - Google Patents
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この場合の液状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ビス(メチルベンジル)エーテル、メチルブチルエーテル、ブチルヘキシルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クラウンエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
分岐型重合体の形状としてフィルム状を採用した場合、フィルムの厚さは10μm〜2000μm程度、特に50μm〜1000μm程度が好ましい。極端にフィルムが薄いと遺伝子導入剤の製造効率が悪く、また極端にフィルムが厚いと光照射の効果及び光架橋反応において脱離性に生成する硫黄化合物のエーテル中への拡散・抽出除去の効果が十分に得られない。
また、分岐型重合体の形状を粉末状にした場合、粉末の粒径は0.1〜1000μm程度特に100〜500μm程度が好ましい。粒径を極端に小さくすることは困難であるが、逆に粒径を大きくした場合は光照射の効果及び光架橋反応において脱離性に生成する硫黄化合物のエーテル中への拡散・抽出除去の効果が十分に得られない。
さらに、分岐型重合体の形状を塊状、フレーク状やフレーク状にした場合は、光暴露量の均質性や光架橋反応において脱離性に生成する硫黄化合物のエーテル中への拡散性を十分に考慮して行う必要ある。
光の照射条件は、光波長300〜400nm、照射時間1〜300分、照射強度0.1〜10mW/cm2程度が好適である。
さらに効率的に架橋反応を行うには、分岐型重合体の浸漬時間を1〜300分程度、液状エーテルの液温を20〜60℃程度にすることが好ましい。
[4分岐型遺伝子導入剤の合成]
i)イニファターの合成
下記反応式に従って、1,2,4,5−テトラキス(N−Nジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンを次のようにして合成した。
下記反応式に従い、次のようにして、1,2,4,5−テトラキス[(N,N−ジエチルジチオカルバミル)ポリ(3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)−メチル]ベンゼン(以下、pDMAPAAmと記載することがある。)よりなるカチオン性ホモポリマーの合成を行った。
下記反応式に従い、次のようにして、1,2,4,5−テトラキス[(N,N−ジエチルジチオカルバミル)−ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)−ブロック−ポリ(3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)−メチル]ベンゼン(以下、pDMAPAAm−b−pDMAAと記すことがある。)の合成を行った。
合成したスター形4分岐型pDMAPAAm−b−DMAAブロックポリマー約5グラムを200mLのメタノールへ溶解し、500mLナスフラスコへ入れた。エバポレーターを高速回転させながら溶媒を留去し、粘度が十分に上がったところで減圧を止めた。フラスコを回転させながら窒素ガスをパージして加温し、4分岐型pDMAPAAm−b−DMAAブロックポリマーをフラスコの内壁面に薄いフィルム状に形成させた。これを80℃オーブン中で72時間処理すると、フィルム成分はDMFへ難溶となった。フィルム成分のDMFへの浸漬の際には、まずフィルム成分全体が膨潤し、続いてその一部が徐々に溶解していく溶解挙動を示し、溶媒和しにくい架橋構造を持つポリマーとなったことが示唆された。
合成したスター形4分岐型pDMAPAAm−b−DMAAブロックポリマー凍結乾燥品を約0.2グラムとPTFEコーティング回転子を100mLガラス容器へ入れて密閉した。マグネットスターラーにて激しく攪拌すると綿状の塊は粉砕され、粉末が混合される環境となった。ここへ2.5mW/cm2の近紫外線を3.5時間照射した。照射後の数平均分子量は136,000、分散は2.5となり、分子量及び分子量分布の増大が確認された、ポリマーの分子内に架橋点が生成したことが示唆された(照射処理前は分子量83,000、分散は1.3であった。)。
細胞としてCOS−1細胞を使用した。DNAとして、ホタルルシフェラーゼをコードするpGL3コントロールベクター(プロメガ社)を使用した。
このトランスフェクション後の48時間の培養後に遺伝子導入活性の評価をルシフェラーゼアッセイで行った結果を図1に示す。ホタルルシフェラーゼ活性はプロメガ社のアッセイキットを使用し、補正はタンパク濃度で行った。タンパク定量はBioRad社のBradford試薬で行った。
上記実施例1の合成プロセスiii)によって合成したスター形4分岐型pDMAPAAm−b−DMAAブロックポリマーを約5グラムを200mLのメタノールへ溶解し、500mLナスフラスコへ入れた。エバポレーターを高速回転させながら溶媒を留去し、粘度が十分に上がったところで減圧を止めた。フラスコを回転させながら窒素ガスをパージして加温し、4分岐型pDMAPAAm−b−DMAAブロックポリマーをフラスコの内壁面に薄いフィルム状に形成させた。これを4℃の遮光条件の下で72時間処理した。フィルム成分の溶媒への溶解性は処理前後で変化はなく、分子量及び分子量分布にも変化は認められなかった。
ベクターとして、実施例1の合成プロセスiii)で合成したスター形4分岐型pDMAPAAm−b−DMAAブロックポリマーを使用したこと以外は実施例1に準拠して遺伝子導入実験を行った。その結果を図1に示す。
