JP5253703B2 - 遺伝子断片の取得方法 - Google Patents

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本発明は、cDNA断片の一端に既知の第1アダプタ配列を有し他端に既知の第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成するアダプタ付きcDNA断片群の作成方法、及び、このようなアダプタ付きcDNA断片の群の中から、所望のcDNA断片を取得する遺伝子断片の取得方法に関するものである。
従来より、様々なcDNA断片が混在するcDNA断片の群から所望のcDNA断片(遺伝子断片)を取得する方法がいくつか知られている。
例えば、平板ゲルを利用して、cDNA断片の群から所望のcDNA断片を取得する方法がある(例えば非特許文献1参照)。即ち、cDNA断片の群について、例えばアクリルアミドゲル電気泳動を行う。その後、アクリルアミドゲル中のcDNA断片をエチジウムブロミドで染色し、UVトランスイルミネータによりアクリルアミドゲルを照らしてcDNA断片を検出する。そして、分画されたcDNA断片の群から目的のcDNA断片を含むアクリルアミドゲルを切り出し、そのゲルから当該cDNA断片を回収する。
また、例えば、キャピラリー電気泳動を利用して、cDNA断片の群から所望のcDNA断片を取得する方法もある(例えば特許文献1〜3参照)。即ち、予め蛍光標識したcDNA断片の群をキャピラリーカラムに供試し電気泳動を行う。そして、検出されたピークに基づいて、目的のcDNA断片が泳動されて来る時間を推測する。次に、再びキャピラリーカラムで電気泳動を行い、その推定時間を基づいて目的のcDNA断片を回収する。
A new method for sequencing DNA. Proc.Natl.Acad.Sci. 1977,74:560-564 特開2000−88803号公報 特開平7−181164号公報 特開平6−138037号公報
しかしながら、前者の方法では、目的とするcDNA断片が少量しか存在しない場合、ゲル電気泳動後、cDNA断片を染色しても、UVトランスイルミネータ下でそれを検出することができないため、目的とするcDNA断片を回収できないという問題がある。
一方、後者の方法では、蛍光標識したcDNA断片を使用しているので、目的とするcDNA断片が少量であっても、これを検出することは可能である。しかしながら、この方法では、cDNA断片を目視しながら回収できないため、目的のcDNA断片がキャピラリーカラムの先端部分に現れる時間を予想して回収する。このため、回収したcDNA断片には、目的とするcDNA断片に加え、目的物とほぼ同じ程度の長さのcDNA断片が混在する可能性が高い。また、サイズ分画能が平板ゲルを使用した場合と比較すると良くないため、回収したcDNA断片の中に目的物以外のものが混在したり、また、目的とするcDNA断片の回収率の低下を招くこともある。
このような問題を解消できる方法として、cDNA断片の両端に既知のアダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成し、この中から所望のcDNA断片を取得する方法が考えられる。図9を参照しつつ具体的に説明すると、まず、真核生物由来のmRNAを用意し、このmRNAのポリAテイルに、タグ物質(例えばビオチン)が付加されたポリTをハイブリダイズさせる。そして、cDNAの合成を行い、タグ物質903を有するタグ付きcDNA901の群を作成する。なお、図中の「A」は後述する第1制限酵素の酵素認識部位を、「B」は後述する第2制限酵素の酵素認識部位を示す。
次に、このタグ付きcDNA901の群を第1制限酵素で切断し、第1cDNA断片911の群を得る。この第1cDNA断片911の群には、タグ物質903を有するタグ付き第1cDNA断片913の他、タグ物質903を持たないタグなし第1cDNA断片915が多数存在する。
その後、この第1cDNA断片911の群に対して、第1制限酵素の切断部位の配列に相補的な配列を有する第1アダプタ配列923のライゲーションを行い、第1アダプタ配列923が少なくとも片側に結合した第1アダプタ付き第1cDNA断片921の群を得る。この第1アダプタ付き第1cDNA断片921の群には、タグ物質903を有し、片側に第1アダプタ配列923が結合したタグ付き第1アダプタ付き第1cDNA断片925の他、タグ物質903を持たず、片側あるいは両側に第1アダプタ配列923が結合したタグなし第1アダプタ付き第1cDNA断片927が多数存在する。
次に、タグ物質903に高親和性を有する高親和性物質933(例えばストレプトアビジン付きビーズ)に、タグ物質903を有し、片側に第1アダプタ配列923が結合したタグ付き第1アダプタ付き第1cDNA断片925を結合させて、このタグ付き第1アダプタ付き第1cDNA断片925のみを回収し、タグ物質903を持たないタグなし第1アダプタ付き第1cDNA断片927を全て除去する。
次に、回収したタグ付き第1アダプタ付き第1cDNA断片925を第2制限酵素で切断し、第2cDNA断片941の群を得る。この第2cDNA断片941の群には、タグ物質903を有し第1アダプタ配列923を持たないタグ付き第2cDNA断片943、タグ物質903も第1アダプタ配列923も持たないタグなし第2cDNA断片945、タグ物質903を持たず第1アダプタ配列923を有するタグなし第2cDNA断片947が存在する。
次に、高親和性物質933を用いて、今度は、タグ物質903を有し第1アダプタ配列923を持たないタグ付き第2cDNA断片943を除去し、タグ物質903を持たないタグなし第2cDNA断片945,947を回収する。
次に、回収したタグなし第2cDNA断片945,947の群に対して、第2制限酵素の切断部位の配列に相補的な配列を有する第2アダプタ配列953のライゲーションを行い、第2アダプタ配列953が少なくとも片側に結合したアダプタ付き第2cDNA断片951の群を得る。このアダプタ付き第2cDNA断片951の群には、一端に第1アダプタ配列923が結合し他端に第2アダプタ配列953が結合した第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片955、及び、両端に第2アダプタ配列953が結合した第2アダプタ付き第2cDNA断片957が存在する。
かくして、一端に第1アダプタ配列923を有し他端に第2アダプタ配列953を有するアダプタ付きcDNA断片955の群を作成できる。
その後は、第1アダプタ配列923に相補的な第1プライマーと、第2アダプタ配列955に相補的な第2プライマーとを利用してPCRを行うことにより、cDNA断片を十分に増幅させる。その後、PCR産物についてゲル電気泳動を行い、ゲル中のcDNA断片を染色して、UVトランスイルミネータにより検出する。更に、分画されたcDNA断片の群から目的のcDNA断片を含むゲルを切り出し、目的のcDNA断片を回収する。かくして、目的の遺伝子断片を取得できる。
しかしながら、この方法では、第1,第2アダプタ配列923,953を有するアダプタ付きcDNA断片955と共に、両端に第2アダプタ配列953が結合したアダプタ付きcDNA断片957も相当量できる。従って、第1,第2アダプタ配列923,953を有するアダプタ付きcDNA断片955の群を、高純度に作成できない。また、遺伝子断片の取得にあたってPCRを行う際、両端に第2アダプタ配列953が結合したアダプタ付きcDNA断片957の存在が、PCR反応の阻害要因となり得る。恐らく、プライマーの消費バランスが崩れることに起因するものと考えられる。その結果、所望のcDNA断片(遺伝子断片)を効率よく取得できないという問題が生じる。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、一端に既知の第1アダプタ配列を有し他端に既知の第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を、高純度に作成できるアダプタ付きcDNA断片群の作成方法、及び、所望のcDNA断片を効率よく取得できる遺伝子断片の取得方法を提供することを目的とする。
その解決手段は、cDNA断片の一端に既知の第1アダプタ配列を有し他端に既知の第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成するアダプタ付きcDNA断片群の作成方法であって、cDNAの一方の端部に第1タグ物質が付加された第1タグ付きcDNAの群を作成する第1タグ付きcDNA群作成工程と、前記第1タグ付きcDNAの群を第1制限酵素により切断して、第1cDNA断片の群を得る第1切断工程と、前記第1タグ物質に高親和性を有する第1高親和性物質を用いて、前記第1cDNA断片の群の中から、前記第1タグ物質を有する第1タグ付き第1cDNA断片の群を回収する第1タグ付き第1cDNA断片群回収工程と、前記第1タグ付き第1cDNA断片の群を第2制限酵素により切断し、第2cDNA断片の群を得て、更に、この第2cDNA断片の群の中から、前記第1タグ物質を有しないタグなし第2cDNA断片の群を回収する第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程と、前記タグなし第2cDNA断片の群に対して、第2タグ物質が付加され前記第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第1アダプタ配列、及び、前記第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第2アダプタ配列のライゲーションを行い、少なくとも前記第2アダプタ配列が結合したアダプタ付き第2cDNA断片の群を作成する第1,第2アダプタライゲーション工程と、前記第2タグ物質に高親和性を有する第2高親和性物質を用いて、前記アダプタ付き第2cDNA断片の群の中から、前記第2タグ物質付きの前記第1アダプタ配列をも結合した第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片の群を回収する第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片群回収工程と、前記第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片から前記第2タグ物質を除去し、一端に前記第1アダプタ配列を有し他端に前記第2アダプタ配列を有する前記アダプタ付きcDNA断片の群を回収するアダプタ付きcDNA断片群回収工程と、を備えるアダプタ付きcDNA断片群の作成方法である。
このアダプタ付きcDNA断片群の作成方法によれば、まず、cDNAの一端に第1タグ物質が付加されたcDNA(第1タグ付きcDNA)の群を作成する。
次に、このcDNAの群を第1制限酵素により切断して、cDNA断片(第1cDNA断片)の群を得る。このcDNA断片には、第1タグ物質を有するcDNA断片(第1タグ付き第1cDNA断片)の他、第1タグ物質を持たないcDNA断片(タグなし第1cDNA断片)(例えば、両端とも第1制限酵素で切断されたcDNA断片)も複数存在する。
次に、第1タグ物質に高親和性を有する第1高親和性物質を利用して、このcDNA断片の群の中から、第1タグ物質を有するcDNA断片(第1タグ付き第1cDNA断片)の群のみを回収する。その際、第1タグ物質を持たないcDNA断片(タグなし第1cDNA断片)は全て除去される。
その後、回収したcDNA断片の群を第2制限酵素により切断して、cDNA断片(第2cDNA断片)の群を得る。また、再び第1高親和性物質を利用して、このcDNA断片の群の中から、今度は、第1タグ物質を持たないcDNA断片(タグなし第2cDNA断片)の群を回収する。その際、第1タグ物質を有するcDNA断片(第1タグ付き第2cDNA断片)は全て除去される。回収したcDNA断片の群には、一端が第1制限酵素で切断され他端が第2制限酵素で切断されたcDNA断片の他、両端とも第2制限酵素で切断されたcDNA断片も含まれる。なお、両端とも第1制限酵素で切断されたcDNA断片は、前の工程で既に除去されているため、このcDNA断片の群には存在しない。
次に、回収したcDNA断片の群に対して、第2タグ物質を有すると共に第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する第1アダプタ配列と、第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する第2アダプタ配列のライゲーションを行い、少なくとも第2アダプタ配列が結合したcDNA断片(アダプタ付き第2cDNA断片)の群を作成する。このcDNA断片の群には、一端に第1アダプタ配列が結合し他端に第2アダプタ配列が結合したcDNA断片(第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片)の他、両端に第2アダプタ配列が結合したcDNA断片も複数含まれる。
