JP5257232B2 - エチレン系共重合体の製造方法 - Google Patents

エチレン系共重合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、エチレン系共重合体の製造方法に関し、さらに詳しくは、特定のニッケル錯体と特定の化合物の存在下で、エチレンとエチレン性極性モノマーを含むオレフィン性モノマーを重合させることよりなるエチレン系共重合体の製造方法に関する。
エチレン、プロピレン等のオレフィン重合用触媒として、活性点として前周期遷移金属を有するZieglar-Natta触媒、メタロセン触媒が工業的に広く用いられている。しかし、
これらの触媒は高い活性を示すが、反応系中に極性官能基が存在すると失活してしまうため、極性官能基を有するモノマーを使用して、共重合体を製造することができない。
近年、ニッケル、パラジウム等の後周期遷移金属錯体を、オレフィンの重合触媒とし、極性官能基を有するエチレン性モノマー(以下これを「エチレン性極性モノマー」と略称することがある)を使用し、共重合体を製造したことが報告されている(例えば特許文献1〜3)。特許文献1には、例えば、ジイミン型配位子を有するカチオン性パラジウム及びニッケル錯体を用いて、エチレンの単独重合体及びエチレン/アクリル酸メチルの共重合体が得られたこと、特許文献2及び3には、例えば、イミノアミド配位子を有するニッケル触媒を用いて、エチレン性極性モノマーとエチレンの共重合体が得られたことが開示されている。
しかしながら、特許文献1で得られた共重合体は、分岐数が非常に多く、剛性の面で必ずしも満足いくものではない。また、特許文献2及び3で得られた共重合体は、剛性面での問題はないが、用い得る極性モノマーはノルボルネン化合物のみであり、その種類は限られている。
一方、エチレン性極性モノマー(特に反応性の高いモノマー)には、モノマー同士の重合(ホモ重合)を防ぐ目的で、通常重合禁止剤が添加されている。そのため、エチレン性極性モノマーを前記のように共重合反応に用いる際、配位重合の妨げになるため、添加されている重合禁止剤を、例えば充填剤カラムによる吸着分離や蒸留により除去することが一般的に行われている。
重合禁止剤を除去したモノマーを仕込んだ重合設備内中では、エチレン性極性モノマー(例えばアクリル酸エステル)のホモ重合が進行する可能性がある。これを抑えるため、例えば、特許文献4等では、重合系に再度重合禁止剤を加えているしかしながら、この方法では、必ずしも目的通りの反応が進行するわけではなく、また作業工程が煩雑である。
従って、エチレン性極性モノマーに添加された重合禁止剤を除去することなく、重合系に添加し、エチレンとの共重合体を得ることが出来る触媒、それを用いたエチレン系共重合体の製造方法が望まれていた。
特表平10−513489号公報 特表2006−519300号公報 特表2006−519914号公報 特開2005−307218号公報
本発明は、エチレンとエチレン性極性モノマーを含むオレフィン性モノマーを効率的に重合させて、エチレン系共重合体を製造する方法の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の錯体を用いることで、重合禁止剤の存在下でもエチレンとエチレン性極性モノマーを含むオレフィン性モノマーとの共重合反応を行うことができ、更に驚くべきことに、エチレン性極性モノマー中の重合禁止剤を重合系中に含有することにより、触媒活性が向上することを見出した。さらに、重合禁止剤を含有しない場合に比べ、より高分子量のエチレン系共重合体が得られることを見いだした。本発明は、これらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち、本発明の第一の要旨は、下記式(3)で表されるニッケル金属錯体および下記式(2)で表される化合物の存在下で、下記式(3)で表されるニッケル金属錯体と下記式(2)で表される化合物のモル比が、1,000/1〜1/100,000(mol/mol)である、エチレンとエチレン性極性モノマーを含むオレフィン性モノマーを重合させることを特徴とするエチレン系共重合体の製造方法に存する。
Figure 0005257232
〔式(3)中、R は炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有炭化水素基または窒素含有炭化水素基を示し、Ar 及びAr は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を示し、XはNiとσ結合を形成する配位子を示し、Yはルイス塩基であって、Niに孤立電子対で配位する配位子を示す。〕
Ar−OR (2)
〔式(2)中、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。〕

本発明の第二の要旨は、前記エチレン系共重合体の製造方法において、重合に用いるエチレン性極性モノマーが、前記式(2)で表される化合物を含むものである、エチレン系共重合体の製造方法に存する。
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本発明の第の要旨は、前記エチレン系共重合体の製造方法において、エチレン性極性モノマーが、下記式(4)で表される化合物である、エチレン系共重合体の製造方法に存する。
Figure 0005257232
〔式(4)中、Zは水素原子またはメチル基を示し、WはCOOR’基、シアノ基、アセトキシ基またはOR’基(ここで、R’は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)を示す。〕
本発明の第の要旨は、前記エチレン系共重合体の製造方法において、エチレン系共重合体が、下記式(5)で表されるポリマー鎖を有する共重合体である、エチレン系共重合体の製造方法に存する。
Figure 0005257232
〔式(5)中、Eはエチレンから誘導される分岐を有していてもよいエチレン鎖を示し、Zは水素原子またはメチル基を示し、Wは−COOR’基、−CN基、−OAc基またはOR’基(ここで、R’は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)であり、lは0.0001〜0.5の数を示す。〕
本発明の第の要旨は、前記エチレン系共重合体の製造方法において、前記式(5)で表されるポリマー鎖において、エチレン鎖の分岐数が、ポリマー鎖1,000炭素当り50以下である、エチレン系共重合体の製造方法に存する。
本発明の第の要旨は、前記エチレン系共重合体の製造方法において、前記式(5)で表されるポリマー鎖が、その末端に配位子Xに由来する基(ここで、Xは前記式(1)と同義である。)を有するものを、ポリマー鎖1,000本当り5本以上含むものである、エチレン系共重合体の製造方法に存する。
本発明のエチレン系共重合体の製造方法により、極性官能基を有するエチレン系共重合体を効率よく得ることができ、より高分子量で、分岐の少ないエチレン系共重合体を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
本発明のエチレン系共重合体の製造方法は、上記の通り、式(1)で表されるニッケル金属錯体(以下これを「成分(1)」ということがある。)及び式(2)で表される化合物(以下これを「成分(2)」ということがある。)の存在下、エチレン性極性モノマーを含むオレフィン性モノマーとエチレンとを重合させることを特徴とするエチレン系共重合体の製造方法である。
まず本発明の方法を構成する各成分について具体的に説明する。
<式(1)で表されるニッケル金属錯体〔成分(1)〕>
本発明において、触媒として用いられるニッケル金属錯体は、下記式(1)で表されるものである。
LNiX (1)
ここで、上記式(1)中、Niはニッケル原子である。このニッケル原子の価数は、0価、1価または2価であり、好ましくは0価または2価である。
Lは酸素原子、窒素原子、リン原子、ヒ素原子、硫黄原子及び炭素原子よりなる群から選ばれる何れかの原子で、中心金属であるNiにキレート配位する配位子である。この配位子Lは、好ましくは二座配位子である。
