JP5240993B2 - 剥離装置 - Google Patents

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Description

本発明は、剥離装置に関するものである。
近年、特許文献1に開示されているように、カーボン繊維を螺旋状に巻回したカーボンナノコイルが製造されている。このカーボンナノコイルは、カーボン繊維が導電性を有し且つコイル形状に形成されていることから、高性能な電磁波吸収体材料として、例えば、携帯電話器等への利用が期待されている。また、バネ特性を有しているので、マイクロマシンのスプリングやアクチュエータの材料としても注目を集めている。そこで、カーボンナノコイルを効率良く大量に生産するための技術が求められている。
このカーボンナノコイルは、特許文献1にも記載されているように、触媒微粒子膜を基板表面に生成し、化学気相成長(CVD)法により原料ガスを流通させると、触媒微粒子が触媒核となって原料ガスが分解され、触媒核の付着したカーボンナノコイルが製造される。
そして、基板上に成長させたカーボンナノコイルを基板から切断して回収するためには、例えば、特許文献2に従来例として記載されているような超音波洗浄技術が用いられている。具体的に、洗浄槽の底面裏面に超音波振動子を取り付けておき、洗浄槽内に洗浄液を満たし、超音波振動子を振動させて洗浄槽を介して洗浄液を振動させることで洗浄液中に小さな気泡を発生させ、この気泡が基板に当たって壊れるときの衝撃波で基板上に付着したカーボンナノコイルを引き剥がすようにしている。
特開2004−261630号公報 特開2000−107712号公報
しかしながら、従来の超音波洗浄装置では、大容量の洗浄槽を用いているために大量の洗浄液が必要となり、コスト増大の要因となっていた。また、洗浄液中に小さな気泡を発生させてカーボンナノコイルを引き剥がすため、気泡が基板に当たる際の気泡の付着分布にムラがあり、その結果、基板から回収できるカーボンナノコイルの量が少なく、効率的な回収が難しいという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、カーボンナノコイル等の被処理体を短時間で大量に回収できるようにした剥離装置を提供することにある。
上述した目的を達成するため、本発明は、被処理体を粒子の表面に成長させ、この粒子を超音波振動させることで、被処理体を粒子から剥離して回収するようにした。
具体的に、本発明は、粒子の表面に成長させた被処理体を該粒子から剥離させて回収するための剥離装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
すなわち、請求項1の発明は、振動伝達媒体としての液媒体を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽に液媒体を供給する液供給手段と、
前記貯留槽内の液媒体に対して振動を与える超音波振動子と
前記貯留槽の上流側に配設され、該貯留槽に向かって下方に傾斜した傾斜板と、
前記傾斜板の上面に前記粒子を供給する粒子供給手段とを備え、
前記液供給手段は、前記傾斜板に対して液媒体を供給することで、該傾斜板に堆積した前記粒子を傾斜方向に流動させ、該粒子を液媒体とともに前記貯留槽に供給するように構成され、
記超音波振動子の振動を液媒体を介して該粒子に伝達して該粒子を振動させることで、該粒子から被処理体を剥離させて液媒体と一緒に回収するようにしたことを特徴とするものである
求項の発明は、請求項1において、
前記貯留槽の上方には、前記貯留槽の底板と対向する反射板が配置されていることを特徴とするものである。
請求項の発明は、請求項において、
前記反射板の下面には、凹凸部が形成されていることを特徴とするものである。
請求項の発明は、請求項又はにおいて、
前記反射板は、前記貯留槽に貯留された液媒体の液面に沿って面内方向に移動自在に構成されていることを特徴とするものである。
請求項の発明は、請求項乃至のうち何れか1項において、
前記反射板の上面には、前記超音波振動子が取り付けられていることを特徴とするものである。
請求項の発明は、請求項1乃至のうち何れか1項において、
