従来から、電気かみそりや電動歯ブラシのような機械装置の駆動部に用いるために可動体を往復直進移動させるアクチュエータ(リニアオシレータ)が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたリニアオシレータは、磁性体からなりケースに対して往復直進移動が可能となるように支承されたプランジャ(可動体)と、プランジャに磁力を作用させて往復直進移動させる電磁駆動部とを備えている。また、ケースにはプランジャに対して往復直進移動の方向においてばね力が作用するように複数個のばねが配置されている。
電磁駆動部は、プランジャの移動方向に着磁された一対の永久磁石と、両永久磁石の間に配置されたコイル(コイル部)と、各永久磁石の各磁極にそれぞれ磁気結合された2対のヨーク(固定磁極)とを備える構成であり、プランジャを囲む円筒状に形成されている。プランジャが往復直進移動を行う方向において各永久磁石は互いに逆向きに着磁されている。また、プランジャが往復直進移動を行う方向におけるプランジャの両端間の長さ寸法は、電磁駆動部の長さ寸法よりも小さく設定されている。
コイルに電流が流れていない状態では、各永久磁石で発生する磁束は、それぞれプランジャ内を通る独立した磁路を形成する。また、プランジャは、ばねから作用するばね力が釣り合う位置で静止する。この位置は、たとえば、プランジャの往復直進移動の方向におけるプランジャの中心位置と電磁駆動部の中心位置とが一致する位置としてある。
一方、コイルに通電するとコイルにより発生する磁束は、一方の永久磁石により発生している磁束と同じ向きになり、他方の永久磁石により発生している磁束とは逆向きになるから、コイルにより発生する磁束と同じ向きの磁束を発生させている永久磁石を配置している側にプランジャが変位する。したがって、コイルに交番電流を通電することによって、プランジャを往復直進移動させることができる。
ところで、この種のアクチュエータを電動歯ブラシなどに用いる場合には、往復直進移動だけではなく回転移動(ローリング動作)を付加することが要求されることがある。往復直進移動と回転移動とを組み合わせた運動をトルネード運動と呼ぶことがある。
トルネード運動を可能にするアクチュエータとしては、図5に示す構成が提案されている(非特許文献1参照)。
このアクチュエータは、円筒状のケース40を備え、ケース40には、ケース40の口軸方向の直線上で往復直進移動が可能であるとともにケース40の周方向に回転移動が可能となるように可動体10が支承され、さらに、ケース40内には可動体10を駆動するための固定子20が収納される。ケース40の外に磁束が漏れるのを防止する防磁効果を持たせるとともに磁気効率を高めるために、ケース40は鉄材などの磁性体により形成する。
可動体10は、ケース40の両端部に支承される出力軸11と、鉄材のような磁性体により形成され出力軸11に固定されたプランジャ12とを有する。出力軸11はケース40の口軸方向に沿ったケース40の中心線上に配置される。また、プランジャ12は、出力軸11の軸方向に直交する断面において外周面が略円形であり、プランジャ12の軸方向における一端部には中間部よりも大径となった可動磁極13,14が永久磁石15を挟持して形成され、プランジャ12の軸方向における他端部には中間部よりも大径となった可動磁極16,17が永久磁石18を挟持して形成される。
永久磁石15,18は出力軸11の軸方向に着磁され、かつ各永久磁石15,18は互いに逆向きに着磁されている。また、各永久磁石15,18の各磁極には、それぞれ可動磁極13,14、16,17が磁気結合される。永久磁石15,18と可動磁極13,14、16,17とは隙間なく密着して配置され一体化されている。
ケース40の内部においてプランジャ12を囲む部位には、円筒状に形成された固定子20が配置される。固定子20は、円環状のコイル部21と、出力軸11の軸方向においてコイル部21の両側に各々配置された固定磁極22,23を備える。固定磁極22,23は、それぞれ板状かつ円環上に形成されている。
ここに、プランジャ12に設けた1枚の可動磁極13,16と1枚の永久磁石15,18との厚み寸法の合計は、各固定磁極22,23の出力軸11の軸方向における寸法に略一致する。また、出力軸11の軸方向における固定子20の長さ寸法は、プランジャ12の長さ寸法に略一致する。さらに、出力軸11の軸方向における可動磁極14,17の厚み寸法は、固定子20に設けた各固定磁極22,23の出力軸11の軸方向における寸法より大きくするのが望ましい。つまり、出力軸11の軸方向において、可動磁極14,17の厚み寸法は固定磁極22,23の厚み寸法よりも大きくしてある。
