JP5248394B2 - 被検体物質の固定化方法およびマイクロ分析装置 - Google Patents

被検体物質の固定化方法およびマイクロ分析装置 Download PDF

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Description

本発明は、被検体物質の固定化方法およびマイクロ分析装置に関するものである。特に、検出物質に含まれている特定の物質であるアレルゲン、アディポネクチン、サイトカイン、免疫抗体などの検体を検出するため、該検体と結合可能な被検体物質を固定化する被検体物質の固定化方法、および該固定化方法を用いたマイクロ分析装置に関するものである。
抗原抗体反応を用いた免疫分析法は、医療や生化学分野、アレルゲン等の測定分野などにおける分析・計測方法として有用である。しかし、従来の免疫分析法は、分析に長時間を要すると共に操作が煩雑であるという等の問題を有している。
そのような状況の中、近年、半導体の微細加工技術などを応用したマイクロ化技術(Micro Electro Mechanical System、MEMS)が開発され、タンパク質、遺伝子などの生化学分野における分析においては、抗原抗体反応を用いるマイクロ化技術(Micro Total Analytical System、μ−TAS)が急速に発展している。
例えば特許文献1には、基板にマイクロオーダーのチャネル(以下、「マイクロチャネル」ともいう)を形成し、このマイクロチャネルに抗体等を固定化することにより、抗原などの検体を分析する分析時間の短縮化や分析操作の簡略化を図るマイクロチャネルデバイス技術が提案されている。
具体的に、特許文献1には、マイクロチャネル内に、リガンド固定部、およびそのリガンド固定部に固定された抗体または人工抗体などのリガンドを備えるマイクロチャネルデバイスに関する技術が開示されている。
図13は、特許文献1に開示されたマイクロチャネルデバイスの構造を示す。図13に示すように、このマイクロチャネルデバイスは、ガラスまたはプラスチックなどの透光性を有する材料からなる基板200の表面に、マイクロチャネル101、注入孔102、液溜め部103および排出孔104が形成されている。さらに、マイクロチャネル101には、リガンド固定部105が形成されている。リガンド固定部105には、検体と特異的に反応するリガンドが、物理吸着や、リガンドが有するアミノ基との共有結合を用いた固定などの周知の固定方法で固定化されている。ここで、リガンドとは、検体とする物質に対して特異的に親和性を持つ化学物質を意味し、被検体物質とも称する。
図14は、図13に示すマイクロチャネルデバイスを使用した検体の検出方法を説明するための図面である。図14に示すように、まず、検体120を含む液体と、標識抗体123を含む液体とを混合して反応させる。ここで、標識抗体123は、光学的に検出可能な標識物質121と、検体120に結合可能な抗体122とが結合して形成されるものである。この標識抗体123と検体120とが反応して、免疫複合体124(標識抗体と検体との反応結合物)が形成される。
次いで、上記免疫複合体124を含む混合液を、図13に示す注入孔102から外部ポンプを用いて注入し、マイクロチャネルに流通させて、図14に示すように、免疫複合体124とリガンド固定部105に固定された抗体125とを反応させる。これにより、リガンド固定部105に、抗体125−検体120−標識抗体123からなる複合体126が形成される。
この後、リガンド固定部105に結合した免疫複合体124の標識物質121を、標識物質の種類に応じて、紫外可視分光分析、蛍光分析、化学発光分析または熱レンズ分析などの所定の分析機器を用いて、標識物質の光吸収、蛍光または発光等を検出する。これにより、検出物質中の検体120の量などを測定することができる。
上述した特許文献1の技術によると、反応場(リガンド固定部)を小さくすることができ、かつ反応表面積を大きくすることができるので、装置の小型化、チップ構造の簡便化とともに、反応に要する時間を大幅に短縮することができる。
しかし、特許文献1では、1つのマイクロチャネル内で1つの検体を検出しているが、1つのマイクロチャネル内で複数の検体を検出したい場合、1つのマイクロチャネル内に複数のリガンドを固定化する必要がある。
ここで、マイクロスポッターを用いれば、1つのチャネル内に複数のリガンドを固定化することが可能であるが、この場合、リガンドの固定化を、マイクロチップを貼り合わせる前に行うことになる。しかし、マイクロチップを貼り合わせる前に固定化を行うと、貼り合わせるときの熱圧着や有機溶剤による接着などが、固定化後のリガンドにとって悪条件になってしまうため、リガンドの固定化が難しくなり、正確な測定を行うことができなくなってしまう。そのため、リガンドの固定化は、分析装置などの貼り合わせ工程の後に行う必要がある。
特許文献2ないし5には、リガンドの固定化後に上記のような貼り合わせ工程を施す必要がなく、マイクロチャネル内の任意の部位のみにリガンドを固定化することができる技術が開示されている。具体的には、これらの特許文献に開示されている分析装置または方法を用いれば、複数のリガンドを1つずつチャネル内に導入して固定化を繰り返すことで、複数のリガンドを1つのチャネル内に固定化することができるとも考えられる。
国際公開第2006/054689号パンフレット(2006年5月26日公開) 特開2003−329682号公報(平成15年11月19日公開) 国際公開第2004/088319号パンフレット(2004年10月14日公開) 特開2004−301515号公報(平成16年10月28日公開) 特開2007−309725号公報(平成19年11月29日公開)
しかしながら、特許文献2ないし5の技術により、複数のリガンドを1つのチャネル内に固定化する場合、以下のような問題が生じる。
一番目の問題として、リガンドの非特異吸着による問題が挙げられる。具体的には、リガンドを1つずつ固定化する際、チャネル内にリガンドを導入し規定の位置のみにそれぞれの方法を用いて固定化を行う必要がある。しかしながら、リガンドはチャネル内の任意の部位以外にも非特異的に吸着してしまうため、結果的に規定の部位以外に複数のリガンドがランダムに固定化されてしまう可能性がある。これにより、検出物質中の検体の量を正確に測定することができなくなるという問題がある。
二番目の問題として、特許文献2ないし5による方法は、広く使用されているマイクロタイタープレートでの検出に使用される固定化リガンド溶液の濃度(10μg/ml以下)と比較して、非常に高い濃度が必要とされる。例えば、特許文献2ではHSA500μg/ml、特許文献3では2.5mg/ml、特許文献4では10μg/ml、特許文献5では1.25mg/mlと記載されている。高い濃度の固定化リガンド溶液を添加してもその一部のみが固定化され、大部分が固定化されず廃液と化すため、非常に生産性が悪くなる。また、リガンド溶液の濃度が高ければ高いほど、マイクロチャネル内の非特異吸着が増加する。非特異吸着が増加すると、リガンドはチャネル内の任意の部位以外にも非特異的に吸着してしまい、上述した問題が生じる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検体物質の非特異的な吸着を抑えるとともに、マイクロチャネル内の規定の部位のみに固定化を行って、検体の分析を正確に行うことができる被検体物質の固定化方法および該固定化方法を用いたマイクロ分析装置を提供することにある。特に、マイクロチャネル内に複数の異なる被検体物質を固定化する際に、1つのチャネルで複数の被検体物質を規定の位置に確実に固定化することができ、微量の検出物質で複数の検体を検出できる被検体物質の固定化方法および該固定化方法を用いたマイクロ分析装置を提供することにある。