前記貯留槽を傾斜させて、前記粒子から剥離した被処理体を液媒体と一緒に所定の回収位置に排出して回収する排出手段を備え、
前記排出手段は、所定時間毎に前記貯留槽を前記回収位置に向かって傾斜させるように構成されていることを特徴とするものである。
請求項の発明は、請求項において、
前記排出手段は、前記回収位置とは異なる所定の排出位置に向かって前記貯留槽を傾斜させて、前記粒子を液媒体と一緒に該排出位置に排出して回収するように構成されていることを特徴とするものである。
請求項1に係る発明によれば、超音波振動子で発生させた振動が液媒体を介して粒子に伝達されて粒子が超音波振動するから、粒子の表面全体に成長させた被処理体が粒子の超音波振動に追従できず、被処理体の表層部分が粒子表面から剥離して液媒体中に混在する。
このように、粒子を超音波振動させるだけで粒子の表面全体から均一に被処理体を剥離することができるため、被処理体を効率良く大量に回収することができる。また、貯留槽に貯留する液媒体の量は、粒子を振動させるのに必要最小限な量で済むため、コスト低減に有利となる。
また、粒子の表面全体に被処理体を成長させているから、従来のように、基板の表面に被処理体を成長させた場合に比べて、被処理体を成長させるための表面積を広く確保することができる。その結果、1度に処理できる被処理体の量を増やすことができ、従来に比べてより大量の被処理体を効率良く回収することができる。
さらに、本発明では、被処理体を粒子表面から剥離する剥離能力が非常に高いため、超音波振動子の出力を小さくでき、超音波振動のパワーも少なくて済むことから、短時間で効率良く被処理体の回収作業を行うことができる。
また、粒子供給手段により傾斜板の上面に粒子を供給した後、液供給手段により、傾斜板に対して液媒体を供給して傾斜板に堆積した粒子を傾斜方向に流動させ、粒子を液媒体とともに貯留槽に供給するようにしたから、液媒体中に粒子を均一に撹拌させることができる。
すなわち、粒子供給手段により貯留槽に粒子を直接供給した場合には、貯留槽内の一部領域のみに粒子が堆積してしまうため、超音波振動を粒子全体に十分に伝達することができずに剥離効率が低下するおそれがある。これに対して、本発明では、貯留槽に粒子を供給する際に、液媒体により流動させながら供給するようにしたから、粒子と液媒体とが十分に撹拌された状態で貯留槽に貯留されることとなり、超音波振動を与えた場合に、粒子全体に均一に振動を与えて被処理体を剥離することができる。
また、粒子供給手段や液供給手段を設けたことで、貯留槽内に粒子や液媒体を供給して撹拌させる作業を作業者が行う必要が無く、自動的に行うことができるため作業効率が向上する。
請求項に係る発明によれば、貯留槽の底板と対向する反射板が貯留槽の上方に配置されているから、振動のエネルギーを有効に反射させるようにして効率的に粒子を超音波振動させることができる。すなわち、貯留槽の上方が開放されている場合には、振動のエネルギーが液媒体を通過した後に減衰されやすくなるが、反射板を設けることにより、液媒体を通過した振動のエネルギーが反射板に伝達され、反射板がそのエネルギーによって振動する結果、反射板から反射された超音波振動が再び粒子に伝達される。これにより、振動のエネルギーの減衰を抑えることができ、効率的に粒子を振動させて被処理体を回収することができる。
請求項に係る発明によれば、反射板の下面に凹凸部を設けたから、超音波振動子から液媒体を介して反射板まで伝達された振動が、反射板の下面の凹凸部で乱反射されることとなり、貯留槽の液媒体中に含まれる粒子全体に満遍なく振動を伝達することができるため、効率良く剥離できる。
請求項に係る発明によれば、反射板を液媒体の液面に沿って面内方向に移動自在としたから、貯留槽内の液媒体を撹拌しながら粒子を超音波振動させることができる。そのため、貯留槽の液媒体中に含まれる粒子全体に満遍なく振動を伝達することができ、効率良く剥離できる。
請求項に係る発明によれば、反射板の上面に超音波振動子を取り付けたから、粒子表面から被処理体を剥離する作業をさらに効率良く行うことができる。すなわち、通常は貯留槽の底板裏面に設けられた超音波振動子のみで振動を発生させて被処理体の剥離を行っているが、反射板からも振動を発生させるようにすれば、液媒体内で互いの振動波が重なって強め合うこととなり、粒子表面から被処理体を剥離する上で有利となる。