Niに配位する原子としては、窒素、酸素、リン、ヒ素、硫黄、炭素が挙げられるが、窒素、酸素、リン、硫黄が好ましく、更に窒素、酸素、リンが特に好ましい。
二座配位子のNiに配位する原子の組合せは、特に限定されるものではなく、上記原子のうち任意の2元素であればよい。例えば、配位子がNiと窒素で配位する1種と、酸素で配位する1種の組み合わせを「窒素―酸素」と表わすとすると、配位する原子の組み合
わせは、窒素−窒素、窒素−酸素、酸素−リン、リン−リン、リン−硫黄が好ましい。
配位子の中心金属原子(Ni)への結合様式は、特に限定されるものではなく、例えば、孤立電子対による配位(以下これを「σ配位」ということがある)、π配位、σ結合(結合軸方向を向いた原子軌道同士による結合)等が挙げられる。それらの中で、σ配位、σ結合が好ましい。
また、二座配位子のNiへの結合様式も、特に限定されるものではなく、上記の結合様式のうち任意の2種類の結合様式が挙げられる。例えば、二座配位子が、Niと、σ配位とσ結合の1つずつで配位する組み合わせを「σ配位―σ結合」と表わすとすると、σ配位−σ配位、σ配位−σ結合が好ましい。
なお、原子の組合せと配位様式の組合せは一通りしか記さなかったが、組合せ方は複数を意味する。すなわち、窒素−酸素とσ配位−σ結合の組合せを選んだ場合は、窒素(σ配位)−酸素(σ結合)、窒素(σ結合)−酸素(σ配位)の両方を意味する。
Xは、Niとσ結合を形成する配位子である。配位子Xとしては、Niとσ結合を形成し得るものであれば特に限定されないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アミノ基、置換アミノ基または窒素含有炭化水素基等が挙がられる。
ここで、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、置換アミノ基、窒素含有炭化水素基における炭化水素基部分の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜8が更に好ましい。
炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等の脂肪族アルキル基;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル等の脂肪族アルキル基を置換基として有していてもよい環状アルキル基;ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル等のアリールアルキル基;trans−スチリル等のアリールアルケニル基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アセナフチル、フェナントリル、アントリル等のアリール基等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素基は、上記の炭化水素基の任意の位置にハロゲン原子が置換したものである。ここで、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれであってもよい。
ハロゲン化炭化水素基としては、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ヨードメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,1,1−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、トリフルオロビニル、1,1−ジフルオロベンジル、1,1,2,2−テトラフルオロフェニルエチル、2−、3−、4−フルオロフェニル、2−、3−、4−クロロフェニル、2−、3−、4−ブロモフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジフルオロフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジクロロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2,4,6−トリクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、4−フルオロナフチル、4−クロロナフチル、2,4−ジフルオロナフチル、ヘプタフルオロ−1−ナフチル、ヘプタクロロ−1−ナフチル、2−、3−、4−トリフルオロメチルフェニル、2−、3−、4−トリクロロメチルフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(トリクロロメチル)フェニル、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル、4−トリフルオロメチルナフチル、4−トリクロロメチルナフチル、2,4−ビス(トリフルオロメチル)ナフチル等が挙げられる。
なお、本明細書中において、例示した置換基等を、一部省略して記載する。例えば、上記の「2−、3−、4−フルオロフェニル」は、「2−フルオロフェニル」、「3−フルオロフェニル」、「4−フルオロフェニル」の3つの化合物を挙げたことを意味する。
ケイ素含有炭化水素基としては、例えば、トリメチルシリルメチル、トリエチルシリルメチル等のトリアルキルシリルメチル基;ジメチルフェニルシリルメチル、ジエチルフェニルシリルメチル、ジメチルトリルシリルメチル等のジ(アルキル)(アリール)シリルメチル基等が挙げられる。
酸素含有炭化水素基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、シクロプロポキシ、ブトキシ等のアルコキシ基;フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシ等のアリロキシ基;フェニルメトキシ、ナフチルメトキシ等のアリールアルコキシ基;フリル等の酸素含有複素環基等が挙げられる。
置換アミノ基または窒素含有炭化水素基としては、例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ等のアルキルアミノ基;フェニルアミノ、ジフェニルアミノ等のアリールアミノ基;N−メチル−N−フェニルアミノ等のN−アルキル−N−アリールアミノ基;ピラゾリル、インドリル等の窒素含有複素環基等が挙げられる。
本発明において、重合反応時に、配位子XのNi−X結合間にモノマーが挿入されて反応するため、Ni−X結合が強すぎると反応性が落ち、助触媒等の反応助剤を必要とすることがある。また、Ni−X結合が弱すぎると、触媒が不安定となり重合反応用途に適さなくなることがある。そのため、配位子Xは適度な結合性を有するものが好ましい。
かかる配位子Xとしては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換アミノ基もしくは窒素含有炭化水素基等が挙げられる。それらの中でも反応性の面で、水素原子、塩素原子、メチル基、i−ブチル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が好ましく、水素原子、メチル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいベンジル基が更に好ましく、メチル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいベンジル基が特に好ましい。ここで、置換基として好ましいものはC1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基、塩素原子、置換アミノ基である。
mは配位子Xの数であり、通常1〜4の整数である。配位子Xの数(m)は、1または2が好ましく、1が更に好ましい。
Yは、ルイス塩基であって、Niに孤立電子対で配位(σ配位)する配位子である。配位子Yとしては、ルイス塩基となり得るもので、かつNiとσ配位を形成し得るものであれば特に限定されないが、例えば、酸素含有炭化水素化合物;アミノ化合物、置換アミノ化合物、窒素含有炭化水素化合物等が挙がられる。