なお、ケース40内には、振幅制御錘や、プランジャ12を初期位置に復帰させる機能を有する復帰ばねや、共振ばねを構成するコイルばねが収納されるが、説明は省略する。
コイル部21に通電していない状態では、図5,図6(a)に示すように、固定磁極22が可動磁極13および永久磁石15に対向し、固定磁極23が可動磁極16および永久磁石18に対向する位置に位置する。コイル部21に通電すると、コイル部21は固定磁極22,23を励磁する磁束を発生し、固定磁極22,23とプランジャ12に設けた可動磁極13,14,16,17との間に、出力軸11の軸方向に沿った磁力が作用する。
たとえば、図5に示す例では、図の上部の永久磁石15は上向きに着磁され、図の下部の永久磁石18は下向きに着磁されている。ここで、コイル部21への通電により固定磁極22をS極に励磁し、固定磁極23をN極に励磁すると、コイル部21により生じた磁束の向きが、永久磁石15の磁束の向きとは同じになり、永久磁石18の磁束の向きとは逆向きになるから、可動磁極13,14は、固定磁極22に対向する方向に移動し、可動磁極16,17は、固定磁極23から離れる方向に移動する。つまり、各部に働く推力のバランスが崩れて、可動磁極13,14,16,17と固定磁極22,23の間に、プランジャ12を上向きに移動させる磁力が作用することになる。
コイル部21への通電の向きを逆向きにすれば、上述した状態とは逆に、プランジャ12を下向きに移動させる磁力が作用する。つまり、図5、図6(a)に示す位置を往復直進移動の基準位置とすると、コイル部21への通電の向きに応じて、プランジャ12(つまりは、可動体10)を上下に移動させることができる。すなわち、コイル部21に交番電流を通電すると、可動体10が往復直進移動する。
ところで、図7(a)(b)、図8(a)(b)に示すように、可動磁極13,14,16,17および固定磁極22,23には、出力軸11の軸方向に直交する面内において、磁極面(可動磁極13,14,16,17の外周面と固定磁極22,23の内周面)での磁束分布を不均一にすることで可動体10に回転方向の磁力を作用させる回転付与部が形成されている。図示例において、回転付与部は出力軸11の軸方向の一直線上で各々延長された溝部13b,14b,16b,17b,22a,23aとして形成してある。溝部13b,14b,16b,17b,22a,23aは、出力軸11の周方向において、等角度間隔で多数個形成しており、固定磁極22近傍、固定磁極23近傍において、出力軸11の軸方向に直交する断面を図8(a)(b)に示す。
そして、図6(a)(b)は、図8(a)のB−B’線で切り取った部分の平面図であり、図6(a)に示すように、固定磁極22,23に設けた溝部22a,23a、可動磁極13,14に設けた溝部13b,14b、可動磁極16,17に設けた溝部16b,17bは、出力軸11の軸方向の同一直線上に各々配列される。一方、溝部13b,14bと溝部16b,17bとは、出力軸11の軸方向の互いに異なる直線上に各々配列されており、溝部13b,14bと溝部16b,17bとは、出力軸11の周方向における互いに異なる位置に配置されている。すなわち、プランジャ12の軸方向における一端部に設けた溝部13b,14bと、プランジャ12の軸方向における他端部に設けた溝部16b,17bとは、プランジャ12の軸方向の中心(磁気回路の軸方向の中心)を境にして角度θずらしている。
さらに、図6(a)、図8(a)(b)では、可動磁極13,14に設けた溝部13b,14bが固定磁極22の溝部22aに対して、図中の上方から見て右回り方向にずれており、この状態において可動磁極16,17に設けた溝部16b,17bが固定磁極23の溝部23aに対して、図中の上方から見て左回り方向にずれている。言い換えると、図6(a)の状態において、可動磁極13,14に設けた溝部13b,14bと可動磁極16,17に設けた溝部16b,17bとは、固定磁極22,23の溝部22a,23aに対して対称に位置している。この位置を出力軸11の回転移動の基準位置とする。
いま、プランジャ12が往復直進移動の基準位置に位置するとすれば、永久磁石15,18の磁力により、可動磁極13,14にはたとえば左回りの回転トルクが作用し、可動磁極16,17にはたとえば右回りの回転トルクが作用する。このような回転トルクは、可動磁極13,14の溝部13b,14bを固定磁極22の溝部22aに一致させようとする向き、および可動磁極16,17の溝部16b,17bを固定磁極23の溝部23aに一致させようとする向きに作用する。ただし、回転移動の基準位置では、右回りの回転トルクと左回りの回転トルクとが相殺されている。