その後、第2タグ物質に高親和性を有する第2高親和性物質を用いて、このcDNA断片の群の中から、第2タグ物質を有する第1アダプタ配列をも結合したcDNA断片(第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片)の群を回収する。その際、両端に第2アダプタ配列が結合したcDNA断片は全て除去される。従って、この工程で回収されるcDNA断片の群は、理論的には、一端にタグ付きの第1アダプタ配列を有し他端に第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片のみとなる。
その後は、このcDNA断片から第2タグ物質を除去し、一端に第1アダプタ配列を有し他端に第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を回収する。
なお、このような方法を本明細書では、「1段階連結法」とも言う。
このような方法でアダプタ付きcDNA断片の群を作成すれば、理論的には、両端に第1アダプタ配列が結合したアダプタ付きcDNA断片や両端に第2アダプタ配列が結合したアダプタ付きcDNA断片は含まれなくなり、一端に第1アダプタ配列を有し他端に第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片のみからなるアダプタ付きcDNA断片群を作成できる。従って、その後、所望のcDNA断片を取得するにあたって、第1アダプタ配列に相補的なプライマーと第2アダプタ配列に相補的なプライマーとを用いてPCRを行う際、PCRを効率よく行うことができ、その結果、所望のcDNA断片(遺伝子断片)を効率よく取得できる。
ここで、第1タグ付きcDNA群作成工程で作成する「第1タグ付きcDNA」は、一端に第1タグ物質が付加されたcDNAであればよく、「第1タグ付きcDNA」は原核生物由来ものでも真核生物由来のものでもよい。また、この「第1タグ付きcDNA」の群は、抽出に用いた細胞で発現された殆ど全ての遺伝子が含まれる群であっても、その発現された遺伝子の一部だけが含まれる群であってもよい。更に、この「第1タグ付きcDNA」は、全長cDNAからなるものでも、全長cDNAの一部分からなるものでもよい。
「タグ物質」と「高親和性物質」とは、互いに高親和性をもって特異的に結合する結合対を構成する物質であれば、いずれを利用することもできる。中でも、取り扱いの容易性や入手容易性などの理由から、タグ物質と高親和性物質の組合せとして、ビオチンとストレプトアビジン、ビオチンとアビジン、FIGTとFITC抗体、DIGとアンタイDIG、プロテインAとマウスIgG、ラテックス粒子等を利用するのが好ましい。なお、各組合せにおいて、可能であれば、いずれをタグ物質として使用しても、いずれを高親和性物質として使用してもよい。また、前述の作成方法において、「第1タグ物質」と「第2タグ物質」、及び、「第1高親和性物質」と「第2高親和性物質」はそれぞれ同じものでもよい。
「制限酵素」とは、一般的に、制限エンドヌクレアーゼとも称される酵素であり、特定の配列において二本鎖DNAを加水分解し切断する酵素である。使用する制限酵素は、cDNAあるいはcDNA断片を識別可能な長さを有するcDNA断片に切断可能なものが好ましい。また、cDNAの群やcDNA断片の群に含まれるcDNAあるいはcDNA断片のより多くを、好ましくは、殆ど全てを切断するような酵素が好ましい。
「第1アダプタ配列」は、第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有するものであればよく、また、「第2アダプタ配列」は、第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有するものであればよい。従って、それぞれいかなる塩基配列からなるものであっても構わないが、後にPCRを行う際の効率等を考慮して設計されたものであるのが好ましい。即ち、これらのアダプタ配列がそれぞれ15塩基程度以上であると、安定したPCR反応を行うことができ、効率よくcDNA断片を増幅できる。
また、他の解決手段は、cDNA断片の一端に既知の第1アダプタ配列を有し他端に既知の第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成するアダプタ付きcDNA断片群の作成方法であって、cDNAの一方の端部に第1タグ物質が付加された第1タグ付きcDNAの群を作成する第1タグ付きcDNA群作成工程と、前記第1タグ付きcDNAの群を第1制限酵素により切断して、第1cDNA断片の群を得る第1切断工程と、前記第1タグ物質に高親和性を有する第1高親和性物質を用いて、前記第1cDNA断片の群の中から、前記第1タグ物質を有する第1タグ付き第1cDNA断片の群を回収する第1タグ付き第1cDNA断片群回収工程と、前記第1タグ付き第1cDNA断片の群を第2制限酵素により切断し、第2cDNA断片の群を得て、更に、この第2cDNA断片の群の中から、前記第1タグ物質を有しないタグなし第2cDNA断片の群を回収する第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程と、前記タグなし第2cDNA断片の群に対して、第2タグ物質が付加され前記第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第1アダプタ配列のライゲーションを行い、前記第1アダプタ配列が結合した第1アダプタ付き第2cDNA断片の群を作成する第1アダプタライゲーション工程と、前記第2タグ物質に高親和性を有する第2高親和性物質を用いると共に、前記第2制限酵素により前記第1アダプタ付き第2cDNA断片を切断して、自身の内部に前記第2制限酵素切断部位を有しない第1アダプタ付き第2cDNA断片の群を回収する第2切断・第1アダプタ付き第2cDNA断片群回収工程と、前記第2制限酵素切断部位を有しない第1アダプタ付き第2cDNA断片から前記第2タグ物質を除去すると共に、前記第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第2アダプタ配列のライゲーションを行い、一端に前記第1アダプタ配列を有し他端に前記第2アダプタ配列を有する前記アダプタ付きcDNA断片の群を作成するアダプタ付きcDNA断片群作成工程と、を備えるアダプタ付きcDNA断片群の作成方法である。
本発明によれば、まず、cDNAの一端に第1タグ物質が付加されたcDNA(第1タグ付きcDNA)の群を作成する。
次に、このcDNAの群を第1制限酵素により切断して、cDNA断片(第1cDNA断片)の群を得る。
その後、第1タグ物質に高親和性を有する第1高親和性物質を利用して、このcDNA断片の群の中から、第1タグ物質を有するcDNA断片(第1タグ付き第1cDNA断片)の群のみを回収する。
その後、回収したcDNA断片の群を第2制限酵素により切断して、cDNA断片(第2cDNA断片)の群を得る。また、再び第1高親和性物質を利用して、このcDNA断片の群の中から、今度は、第1タグ物質を持たないcDNA断片(タグなし第2cDNA断片)の群を回収する。
ここまでの工程は、前述の1段階連結法と同様である。
次に、回収したcDNA断片の群に対して、第2タグ物質を有すると共に第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する第1アダプタ配列のライゲーションを行い、第1アダプタ配列が結合したcDNA断片(第1アダプタ付き第2cDNA断片)の群を作成する。なお、このcDNA断片の群には、前記の工程において第2制限酵素で切断されたcDNA断片同士が再結合したものも含まれる。
その後、第2タグ物質に高親和性を有する第2高親和性物質を用いると共に、第2制限酵素によりこのcDNA断片を切断して、自身の内部に第2制限酵素切断部位を有しないcDNA断片(第1アダプタ付き第2cDNA断片)の群を回収する。これにより、再結合したcDNA断片が再び切断され、第2タグ物質を持たないcDNA断片は全て除去される。
その後、このcDNA断片から第2タグ物質を除去すると共に、第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第2アダプタ配列のライゲーションを行い、一端に第1アダプタ配列を有し他端に第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成する。
なお、このような方法を本明細書では、「2段階連結法」とも言う。
このような方法でアダプタ付きcDNA断片の群を作成しても、理論的には、両端に第1アダプタ配列が結合したアダプタ付きcDNA断片や両端に第2アダプタ配列が結合したアダプタ付きcDNA断片は含まれなくなり、一端に第1アダプタ配列を有し他端に第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片のみからなるアダプタ付きcDNA断片群を作成できる。従って、その後、所望のcDNA断片を取得するにあたって、第1アダプタ配列に相補的なプライマーと第2アダプタ配列に相補的なプライマーとを用いてPCRを行う際、PCRを効率よく行うことができ、その結果、所望のcDNA断片(遺伝子断片)を効率よく取得できる。
なお、「第1タグ付きcDNA」、「cDNA」、「タグ物質」、「高親和性物質」、「制限酵素」、「第1アダプタ配列」、「第2アダプタ配列」等は、前述した通りである。
また、「アダプタ付きcDNA断片群作成工程」では、前工程で回収したcDNA断片から第2タグ物質を除去した後に、第2アダプタ配列のライゲーションを行ってもよいし、先に、前工程で回収したcDNA断片に第2アダプタ配列のライゲーションを行い、その後、第2タグ物質を除去してもよい。いずれの順番で行っても、一端に第1アダプタ配列を有し他端に第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片を作成できる。
更に、上記のいずれかに記載のアダプタ付きcDNA断片群の作成方法であって、前記第1タグ付きcDNA群作成工程は、原核生物の細胞からmRNAを得るmRNA取得工程と、前記mRNAの3'末端にポリAを付加し、ポリA付加mRNAを得るポリA付加工程と、前記ポリA付加mRNAに前記第1タグ物質が付加されたポリTをハイブリダイズさせるポリTハイブリダイズ工程と、前記ポリTがハイブリダイズしたmRNAから前記第1タグ付きcDNAを合成するcDNA合成工程と、を含むアダプタ付きcDNA断片群の作成方法とすると良い。
原核生物由来のmRNAはポリAテイルを持たないため、このままではcDNAを合成できない。
これに対し、本発明では、mRNAにポリAを付加し、これを利用するので、容易にcDNAを合成できる。従って、原核生物を試料にしているにも拘わらず、アダプタ付きcDNA断片群を容易に作成できる。
更に、上記のアダプタ付きcDNA断片群の作成方法であって、前記mRNA取得工程は、前記原核生物の細胞から全RNAを抽出する全RNA抽出工程と、16S rRNAの一部に相補的な配列を有する第1ヌクレオチドを前記16S rRNAにハイブリダイズさせると共に、23S rRNAの一部に相補的な配列を有する第2ヌクレオチドを23S rRNAにハイブリダイズさせる第1,第2ヌクレオチドハイブリダイズ工程と、前記第1ヌクレオチドのうち、前記16S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的である配列を有し、第3タグ物質が付加された第3ヌクレオチドを、前記16S rRNAと前記第1ヌクレオチドの結合物にハイブリダイズさせると共に、前記第2ヌクレオチドのうち、前記23S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的である配列を有し、第4タグ物質が付加された第4ヌクレオチドを、前記23S rRNAと上記第2ヌクレオチドの結合物にハイブリダイズさせる第3,第4ヌクレオチドハイブリダイズ工程と、前記全RNAから、前記第3タグ物質に高親和性を有する第3高親和性物質を用いて、前記16S rRNAと前記第1ヌクレオチドと前記第3タグ物質を有する前記第3ヌクレオチドとの結合物を除去すると共に、前記第4タグ物質に高親和性を有する第4高親和性物質を用いて、前記23S rRNAと前記第2ヌクレオチドと前記第4タグ物質を有する前記第4ヌクレオチドとの結合物を除去する除去するrRNA除去工程と、を含むアダプタ付きcDNA断片群の作成方法とすると良い。
原核生物においては、mRNAにポリAテイルが存在しないため、真核生物の場合のように、ポリAテイルを利用して抽出した全RNAからmRNAを精製(濃縮)する方法を採ることができない。
