JP5234694B2 - Iii族窒化物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、低温、低圧下において、III族窒化物である窒化ガリウムを製造する方法に関する。
III族窒化物とは、元素周期律表におけるIIIb族元素であるホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムの窒化物をいい、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化タリウム(TlN)などがあげられる。これら窒化物は天然に存在することは少なく、ほとんどが人工的に作られる物質である。
窒化ホウ素は金属窒化物ではなく、窒化タリウムは有毒なタリウムの窒化物であるために取り扱いが危険であるので以下の説明から除外する。
窒化アルミニウムは、優れた熱伝導性、高い電気絶縁性を有することから半導体用素子基板に使用されている。工業的には、酸化アルミニウムと炭素の混合物を窒素雰囲気下の電解炉中で熱して製造される。
しかし、純度が必要とされる半導体用窒化アルミニウムの作製は、トリメチルアルミニウムとアンモニアを原料とし有機金属気相成長(MOVPE)法によりサファイア等の基板上に成長させる方法が主流である。
基板を使用しないバルク窒化アルミニウムの作製方法としては、溶融アルミニウムと窒素を反応させる昇華法があげられるが、該昇華法においては、1000℃以上の高温が必要であるという問題がある。
窒化ガリウムは、その発光特性から発光ダイオード、レーザーダイオード用に実用化されており、最も研究が進んでいる窒化物である。通常、窒化ガリウムの作製は、トリメチルガリウム、アンモニアを原料として有機金属気相成長(MOVPE)法によりサファイア基板上に成長させるヘテロエピタキシャル成長が主流である。
しかし、最近格子不整合の問題から基板を使用しないバルク窒化ガリウムの作製法が注目されている。具体的には、ガリウムと窒素を1500℃以上の高温、1万気圧以上の高圧で反応させる高温高圧法、ナトリウムやカリウムをフラックスとして使用するフラックス法が提案されている(特許文献1参照)。
ところが、いずれの方法も窒素源として窒素を用いるため、窒素の分解、励起にはプラズマを使用する等特別な工夫が必要であるという問題がある。
窒化インジウムは、III族窒化物半導体のなかで最も禁制帯幅が狭く、有効質量が一番小さく、電子の移動度やドリフト飽和速度が大きい。そのため、窒化インジウムは長波長側の発光、受光デバイス、超高周波、超高速電子デバイス材料として期待されてきた。
しかし、インジウムと窒素に解離する温度が極めて低く、成長温度での窒素分子の平衡蒸気圧が高いため結晶成長が難しいという問題点があった。このためトリメチルインジウム、アンモニアを原料として有機金属気相成長(MOVPE)法により作製する場合、窒化ガリウムの成長温度である1050℃より低い450℃で成長させなければならない。低温ではアンモニアの分解が極めて遅いため、窒素をプラズマ等で励起する方法が提案されている。
また、バルク窒化インジウムについては報告例がほとんどないのが現状である。
また、酸化ガリウムと窒化リチウムとを非酸素雰囲気中において反応させることにより窒化ガリウムを得る方法が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、この方法の場合には、固体の酸化ガリウムと固体の窒化リチウムとを反応させることとなり、得られる窒化ガリウムの結晶成長が起こり難いという問題がある。
これに対して、液体である金属ガリウムと窒化リチウムとを反応させることにより、窒化ガリウムの結晶成長を期待することが考えられる。ところが、金属ガリウムと窒化リチウムから窒化ガリウムを得る反応におけるギブス反応生成自由エネルギーは、室温において51.1kJ/molと大きく、ガリウムと窒化リチウムとを直接反応させることは困難である。
また、窒化リチウムは不安定な物質であるために、取扱いが困難であるという問題もある。
また、遷移金属窒化物とは、IIIa、IVa、Va、VIa、VIIa、VIIIa、Ib、IIb族に属する遷移金属の窒化物をいう。これらの窒化物は天然に存在することは少なく、殆どが人工的に作られる物質である。