ここで、酸素含有炭化水素化合物、置換アミノ化合物、窒素含有炭化水素化合物における炭化水素基部分の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜8が
更に好ましい。
酸素含有炭化水素化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルキルアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ(n−ブチル)エーテル等のエーテル類;フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が挙げられる。
アミノ化合物、置換アミノ化合物、窒素含有炭化水素化合物としては、例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ等のアルキルアミノ基を有する化合物;アニリン、ジフェニルアニリン等のアニリン類、N−メチル−N−フェニルアミノ基等のN−アルキル−N−アリールアミノ基を有する化合物;ピリジン、2,6−ルチジン、ピラゾリル、インドリル等の窒素含有複素環化合物等が挙げられる。
それらの中で、配位子Yとしては、ジエチルエーテル、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、アニリン、ジフェニルアニリン、ピリジン、2,6−ルチジン、ピラゾリル、インドリルが好ましく、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニリン、ピリジン、2,6−ルチジンが更に好ましく、ピリジン、2,6−ルチジンが特に好ましい。
nは配位子Yの数であり、通常1〜4の整数である。配位子Xの数(n)は、1または2が好ましく、1が更に好ましい。
本発明において、式(1)で表されるニッケル金属錯体として、Lが以下の式(a)で表されるものが好ましい。
Figure 0005257232
ここで、上記式(a)中、A〜Aは、それぞれ独立に、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有炭化水素基または窒素含有炭化水素基のいずれかである。好ましくは炭化水素基であり、その炭素数は、通常1〜20である。
炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のアルキル基;フェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル等のアリール基等が挙げられる。
ケイ素含有炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基としては、それぞれ、配位子Xとして例示した基と同じものが挙げられる。
それらの中でも、メチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基が好ましく、メチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が更に好ましい。
また、A〜Aは、二つの基同士が互いに結合して環を形成していてもよいが、AとAとで環を形成することはない。
Dは、炭素原子またはケイ素原子であり、それらの中で、炭素原子が好ましい。
jは、0〜2の整数であり、それらの中で、0又は1が好ましい。
Tは、炭素原子、窒素原子またはリン原子であり、それらの中で、窒素原子またはリン原子が好ましい。
Gは、酸素原子、置換基を有する窒素原子および置換基を有するリン原子よりなる群から選ばれる何れかの原子であって、Niとσ結合またはσ配位する原子である。具体的には、酸素原子、PR、NR、NR(ここで、R、RはC1〜C8の置換基を有していてもよいアルキル基を示す。)のいずれかである。これらの中で、NR、NR、酸素原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。なお、酸素原子、NRの場合はNiとσ結合し、PR、NRの場合はNiとσ配位する。
さらに、式(1)で表されるニッケル金属錯体として、以下の式(3)で表されるものがより好ましい。
Figure 0005257232
すなわち、式(3)で表される金属錯体は、式(1)において、Lが、配位する原子の組み合わせが窒素−酸素、配位形式がσ配位−σ結合であって、R、Ar及びArをもつ特定構造の二座配位子であり、XとYは、式(1)と同義であり、mとnが1である化合物である。
ここで、式(3)において、Rは炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有炭化水素基または窒素含有炭化水素基を示し、好ましくは炭化水素基であり、その炭素数は、通常1〜12、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8である。
炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のアルキル基;フェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル等のアリール基等が挙げられる。
ケイ素含有炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基としては、それぞれ、配位子Xとして例示した基と同じものが挙げられる。
それらの中で、メチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基が好ましく、メチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が更に好ましい。
また、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、通常はNiの配位子場に影響を与えるような芳香族炭化水素基である。(ここで有していてもよい置換基としてはハロゲン原子、酸素原子を有する置換基が好ましい。)具体的には、例えば次の基が挙げられる。
フェニル基;ペンタフルオロフェニル基;
2−、3−、4−メチルフェニル、2−、3−、4−エチルフェニル、2−、3−、4−i−プロピルフェニル、2−、3−、4−i−ブチルフェニル、2−、3−、4−t−ブチルフェニル、2−、3−、4−シクロヘキシルフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジメチルフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジエチルフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジ−i−プロピルフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジ−i−ブチルフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジ−t−ブチルフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジシクロヘキシルフェニル等のアルキルフェニル基;
2−、3−、4−ベンジルフェニル、2−、3−、4−ジフェニル、2−、3−、4−トリルフェニル、2−、3−、4−(ジメチルフェニル)フェニル、2−、3−、4−(1−ナフチル)フェニル、2−、3−、4−(2−ナフチル)フェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジベンジルフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−トリフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(トリル)フェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(ジメチルフェニル)フェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(1−ナフチル)フェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(2−ナフチル)フェニル等のアリールフェニル基;