これに対し、上記作成方法では、まず、原核生物の細胞から全RNAを抽出する。そして、抽出した全RNAに対し、16S rRNAの一部に相補的な配列を有する第1ヌクレオチドを16S rRNAにハイブリダイズさせると共に、23S rRNAの一部に相補的な配列を有する第2ヌクレオチドを23S rRNAにハイブリダイズさせる。その後、第1ヌクレオチドのうち、16S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的な配列を有し、第3タグ物質が付加された第3ヌクレオチドを、16S rRNAと第1ヌクレオチドの結合物にハイブリダイズさせる。また、第2ヌクレオチドのうち、23S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的な配列を有し、第2タグ物質が付加された第4ヌクレオチドを、23S rRNAと第2ヌクレオチドの結合物にハイブリダイズさせる。その後、全RNAから、16S rRNAと第1ヌクレオチドと第3タグ物質が付加された第3ヌクレオチドとの結合物を除去すると共に、23S rRNAと第2ヌクレオチドと第4タグ物質が付加された第4ヌクレオチドとの結合物を除去する。このような方法によれば、全RNAから、全RNAの中に多量に存在するrRNA(16S rRNA及び23S rRNA)の大部分を除去できる。従って、mRNAを容易に高純度に濃縮できる。
ここで、「第1ヌクレオチド」は、16S rRNAの一部に相補的な配列を有し、且つ、第3ヌクレオチドに相補的な配列を有するものであれば、いかなるものでもよい。従って、16S rRNAの一部に相補的な配列と第3ヌクレオチドに相補的な配列以外の配列を有していても構わない。ここでいう16S rRNAの一部に相補的な配列とは、16S rRNAの一部に対し100%相補的な配列に限られず、適当な条件下で16S rRNAにハイブリダイズできる程度に実質的に相補的な配列も含まれる。また、第3ヌクレオチドに相補的な配列も、第3ヌクレオチドに対し100%相補的な配列に限られず、適当な条件下で第3ヌクレオチドにハイブリダイズできる程度に実質的に相補的な配列も含まれる。また、第1ヌクレオチドのうち、第3ヌクレオチドに相補的な配列は、第3ヌクレオチド全体に対応するものに限られず、第3ヌクレオチドの一部に対応するものでもよい。
同様に、「第2ヌクレオチド」は、23S rRNAの一部に相補的な配列を有し、且つ、第4ヌクレオチドに相補的な配列を有するものであれば、いかなるものであってもよい。従って、23S rRNAの一部に相補的な配列と第4ヌクレオチドに相補的な配列以外の配列を有していても構わない。ここでいう23S rRNAの一部に相補的な配列も、23S rRNAの一部に対し100%相補的な配列に限られず、適当な条件下で23S rRNAにハイブリダイズできる程度に実質的に相補的な配列も含まれる。また、第4ヌクレオチド相補的な配列も、第4ヌクレオチドに対し100%相補的な配列に限られず、適当な条件下で第4ヌクレオチドにハイブリダイズできる程度に実質的に相補的な配列も含まれる。また、第2ヌクレオチドのうち、第4ヌクレオチドに相補的な配列は、第4ヌクレオチド全体に対応するものに限られず、第4ヌクレオチドの一部に対応するものでもよい。
また、「第3ヌクレオチド」は、第1ヌクレオチドのうち、16S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的な配列を有するものであれば、いかなるものであってもよい。従って、第1ヌクレオチドの一部に相補的な配列以外の配列を有していても構わない。ここでいう第1ヌクレオチドの一部に相補的な配列も、前述したように、第1ヌクレオチドに対し100%相補的な配列に限られず、適当な条件下で第1ヌクレオチドにハイブリダイズできる程度に実質的に相補的な配列も含まれる。
同様に、「第4ヌクレオチド」は、第2ヌクレオチドのうち、23S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的な配列を有するものであれば、いかなるものであってもよい。従って、第2ヌクレオチドの一部に相補的な配列以外の配列を有していても構わない。ここでいう第2ヌクレオチドの一部に相補的な配列も、前述したように、第2ヌクレオチドに対し100%相補的な配列に限られず、適当な条件下で第2ヌクレオチドにハイブリダイズできる程度に実質的に相補的な配列も含まれる。
なお、「タグ物質」については、前述した通りである。また、上記の第3タグ物質や第4タグ物質は、前述の第1タグ物質や第2タグ物質と同じものを利用してもよい。
また、他の解決手段は、cDNA断片の一端に既知の第1アダプタ配列を有し他端に既知の第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成し、その中から所望のcDNA断片を取得する遺伝子断片の取得方法であって、cDNAの一方の端部に第1タグ物質が付加された第1タグ付きcDNAの群を作成する第1タグ付きcDNA群作成工程と、前記第1タグ付きcDNAの群を第1制限酵素により切断して、第1cDNA断片の群を得る第1切断工程と、前記第1タグ物質に高親和性を有する第1高親和性物質を用いて、前記第1cDNA断片の群の中から、前記第1タグ物質を有する第1タグ付き第1cDNA断片の群を回収する第1タグ付き第1cDNA断片群回収工程と、前記第1タグ付き第1cDNA断片の群を第2制限酵素により切断し、第2cDNA断片の群を得て、更に、この第2cDNA断片の群の中から、前記第1タグ物質を有しないタグなし第2cDNA断片の群を回収する第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程と、前記タグなし第2cDNA断片の群に対して、第2タグ物質が付加され前記第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第1アダプタ配列、及び、前記第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第2アダプタ配列のライゲーションを行い、少なくとも前記第2アダプタ配列が結合したアダプタ付き第2cDNA断片の群を作成する第1,第2アダプタライゲーション工程と、前記第2タグ物質に高親和性を有する第2高親和性物質を用いて、前記アダプタ付き第2cDNA断片の群の中から、前記第2タグ物質付きの前記第1アダプタ配列をも結合した第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片の群を回収する第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片群回収工程と、前記第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片から前記第2タグ物質を除去し、一端に前記第1アダプタ配列を有し他端に前記第2アダプタ配列を有する前記アダプタ付きcDNA断片の群を回収するアダプタ付きcDNA断片群回収工程と、前記アダプタ付きcDNA断片の群に対し、前記第1アダプタ配列に相補的な配列を有する第1プライマーと、前記第2アダプタ配列に相補的な配列を有する第2プライマーとを用いて、PCRを行う第1PCR工程と、前記第1PCR工程で増幅されたcDNA断片の群についてゲル電気泳動を行う電気泳動工程と、前記電気泳動工程の結果に基づいて、ゲルから所望のcDNA断片を含むゲルを切り出し、このcDNA断片を回収するcDNA断片回収工程と、を備える遺伝子断片の取得方法である。
この遺伝子断片の取得方法では、遺伝子断片の取得にあたって、まず、前述した「1段階連結法」によってアダプタ付きcDNA断片群を作成する。即ち、まず、cDNAの一端に第1タグ物質が付加されたcDNA(第1タグ付きcDNA)の群を作成する。次に、このcDNAの群を第1制限酵素により切断して、cDNA断片(第1cDNA断片)の群を得る。その後、第1タグ物質に高親和性を有する第1高親和性物質を利用して、このcDNA断片の群の中から、第1タグ物質を有するcDNA断片(第1タグ付き第1cDNA断片)の群のみを回収する。その後、回収したcDNA断片の群を第2制限酵素により切断して、cDNA断片(第2cDNA断片)の群を得る。また、再び第1高親和性物質を利用して、このcDNA断片の群の中から、今度は、第1タグ物質を持たないcDNA断片(タグなし第2cDNA断片)の群を回収する。その後、回収したcDNA断片の群に対して、第2タグ物質を有すると共に第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する第1アダプタ配列と、第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する第2アダプタ配列のライゲーションを行い、少なくとも第2アダプタ配列が結合したcDNA断片(アダプタ付き第2cDNA断片)の群を作成する。その後、第2タグ物質に高親和性を有する第2高親和性物質を用いて、このcDNA断片の群の中から、第2タグ物質を有する第1アダプタ配列をも結合したcDNA断片(第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片)の群を回収する。その後は、このcDNA断片から第2タグ物質を除去し、一端に第1アダプタ配列を有し他端に第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を回収する。
アダプタ付きcDNA断片群を作成した後は、このアダプタ付きcDNA断片の群に対し、第1アダプタ配列に相補的な配列を有する第1プライマーと、第2アダプタ配列に相補的な配列を有する第2プライマーとを用いて、PCRを行う。このようにPCRを行うことによって、cDNA断片を多量に増幅できる。従って、目的のcDNA断片が低濃度しかなくても、それを大幅に増幅できる。しかも、このアダプタ付きcDNA断片の群は、両端に同一アダプタ配列が結合したcDNA断片は含まれず、理論上、一端に第1アダプタ配列を有し他端に第2アダプタ配列を有するcDNA断片のみからなるので、PCRを効率よく行うことができる。
その後、PCR産物についてゲル電気泳動を行う。その際、第1PCR工程でcDNA断片が大幅に増幅されているので、目的のcDNA断片を容易に検出できる。
その後、この電気泳動の結果に基づいて、ゲルから所望のcDNA断片を含むゲルを切り出し、このcDNA断片(遺伝子断片)を回収する。
このような方法では、PCR工程でcDNA断片を効率よく増幅できるので、所望のcDNA断片(遺伝子断片)を効率よく取得できる。
なお、「第1タグ付きcDNA」、「cDNA」、「タグ物質」、「高親和性物質」、「制限酵素」、「第1アダプタ配列」、「第2アダプタ配列」等は、前述した通りである。
「第1プライマー」は、第1アダプタ配列に相補的な配列を有するものであれば、いかなるものであってもよい。ここでいう相補的な配列とは、第1アダプタに対し100%相補的な配列に限られず、PCR反応においてcDNA断片を増幅できる程度に実質的に相補的な配列も含まれる。また、第1プライマーは、第1アダプタ配列に相補的な配列のみからなるものに限られず、第1アダプタ配列に相補的な配列に、更に他の配列が繋がったものであってもよい。また、第1プライマーは、第1アダプタ配列全体に対応するものに限られず、第1アダプタ配列の一部に対応するものでもよい。
同様に、「第2プライマー」は、第2アダプタ配列に相補的な配列を有するものであれば、いかなるものであってもよい。ここでいう相補的な配列も、第2アダプタに対し100%相補的な配列に限られず、PCR反応においてcDNA断片を増幅できる程度に実質的に相補的な配列も含まれる。また、第2プライマーも、第2アダプタ配列に相補的な配列のみからなるものに限られず、第2アダプタ配列に相補的な配列に、更に他の配列が繋がったものであってもよい。また、第2プライマーは、第2アダプタ配列全体に対応するものに限られず、第2アダプタ配列の一部に対応するものでもよい。
なお、第1プライマー及び第2プライマーの少なくともいずれかに、標識物質を付与しておくのが好ましい。このような標識プライマーを利用すれば、PCR産物も標識物質を有することになる。従って、PCR反応を行っても依然として目的とするcDNA断片が比較的少ない場合であっても、電気泳動においてこの標識物質を認識することで、目的とするcDNA断片を容易に検出できる。
標識物質は、電気泳動において検出感度が高いものであれば、いずれのものを使用することもできる。例えば、6-カルボキシフルオレッセイン(以下、FAMと称す。)、4,7,2',4',5',7'-ヘキサクロロ-6-カルボキシフルオレッセイン(以下、HEXと称す。)、NED(アプライドバイオシステムズジャパン社)、6-カルボキシ-X-ローダミン(以下、Roxと称す。)等の蛍光物質などを使用できる。これらの標識物質は、例えば、プライマーDNAの末端(例えば5'末端)に結合させればよい。
ここで、PCR反応で用いる種々の試薬について説明する。
