JP5242236B2 - 脂肪酸類の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、固定化酵素を充填した充填層を用いた脂肪酸類の製造方法に関する。
従来、化学プラント等における化学物質の製造においては、各種反応を行う際に触媒が利用されている。例えば、粒状に形成された触媒を円筒状の反応塔に充填しておき、この反応塔に原料油、反応液、ガス或いはこれらの混合物を通過させて触媒表面に接触させることにより反応を行う方法が行われている。また、油脂類の加水分解においては、代表的な方法として、酵素を水不溶性の担体へ吸着させた固定化酵素を固定床型反応塔に充填し、これに油相基質と水相基質を通液する方法が知られている。
固定床に油相基質と水相基質を流通させる方法としては、向流で流通させる方法(特許文献1、2参照)、及び並流で流通させる方法(特許文献3、4、5参照)があるが、前者は特殊な仕組みと運転方法が必要となるため、一般的には並流で流通させる方法が採られている。特許文献4では、油相と水相を分離する(以下「油水分離」と記載する)のための付帯設備を省略するため、反応液を基質供給槽に戻し、供給槽で油相と水相に分離する装置を提案しており、特許文献5では十分な酵素活性および酵素耐久性を確保するためにカラム充填条件と通液条件を規定している。
特開昭61−85195号公報 特開平1−98494号公報 特開平4-335881号公報 特開2000−160188号公報 特開2003−291号公報
従来のカラム充填条件及び通液条件にて固定化酵素充填層に油相基質と水相基質を供給し反応させる方法では固定化酵素充填層からの出口反応液は乳化しており、油水分離して、油相を製品として取り出すことが困難であることが判明した。
従って、本発明の目的は、固定化酵素を充填した充填層に油相基質と水相基質を供給させて脂肪酸類を製造する方法において、出口反応液の油水分離を容易とすることにより、脂肪酸類を簡便に回収できる方法を提供することにある。
本発明者は、充填層に働くせん断力因子と固定化酵素充填層からの出口反応液の油水分離速度を評価した結果、せん断力因子が大きいカラム充填条件及び通液条件では、反応液の乳化粒子径が小さくなるため油相と水相に分離することが困難であることを見出した。そこで、せん断力因子を十分に小さくすることで、反応液の油水分離性を向上させることができることを見出した。
すなわち、本発明は、固定化酵素を充填した充填層に油相基質と水相基質を供給して反応させる脂肪酸類の製造方法であって、固定化酵素の表面における次式(1)
(数式) τw=ε/(1-ε) ×dp× (ΔP/L) (1)
(式中右辺、ΔPは充填層の圧力損失[MPa]、Lは充填層厚み[m]、dpは充填した固定化酵素粒子の質量基準平均粒子径[m]、εは充填層の空隙率[-]を示す)
で表わされるせん断力因子(τw)が1×10-6MPa以上、1×10-4MPa未満となるような条件下で反応させる脂肪酸類の製造方法を提供するものである。
本発明の方法によれば、出口反応液が容易に油相と水相に分相するため、後工程である油水分離を効率化できる。
本発明においては、固定化酵素を充填した充填層に油相基質と水相基質を供給する。充填層(以下「酵素塔」ともいう)とは、固定化酵素をカラム等に充填し、固定化担体間の空隙及び固定化担体の細孔に反応液を流通させ得るようにしたものをいう。
本発明においては、油相基質と水相基質を同一方向に並流させる。この場合、2液相を予め混合して乳化状態として供給しても良く、分相したまま供給しても良い。供給する液を過度に乳化させると、粘度が著しく増加し、通液が困難となるため、供給する乳化液の油水分離時間は40分以下であることが好ましい。また、2液相を一定時間毎に交互に供給しても良い。酵素塔への各基質の供給は、塔頂から塔底へ下方流で行っても、塔底から塔頂へ上方流で行っても良い。
本発明で用いる固定化酵素は、固定化担体に酵素を吸着等により担持させたものである。固定化担体としては、セライト、ケイソウ土、カオリナイト、シリカゲル、モレキュラーシーブス、多孔質ガラス、活性炭、炭酸カルシウム、セラミックス等の無機担体、セラミックスパウダー、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、キトサン、イオン交換樹脂、疎水吸着樹脂、キレート樹脂、合成吸着樹脂等の有機高分子等が挙げられるが、特に保水力が高い点からイオン交換樹脂が好ましい。また、イオン交換樹脂の中でも、大きな表面積を有することにより酵素の吸着量を高くできるという点から、多孔質であることが好ましい。