請求項に係る発明によれば、排出手段により貯留槽を回収位置に向かって傾斜させて、粒子から剥離した被処理体を液媒体とともに回収位置に排出して回収するようにしたから、貯留槽を傾斜させるだけで被処理体を含む液媒体の回収を行うことができる。このような構成とすれば、粒子から剥離した被処理体を回収する作業を作業者が行う必要が無く、被処理体の回収動作を自動的に連続して行うことができて作業効率が向上する。このため、近年、高性能な電磁波吸収体材料として需要が高まっているカーボンナノコイルを大量生産する上で有利となる。
さらに、被処理体を液媒体とともに回収する作業を所定時間毎に行うようにしているから、高品質な被処理体を回収する上で有利となる。すなわち、粒子の表面全体に成長させた被処理体を全て剥離し終わった後で回収しようとすると、既に粒子表面から剥離されて液媒体中に浮遊する被処理体に対しても引き続き超音波振動を与え続けることとなり、被処理体にダメージを与えてしまうおそれがある。
しかしながら、本発明では、所定時間毎に被処理体を液媒体とともに回収するようにしたから、剥離後の被処理体に過度の超音波振動を与えることがないため、製品品質を確保する上で有利となる。
請求項に係る発明によれば、排出手段により、被処理体を含む液媒体の回収位置とは異なる排出位置に粒子を含む液媒体を排出して回収するようにしたから、剥離後の被処理体と粒子とが混在することがなく、被処理体だけを確実に回収することができる。
そして、排出手段により、粒子から剥離した被処理体を回収する作業や、被処理体を剥離した後の粒子を排出する作業を自動的に行うようにしたから、作業者の作業負担を軽減することができるとともに作業効率が向上する。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は本発明の実施形態に係る剥離装置の構成を示す正面図、図2は側面図、図3は平面図である。図1〜図3に示すように、この剥離装置10は、粒子Pの表面に成長させたカーボンナノコイル等の被処理体を粒子Pから剥離して回収するものであり、複数の本体フレーム11を組み合わせて形成した直方体状の本体架台12を備えている。
前記本体架台12は、上下方向に延びる中間フレーム11aによって収容室12aと制御室12bとに区画されている。この収容室12a内には、粒子供給ユニット20、振動ユニット40、液供給ユニット45,46、反射ユニット50、排出ユニット60、及び貯留タンク80が配設されている。
前記本体架台12の制御室12b内には、電源ON/OFFや各種設定を行うための複数のスイッチ等が設けられたコントロールボックス(図示せず)が設けられている。また、本体架台12の下端部の4隅には、本体架台12の高さ調整のための調整ボルト14がそれぞれ取り付けられている。
前記粒子供給ユニット20は、表面に被処理体を成長させた粒子Pを振動ユニット40の貯留槽41内に供給するためのものであり、粒子Pを収容する収容容器21と、供給シリンダ22と、傾斜板30とを備えている。
前記収容容器21は、その内部に粒子Pが収容された中空円筒状の容器であり、その上面には複数の供給孔(図示せず)が形成されている。また、この収容容器21は、装置前後方向に延びる回動軸23を中心に回動自在に支持された保持部材25により保持されている。
具体的に、前記保持部材25には、開閉可能な開閉扉26と、開閉扉26をロックするロック部材27とが取り付けられており、開閉扉26を閉じてロック部材27をロックすることで、収容容器21を内部に保持できるようになっている。また、収容容器21内の粒子Pの量が不足した場合には、開閉扉26を収容容器21を取り出して粒子Pを補充できるようになっている。
前記供給シリンダ22は、シリンダロッドの伸縮により回動軸23を中心に保持部材25を回動させるものである。具体的に、供給シリンダ22のシリンダロッドを伸長させると、シリンダロッドの先端に取り付けられたギア部(図示せず)により、保持部材25が回動軸23を中心に時計回りに回動して、収容容器21上面の供給孔を介して傾斜板30上面に対して粒子Pが供給され、傾斜板30上面に粒子Pが堆積される。