DNAポリメラーゼは、PCR反応においてDNA鎖を変性させる際の高温に短時間加熱されても永久的には不活性化されず、しかも、高温における活性を有するものが好適である。例えば、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、メタノサーマス・フェルビドゥス(Methanothermus fervidus)、サーマス・アクアティクス(Thermus aquaticus)、T.フラブス(T.flavus)、T.ラクテウス(T.lacteus)、T.ルベンス(T.rubens)、T.ルバー(T.ruber)などの高熱菌由来のDNAポリメラーゼや、デスルフロコッカス・モビリス(Desulfurococcus mobilis)、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィルクム(Methanobacterium thermoautotrophilcum)、スルホロブス・ソルファタリクス(Sulfolobus solfataricus)、S.アシドカルダリウス(S.acidocaldarius)、サーモプラスマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum)、ピロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis KOD1株)などの高熱性古細菌由来のDNAポリメラーゼなどが挙げられる。これらのうち、入手容易性等の理由から、サーマス・アクアティクス(Thermus aquaticus)由来のDNAポリメラーゼ(Taq DNAポリメラーゼ)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来のDNAポリメラーゼ、或いは、ピロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis KOD1株)由来のDNAポリメラーゼを利用するのが好ましい。
更に、PCR反応液には、DNAポリメラーゼによる核酸増幅前の活性を阻害するために、DNAポリメラーゼに特異的な抗体を混合してもよい。この抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え法により製造された抗体、化学的または組換え法により製造された抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント)が挙げられる。これらのうち、モノクローナル抗体を用いるのが特に好ましい。例えば、Taq DNAポリメラーゼに対する公知のモノクローナル抗体は、約20℃〜40℃においてTaq DNAポリメラーゼの酵素活性を阻害できると共に、PCRの熱的サイクルにおける高温によって不活性化される。
また、PCR反応は、一般に、4種類のdNTP、即ち、dATP、dCTP、dGTP及びdTTPの存在化において行う。
更に、PCR反応は、一般に、適当な緩衝剤を含む反応液中で行われる。効率よく核酸を増幅させるためである。緩衝液は、使用するDNAポリメラーゼ等により、反応の最適条件を得るため適宜変更できる。例えば、pHを適当に調整したトリス系の緩衝液に、塩化カリウムや塩化マグネシウムを加えた緩衝液を利用できる。
また、PCR反応液には、5%〜10%のDMSOと1%〜2%のベタインを添加してもよい。鋳型DNAとなるcDNA断片が二字構造を有する場合に産物が増幅されにくいという問題を、最小限に留める効果を有するものである。
「電気泳動工程」では、アクリルアミドゲル電気泳動やアガロースゲル電気泳動など、公知の平板ゲル電気泳動などにより、cDNA断片(PCR産物)を電気泳動し、cDNA断片を分画すればよい。また、これらの電気泳動には、公知の電気泳動装置を利用すればよい。なお、ゲル電気泳動は、キャピラリーカラムによる場合に比べ、サイズ分解能を向上させることができるため、目的とするcDNA断片のみをより特異的に回収できる利点がある。
「cDNA断片回収工程」は、電気泳動の結果に基づいて目的とするcDNA断片を回収する工程であれば、いかなる方法を利用することもできる。例えば、標識物質を検出できるDNAシークエンサーにcDNA断片を供試して電気泳動工程を行い、その解析結果から、回収するcDNA断片を決定する。次に、再度同一サンプルを電気泳動して、目的とするcDNA断片が検出されたときに、その部分のゲルを切り出し、そこから当該cDNA断片を回収する方法が挙げられる。また、ゲル電気泳動後、標識物質を検出できるスキャナー上にゲルを載置し、その解析結果から回収するcDNA断片を決定する。そして、その部分のゲルを切り出し、そこから当該cDNA断片を回収する方法が挙げられる。
また、他の解決手段は、cDNA断片の一端に既知の第1アダプタ配列を有し他端に既知の第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成し、その中から所望のcDNA断片を取得する遺伝子断片の取得方法であって、cDNAの一方の端部に第1タグ物質が付加された第1タグ付きcDNAの群を作成する第1タグ付きcDNA群作成工程と、前記第1タグ付きcDNAの群を第1制限酵素により切断して、第1cDNA断片の群を得る第1切断工程と、前記第1タグ物質に高親和性を有する第1高親和性物質を用いて、前記第1cDNA断片の群の中から、前記第1タグ物質を有する第1タグ付き第1cDNA断片の群を回収する第1タグ付き第1cDNA断片群回収工程と、前記第1タグ付き第1cDNA断片の群を第2制限酵素により切断し、第2cDNA断片の群を得て、更に、この第2cDNA断片の群の中から、前記第1タグ物質を有しないタグなし第2cDNA断片の群を回収する第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程と、前記タグなし第2cDNA断片の群に対して、第2タグ物質が付加され前記第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第1アダプタ配列のライゲーションを行い、前記第1アダプタ配列が結合した第1アダプタ付き第2cDNA断片の群を作成する第1アダプタライゲーション工程と、前記第2タグ物質に高親和性を有する第2高親和性物質を用いると共に、前記第2制限酵素により前記第1アダプタ付き第2cDNA断片を切断して、自身の内部に前記第2制限酵素切断部位を有しない第1アダプタ付き第2cDNA断片の群を回収する第2切断・第1アダプタ付き第2cDNA断片群回収工程と、前記第2制限酵素切断部位を有しない第1アダプタ付き第2cDNA断片から前記第2タグ物質を除去すると共に、前記第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第2アダプタ配列のライゲーションを行い、一端に前記第1アダプタ配列を有し他端に前記第2アダプタ配列を有する前記アダプタ付きcDNA断片の群を作成するアダプタ付きcDNA断片群作成工程と、前記アダプタ付きcDNA断片の群に対し、前記第1アダプタ配列に相補的な配列を有する第1プライマーと、前記第2アダプタ配列に相補的な配列を有する第2プライマーとを用いて、PCRを行う第1PCR工程と、前記第1PCR工程で増幅されたcDNA断片の群についてゲル電気泳動を行う電気泳動工程と、前記電気泳動工程の結果に基づいて、ゲルから所望のcDNA断片を含むゲルを切り出し、このcDNA断片を回収するcDNA断片回収工程と、を備える遺伝子断片の取得方法である。
本発明では、遺伝子断片の取得にあたって、まず、前述した「2段階連結法」によってアダプタ付きcDNA断片群を作成する。即ち、まず、cDNAの一端に第1タグ物質が付加されたcDNA(第1タグ付きcDNA)の群を作成する。次に、このcDNAの群を第1制限酵素により切断して、cDNA断片(第1cDNA断片)の群を得る。その後、第1タグ物質に高親和性を有する第1高親和性物質を利用して、このcDNA断片の群の中から、第1タグ物質を有するcDNA断片(第1タグ付き第1cDNA断片)の群のみを回収する。その後、回収したcDNA断片の群を第2制限酵素により切断して、cDNA断片(第2cDNA断片)の群を得る。また、再び第1高親和性物質を利用して、このcDNA断片の群の中から、今度は、第1タグ物質を持たないcDNA断片(タグなし第2cDNA断片)の群を回収する。その後、回収したcDNA断片の群に対して、第2タグ物質を有すると共に第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する第1アダプタ配列のライゲーションを行い、第1アダプタ配列が結合したcDNA断片(第1アダプタ付き第2cDNA断片)の群を作成する。その後、第2タグ物質に高親和性を有する第2高親和性物質を用いると共に、第2制限酵素によりこのcDNA断片を切断して、自身の内部に第2制限酵素切断部位を有しないcDNA断片(第1アダプタ付き第2cDNA断片)の群を回収する。その後、このcDNA断片から第2タグ物質を除去すると共に、第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第2アダプタ配列のライゲーションを行い、一端に第1アダプタ配列を有し他端に第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成する。
アダプタ付きcDNA断片群を作成した後は、このアダプタ付きcDNA断片の群に対し、第1アダプタ配列に相補的な配列を有する第1プライマーと、第2アダプタ配列に相補的な配列を有する第2プライマーとを用いて、PCRを行う。このようにPCRを行うことによって、cDNA断片を多量に増幅できる。従って、目的のcDNA断片が低濃度しかなくても、それを大幅に増幅できる。しかも、このアダプタ付きcDNA断片の群は、両端に同一アダプタ配列が結合したcDNA断片は含まれず、理論上、一端に第1アダプタ配列を有し他端に第2アダプタ配列を有するcDNA断片のみからなるので、PCRを効率よく行うことができる。
その後、PCR産物についてゲル電気泳動を行う。その際、第1PCR工程でcDNA断片が大幅に増幅されているので、目的のcDNA断片を容易に検出できる。
その後、この電気泳動の結果に基づいて、ゲルから所望のcDNA断片を含むゲルを切り出し、このcDNA断片(遺伝子断片)を回収する。
このような方法でも、PCR工程でcDNA断片を効率よく増幅できるので、所望のcDNA断片(遺伝子断片)を効率よく取得できる。
なお、「第1タグ付きcDNA」、「cDNA」、「タグ物質」、「高親和性物質」、「制限酵素」、「第1アダプタ配列」、「第2アダプタ配列」、「第1プライマー」、「第2プライマー」、「電気泳動工程」、「cDNA断片回収工程」等は、前述した通りである。
更に、上記のいずれかに記載の遺伝子断片の取得方法であって、前記第1タグ付きcDNA群作成工程は、原核生物の細胞からmRNAを得るmRNA取得工程と、前記mRNAの3'末端にポリAを付加し、ポリA付加mRNAを得るポリA付加工程と、前記ポリA付加mRNAに前記第1タグ物質が付加されたポリTをハイブリダイズさせるポリTハイブリダイズ工程と、前記ポリTがハイブリダイズしたmRNAから前記第1タグ付きcDNAを合成するcDNA合成工程と、を含む遺伝子断片の取得方法とすると良い。
原核生物由来のmRNAはポリAテイルを持たないため、このままではcDNAを合成できない。
これに対し、本発明では、原核生物の細胞から得たmRNAにポリAを付加するので、これを利用することで容易にcDNAを合成できる。従って、原核生物を試料にしているにも拘わらず、アダプタ付きcDNA断片群を容易に作成でき、目的とする遺伝子断片を容易に取得できる。
上記の遺伝子断片の取得方法であって、前記mRNA取得工程は、前記原核生物の細胞から全RNAを抽出する全RNA抽出工程と、16S rRNAの一部に相補的な配列を有する第1ヌクレオチドを前記16S rRNAにハイブリダイズさせると共に、23S rRNAの一部に相補的な配列を有する第2ヌクレオチドを23S rRNAにハイブリダイズさせる第1,第2ヌクレオチドハイブリダイズ工程と、前記第1ヌクレオチドのうち、前記16S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的である配列を有し、第3タグ物質が付加された第3ヌクレオチドを、前記16S rRNAと前記第1ヌクレオチドの結合物にハイブリダイズさせると共に、前記第2ヌクレオチドのうち、前記23S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的である配列を有し、第4タグ物質が付加された第4ヌクレオチドを、前記23S rRNAと上記第2ヌクレオチドの結合物にハイブリダイズさせる第3,第4ヌクレオチドハイブリダイズ工程と、前記全RNAから、前記第3タグ物質に高親和性を有する第3高親和性物質を用いて、前記16S rRNAと前記第1ヌクレオチドと前記第3タグ物質を有する前記第3ヌクレオチドとの結合物を除去すると共に、前記第4タグ物質に高親和性を有する第4高親和性物質を用いて、前記23S rRNAと前記第2ヌクレオチドと前記第4タグ物質を有する前記第4ヌクレオチドとの結合物を除去する除去するrRNA除去工程と、を含む遺伝子断片の取得方法とすると良い。
原核生物においては、mRNAにポリAテイルが存在しないため、真核生物の場合のように、ポリAテイルを利用して抽出した全RNAからmRNAを精製(濃縮)する方法を採ることができない。