固定化担体として用いる樹脂の細孔径は10〜150nmが好ましく、更に10〜100nmが好ましい。材質としては、フェノールホルムアルデヒド系、ポリスチレン系、アクリルアミド系、ジビニルベンゼン系等が挙げられ、特にフェノールホルムアルデヒド系樹脂(例えば、Rohm and Hass社製Duolite A-568、細孔径15〜25nm)が酵素吸着性上の点から好ましい。細孔径の測定は、水銀圧入法、窒素吸着法等により行うことができる。
本発明の固定化酵素に使用する酵素は特に限定はされないが、生産性の向上効果が大きい点から、油脂類分解用酵素としてのリパーゼが好ましい。リパーゼは、動物由来、植物由来のものはもとより、微生物由来の市販リパーゼを使用することもできる。微生物由来リパーゼとしては、リゾプス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属、キャンディダ(Candida)属等の起源のものが挙げられる。
酵素の固定化を行う温度は、酵素の特性によって決定することができるが、酵素の失活が起きない0〜60℃、特に5〜40℃が好ましい。また固定化時に使用する酵素溶液のpHは、酵素の変性が起きない範囲であればよく、温度同様酵素の特性によって決定することができるが、pH3〜9が好ましい。このpHを維持するためには緩衝液を使用するが、緩衝液としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液等が挙げられる。上記酵素溶液中の酵素濃度は、固定化効率の点から酵素の飽和溶解度以下で、かつ十分な濃度であることが好ましい。また酵素溶液は、必要に応じて不溶部を遠心分離で除去した上澄や、限外濾過等によって精製したものを使用することもできる。また用いる酵素質量はその酵素活性によっても異なるが、担体質量に対して5〜1000質量%、特に10〜500質量%が好ましい。
酵素を固定化する場合、担体と酵素を直接吸着してもよいが、高活性を発現するような吸着状態にするため、酵素吸着前に予め担体を脂溶性脂肪酸又はその誘導体で処理することが好ましい。脂溶性脂肪酸又はその誘導体と担体の接触法としては、水又は有機溶剤中にこれらを直接加えてもよいが、分散性を良くするため、有機溶剤に脂溶性脂肪酸又はその誘導体を一旦分散、溶解させた後、水に分散させた担体に加えてもよい。この有機溶剤としては、クロロホルム、ヘキサン、エタノール等が挙げられる。脂溶性脂肪酸又はその誘導体の使用質量は、担体質量に対して1〜500質量%、特に10〜200質量%が好ましい。接触温度は0〜100℃、特に20〜60℃が好ましく、接触時間は5分〜5時間程度が好ましい。この処理を終えた担体は、ろ過して回収するが、乾燥してもよい。乾燥温度は室温〜100℃が好ましく、減圧乾燥を行ってもよい。
予め担体を処理する脂溶性脂肪酸又はその誘導体のうち、脂溶性脂肪酸としては、炭素数4〜24、好ましくは炭素数8〜18の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の、水酸基を有していてもよい脂肪酸が挙げられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、リシノール酸、イソステアリン酸等が挙げられる。また前記脂溶性脂肪酸の誘導体としては、これらの脂溶性脂肪酸と一価若しくは多価アルコール又は糖類とのエステル、リン脂質、及びこれらのエステルにエチレンオキサイドを付加したもの等が挙げられる。具体的には、上記脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、モノグリセライド、ジグリセライド、それらのエチレンオキサイド付加体、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル等が挙げられる。これら脂溶性脂肪酸及びその誘導体はいずれも常温で液状であることが酵素を担体に固定化する工程上好ましい。これら脂溶性脂肪酸又はその誘導体としては、上記2種以上を併用してもよく、菜種脂肪酸、大豆脂肪酸等の天然由来の脂肪酸を用いることもできる。