2−、3−、4−メトキシフェニル、2−、3−、4−エトキシフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジメトキシフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジエトキシフェニル等のアルコキシフェニル基;
2−、3−、4−フェノキシフェニル、2−、3−、4−ナフトキシフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(フェノキシ)フェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(ナフトキシ)フェニル等のアリールオキシフェニル基;
2−、3−、4−(メトキシフェニル)フェニル、2−、3−、4−(メトキシナフチル)フェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(メトキシフェニル)フェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(メトキシナフチル)フェニル等の(アルコキシアリール)フェニル基;
2−、3−、4−(フリル)フェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(フリル)フェニル等のフリルフェニル基。
それらの中で、Ar及びArとして、好ましい基は、無置換あるいはオルト位に置換基を有している芳香族炭化水素基であり、具体的には次のとおりである。
フェニル基;ペンタフルオロフェニル基;
2−メチルフェニル、2−エチルフェニル、2−i−プロピルフェニル、2−i−ブチルフェニル、2−t−ブチルフェニル、2−シクロヘキシルフェニル等の2−アルキルフェニル基;
2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2,6−ジ−i−プロピルフェニル、2,6−ジ−i−ブチルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルフェニル、2,6−ジシクロヘキシルフェニル等の2,6−ジアルキルフェニル基;
2−ベンジルフェニル、2−ジフェニル、2−トリルフェニル、2−(ジメチルフェニル)フェニル、2−(1−ナフチル)フェニル、2−(2−ナフチル)フェニル等の2−アリールフェニル基;
2,6−ジベンジルフェニル、2,6−トリフェニル、2,6−ビス(トリル)フェニル、2,6−ビス(ジメチルフェニル)フェニル、2,6−ビス(1−ナフチル)フェニル、2,6−ビス(2−ナフチル)フェニル等の2,6−ジアリールフェニル基;
2−メトキシフェニル、2−エトキシフェニル等の2−アルコキシフェニル基;
2,6−ジメトキシフェニル、2,6−ジエトキシフェニル等の2、6−ジアルコキシフェニル基;
2−フェノキシフェニル、2−ナフトキシフェニル等の2−(アリールオキシ)フェニル基;
2−(メトキシフェニル)フェニル、2−(メトキシナフチル)フェニル等の2−(アルコキシアリール)フェニル基;
2,6−ビス(フェノキシ)フェニル、2,6−ビス(ナフトキシ)フェニル等の2,6−ジ(アリールオキシ)フェニル基;2,6−ビス(メトキシフェニル)フェニル、2,6−ビス(メトキシナフチル)フェニル等の2,6−ジ(アルコキシアリール)フェニル基;
2−(フリル)フェニル基、2,6−ビス(フリル)フェニル基。
それらの中で、Ar及びArとして更に好ましい基は次のとおりである。
フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−アルキルフェニル基、2,6−ジアルキルフェニル基、2−ベンジルフェニル基、2−ジフェニル基、2−(1−ナフチル)フェニル基、2−(2−ナフチル)フェニル基、2−アルコキシフェニル基、2、6−ジアルコキシフェニル基、2−(アリールオキシ)フェニル基、2−(フリル)フェニル基、2,6−ビス(フリル)フェニル基、
2−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−i−プロピルフェニル基、2−i−ブチルフェニル基、2−t−ブチルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、2−ベンジルフェニル基、2−ジフェニル基、2−(1−ナフチル)フェニル基、2−(2−ナフチル)フェニル基、
2−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、2−フェノキシフェニル基、2−ナフトキシフェニル基、2−(メトキシフェニル)フェニル基、2−(メトキシナフチル)フェニル基、2−(フリル)フェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジ−i−プロピルフェニル基、2,6−ジ−i−ブチルフェニル基、2,6−ジシクロヘキシルフェニル基、2,6−トリルフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、2,6−ジエトキシフェニル基、2,6−ビス(フェノキシ)フェニル基、2,6−ビス(メトキシフェニル)フェニル基、2,6−ビス(フリル)フェニル基。
それらの中で、Ar及びArとして、特に好ましい基は次のとおりである。
フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−メチルフェニル基、2−i−プロピルフェニル基、2−i−ブチルフェニル基、2−t−ブチルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、2−ベンジルフェニル基、2−ジフェニル基、2−(1−ナフチル)フェニル基、2−(2−ナフチル)フェニル基、2−メトキシフェニル基、2−フェノキシフェニル基、2−(メトキシフェニル)フェニル基、2−(フリル)フェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジ−i−プロピルフェニル基、2,6−ジ−i−ブチルフェニル基、2,6−ジシクロヘキシルフェニル基、2,6−トリフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、2,6−ビス(フェノキシ)フェニル基、2,6−ビス(メトキシフェニル)フェニル基、2,6−ビス(フリル)フェニル基。
次に、式(3)で表されるニッケル金属錯体に属する具体的な化合物を、表1〜6に例示する。
なお、表1〜6で用いられている略号の意味は次のとおりである。
において、Meはメチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基、Cyはシクロヘキシル基、Phはフェニル基を示す。
Ar及びArにおいて、Phはフェニル基、Cはペンタフルオロフェニル基、2−MePhは2−メチルフェニル基、2−iPrPhは2−イソプロピルフェニル基、2−iBuPhは2−イソブチルフェニル基、2−tBuPhは2−イソブチルフェニル基、2−CyPhは2−シクロヘキシルフェニル基、2−BnPhは2−ベンジルフェニル基、2−PhPhは2−ジフェニル基、2−(1−Naph)Phは2−(1−ナフチル)フェニル基、2−(2−Naph)Phは2−(2−ナフチル)フェニル基、2−MeOPhは2−メトキシフェニル基、2−PhOPhは2−フェノキシフェニル基、2−(2−MeOPh)Phは2−(2−メトキシフェニル)フェニル基、2−(2−Furyl)Phは2−(2−フリル)フェニル基、2,6−MePhは2,6−ジメチルフェニル基、2,6−iPrPhは2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,6−iBuPhは2,6−ジイソブチルフェニル基、2,6−CyPhは2,6−ジシクロヘキシルフェニル基、2,6−PhPhは2,6−トリフェニル基、2,6−(MeO)Phは2,6−ジメトキシフェニル基、2,6−(PhO)Phは2,6−ビス(フェノキシ)フェニル基、2,6−(2−MeOPh)Phは2,6−ビス(2−メトキシフェニル)フェニル基、2,6−(2−Furyl)Phは2,6−ビス(フリル)フェニル基を示す。