一方、前記供給シリンダ22のシリンダロッドを縮退させると、保持部材25が回動軸23を中心に反時計周りに回動して元の待機位置に戻される。
前記傾斜板30は、貯留槽41に向かって下方に傾斜するように配設されている。そして、傾斜板30の傾斜方向の上流側で且つ上方位置には、液供給ユニット45が配設されている。
前記液供給ユニット45は、装置前後方向に延びる供給パイプ45aを備え、供給パイプ45aには、軸方向に間隔をあけて複数の噴射孔45bが形成されている。この噴射孔45bは、傾斜板30に向かって液媒体を噴射するように供給パイプ45aの下側に形成されている。
そして、前記液供給ユニット45は、粒子供給ユニット20から粒子Pが供給されて傾斜板30上面に粒子Pが堆積した後で、液媒体を噴射するように構成されている。このような構成とすれば、傾斜板30に堆積した粒子Pを液媒体とともに傾斜方向に流動させ、粒子Pを液媒体とともに貯留槽41に供給して、液媒体中に粒子Pを均一に撹拌させることができる。
すなわち、前記粒子供給ユニット20により貯留槽41に粒子Pを直接供給した場合には、貯留槽41内の一部領域のみに粒子Pが堆積してしまうため、超音波振動を粒子全体に十分に伝達することができずに剥離効率が低下するおそれがある。これに対して、本発明では、貯留槽41に粒子Pを供給する際に、液媒体により流動させながら供給するようにしたから、粒子Pと液媒体とが十分に撹拌された状態で貯留槽41に貯留されることとなり、超音波振動を与えた場合に、粒子P全体に均一に振動を与えて被処理体を剥離することができる。
前記振動ユニット40は、図4にも拡大して示すように、振動伝達媒体としての液媒体を貯留する貯留槽41と、貯留槽41の底板裏面に取り付けられた超音波振動子42とを備えている。
前記貯留槽41は、液供給ユニット45,46から供給される液媒体を貯留するものであり、超音波振動子42で発生させた超音波振動が液媒体を介して貯留槽41内の粒子Pに伝達され、粒子Pが液媒体中で超音波振動されることにより、粒子Pから被処理体が剥離され、剥離された被処理体が液媒体中に混在して回収されるようになっている。なお、本実施形態では、液媒体としてアルコールを用いている。
また、前記貯留槽41の底板における、超音波振動子42の取り付け位置よりも左側及び右側の底板は、それぞれ左側及び右側に向かって上方に傾斜しており、貯留槽41内の粒子Pを後述する排出位置及び回収位置に向かって排出しやすい形状となっている。
前記超音波振動子42は、貯留槽41の底板裏面の前後方向及び左右方向に互いに間隔をあけて計4個配置されている。なお、本実施形態では4個の超音波振動子42を用いた構成について説明しているが、個数は特に限定するものではなく、貯留槽41の大きさ等に応じて適宜設定可能である。このような配置とすることにより、粒子Pに伝達される振動を均一化することができる。すなわち、超音波振動子42を1つだけ配置した場合には、超音波振動子42近傍の振動が最も強く、外周部に向かうに従って振動が弱まる傾向があるが、複数の超音波振動子42を配置するようにすれば、振動の弱まる外周部付近で互いの振動波が折り返してくるために重なって強め合うこととなり好ましい。
なお、前記超音波振動子42は、貯留槽41の底板を厚さ方向に振動させるように動作するものであり、超音波振動子42で発生させた振動が縦方向の振動波となって液媒体を介して粒子Pに向かって伝達され、粒子Pが超音波振動するようになっている。これにより、粒子P表面に成長させた被処理体が粒子Pの超音波振動に追従できず、被処理体の表層部分が粒子Pから剥離される。
このように、粒子Pを超音波振動させるだけで粒子Pの表面全体から均一に被処理体を剥離することができるため、被処理体を効率良く大量に回収することができる。また、貯留槽41に貯留する液媒体の量は、粒子Pを振動させるのに必要最小限な量で済むため、コスト低減に有利となる。
また、粒子Pの表面に被処理体を成長させているから、従来のように、基板の表面に被処理体を成長させた場合に比べて、被処理体を成長させるための表面積を広く確保することができる。その結果、1度に処理できる被処理体の量を増やすことができ、従来に比べてより大量の被処理体を効率良く回収することができる。