これに対し、上記取得方法では、まず、原核生物の細胞から全RNAを抽出する。そして、抽出した全RNAに対し、16S rRNAの一部に相補的な配列を有する第1ヌクレオチドを16S rRNAにハイブリダイズさせると共に、23S rRNAの一部に相補的な配列を有する第2ヌクレオチドを23S rRNAにハイブリダイズさせる。その後、第1ヌクレオチドのうち、16S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的な配列を有し、第3タグ物質が付加された第3ヌクレオチドを、16S rRNAと第1ヌクレオチドの結合物にハイブリダイズさせる。また、第2ヌクレオチドのうち、23S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的な配列を有し、第4タグ物質が付加された第4ヌクレオチドを、23S rRNAと第2ヌクレオチドの結合物にハイブリダイズさせる。その後、全RNAから、16S rRNAと第1ヌクレオチドと第3タグ物質が付加された第3ヌクレオチドとの結合物を除去すると共に、23S rRNAと第2ヌクレオチドと第4タグ物質が付加された第4ヌクレオチドとの結合物を除去する。
このような方法によれば、全RNAから、全RNAの中に多量に存在するrRNA(16S rRNA及び23S rRNA)の大部分を除去できる。従って、mRNAを容易により高純度に濃縮できる。
なお、「第1ヌクレオチド」、「第2ヌクレオチド」、「第3ヌクレオチド」、「第4ヌクレオチド」、「タグ物質」等については、前述した通りである。
更に、上記のいずれかに記載の遺伝子断片の取得方法であって、前記cDNA断片回収工程で回収した前記cDNA断片について、前記第1アダプタ配列に相補的な配列を有する第3プライマーと、前記第2アダプタ配列に相補的な配列を有する第4プライマーとを用いて、再度PCRを行う第2PCR工程を備える遺伝子断片の取得方法とすると良い。
本発明によれば、cDNA断片回収工程後、連結工程前に、回収したcDNA断片について、第1アダプタ配列に相補的な配列を有する第3プライマーと、第2アダプタ配列に相補的な配列を有する第4プライマーとを用いて、再度PCR反応を行う第2PCR工程を備える。
このような工程を行えば、cDNA断片回収工程で回収したcDNA断片が少量しかなくても、それを大幅に増幅できる。従って、効率よくcDNA断片を取得できる。
なお、このPCR工程で使用する「第3プライマー」は、第1アダプタ配列に相補的な配列を有するものであればよく、例えば、上記の第1プライマーを利用してもよい。但し、後の導入工程を考慮して、適当な制限酵素の認識配列を有する第3プライマーを利用すれば、導入工程を効率よく、また、確実に行うことができる。同様に、「第4プライマー」は、第2アダプタ配列に相補的な配列を有するものであればよく、例えば、上記の第2プライマーを利用してもよいが、適当な制限酵素の認識配列を有する第4プライマーを利用すれば、導入工程を効率よく、また、確実に行うことができる。なお、これら第3,第4プライマーには、標識物質は特に要しない。
上記の遺伝子断片の取得方法であって、前記cDNA断片回収工程後、または、前記第2PCR工程を有する場合には第2PCR工程後、前記cDNA断片をプラスミドベクターに連結し、組換え体プラスミドを形成する連結工程と、上記組換え体プラスミドを大腸菌に導入する導入工程と、を備える遺伝子断片の取得方法とすると良い。
本発明によれば、第2PCR工程を有しない場合には回収工程後、または、第2PCR工程を有する場合には第2PCR工程後、目的のcDNA断片をプラスミドベクターに連結し、組換え体プラスミドを形成する連結工程を備える。そして更に、この組換え体プラスミドを大腸菌に導入する導入工程を備える。
このように、回収したcDNA断片をプラスミドベクターに連結し、大腸菌に導入しておけば、cDNA断片の構造解析をする場合などに有効である。即ち、形質転換したその大腸菌を培養し、それからcDNA断片を有するプラスミドDNAを抽出すれば、これを例えば塩基配列の決定等の構造解析に用いることができる。
以下、参考例及び本発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。
参考例
「1段階連結法」によって、cDNA断片の一端に既知の第1アダプタ配列を有し他端に既知の第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成する方法について、図1〜図4を参照しつつ説明する。図1は、アダプタ付きcDNA断片161の群を作成する方法のうち、第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程までを示す説明図である。図2は、アダプタ付きcDNA断片161の群を作成する方法のうち、第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程後の工程を示す説明図である。図3は、原核生物由来の全RNAからmRNAを濃縮するためにrRNAを除去する方法を示す説明図である。図4は、第1アダプタ配列及び第2アダプタ配列を示す説明図である。
アダプタ付きcDNA断片群161の作成にあたって、まず、図1に模式的に示すように、一端に第1タグ物質103が付加されたcDNA(第1タグ付きcDNA)101の群を作成する(第1タグ付きcDNA群作成工程)。
この工程では、まず、原核生物の細胞から高純度のmRNAを得る(mRNA取得工程)。図3に全RNAからmRNAを濃縮するために、16S rRNAを除去する方法を模式的に示す。23S rRNAの除去についても基本的に同じである。
詳細には、原核生物の細胞から全RNAを抽出する(全RNA抽出工程)。その後、16S rRNAの一部に相補的な配列を有する第1ヌクレオチド201を16S rRNAにハイブリダイズさせると共に、23S rRNAの一部に相補的な配列を有する第2ヌクレオチドを23S rRNAにハイブリダイズさせる(第1,第2ヌクレオチドハイブリダイズ工程)。更に、第1ヌクレオチド201のうち、16S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的である配列を有し、第3タグ物質205が付加された第3ヌクレオチド203を、16S rRNAと第1ヌクレオチド201の結合物にハイブリダイズさせる。また、第2ヌクレオチドのうち、23S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的である配列を有し、第4タグ物質が付加された第4ヌクレオチドを、23S rRNAと上記第2ヌクレオチドの結合物にハイブリダイズさせる(第3,第4ヌクレオチドハイブリダイズ工程)。その後、全RNAから、第3タグ物質205に高親和性を有する第3高親和性物質を用いて、16S rRNAと第1ヌクレオチド201と第3タグ物質205を有する第3ヌクレオチド203との結合物を除去する。また、第4タグ物質に高親和性を有する第4高親和性物質を用いて、23S rRNAと第2ヌクレオチドと第4タグ物質を有する第4ヌクレオチドとの結合物を除去し、mRNAを濃縮する(rRNA除去工程)。
本参考例では、試験対象として、原核生物であるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を用意した。そして、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を、イノシトールを添加した培地で培養し、この細胞から全RNAを抽出した。なお、イノシトールを添加することにより、イノシトール分解遺伝子郡の一遺伝子である iolJ の mRNAが転写されているはずである。この全RNAの抽出は、RNA抽出キット(Rneasy Protect Bacterial Mini Kit)を用いて、添付のマニュアルに従って行った。その後、抽出した全RNA10μgを用いて、rRNAを除去しmRNAを濃縮した。この精製(濃縮)には、MICROB Express Bacterial mRNA Isolation Kit(Ambion社製)を使用した。精製法は、添付のマニュアルに従った。かくして、バチルス・サブティリスのmRNAを得た(濃縮した)。
次に、抽出・精製したmRNAの3'末端にポリAを付加し、ポリA付加mRNAを得る(ポリA付加工程)。
本参考例では、インビトロジェン社製のPolyA化キットを使用して、mRNAのポリA化を行った。mRNAは1000ng使用した。ポリA化反応の終了後、反応液に TE buffer 100μlとフェノール・クロロフォルム溶液 200μlを加えて混合した。続いて、この混合液を15,000rpmで5分間、室温で遠心分離した。そして、上澄み溶液を185μl(92.5μl×2)吸い取った。続いて、この上澄み溶液に 3M 酢酸ナトリウムを18.5μl加えて混合した。更に、この溶液に520μlの99.5%エタノールを加えてよく混合した。その後、この溶液を−80℃で10分間保冷した。その後、これを15,000rpmで15分間、4℃で遠心分離した後、70%エタノールで沈殿をリンスした。続いて、これを15,000rpmで3分間、4℃で遠心分離し、上澄みを除去した。その後、沈殿を風乾させ、DEPC処理水7μlに溶解した。かくして、3'末端にポリAテイルが付加したmRNAを得た。
次に、このポリA付加mRNAに、第1タグ物質が付加されたポリTをハイブリダイズさせる(ポリTハイブリダイズ工程)。続いて、このポリTがハイブリダイズしたmRNAからcDNA(第1タグ付きcDNA)を合成する(cDNA合成工程)(図1参照)。
本参考例では、mRNAの3'末端側のポリAテイルに相補的なオリゴdTプライマーをビオチン(第1タグ物質)103で標識化したものをプライマーとして用いて、cDNA(第1タグ付きcDNA)101を合成した。
まず、上記の混合物を65℃で5分間加温後、氷中で1分間以上放置した。
一方で、下記の混合物を作成した。なお、この混合物の作成には、インビトロジェン社製のキットを使用した。
そして、この混合物を氷中で保冷しておいた上記混合物に加えて穏やかに混合した後、42℃で1時間インキュベートした。この反応液を1st Strand Mixとする。
また一方で、下記の混合物(これを2nd Strand Mixとする)を作成した。この混合物も、インビトロジェン社製のものを利用した。
そして、この混合物を上記の1st strand合成反応が終了するまで氷中に保存した。
次に、冷却した2nd Strand Mix 130μlを、上記の1st Strand Mixに加えて穏やかに混合した後、16℃で2時間反応させた。その後、MinElute Reaction kit を使用して、反応液を精製濃縮した。このとき、1本のチューブで1サンプルを処理した。最終溶出量は、10μlの溶出を2回繰り返し、18μlとした。かくして、タグ物質103が付加されたcDNA(第1タグ付きcDNA)101の群を得た。
次に、図1に示すように、cDNA(第1タグ付きcDNA)101の群を第1制限酵素により切断して、cDNA断片(第1cDNA断片)111の群を得る(第1切断工程)。このcDNA断片111の群には、第1タグ物質103を有するcDNA断片(第1タグ付き第1cDNA断片)113の他、例えば、両端とも第1制限酵素で切断されたcDNA断片など、第1タグ物質103を持たないcDNA断片(タグなし第1cDNA断片)115も多数存在する。
本参考例では、下記の混合物を作成し、37℃で2時間反応させた。なお、第1制限酵素として、4塩基認識制限酵素の1つであるHhaIを用いた。
次に、図1に示すように、第1タグ物質103に高親和性を有する第1高親和性物質123を利用して、cDNA断片(第1cDNA断片)111の群の中から、第1タグ物質103を有するcDNA断片(第1タグ付き第1cDNA断片)113の群を回収する(第1タグ付き第1cDNA断片群回収工程)。その際、第1タグ物質103を持たないcDNA断片(タグなし第1cDNA断片)115は除去される。
本参考例では、ストレプトアビジンが固定されたマグネットビーズ(第1高親和性物質)123を用いて、ビオチン(第1タグ物質)103を捕捉し、ビオチン103を有するcDNA断片113のみを回収した。
具体的には、まず、マグネットビーズ123の洗浄を行った。即ち、400μlのマグネットビーズ123をマイクロチューブに移し、スタンドにマイクロチューブを立てた。そして、マグネットビーズ123がスタンド側に引きつけられた後、上澄みを除去した。その後、スタンドからマイクロチューブをはずし、洗浄buffer(5mM Tris、0.5mM EDTA、1M NaCl:pH=7.5)を700μl加え、ピペッティングにより懸濁した。そして、再度マイクロチューブをスタンドに立てて、マグネットビーズ123をスタンド側に引きつけ、上澄みを除去した。その後、再度この洗浄操作を行った。その後、スタンドからマイクロチューブをはずし、洗浄bufferを300μl加え、ピペッティングにより懸濁した。そして、マイクロチューブを再びスタンドに立てて、上澄みを除去した後、2×洗浄bufferを195μl加えて懸濁し、ビーズ懸濁液とした。