Xにおいて、Bnはベンジル基を示す。
Yにおいて、Pyはピリジン、Luは2,6−ルチジンを示す。
Figure 0005257232
Figure 0005257232
Figure 0005257232
Figure 0005257232
Figure 0005257232
Figure 0005257232
これらの化合物の中で、代表例として、Rがメチル基、ArとArが2,6−ジイソプロピルフェニル基、Xがベンジル基、Yが2,6−ルチジンである化合物(表4のNo.137)を次に示す。
Figure 0005257232
以上に詳述した式(1)で表される金属錯体は、それ自体既知の化合物であり、通常用いられる方法に準じて製造することができる。
例えば、式(3)で表される金属錯体は、例えばOrganometallics, 2007, 26, pp.5329に記載の方法に準じて製造することができる。
以下、式(1)で表される金属錯体の製造方法の具体例として、式(3)で表される金属錯体の製造方法について説明する。
式(3)で表される金属錯体は、下記式(6)で表されるイミノアミド配位子と金属水素化合物(水素化カリウム及び水素化ナトリウム)との反応で生成した金属塩を、目的とするニッケル金属錯体の前駆体と反応させることにより製造することができる。
Figure 0005257232

〔式(6)中、R、Ar、及びArは、前記式(3)と同義である。〕
ここで、ニッケル金属錯体の前駆体(以下これを単に「前駆体」ということがある)は、一般的なニッケルの有機又は無機の塩、或いは錯体の形を原料から合成できる。
それら原料としては、例えば、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、二塩化ジ(π-アリル)ジニッケル、二臭化ジ(π-アリル)ジニッケル、ビス(π-アリル)ニッケル、ビス(シクロオクタジエニル)ニッケル、ニッケルテトラカルボニル等のNi化合物が挙げられる。
それらの中で、塩化ニッケル、臭化ニッケル、二臭化ジ(π-アリル)ジニッケル、ビ
ス(π-アリル)ニッケル、ビス(シクロオクタジエニル)ニッケルが好ましく、二臭化
ジ(π-アリル)ジニッケル、ビス(π-アリル)ニッケル、ビス(シクロオクタジエニル)ニッケルが更に好ましい。
前駆体は、通常、上記Ni化合物と化合物X−R”とYとを混合することにより得られる。ここで、X及びYは、式(1)と同義である。
X−R”化合物は、ニッケル化合物に酸化的付加する化合物であり、R”は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはトリフラート等である。
X−R”としては、例えば、ヨウ化メチル、臭化メチル、クロロメチル、ヨウ化フェニ
ル、臭化フェニル、クロロフェニル、フェニルトリフラート、ベンジルヨウジド、ベンジルブロミド、ベンジルクロリドが挙げられる。
それらの中で、ヨウ化メチル、臭化メチル、ヨウ化フェニル、臭化フェニル、フェニルトリフラート、ベンジルヨウジド、ベンジルブロミド、ベンジルクロリドが好ましく、ヨウ化メチル、臭化メチル、ヨウ化フェニル、臭化フェニル、ベンジルヨウジド、ベンジルブロミド、ベンジルクロリドが更に好ましく、ベンジルヨウジド、ベンジルブロミド、ベンジルクロリドが特に好ましい。
上記Ni化合物と化合物X−R”とYの混合方法は特に制限されないが、通常X−R”とYとの混合物の溶液(無溶媒でもよい)をNi化合物の溶液(無溶媒でもよい)に添加すればよい。X−R”とNi化合物の割合(mol/mol)は、通常1当量以上、好ましくは1.01当量以上、より好ましくは1.1当量以上であり、通常5当量以下、好ましくは3当量以下、より好ましくは2当量以下である。
YとNi化合物の割合(mol/mol)は、通常2当量以上、好ましくは3当量以上、より好ましくは4当量以上であり、通常50当量以下、好ましくは40当量以下、より好ましくは30当量以下である。
用いる溶媒は特に制限されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;n−ブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン等の極性溶媒類等が挙げられる。
前駆体の原料化合物の濃度は特に限定されないが、反応液1Lに対して、通常100g以下、好ましくは50g以下、より好ましくは25g以下であり、通常0.0001g以上、好ましくは0.01g以上、より好ましくは1g以上である。
金属塩と前駆体の反応方法に特に制限はないが、前駆体の製造を行った反応液に引き続き金属塩を加えてもよいし、前駆体を製造する原料と金属塩をすべて混合させて反応させてもよいが、好ましくは前駆体の製造を行った反応液に金属塩を加える方法である。
前駆体の製造時および金属錯体の製造時(金属塩と前駆体を反応させる際)の反応温度、反応圧力および反応時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行えばよい。すなわち、反応温度は、通常−80℃以上、好ましくは−10℃以上、より好ましくは0℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは90℃以下である。また、反応圧力は、通常は常圧であり、微加圧・微減圧になってもよい。反応時間は、通常1分以上、好ましくは2分以上、より好ましくは3分以上であり、通常100時間以下、好ましくは70時間以下、より好ましくは50時間以下である。
かくして製造される金属錯体は、後述するとおり、重合反応系に添加し、反応触媒として用いることができる。
<式(2)で表される化合物〔成分(2)〕>
本発明の方法は、下記式(2):
Ar−OR (2)
で表される化合物を構成成分として含むものである。
ここで、上記式(2)中、Arは、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。具体的には、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフ
ェニル基、i−プロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、s−ブチルフェニル基、t−アミルフェニル基、クミルフェニル基、ビフェニル基、メトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、s−ブチル−t−ブチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ジ−t−アミルフェニル基、ジクミルフェニル基、メチル−t−ブチルフェニル基、ジ−t−ブチルメチルフェニル基、フェノール基、ジ−t−アミルフェノール基、ジ−t−ブチルフェノール基等が挙げられる。
Rは、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基である。具体的には、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、トリル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
成分(2)は、好ましくは重合に用いるエチレン性極性モノマーの重合禁止剤としての性質を有するものであり、より好ましくはさらに成分(1)の触媒活性を妨げないものである。
成分(2)としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール(ハイドロキノンモノメチルエーテル)等のハイドロキノン系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、o−i−プロピルフェノール、p−s−ブチルフェノール、o−t−ブチルフェノール、o−s−ブチルフェノール、p−t−アミルフェノール、o−t−アミルフェノール、p−クミルフェノール、2−s−ブチル−4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−アミルフェノール、2,4−ジクミルフェノール、4,4−ビフェノール、2,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,6−トリメチルフェノール、6−t−ブチル−o−クレゾール等のフェノール系等が好ましい。このうちハイドロキノン系化合物が反応性と製造面で安価な面でより好ましい。
