JP5258719B2 - 繊維ロープの端末定着方法 - Google Patents
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Description
繊維線状体には、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの汎用繊維、全芳香族ポリアミド繊維、超高分子量ポリエチレン、ポリアリレート繊維などで代表される高強度・高弾性繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維などの無機質高性能繊維など種々のものがあり、形態としては、それら繊維のヤーンを集合したストランドの撚合体や編組体、あるいは繊維やストランドに樹脂を含浸させて複合化した撚合体や編組体などがある。また、外周に保護層を被覆したものもある。
これら繊維線条体は所要の長さを有するので繊維ロープと称することができるが、各種用途において、アンカーなどに連結したり、ロープ相互を連結したりするためには、ロープの端末を連結に適した形状に加工する必要がある。
しかし、繊維ロープは荷重を受けると断面積が変化し、径が細くなる性質を有するので、しっかりと拘束できず、抜けてしまう問題があった。また、繊維は長手方向の引っ張りに対してはワイヤ並みの強度を有するが、直径方向の局部的剪断力や表面の傷などに対しては弱い。そのため、金属製の筒状端末金具にロープ端部を挿入して圧着し、その締め付けが必要以上に強いとロープの直径方向に金具の圧力が剪断力として加わり、繊維に剪断破壊による切断が生じたり、表面組織の破壊に伴うすべりが起こって高い定着効率が得られず、作業者によって強度が出たり出なかったり定着効率にばらつきが大きかった。また、スエージ加工する場合、繊維ロープと筒状金具の伸び率が大きく異なるので、その伸びの差で繊維ロープが引張り力を受けて切断する問題があった。
しかも、ロープ端末の1ピッチ分程度を解撚して接着面積を増大し、接着剤のアンカー効果を高めているが、ロープ長手方向に引っ張り力が加わって径が細ると、接着剤と金具のアンカー力が減退し、界面で剥離が起こって、定着効率が弱まる問題があった。さらに、この圧着法も、外径がストレートな金具全体に一律に圧縮力を加え、金具内径を一様に縮小させるため、金具口元のロープ部分に剪断荷重が付加され、早期の口元疲労破壊が生じる問題もあった。
さらに、樹脂や接着剤を介して金具と繊維を結合しているため、樹脂や接着剤の劣化が長期の耐久性を損ねる問題もあった。
しかし、この方法も、ロープに引っ張り荷重が加わった場合、ロープ及びストランドの伸びによるロープ径の細径化により、ストランドと樹脂の締結力が減退し、締結効率が低下して抜けてしまいやすい問題があった。
さらに本発明は、コンポジットタイプでない繊維ロープに対しても、熟練を要さず締結効率が高く安定したコンパクトな定着体を簡単にしかもばらつきなく得ることができる繊維ロープの端末定着方法を提供することにある。
インナー金具の端部からいきなりストランド嵌め溝が始まるのでなく、ストランド折り返し始端部位にストランド折り返し空間形成用の細径を有しているので、ストランドは幾分半径方向に勾配をつけられつつ滑らかにストランド嵌め溝に誘導され、ストランドが圧着による拘束を受けないので、ストランドの曲げによる強度低下が大幅に緩和され、ストランド折り返し始端部分への圧縮力の影響は小さく、金具内でのロープ損傷防止ができる。したがって、繊維と樹脂とを複合させた硬く剛性のかなり高いコンポジットロープもうまく定着することができる。
加工はアウター金具の突出部がなくなり、外形が平らになるまで圧縮すればよく、その状態は目視で確実に判定できるので、熟練を要さずにばらつきのない上記高い締結効率の定着部を簡単に加工することができ、圧縮加工は工場に据付けられる門型プレスなどの大型プレス機に限らず、油圧ジャッキプレスなどの簡易な小型携帯プレス機を使用できるので、ロープ使用現場で実施し、すぐに使用に移すことができる。
ロープ構造も、8つ打ち、12打ち、24打ち、二重組紐など、原糸を撚合したヤーンを複数本束ねあるいは撚合したストランドを2本一組として編製した編組構造、ストランドを一方向に撚った3つ打ち、4つ打ち、6つ打ちなどの撚り構造など任意である。