本発明に係る被検体物質の固定化方法は、上記課題を解決するために、検体と結合可能な被検体物質をマイクロ分析装置におけるマイクロチャネルに固定化する被検体物質の固定化方法であって、前記マイクロチャネルには、固定化用電極と対向電極とが備えられており、前記マイクロチャネルに非特異吸着防止処理剤を接触させ、前記マイクロチャネルの中および固定化用電極に対して非特異吸着防止処理を行う非特異吸着防止工程、前記被検体物質を含む溶液のpHを調整して前記被検体物質を帯電させ、pH調整後の溶液に、前記非特異吸着防止処理剤と反応可能な官能基および前記被検体物質と反応可能な官能基を有する架橋剤を混合して、混合液を作製する混合液作製工程、並びに、前記混合液を前記マイクロチャネルに接触させ、前記マイクロチャネルの中に設けられた前記固定化用電極と前記対向電極との間に電流を流し且つ前記固定化用電極に前記被検体物質が帯電した電位と極性が反対の電位を供給するような可変電圧を印加し、さらに前記固定化用電極に活性化エネルギーを付与して、前記被検体物質を、非特異吸着防止処理が施された前記固定化用電極に、前記非特異吸着防止処理剤と架橋させて固定化する固定化工程を含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、被検体物質を含む混合液をマイクロチャネル内に接触させて被検体物質を電気的に固定化用電極に誘引し、且つ被検体物質を架橋剤により固定化する前に、マイクロチャネルに対し非特異吸着防止処理を行うため、被検体物質がマイクロチャネル内に非特異的に吸着されることを防ぐことができる。電気的に固定化用電極に誘引した被検体物質は、架橋剤を介して結合するため、任意の場所にのみ被検体物質を固定化することが可能となる。これにより、検体の分析を正確に行うことができる。特に、本発明の固定化処理を繰り返すことにより、複数の異なる被検体物質をマイクロチャネル内の任意の場所に固定化することが可能となる。これにより、マイクロチャネル内に複数の被検体物質を固定化する際に、1つのチャネルで複数の被検体物質を規定の位置に確実に固定化することができ、検出物質中の複数の異なる検体をより正確に分析することができる。
本発明に係る被検体物質の固定化方法は、前記架橋剤は、光架橋剤であり、前記非特異吸着防止処理剤と反応可能な官能基は、光反応性置換基であり、前記被検体物質と反応可能な官能基は、光反応性置換基を有しており、かつ前記活性化エネルギーは、光エネルギーであることが好ましい。
上記の構成によれば、光架橋剤を活性化する光を照射するという簡単な操作により、被検体物質を固定化することができるという更なる効果を奏する。
本発明に係る被検体物質の固定化方法は、前記非特異吸着防止処理を行う前に、前記固定化用電極の少なくとも一部を合成高分子の層で被覆することが好ましい。
上記の構成によれば、固定化用電極上に固定化可能な領域が立体的に構築されるため、被検体物質をより高密度に固定化することができる。これにより、検体をより高感度に検出することができるという更なる効果を奏する。
本発明に係る被検体物質の固定化方法では、前記固定化用電極と前記対向電極との間に印加する可変電圧は、1V以上であることが好ましい。
上記の構成によれば、より効率的に電極間に存在する被検体物質を前記固定化用電極に誘引することができる。
本発明に係る被検体物質の固定化方法では、前記pH調整後の溶液における被検体物質の濃度は、0.01μg/ml以上、10μg/ml以下であることが好ましい。
上記の構成によれば、被検体物質の濃度が十分に低いため、被検体物質の非特異的吸着をより抑制することができるという更なる効果を奏する。
本発明に係るマイクロ分析装置は、上記課題を解決するために、マイクロチャネルを備え、検体と結合可能な被検体物質が前記マイクロチャネルに固定化されたマイクロ分析装置であって、前記マイクロチャネルには、固定化用電極と対向電極とが備えられており、前記マイクロチャネルの固定化用電極は非特異吸着防止処理剤で被覆されており、前記被検体物質は、非特異吸着防止処理が施された前記固定化用電極に、前記非特異吸着防止処理剤と反応可能な官能基および前記被検体物質と反応可能な官能基を有する架橋剤により、前記非特異吸着防止処理剤と架橋して固定化されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、固定化用電極上に非特異吸着防止処理剤が被覆して形成された非特異吸着防止層が配置されているため、被検体物質が非特異的に吸着されることを防ぐことができる。これにより、検体の分析を正確に行うことができる。また、上記の構成によれば、固定化用電極上に非特異吸着防止処理剤で被覆されているが、架橋剤を介することで、非特異吸着防止処理剤と被検体物質とを結合させることができる。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記架橋剤は、光架橋剤であり、前記非特異吸着防止処理剤と反応可能な官能基は、光反応性置換基であり、前記被検体物質と反応可能な官能基は、光反応性置換基を有していることが好ましい。
上記の構成によれば、光架橋剤を活性化する光を照射するという簡単な操作により、被検体物質を固定化することができるという更なる効果を奏する。
本発明に係るマイクロ分析装置では、固定化用電極の少なくとも一部は、合成高分子の層で被覆されており、前記合成高分子の層は、前記非特異吸着防止処理剤で被覆されていることが好ましい。
上記の構成によれば、前記固定化用電極と前記非特異吸着防止層との間に、合成高分子層が配置されているため、固定化用電極上に固定化可能な領域が立体的に構築されるため、被検体物質をより高密度に固定化することができる。これにより、検体をより高感度に検出することができるという更なる効果を奏する。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記マイクロチャネルには、2つ以上の前記固定化用電極が設けられ、前記2つ以上の固定化用電極の下流側または上流側には、対向電極が設けられていることが好ましい。
上記の構成によれば、マイクロチャネル内に2つ以上の固定化用電極が設けられることで、複数の異なる被検体物質を固定化することが可能となり、1つのマイクロチャネルで複数の異なる検体を分析することができるという更なる効果を奏する。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記マイクロチャネルに液体を接触させるための1つの注入孔および液体を排出するための1つの排出孔を更に備えており、前記注入孔と前記排出孔とは、1本の前記マイクロチャネルにより接続されていることが好ましい。
上記の構成によれば、マイクロチャネルに注入孔および排出孔が設けられているため、溶液の注入(接触)および排出が容易であるという更なる効果を奏する。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記マイクロチャネルに液体を接触させるための1つの注入孔および液体を排出するための2つ以上の排出孔を更に備えており、前記1つの注入孔と前記2つ以上の排出孔とを接続する前記マイクロチャネルは、前記1つの注入孔からの経路が分岐点で分岐した構造を有し、前記分岐点より下流側の前記マイクロチャネル内で、分岐されたマイクロチャネルの分岐路ごとに前記固定化用電極が設けられており、前記分岐点より上流側の前記マイクロチャネル内で、前記対向電極が設けられていることが好ましい。
上記の構成によれば、1つの検出物質のサンプルが注入孔から注入されて、マイクロチャネル内の分岐点で分岐した後、それぞれの分岐路に設けられた固定化用電極上で検出されることになり、1つの検出物質のサンプルで複数の性質(複数の検体)を分析できるという更なる効果を奏する。例えば、酵素基質反応により基質が変化する反応を検出しようとする際、非常に有効である。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記固定化用電極の下流側に、電気化学的に活性な物質を検出するための検出用電極が設けられていることが好ましい。
上記の構成によれば、検体が電気化学的に活性を持つ物質に変化する場合、その下流側にある検出用電極で変化後の物質を検出することが可能となり、より迅速かつ簡単に検体の検出を行うことができるという更なる効果を奏する。例えば、酵素基質反応により基質が電気化学的に活性を持つ物質に変化する場合に、非常に有効である。