成分(1)の触媒活性に悪影響を及ばさなければ、成分(2)は1種類だけを使用しても、2種以上を同時に使用しても構わない。
また、成分(2)は、それ自体既知の通常用いられる重合禁止剤であり、市販品を購入することができるし、公知に方法によって製造することもできる。
<エチレンとエチレン性極性モノマーを含むオレフィン性モノマー>
本発明の方法において、エチレンとエチレン性極性モノマーを含むオレフィン性モノマーが、原料化合物として用いられる。反応原料として用いるエチレンとエチレン性極性モノマーとの比率は、目的とする共重合体の性質に応じて適宜変更すればよいが、通常、エチレン2モルに対してエチレン性極性モノマー1モル以下が適当である。
本発明の方法に用いられるエチレン性極性モノマーは、好ましくは下記式(4)で表されるものである。
Figure 0005257232
ここで、上記式(4)中、Zは水素原子又はメチル基であるが、水素原子が好ましい。WはCOOR’基、シアノ基、アセトキシ基又はOR’基であり、R’は水素原子又は炭化水素基である。
R’における炭化水素基の炭素数は、通常1〜20であり、1〜10が好ましく、1〜5が最も好ましい。
炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、s−ペンチル基、t−アミル基が挙げられる。これらの中で、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基がさらに好ましい。
エチレン性極性モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル(n−プロピル)エーテル、ビニル(t−ブチル)エーテル等が挙げられる。
これらの中で、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ビニルアセテート、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル(n−プロピル)エーテル、ビニル(t−ブチル)エーテルが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ビニルアセテート、ビニルメチルエーテルが更に好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ビニルアセテートが特に好ましい。
これらのエチレン性極性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<エチレン系共重合体の製造方法>
本発明のエチレン系共重合体の製造方法は、上記のとおり、前記式(1)で表されるニッケル金属錯体〔成分(1)〕と前記式(2)で表される化合物〔成分(2)〕の存在下で、エチレンとエチレン性極性モノマーを含むオレフィン性モノマーを重合させることを特徴とするものである。
本発明の方法において、重合反応様式に特に制限はなく、それ自体既知の重合方法、例えば、回分式(バッチ)重合、連続重合のいずれの方式によって行うことができる。
重合反応には、溶媒を用いても用いなくてもよい。溶媒の具体例としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の炭化水素類;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;n−ブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒類等が挙げられる。これらの中で、炭化水素類が好ましい。また、これらの混合物を溶媒として使用してもよい。
成分(1)の重合体製造用触媒は、溶媒を使用する溶液(懸濁)重合に適用される他、実質的に溶媒を使用しない液相無溶媒重合、気相重合にも適用される。
重合反応系中の触媒〔成分(1)〕の濃度は特に限定されないが、例えば、反応方式が溶液(懸濁)重合の場合、反応液1Lに対して、通常100g以下、好ましくは50g以下、特に好ましくは25g以下であり、通常0.0001mg以上、好ましくは0.0005mg以上、特に好ましくは0.001mg以上が最も好ましい。
成分(2)は、成分(1)の触媒作用を阻害しない限り、重合系への添加量は制限されない。ただし、製造される共重合体の物性等に悪影響を及ぼす量までは添加しない。
成分(1)と成分(2)の比(重量/重量)は、通常1,000/1以下、好ましくは500/1以下、特に好ましくは100/1以下であり、通常1/100,000以上、好ましくは1/50,000以上、特に好ましくは1/10,000以上である。
成分(2)の添加方法は特に制限はないが、通常、成分(2)はエチレン性極性モノマーに含まれているので、エチレン性極性モノマーを重合系に添加すると同時に添加するのが好ましい。また、成分(2)のみ、又は重合用溶媒に成分(2)を溶かした後、共重合反応系に加えてもよい。
前記各触媒成分の混合はエチレンの重合やエチレン以外のオレフィン性モノマーとの共重合に使用する反応器中で、これらのモノマーの存在下または非存在下で行ってもよいし、該反応器とは別の容器中で行ってもよい。
重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じてさまざまな供給法をとることができる。たとえばバッチ重合の場合、あらかじめ所定量のモノマーを重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を重合反応器に連続的に、または間歇的に供給し、重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
共重合体の組成の制御に関しては、複数のモノマーを反応器に供給し、その供給比率を変えることによって制御する方法を一般に用いることができる。その他、触媒の構造の違いによるモノマー反応性比の違いを利用して共重合組成を制御する方法や、モノマー反応性比の重合温度依存性を利用して共重合組成を制御する方法が挙げられる。
重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができる。すなわち、重合温度を制御して分子量を制御する方法、モノマー濃度を制御して分子量を制御する方法、連鎖移動剤を使用して分子量を制御する方法、遷移金属錯体中のリガンド構造の制御により分子量を制御する等が挙げられる。連鎖移動剤を使用する場合には、従来公知の連鎖移動剤を用いることができる。例えば、水素、メタルアルキルなどを使用することができる。
重合温度、重合圧力及び重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。
すなわち、重合温度は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、通常150℃以下、好ましくは120℃以下である。また、重合圧力は、通常0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上であり、通常100MPa以下、好ましくは20MPa以下、特に好ましくは7MPa以下である。重合時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.2時間以上、特に好ましくは0.3時間以上であり、通常30時間以下、好ましくは25時間以下、より好ましくは20時間以下、特に好ましくは15時間以下である。
重合反応終了後の後処理方法には特に制限はないが、通常は未反応モノマーや溶媒を使用した際の溶媒を、生成共重合体から分離する。分離した未反応モノマーや溶媒リサイクルして使用してもよく、リサイクルの際、これらのモノマーや媒体は、精製して再使用してもよいし、精製せずに再使用してもよい。生成共重合体と未反応モノマーおよび溶媒との分離には、従来公知の方法が使用できる。例えば、濾過、遠心分離、溶媒抽出、貧溶媒を使用した再沈などの方法が使用できる。好ましくは濾過による方法である。