一方、上述のようにコイル部21に通電することにより、プランジャ12を出力軸11の軸方向において往復直進移動の基準位置から移動させると、可動磁極13,14,16,17と固定磁極22,23との対向面積が変化するから、右回りの回転トルクと左回りの回転トルクとの釣り合いが崩れ、プランジャ12を回転移動の基準位置から回転させるように回転トルクが作用する。
たとえば、図6(a)の位置からプランジャ12が上向きに移動すると、図6(b)に示すように可動磁極16と固定磁極23との対向面積は、可動磁極14と固定磁極22との対向面積よりも小さくなるから、たとえば左回りの回転トルクが右回りの回転トルクよりも大きくなり、結果的にプランジャ12は左回りに回転移動する。プランジャ12が下向きに移動した場合には、上述の場合とは逆に、プランジャ12は右回りに回転移動する。
したがって、プランジャ12を往復直進移動させるためにコイル部21に交番電流を通電すると、プランジャ12は回転往復移動を行う。
特許第3475949号公報
鈴木智士、外5名、「電磁共振型トルネードアクチュエータの動作特性解析」、電気学会主催のリニアドライブ研究会における資料、LD08−09、2007
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態)
以下に説明する実施形態では、ケース内に動吸振器と称する機構を備えたアクチュエータを例示するが、動吸振器を設けない構成であっても本発明の技術思想は適用することができる。
まず、本発明の基本構成を図2に従って説明する。本実施形態において説明するアクチュエータは、円筒状のケース40を備え、ケース40には、ケース40の口軸方向の直線上で往復直進移動が可能であるとともにケース40の周方向に回転移動が可能となるように可動体10が支承され、さらに、ケース40内には可動体10を駆動するための固定子20が収納される。ケース40内には、可動体10と同様に、ケース40の口軸方向の直線上で往復直進移動が可能であるとともにケース40の周方向に回転移動が可能である振幅制御錘30が収納される。ケース40の外に磁束が漏れるのを防止する防磁効果を持たせるとともに磁気効率を高めるために、ケース40は鉄材などの磁性体により形成する。
可動体10は、ケース40の両端部に設けた軸受台41、42に支承される出力軸11と、鉄材のような磁性体により形成され出力軸11に固定されたプランジャ12とを有する。出力軸11はケース40の口軸方向に沿ったケース40の中心線上に配置され、出力軸11の両端部はケース40から突出する。また、プランジャ12は、出力軸11の軸方向に直交する断面において外周面が略円形であり、プランジャ12の軸方向における一端部には中間部よりも大径となった可動磁極13,14が永久磁石15を挟持して形成され、プランジャ12の軸方向における他端部には中間部よりも大径となった可動磁極16,17が永久磁石18を挟持して形成される。
永久磁石15,18は出力軸11の軸方向に着磁され、かつ各永久磁石15,18は互いに逆向きに着磁されている。また、各永久磁石15,18の各磁極には、それぞれ可動磁極13,14、16,17が磁気結合される。永久磁石15,18と可動磁極13,14、16,17とは隙間なく密着して配置され一体化されている。すなわち、可動磁極13,14からなる1つの可動磁極が永久磁石15を備え、可動磁極16,17からなる1つの可動磁極が永久磁石18を備えるものとみなすことができる。
プランジャ12は振幅制御錘30とともにケース40に収納され、プランジャ12と振幅制御錘30とは出力軸11の軸方向に離間して配置される。ここに、振幅制御錘30は出力軸11に固定されず、出力軸11と振幅制御錘30とは独立して移動する。
ケース40には3個のコイルばね51,52,53も収納される。コイルばね51は、ケース40の口軸方向における一端側の軸受台41とプランジャ12との間に配置され、プランジャ12を初期位置に復帰させる機能を有する。コイルばね52がプランジャ12と振幅制御錘30との間に配置されるとともに、コイルばね53がケース40の他端側の軸受台42と振幅制御錘30との間に配置されることにより、両コイルばね52,53は後述する共振ばねとして機能する。各コイルばね51,52,53の各端部はそれぞれケース40とプランジャ12と振幅制御錘30とに固定されており、各コイルばね51,52,53は、出力軸11の軸方向に伸縮する機能だけではなく、ねじりばねとしての機能も備える。なお、図に示すコイルばね51,52,53に代えて、板ばねのような他のばねを用いることも可能である。