図1は本発明が適用される繊維ロープの構造例を示しており、(a)は撚合タイプであり、外周に防水用の樹脂被覆が施されている。(b)〜(f)は編組タイプであり、(b)は8つ打ち、(c)は12打ち、(d)はダブルブレード、(e)は(b)または(c)のロープ本体の外周をウレタン樹脂などで樹脂被覆しあるいは樹脂テープをせき巻きし、その外周をポリエステルなどの汎用繊維の編組体からなる保護層で被覆した防水タイプものである。(f)は(b)または(c)のロープの外周をポリエステルなどの汎用繊維の編組体からなる保護層で被覆したり、その外周をウレタン樹脂などの押出し樹脂で被覆したり、樹脂被覆し、さらに編組外層で保護した防水タイプのものである。なお、図示しないが、ロープ本体の外周をポリエステルなどの汎用繊維の編組体からなる保護層で被覆したものなどを含む。
図2ないし図9は第1発明を示しており、図2は本発明により得られた端末定着金具付き繊維ロープの一例を示している。繊維ロープ1と円柱状の端末金具Aからなっており、外観上は従来の圧縮止めによる端末構造と変わるところはない。
図3と図4は図1の端末金具部分の断面を示しており、繊維ロープ1は、この例ではコンポジットタイプ、すなわち、汎用繊維または高強力低伸度繊維あるいは無機質高性能繊維などを主材とし、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性マトリックス樹脂を含浸するなどして複合化したものからなっており、この例では、複数本のストランドを撚り合わせたタイプである。
インナー金具2は、内径が繊維ロープ1の外径とほぼ一致する内径を持つ筒体20からなっており、外面軸方向には繊維ロープ1のストランド11を誘導して嵌め合わせる溝22が設けられている。
ストランド嵌め合わせ溝22はストランドと同数を等間隔に配置しており、溝断面形状は半円又は楕円状で、溝深さはアウター金具3の圧締力が働く大きさであり、ストランド径の半分程度からストランド径とほぼ同じ範囲が望ましい。溝の長さはロープ径の6倍以上でできるだけ長いことが望ましい。
空間の径すなわち細径部23の径は、ストランド嵌め合わせ溝22の底部と略一致する程度がよく、長手方向の長さはストランド径と同程度以上ある。細径部23の縁は面取りしておくことが望ましい。細径部23と反対側の端部は、この例では雄ねじ25が形成されている。
筒部31のインナー金具挿入側には前記インナー金具のおねじ25と螺合する雌ねじ33が形成されている。ねじ形成分だけインナー金具の外径が増すので挿し合わせが容易となり、折り返されたストランド11の外周に適度の圧着用隙間を確保しつつ、軸方向の挿合わせ位置決めをする作用がある。また、抜け止めと引っ張り強度の向上も図り得る。
まず、図6と図7(a)のように、繊維ロープ1の端部をインナー金具2に挿通し、端部から所要長さ突出させる。次いで図7(b)のように、インナー金具2から突出しているロープ端部を解撚し、この例では6本のストランド11をばらし、それぞれのストランド11を細径部23の端部で180度折り返し、細径部23の外周を経由してストランド嵌め合わせ溝22に導いて嵌め込む。ストランド11はストランド嵌め合わせ溝22の入口位置でいきなり180度反転されるのでなく、細径部23の端230から自由空間の存在で斜め状に滑らかに広がりながらストランド嵌め合わせ溝22に導かれるので、樹脂を含浸硬化させた硬い性状であっても、比較的無理なく収められる。なお、芯ストランドすなわちロープ心12はインナー金具端部付近で切断する。
図8はこの工程を示しており、凹入部50を有する上下のダイス5,5にセットaを配し、セットaを回転させながらダイス5,5を上下動させ、スエージ加工することでロープと金具を圧締する。
この圧締によりアウター金具3は材質に応じた量で塑性変形して縮径し、それにより折り返されているストランド11は隙間なくインナー金具2とアウター金具3間に充填される。すなわち、ストランド11はストランド嵌め合わせ溝22に半周以上が強圧されると同時に外面側がアウター金具の内周面で強圧される。
そして、インナー金具2とアウター金具3の間にはストランド折り返し空間を有するので加工による強度損失がなく、折り返し局部110は図3のように金具穴奥の空間37にあるためスエージ加工によるインナー金具2とアウター金具3の圧縮圧は加わらず、ストランドに対する圧着の影響はない。
それゆえストランド曲げによる強度低下が大幅に緩和され、金具内でのロープ損傷が防止され、定着効率を高くできる。
そして、ロープ本体部分10はアウター金具3から圧縮力を受けたインナー金具2により圧縮力が加えられるが、その圧縮力は軽度であり、引張り力で切断しない。