前記貯留槽41の右側端部には、フィルタ部48が立設している。このフィルタ部48は、排出ユニット60により貯留槽41を回収位置に向かって時計回りに傾斜させた場合に、被処理体及び液媒体を通過させる一方、粒子Pの通過を妨げるような網目状に形成されている。
また、前記貯留槽41の右側の上方位置には、貯留槽41内に液媒体を供給するための液供給ユニット46が配設されている。この液供給ユニット46は、装置前後方向に延びる供給パイプ46aを備え、供給パイプ46aには、軸方向に間隔をあけて複数の噴射孔46bが形成されている。この噴射孔46bは、フィルタ部48表面に向かって液媒体を噴射するように形成されている。
このような構成とすれば、排出ユニット60により貯留槽41を回収位置に向かって時計回りに傾斜させた場合に、フィルタ部48の表面に付着した粒子Pを液供給ユニット46による液媒体の噴射時にフィルタ部48の表面から洗い流すことができ、粒子Pを液媒体とともに貯留槽41内に貯留することができる。
前記反射ユニット50は、反射板52と、反射板52を上下方向に移動自在とする反射板シリンダ51とを備えている。この反射ユニット50は、振動ユニット40の貯留槽41の上方に、貯留槽41の底板と反射板52とが対向するように配置されている。
そして、反射板シリンダ51のシリンダロッドを伸長させて反射板52を貯留槽41内の液媒体の液面と略同等又は液面よりも下方に位置付けることで、超音波振動子42から液媒体内を通過した振動のエネルギーを反射板52で反射させ、振動のエネルギーの減衰を抑えるようにしている。これにより、効率的に粒子Pを超音波振動させることができる。この反射板52は、例えばステンレスで形成するようにしている。
なお、前記反射板52の下面に凹凸部を設けるようにしてもよい。このような構成とすれば、超音波振動子42から液媒体を介して反射板52まで伝達された振動が、反射板52の下面の凹凸部で乱反射されることとなり、貯留槽41の液媒体中に含まれる粒子P全体に満遍なく振動を伝達することができるため、効率良く剥離できる。
また、反射板52を液媒体の液面に沿って面内方向に移動自在な構成としてもよい。このような構成とすれば、貯留槽41内の液媒体を撹拌しながら粒子Pを超音波振動させることができる。そのため、貯留槽41の液媒体中に含まれる粒子P全体に満遍なく振動を伝達することができ、効率良く剥離できる。
さらに、反射板52の上面に超音波振動子42を取り付けた構成としてもよい。このような構成とすれば、粒子P表面から被処理体を剥離する作業をさらに効率良く行うことができる。すなわち、本実施形態では、貯留槽41の底板裏面に設けられた超音波振動子42のみで振動を発生させて被処理体の剥離を行っているが、反射板52からも振動を発生させるようにすれば、液媒体内で互いの振動波が重なって強め合うこととなり、粒子P表面から被処理体を剥離する上で有利となる。
前記排出ユニット60は、貯留槽41内の被処理体を含む液媒体を所定の回収位置に配設された回収ユニット70側に排出する一方、粒子Pを回収位置とは異なる所定の排出位置に配設された粒子回収タンク74側に排出するためのものである。この排出ユニット60は、貯留槽41の上方位置に配設された第1及び第2の排出シリンダ61,62と、貯留槽41を支持する支持ベルト65とを備えている。ここで、第1の排出シリンダ61は、第2の排出シリンダ62よりも装置右側に配設されている。
具体的に、前記貯留槽41の左右両端部には、装置前後方向に延びる支持軸43がそれぞれ取り付けられている。そして、支持ベルト65の下端部は支持軸43の軸方向両端に回動自在に接続され、支持ベルト65の上端部は本体架台12の上方の本体フレーム11に固定されている。この支持ベルト65は、貯留槽41の装置前後方向及び左右方向をそれぞれ支持するように4本設けられている。
前記支持ベルト65の下端側と上端側との間には、排出ローラ63及びガイドローラ64が配置され、排出ローラ63及びガイドローラ64にそれぞれ支持ベルト65が巻き掛けられている。
前記排出ローラ63は、支持ベルト65に対応して貯留槽41の装置前後方向の両端に間隔をあけて配置され且つ第1及び第2の排出シリンダ61,62のロッド先端部にそれぞれ接続されている。