IV族遷移金属(Ti、Zr、Hf)とV族遷移金属(V、Nb、Ta)の窒化物は、一般に耐薬品性、耐摩耗性が良好であることから、例えば、切削工具の表面処理に使用されている。特に、ZrN、TiNは、金属溶融用のるつぼ、NbNは超伝導性コーティング、TiNはマイクロエレクトロニクス分野において拡散バリヤーとして、また、TaNは、薄膜抵抗体、高温圧力センサー、銅の酸化を抑えるパシベーション膜、耐磨耗性ハードコーティングとして、夫々利用されている。
しかしながら、これらの遷移金属窒化物の製造についても、従来の方法では、高温、高圧が必要であるという問題がある。
特開2002−201100号公報 特開2005−154193号公報
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、窒化ガリウムを、低温、低圧において得ることができる製造方法を提供しようとするものである。
第1の参考発明は、III族金属とリチウムアミドとを、非酸素雰囲気中において反応させることによりIII族窒化物を得ることを特徴とするIII族窒化物の製造方法にある。
次に、第1の参考発明の作用効果につき説明する。
III族金属酸化物に含まれるIII族金属と窒素(N)とから、III族窒化物を得ることができる。しかし、窒素源として窒素(N2)を用いる場合、N2を分解する必要があるため、低温、低圧下においてこれを実現することは困難である。
一方、低温、低圧下において、III族金属酸化物とアルカリ金属の窒化物とを反応させることによっても、理論上はIII族窒化物を生成することができる。しかし、例えば酸素濃度20vol%という酸素雰囲気下において上記反応を行うと、例えばLiGaO2、LiO2などの他の物質が多く生成されてしまい、III族窒化物を充分に生成することが困難となる。
そこで、上記反応を非酸素雰囲気下において行うことによって、LiGaO2などの他の物質の生成を抑制することが考えられる。
しかしながら、低温、低圧下における、III族金属酸化物とアルカリ金属の窒化物との反応は、固体同士の固相反応であるため、得られるIII族窒化物の結晶成長が期待できない。
そこで、第1の参考発明においては、III族金属とリチウムアミド(LiNH2)とを、非酸素雰囲気中において反応させることによりIII族窒化物を得る。即ち、例えば750℃、0.1MPaという低温、低圧下においても液体の状態となりうるIII族金属を用いることにより、得られるIII族窒化物の結晶成長を促進することができる。また、窒素源としてリチウムアミドを用いることにより、III族金属との反応におけるギブス反応生成自由エネルギーが小さくなり、III族窒化物の生成が円滑に行われる。
これにより、III族窒化物を、低温、低圧において得ることができる。
また、リチウムアミドは、比較的安定な物質であるため、その取扱いが容易である。かかる観点からも、窒素源としてリチウムアミドを用いる利点がある。
以上のごとく、第1の参考発明によれば、III族窒化物を、低温、低圧において得ることができるIII族窒化物の製造方法を提供することができる。
本発明は、ガリウムと窒化リチウムとを、アンモニア雰囲気中において加熱処理することにより、窒化リチウムとアンモニアとを反応させてリチウムアミドを生成させると共に、
該リチウムアミドとガリウムとを反応させて、窒化ガリウムを得ることを特徴とする窒化ガリウムの製造方法にある(請求項1)。
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記窒化ガリウムの製造方法においては、ガリウムと窒化リチウムとを、アンモニア雰囲気中において加熱処理する。
本製造方法の場合にも、低温、低圧下においても液体の状態となりうるガリウムを用いることにより、得られる窒化ガリウムの結晶成長を促進することができる。
また、アンモニア雰囲気中においては、ガリウムと窒化リチウムとの反応におけるギブス反応生成自由エネルギーが小さくなり、窒化ガリウムの生成が円滑に行われる。これは、アンモニア雰囲気中においては、窒化リチウムとアンモニアとが反応してリチウムアミドが生成されるために、リチウムアミドとガリウムとが反応して窒化ガリウムを円滑に生成することができるためと考えられる。