工程は、図9(a)のように繊維ロープ1の端部をインナー金具2に挿通し、端部から所要長さ突出させる。次いで(b)のように、インナー金具2から突出しているロープ端部を解撚し、8つ打ちロープの場合は4本、12打ちロープの場合には6本のストランド11にばらし、それぞれのストランド11をインナー金具2の端部で180度折り返し、平均的に広げて帽子のようにインナー金具の外周に被せる。
この圧締によりアウター金具3は塑性変形して縮径し、それにより折り返されているストランド11は隙間なくインナー金具2とアウター金具3間に充填される。すなわち、ストランド11は外面側がアウター金具の内周面で強圧される。
図10〜図20は第2発明を示しており、図10は本発明により得られた端末定着金具付き繊維ロープの一例を示している。繊維ロープ1と円柱状の端末金具Aからなっており、外観上は従来の圧縮止め式の端末構造とほとんど変わるところはない。
図11と図12は図10の端末金具部分の断面を示しており、繊維ロープ1は、この例では図1(b)〜(f)で例示するような編組ロープのいずれか(図示するものは図1f)であり、非コンポジットタイプである。しかし、これに限定されるものではなく、撚り構造ロープにも適用され得るし、編組タイプや撚り構造タイプのコンポジットタイプロープにも適用され得る。
アウター金具3は、口元から奥端に向かって前記インナー金具2を挿入可能な内径の穴30を有しており、穴30は口元部から奥端に到るまで長手方向でほぼ均一な径となっている。
穴30はロープの挿入奥端側で閉じられ、外部に連結部32を有している。連結部32はねじ形態のほか、フォークエンド、フラットエンドなど連結相手側の金具形状に対応するように形成すればよい。
詳しくは、各突出部34は、テーパー状に漸次肉厚化した第1部分340と、逆テーパー状に漸次薄肉化した第2部分341が凸の稜線342を境として形成されてなるもので、この例では、そろばん玉状の外観を呈している。
前記突出部34の山形角度αは、圧着するロープの伸びなどの特性に応じてたとえば水平に対し5度〜35度の範囲から適宜設定する。5度以下では圧締効果が弱く、35度以上では括れがきつすぎてせん断力が作用するのであまり好ましくない。稜線342は剪断を考慮して適度に丸みをつけてもよい。反復の回数つまり突出部の数は2個以上であり、図13と図14では5個であるが、6〜10個など圧着するロープの伸びなどの特性に応じて適宜選択すればよい。
第1部分340と第2部分341は同じ勾配であっても異なる勾配であってもよい。直線状でなく曲線上となっていてもよい。稜線342は面取りがなされあるいは適度に丸みがつけられてもよいが、穴側に反転突出させたときには円弧が付くので尖っていてもよい。
図14のように繊維ロープ1とインナー金具2とアウター金具3を同軸線上に配置する。
繊維ロープ1の端部をインナー金具2に挿通し、端部から所要長さ突出させる。次いでインナー金具2の穴から突出しているロープ端部を解撚し、この例では編組ロープを構成している6本のストランド11にばらし、それぞれのストランド11を広げてインナー金具2の端部で180度折り返し、図15(b)のように帽子のようにインナー金具2の外周に被せる。なお、繊維ロープが撚り構造の場合には芯ストランドすなわちロープ心はインナー金具端部付近で切断する。
このスエージング加工は第1発明と同じように上下のダイスにセットaを配し、セットaを回転させながらダイスを上下動させることでロープと金具を圧締する。このスエージング加工は、アウター金具3の外形がほぼ平坦になるように好適には段階的に行う。
第1発明では圧締によりアウター金具3は塑性変形して全体が平均して縮径し、それにより折り返されているストランド11は隙間なくインナー金具2とアウター金具3間に充填され、外面側がほぼ均一に縮径したアウター金具の内周面で強圧された。
折り返されて挟まれているストランド11と波状のインナー金具2´と前記波状の反転突出部36により接触面積と摩擦力が増すとともに、波を構成する複数の凹凸がアンカー作用をもたらすので、引き抜きに対する大きな抵抗力が発揮される。ストランド11の折り返し局部110は穴30の端部空間に位置し、そこには圧縮圧は加わらないので、切断が抑制される。
この方法によれば、反転塑性変形により、図18のようにアウター金具3の穴30が口元部に最大径があり、それから先に反転突出部36が口元部より奥に向うほど大きく突出する形態となり、それに呼応してインナー金具2´の波高さが変化する。このため、ストランド11の括れ度合いとロープ本体10の括れ度合いが、金具口元部より奥に行くに従って均一的に大きくなり、高い拘束作用が発揮される。