本発明に係る被検体物質の固定化方法は、上記課題を解決するために、マイクロチャネルを備え、検体と結合可能な被検体物質が前記マイクロチャネルに固定化されるマイクロ分析装置であって、前記マイクロチャネルに、該マイクロチャネルに沿う長尺状の固定化可能領域が設けられ、前記マイクロチャネルの両端には、前記マイクロチャネルに液体を接触させるための1つの注入孔および液体を排出するための1つの排出孔がそれぞれ設けられており、前記注入孔の付近に誘引用電極が設けられかつ前記排出孔の付近に対向電極が設けられているか、あるいは、前記排出孔の付近に誘引用電極が設けられかつ前記注入孔の付近に対向電極が設けられており、前記被検体物質を前記マイクロチャネルに固定化する場合、非特異吸着防止処理剤により非特異吸着防止処理が施された前記固定化可能領域において、前記被検体物質と光架橋剤とを含む液体を前記注入孔から注入して前記排出孔に電気的に誘引する途中で、フォトマスクを使用して前記固定化可能領域の任意の複数の位置のみに光を照射して、前記非特異吸着防止処理剤と反応可能な官能基および前記被検体物質と反応可能な官能基を有する前記光架橋剤が活性化されることにより、前記被検体物質が前記非特異吸着防止処理剤と架橋して前記固定化可能領域の任意の複数の位置に固定化されることを特徴としている。
上記の構成によれば、被検体物質を含む混合液をマイクロチャネル内に接触させて被検体物質を排出孔に電気的に誘引し、且つ被検体物質を架橋剤により固定化する前に、マイクロチャネルに対し非特異吸着防止処理を行うため、被検体物質がマイクロチャネル内に非特異的に吸着されることを防ぐことができる。電気的に固定化用電極に誘引した被検体物質は、架橋剤を介して結合するため、任意の場所にのみ被検体物質を固定化することが可能となる。これにより、検体の分析を正確に行うことができる。特に、フォトマスクを使用して前記固定化可能領域の任意の複数の位置のみに光を照射することにより、複数の異なる被検体物質をマイクロチャネル内の任意の場所に固定化することが可能となる。これにより、マイクロチャネル内に複数の被検体物質を固定化する際に、1つのチャネルで複数の被検体物質を規定の位置に確実に固定化することができ、検出物質中の複数の異なる検体をより正確に分析することができる。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記非特異吸着防止処理剤がタンパク質、合成高分子、または合成高分子とタンパク質の混合物質であることが好ましい。
タンパク質の非特異吸着防止処理剤を用いる場合、タンパク質が非常に容易に入手することができ、且つ非特異吸着防止能が高いため、コストを減少し、非特異吸着防止をより確実に行うことができる。また、合成高分子の非特異吸着防止処理剤を用いる場合、タンパク質と比較して保存による劣化が非常に少ないという優位性がある。また、合成高分子とタンパク質との混合物質の非特異吸着防止処理剤を用いる場合、合成高分子およびタンパク質の両方の効果を共に奏することができる。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記合成高分子は非特異吸着防止処理剤の機能を有していることが好ましい。
これにより、合成高分子は非特異吸着防止処理剤の機能を有しているため、非特異吸着をより一層防止することができる。
本発明に係るマイクロ分析装置では、上記タンパク質が、ウシ血清アルブミン、カゼイン、またはゼラチンであることが好ましい。
これらのタンパク質は、入手容易性の観点から好ましい。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記合成高分子が電気的に中性であることが好ましい。また、該合成高分子としてホスホリルコリン基を有する合成高分子であることが好ましい。
これらの合成高分子は、タンパク質と比べ保存による劣化が非常に少ないというの観点から好ましい。更に、合成高分子により被検体物質固定化場が3次元的に形成されるため、よりたくさんの被検体物質を固定化することができる。結果として検体の検出感度が高くなる効果が期待できる。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記架橋剤が、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸コハク酸イミドエステル、または、ビス−[(4−アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド{Bis−[(4−Azidosalicylamido)ethyl]disulfide}であることが好ましい。
これらの架橋剤は、入手容易性の観点から好ましい。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記被検体物質は、抗体または人工抗体であることが好ましい。
上記の構成によれば、抗体または人工抗体は検体との特異性が非常に高く、耐久性にも優れているという更なる効果を奏する。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記人工抗体は、合成ペプチド、アプタマー、または分子インプリンティングポリマーであることが好ましい。
上記の構成によれば、合成ペプチド、アプタマー、または分子インプリンティングポリマーは周知の技術にて容易に作製することができるという更なる効果を奏する。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記検体は、血液内成分であることが好ましい。
上記の構成によれば、血液検査で本発明のマイクロ分析装置を用いれば、短時間で複数検体(項目)を検出することが可能となる。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記血液内成分が、アディポネクチン、レプチン、レジスチンおよびTNF−αの中の少なくとも1つを含むことが好ましい。
これにより、脂質代謝異常の指標とすることが可能になる。
本発明に係るマイクロ分析装置では、前記注入孔にポンプが接続されていることが好ましい。
これにより、ポンプで送液しながら固定化を行えば、前記被検体物質は電気だけの誘引力だけでなく、ポンプによる拡散速度の影響も受けるため、より効果的に固定化することが可能となる。
本発明に係る被検体物質の固定化方法は、前記マイクロチャネルには、固定化用電極と対向電極とが備えられており、前記マイクロチャネルに非特異吸着防止処理剤を接触させ、前記マイクロチャネルの中および固定化用電極に対して非特異吸着防止処理を行う非特異吸着防止工程、前記被検体物質を含む溶液のpHを調整して前記被検体物質を帯電させ、pH調整後の溶液に、前記非特異吸着防止処理剤と反応可能な官能基および前記被検体物質と反応可能な官能基を有する架橋剤を混合して、混合液を作製する混合液作製工程、並びに、前記混合液を前記マイクロチャネルに接触させ、前記マイクロチャネルの中に設けられた前記固定化用電極と前記対向電極との間に電流を流し且つ前記固定化用電極に前記被検体物質が帯電した電位と極性が反対の電位を供給するような可変電圧を印加し、さらに前記固定化用電極に活性化エネルギーを付与して、前記被検体物質を、非特異吸着防止処理が施された前記固定化用電極に、前記非特異吸着防止処理剤と架橋させて固定化する固定化工程を含むことを特徴としている。
本発明に係るマイクロ分析装置は、前記マイクロチャネルには、固定化用電極と対向電極とが備えられており、前記マイクロチャネルの固定化用電極は非特異吸着防止処理剤で被覆されており、前記被検体物質は、非特異吸着防止処理が施された前記固定化用電極に、前記非特異吸着防止処理剤と反応可能な官能基および前記被検体物質と反応可能な官能基を有する架橋剤により、前記非特異吸着防止処理剤と架橋して固定化されていることを特徴としている。
それゆえ、本発明における被検体物質の固定化方法および該固定化方法を用いたマイクロ分析装置は、被検体物質の非特異的な吸着を抑えるとともに、マイクロチャネル内の規定の部位のみに固定化を行って、検体の分析を正確に行うことができるという効果を奏する。
つまり、本発明によれば、微量な1サンプルから複数項目を誤認識なく、それぞれ独立して検出することができる。
本発明の一実施形態におけるマイクロ分析装置を示す平面図である。 本発明の一実施形態におけるマイクロ分析装置の固定化用電極を示す断面図である。 本発明の他の実施形態におけるマイクロ分析装置の固定化用電極を示す断面図である。 本発明の他の実施形態におけるマイクロ分析装置を示す平面図である。 本発明のさらに他の実施形態におけるマイクロ分析装置を示す平面図である。 本発明のさらに他の実施形態におけるマイクロ分析装置を示す平面図である。 本発明のさらに他の実施形態におけるマイクロ分析装置を示す平面図である。 本発明のさらに他の実施形態におけるマイクロ分析装置を示す平面図である。 実施例1および比較例1、2で使用したマイクロ分析装置を示す平面図である。 実施例1における被検体物質を固定化した後の固定化用電極の蛍光像を示す図である。 比較例1における被検体物質を固定化した後の固定化用電極の蛍光像を示す図である。 比較例2における被検体物質を固定化した後の固定化用電極の蛍光像を示す図である。 従来技術におけるマイクロ分析装置の構造を示す概略図である。 従来技術におけるマイクロ分析装置の固定化部分での反応を示す概略図である。
