JP5255818B2 - シミュレーション方法 - Google Patents
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Description
例えば、種々の条件下でのプロセスの挙動を経験に基づいて予測して処理水の水質を一定以上に維持すべく、水処理施設の運転条件の設定を行なう手法は、種々の条件下でのプロセスの挙動を定量的に予測することが困難であるため、水処理が非効率的であり、エネルギーの浪費、コストの増加をもたらすおそれがあることから改良が求められている。
このようなことから、経験に基づく種々の条件下でのプロセスの挙動の予測に代えて、細菌群の増殖や死滅などの反応を計算するシミュレーションが導入され、より定量的な予測を行なうことが試みられている(例えば、特許文献1〜4参照)。
そして、前記特許文献2に記載の発明は、被処理水の水質と処理水質に基づき、反応速度論定数をキャリブレーションするものである。
したがって、頻繁にキャリブレーションをやり直さなければ処理水質の予測精度を低下させてしまうこととなる。
すなわち、従来のシミュレーション方法やシミュレーション装置においては、予測精度の低下を抑制しつつキャリブレーションの手間を削減することが困難であるという問題を有している。
また、このようなシミュレーションによって処理水質の予測を実施しつつ生物処理工程を実施する生物処理方法や生物処理装置においては、予測精度の低下を防止することが困難なことから、実際の処理水質を確認する作業などの手間を削減することが困難である。
また、本発明は、要する手間を削減し得る生物処理方法や生物処理装置の提供を課題としている。
すなわち、キャリブレーションの手間を削減させ得るシミュレーション方法ならびにシミュレーション装置を提供し得る。
図中1は、排水を一連の処理工程に導入するための第一連絡管であり、2は、該第一連絡管1により排水(被処理水)が導入される硝化槽を表している。
また、ここでは、詳述しないがこの図1に示す生物処理装置には、前記沈殿槽8で沈殿分離された汚泥の一部を系外に余剰汚泥として排出するための連絡管(以下「汚泥引抜き配管」ともいう)ならびに、前記沈殿槽8で沈殿分離された汚泥の一部を硝化槽2に返送するための連絡管(以下「返送汚泥配管」ともいう)とが備えられている。
そして、前記硝化槽2には、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌などを含む活性汚泥が収容されており、前記被処理水の導入によって硝化槽2に導入される処理対象物質であるアンモニア性窒素は、前記活性汚泥と前記被処理水とにより硝化槽2に形成されてなる混合相中において細菌によって分解(酸化)される。
このシミュレーション装置には、汚泥に含まれている細菌による硝化反応の最大反応速度の値がパラメータに用いられており、しかも、この最大反応速度の値は、この硝化槽2においてアンモニア酸化細菌に負荷されるアンモニア性窒素の量と前記塩化物イオン濃度との双方に対して関数関係を有する状態でパラメータに用いられている。
このシミュレーション装置によるシミュレーション方法については、後段において詳述する。
そして、この細菌によって亜硝酸性窒素や硝酸性窒素などを窒素ガスに還元し、該窒素ガスを大気中に放散することで被処理水から窒素成分が除去される。
このシミュレーション装置には、汚泥に含まれている細菌による脱窒反応の最大反応速度の値がパラメータに用いられており、しかも、この最大反応速度の値は、この脱窒槽4において細菌に負荷される処理対象物質の量と前記塩化物イオン濃度との双方に関数関係を有する状態でパラメータに用いられている。
なかでも、モデルの拡張が容易であるという観点から、ASM3に基づいて改良することが好ましい。