また、前記ガイドローラ64は、排出ローラ63よりも下方位置で且つ貯留槽41寄りに配置されている。このガイドローラ64も支持ベルト65に対応して装置前後方向の両端に間隔をあけて配置されている。
そして、第1の排出シリンダ61のシリンダロッドを縮退させ且つ第2の排出シリンダ62のシリンダロッドを伸長させた状態では、貯留槽41の左右両端の支持ベルト65におけるガイドローラ64から貯留槽41までの長さが略同等となって、貯留槽41が水平に保持されている。
ここで、前記第2の排出シリンダ62のシリンダロッドを伸長させた状態で第1の排出シリンダ61のシリンダロッドを伸長させると、支持ベルト65が巻き掛けられた排出ローラ63とガイドローラ64との間隔が短くなって支持ベルト65が弛み、貯留槽41の左側端部の支持軸43を支点として貯留槽41が回動して、貯留槽41の右側端部が下方に傾斜する。これにより、貯留槽41内の被処理体が液媒体と一緒に傾斜方向に排出される。このとき、粒子Pはフィルタ部48を通過できずにフィルタ部48表面に付着する。
一方、前記第1の排出シリンダ61のシリンダロッドを縮退させた状態で第2の排出シリンダ62のシリンダロッドを縮退させると、排出ローラ63とガイドローラ64との間隔が短くなって支持ベルト65が弛み、貯留槽41の右側端部の支持軸43を支点として貯留槽41が回動して、貯留槽41の左側端部が下方に傾斜する。これにより、貯留槽41内の粒子Pが液媒体と一緒に傾斜方向に排出される。
前記回収ユニット70は、貯留槽41から排出された粒子Pや被処理体を含む液媒体を回収するためのものであり、回収タンク71と、回収タンク71よりも上方位置で貯留槽41の右側近傍に配置された回収ガイド板72と、回収タンク71よりも上方位置で貯留槽41の左側近傍に配置された排出ガイド板73と、排出ガイド板73の下方に配置され粒子Pを回収する粒子回収タンク74と、液媒体回収ノズル75とを備えている。
前記回収タンク71は、上方が開口した箱状に形成され、その底板の右側端部には排水口が開口しており、回収タンク71内の液媒体が排水口に流れ込むようにその周辺の底板が排水口に向かって傾斜している。
前記回収ガイド板72は、貯留槽41から排出した被処理体を含む液媒体が飛散しないように、且つ回収タンク71の下方への落下を案内するように下方に延びる板材で構成されている。
前記排出ガイド板73は、貯留槽41から排出した粒子Pを含む液媒体が飛散しないように、且つ粒子回収タンク74の下方への落下を案内するように下方に延びる板材で構成されている。
前記粒子回収タンク74は、貯留槽41から排出された粒子Pを回収するものであり、上方が開口した箱状に形成されている。この粒子回収タンク74の底板には、網目状のフィルタが設けられ、粒子回収タンク74内には粒子Pのみが回収され、液媒体はフィルタを介して回収タンク71に流下するようになっている。
前記液媒体回収ノズル75は、回収タンク71の底板に開口した排水口に連通するように底板裏面に取り付けられ、回収タンク71内の液媒体を貯留タンク80側に排水するようになっている。
前記貯留タンク80は、回収タンク71の液媒体回収ノズル75から流れ込んだ被処理体を含む液媒体を貯留するためのものであり、タンク本体81と、タンク本体81を本体架台12に保持する保持台82とを備えている。
前記タンク本体81は、透明な丸底フラスコで構成され、その開口部が液媒体回収ノズル75に向かうように傾斜した状態で保持台82に保持されている。この保持台82には、タンク本体81内に貯留された液媒体の水位を検出する検出センサ83が設けられている。
なお、本実施形態に係る剥離装置10では、回収ユニット70から排水された被処理液を含む液媒体を貯留タンク80に貯留し、作業者がタンク本体81を取り出して次の処理工程を行う処理装置まで搬送するようにしているが、この形態に限定するものではなく、例えば、回収ユニット70から排水された液媒体を、次の処理工程を行う処理装置に対して直接供給するような構成としても構わない。
−被処理体の剥離動作−
次に、粒子Pの表面に成長させた被処理体を剥離装置10で剥離して回収するための動作手順について、図1〜図4を用いて説明する。