以上のごとく、本発明によれば、窒化ガリウムを、低温、低圧において得ることができる窒化ガリウムの製造方法を提供することができる。
第2の参考発明は、遷移金属原料物質とリチウムアミドとを、非酸素雰囲気中において反応させることにより遷移金属窒化物を得ることを特徴とする遷移金属窒化物の製造方法にある。
第2の参考発明においては、遷移金属原料物質とリチウムアミドとを、非酸素雰囲気中において反応させることにより遷移金属窒化物を得る。それ故、窒素源として窒素(N2)を用いることがないため、窒素(N2)を分解する必要がない。そのために、低温、低圧下において、遷移金属窒化物の生成を円滑に行うことができる。
また、リチウムアミドは、比較的安定な物質であるため、その取扱いが容易である。かかる観点からも、窒素源としてリチウムアミドを用いる利点がある。
これにより、遷移金属窒化物を、低温、低圧において得ることができる。
以上のごとく、第2の参考発明によれば、遷移金属窒化物を、低温、低圧において得ることができる遷移金属窒化物の製造方法を提供することができる。
第3の参考発明は、遷移金属原料物質と窒化リチウムとを、アンモニア雰囲気中において加熱処理することにより遷移金属窒化物を得ることを特徴とする遷移金属窒化物の製造方法にある。
上記遷移金属窒化物の製造方法においては、遷移金属原料物質と窒化リチウムとを、アンモニア雰囲気中において加熱処理する。
アンモニア雰囲気中においては、窒化リチウムがアンモニアと反応してリチウムアミドが生成されるために、上記第2の参考発明と同様に、低温、低圧下において、リチウムアミドと遷移金属原料物質とが反応して遷移金属窒化物を円滑に生成することができると考えられる。
以上のごとく、第3の参考発明によれば、遷移金属窒化物を、低温、低圧において得ることができる遷移金属窒化物の製造方法を提供することができる。
参考例1における、III族窒化物の製造方法の説明図。 参考例1における、生成物のX線回折データを表す線図。 参考例1における、生成物(GaN)のSEM写真。 参考例2における、生成物のX線回折データを表す線図。 参考例2における、生成物(GaN)のSEM写真。 実施例における、生成物のX線回折データを表す線図。 実施例における、生成物(GaN)のSEM写真。 参考例3における、生成物のX線回折データを表す線図。 参考例3における、生成物(TaN)のSEM写真。 参考例4における、生成物のX線回折データを表す線図。 参考例4における、生成物(TaN)のSEM写真。
第1の参考発明において、上記III族窒化物としては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)などがあげられる。
また、第2の参考発明及び第3の参考発明において、上記遷移金属窒化物としては、例えば、窒化タンタル(TaN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化チタン(TiN)、窒化ニオブ(NbN)などがあげられる。
また、上記遷移金属原料物質としては、例えば、Ti、Zr、Ta、Nb等の遷移金属そのもの、或いはこれらの酸化物等を用いることができる。
また、第1の参考発明及び第2の参考発明において、上記非酸素雰囲気は、例えば酸素濃度が0.001vol%以下の雰囲気をいい、反応容器内の空気の大部分を不活性ガス、アンモニアガス等によって置換したり、あるいは減圧したりすることによって実現することができる。
また、上記不活性ガス等によって、反応容器内を例えば0.1〜1MPaの加圧雰囲気とすることもできる。
上記第1の参考発明において、上記非酸素雰囲気は、アンモニア雰囲気であることが好ましい。
この場合には、リチウムアミドが分解して生じるリチウム(Li)とアンモニア(NH3)とが反応して、リチウムアミド(LiNH2)が再生する。それ故、III族金属が消費尽くされるまで反応を継続させることができる。
また、本発明において、上記III族金属は、ガリウムとすることができる(請求項2)。
この場合には、発光ダイオード用基板、レーザーダイオード用材料等として有用な窒化ガリウムを、低温、低圧において得ることができる。