以下、本発明に係る被検体物質の固定化方法およびマイクロ分析装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
〔実施の形態1〕
以下、図1〜3に基づいて、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるマイクロ分析装置の平面図であり、図2は、該マイクロ分析装置の固定化用電極の断面図である。また、図3は、本発明の実施の形態1における他のマイクロ分析装置の固定化用電極の断面図である。
<マイクロ分析装置の本体>
本発明の実施の形態1にかかるマイクロ分析装置(マイクロチャネルチップ)は、図1に示すような基板100および該基板100を接着して封する図示しない蓋基板を備えている。基板100と蓋基板とは接着されている構造である。基板100には、注入孔1、排出孔7、および注入孔1と排出孔7とを接続する凹面のマイクロチャネル2が形成されている。
基板100として、絶縁性を有する基板を用いることができる。絶縁性を有する基板としては、例えば、表面に酸化膜などの絶縁性材料が形成されたシリコン基板、石英基板、酸化アルミニウム基板、ガラス基板又はプラスチック基板などを用いることができる。また、検出する時の化学発光を用いるのであれば、例えば、特開2003−149252号公報に開示されている自発蛍光が小さく且つ透明性のあるプラスチック材料を用いることもできる。
基板100の厚みは0.1〜5mm程度が好ましい。また、マイクロチャネル2の深さは0.1〜1000μm程度、幅は0.1〜1000μm程度が好ましい。
マイクロチャネル2の断面形状は、矩形または台形形状とすることができる。また、流路の底は円の一部のように丸くなっていてもよい。
注入孔1および排出孔7は、直径が10μm以上である。また、注入孔1および排出孔7は、液体を注入および排出するため、基板100および蓋基板のいずれか一方に貫通孔として形成されている。
基板100の凹凸を形成する方法は、例えば、直接加工する方法として機械加工による方法、レーザー加工による方法、金型を用いた射出成型、プレス成型、および鋳造による方法などが挙げられる。その中で、金型を用いる方法は、量産性が良く、且つ形状の再現性が高いため好ましい。
また、基板100の材料がシリコンまたはガラス等である場合、基板100上のマイクロチャネル2のパターンは、従来一般的に提案されているフォトリソグラフィ法またはエッチング法により形成することができる。
<固定化用電極、対向電極および参照電極>
図1に示すように、マイクロチャネル2内には、複数のリガンドを固定化するための複数の固定化用電極3、4、5が配置されている。固定化用電極3、4、5は、直線状のマイクロチャネル2に沿って、直線状に配置されている。
上述したように、リガンド(被検体物質)とは、検体とする物質に対して特異的に親和性を持つ化学物質を意味する。
固定化用電極3、4、5の上流側における注入孔1の近傍には、その対向電極6が配置されている。ここで、上流側または下流側とは、注入孔1から排出孔7までの流れに準じたものである。
マイクロチャネル2には、さらに参照電極を設け、固定化用電極、対向電極および参照電極の3極からなる構成としてもよい。
各電極は、従来のフォトリソグラフィ技術を利用した微細加工技術によって形成することができる。電極の導電性材料としては、例えば金、白金、銀、クロム、チタン、イリジウム、銅またはカーボンなどを用いることができる。
固定化用電極3、4、5およびその対向電極6の幅は、1μmから3000μmの範囲であり、チャネル幅と等しく設定されることがより好ましい。また、各電極の形状は、図1に示すような矩形を含む多角形であってもよいし、円状であってもよい。
固定化用電極3、4、5のチャネル内の配置場所は、対向電極6と固定化用電極3との間隔距離が、固定化用電極3と4との間隔距離および固定化用電極4と固定化用電極5との間隔距離の10倍以上になるように配置されることが好ましい。対向電極6は、図1に示すように注入孔1の付近に配置されていてもよいし、排出孔7の付近に配置されていてもよい。
対向電極6と固定化用電極3との間隔距離を、固定化用電極3と固定化用電極4との間隔距離および固定化用電極4と固定化用電極5との間隔距離の10倍以上にする構成により、以下の効果が得られる。すなわち、被検体物質を含む液体をマイクロチャンネル2に入れて、固定化用電極3、4、5のそれぞれと対向電極6との間に電圧を印加した際、電圧を印加した電極間のリガンドが泳動して電極上に濃縮されることになる。しかし、固定化用電極3、4、5の互いの間隔に比べ、固定化用電極3、4、5のいずれかと対向電極6との間の間隔が十分に大きいため、固定化用電極3、4、5に濃縮されて固定される被検体物質の量は、各固定化用電極3、4、5においての不均一が少なくなる。換言すれば、複数の被検体物質を固定化する際、固定化される被検体物質の量の不均一を少なくすることができる。
<非特異吸着防止処理剤>
本発明の被検体物質の固定化方法およびマイクロ分析装置において、被検体物質を含む液体をマイクロチャンネル2に流す前に、マイクロチャンネル2に非特異吸着防止処理剤を接触させて、マイクロチャンネル2に非特異吸着防止処理剤層12(図2を参照)を設ける。ここで、「非特異吸着防止処理剤」とは、非特異的に吸着することを防止するものをいう。
該非特異吸着防止処理剤として、タンパク質、合成高分子、または合成高分子とタンパク質との混合物質が挙げられる。
タンパク質の非特異吸着防止処理剤を用いる場合、タンパク質が非常に容易に入手することができ、且つ非特異吸着防止能が高いため、コストを減少し、非特異吸着防止をより確実に行うことができる。また、合成高分子の非特異吸着防止処理剤を用いる場合、タンパク質と比較して保存による劣化が非常に少ないという効果がある。合成高分子とタンパク質との混合物質を用いる場合、両方の効果を共に奏することができる。
前記タンパク質として、例えばウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン等を用いることができる。
前記合成高分子として、電気的に中性なポリマーやホスホリルコリン基を有するポリマーなど市販品の非特異吸着防止処理剤を用いることができる。
<リガンド(被検体物質)>
リガンド溶液中のリガンドとして抗体や人工抗体が好ましい。これは、抗体または人工抗体は非常に検体との特異性が高く、耐久性にも優れているためである。また、人工抗体は合成ペプチド、アプタマー、または分子インプリンティングポリマーを用いることができる。合成ペプチド作製、アプタマー作製、分子インプリンティング作製技術は周知の技術にて作製することが容易である。
リガンド溶液は、pKaや等電点からリガンドが正負いずれかに帯電するようなpHに調製される。ここで、リガンド溶液のpHは、酸性の場合3〜6、アルカリ性の場合8〜11に調整されることが好ましい。また、pH調整後のリガンド溶液の最終濃度は好ましくは0.01μg/ml以上、10μg/ml以下に調製される。これは、0.01μg/ml未満の場合、本特許による固定化法で固定化を行っても、固定化電極に十分量を固定化することができなくなり、10μg/mlを超える場合、非特異的吸着防止剤に対してもリガンドが非特異的に吸着する恐れがあるため、好ましくない。
<架橋剤>
架橋剤としては、前記特許文献4に記載された光架橋剤が好ましい。本実施の形態1では、光架橋剤を使用している。光架橋剤としては、光反応性置換基を2つ以上有する物質、または光反応性置換基と活性物質置換基とを有する物質を用いることができる。
光架橋剤は、その光反応性置換基がマイクロチャネルの表面に吸着された非特異吸着防止処理剤と反応し、かつ光反応性置換基または活性物質置換基がリガンドと反応することにより、活性物質と非特異吸着防止処理剤との間で橋架け結合を形成する役割を果たすものである。