次に、上記の制限酵素の反応液30μlに TE bufferを70μl加え、更に、上記のビーズ懸濁液を100μl添加した。そして、TOMY mixer(MT-360) を用いて、目盛り4〜5で15分間混合した。混合後、マイクロチューブをスタンドに立てて、マグネットビーズ123をスタンド側に引きつけ、上澄みを除去した。なお、この上澄み液には、第1タグ物質103を持たないcDNA断片(タグなし第1cDNA断片)115が含まれている。その後、洗浄bufferを用いて上述したように洗浄を行った(500μl×2回、200μl×1回)。この洗浄後、スタンドからマイクロチューブをはずし、0.1×TE bufferを200μl加え、ピペッティングにより懸濁洗浄した。その後、マイクロチューブをスタンドに戻し、上澄みを除去した後、水を50μl加えた。その後、再度スタンドからマイクロチューブをはずし、ピペッティングにより懸濁した。かくして、第1タグ物質103を有するcDNA断片(第1タグ付き第1cDNA断片)113の群を得た。
次に、図1に示すように、第1タグ付き第1cDNA断片113の群を第2制限酵素により切断して、新たなcDNA断片(第2cDNA断片)131の群を得る。このcDNA断片131の群には、一端が第1制限酵素で切断され他端が第2制限酵素で切断され、タグ物質103を持たないcDNA断片(タグなし第2cDNA断片)137の他、両端とも第2制限酵素で切断され、タグ物質103を持たないcDNA断片(タグなしcDNA断片)135や、一端が第2制限酵素で切断され、第1タグ物質103を有するcDNA断片133が含まれる。なお、両端とも第1制限酵素で切断されたcDNA断片は、前の工程で既に除去されているため、このcDNA断片131の群には存在しない。新たなcDNA断片(第2cDNA断片)131の群を得た後は、この中から第1タグ物質103を持たないcDNA断片(タグなし第2cDNA断片)135,137の群を回収する(第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程)。
本参考例では、下記の混合物を作成した。なお、第2制限酵素として、4塩基認識制限酵素の1つであるSau3AIを用いた。
そして、この混合液を上記のビーズ入りマイクロチューブに100μl添加し穏やかに混合した。そして、37℃で2時間、穏やかに振盪しながら反応させた。
反応終了後、スタンドにマイクロチューブを立ててマグネットビーズ123を引きつけ、上澄み140μlを新しいマイクロチューブに移した。そして、再度、TE buffer 60μlをビーズ入りマイクロチューブに入れ、スタンドからはずしてピペッティングにより穏やかに混合した。その後、再びスタンドにマイクロチューブを立ててマグネットビーズ123を引きつけ、上澄み60μlを新しいマイクロチューブに移した。その後、MinElute Reaction kit(QIAGEN)を使用して、サンプルを精製濃縮した。このとき、溶出操作は1回のみとした(溶出量は9μl)。かくして、タグなし第2cDNA断片135,137の群を得た。
次に、図2に示すように、このタグなし第2cDNA断片135,137の群に対して、第2タグ物質144を有すると共に第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する第1アダプタ配列143、及び、第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する第2アダプタ配列145のライゲーションを行い、少なくとも第2アダプタ配列145が結合したアダプタ付きcDNA断片(アダプタ付き第2cDNA断片)141の群を作成する(第1,第2アダプタライゲーション工程)。このアダプタ付きcDNA断片141の群には、一端に第1アダプタ配列143が結合し他端に第2アダプタ配列145が結合したアダプタ付きcDNA断片(第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片)149の他、両端に第2アダプタ配列145が結合したアダプタ付きcDNA断片(第2アダプタ付き第2cDNA断片)147も多数含まれる。
本参考例では、第2タグ物質144を有する第1アダプタ配列143として、ビオチン(第2タグ物質)144を有し、図4(a)に示す配列からなる第1アダプタ配列143を用意した(以下、これをタグ付きHhaIアダプタとも言う)。また、第2アダプタ配列145として、図4(b)に示す配列からなる第2アダプタ配列145を用意した(以下、これをSau3AIアダプタとも言う)。そして、0.4μlのタグ付きHhaIアダプタ溶液(5pmol/μl)及び0.8μlのSau3AIアダプタ溶液(5pmol/μl)を上記の溶出液に加え、それに ligation kit ver.2(タカラバイオ)のI液を10μl添加し、穏やかに混合した。その後、16℃で一晩反応させた。かくして、アダプタ付きcDNA断片141の群を得た。
次に、図2に示すように、第2タグ物質144に高親和性を有する第2高親和性物質153を利用して、アダプタ付き第2cDNA断片141の群の中から、第2タグ物質144を有する第1アダプタ配列143をも結合した第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片149の群を回収する(第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片群回収工程)。その際、両端に第2アダプタ配列145が結合した第2アダプタ付き第2cDNA断片147は除去される。
本参考例では、ストレプトアビジンが固定されたマグネットビーズ(第2高親和性物質)153を用いて、ビオチン(第2タグ物質)144を捕捉し、ビオチン144を有するcDNA断片149のみを回収した。この工程のマグネットビーズ153の洗浄及び結合操作等は、基本的に、前述した第1タグ付き第1cDNA断片群回収工程と同様である。最終的には、マグネットビーズ153に nuclease free water 50μl加えて懸濁した。かくして、第2タグ物質144を有する第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片149の群を得た。
次に、図2に示すように、第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片149から第2タグ物質144を除去し、一端に第1アダプタ配列143を有し他端に第2アダプタ配列145を有するアダプタ付きcDNA断片161の群を回収する(アダプタ付きcDNA断片群回収工程)。
本参考例では、下記の混合物を作成した。なお、第3制限酵素として、8塩基認識制限酵素の1つであるNotIを用いた。
そして、この混合液を上記のビーズ入りマイクロチューブに100μl添加し穏やかに混合した。そして、37℃で3時間、穏やかに振盪しながら反応させた。
反応終了後、スタンドにマイクロチューブを装着し、マグネットビーズ153を引きつけ、上澄み140μlを回収した。続いて、nuclease free water を60μl添加し、ビーズ懸濁後、再度マグネットビーズ153をスタンド側に引きつけ、上澄み液60μlを回収する。その後、MinElute Reaction kit を使用して、サンプルを精製濃縮した。このとき、溶出操作は3回とした(10μlの溶出bufferを3回カラムに通して、最終溶出量を27μlとした)。そして、この溶出液を数倍〜数十倍に希釈した。かくして、一端に第1アダプタ配列143を有し他端に第2アダプタ配列145を有するアダプタ付きcDNA断片161の群を得た。
次いで、このアダプタ付きcDNA断片161の群の中から、所望のcDNA断片を取得する遺伝子断片の取得方法について、図5〜図7を参照しつつ説明する。図5は、アダプタ付きcDNA断片161の群の中から、所望のcDNA断片(遺伝子断片)を取得する方法を示す説明図である。図6は、バチルス・サブティリスのイノシトール分解遺伝子郡の一遺伝子である iolJ の塩基配列と、その中に存在するHhaI切断部位及びSau3AI切断部位を示す説明図である。図7は、取得したcDNA断片(遺伝子断片)について電気泳動した結果を示す図面に代わる写真である。
まず、図5に示すように、アダプタ付きcDNA断片161の群に対し、第1アダプタ配列143に相補的な配列を有する第1プライマーと、第2アダプタ配列145に相補的な配列を有する第2プライマーとを用いて、PCRを行う(第1PCR工程)。
本参考例では、このプライマーセットとして、第1アダプタ配列143に相補的な配列と、増幅させる方向に更に2塩基の配列(gg)を有し、且つ、近赤外蛍光色素IRD-800(標識物質)が結合された第1プライマー(オリゴヌクレオチド1)と、第2アダプタ配列145に相補的な配列を有する第2プライマー(オリゴヌクレオチド2)を使用した。なお、第1,第2プライマーは、それぞれ公知の手法により合成すればよい。
第1プライマー(オリゴヌクレオチド1):
5'-catagaatcaaatcagttgcgc gg-3'
第2プライマー(オリゴヌクレオチド2):
5'-gcactagtgcaatcgcacttgaacgatgatc-3'
PCR反応の反応組成は、次の通りである。
また、PCRは、BIO-RAD社製のI-Cysler を用いて行った。PCR条件は、Stepdown PCR(Biotechniques,1996,20:478-485を参照されたい。)により行った。
このようなPCRにより、第1,第2アダプタ配列143,145に囲まれたcDNA断片162が増幅される。本参考例では、イノシトール分解遺伝子郡の一遺伝子である iolJ の一部が回収されているはずである。第1,第2プライマーを考慮すると、図6に塩基配列とHhaIサイト及びSau3AIサイトを示すイノシトール遺伝子のうち、768-839 の断片を含む 117bp のcDNA断片が増幅されるはずである。
次に、図5に示すように、第1PCR工程で増幅されたcDNA断片162の群についてゲル電気泳動を行う(電気泳動工程)。
本参考例では、増幅したcDNA断片162の群を、蛍光色素の読み取れるDNAシークエンサー(LI-COR社製LIC-4200L(S)-1)に供試し、サイズ分画のためにアクリルアミドゲル電気泳動を行った。アクリルアミドゲル163の組成は、上記DNAシークエンサーに付属のマニュアルに従った。アクリルアミドゲル電気泳動を行った結果、図7のレーン2に示すように、117bpの位置にシグナルが現れた。なお、図7はシークエンサのデータより取得した画像である。
なお、図7のレーン1は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を培養する際にイノシトールを添加しなかった場合のものである。それ以外は、本参考例と同様に試験を行った。イノシトールを添加しない場合には、イノシトール分解遺伝子が発現しないため、イノシトール分解遺伝子由来のcDNA断片は検出されない。
また、レーン3及び4については、実施例で後述する。
次に、図5に示すように、電気泳動工程の結果に基づいて、ゲルから所望のcDNA断片164を含むゲルを切り出し、このcDNA断片164を回収する(cDNA断片回収工程)。
本参考例では、電気泳動を行ったゲルについて、濾紙を使用してゲルをゲル板から剥がした。続いて、濾紙にくっ付いたゲルを蛍光色素の検出できるスキャナー上に載置し、ゲル全体をイメージ化した。そして、目的のcDNA断片164がゲル中のどの位置にあるかを把握し、この目的のcDNA断片164を含むゲルを切り出した。なお、本参考例では、LI-COR社のゲルイメージングシステムオデッセイを使用した。
その後、切り出したアクリルアミドゲルから目的のcDNA断片164を回収した。このDNAの抽出は、Omega Bio-tek社の E.Z.N.A. Poly-Gel DNA Extraction kit を使用した。
次に、図5に示すように、cDNA断片回収工程で回収したcDNA断片164について、第1アダプタ配列143に相補的な配列を有する第3プライマーと、第2アダプタ配列145に相補的な配列を有する第4プライマーとを用いて、再度PCRを行う(第2PCR工程)。
本参考例では、フォワード側には、第1アダプタ配列143に相補的な配列を有すると共に制限酵素NotI部位の配列を有する第3プライマー(オリゴヌクレオチド3)を、リバース側には、第2アダプタ配列145に相補的な配列を有すると共に制限酵素SpeI部位の配列を有する第4プライマー(オリゴヌクレオチド4)を用いて、PCR反応を行った。
第3プライマー(オリゴヌクレオチド3):
5'-cagcggccgct catagaatcaaatcagttgcgc gg-3'
第4プライマー(オリゴヌクレオチド4):
5'-gcactagtgcaatcgcacttgaacgatgatccg-3'
また、この第2PCR工程においても、PCR反応は、パーキンエルマー社製の GeneAmp 2400 を用い、Stepdown PCR(Biotechniques,1996,20:478-485を参照されたい。)の条件により行った。
次に、図5に示すように、cDNA断片(PCR産物)164をプラスミドベクター165に連結し、組換え体プラスミド166を形成する(連結工程)。