図1〜図4に示すように、まず、粒子Pを収容した収容容器21を粒子供給ユニット20の保持部材25にセットする。また、第1の排出シリンダ61のシリンダロッドを縮退させ且つ第2の排出シリンダ62のシリンダロッドを伸長させて、貯留槽41を水平に保持する。
次に、前記粒子供給ユニット20の供給シリンダ22を伸長させて、保持部材25を回動軸23を中心に時計回りに回動させ、傾斜板30上面に粒子Pを供給する。そして、液供給ユニット45から傾斜板30上面に向かって液媒体を供給し、傾斜板30上面に堆積している粒子Pを流動させながら、粒子Pを液媒体とともに貯留槽41に供給する。
そして、前記反射ユニット50の反射板シリンダ51のシリンダロッドを伸長して、反射板52を貯留槽41内の液媒体の液面と略同等又は液面よりも下方に位置付ける。
次に、前記貯留槽41の裏面に取り付けられた超音波振動子42を作動させて貯留槽41の底板を厚さ方向に振動させる。このとき、超音波振動子42で発生させた振動が縦方向の振動波となって液媒体を介して粒子Pに向かって伝達され、粒子Pを超音波振動させる。これにより、粒子Pの表面に成長させたカーボンナノコイル等の被処理体は、粒子Pの超音波振動に追従できず、被処理体の表層部分が粒子Pから剥離されて液媒体中に混在されるようになる。
なお、本実施形態に係る剥離装置10は、超音波振動子42の超音波出力や超音波時間を適宜コントロールする機能を有しており、カーボンナノコイル等の被処理体に対して過度の超音波振動が加わることを抑制して、できる限り全長の長いカーボンナノコイルを回収できるようにしている。
そして、前記超音波振動子42を作動させてから所定時間毎に、排出ユニット60の第1の排出シリンダ61のシリンダロッドを伸長させる。これにより、排出ローラ63及びガイドローラ64に巻き掛けられていた支持ベルト65が弛み、貯留槽41の左側端部の支持軸43を支点として貯留槽41が回動し、貯留槽41の右側端部が下方に傾斜して、貯留槽41内の被処理体を含む液媒体が下流側の回収ユニット70に排出される。このとき、粒子Pはフィルタ部48を通過できずにフィルタ部48表面に付着する。
前記貯留槽41から排出された被処理体を含む液媒体は、回収ユニット70上方の回収ガイド板72に沿って下方に流出し、排水口から液媒体回収ノズル75を流通して貯留タンク80側に排水される。
そして、前記貯留槽41から被処理体を含む液媒体を排出した後は、第1の排出シリンダ61のシリンダロッドを縮退させ、貯留槽41の右側端部を上方に持ち上げる方向に支持ベルト65を引っ張り、貯留槽41を水平に保持する。そして、液供給ユニット46からフィルタ部48表面に向かって液媒体を供給し、フィルタ部48表面に付着した粒子Pを洗い流して、粒子Pを液媒体とともに貯留槽41内に貯留する。そして、被処理体が表面に残留している粒子Pを再び超音波振動させて残りの被処理体を剥離する。このような工程を繰り返すことで、粒子P表面から被処理体を完全に剥離させる。
次に、前記排出ユニット60の第2の排出シリンダ62のシリンダロッドを縮退させる。これにより、排出ローラ63及びガイドローラ64に巻き掛けられていた支持ベルト65が弛み、貯留槽41の右側端部の支持軸43を支点として貯留槽41が回動し、貯留槽41の左側端部が下方に傾斜して、貯留槽41内の粒子Pを含む液媒体が粒子回収タンク74に排出される。
前記貯留槽41から排出された粒子Pを含む液媒体は、粒子回収タンク74上方の排出ガイド板73に沿って下方に流出し、粒子回収タンク74の底板に設けられたフィルタを介して液媒体のみが回収タンク71に流下する。
その後、前記第2の排出シリンダ62のシリンダロッドを伸長させ、貯留槽41の左側端部を上方に持ち上げる方向に支持ベルト65を引っ張り、貯留槽41を水平に保持して、次に粒子P及び液媒体が供給されるまで待機する。
上述した処理を繰り返し行い、前記貯留タンク80のタンク本体81内に被処理体を含む液媒体が所定量以上回収された場合には、作業者がタンク本体81を取り外して次の処理工程の処理装置まで搬送する。