光反応性置換基は、光反応により非特異吸着防止処理剤と反応して結合するものであればよく、例えば、アジド基、ベンゾフェノン基等が挙げられ、特にアジド基が好ましい。活性物質置換基は、リガンドと反応して結合を形成するものであればよい。例えば、リガンドがタンパク質や酵素である場合には、それらが有するアミノ基、カルボキシ基、チオール基等に対して反応性を有する置換基であることが好ましい。このような置換基としては、アミノ基、カルボキシ基、カルボン酸の活性化エステル、イソチオシアナート基、チオール基、スルフォニルクロリド等が挙げられる。このような光架橋剤としては、例えば、アジド基およびカルボン酸の活性エステルを有する化合物、アジド基およびカルボキシ基を有する化合物、アジド基およびアジド基を有する化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸コハク酸イミドエステル(以下、「ATFB−SE」という。)、Bis−(4−Azidosalicylamido)ethyl]disulfide等が好ましく、特にATFB−SEが反応性、および入手容易性の観点から好ましい。
また、架橋剤としては、熱架橋剤などのほかの架橋剤を用いることができる。架橋剤が有する官能基としても、上記の光反応性置換基または活性物質置換基に限られず、非特異吸着防止処理剤と反応可能な官能基およびリガンド(被検体物質)と反応可能な官能基を有し、熱などの活性化エネルギーの付与により、リガンドと非特異吸着防止処理剤とを架橋剤により架橋することができるものであればよい。
<固定化方法>
以下、実施の形態1おけるリガンドの固定化方法について説明する。
図1のマイクロチャンネル2に非特異吸着防止処理剤を接触させて、マイクロチャンネル2に非特異吸着防止処理剤層12(図2を参照)を形成した後、pH調整後のリガンド溶液と光架橋剤との混合液を、注入孔1からマイクロチャネル2内が十分満たされる程度の量を接触させる。
次に、固定化したい固定化用電極(ここでは固定化用電極5とする)と対向電極6との間に電圧を印加する。この際、一定の電流が流れるように可変電圧を印加する。上記一定の電流の値は、絶対値で100μA以下とする。好ましくは、1μA以上、100μA以下の範囲であり、より好ましくは、1μA以上、10μA以下の範囲で設定される。
ここで、固定化用電極5に印加する電圧は、帯電されたリガンドの極性とは反対の電位を与える必要がある。固定化用電極5にこのような電圧を印加することで、帯電したリガンドが固定化用電極5へ誘引され、濃縮される。
また、電圧の印加と同時に、固定化用電極5上に光エネルギーを与える。これにより、混合液の中の光架橋剤が活性化され、固定化用電極5上に誘引濃縮されたリガンドは非特異吸着防止処理剤と光架橋剤とにより架橋される(熱架橋剤を使用する場合は、熱エネルギーを与えることになる)。光エネルギーが与えられていない部分については、光架橋剤が活性化されないため、非特異吸着防止処理剤と架橋することはない。固定化後、緩衝溶液などの洗浄溶液でマイクロチャネル内を洗浄する。これにより、固定化用電極5上の光エネルギーを与えた(固定化用電極5上の)任意の部位のみにリガンドが固定化された状態になる。
上述した固定化方法によれば、予めマイクロチャネルに非特異吸着防止処理を行っているため、固定化用電極5の光エネルギーを与えていない部位以外のマイクロチャネル2内にはリガンドが固定化されない。
固定化用電極4および固定化用電極3に対して固定化用電極5と同様な操作を繰り返すことで、それぞれのリガンドを混入や、規定の部位以外のマイクロチャネル内での非特異吸着なく、固定化用電極4および固定化用電極3上に固定化することが可能となる。図2は、このような固定化後のマイクロ分析装置の固定化用電極を示す断面図である。図2に示すように、固定化用電極13上に、非特異吸着防止処理剤が塗布されて非特異吸着防止処理剤層12が形成されており、光架橋剤11でリガンド10と非特異吸着防止処理剤層12の間が架橋されて、リガンド10が固定化された構造になっている。
以下、本実施の形態1におけるリガンドの固定化方法の他の構成について説明する。
本発明の実施の形態1におけるマイクロ分析装置において、図3に示したように、非特異吸着防止処理剤を塗布する前に、固定化用電極上29に合成高分子をコーティング(被覆)して、マイクロチャネルに、合成高分子層28を固定化用電極29の少なくとも一部を被覆するように配置することができる。
このような処理を施すことで、固定化用電極29上に固定化できる領域を立体的に構築することが可能となる。同じ面積の固定化用電極上にリガンドを固定化する際、高分子をコーティングした方が、コーティングしない場合と比較して、2倍以上の固定化量を確保することができる。このように、高密度にリガンドを固定化したマイクロチャネルチップを用いた場合、検体の検出感度を向上させることができる。
さらに、この合成高分子は非特異吸着防止処理剤の機能を有していてもよい。この場合、非特異吸着をより一層防止することができる。また、合成高分子層と非特異吸着防止処理剤層とを1つの層として形成することもでき、構造がより簡略化できる。
<検出物質と検体>
本発明のマイクロ分析装置の分析対象としては、検出物質中の検体である。検出物質として、例えば血液または血液を含む溶液が挙げられる。
検体としては、血液内成分が挙げられる。該血液内成分として、アディポネクチン、レプチン、レジスチンおよびTNF(Tumor Necrosis Factor)−αの中のいずれかを含むことができる。すなわち、検出物質が血液である場合、本発明のマイクロ分析装置を用いて、血液の1つのサンプルで、アディポネクチン、レプチン、レジスチンおよびTNF−αの中のいずれか1つまたは複数を検出することができる。
〔実施の形態2〕
図4は、本発明の実施の形態2にかかるマイクロ分析装置の構造を示す。図4に示すように、実施の形態2にかかるマイクロ分析装置(マイクロチャネルチップ)は、基板100および該基板100を接着して封する図示しない蓋基板を備えている。基板100と蓋基板とは接着されている構造である。基板100には、注入孔30、排出孔36、および注入孔30と排出孔36接続するマイクロチャネル31が形成されている。また、実施の形態1(図1を参照)と同様に、マイクロチャネル31内に3つの固定化用電極32、33、34が配置されている。また、注入孔30の付近に、対向電極35が配置されていることも実施の形態1と同様である。
また、実施の形態1と同様に、マイクロチャンネル31に非特異吸着防止処理剤を接触させた後、pH調整後のリガンド溶液と光架橋剤との混合液を、注入孔30からマイクロチャネル31内に接触させる。
本実施の形態2における実施の形態1との異なる点は、排出孔36の付近にも対向電極37が配置されていることである。
実施の形態1の場合、マイクロチャネル31内の固定化用電極と対向電極の間に電圧を印加すると、電極間に存在するリガンドが固定化用電極に誘引され、濃縮される。したがって、実施の形態1における図1の構成では、マイクロチャネル2内のすべてのリガンドを固定化用電極3、4、5に誘引することは難しい。また、固定化用電極3と対向電極6との間、固定化用電極4と対向電極6との間、および固定化用電極5と対向電極6との間の距離がそれぞれ異なるため、誘引されたリガンド量がどうしても異なってしまう。
これに対し、本実施の形態2では、排出孔36の付近にも対向電極37が配置されているため、対向電極35および対向電極37と、固定化したい固定化用電極(ここでは、固定化用電極33とする)との間で同時に電圧を印加することができる。これにより、マイクロチャネル31内に存在するリガンドを、対向電極35および対向電極37から同時に両側から固定化用電極33に誘引することが可能となる。
そのため、マイクロチャネル31内に存在するリガンドをより多く固定化用電極33に誘引することができ、かつ、リガンドを固定化用電極33の両側から誘引するため、誘引されたリガンドの量を均一にすることが可能となる。
なお、本実施の形態2において、リガンド溶液の調整法や光架橋剤、非特異吸着防止処理剤を含む電気誘引固定化法は実施の形態1と同様である。
〔実施の形態3〕