<共重合体の構造>
本発明の方法で得られるエチレン系共重合体は、下記式(5)で表される構造をもつものである。
Figure 0005257232
式(5)中、ZおよびWは式(4)中と同義である。
Eは、エチレンから誘導される分岐を有していてもよいエチレン鎖である。
lは、共重合体中に占めるエチレン性極性モノマーに由来する基の含量を示す数値(mol%)であり、この含量は、通常0.01mol%以上、好ましくは0.05mol%以上、特に好ましくは0.1mol%以上であり、通常50mol%以下、好ましくは40mol%以下、より好ましくは30mol%以下、特に好ましくは15mol%以下である。
本発明の共重合体は、通常、ランダム共重合体であって、エチレン鎖の分岐の少ない実質的に直線状の共重合体である。
エチレン鎖の分岐数は、共重合体主鎖1,000炭素辺り、通常50個以下、好ましくは40個以下、より好ましくは30個以下である。又、分岐鎖の炭素数は通常5以下、好ましくは3以下が好ましく、特に好ましくは2以下である。
本発明のエチレン系共重合体は、通常、その末端構造に、反応に用いた触媒が有するNiとσ結合を形成する配位子Xを置換基として有する。モノマーがNiと配位子Xの間に挿入されて重合反応が進行していき、ある程度挿入反応が起こった後、ポリマー鎖停止反応(例えばβ水素脱離反応やモノマー交換反応)により、中心金属であるニッケルとポリマー鎖の結合が切れる。その結果、重合反応により最初に成長したポリマー鎖は、配位子Xを置換基として有する重合体となる。重合反応のリビング性が高いほどXを含む割合が大きくなり、リビング性が低下し、ポリマー鎖交換反応が頻繁に起こるほど、Xを含む割合は低下する。
共重合体の末端置換基Xは、前述の通りの置換基であるが、得られる共重合体中の置換基としては、アリール基が好ましい。アリール基を末端に有することで、リチウム試薬、ラジカル反応試薬、アニオン及びカチオン試薬等の種々の反応剤を用いることにより様々な別の置換基に変換することが可能である。重合反応性とその後の置換基への変換の容易さから、末端置換基Xとしては、フェニル基、ベンジル基が好ましく、ベンジル基が特に好ましい。
共重合体の末端構造の片方には、置換基Xを含む共重合体鎖の数が、共重合体主鎖1,000本当たり、置換基Xを通常5本以上含むものが好ましく、10本以上が好ましい。
また通常300本以下であり、100本以下が好ましい。
共重合体の分岐含量及び末端構造は、13C-NMR及び共重合体の融点温度より決定さ
れる。
生成する共重合体の性質は、エチレン性極性モノマーの種類やその含量や重合条件等に異なるので一概には規定できない。
共重合体の融点は、通常140℃以下、好ましくは135℃以下、より好ましくは130℃以下であり、通常60℃以上、好ましくは65℃以上、より好ましくは70℃以上である。重量平均分子量(Mw)は、通常1,000以上、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上であり、通常2,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下である。
本発明のエチレン系共重合体は、短鎖分岐を含む量が比較的少量であるため通常粉末状であり、また融点を有する。
本発明のエチレン系共重合体は、極性基にもとづく効果により、良好な塗装性、印刷性、帯電防止性、無機フィラー分散性、他樹脂との接着性、他樹脂との相溶化能等を発現する。こうした性質を利用して、諸種の用途、例えば、フィルム、シート、接着性樹脂、バインダー、相溶化剤、ワックス等に使用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の諸例において、触媒合成工程および重合工程は、全て精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は、モレキュラーシーブ(MS−4A)で脱水した後に精製窒素でバブリングして脱気して使用した。また、得られた重合体の物性を評価するために、分子量、融点および13C−NMRスペクトルを以下(1)〜(3)に記載の条件で測定した。さらに、錯体合成(合成例1〜3)は、Organometallics 2007, 26, 5339に記載の方法に準じて行った。
(1)分子量の測定:
GPCにより得られた重量平均分子量を測定した。GPC装置は、Waters社製「GPCV 2000型」を使用した。溶媒はオルトジクロルベンゼンを使用し、測定温度は135℃とした。
(2)融点の測定:
DSC(PerkinElmer社製「DiamondDSC」)を使用し、20℃で1分等温、10℃/分で20〜210℃までの昇温、210℃で5分等温、10℃/分で210〜−20℃まで降温、−20℃で5分等温を後、10℃/分で−20〜210℃までの昇温時の測定により求めた。
(3)13C−NMRスペクトルの測定:
試料40〜200mgを、5mmφのNMR用サンプル管中で、約0.7mlのテトラクロロエタン−dを用いた。120℃でプロトン完全デカップリング法により測定を行う。測定条件は、フリップアングル90°、パルス間隔5T1以上(T1は、メチル基のスピン−格子緩和時間のうち最長の値)とする。プロピレン重合体において、メチレン基およびメチン基のスピン−格子緩和時間はメチル基のそれよりも短いので、この測定条件では、すべての炭素の磁化の回復は99%以上である。帰属はChem. Commun., 2002, 744を参考にし、以下の部分構造のケミカルシフトのピークの積分値から末端置換基の含量および分岐数を求めた。
Figure 0005257232
合成例1:(N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−(2,6−ジイソプロピル
フェニルイミノ)プロパンアミデート−κN,O)(η−ベンジル)(2,6−ルチ
ジン)ニッケルの合成
(1)配位子のナトリウム塩の合成
N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−(2,6−ジイソプロピルフェニルイ
ミノ)プロパンアミド(7.18g、17.8mmol)と水素化ナトリウム(0.63g、26.3mmol)のTHF(86mL)懸濁液を40℃で1時間攪拌した後、室温で3時間攪拌を行った。
(2)錯体の合成
Ni(COD)(4.87g、17.7mmol)のTHF(220mL)溶液に、ベンジルクロリド(2.2mL、19.1mmol)と2,6−ルチジン(7.0mL、
53.1mmol)のTHF(20mL)溶液を室温で加えた。室温で5分攪拌後、混合物に(1)で合成した配位子のナトリウム塩のTHF溶液((1)の濾液)を室温で滴下し、同温度で終夜攪拌した。THFを完全に溜去した後、副成した塩を取り除くため目的錯体をトルエンで抽出し、溶媒溜去し、粗錯体をヘキサン洗浄(20mLx3)した。下に記す精製工程を3回繰り返すことにより、オレンジ粉末の表題錯体(3.83g、32%収率)を得た。精製工程:トルエン/ヘキサン(30/30mL)抽出を2回、溶媒溜去、ヘキサン洗浄(30mLx3)。
合成例2:(N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−(2,6−ジイソプロピル
フェニルイミノ)4−メチルペンタンアミデート−κN,O)(η−ベンジル)(2,6−ルチジン)ニッケルの合成
(1)配位子のナトリウム塩の合成
N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−(2,6−ジイソプロピルフェニルイ
ミノ)4−メチルペンタンアミド(2.17g、4.84mmol)と水素化ナトリウム(0.19g、7.92mmol)のTHF(70mL)懸濁液を40℃で1時間攪拌した後、室温で3時間攪拌を行った。
(2)錯体の合成
Ni(COD)(1.33g、4.83mmol)のTHF(60mL)溶液に、ベンジルクロリド(0.60mL、5.2mmol)と2,6−ルチジン(1.9mL、1