以上のように、本実施形態に係る剥離装置10によれば、超音波振動子42で発生させた振動が液媒体を介して粒子Pに伝達されて粒子Pが超音波振動するから、粒子Pの表面に成長させたカーボンナノコイル等の被処理体が粒子Pの超音波振動に追従できず、被処理体の表層部分が粒子P表面から剥離して液媒体中に混在する。
このように、粒子Pを超音波振動させるだけで粒子Pの表面全体から均一に被処理体を剥離することができるため、被処理体を効率良く大量に回収することができる。また、貯留槽41に貯留する液媒体の量は、粒子Pを振動させるのに必要最小限な量で済むため、コスト低減に有利となる。
また、粒子Pの表面全体に被処理体を成長させているから、従来のように、基板の表面に被処理体を成長させた場合に比べて、被処理体を成長させるための表面積を広く確保することができる。その結果、1度に処理できる被処理体の量を増やすことができ、従来に比べてより大量の被処理体を効率良く回収することができる。
さらに、本発明では、被処理体を粒子P表面から剥離する剥離能力が非常に高いため、超音波振動子の出力を小さくでき、超音波振動のパワーも少なくて済むことから、短時間で効率良く被処理体の回収作業を行うことができる。
なお、本実施形態では、粒子Pの表面に成長させる被処理体としてカーボンナノコイルを一例に説明したが、例えば、カーボンナノチューブ等、その他の様々な材料に対して本発明を適用可能である。
以上説明したように、本発明は、カーボンナノコイル等の被処理体を短時間で大量に回収できるようにした剥離装置を提供することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
本発明の実施形態に係る剥離装置の構成を示す正面図である。 本実施形態に係る剥離装置の構成を示す側面図である。 本実施形態に係る剥離装置の構成を示す平面図である。 振動ユニット周りの装置構成を一部拡大して示す正面図である。
10 剥離装置
20 粒子供給ユニット
30 傾斜板
41 貯留槽
42 超音波振動子
45 液供給ユニット
52 反射板
60 排出ユニット
P 粒子

Claims (7)

  1. 粒子の表面に成長させた被処理体を該粒子から剥離させて回収するための剥離装置であって、
    振動伝達媒体としての液媒体を貯留する貯留槽と、
    前記貯留槽に液媒体を供給する液供給手段と、
    前記貯留槽内の液媒体に対して振動を与える超音波振動子と
    前記貯留槽の上流側に配設され、該貯留槽に向かって下方に傾斜した傾斜板と、
    前記傾斜板の上面に前記粒子を供給する粒子供給手段とを備え、
    前記液供給手段は、前記傾斜板に対して液媒体を供給することで、該傾斜板に堆積した前記粒子を傾斜方向に流動させ、該粒子を液媒体とともに前記貯留槽に供給するように構成され、
    記超音波振動子の振動を液媒体を介して該粒子に伝達して該粒子を振動させることで、該粒子から被処理体を剥離させて液媒体と一緒に回収するようにしたことを特徴とする剥離装置。
  2. 請求項1において、
    前記貯留槽の上方には、前記貯留槽の底板と対向する反射板が配置されていることを特徴とする剥離装置。
  3. 請求項において、
    前記反射板の下面には、凹凸部が形成されていることを特徴とする剥離装置。
  4. 請求項又はにおいて、
    前記反射板は、前記貯留槽に貯留された液媒体の液面に沿って面内方向に移動自在に構成されていることを特徴とする剥離装置。
  5. 請求項乃至のうち何れか1項において、
    前記反射板の上面には、前記超音波振動子が取り付けられていることを特徴とする剥離装置。
  6. 請求項1乃至のうち何れか1項において、
    前記貯留槽を傾斜させて、前記粒子から剥離した被処理体を液媒体と一緒に所定の回収位置に排出して回収する排出手段を備え、
    前記排出手段は、所定時間毎に前記貯留槽を前記回収位置に向かって傾斜させるように構成されていることを特徴とする剥離装置。
  7. 請求項において、
    前記排出手段は、前記回収位置とは異なる所定の排出位置に向かって前記貯留槽を傾斜させて、前記粒子を液媒体と一緒に該排出位置に排出して回収するように構成されていることを特徴とする剥離装置。
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