図5は、本発明の実施の形態3にかかるマイクロ分析装置の構造を示す。図5に示すように、実施の形態3にかかるマイクロ分析装置は、基板100および該基板100を接着して封する図示しない蓋基板を備えている。基板100と蓋基板は接着されている構造である。基板100には、注入孔40、排出孔44、排出孔47、排出孔50、および注入孔40と排出孔44、47、50とを接続するマイクロチャネル41が形成されている。
マイクロチャネル41は、注入孔40からのマイクロチャンネルの経路が固定化用電極の数だけ複数個(図5では3つである)に分岐した構造であり、図5のように1つの分岐点から分岐した構造であってもよいし、それぞれ違う点から分岐した構造であってもよい。
排出孔44、47、50のそれぞれに対応して分岐されたマイクロチャネル41内の3つの分岐路に、固定化用電極42と検出用電極部43、固定化用電極45と検出用電極部46、および固定化用電極48と検出用電極部49がそれぞれ配置され、それらの対向電極51は注入孔40付近に配置されている。
検出用電極部43、46、49は、それぞれ電気化学的に活性な物質を検出する作用電極とその対向電極との2極から構成されてもよいし、対向電極と作用電極と参照電極との3極から構成されてもよい。ここで、電気化学的に活性な物質としては、例えば、フェロセン、パラアミノフェノール(PAP)、フェリシアン化カリウム等が挙げられる。
なお、本実施の形態3において、リガンド溶液の調整法や光架橋剤、非特異吸着防止処理剤を含む電気誘引固定化法は実施の形態1と同様である。
本発明の実施の形態3による分岐構造は、電気化学的に検体を検出する際に非常に有効である。電気化学的に検体を検出する場合、検体がリガンドに捕捉された信号を電気化学的な信号に変換し、検出用電極部で検出するといったプロセスとなる。
例えば、酵素基質反応により基質が変化する反応を検出する場合、検体を捕捉した後、2次抗体による反応で酵素標識し、次いで酵素基質反応により電気化学的に活性のある物質を生成させ、検出用電極部でその濃度を検出する。
これに対し、図1,4のように直線状のマイクロチャネル内に固定化用電極並びに検出用電極部を配置したとすると、上流側で反応し、生成した電気化学的活性のある物質が下流側の他の検出用電極部で誤認識してしまう問題が生じる。しかしながら、図5のように、固定化用電極と検出用電極部とを一式ずつ分岐後のマイクロチャネル内に配置することで、それぞれ独立して検出用電極部にて検出することができる。
〔実施の形態4〕
図6は、本発明の実施の形態4にかかるマイクロ分析装置の構造を示す。図6に示すように、実施の形態4にかかるマイクロ分析装置は、基板100および該基板100を接着して封する図示しない蓋基板を備えている。基板100と蓋基板は接着されている構造である。基板100には、注入孔60、排出孔64、排出孔68、排出孔72、および注入孔60と排出孔64、68、72とを接続する1本のマイクロチャネル61が形成されている。
マイクロチャネル61は、注入孔60からのマイクロチャンネルの経路が固定化用電極の数だけ複数個(図6では3つである)に分岐した構造であり、図6のように1つの分岐点から分岐した構造であってもよいし、それぞれ違う点から分岐した構造であってもよい。
排出孔64、68、72のそれぞれに対応して分岐されたマイクロチャネル61内の3つの分岐路に、固定化用電極62と検出用電極部63、固定化用電極66と検出用電極部67、および固定化用電極70と検出用電極部71がそれぞれ配置され、それらの対向電極74は注入孔60付近に配置されている。これらの構造は、図5に示す実施の形態3の構造と同様である。
本実施の形態4における実施の形態3との異なる点は、排出孔64付近に対向電極65が、排出孔68付近に対向電極69が、排出孔72付近に対向電極73がそれぞれ配置されていることである。
該構造によると、固定化する際に1つの固定化用電極に対し4つの対向電極とすることで、より多くのリガンドを固定化用電極に誘引し固定化することが可能となる。
なお、リガンド溶液の調整法や光架橋剤、非特異吸着防止処理剤を含む電気誘引固定化法は実施の形態1と同様である。
〔実施の形態5〕
図7は、本発明の実施の形態5にかかるマイクロ分析装置の構造を示す。図7に示すように、実施の形態5にかかるマイクロ分析装置は、基板100および該基板100を接着して封する図示しない蓋基板を備えている。基板100と蓋基板は接着されている構造である。基板100には、注入孔80、排出孔84、および注入孔80と排出孔84を接続する1本のマイクロチャネル82が形成されている。
排出孔84の付近にリガンド誘引用電極85が配置され、注入孔80の付近に対向電極81が配置されている。ここで、逆に、排出孔84の付近に対向電極81が配置され、注入孔80の付近にリガンド誘引用電極85が配置されていてもよい。
実施の形態5では、前記注入孔80と排出孔84との間のマイクロチャネルに、該マイクロチャネル82に沿う長い(長尺状)固定化可能領域83が設けられている。該構造により、実施の形態5による方法では、一対の電極のみを利用し複数のリガンドを固定化することができる。
すなわち、リガンドと光架橋剤の混合液からリガンドを電気で誘引させる際、実施の形態1ないし4では、固定化用電極まで誘引させた後に光固定化を行うが、実施の形態5では、該マイクロチャネル82に沿う固定化可能領域83を有するため、電気的に誘引している途中の固定化可能領域83で、フォトマスクを使用し固定化可能領域83内の任意の点のみに光を照射する。
これにより、光が照射した時点で光架橋剤は活性化され、その場でリガンドと非特異吸着防止処理剤とが架橋される。これを繰り返すことで、一対の電極のみで複数のリガンドをマイクロチャネル82の任意の場所に固定化することが可能となる。
なお、リガンド溶液の調整法や光架橋剤、非特異吸着防止処理剤などは実施の形態1と同様である。
〔実施の形態6〕
図8は、本発明の実施の形態6にかかるマイクロ分析装置の構造を示す。図8に示すように、実施の形態6にかかるマイクロ分析装置は、マイクロ分析装置93のマイクロチャネル92に接続するようにポンプ90を設置する構造とする。ポンプ90は、例えば、注入孔または排出孔に接続することができるが、本実施の形態では注入孔に接続する。
ポンプ90と注入孔は、チューブ91で連接される。チューブ91は実質的には必要ないが、接続するために必要であれば設置する。
マイクロ分析装置93としては、実施の形態1ないし5のマイクロ分析装置を用いることができる。ポンプで送液しながら固定化を行えば、リガンドは電気だけの誘引力だけではなく、ポンプによる拡散速度も速くなるため、より効果的に固定化することが可能となる。
なお、リガンド溶液の調整法や光架橋剤、非特異吸着防止処理剤などは実施の形態1と同様である。
次に、実施例1および比較例1、2により本発明の構造による効果を説明する。
実施例1および比較例1、2では、図9に示すマイクロチャネルチップを作製した。実施例1および比較例1、2におけるマイクロ分析装置のマイクロチャネルの構造は、PDMS(Polydimethylsiloxane、東レダウコーニング社製)を用いて作製した。固定化用電極203、204と対向電極205とをともに石英基板にフォトリソグラフィ法によりレジストパターンを形成し、チタン次いで金をスパッタリングし金電極を作製した。
マイクロチャネル202の幅は500μm、高さは50μmで作製した。固定化用電極203、204は200μm×500μm、対向電極205は600μm×500μmとした。PDMSチャネル基板と電極基板を貼りあわせて、マイクロチャネル構造を作製した。マイクロチャネル内はBSAとホスホリルコリン基を含むMPC(Methacryloyloxyethylphosphorylcholine)ポリマー(第一器業社製)で非特異吸着防止処理を施した。
(実施例1)
Hilyte555(同仁化学社製)で修飾したアディポネクチン抗体(R&Dシステム社製)とFITC(Fluoresceinisothiocyanate、同仁化学社製)で修飾したレジスチン抗体をそれぞれpH3.5に調製し、最終濃度を1μg/mlに調製した。それぞれの抗体溶液には光架橋剤ATFB−SE(Thermo Fisher Scientific社製)を、抗体に対する光架橋剤のモル比が500になるよう混合した。注入孔201からFITC修飾レジスチン抗体混合溶液を接触させ、固定化用電極203に光を照射しながら電流が−4μAになるよう電圧を印加し電気誘引光固定化を行った。次に、ツイーン20(キシダ化学社製)入りのPBS(phosphate buffer saline、和光純薬工業社製)で十分洗浄した。さらに、注入孔201からHilyte555修飾アディポネクチン抗体混合溶液を接触させ、固定化用電極204に光を照射しながら電流が−4μAになるよう電圧を印加して電気誘引光固定化を行った。最後に、ツイーン20入りのPBSで十分洗浄した。