以上より、ベンゼンなど芳香族環を核としてカチオン性ポリマー鎖が放射状に伸延する分岐構造のベクターの分子間及び/又は分子内に結合点を作ることにより、遺伝子導入活性を向上させることができることが認められた。
[6分岐型遺伝子導入剤の合成]
i)イニファターの合成
下記反応式に従って、ヘキサキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンを次のようにして合成した。
下記反応式に従い、次のようにして6分岐型pDMAPAAmホモポリマーの合成を行った。
−70℃に冷却した6分岐型pDMAPAAmホモポリマーの凍結乾燥粉末をドライボイックス内でメノウ乳鉢で粉砕した.肉厚3mm軟質ガラスからなる密閉容器中でPTFEコーティングされた回転子で激しく攪拌して霧状に分散させた。ここへ250nm−400nmの光を照射した。照射強度は、同じ材質の軟質ガラス板の透過直後の320〜400nmの範囲の光の積算光量で1.00mW/cm2となるように調整した(ウシオ電機社,UVD−C405)。3.5時間(210分)の光照射後、粉末をメタノールへ溶解し,PTFE切削屑などの異物を濾紙で濾過し、エバポレーターで濃縮後にジエチルエーテル中へ滴下して再沈殿させて精製した。溶媒を揮発させた後に水へ溶解して凍結乾燥を行って光照射体粉末を得た。GPCにより6分岐型pDMAPAAmホモポリマーはMn=28,000からMn=46,000まで分子量が増大したことが確認された。逆に、光照射体は単位重量当たりの278nmでのUV吸収が約50%量まで減少していた(図2)。278nmの吸収はリビング末端のジチオカルバメート分子団の特異吸収帯であり、光照射によりリビング末端のジチオカルバメート分子団が消費されたことがわかる。この事実より、分岐型重合体のリビング末端を介した架橋反応が起こっていると推測された。
このようにして合成した架橋ホモポリマーよりなる遺伝子導入剤について、実施例1と同様の手法で遺伝子導入活性を評価した。活性は凍結乾燥粉末への光照射によって顕著に増大し,光照射の効果が確認された(図3)。なお、CA比は5及び15で行った。
比較例3では、実施例2の工程ii)で製造した分子量28,000の6分岐型pDMAPAAmホモポリマーを用いた。
図4の通り、比較例4の未架橋体でも分子量の増加(ポリマー鎖長の延長)によって比較例3に比べて遺伝子導入活性の向上の傾向が確認されるが、この活性向上はごくわずかである。
実施例2の工程iii)の光照射時間を30分(実施例3)、60分(実施例4)、120分(実施例5)又は420分(実施例6)としたこと以外は同様にして遺伝子導入剤を製造した。そして、各々の遺伝子導入活性を実施例1と同様にして評価した。結果を図5に示す。図5には、比較例3(未照射)及び実施例2(光照射210分)の結果も併せて示す。
図5の通り、光照射時間が長くなるほど遺伝子導入活性が増大し、照射時間依存性に変化するパラメーターと考えられる架橋反応の進行度と遺伝子導入活性に正の相関が確認された。
[4分岐型ホモポリマーの架橋体の合成]
I)実施例1の工程i),ii)とほぼ同様の手順により4分岐型pDMAPAAmホモポリマーを合成した。工程i)は全く同一であり、工程ii)のみ次のa),b)点において相違する。NMRの測定結果は実施例1と同一であった。
b)この溶液に3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド9.9gを加えて混合し、全量をトルエンで50mLに調整したこと、
c)合成した4分岐型スター型ホモポリマー1,2,4,5−テトラキス[(N,N−ジエチルジチオカルバミル)−ポリ(3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)−メチル]ベンゼン(pDMAPAAm)の分子量は58,000であること。
この架橋体よりなる遺伝子導入剤の遺伝子導入活性を実施例1と同様にして評価した。その結果を図6に示す。なお、図6の比較例5は、実施例7の工程Iで製造した4分岐型pDMAPAAmホモポリマーについての評価結果である。図6の通り、光照射強度が強くなるほど遺伝子導入活性が増大し、光強度依存性に変化するパラメーターと考えられる架橋反応の進行度と遺伝子導入活性に正の相関が確認された。
[4分岐型pDMAPAAmホモポリマーの光架橋]
i)イニファターの合成
イニファターである1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンを次のようにして合成した。
1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチルベンゼン)1.0gとN,N−ジエチルジチオカルバミル酸ナトリウム34.0gをエタノール300mL中へ加え、遮光下で室温で4日間攪拌した。沈殿物を濾過し、3リットルのメタノールへ分散させて30分間攪拌した後に濾過した。この操作を3回繰り返し、臭化ナトリウムと余剰のN,N−ジエチルジチオカルバミル酸ナトリウムを除去した。減圧あ下でメタノールを揮発させた後に200mLのトルエンへ溶解して濾過し、約100mLのメタノールを混合して再結晶を行って精製した。白色の1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンの針状結晶を得た(収率90%)。高速液体クロマトグラフィーにより、原料ピークが消失し、精製物が単一物質であることを確認した。
1,2,4,5−テトラキス[(N,N−ジエチルジチオカルバミル)ポリ(3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)−メチル]ベンゼン(以下、pDMAPAAmと記載することがある。)よりなるカチオン性ホモポリマーの合成を行った。
iii)4分岐型pDMAPAAmホモポリマーの光架橋