ケース40の内部においてプランジャ12を囲む部位には、円筒状に形成された固定子20が配置される。固定子20は、円環状のコイル部21と、出力軸11の軸方向においてコイル部21の両側に各々配置された固定磁極22,23を備える。固定磁極22,23は、それぞれ板状かつ円環上に形成されている。
ここに、プランジャ12に設けた1枚の可動磁極13,16と1枚の永久磁石15,18との厚み寸法の合計は、各固定磁極22,23の出力軸11の軸方向における寸法に略一致する。また、出力軸11の軸方向における固定子20の長さ寸法は、プランジャ12の長さ寸法に略一致する。さらに、出力軸11の軸方向における可動磁極14,17の厚み寸法は、固定子20に設けた各固定磁極22,23の出力軸11の軸方向における寸法より大きくするのが望ましい。つまり、出力軸11の軸方向において、可動磁極14,17の厚み寸法は固定磁極22,23の厚み寸法よりも大きくしてある。
コイル部21に通電していない状態では、図1に示すように、固定磁極22が可動磁極13および永久磁石15に対向し、固定磁極23が可動磁極16および永久磁石18に対向する位置に位置する。このとき、出力軸11の軸方向において固定磁極22,23間の中心位置と永久磁石15,18間の中心位置とが一致しており、この位置を往復直進移動の基準位置とする。そしてコイル部21に通電すると、コイル部21は固定磁極22,23を励磁する磁束を発生し、固定磁極22,23とプランジャ12に設けた可動磁極13,14,16,17との間に、出力軸11の軸方向に沿った磁力が作用する。
たとえば、図2に示す例では、図の上部の永久磁石15は上向きに着磁され、図の下部の永久磁石18は下向きに着磁されている。ここで、コイル部21への通電により固定磁極22をS極に励磁し、固定磁極23をN極に励磁すると、コイル部21により生じた磁束の向きが、永久磁石15の磁束の向きとは同じになり、永久磁石18の磁束の向きとは逆向きになるから、可動磁極13,14は、固定磁極22に対向する方向に移動し、可動磁極16,17は、固定磁極23から離れる方向に移動する。つまり、各部に働く推力のバランスが崩れて、可動磁極13,14,16,17と固定磁極22,23の間に、プランジャ12を上向きに移動させる磁力が作用することになる。
コイル部21への通電の向きを逆向きにすれば、上述した状態とは逆に、プランジャ12を下向きに移動させる磁力が作用する。つまり、図1に示す位置を往復直進移動の基準位置とすると、コイル部21への通電の向きに応じて、プランジャ12(つまりは、可動体10)を上下に移動させることができる。すなわち、コイル部21に交番電流を通電すると、可動体10が往復直進移動する。また、コイル部21への通電を停止すれば、コイルばね51,52,53によりプランジャ12は往復直進移動の基準位置に復帰する。
このように、コイルばね51,52,53によってプランジャ12を往復直進移動の基準位置に復帰させるから、コイル部21を直流パルスで駆動することが可能となる。また、コイル部21の非励磁時には永久磁石15,18の磁力によっても基準位置に復帰させることができる。さらに、永久磁石15,18とコイル部21との磁力の相互作用によって駆動力を高めることができる。
ところで、図1(a)(b)に示すように、可動磁極13,14,16,17および固定磁極22,23には、出力軸11の軸方向に直交する面内において、磁極面(可動磁極13,14,16,17の外周面と固定磁極22,23の内周面)での磁束分布を不均一にすることで可動体10に回転方向の磁力を作用させる回転付与部が形成されている。図示例において、回転付与部は出力軸11の軸方向の一直線上で延長された溝部13a,14a,16a,17a,22a,23aとして形成してある。溝部13a,14a,16a,17a,22a,23aは、出力軸11の周方向において、等角度間隔で多数個形成しており、固定磁極22近傍および固定磁極23近傍において出力軸11の軸方向に直交する各断面を図3(a)(b)に示す。
図1(a)(b)は、図3(a)のA−A’線で切り取った部分の平面図であり、固定磁極22,23に設けた溝部22a,23aを、切り取った角度範囲の中心位置に配置している。