固定化酵素の加水分解活性は20U/g以上、更に100〜10000U/g、特に500〜5000U/gの範囲であることが好ましい。ここで酵素の1Uは、40℃において、油脂類:水=100:25(質量比)の混合液を攪拌混合しながら30分間加水分解をさせたとき、1分間に1μmolの遊離脂肪酸を生成する酵素の分解能を示す。油脂類の単位質量当りに付与した固定化酵素の加水分解活性(U/g-oil)と、ある加水分解率に到達するまでの所要時間は、略反比例の関係にある。
本発明における油相基質とは、主に植物油、動物油又はこれらを組み合わせた油脂類をいうが、油脂類とはトリアシルグリセロールの他、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、又は脂肪酸類を含んでいても良く、加水分解の結果得られる脂肪酸を含んでいても良い。油相基質の具体例としては、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、パーム油及びアマニ油等の植物油、牛脂、豚脂及び魚油等の動物油等、又はこれらの組み合わせの油脂類が挙げられる。これら油脂類は、脱臭油の他、予め脱臭されていない未脱臭油脂を用いることができるが、これら油脂類の一部又は全部に未脱臭油脂を使用することが、トランス不飽和脂肪酸、共役不飽和脂肪酸を低減し、原料油脂由来の植物ステロール、植物ステロール脂肪酸エステル、トコフェロールを残存させることができる点から好ましい。
本発明における水相基質は水であるが、加水分解の結果得られるグリセリン等、その他の水溶性成分が混合されていても良い。
本発明の方法において製造される脂肪酸類は、前記油脂類を構成する脂肪酸が加水分解された結果得られるものを主成分とし、その他、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール等を含んでいても良い。製造された脂肪酸類中の脂肪酸含有量は60〜98質量%程度であることが好ましい。
本発明において使用する酵素塔は、その形状は使用するポンプの押し込み圧に耐えられるものであれば良い。また、酵素塔の周囲にジャケットを設け、酵素塔内に流通する反応液を酵素反応に適した温度に調整できるものであることが好ましい。酵素塔内の温度は、固定化酵素の活性をより有効に引き出すために、0〜60℃、更に20〜40℃とすることが好ましい。酵素塔の長さは、所望の分解率を得るのに必要な長さとすれば良いが、反応性、圧力損失等の点から0.01〜10m、さらに0.1〜5mの範囲とすることが好ましい。
固定化酵素を充填した充填層に反応液を送液して加水分解する際の反応液の流れは、充填層の隙間の複雑な通路を細かい平行な管の集まりと見なした円管内流れとして理論化されている(白井隆、「流動層」科学技術社発行、53頁、1982年;亀井三郎、「化学機械の理論と計算(第2版)」産業図書(株)発行、513頁、1975年)。
具体的には、流体の通過する断面積を流体の接する管壁の長さ(浸辺長)で除した動水半径Rh[m]は、充填粒子の体積基準の比表面積をSv[m2/m3]、充填層の空隙率をε[-]とした次式(2)、
(数式)Rh=ε/(Sv×(1-ε))=Deq/4 (2)
で表わされる。ここで、Deqは相当円管径[m]で、Rhの4倍に相当する。また、空隙率ε[-]は、粒子の真比重をρ0[kg/m3]、充填嵩比重をρ1[kg/m3]としたとき、ε=(ρ01)/ρ0で算出される。
充填粒子の体積基準の比表面積Svは、粒子の代表径として質量基準平均粒子径をdp[m]、粒子の形状係数をφ[-]とした次式(3)、
(数式)Sv=φ/dp (3)
で表わされる(亀井三郎、前出、395頁)。
質量基準平均粒子径dpは粒子群を篩分けにより分離し、篩下と篩上の目の開きの平均として算出される粒子径をdpi[m]、粒子径dpiの質量分率をwi[-]とした次式(4)
(数式)dp=1/Σ(wi/dpi) (4)
で算出される(化学工学便覧 第5版、丸善(株)発行、242頁、1988年)
φは粒子の形状によって変化する因子であり、球の場合で6となるが、例えば、数種の岩石の形状係数は10μmから1000μmの範囲で6から24と測定される(亀井三郎、前出、396頁)。