なお、この“被処理水に塩化物イオンが含有されていない”との用語は、本明細書中においては、“塩化物イオンが全く含有されていないか含有されていたとしても微量で無視できる程度の状態”を意図して用いている。
通常、被処理水中の塩化物イオン濃度が500mg/l以下であれば、“被処理水に塩化物イオンが含有されていない状態”とみなすことができる。
なお、最大反応速度の値については、後段において説明する測定方法によって定め得る。
下記式(4)
したがって、このA(x)とB(x)との間を通る関数g(x)を適宜設定して、生物処理工程において細菌一個あたりに一日に負荷される処理対象物質の量(L値)との間に下記式(5)
すなわち、硝化、脱窒処理において細菌一個あたりに一日に負荷される処理対象物質の量(L)が実質上とり得る範囲において、B(L)>g(L)>A(L)の関係となるようにして上記式(5)となる関数関係を設定することが好ましい。
また、例えば、亜硝酸酸化細菌による亜硝酸酸化の工程(硝化処理工程)においては、通常、1000〜60000(fg/copy/day)である。
また、例えば、硝酸還元細菌による硝酸還元の工程(脱窒処理工程)においては、通常、5〜80(fg/copy/day)である。
さらに、例えば、亜硝酸還元細菌による亜硝酸還元の工程(脱窒処理工程)においては、通常、5〜120(fg/copy/day)である。
なお、この“Lの値の増大とともにV0の値を増大させる関数”としては、横軸にLの値、縦軸にV0の値をとってこの関数をグラフ化したときに、全体が右上がりの状態になっている状態であれば、局所的にLの値の増大によってV0の値が低下する場合を含んでいてもよい。
そして、一般的な生物処理においてシミュレーション結果を実際の処理水質により近似させ得る点においてこの関数g(x)としては、下記一般式(6)
この関数を設定すべく、まずは、塩化物イオンを含む被処理水が流入された場合の影響についての調査を実施する。
この塩化物イオンの影響については、上記と同様にして、生物処理工程に導入される被処理水の塩化物イオン濃度の値:DCL(mg/l)が既知の場合の最大反応速度:V(fg/copy/h)を求め、上記において求めた塩化物イオンが含有されていない状態での最大反応速度の値(V0)とを比較することにより求めることができる。
ここで、V0については、上記式(5)にて処理対象物質の量:L(fg/copy/day)を変数とする関数g(x)の計算結果により与えられていることから、最大反応速度の値は、細菌1個あたりに一日に負荷される処理対象物質の量ならびに塩化物イオン濃度の双方との間に関数関係を有する状態で定義され、下記式(8)
次いで、硝化、脱窒の各生物処理工程におけるシミュレーション装置ならびにシミュレーション方法について、より詳しく説明する。
前記硝化槽2においては、主として、アンモニア性窒素がアンモニア酸化細菌によって亜硝酸性窒素に分解されるアンモニア酸化と、該アンモニア酸化によって形成された亜硝酸性窒素の一部又は全部が亜硝酸酸化細菌によって硝酸性窒素に酸化される亜硝酸酸化との二つの工程が実施されることから、それぞれについてパラメータを設定する。
硝化槽2における、アンモニア性窒素の酸化反応は、例えば、従来のモデルでは、下記式(9)のようにして与えられてきた。
μNH4:最大比増殖速度(1/day)
YNH4:増殖収率(g−CODcr/g NH4−N)
SO2:溶存酸素濃度(g O2/m3)
SNH4:溶解性のアンモニア濃度(g NH4−N/m3)
SALK:アルカリ度(mole HCO3/m3)
KO2:溶存酸素飽和係数(g O2/m3)
KNH4:アンモニア飽和係数(g NH4−N/m3)
KALK:アルカリ度飽和係数(mole HCO3/m3)
XNH4:硝化槽内のアンモニア酸化細菌濃度(g−CODcr/m3)
また、被処理水中の塩化物イオン濃度(DCL)などの因子については、全く検討されていない状態であった。