4.0mmol)のTHF(20mL)溶液を室温で加えた。室温で5分攪拌後、混合物に(1)で合成した配位子のナトリウム塩のTHF溶液((1)の濾液)を室温で滴下し、同温度で終夜攪拌した。THFを完全に溜去した後、副成した塩を取り除くため目的錯体をトルエンで抽出し、溶媒溜去し、粗錯体をヘキサン洗浄(20mLx3)した。下に記す精製工程を行うことにより、オレンジ粉末の表題錯体(0.99g、29%収率)を得た。精製工程:トルエン/ヘキサン(30/100mL)抽出、溶媒溜去、ヘキサン洗浄(7mLx3)、トルエン/ヘキサン(15/50mL)抽出、溶媒溜去、ヘキサン洗浄(10mLx3)。
合成例3:(N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−(2,6−ジイソプロピル
フェニルイミノ)2−フェニルエタンアミデート−κN,O)(η−ベンジル)(2,6−ルチジン)ニッケルの合成
(1)配位子のナトリウム塩の合成
N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−(2,6−ジイソプロピルフェニルイ
ミノ)2−フェニルエタンアミド(2.50g、5.33mmol)と水素化ナトリウム(0.15g、6.25mmol)のTHF(70mL)懸濁液を40℃で1時間攪拌した後、室温で3時間攪拌を行った。
(2)錯体の合成
Ni(COD)(1.71g、6.22mmol)のTHF(80mL)溶液に、ベンジルクロリド(0.77mL、6.7mmol)と2,6−ルチジン(2.5mL、1
9mmol)のTHF(10mL)溶液を室温で加えた。室温で5分攪拌後、混合物に(1)で合成した配位子のナトリウム塩のTHF溶液((1)の濾液)を室温で滴下し、同温度で終夜攪拌した。THFを完全に溜去した後、副成した塩を取り除くため目的錯体をトルエンで抽出し、溶媒溜去し、粗錯体をヘキサン洗浄(10mLx3)した。下に記す精製工程を行うことにより、オレンジ粉末の表題錯体(1.91g、82%収率)を得た。精製工程:トルエン/ヘキサン(50/50mL)抽出、溶媒溜去、ヘキサン洗浄(10mLx3)、トルエン/ヘキサン(25/75mL)抽出、溶媒溜去、ヘキサン洗浄(10mLx3)。
(実施例1)
内容積1リッターの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン(480mL)、脱気したメチルアクリレート(1.0mL、ハイドロキノンモノメチルエーテル30ppm含有)を入れ、合成例1の錯体(0.096g、0.14mmol)のトルエン(6.0mL)溶液をオートクレーブの破裂板付触媒フィーダーに入れた。40℃で錯体溶液を添加し、共重合を開始し、同温度で1時間攪拌を継続した。この間、反応器の内圧が3MPaに保たれるように、エチレンを連続的に供給した。重合はエチレンをパージすることで終了した。重合後、重合物を濾過し、濾過物をメタノール/1N塩酸で洗浄(3回)+アセトン洗浄(3回)行った後、真空乾燥機で乾燥することにより、白色のエチレン/メチルアクリレート共重合体(2.83g)を得た。
この共重合体中のメチルアクリレートに由来する基の含量は0.7mol%、メチル分岐数は6.7個/1,000C、エチル分岐数は0.5個/1,000炭素であり、メチル分岐およびエチル分岐以外の分岐は無く、フェニル基は0.62個/1,000炭素、末端の84%がフェニル基であった。
(実施例2)
合成例2の錯体(0.10g、0.14mmol)を用いた以外、実施例1と同様に行い、白色の共重合体(1.73g)を得た。
(実施例3)
合成例3の錯体(0.10g、0.14mmol)を用いた以外、実施例1と同様に行い、白色の共重合体(2.04g)を得た。
(実施例4)
脱気メチルアクリレート(ハイドロキノンモノメチルエーテル30ppm含有)を4.0mLにした以外、実施例1と同様に行い、白色の共重合体(0.93g)を得た。
(実施例5)
ハイドロキノンモノメチルエーテルを添加した以外、実施例4と同様に行い、白色の共重合体(0.88g)を得た。
(比較例1)
(1)メチルアクリレートの処理
メチルアクリレートを、Aldrich社製Inhibitor removers(ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル除去用)を充填したカラムで処理した後、処理したメチルアクリレートを脱気した。
(2)重合
(1)で処理したメチルアクリレート(MA)を1mL使用した以外、実施例1と同様に行い、白色の共重合体(1.55g)を得た。
この共重合体中のメチルアクリレートに由来する基の含量は0.7mol%、メチル分岐数は6.5個/1,000炭素、エチル分岐数は0.4個/1,000炭素であり、メチル分岐およびエチル分岐以外の分岐はなかった。
(比較例2)
比較例1の(1)で処理したメチルアクリレートを1mL使用した以外、実施例2と同様に行い、白色の共重合体(1.28g)を得た。
(比較例3)
比較例1の(1)で処理したメチルアクリレートを1mL使用した以外、実施例3と同
様に行い、白色の共重合体(1.23g)を得た。
実施例1〜比較例3までの結果を表1に示す。
Figure 0005257232
Figure 0005257232

Claims (6)

  1. 下記式(3)で表されるニッケル金属錯体および下記式(2)で表される化合物の存在下で、下記式(3)で表されるニッケル金属錯体と下記式(2)で表される化合物のモル比が、1,000/1〜1/100,000(mol/mol)である、エチレンとエチレン性極性モノマーを含むオレフィン性モノマーを重合させることを特徴とするエチレン系共重合体の製造方法。
    Figure 0005257232
    〔式(3)中、R は炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有炭化水素基または窒素含有炭化水素基を示し、Ar 及びAr は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を示し、XはNiとσ結合を形成する配位子を示し、Yはルイス塩基であって、Niに孤立電子対で配位する配位子を示す。〕
    Ar−OR (2)
    〔式(2)中、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。〕
  2. 重合に用いるエチレン性極性モノマーが、前記式(2)で表される化合物を含むものである、請求項1に記載のエチレン系共重合体の製造方法。
  3. エチレン性極性モノマーが、下記式(4)で表される化合物である、請求項1または2に記載のエチレン系共重合体の製造方法。
    Figure 0005257232
    〔式(4)中、Zは水素原子またはメチル基を示し、Wは−COOR’基、−CN基、−OAc基またはOR’基(ここで、R’は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)を示す。〕
  4. エチレン系共重合体が、下記式(5)で表されるポリマー鎖を有する共重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエチレン系共重合体の製造方法。
    Figure 0005257232
    〔式(5)中、Eはエチレンから誘導される分岐を有していてもよいエチレン鎖を示し、Zは水素原子またはメチル基を示し、Wは−COOR’基、−CN基、−OAc基またはOR’基(ここで、R’は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)であり、lは0.0001〜0.5の数を示す。〕
  5. 前記式(5)で表されるポリマー鎖において、エチレン鎖の分岐数が、ポリマー鎖1,000炭素当り50以下である、請求項に記載のエチレン系共重合体の製造方法。
  6. 前記式(5)で表されるポリマー鎖が、その末端に配位子Xに由来する基(ここで、Xは前記式(3)と同義である。)を有するものを、ポリマー鎖1,000本当り5本以上含むものである、請求項4または5に記載のエチレン系共重合体の製造方法。
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