円管内に非圧縮性流体が層流で流れている時の管内壁に働くせん断力τ[MPa]は、円管内流れの圧力損失をΔP′[MPa]、円管の長さをL′[m]、円管の直径をD[m]とすると、次式(5)
(数式)τ=(ΔP′/L′)×(D/4) (5)
で表わされる(R、Byron Bird等、「TRASPORT PHENOMENA」、JOHN WILEY&SONS、42〜47頁、1960年)。
ここで、充填層の隙間の通路を円管と見なした相当円管径Deqを円管の直径Dと、円管の長さL′を充填層の厚みLと、円管内流れの圧力損失ΔP′を充填層にかかる圧力損失ΔPと見なし、式(5)に式(2)、(3)を代入すると次式(6)が得られる。
(数式)τ=(1/φ)×(ΔP/L)×dp×ε/(1-ε) (6)
式(6)は充填層の隙間の通路を円管と見なしたときの管内壁に働くせん断力であり、充填粒子の表面に働くせん断力を意味する。
出口反応液の油水分離を容易とすることにより、脂肪酸類を簡便に回収できるという目的を達成できる条件を検討したところ、
(数式) τw=ε/(1-ε) ×dp× (ΔP/L) (1)
と定義し、この値を一定の範囲とすることで、上記目的が達成できることを見出した。
本発明においては、固定化酵素の表面における前記式(1)で表わされるせん断力因子が、1×10-6MPa以上、1×10-4MPa未満となる条件下で反応液が送液される。当該条件とすることで、出口反応液は容易に分相し、後工程である油水分離を効率化することができる。当該せん断力因子は、反応性を維持し、油水分離性を向上させる点から、更に2×10-5〜9.8×10-5MPa、特に5×10-5〜9.7×10-5MPaとなる条件とすることが好ましい。
式(1)で表わされるせん断力因子は、反応液を充填層に送液する際の充填層にかかる充填層厚みあたりの圧力損失、固定化酵素の質量基準平均粒子径、充填層の空隙率を変化させて調整される。また、充填層にかかる充填層厚みあたりの圧力損失は充填層への通液線速度、固定化酵素の平均粒子径、空隙率等を変化させて調整される。従って、これらの条件を適宜変更すれば、当業者は容易にせん断力因子を調節することができる。
充填層厚みは、所望の分解率を得るのに必要な長さとすれば良いが、反応性、酵素塔の耐圧性の点から0.01〜10m、更に0.1〜5mが好ましい。
充填層の圧力損失は、液の流動性の点、酵素塔の耐圧性の点から0.01〜10MPa、更に0.05〜2MPaが好ましい。
本発明において、充填層厚みあたりの圧力損失は、0.01〜0.6MPa/m、更に0.05〜0.25MPa/m、特に0.1〜0.15MPa/mとすることが、反応性を維持し、油水分離性を向上させる点から好ましい。
固定化酵素の質量基準平均粒子径は、100〜6000μm、更に200〜4000μm、特に250〜2000μmとすることが、反応性を維持し、油水分離性を向上させる点から好ましい。なお、本発明における酵素を担持させた固定化酵素の平均粒子径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置LS 13 320(ベックマン・コールター(株)製)により測定した値をいう。
充填層の空隙率は、0.3〜0.7、更に0.4〜0.65、特に0.45〜 0.6とすることが、油水分離性の向上と、安定な充填層を形成する点から好ましい。
反応液の通液線速度は、好ましくは1〜400mm/分、更に5〜200mm/分であるのが好ましい。この通液線速度(mm/分)は、1分間当りの送液量(mm3/分)(又は送液速度(10-3mL/分)ともいう)を充填層断面積(mm2)で除した商で表わされる値をいう。通液線速度を上げることによる充填層の圧力損失の増大に伴い、通液が困難となり、耐圧性の高い酵素充填塔が必要となる他に、固定化酵素が塔内圧力増加により破砕される場合が生じることもあるため、通液線速度は400mm/分以下とすることが好ましい。また、生産性の点から通液線速度は1mm/分以上とすることが好ましい。固定化酵素の発現活性は、通液線速度により変化するため、最適な通液線速度を選定して反応条件を決定することで、所望の生産能力、製造コストに見合った反応を行うことができる。
酵素塔内の反応液の滞留時間は、加水分解反応の平衡状態を回避し、固定化酵素の活性をより有効に引き出し、生産性を向上させる点から30秒〜120分、更に1分〜80分とすることが好ましい。滞留時間(分)とは、充填層の厚み(mm)に空隙率を乗じ、これを通液線速度(mm/分)で除した値で表わされる。