また、ガリウム(Ga)は、融点が29.8℃と低いため、低温におけるリチウムアミドとの反応が液相反応となる。そのため、得られる窒化ガリウム(GaN)の結晶成長を充分に促進することができる。
第2の参考発明において、上記非酸素雰囲気は、アンモニア雰囲気であることが好ましい。
この場合には、リチウムアミドが分解して生じるリチウムとアンモニアとが反応して、リチウムアミドが再生する。それ故、遷移金属原料物質が消費尽くされるまで反応を継続させることができる。
(参考例1)
本発明の参考例にかかるIII族窒化物の製造方法につき、図1〜図3を用いて説明する。
本例のIII族窒化物の製造方法においては、III族金属であるガリウム(Ga)とリチウムアミド(LiNH2)とを、非酸素雰囲気中において反応させることにより、III族窒化物である窒化ガリウム(GaN)を得る。
以下に、本例の製造方法につき、図1を用いて具体的に説明する。
窒素封入グローブボックス中でガリウム(Ga)(ナカライテスク製:純度99.9999%)0.250g(3.59mmol)、リチウムアミド(LiNH2)0.493g(21.5mmol)を秤量し、グラファイトるつぼ1にそれぞれ加えた。なお、リチウムアミドは窒化リチウム(Li3N)(アルドリッチ製、純度不明)を圧力0.1MPaのアンモニア(太陽日酸製:純度99.999%)雰囲気中で300℃、6時間処理することにより作製した。
次に、図1に示すステンレス製の圧力容器2内にグラファイトるつぼ1を静置した。圧力容器2を電気炉3にセットすると共に窒素ガス配管4に取付けられたバルブ42を介して真空ホースを接続し、真空ポンプにより上記圧力容器内を0.2Torr(26.6Pa)まで減圧した(矢印D)。
次に、バルブ42を閉じ、バルブ41を開き圧力容器2に窒素ガス5(太陽日酸製:純度99.9995%)を導入し0.1MPaの圧力で加圧した。これにより、上記圧力容器2内を酸素濃度0.001vol%の非酸素雰囲気(窒素雰囲気)とした。
次いで、窒素加圧しながら圧力容器2を750℃、12時間加熱し反応させた。反応終了後、圧力容器2を冷却し、グラファイトるつぼ1の中の生成物6を取り出した。そして、この生成物6に1規定塩酸を加え未反応のリチウムアミドを溶解した。この溶液をろ紙によりろ過することにより固形生成物を得た。
上記固形生成物については理学電機製RINT-Ultimaを用いてX線回折測定を行った。得られたX線回折データはJCPDSカードを用いて同定した。その結果、図2に示すようにGaN(100)、(002)、(101)の回折ピークが得られたことから窒化ガリウムの生成が確かめられた。特に、(002)の回折ピークが大きく表れていることから、窒化ガリウムの板状結晶が成長していることが分かる。
図2において、○がGaNの回折ピークを表す。なお、●は、試料台(substrate)の回折ピークである。
また、この窒化ガリウムをSEM(走査型電子顕微鏡)により観察したところ、図3に示すごとく、約50μmの板状結晶となって大きく成長していることが確認された。
なお、本例の窒化ガリウム(GaN)は、ガリウム(Ga)とリチウムアミド(LiNH2)とが、以下のように反応することにより得られる。
Ga+LiNH2 → GaN+LiH+1/2H2
次に、本例の作用効果につき説明する。
酸化ガリウムに含まれるガリウム金属と、窒素(N)とから、窒化ガリウムを得ることができる。しかし、窒素源として窒素(N2)を用いる場合、N2を分解する必要があるため、低温、低圧下においてこれを実現することは困難である。
一方、低温、低圧下において、酸化ガリウムと窒化リチウムとを反応させることによっても、理論上は窒化ガリウムを生成することができる。しかし、酸素雰囲気下において上記反応を行うと、LiGaO2が生成されてしまい、窒化ガリウムを充分に生成することが困難となる。
そこで、本例においては、ガリウムとリチウムアミドとを、非酸素雰囲気中において反応させることにより窒化ガリウムを得る。即ち、750℃、0.1MPaという低温、低圧下においても液体の状態をとるガリウム(Ga)を用いることにより、得られる窒化ガリウムの結晶成長を促進することができる。また、窒素源としてリチウムアミドを用いることにより、ガリウムとの反応におけるギブス反応生成自由エネルギーが小さくなり、窒化ガリウムの生成が円滑に行われる。