図19はスエージ加工するのに適したスエージ機7の一例を示しており、上下半割りの複数の加工溝72A,72B,72Cを有している。
それら加工溝は、図13の状態の金具3における突出部34よりも径の小さい一つ以上の中間成型用加工溝72A,72Bと、金具3の口元部と略同径の細い仕上げ用加工溝72Cからなっている。中間成型用加工溝72Aと中間成型用加工溝72Bは大きさが異なっている。
そして、最後に仕上げ用加工溝72Cに装填され、セットを回転しながら半割りダイス71,71を上下して圧縮することにより、図20(c)のように金具の長手方向の外径がノーマル肉厚部の外径と略同一となる。
このとき、突出部34が塑性変形により穴30の内径側に反転し、内径方向に山形状の厚肉部となり、凸の第1部分と第2部分が形成され、それらの境の稜線で内径が最も細くなり、圧縮量が最大となる。かかる形状変化を中間成型用加工溝72A、72Bと仕上げ用加工溝72Cによって逐次的に加工するので、しわがよったり、割れが生じたりせず、品質の良好なものとなる。
前記図20の加工は、アウター金具3のひとつずつの突出部34に対して順次行ってもよいし、全部または幾つかの突出部34に対して行ってもよい。
コンポーズロープをインナー金具の筒部に挿通し、ロープ端部を解撚し、ストランドをそれぞれ嵌め込み溝に配置し、アウター金具の筒に挿入し、スエージ加工によりロープを金具に圧着した。
インナー金具は、長さ80mm、内径9mm、外径13mmのアルミニウム製パイプを使用した。アウター金具は、アルミニウム製で、外径29mm、内径14mm、ねじエンドを含めた長さ130mmとした。アウター金具は、外周に口元から5mm程度の位置から最大径29mm、最小径20mmのそろばん玉状の突出部を約11mm間隔で7個切削加工したものを使用した。
前記ロープの端部のウレタン樹脂被覆および保護層を除去し、ロープ体のみをインナー金具に挿通し、インナー金具から突出したロープ端部を解撚し、8本のストランドを広げてインナー金具の外周に沿って折り返し、折り返し始端側からアウター金具を挿し合わせ、外形のそろばん玉状の突出部が喪失し、最小径部分のなごりである浅い溝が11mm間隔で形成されるように油圧ジャッキプレスにてアウター金具の突出部を1つずつ圧縮加工した。
試験片をスライスした結果、ロープは折り返し始端部で破断していることが確認され、口元破断などの現象は見られなかった。折り返しストランド部分は波状の凹凸を繰り返したインナー金具とアウター金具に挟み込まれて一体化した状態で残っていた。
11 ストランド
2 インナー金具
20 筒部
22 ロープ嵌め合わせ溝
23 細径部
3 アウター金具
30 穴
34 突出部
36 反転突出部
Claims (6)
- 繊維ロープの端末を定着するにあたり、インナー金具とアウター金具を用い、インナー金具に繊維ロープを挿通し、インナー金具端縁より突出した繊維ロープ端部を解撚するとともに解撚部分をインナー金具の外周に折り返し、アウター金具を前記インナー金具の端方向から挿し合わせ、スエージ加工することを特徴とする繊維ロープの端末定着方法。
- インナー金具がロープを解撚したストランドを誘導して収める複数の嵌め溝を端部外表面に備えた筒体からなり、アウター金具がインナー金具を挿入可能な内径の筒部を有している請求項1に記載の繊維ロープの端末定着方法。
- インナー金具がストランド嵌め溝の始端より後方にストランド折り返し空間形成用の細径部を有する請求項2に記載の繊維ロープの端末定着方法。
- 繊維ロープの端末を定着するにあたり、ロープを挿通できる径のインナー金具と、口元から奥端に向かってインナー金具を挿入可能な内径の穴を有し、外径側には口元よりも先に突出部を複数形成したアウター金具を用い、インナー金具に繊維ロープを挿通し、インナー金具端縁より突出した繊維ロープ端部を解撚するとともに解撚部分をインナー金具の外周に折り返し、アウター金具をインナー金具の端方向から挿し合わせ、スエージ加工することによりアウター金具外周の各突出部を穴側に反転突出させ、ロープ折り返し部分と中心のロープ部分をそれぞれ波状の反転突出部で圧締することを特徴とする繊維ロープの端末定着方法。
- アウター金具として、突出部が口元より奥方向に向うほど寸法が大きくなっているもの用いる請求項4に記載の繊維ロープの端末定着方法。
- アウター金具が片端に連結部を有している請求項1ないし5のいずれかに記載の繊維ロープの端末定着方法。
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