酵素塔出口の反応液の油水分離性は、後述のように、乳化状態にある一定高さの反応液が油相と水相に分離するまでに要する時間で評価することができる。油水分離時間は15分以下であることが好ましく、更には0.5〜10分であることが好ましい。
本発明においては、反応性、生産性等の兼ね合いから、酵素塔を通過した反応液をそのまま反応終了物としても良く、また、反応液を一旦油水分離し、油相を分取した後に新しい水を加えて上記と同様の方法で再度同一の酵素塔へ供給し、所望の反応率が得られるまで繰り返し通過させても良い。また、反応液を一旦油水分離し、油相を分取した後に新しい水を加えて上記と同様の方法で再度、別の酵素塔へ供給して連続反応を行っても良い。また、複数の酵素塔を用いて反応液の油水分離を行いながら、油相を次の酵素塔へ、水相を前の酵素塔へ供給する事により、より分解率の高い油相を新鮮な水相と反応させる擬似向流法で行っても良い。
本発明における反応液の油水分離操作は、特に限定されないが、自然沈降型、遠心分離型等の油水分離器等を用いて行うことができる。
<油水分離時間の測定>
酵素塔出口の反応液を内径20mmの容器に高さ30mm採取し、その乳化液が油相と水相に分相するのに要する時間を油水分離時間とした。分相は目視にて確認した。
<実施例1>
DuoliteA−568(Rohm and Hass社製、粒径分布100〜1000μm)1質量部をN/10のNaOH溶液10質量部中で1時間攪拌した。ろ過した後10質量部のイオン交換水で洗浄し500mMの酢酸緩衝液(pH7)10質量部でpHの平衡化を行なった。その後50mMの酢酸緩衝液(pH7)10質量部で2時間ずつ2回pHの平衡化を行なった。この後ろ過を行ない、担体を回収した後、エタノール5質量部でエタノール置換を30分行なった。ろ過した後、大豆脂肪酸を1質量部含むエタノール5質量部を加え30分間、大豆脂肪酸を担体に吸着させた。ろ過によって担体を回収した後、50mMの酢酸緩衝液(pH7)5質量部で30分ずつ4回洗浄し、エタノールを除去し、ろ過して担体を回収した。その後市販のリパーゼ(リパーゼAY「アマノ」30G、天野エンザイム(株))0.39質量部を50mMの酢酸緩衝液(pH7)18質量部に溶解した酵素液と5時間接触させ、固定化を行った。ろ過し、固定化酵素を回収して50mMの酢酸緩衝液(pH7)5質量部で洗浄を行うことにより、固定化していない酵素やタンパクを除去した。その後実際に分解を行う菜種油を4質量部加え12時間攪拌した。以上の操作はいずれも20℃で行った。その後ろ過して油脂と分離し、固定化酵素とした。その結果、2700U/g(乾燥質量)の加水分解活性(発現すべき活性)を示す固定化リパーゼが得られた。固定化酵素の質量基準の平均粒子径は451μmであった。
ジャケット付きステンレス製カラム(内径22.9mm)に、前記固定化リパーゼ0.162kg(乾燥質量)を充填し(充填層厚み1375mm、空隙率0.531)、ジャケットにて35℃に保温した。カラム上部より菜種分解油(酸価186.1)と蒸留水を質量比10:6で混合した液(油水分離時間10分未満)を0.494L/Hrで送液し、加水分解反応を行った。送液時の圧力損失は0.200MPa、出口反応液乳化粒子径(面積基準平均径)は258.4μm、出口液分解率は95.6%、せん断力因子は7.43×10-5MPaであった。結果を表1および図1に示す。なお、表中分解率は、次の方法で求めた酸価をケン化価で除することにより算出した。酸価は、American Oil Chemists.Society Official Method Ca 5a−40に記載の方法により、またケン化価はAmerican Oil Chemists.Society Official Method Cd 3a−94に記載の方法により測定した。
<実施例2>
菜種分解油(酸価160.9)と1.5%グリセリン水を送液した以外は実施例1と同様な手順で加水分解反応を行った。送液時の圧力損失は0.260MPa、出口反応液乳化粒子径(面積基準平均径)は250.0μm、出口液分解率は93.3%、せん断力因子は9.66×10-5MPaであった。結果を表1および図1に示す。
<比較例1>