本参考例では、増幅したcDNA断片164の産物を制限酵素NotIとSpeIで処理した上で、プラスミドベクター(pBluescriptII)165に連結し、組換え体プラスミド166を形成した。この連結は、宝酒造社製のライゲーションキットver.2 を使用し、その添付マニュアルに従って行った。
次に、この組換え体プラスミド166を大腸菌に導入する(導入工程)。
本参考例では、コンピテントセルとして E.coli DH5αを使用し、公知の手法により、組換え体プラスミド166を大腸菌に導入した。
次に、形質転換した大腸菌をプレート培養したところ、126個のコロニーが得られた。いくつかのコロニーからプラスミドDNAを抽出し、挿入されたcDNA断片164の塩基配列を調べたところ、確かに、本参考例の標的遺伝子である、iolJ の一部であった。一方、第2PCR工程で得られたcDNA断片164を制限酵素SpeIのみで処理し、プラスミドベクター165に連結した場合には、6個のコロニーが得られた。これは、cDNA断片の両端に同一アダプタが連結されたものであると考えられる。従って、本参考例によれば、同一アダプタが両端に結合したcDNA断片の存在割合は約5%しかなく、一端に第1アダプタ配列143、他端に第2アダプタ配列145が結合したcDNA断片161の割合は約95%もある。
一方、図9を用いて説明した旧法を利用した場合、得られたcDNA断片を制限酵素NotIとSpeIで処理し、プラスミドベクターに連結すると、57個のコロニーが得られ、cDNA断片を制限酵素SpeIのみで処理し、プラスミドベクターに連結すると、36個のコロニーが得られた。従って、同一アダプタが両端に結合したcDNA断片の存在割合は約39%もあり、一端に第1アダプタ配列、他端に第2アダプタ配列が結合したcDNAの割合は約61%しかない。
このことから、前述の方法により、一端に第1アダプタ配列143、他端に第2アダプタ配列145が結合したアダプタ付きcDNA断片161の群を高純度に作成でき、効率よく所望の遺伝子断片を取得できることが判る。
以上で説明したように、本参考例では、まず、一端に第1タグ物質103が付加されたcDNA(第1タグ付きcDNA)101の群を作成する。次に、このcDNA101の群を第1制限酵素により切断して、cDNA断片(第1cDNA断片)111の群を得る。その後、第1高親和性物質123を利用して、このcDNA断片111の群の中から、第1タグ物質103を有するcDNA断片(第1タグ付き第1cDNA断片)113の群を回収する。その後、回収したcDNA断片113の群を第2制限酵素により切断して、cDNA断片(第2cDNA断片)131の群を得る。また、このcDNA断片131の群の中から、第1タグ物質103を有しないcDNA断片(タグなし第2cDNA断片)135,137の群を回収する(図1参照)。
次に、回収したcDNA断片135,137の群に対して、第2タグ物質144を有する第1アダプタ配列143と第2アダプタ配列145のライゲーションを行い、少なくとも第2アダプタ配列145が結合したcDNA断片(アダプタ付き第2cDNA断片)141の群を作成する。その後、第2高親和性物質153を用いて、このcDNA断片141の群の中から、第1アダプタ配列143をも結合したcDNA断片(第1,第2アダプタ付き第2cDNA断片)149の群を回収する。その後は、このcDNA断片149から第2タグ物質144を除去し、一端に第1アダプタ配列143を有し他端に第2アダプタ配列145を有するアダプタ付きcDNA断片161の群を回収する(図2参照)。
このような方法でアダプタ付きcDNA断片161の群を作成すれば、理論的には、両端に第1アダプタ配列143が結合したアダプタ付きcDNA断片や、両端に第2アダプタ配列145が結合したアダプタ付きcDNA断片は含まれなくなり、一端に第1アダプタ配列143を有し他端に第2アダプタ配列145を有するアダプタ付きcDNA断片161のみからなる、高純度のアダプタ付きcDNA断片群を作成できる。
更に、本参考例では、原核生物の細胞から抽出・濃縮したmRNAにポリAを付加するので、これを利用することで、容易にcDNA101を合成するできる。従って、原核生物を試料にしているにも拘わらず、アダプタ付きcDNA断片群を容易に作成できる。
また、本参考例では、mRNA取得工程において、まず、原核生物の細胞から全RNAを抽出する。そして、抽出した全RNAに対し、16S rRNAの一部に相補的な配列を有する第1ヌクレオチドを16S rRNAにハイブリダイズさせると共に、23S rRNAの一部に相補的な配列を有する第2ヌクレオチドを23S rRNAにハイブリダイズさせる。その後、第1ヌクレオチドのうち、16S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的な配列を有し、第3タグ物質が付加された第3ヌクレオチドを、16S rRNAと第1ヌクレオチドの結合物にハイブリダイズさせる。また、第2ヌクレオチドのうち、23S rRNAに相補的な部位とは別の部位に対し相補的な配列を有し、第4タグ物質が付加された第4ヌクレオチドが付加された第2タグ物質を、23S rRNAと第2ヌクレオチドの結合物にハイブリダイズさせる。その後、全RNAから、16S rRNAと第1ヌクレオチドと第3ヌクレオチドとの結合物を除去すると共に、23S rRNAと第2ヌクレオチドと第4ヌクレオチドとの結合物を除去する。
このような方法によれば、全RNAから、全RNAの中に多量に存在する16S rRNAと23S rRNAの大部分を除去できる。従って、mRNAを容易により高純度に濃縮できる。
また、本参考例では、アダプタ付きcDNA断片161の群を作成した後、これに対し、第1アダプタ配列143に相補的な配列を有する第1プライマーと、第2アダプタ配列145に相補的な配列を有する第2プライマーとからなるプライマーセットであって、少なくとも一方のプライマーに標識物質を有するプライマーセットを用いて、PCRを行う。このようにPCRを行うことによって、cDNA断片162を多量に増幅できる。従って、cDNA断片162の群の中に存在する目的のcDNA断片164が低濃度であっても、それを大幅に増幅できる。しかも、このPCRにおいては、このアダプタ付きcDNA断片161の群が、従来とは異なり、両端に同一アダプタ配列が結合したcDNA断片は含まれず、一端に第1アダプタ配列143を有し他端に第2アダプタ配列145を有するcDNA断片161のみからなるので、PCRを効率よく行うことができる。その後、PCR産物についてゲル電気泳動を行う。その際、cDNA断片162を容易に検出できる。そして、電気泳動の結果に基づいて、ゲルから所望のcDNA断片164を含むゲルを切り出し、このcDNA断片(遺伝子断片)164を回収する。
このような方法では、PCR工程で効率よくcDNA断片162を増幅できるので、所望のcDNA断片(遺伝子断片)164を効率よく取得できる。
また、本参考例では、cDNA断片回収工程後、連結工程前に、回収したcDNA断片164について、第1アダプタ配列143に相補的な配列を有する第3プライマーと、第2アダプタ配列145に相補的な配列を有する第4プライマーとを用いて、再度PCR反応を行う第2PCR工程を備える。
このような工程を行えば、cDNA断片回収工程で回収したcDNA断片164が少量しかなくても、それを大幅に増幅できる。
また、本参考例では、第2PCR工程後、目的のcDNA断片164をプラスミドベクター165に連結し、組換え体プラスミド166を形成する連結工程を備える。そして更に、この組換え体プラスミド166を大腸菌に導入する導入工程を備える。
このように、回収したcDNA断片164をプラスミドベクター165に連結し、大腸菌に導入しておけば、cDNA断片164の構造解析をする場合などに有効である。即ち、形質転換したその大腸菌を培養し、それからcDNA断片165を有するプラスミドDNA166を抽出すれば、これを例えば塩基配列の決定等の構造解析などに利用できる。
実施例
次いで、実施例について説明する。なお、上記参考例と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
まず、「2段階連結法」によって、一端に既知の第1アダプタ配列143を有し他端に既知の第2アダプタ配列145を有するアダプタ付きcDNA断片271の群を作成する方法について説明する。
アダプタ付きcDNA断片群271の作成にあたって、まず、上記参考例と同様にして、第1タグ付きcDNA群作成工程から第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程までを行う(図1参照)。
次に、タグなし第2cDNA断片135,137の群に対して、図8に示すように、第2タグ物質144を有すると共に第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する第1アダプタ配列143のライゲーションを行い、第1アダプタ配列143が結合したcDNA断片(第1アダプタ付き第2cDNA断片)241の群を作成する(第1アダプタライゲーション工程)。その際、図中に示すように、第2cDNA断片同士が再結合することもある。
本実施例では、第2タグ物質144を有する第1アダプタ配列143は、上記参考例と同様に、ビオチン(第2タグ物質)144を有し、図4(a)に示す配列からなる第1アダプタ配列143(タグ付きHhaIアダプタ)である。そして、0.4μlのHhaIアダプタ溶液(5pmol/μl)を溶出液に加え、それに ligation kit ver.2(タカラバイオ)のI液を10μl添加し、穏やかに混合した。その後、16℃で一晩反応させた。かくして、第1アダプタ付き第2cDNA断片241の群を得た。
次に、図8に示すように、第2制限酵素により第1アダプタ付き第2cDNA断片241を切断して、新たなcDNA断片251の群を得る。また、第2タグ物質144に高親和性を有する第2高親和性物質153を用いて、このcDNA断片251の中から、自身の内部に第2制限酵素切断部位を有しない第1アダプタ付き第2cDNA断片253の群を回収する(第2切断・第1アダプタ付き第2cDNA断片群回収工程)。その際、第2タグ物質144を持たないcDNA断片255は除去される。
本実施例では、上記参考例と同様に、ストレプトアビジンが固定されたマグネットビーズ(第2高親和性物質)153を用いた。マグネットビーズ153の洗浄及び結合操作等は、基本的に、参考例で前述した第1タグ付き第1cDNA断片群回収工程と同様にして行う。
また、下記の混合物を作成した。なお、第2制限酵素として、4塩基認識制限酵素の1つであるSau3AIを用いた。
そして、この混合液を上記のビーズ入りチューブに150μl添加して混合する。そして、37℃で2時間、穏やかに振盪しながら反応させた。
反応終了後、ビーズの洗浄操作を行い、続いて、ビーズを50μlの nuclease free water に懸濁した。かくして、自身の内部に第2制限酵素切断部位を有しない第1アダプタ付き第2cDNA断片253の群を得た。
次に、図8に示すように、第2制限酵素切断部位を有しない第1アダプタ付き第2cDNA断片253から第2タグ物質144を除去し、タグなし第1アダプタ付き第2cDNA断片261の群を回収する。
本実施例では、下記の混合物を作成した。なお、第3制限酵素として、6塩基認識制限酵素の1つであるNotIを用いた。
そして、この混合液を上記のビーズ入りチューブに100μl添加して混合する。そして、37℃で3時間、穏やかに振盪しながら反応させた。
反応終了後、スタンドにマイクロチューブを装着し、マグネットビーズ153を引きつけ、上澄み140μlを回収した。続いて、nuclease free water を60μl添加し、ビーズ懸濁後、再度マグネットビーズ153をスタンドに引きつけ、上澄み液60μlを回収する。その後、MinElute Reaction kit を使用して、サンプルを精製濃縮した。このとき、溶出操作は1回のみとした(溶出量は9μl)。
次に、図8に示すように、タグなし第1アダプタ付き第2cDNA断片261の群に対して、第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する第2アダプタ配列145のライゲーションを行い、一端に第1アダプタ配列143を有し他端に第2アダプタ配列145を有するアダプタ付きcDNA断片271の群を作成する(アダプタ付きcDNA断片群作成工程)。
本実施例では、第2アダプタ配列145は、上記参考例と同様に、図4(b)に示す配列からなる第2アダプタ配列145(Sau3AIアダプタ)である。そして、0.4μlのSau3AIアダプタ溶液(5pmol/μl)を溶出液に加え、それに ligation kit ver.2(タカラバイオ)のI液を10μl添加し、穏やかに混合した。その後、16℃で30分間反応させた。
その後、MinElute Reaction kit を使用して、サンプルを精製濃縮した。このとき、溶出操作は3回とした(最終溶出量は27μl)。そして、この溶出液を数倍〜数十倍に希釈した。かくして、一端に第1アダプタ配列143を有し他端に第2アダプタ配列145を有するアダプタ付きcDNA断片271の群を得た。