DCL:硝化工程に流入される被処理水中の塩化物イオン濃度(mg/l)
LAOB:細菌一個あたりに一日に負荷されるアンモニア性窒素量(fg NH4−N/copy/day)
SO2:溶存酸素濃度(g O2/m3)
SNH4:溶解性のアンモニア濃度(g NH4−N/m3)
SALK:アルカリ度(mole HCO3/m3)
KO2:溶存酸素飽和係数(g O2/m3)
KNH4:アンモニア飽和係数(g NH4−N/m3)
KALK:アルカリ度飽和係数(mole HCO3/m3)
XNH4:硝化槽内のアンモニア酸化細菌濃度(copies/m3)
なお、細菌数(copy)に代えて、生物量(CODcr)をシミュレーションに採用することが可能である点については先に述べたとおりである。
とし、前記関数BAOB(x)を下記式(14)
VAOB:アンモニア酸化細菌による最大反応速度(fg/copy/h)
DCL:硝化処理工程に導入される被処理水中の塩化物イオン濃度(mg/l)
LAOB:アンモニア酸化細菌一個あたりに一日に負荷されるアンモニア性窒素量(fg NH4−N/copy/day)
により定義付けてシミュレーション装置のパラメータとして用いることができる。
μNO2:最大比増殖速度(1/day)
YNO2:増殖収率(g−CODcr/g NO2−N)
SO2:溶存酸素濃度(g O2/m3)
SNO2:溶解性の亜硝酸濃度(g NO2−N/m3)
SALK:アルカリ度(mole HCO3/m3)
KO2:溶存酸素飽和係数(g O2/m3)
KNO2:亜硝酸飽和係数(g NO2−N/m3)
KALK:アルカリ度飽和係数(mole HCO3/m3)
XNO2:硝化槽内の亜硝酸酸化細菌濃度(g−CODcr/m3)
また、被処理水中の塩化物イオン濃度(DCL)などの因子については、全く検討されていない状態であった。
DCL:硝化工程に流入される被処理水中の塩化物イオン濃度(mg/l)
LNOB:細菌一個あたりに一日に負荷される亜硝酸性窒素量(g NO2−N/copy/day)
SO2:溶存酸素濃度(g O2/m3)
SNO2:溶解性の亜硝酸濃度(g NO2−N/m3)
SALK:アルカリ度(mole HCO3/m3)
KO2:溶存酸素飽和係数(g O2/m3)
KNO2:亜硝酸飽和係数(g NO2−N/m3)
KALK:アルカリ度飽和係数(mole HCO3/m3)
XNO2:硝化槽内の亜硝酸酸化細菌濃度(copies/m3)
とし、前記関数BNOB(x)を下記式(25)
として、このANOB(x)とBNOB(x)との間を通って、そして、細菌一個あたりに一日に負荷される亜硝酸性窒素量を変数とする関数によってこの亜硝酸酸化細菌による亜硝酸性窒素の酸化反応の最大反応速度を定義することにより、シミュレーションの予測精度をいっそう向上させ得る。
VNOB:亜硝酸酸化細菌による最大反応速度(fg/copy/h)
DCL:硝化処理工程に導入される被処理水中の塩化物イオン濃度(mg/l)
LNOB:亜硝酸酸化細菌1個あたりに一日に負荷される亜硝酸性窒素量(fg NO2−N/copy/day)
により定義付けてシミュレーションのパラメータとして用いることができる。
(硝酸還元)
前記脱窒槽4における、硝酸還元細菌による硝酸性窒素の還元反応についても、上記と同様にその還元反応の最大反応速度:VNARB(fg/copy/h)を下記式(31)
VNARB:硝酸還元細菌による最大反応速度(fg/copy/h)
DCL:脱窒処理工程に導入される被処理水中の塩化物イオン濃度(mg/l)
LNARB:硝酸還元細菌一個あたりに一日に負荷される硝酸性窒素量(fg NO3−N/copy/day)
に記載のごとく塩化物イオン濃度と関数関係を有し、且つ、硝酸還元細菌一個あたりに一日に負荷される硝酸性窒素量と関数関係を有する状態でシミュレーションに用いる。