ジャケット付きステンレス製カラム(内径22.9mm)に、実施例1と同様な手順で調整した固定化リパーゼ0.034kg(乾燥質量)を充填し(充填層厚み307mm、空隙率0.561)、ジャケットにて35℃に保温した。カラム上部より菜種油と蒸留水を質量比10:6で混合した液(油水分離時間10分未満)を0.247L/Hrで送液し、加水分解反応を行った。送液時の圧力損失は0.091MPa、出口反応液乳化粒子径(面積基準平均径)は62.1μm、出口液分解率は61.3%、せん断力因子は1.71×10-4MPaであった。結果を表1および図1に示す。
<比較例2>
菜種油と蒸留水を混合した液を0.494L/Hrで送液した以外は比較例1と同様の手順で加水分解反応を行った。送液時の圧力損失は0.100MPa、出口反応液乳化粒子径(面積基準平均径)は62.7μm、出口液分解率は54.2%、せん断因子は1.88×10-4MPaであった。結果を表1および図1に示す。
<比較例3>
ジャケット付きステンレス製カラム(内径22.9mm)に、実施例1と同様な手順で調整した固定化リパーゼ0.165kg(乾燥質量)を充填し(充填層厚み1500mm、空隙率0.563)、ジャケットにて35℃に保温した。カラム上部より菜種油と7%グリセリン水を質量比10:6で混合した液(油水分離時間10分未満)を0.494L/Hrで送液し、加水分解反応を行った。送液時の圧力損失は0.650MPa、出口反応液乳化粒子径(面積基準平均径)は66.0μm、出口液分解率は85.7%、せん断力因子は2.52×10-4MPaであった。結果を表2および図1に示す。
<比較例4>
ジャケット付きステンレス製カラム(内径22.9mm)に、実施例1と同様な手順で調整した固定化リパーゼ0.074kg(乾燥質量)を充填し(充填層厚み665mm、空隙率0.559)、ジャケットにて35℃に保温した。カラム上部より菜種油と蒸留水を質量比10:6で混合した液(油水分離時間10分未満)を0.494L/Hrで送液し、加水分解反応を行った。送液時の圧力損失は0.320MPa、出口反応液乳化粒子径(面積基準平均径)は72.3μm、出口液分解率は58.2%、せん断力因子は2.75×10-4MPaであった。結果を表2および図1に示す。
<比較例5>
DuoliteA−568を粉砕して分級した樹脂を用いて実施例1と同様にして固定化酵素を作製した。固定化酵素の加水分解活性(発現すべき活性)は2643U/gであり、質量基準平均粒子径は311μmであった。
ジャケット付きステンレス製カラム(内径600mm)に、前記固定化リパーゼ91.6kg(乾燥質量)を充填し(充填層厚み1200mm、空隙率0.557)、ジャケットにて35℃に保温した。カラム上部より菜種分解油(酸価165.0)と2.5%グリセリン水を質量比10:6で混合した液(油水分離時間10分未満)を339L/Hrで送液し、加水分解反応を行った。送液時の圧力損失は0.600MPa、出口反応液乳化粒子径(面積基準平均径)は134.9μm、出口液分解率は92.5%、せん断力因子は1.96×10-4MPaであった。結果を表2および図1に示す。
Figure 0005242236
Figure 0005242236
図1は、せん断力因子と油水分離時間との関係を示したものである。

Claims (3)

  1. 固定化酵素を充填した充填層に油相基質と水相基質を供給して反応させる脂肪酸類の製造方法であって、固定化酵素の表面における次式(1)
    (数式) τw=ε/(1-ε) ×dp× (ΔP/L) (1)
    (式中右辺、ΔPは充填層の圧力損失[MPa]、Lは充填層厚み[m]、dpは充填した固定化酵素粒子の質量基準平均粒子径[m]、εは充填層の空隙率[-]を示す。)
    で表わされるせん断力因子(τw)が1×10-6MPa以上〜1×10-4MPa未満となるような送液条件下で反応させる脂肪酸類の製造方法。
  2. 前記油相基質が植物油、動物油又はこれらを組み合わせた油脂類であり、前記固定化酵素が固定化リパーゼである請求項1記載の脂肪酸類の製造方法。
  3. 固定化酵素を充填した充填層を通過した反応液を、油相と水相に分離する操作を行う請求項1又は2記載の脂肪酸類の製造方法。
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