そして、図1(a)に示すように、固定磁極22,23に設けた溝部22a,23a、可動磁極13,17に設けた溝部13a,17a、可動磁極14,16に設けた溝部14a,16aは、出力軸11の軸方向の同一直線上に各々配列される。一方、溝部13a,17aと溝部14a,16aとは、出力軸11の軸方向の互いに異なる直線上に各々配列されており、溝部13a,17aと溝部14a,16aとは、出力軸11の周方向における互いに異なる位置に配置されている。すなわち、プランジャ12の軸方向における一端部に設けた溝部13a,14aは、可動磁極13,14間に配置された永久磁石15の中心付近を境にして角度θずらし、プランジャ12の軸方向における他端部に設けた溝部16a,17aは、可動磁極16,17間に配置された永久磁石18の中心付近を境にして角度θずらしている。
したがって、溝部13a,14aと溝部22aとの出力軸11の回転方向における相対的な位置関係、溝部17a,16aと溝部23aとの出力軸11の回転方向における相対的な位置関係は、一方の軸方向(例えば上方から下方に向かって)から見て同じ位置関係になっている。言い換えれば、可動磁極(13,14)(17,16)の溝部(13a,14a)(17a,16a)と固定磁極(22)(23)の溝部(22a)(23a)の軸周りの回転方向における相対的な位置関係は、一つの軸方向から見た場合に、固定磁極(22)と可動磁極(13,14)の対向面、および固定磁極(23)と可動磁極(17,16)の対向面において同じである。
さらに、図1(a)、図3(a)(b)では、可動磁極14,16に設けた溝部14a,16aが固定磁極22,23の溝部22a,23aに対して、図中の上方から見て右回り方向にずれており、この状態において可動磁極13,17に設けた溝部13a,17aが固定磁極22,23の溝部22a,23aに対して、図中の上方から見て左回り方向にずれている。言い換えると、図1(a)の状態において、可動磁極14,16に設けた溝部14a,16aと可動磁極13,17に設けた溝部13a,17aとは、固定磁極22,23の溝部22a,23aに対して対称に位置している。この位置を出力軸11の回転移動の基準位置とする。
いま、プランジャ12が往復直進移動の基準位置に位置するとすれば、永久磁石15,18の磁力により、可動磁極14,16にはたとえば左回りの回転トルクが作用し、可動磁極13,17にはたとえば右回りの回転トルクが作用する。このような回転トルクは、可動磁極14,16の溝部14a,16aを固定磁極22,23の溝部22a,23aに一致させようとする向き、および可動磁極13,17の溝部13a,17aを固定磁極22,23の溝部22a,23aに一致させようとする向きに作用する。ただし、回転移動の基準位置では、可動磁極14,16が固定磁極22,23に対向する面積と、可動磁極13,17が固定磁極22,23に対向する面積とが等しく、右回りの回転トルクと左回りの回転トルクとが相殺されている。
一方、上述のようにコイル部21に通電することにより、プランジャ12を出力軸11の軸方向において往復直進移動の基準位置から移動させると、可動磁極14,16が固定磁極22,23に対向する面積と、可動磁極13,17が固定磁極22,23に対向する面積とが変化するから、右回りの回転トルクと左回りの回転トルクとの釣り合いが崩れ、プランジャ12を回転移動の基準位置から回転させるように回転トルクが作用する。
たとえば、図1(a)の位置からプランジャ12が上向きに移動すると、図1(b)に示すように、可動磁極14,16が固定磁極22,23に対向する面積が増加し、可動磁極13,17が固定磁極22,23に対向する面積が減少するので、たとえば左回りの回転トルクが右回りの回転トルクよりも大きくなり、結果的にプランジャ12は左回りに回転移動する。プランジャ12が下向きに移動した場合には、上述の場合とは逆に、プランジャ12は右回りに回転移動する。
したがって、プランジャ12を往復直進移動させるためにコイル部21に交番電流を通電すると、プランジャ12は回転往復移動を行う。また、往復直進移動の場合と同様に、コイル部21への通電を停止すれば、コイルばね51,52,53により回転移動の基準位置に復帰する。而して、プランジャ12の往復直進移動および回転移動が可能になるから、往復直進移動と回転移動(ローリング)とを組み合わせたトルネード運動が可能になる。
そして、本実施形態では、図1(b)に示すようにプランジャ12が上方向に移動した場合、固定磁極22,23に対向する可動磁極14,16の両方が、プランジャ12に対して左回りの回転トルクを付与するため、プランジャ12を回転移動させるための十分なトルクを得ることができる。