とし、前記関数BNARB(x)を下記式(35)
として、このANARB(x)とBNARB(x)との間を通って、そして、細菌一個あたりに一日に負荷される硝酸性窒素を変数とする関数によってこの硝酸還元細菌による硝酸性窒素の還元反応の最大反応速度を定義することにより、シミュレーションの予測精度をいっそう向上させ得る。
VNARB:硝酸還元細菌による最大反応速度(fg/copy/h)
DCL:脱窒処理工程に導入される被処理水中の塩化物イオン濃度(mg/l)
LNARB:硝酸還元細菌一個あたりに一日に負荷される硝酸性窒素量(fg NO3−N/copy/day)
により定義付けてシミュレーションのパラメータとして用いることができる。
前記脱窒槽4における、亜硝酸還元細菌による亜硝酸性窒素の還元反応においては、その還元反応の最大反応速度:VNIRB(fg/copy/h)を下記式(41)
VNIRB:亜硝酸還元細菌による最大反応速度(fg/copy/h)
DCL:脱窒処理工程に導入される被処理水中の塩化物イオン濃度(mg/l)
LNIRB:亜硝酸還元細菌一個あたりに一日に負荷される亜硝酸性窒素量(fg NO2−N/copy/day)
に記載のごとく塩化物イオン濃度と関数関係を有し、且つ、亜硝酸還元細菌一個あたりに一日に負荷される亜硝酸性窒素量と関数関係を有する状態でシミュレーションに用いる。
とし、前記関数BNIRB(x)を下記式(45)
として、このANIRB(x)とBNIRB(x)との間を通って、そして、細菌一個あたりに一日に負荷される亜硝酸性窒素を変数とする関数によってこの亜硝酸還元細菌による亜硝酸性窒素の還元反応の最大反応速度を定義することにより、シミュレーションの予測精度をいっそう向上させ得る。
VNIRB:亜硝酸還元細菌による最大反応速度(fg/copy/h)
DCL:脱窒処理工程に導入される被処理水中の塩化物イオン濃度(mg/l)
LNIRB:亜硝酸還元細菌一個あたりに一日に負荷される亜硝酸性窒素量(fg NO2−N/copy/day)
により定義付けてシミュレーションのパラメータとして用いることができる。
(アンモニア酸化速度)
硝化槽の活性汚泥(硝化汚泥)中に含まれる細菌によるアンモニア酸化速度の測定(アンモニア酸化速度試験)は、以下のように行なう。
一方、硝化汚泥中に含まれる細菌による亜硝酸酸化速度の測定(亜硝酸酸化速度試験)は、以下のように行なう。
脱窒槽の活性汚泥(脱窒汚泥)中に含まれる細菌による硝酸還元速度の測定(硝酸還元速度試験)は、以下のように測定する。
分析結果より単位時間あたりの硝酸性窒素の量の変化を算出し、これを硝酸還元反応の最大反応速度として求めることができる。
一方、脱窒槽の活性汚泥(脱窒汚泥)中に含まれる細菌による亜硝酸還元速度の測定(亜硝酸還元速度試験)は、以下のように測定する。
生物処理工程において細菌1個あたりに一日に負荷される前記処理対象物質の量は、生物処理工程に単位時間あたりに単位体積あたりに外部から導入される処理対象物質の量と、生物処理工程において単位時間あたりに単位体積あたりに産生される処理対象物質の量との合計量と、生物処理工程において用いられている単位体積あたりの細菌数とを求めることで計算により求め得る。
この内、生物処理工程に単位時間あたりに単位体積あたりに外部から導入される処理対象物質の量については、例えば、被処理水の流入量と該被処理水中の処理対象物質濃度とを測定して、一日あたりに硝化槽や脱窒槽などへ流入される処理対象物質の量を計算により求めて、硝化槽や脱窒槽などの容積で除して求めることができる。また、生物処理工程において産生される処理対象物質の量は、通常、この処理対象物質の元になる物質が外部から生物処理工程に導入される量と同等とみなすことができ、アンモニア酸化細菌が収容されている硝化槽における亜硝酸性窒素の産生量は、硝化槽に外部から導入されるアンモニア性窒素の量と同等とみなすことができる。さらに、単位体積あたりの細菌数については、硝化槽や脱窒槽などの汚泥を分析して細菌数を求めて硝化槽や脱窒槽などの容積で除して求めることができる。