(比較例1)
Hilyte555修飾アディポネクチン抗体とFITC修飾レジスチン抗体をそれぞれpH3.5に調製し、最終濃度を1μg/mlに調製した。それぞれの抗体溶液には光架橋剤ATFB−SEを混合しなかった。注入孔201からFITC修飾レジスチン抗体溶液を接触させ、固定化用電極203に光を照射しながら電流が−4μAになるよう電圧を印加して電気誘引光固定化を行った。次に、ツイーン20入りのPBSで十分洗浄した。さらに注入孔201からHilyte555修飾アディポネクチン抗体溶液を接触させ、固定化用電極204に光を照射しながら電流が−4μAになるよう電圧を印加して電気誘引光固定化を行った。最後に、ツイーン20入りのPBSで十分洗浄した。
(比較例2)
Hilyte555修飾アディポネクチン抗体とFITC修飾レジスチン抗体をそれぞれpH3.5に調製し、最終濃度を1μg/mlに調製した。それぞれの抗体溶液には光架橋剤ATFB−SEを、抗体に対する光架橋剤のモル比が500になるよう混合した。注入孔201からFITC修飾レジスチン抗体混合溶液を接触させ、固定化用電極203に光を照射しながら電圧を印加せずに電気誘引光固定化を行った。次に、ツイーン20入りのPBSで十分洗浄した。さらに注入孔201からHilyte555修飾アディポネクチン抗体混合溶液を接触させ、固定化用電極204に光を照射しながら電圧を印加せずに電気誘引光固定化を行った。最後に、ツイーン20入りのPBSで十分洗浄した。
(実施例1と比較例1、2との比較)
それぞれの固定化用電極204を蛍光観察した。抗体に蛍光を修飾しているため、蛍光が観察された場合、マイクロチャネル内に抗体が固定化されていることを示す。
実施例1の場合、固定化用電極上の光を当てた部位のみきれいに蛍光が観察された(図10)。光架橋剤を入れなかった比較例1の場合には、蛍光がほぼ観察されなかった(図11)。電圧を印加しなかった比較例2の場合にも、蛍光がほぼ観察されなかった(図12)。
これにより、本発明のマイクロ分析装置の構造で、光架橋剤を入れ且つ電圧を印加することにより、リガンドが固定化用電極に確実に固定化されることができることがわかる。
本発明は上述した各実施形態、実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられる。本発明の範囲は上述した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
尚、以上説明した本発明は、以下のように言い換えることもできる。即ち、
(1)多項目を同時に検出するマイクロ分析装置の被検体物質の固定化方法であって、被検体物質は帯電性を有するpHに調製し、該溶液には光反応性置換基をもつ光架橋剤を混合し、被検体物質を固定化する前に非特異吸着防止処理を施したマイクロチャネル内に、前記溶液を注入し、マイクロチャネル内に設置された固定化用電極およびその対向電極との間に一定の電流が流れるように可変電圧を印加させ、さらに該固定化用電極に活性化エネルギーを与える光を照射することによる光反応によって、前記被検体物質を固定化することを特徴とする被検体物質の固定化方法。
(2)上記(1)に記載の被検体物質の固定化方法において、前記マイクロ分析装置のマイクロチャネルにおいて、非特異吸着防止処理を施す前に、高分子により前記固定化用電極の少なくとも一部を被覆する被検体物質の固定化方法。
(3)上記(1)または(2)に記載の被検体物質の固定化方法において、マイクロチャネル内に設置された固定化用電極およびその対向電極との間に印加する電圧は1V以上とする被検体物質の固定化方法。
(4)上記(1)または(2)に記載の被検体物質の固定化方法において、被検体物質の最終濃度は10μg/ml以下とする被検体物質の固定化方法。
(5)多項目を同時に検出するマイクロ分析装置であって、固定化用電極上に非特異吸着防止処理剤が被覆され、さらに被検体物質が光反応性置換基をもつ光架橋剤により非特異吸着防止処理との間を架橋した構造を特徴とするマイクロ分析装置。
(6)上記(5)に記載のマイクロ分析装置において、固定化用電極上の少なくとも一部を高分子で被覆され、その上に非特異吸着防止処理剤が被覆され、さらに被検体物質が光反応性置換基をもつ光架橋剤により非特異吸着防止処理との間を架橋した構造を特徴とするマイクロ分析装置。
(7)上記(5)または(6)に記載のマイクロ分析装置において、マイクロチャネル内に2つ以上の固定化用電極を設け、その下流または上流側に(1つの)対向電極を設けるマイクロ分析装置。
(8)上記(7)に記載のマイクロ分析装置において、前記マイクロチャネルが、溶液を注入する注入孔1つと溶液を排出する排出孔1つを接続する1本のマイクロチャネルで構成された構造を特徴とするマイクロ分析装置。
(9)上記(7)に記載のマイクロ分析装置において、前記マイクロチャネルが、溶液を注入する注入孔1つと溶液を排出する2つ以上の排出孔に接続するため途中で分岐した構造であり、分岐点より下流側のマイクロチャネル内に固定化用電極を分岐したチャネル分設け、分岐点より上流側のマイクロチャネル内に対向電極1つ設けるマイクロ分析装置。
(10)上記(9)に記載のマイクロ分析装置において、固定化用電極の下流側に電気化学的に活性な物質を検出する検出用電極を設けるマイクロ分析装置。
(11)上記(5)〜(10)の何れか1項に記載のマイクロ分析装置において、前記非特異吸着防止処理剤がタンパク質であるマイクロ分析装置。
(12)上記(5)〜(10)の何れか1項に記載のマイクロ分析装置において、前記非特異吸着防止処理剤が合成高分子であるマイクロ分析装置。
(13)上記(5)〜(10)の何れか1項に記載のマイクロ分析装置において、前記非特異吸着防止処理剤が合成高分子とタンパク質の混合物質であるマイクロ分析装置。
(14)上記(11)または(13)に記載のマイクロ分析装置において、上記タンパク質は、ウシ血清アルブミン、カゼイン、且つまたはゼラチンであるマイクロ分析装置。
(15)上記(12)または(13)に記載のマイクロ分析装置において、前記合成高分子が電気的に中性であるマイクロ分析装置。
(16)上記(15)に記載のマイクロ分析装置において、前記非特異吸着防止処理剤がホスホリルコリン基を有する合成高分子であるマイクロ分析装置。
(17)上記(5)〜(16)の何れか1項に記載のマイクロ分析装置において、前記光反応性基を有する光架橋剤が、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸コハク酸イミドエステル、Bis−(4−Azidosalicylamido)ethyl]disulfideであるマイクロ分析装置。
(18)上記(5)〜(17)の何れか1項に記載のマイクロ分析装置において、前記被検体物質が、抗体または人工抗体であるマイクロ分析装置。
(19)上記(18)に記載のマイクロ分析装置において、前記人工抗体は合成ペプチド、アプタマー、または分子インプリンティングポリマーであるマイクロ分析装置。
(20)上記(5)〜(19)の何れか1項に記載のマイクロ分析装置において、検出物質が、血液内成分であるマイクロ分析装置。
(21)上記(20)に記載のマイクロ分析装置において、前記血液成分が、アディポネクチン、レプチン、レジスチン、TNF−αのいずれかを含むマイクロ分析装置。
(22)上記(5)〜(21)の何れか1項に記載のマイクロ分析装置において、注入孔にポンプを接続するマイクロ分析装置。
本発明の被検体物質の固定化方法およびマイクロ分析装置によると、微量なサンプル量で、迅速かつ高感度な測定を複数同時に行うことができる。これにより、本発明は、微小な化学物質等を検出するために用いるマイクロチャネルチップ、マイクロリアクター等の化学マイクロデバイスやアレルゲンセンサーをはじめとするバイオセンサーなど、μ−TAS技術を用いたマイクロチャネルチップを利用する分野に適用することができる。
1、30、40、60、80、102、201 注入孔
2、31、41、61、82、92、101、202 マイクロチャネル
3、4、5、13、29、32、33、34、42、45、48、62、66、70、203、204 固定化用電極