プランジャ12が下方向に移動した場合には、上述の場合とは逆に、固定磁極22,23に対向する可動磁極13,17の両方が、プランジャ12に対して右回りの回転トルクを付与するため、プランジャ12を回転移動させるための十分なトルクを得ることができる。
したがって、プランジャ12が直進移動したときに、可動体10の上方に設けた可動磁極13,14と固定磁極22との間に働く回転トルクの方向と、可動体10の下方に設けた可動磁極16,17と固定磁極23との間に働く回転トルクの方向とが一致し、プランジャ12の回転トルクを大きくすることができる。
図4は、プランジャ12の軸方向(図2中のz方向)への変位距離に対する回転トルクであり、本実施形態のアクチュエータ(図1参照)の回転トルク特性101と、従来のアクチュエータ(図6参照)の回転トルク特性102とを示し、本実施形態のアクチュエータは、従来のアクチュエータに比べて約2倍の回転トルクを得られることがわかる。
なお、固定磁極22,23に設けた溝部22a,23a、可動磁極13,17に設けた溝部13a,17a、可動磁極14,16に設けた溝部14a,16aは、出力軸11の軸方向の同一直線上に各々配列する必要はない。溝部22a,23aが、出力軸11の軸方向の互いに異なる直線上に各々配列されたとしても、溝部13a,14aが、溝部22aに対してθ/2づつ互いに逆方向にずれ、溝部16a,17aが、溝部23aに対してθ/2づつ互いに逆方向にずれておればよい。すなわち、溝部13a,14aと溝部22aとの出力軸11の回転方向における相対的な位置関係、溝部17a,16aと溝部23aとの出力軸11の回転方向における相対的な位置関係が、一方の軸方向(例えば上方から下方に向かって)から見て同じ位置関係になっておればよい。
ところで、本実施形態では、上述したようにケース40内に振幅制御錘30を備え、振幅制御錘30はプランジャ12とケース40(軸受台42)との間でコイルばね52,53により支持されている。したがって、振幅制御錘30は、ケース40に対して出力軸11の軸方向および出力軸11の周方向に移動可能となるように支持されている。コイルばね52,53は共振ばねとして機能し、振幅制御錘30とコイルばね52,53とを含む機械振動系と電気回路系とを含む運動全体の共振周波数(最大振幅となる周波数)は、可動体10の往復直進移動および回転移動の周波数に合わせて設定されている。つまり、上記共振周波数は、可動体10のトルネード運動の周波数に一致するかまたは実質的に共振とみなせる周波数に設定される。
この種の構造は動吸振器と呼ばれている。本実施形態では、可動体10のトルネード運動における周波数に対して動吸振器は2個の共振周波数を持ち、高周波側の共振周波数においては、可動体10の移動とは逆相で移動することによって、可動体10からケース40に伝達される振動を制動する。つまり、ケースの振動を軽減することができる。言い換えると、ケース40の振動が制動されることによって可動体10の直進往復移動の振幅は相対的に増大し、また回転移動の角度も相対的に増大する。
回転付与部は、上述した構成のように、可動磁極13,14,16,17に形成する溝部13a,14a,16a,17aの位置を出力軸11の周方向の異なる位置に設ける構成のほか、固定磁極22,23に設ける溝部22a,23aの位置を出力軸11の周方向の異なる位置に設ける構成としてもよい。また、上述の例では永久磁石15,18に溝部を形成していないが永久磁石15,18に溝部を形成してもよい。永久磁石15,18にも溝部を形成すれば、プランジャ12が直進往復移動する際に、永久磁石15,18の位置で磁束分布が大きく変化することがなく、可動磁極13,14,16,17が永久磁石15,18に対向する領域でも回転方向の分力を途切れさせずに作用させることができ、可動体10の動作が滑らかになる。
さらに、回転付与部として、出力軸11の軸方向に沿う一直線上で延長された溝部のほか、回転移動の与え方によって、ジグザク状ないし蛇行状の溝部や出力軸11に対して斜めに交差する方向に延長された溝部を用いることも可能である。あるいはまた、溝部に代えて突部(突条)として回転付与部を形成することも可能である。
また、プランジャ12を電磁駆動するための構成として、上述した固定子20および可動体20の構成のほか、永久磁石26、27を用いずにコイル部21に通電したときに生じる吸引力でプランジャ12を移動させ、ばね力などの復帰力によりプランジャ12を復帰させる構成を採用することも可能である。
また、永久磁石26、27は、上述のように可動体10の可動磁極13,14間,可動磁極16,17間に設ける構成のほか、固定子20の固定磁極22内,固定磁極23内に設けることも可能である。