また、亜硝酸性窒素については、JIS K0102にしたがって、吸光光度法、イオンクロマトグラフ法などにより測定することができる。
また、硝酸性窒素については、JIS K0102にしたがって、還元蒸留−吸光光度法、銅・カドミウムカラム還元−吸光光度法、イオンクロマトグラフ法などにより測定することができる。
さらに、全窒素の測定方法としては、例えば、総和法、ケルダール窒素法、還元蒸留ケルダール法、紫外線吸光光度法などが挙げられる(「下水試験方法」、上巻、1997年版、財団法人 日本下水道協会参照)。
この場合、活性汚泥から抽出した核酸試料と、活性汚泥中に含まれる細菌に適したプライマー対およびプローブとを用いて、定量対象となる細菌の核酸の増幅に適したPCR条件(温度、時間、サイクル)で反応を行なうことにより、活性汚泥中に含まれる各種細菌および細菌数が定量される。前記プライマー対としては、例えば、アンモニア酸化細菌数定量用として、CTO 189fA/B、CTO 189fC、RT1rなど、亜硝酸酸化細菌の一種であるNitrospira数定量用として、NSR1113f、NSR1264rなどが挙げられる。また、前記プローブとしては、アンモニア酸化細菌定量用として、TMP1、亜硝酸酸化細菌の一種であるNitrospira数定量用として、NSR1143Taqなどが挙げられる。
具体的には、硝酸還元細菌定量用として、narH50F 〔AARTGYATCGGYTGCCA(配列番号:8)〕をフォワードプライマーとし、narHr3B〔TCCCARKCCTTGGGRTAG(配列番号:9)〕をリバースプライマーとするプライマー対としたSYBR Green法などにより定量化されうる。
具体的には、亜硝酸還元細菌定量用として、nirK876 〔ATYGGCGGVAYGGCGA(配列番号:10)〕をフォワードプライマーとし、nirK1040 〔GCCTCGATCAGRTTRTGGTT(配列番号:11)〕をリバースプライマーとするプライマー対、cd3aF 〔GTSAACGTSAAGGARACSGG(配列番号:12)〕をフォワードプライマーとし、R3cd〔GASTTCGGRTGSGTCTTGA(配列番号:13)〕をリバースプライマーとするプライマー対としたSYBR Green法により定量化されうる。
なお、前記1細菌あたりの乾燥重量には、測定値あるいは文献値〔文献値の例:0.28pg/細胞、Appl.Environ.Microbiol(2002),68,245−253)などの値が用いられる。
また、前記換算係数は、下記式(53)
C5H7O2N+5O2 → 5CO2+2H2O+NH3 ・・・(53)
から、細菌の酸素消費量(5×32)を分子量(113)で割ることにより計算できる。この場合、前記の換算係数は、1.416である。
これを細胞1つあたりに換算すると、1細胞 =0.28pg×1.416mg−CODcr/mg−SS=3.965×10-10mg−CODcrとなる。
したがって、生物処理装置の運転に要する手間も削減させることができ、運転コストの低減なども図ることができる。
(塩化物イオンの影響がない状態での最大反応速度の値(V0)の測定)
(アンモニア酸化細菌の反応速度)
アンモニア酸化細菌の反応速度は、以下のようにして測定を実施する。
500ml容三角フラスコに、希釈水[1lあたりの組成:炭酸水素ナトリウム 240mg、BOD−A液〔JIS K 0102の21の項に従う、緩衝液(pH7.2)〕1ml、BOD−B液(JIS K 0102の21の項に従う、硫酸マグネシウム溶液) 1ml、BOD−C液(JIS K 0102の21の項に従う、塩化カルシウム溶液) 1ml、BOD−D液〔JIS K 0102の21の項に従う、塩化鉄(III)溶液〕1ml、残部 水] 390mlを入れ、1000mg−N/lの塩化アンモニウム水溶液 10mlを添加して、混合物Aを調製する。ついで、500ml容三角フラスコ内の混合物Aを、恒温槽中、30℃に維持し、撹拌しながら、10分間以上曝気し、溶液Aを得る。ここで、溶液AのpHを測定する。