6、35、37、51、65、69、73、74、81、205 対向電極
7、36、44、47、50、64、68、72、84、104、206 排出孔
10、25 リガンド(被検体物質)
11、26 光架橋剤(架橋剤)
12、27 非特異吸着防止処理剤層
28 合成高分子層
43、46、49、63、67、71 検出用電極部
83 固定化可能領域
85 リガンド誘引電極
90 ポンプ
91 チューブ
93 マイクロ分析装置
100 基板
103 液だめ部
105 リガンド固定部
120 被検体物質
121 標識物質
122、125 抗体
123 標識抗体
124 免疫複合体
126 複合体

Claims (25)

  1. 検体と結合可能な被検体物質をマイクロ分析装置におけるマイクロチャネルに固定化する被検体物質の固定化方法であって、
    前記マイクロチャネルには、固定化用電極と対向電極とが備えられており、
    前記マイクロチャネルに非特異吸着防止処理剤を接触させ、前記マイクロチャネルの中および固定化用電極に対して非特異吸着防止処理を行う非特異吸着防止工程、
    前記被検体物質を含む溶液のpHを調整して前記被検体物質を帯電させ、pH調整後の溶液に、前記非特異吸着防止処理剤と反応可能な官能基および前記被検体物質と反応可能な官能基を有する架橋剤を混合して、混合液を作製する混合液作製工程、並びに、
    前記混合液を前記マイクロチャネルに接触させ、前記マイクロチャネルの中に設けられた前記固定化用電極と前記対向電極との間に電流を流し且つ前記固定化用電極に前記被検体物質が帯電した電位と極性が反対の電位を供給するような可変電圧を印加し、前記被検体物質を電気的に前記固定化用電極に誘引して、さらに前記固定化用電極に活性化エネルギーを付与して、前記被検体物質を、非特異吸着防止処理が施された前記固定化用電極に、前記非特異吸着防止処理剤と架橋させて固定化する固定化工程
    を含むことを特徴とする被検体物質の固定化方法。
  2. 前記架橋剤は、光架橋剤であり、前記非特異吸着防止処理剤と反応可能な官能基は、光反応性置換基であり、前記被検体物質と反応可能な官能基は、光反応性置換基を有しており、かつ前記活性化エネルギーは、光エネルギーであることを特徴とする請求項1に記載の被検体物質の固定化方法。
  3. 前記非特異吸着防止処理を行う前に、前記固定化用電極の少なくとも一部を合成高分子の層で被覆することを特徴とする請求項1または2に記載の被検体物質の固定化方法。
  4. 前記固定化用電極と前記対向電極との間に印加する可変電圧は、1V以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の被検体物質の固定化方法。
  5. 前記pH調整後の溶液における被検体物質の濃度は、0.01μg/ml以上、10μg/ml以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の被検体物質の固定化方法。
  6. マイクロチャネルを備え、検体と結合可能な被検体物質が前記マイクロチャネルに固定化されたマイクロ分析装置であって、
    前記マイクロチャネルには、固定化用電極と対向電極とが備えられており、
    前記マイクロチャネルの固定化用電極は非特異吸着防止処理剤で被覆されており、
    前記固定化用電極は、前記被検体物質を電気的に当該固定化用電極に誘引する電極であり、
    前記被検体物質は、非特異吸着防止処理が施された前記固定化用電極に、前記非特異吸着防止処理剤と反応可能な官能基および前記被検体物質と反応可能な官能基を有する架橋剤により、前記非特異吸着防止処理剤と架橋して固定化されていることを特徴とするマイクロ分析装置。
  7. 前記架橋剤は、光架橋剤であり、前記非特異吸着防止処理剤と反応可能な官能基は、光反応性置換基であり、かつ前記被検体物質と反応可能な官能基は、光反応性置換基を有していることを特徴とする請求項6に記載のマイクロ分析装置。
  8. 固定化用電極の少なくとも一部は、合成高分子の層で被覆されており、
    前記合成高分子の層は、前記非特異吸着防止処理剤で被覆されていることを特徴とする請求項6または7に記載のマイクロ分析装置。
  9. 前記マイクロチャネルには、2つ以上の前記固定化用電極が設けられ、
    前記2つ以上の固定化用電極の下流側または上流側には、対向電極が設けられていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のマイクロ分析装置。
  10. 前記マイクロチャネルに液体を接触させるための1つの注入孔および液体を排出するための1つの排出孔を更に備えており、
    前記注入孔と前記排出孔とは、1本の前記マイクロチャネルにより接続されていることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載のマイクロ分析装置。
  11. 前記マイクロチャネルに液体を接触させるための1つの注入孔および液体を排出するための2つ以上の排出孔を更に備えており、
    前記1つの注入孔と前記2つ以上の排出孔とを接続する前記マイクロチャネルは、前記1つの注入孔からの経路が分岐点で分岐した構造を有し、
    前記分岐点より下流側の前記マイクロチャネルの中には、分岐されたマイクロチャネルの分岐路ごとに前記固定化用電極が設けられており、
    前記分岐点より上流側の前記マイクロチャネルの中には、前記対向電極が設けられていることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載のマイクロ分析装置。
  12. 前記固定化用電極の下流側に、電気化学的に活性な物質を検出するための検出用電極が設けられていることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載のマイクロ分析装置。
  13. 前記非特異吸着防止処理剤が、タンパク質であることを特徴とする請求項6〜12のいずれか1項に記載のマイクロ分析装置。
  14. 前記非特異吸着防止処理剤が、合成高分子であることを特徴とする請求項6〜13のいずれか1項に記載のマイクロ分析装置。
  15. 前記合成高分子は、非特異吸着防止処理剤の機能を有していることを特徴とする請求項14に記載のマイクロ分析装置。
  16. 前記非特異吸着防止処理剤が、合成高分子とタンパク質との混合物質であることを特徴とする請求項6〜13のいずれか1項に記載のマイクロ分析装置。
  17. 上記タンパク質が、ウシ血清アルブミン、カゼイン、またはゼラチンであることを特徴とする請求項13または16に記載のマイクロ分析装置。
  18. 前記合成高分子が、電気的に中性であることを特徴とする請求項14に記載のマイクロ分析装置。
  19. 前記非特異吸着防止処理剤が、ホスホリルコリン基を有する合成高分子であることを特徴とする請求項18に記載のマイクロ分析装置。
  20. 前記光架橋剤が、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸コハク酸イミドエステル、または、ビス−[(4−アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィドであることを特徴とする請求項6〜19のいずれか1項に記載のマイクロ分析装置。
  21. 前記被検体物質は、抗体または人工抗体であることを特徴とする請求項6〜20のいずれか1項に記載のマイクロ分析装置。
  22. 前記人工抗体は、合成ペプチド、アプタマー、または分子インプリンティングポリマーであることを特徴とする請求項21に記載のマイクロ分析装置。
  23. 前記検体は、血液内成分であることを特徴とする請求項6〜22のいずれか1項に記載のマイクロ分析装置。
  24. 前記血液内成分は、アディポネクチン、レプチン、レジスチンおよびTNF−αのうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項23に記載のマイクロ分析装置。
  25. 前記注入孔にポンプが接続されていることを特徴とする請求項6〜24のいずれか1項に記載のマイクロ分析装置。
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