その後は、上記参考例と同様にして、このアダプタ付きcDNA断片271の群の中から、所望のcDNA断片(遺伝子断片)164を取得する(図5〜図7参照)。
本実施例においても、アクリルアミドゲル電気泳動を行った結果、図7のレーン4に示すように、117bpの位置にシグナルが現れた。
なお、図7のレーン3は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を培養する際にイノシトールを添加しなかった場合のものである。それ以外は、本実施例と同様に試験を行った。参考例の場合と同様に、イノシトールを添加しない場合には、イノシトール分解遺伝子が発現しないため、イノシトール分解遺伝子由来のcDNA断片は検出されない。
また、参考例と同様に、形質転換した大腸菌をプレート培養したところ、818個のコロニーが得られた。いくつかのコロニーからプラスミドDNAを抽出し、cDNA断片164の塩基配列を調べたところ、確かに、本実施例の標的遺伝子である、iolJ の一部であった。一方、第2PCR工程で得られたcDNA断片164を制限酵素SpeIのみで処理し、プラスミドベクター165に連結した場合には、65個のコロニーが得られた。これは、上記参考例と同様に、cDNA断片の両端に同一アダプタが連結されたものであると考えられる。従って、本実施例によれば、同一アダプタが両端に結合したcDNA断片の存在割合は約7%しかなく、一端に第1アダプタ配列143、他端に第2アダプタ配列145が結合したcDNA断片271の割合は約93%もある。
一方、前述したように、図9を用いて説明した旧法を利用した場合、同一アダプタが両端に結合したcDNA断片の存在割合は約39%もあり、一端に第1アダプタ配列、他端に第2アダプタ配列が結合したcDNAの割合は約61%しかない。
このことから、本発明を適用することにより、一端に第1アダプタ配列143、他端に第2アダプタ配列145が結合したアダプタ付きcDNA271の群を高純度に作成でき、効率よく所望の遺伝子断片を取得できることが判る。
以上で説明したように、本実施例では、まず、上記参考例と同様に、タグなし第2cDNA断片)の群を回収するところまで行う。次に、回収したcDNA断片131の群に対して、第2タグ物質144を有する第1アダプタ配列143のライゲーションを行い、第1アダプタ配列が結合したcDNA断片(第1アダプタ付き第2cDNA断片)241の群を作成する。その後、第2高親和性物質153を用いると共に、第2制限酵素によりこのcDNA断片241を切断して、自身の内部に第2制限酵素切断部位を有しないcDNA断片(第1アダプタ付き第2cDNA断片)253の群を回収する。その後、このcDNA断片253から第2タグ物質153を除去し、第2タグ物質153を有しないcDNA断片(タグなし第1アダプタ付き第2cDNA断片)261の群を回収する。その後、回収したcDNA断片261の群に対して、第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する第2アダプタ配列145のライゲーションを行い、一端に第1アダプタ配列143を有し他端に第2アダプタ配列145を有するアダプタ付きcDNA断片271の群を作成する。
このような方法でアダプタ付きcDNA断片271の群を作成しても、理論的には、両端に第1アダプタ配列143が結合したcDNA断片や、両端に第2アダプタ配列145が結合したcDNA断片は含まれなくなり、一端に第1アダプタ配列143を有し他端に第2アダプタ配列145を有するアダプタ付きcDNA断片271のみからなるアダプタ付きcDNA断片群を作成できる。
その後は、上記参考例と同様にして、遺伝子断片を取得する。本実施例でも、PCR工程で効率よくcDNA断片162を増幅できるので、所望のcDNA断片(遺伝子断片)164を効率よく取得できる。
その他、上記参考例と同様な部分は、上記参考例と同様な効果を奏する。
以上において、本発明を実施形態を実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
参考例に関し、両端に既知のアダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成する方法のうち、第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程までを示す説明図である。 参考例に関し、両端に既知のアダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成する方法のうち、第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程後の工程を示す説明図である。 参考例に関し、原核生物から抽出した全RNAからmRNAを濃縮するために、rRNAを除去する方法を示す説明図である。 参考例に関し、(a)は第1アダプタ配列を示す説明図であり、(b)は第2アダプタ配列を示す説明図である。 参考例に関し、アダプタ付きcDNA断片の群の中から、所望のcDNA断片(遺伝子断片)を取得する方法を示す説明図である。 参考例に関し、バチルス・サブティリスのイノシトール分解遺伝子の塩基配列と、その中に存在するHhaI切断部位及びSau3AI切断部位を示す説明図である。 参考例に関し、取得したcDNA断片について電気泳動した結果を示す図面に代わる写真である。 実施例に関し、両端に既知のアダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成する方法のうち、第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程後の工程を示す説明図である。 両端に既知のアダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成する方法を示す説明図である。

Claims (6)

  1. cDNA断片の一端に既知の第1アダプタ配列を有し他端に既知の第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成するアダプタ付きcDNA断片群の作成方法であって、
    cDNAの一方の端部に第1タグ物質が付加された第1タグ付きcDNAの群を作成する第1タグ付きcDNA群作成工程と、
    前記第1タグ付きcDNAの群を第1制限酵素により切断して、第1cDNA断片の群を得る第1切断工程と、
    前記第1タグ物質に高親和性を有する第1高親和性物質を用いて、前記第1cDNA断片の群の中から、前記第1タグ物質を有する第1タグ付き第1cDNA断片の群を回収する第1タグ付き第1cDNA断片群回収工程と、
    前記第1タグ付き第1cDNA断片の群を第2制限酵素により切断し、第2cDNA断片の群を得て、更に、この第2cDNA断片の群の中から、前記第1タグ物質を有しないタグなし第2cDNA断片の群を回収する第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程と、
    前記タグなし第2cDNA断片の群に対して、第2タグ物質が付加され前記第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第1アダプタ配列のライゲーションを行い、前記第1アダプタ配列が結合した第1アダプタ付き第2cDNA断片の群を作成する第1アダプタライゲーション工程と、
    前記第2タグ物質に高親和性を有する第2高親和性物質を用いると共に、前記第2制限酵素により前記第1アダプタ付き第2cDNA断片を切断して、自身の内部に前記第2制限酵素切断部位を有しない第1アダプタ付き第2cDNA断片の群を回収する第2切断・第1アダプタ付き第2cDNA断片群回収工程と、
    前記第2制限酵素切断部位を有しない第1アダプタ付き第2cDNA断片から前記第2タグ物質を除去すると共に、前記第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第2アダプタ配列のライゲーションを行い、一端に前記第1アダプタ配列を有し他端に前記第2アダプタ配列を有する前記アダプタ付きcDNA断片の群を作成するアダプタ付きcDNA断片群作成工程と、
    を備えるアダプタ付きcDNA断片群の作成方法。
  2. 請求項1に記載のアダプタ付きcDNA断片群の作成方法であって、
    前記第1タグ付きcDNA群作成工程は、
    原核生物の細胞からmRNAを得るmRNA取得工程と、
    前記mRNAの3'末端にポリAを付加し、ポリA付加mRNAを得るポリA付加工程と、
    前記ポリA付加mRNAに前記第1タグ物質が付加されたポリTをハイブリダイズさせるポリTハイブリダイズ工程と、
    前記ポリTがハイブリダイズしたmRNAから前記第1タグ付きcDNAを合成するcDNA合成工程と、
    を含む
    アダプタ付きcDNA断片群の作成方法。
  3. cDNA断片の一端に既知の第1アダプタ配列を有し他端に既知の第2アダプタ配列を有するアダプタ付きcDNA断片の群を作成し、その中から所望のcDNA断片を取得する遺伝子断片の取得方法であって、
    cDNAの一方の端部に第1タグ物質が付加された第1タグ付きcDNAの群を作成する第1タグ付きcDNA群作成工程と、
    前記第1タグ付きcDNAの群を第1制限酵素により切断して、第1cDNA断片の群を得る第1切断工程と、
    前記第1タグ物質に高親和性を有する第1高親和性物質を用いて、前記第1cDNA断片の群の中から、前記第1タグ物質を有する第1タグ付き第1cDNA断片の群を回収する第1タグ付き第1cDNA断片群回収工程と、
    前記第1タグ付き第1cDNA断片の群を第2制限酵素により切断し、第2cDNA断片の群を得て、更に、この第2cDNA断片の群の中から、前記第1タグ物質を有しないタグなし第2cDNA断片の群を回収する第2切断・タグなし第2cDNA断片群回収工程と、
    前記タグなし第2cDNA断片の群に対して、第2タグ物質が付加され前記第1制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第1アダプタ配列のライゲーションを行い、前記第1アダプタ配列が結合した第1アダプタ付き第2cDNA断片の群を作成する第1アダプタライゲーション工程と、
    前記第2タグ物質に高親和性を有する第2高親和性物質を用いると共に、前記第2制限酵素により前記第1アダプタ付き第2cDNA断片を切断して、自身の内部に前記第2制限酵素切断部位を有しない第1アダプタ付き第2cDNA断片の群を回収する第2切断・第1アダプタ付き第2cDNA断片群回収工程と、
    前記第2制限酵素切断部位を有しない第1アダプタ付き第2cDNA断片から前記第2タグ物質を除去すると共に、前記第2制限酵素の酵素切断部位に相補的な配列を有する前記第2アダプタ配列のライゲーションを行い、一端に前記第1アダプタ配列を有し他端に前記第2アダプタ配列を有する前記アダプタ付きcDNA断片の群を作成するアダプタ付きcDNA断片群作成工程と、
    前記アダプタ付きcDNA断片の群に対し、前記第1アダプタ配列に相補的な配列を有する第1プライマーと、前記第2アダプタ配列に相補的な配列を有する第2プライマーとを用いて、PCRを行う第1PCR工程と、
    前記第1PCR工程で増幅されたcDNA断片の群についてゲル電気泳動を行う電気泳動工程と、
    前記電気泳動工程の結果に基づいて、ゲルから所望のcDNA断片を含むゲルを切り出し、このcDNA断片を回収するcDNA断片回収工程と、
    を備える遺伝子断片の取得方法。
  4. 請求項3に記載の遺伝子断片の取得方法であって、
    前記第1タグ付きcDNA群作成工程は、
    原核生物の細胞からmRNAを得るmRNA取得工程と、
    前記mRNAの3'末端にポリAを付加し、ポリA付加mRNAを得るポリA付加工程と、
    前記ポリA付加mRNAに前記第1タグ物質が付加されたポリTをハイブリダイズさせるポリTハイブリダイズ工程と、
    前記ポリTがハイブリダイズしたmRNAから前記第1タグ付きcDNAを合成するcDNA合成工程と、
    を含む
    遺伝子断片の取得方法。
  5. 請求項3または請求項4に記載の遺伝子断片の取得方法であって、
    前記cDNA断片回収工程で回収した前記cDNA断片について、前記第1アダプタ配列に相補的な配列を有する第3プライマーと、前記第2アダプタ配列に相補的な配列を有する第4プライマーとを用いて、再度PCRを行う第2PCR工程を備える
    遺伝子断片の取得方法。
  6. 請求項5に記載の遺伝子断片の取得方法であって、
    前記cDNA断片回収工程後、または、前記第2PCR工程を有する場合には第2PCR工程後、前記cDNA断片をプラスミドベクターに連結し、組換え体プラスミドを形成する連結工程と、
    上記組換え体プラスミドを大腸菌に導入する導入工程と、
    を備える遺伝子断片の取得方法。
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