得られた結果を、最大反応速度の値を縦軸に、細菌一個あたりに一日に負荷される処理対象物質の量を横軸としたグラフにプロットした。
結果を図2に示す。
さらに、最大反応速度をVAOB0(fg/copy/h)とし、細菌一個あたりに一日に負荷されるアンモニア性窒素量をLAOB(fg NH4−N/copy/day)とした際に、VAOB0とLAOBとが下記式(54)
亜硝酸酸化細菌の反応速度は、以下のようにして測定を実施する。
500ml容三角フラスコに、前記希釈水 390mlを入れ、1000mg−N/lの亜硝酸ナトリウム水溶液 10mlを添加して、混合物Bを調製する。ついで、500ml容三角フラスコ内の混合物Bを、恒温槽中、30℃に維持し、撹拌しながら、10分間以上曝気し、溶液Bを得る。ここで、溶液BのpHを測定する。
得られた結果を、最大反応速度の値を縦軸に、細菌1個あたりに一日に負荷される処理対象物質の量を横軸としたグラフにプロットした。
結果を図3に示す。
ここでLNOBをアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素との合計量としたのは、硝化槽内でアンモニア性窒素はアンモニア酸化細菌により亜硝酸性窒素に転換され、亜硝酸酸化細菌には亜硝酸性窒素として、通常、この合計量が負荷されるためである。
脱窒汚泥中に含まれる細菌による硝酸還元速度の測定(硝酸還元速度試験)は、以下のようにして実施する。
500ml容三角フラスコに、前記希釈水380mlを入れ、恒温槽中、30℃に維持し、撹拌しながら、1000mg−N/lの硝酸ナトリウム水溶液 10mlを添加し、ついで、メタノール水溶液〔5000mgメタノール/l〕 10mlを添加して、混合物Cを調製する。その後、前記混合物Cに、散気球により窒素ガスを吹き込み、10分間脱気する。ここで、前記混合物CのpHを測定する。前記500ml容三角フラスコに、シリコン栓をし、撹拌しながら窒素ガスを吹き込み、該500ml容三角フラスコ内の気相中の空気を除く。その後、1l容テドラーバックに窒素ガスを吹き込み、前記500ml容三角フラスコのシリコン栓に設置する。
分析結果より単位時間あたりの硝酸性窒素の量の変化を算出し、これを塩化物イオンの影響がない状態での硝酸還元反応の最大反応速度(VNARB0)として求めることができる。
得られた結果を、最大反応速度の値を縦軸に、細菌1個あたりに一日に負荷される処理対象物質の量を横軸としたグラフにプロットした。
結果を図4に示す。
ここで、実施例では流入する被処理水中の全窒素量はアンモニア性窒素量と亜硝酸性窒素量と硝酸性窒素量の合計量にほぼ等しいことと、硝化槽においてほぼ全てのアンモニア性窒素および亜硝酸性窒素が硝酸性窒素に転換されていたことから、硝酸還元細菌1個あたりに負荷される窒素量は被処理水中の全窒素量(T−N)に等しいとしてLNARBの算出を行った。
仮に、全窒素量がアンモニア性窒素量と亜硝酸性窒素量と硝酸性窒素量の合計量に等しくない場合、または、硝化槽内でアンモニア性窒素および亜硝酸性窒素が硝酸性窒素まで完全に硝化されない場合は、脱窒槽に流入する硝酸性窒素量をLNARBとすることが望ましい。
脱窒汚泥中に含まれる細菌による亜硝酸還元速度の測定(亜硝酸還元速度試験)は、以下のように測定する。
得られた結果を、最大反応速度の値を縦軸に、細菌一個あたりに一日に負荷される処理対象物質の量を横軸としたグラフにプロットした。
結果を図5に示す。