上記のようにして 合成したスター形4分岐型pDMAPAAmホモポリマー凍結乾燥品を、十分に窒素パージを行ったクロロホルムへ溶解し、濃度0.2g/mLの溶液を調製した。この溶液をガラス板上へ流延させ、窒素雰囲気で乾燥させて厚み約150μmのポリマーフィルムを形成させた。このガラス板を100mm×100mm×200mmの直方体形の2mm厚軟質ガラス容器中のほぼ中央位置にて垂直に、容器の直方体面と平行となるように立て、ここへ十分に窒素パージを行ったエーテルを入れてガラス板が完全に浸漬されるようにした。ポリマーフィルムを形成させた面を光源へ向け、マグネットスターラーで攪拌を行いながら2.5mW/cm2の近紫外線を30分間照射した。光照射終了後、フィルムをクロロホルムへ溶解して回収し、0.2μmシリンジフィルターで濾過し、ジエチルエーテル中で再沈殿させて精製し光照射体を得た。この時、濾過には圧力がほとんど不要であり、不溶性の成分が生成していないことが示唆された。
278nmでのUV吸収は照射前の約70%量程度までに減少しており、GPCにより分子量を測定すると、光照射前の分散(1.30)がほぼ維持されたまま(1.42)分子量の増大(56,000)が確認された。ピーク形状も光照射の前後で差はなかった。フィルム全体的に均質に架橋が進行した結果と推測される。
引き続き、2.5mW/cm2の近紫外線を240分間まで照射すると、得られた光照射体の278nmでのUV吸収は確認されなくなり、高分分子鎖のリビング末端のジチオカルバメート分子団のほぼ全量が架橋反応に消費されていることが分かった。
分子量はブロードに増大して高分子量側では約200万の分画まで到達したが、溶媒への溶解性は消失されなかった。
実施例8の工程iii)で得た150μm厚みのポリマーフィルムを形成させたガラス板を実施例と同様に100mm×100mm×200mmの直方体形の2mm厚軟質ガラス容器中のほぼ中央位置にて垂直に、容器の直方体面と平行となるように立て、そのまま、気相中で2.5mW/cm2の近紫外線を30分間照射した。実施例と同様の方法で光照射体を回収したが、不溶分が多く回収率は低かった。分子量をGPCで測定すると、計算値としては実施例と同様に分子量の増大が確認されたが、分散が広く(2.54)なり、ピーク形状も低分子量側は光照射前とほぼ重なり、高分子量側にのみ小さな広い肩が形成されたものとなり、フィルム中の一部で架橋反応が進んでいることが示唆された。以上より、比較例6の気相中での光照射は、架橋が著しく進行して溶媒へ不溶性となるか、逆に、まったく架橋していない部分が存在するという結果となった。
実施例8は、光照射前後の分散が維持されたのに対し、比較例6では分散が広くなった。実施例8では、光照射によりN,N−ジエチルジチオカルバメート分子団がラジカル解裂し、ポリマー主鎖又は側鎖へ付加的に結合する際に脱離するN,N−ジエチルジチオカルバメート分子団をエーテル中へ抽出拡散させてフィルム中から除去することで効率良く光架橋反応が進行するものと考えられる。
Claims (7)
- 芳香族環を核とし、それから放射状に伸延したカチオン性の複数の分岐鎖を有する分岐型重合体を有する遺伝子導入剤であって、
複数の該分岐型重合体同士が架橋した架橋体であって、
該分岐型重合体は、ベンゼン環を核とし、この核に分岐鎖として3個以上のN,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団が結合した化合物をイニファターとし、これに3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、及び/又は、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートであるビニル系モノマーを光照射リビング重合させた分岐型重合体であり、
該分岐型重合体の分岐鎖同士が架橋している架橋体よりなる遺伝子導入剤。 - 請求項1において、分岐型重合体の分岐鎖のN,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団が架橋点として寄与していることを特徴とする遺伝子導入剤。
- 請求項1又は2において、該分岐鎖はビニル系モノマーのホモポリマーよりなることを特徴とする遺伝子導入剤。
- 請求項1又は2において、前記分岐鎖は、前記ビニル系モノマーと、異なるモノマーとのランダム又はブロック共重合体であることを特徴とする遺伝子導入剤。
- 請求項4において、前記異なるモノマーは、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド、及びN−イソプロピルアクリルアミドの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする遺伝子導入剤。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の遺伝子導入剤を製造する方法であって、固体状態の該分岐型重合体を液状エーテルに浸漬させた状態で光照射することにより、分岐型重合体同士を架橋させることを特徴とする遺伝子導入剤の製造方法。
- 請求項6において、該液状エーテルは、ジエチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ビス(メチルベンジル)エーテル、メチルブチルエーテル、ブチルヘキシルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びクラウンエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする遺伝子導入剤の製造方法。
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