ここで、実施例では流入する被処理水中の全窒素量はアンモニア性窒素量と亜硝酸性窒素量と硝酸性窒素量の合計量にほぼ等しいことと、硝化槽においてほぼ全てのアンモニア性窒素が硝酸性窒素または亜硝酸性窒素に転換されていたことから、亜硝酸還元細菌一個あたりに負荷される窒素量は被処理水中の全窒素量(T−N)に等しいとしてLNIRBの算出を行った。
仮に、全窒素量がアンモニア性窒素量と亜硝酸性窒素量と硝酸性窒素量の合計量に等しくない場合、または、硝化槽内でアンモニアが完全に硝化されない場合は、脱窒槽に流入する硝酸性窒素と亜硝酸性窒素の合計量をLNIRBとすることが望ましい。
前記溶液A、B、C、Dにそれぞれ、2000mg/l、4000mg/lの濃度となるように塩化物イオン濃度を加えた以外は、塩化物イオンの影響がない状態での最大反応速度の測定と同様に最大反応速度を測定した。
そして、塩化物イオンの影響がない状態での最大反応速度の値(VAOB0、VNOB0、VNARB0、VNIRB0)を100として、塩化物イオンを2000mg/l、4000mg/l加えた場合の最大反応速度の値(VAOB、VNOB、VNARB0、VNIRB)を求めた。
結果をそれぞれ、図6〜9に示す。
Claims (8)
- 窒素成分を含有する被処理水を細菌によって生物学的に硝化処理した後の処理水の水質を、前記被処理水に含有されている成分の濃度に基づいて計算された最大反応速度の値をパラメータに用いて予測するシミュレーション方法であって、
アンモニア酸化細菌によるアンモニア性窒素の酸化反応の最大反応速度の値をパラメータに用い、しかも、前記被処理水中の塩化物イオン濃度を変数とし該塩化物イオン濃度の値が増大した際に最大反応速度の値が増大する関数で塩化物イオン濃度と関係付けられた前記最大反応速度の値をパラメータに用いて前記硝化処理後の処理水の水質を予測することを特徴とするシミュレーション方法。 - 窒素成分を含有する被処理水を細菌によって生物学的に硝化処理した後の処理水の水質を、前記被処理水に含有されている成分の濃度に基づいて計算された最大反応速度の値をパラメータに用いて予測するシミュレーション方法であって、
亜硝酸酸化細菌による亜硝酸性窒素の酸化反応の最大反応速度の値をパラメータに用い、しかも、前記被処理水中の塩化物イオン濃度を変数とし該塩化物イオン濃度の値が増大した際に最大反応速度の値が減少する関数で塩化物イオン濃度と関係付けられた前記最大反応速度の値をパラメータに用いて前記硝化処理後の処理水の水質を予測するシミュレーション方法。 - 窒素成分を含有する被処理水を細菌によって生物学的に脱窒処理した後の処理水の水質を、前記被処理水に含有されている成分の濃度に基づいて計算された最大反応速度の値をパラメータに用いて予測するシミュレーション方法であって、
硝酸還元細菌による硝酸性窒素の還元反応の最大反応速度の値をパラメータに用い、しかも、前記被処理水中の塩化物イオン濃度を変数とし該塩化物イオン濃度の値が増大した際に最大反応速度の値が減少する関数で塩化物イオン濃度と関係付けられた前記最大反応速度の値をパラメータに用いて前記脱窒処理後の処理水の水質を予測するシミュレーション方法。 - 窒素成分を含有する被処理水を細菌によって生物学的に脱窒処理した後の処理水の水質を、前記被処理水に含有されている成分の濃度に基づいて計算された最大反応速度の値をパラメータに用いて予測するシミュレーション方法であって、
亜硝酸還元細菌による亜硝酸性窒素の還元反応の最大反応速度の値をパラメータに用い、しかも、前記被処理水中の塩化物イオン濃度を変数とし該塩化物イオン濃度の値が増大した際に最大反応速度の値が減少する関数で塩化物イオン濃度と関係付けられた前記最大反応速度の値をパラメータに用いて前記脱窒処理後の処理水の水質を予測するシミュレーション方法。
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