これにより、窒化ガリウムを、低温、低圧において得ることができる。
また、リチウムアミドは、比較的安定な物質であるため、その取扱いが容易である。かかる観点からも、窒素源としてリチウムアミドを用いる利点がある。
以上のごとく、本例によれば、窒化ガリウムを、低温、低圧において得ることができる窒化ガリウムの製造方法を提供することができる。
(参考例2)
本例のIII族窒化物の製造方法においては、III族金属であるガリウム(Ga)とリチウムアミド(LiNH2)とを、アンモニア雰囲気中において反応させることにより、III族窒化物である窒化ガリウム(GaN)を得る。
以下に、本例の製造方法につき、具体的に説明する。
参考例1と同様にグラファイトるつぼ1にガリウム(ナカライテスク製:純度99.9999%)0.250g(3.59mmol)、リチウムアミド0.493g(21.5mmol)を秤量し、グラファイトるつぼ1にそれぞれ加えた。次に、図1に示すステンレス製の圧力容器2にグラファイトるつぼ1を静置した。圧力容器2を電気炉3にセットすると共に窒素ガス配管4に取付けられたバルブ42を介して真空ホースを接続し、真空ポンプにより上記圧力容器内を0.2Torr(26.6Pa)まで減圧した(矢印D)。
次に、バルブ42を閉じ、バルブ41を開き圧力容器2にアンモニアガス50(太陽日酸:純度99.999%)を導入し0.1MPaの圧力で加圧した。
次いで、アンモニア加圧しながら圧力容器2を750℃、12時間加熱し反応させた。反応終了後、圧力容器2を冷却し、グラファイトるつぼ1の中の生成物6を取り出した。生成物6に1規定塩酸を加え未反応のリチウムアミドを溶解した。この溶液をろ紙によりろ過することにより固形生成物を得た。
固形生成物は参考例1と同様、X線回折測定を行った。その結果、図4に示すようにGaN(100)、(002)、(101)の回折ピークが得られたことから窒化ガリウムの生成が確かめられた。
図4において、○がGaNの回折ピークを表す。なお、●は、試料台(substrate)の回折ピークである。
また、この窒化ガリウムをSEMにより観察したところ、図5に示すごとく、50〜60μmの塊状結晶となって大きく成長していることが確認できた。
本例においては、アンモニア雰囲気中において、ガリウム(Ga)とリチウムアミド(LiNH2)とを反応させる。この場合、リチウムアミドが分解して生じるリチウムとアンモニアとが反応して、リチウムアミドが再生する。それ故、本例の製造方法には、ガリウム(Ga)が消費尽くされるまで反応を継続させることができるという利点がある。
(実施例)
本例においては、III族金属であるガリウム(Ga)と窒化リチウム(Li3N)とを、アンモニア(NH3)雰囲気中において加熱処理することによりIII族窒化物である窒化ガリウム(GaN)を得る。
以下に、本例の製造方法につき、具体的に説明する。
参考例1と同様にグラファイトるつぼ1にガリウム(ナカライテスク製:純度99.9999%)0.250g(3.59mmol)、窒化リチウム0.250g(7.18mmol)を秤量し、グラファイトるつぼ1にそれぞれ加えた。次に、図1に示すステンレス製の圧力容器2にグラファイトるつぼ1を静置した。圧力容器2を電気炉3にセットすると共に窒素ガス配管4に取付けられたバルブ42を介して真空ホースを接続し、真空ポンプにより上記圧力容器内を0.2Torr(26.6Pa)まで減圧した。
次に、バルブ42を閉じ、バルブ41を開き圧力容器2にアンモニアガス50(太陽日酸:純度99.999%)を導入し0.2MPaの圧力で加圧した。
次いで、アンモニア加圧しながら圧力容器2を750℃、24時間加熱し反応させた。反応終了後、圧力容器2を冷却し、グラファイトるつぼ1の中の生成物6を取り出した。生成物6に1規定塩酸を加え未反応のリチウムアミドを溶解した。この溶液をろ紙によりろ過することにより固形生成物を得た。
固形生成物は参考例1と同様、X線回折測定を行った。その結果、図6に示すようにGaN(100)、(002)、(101)の回折ピークが得られたことから窒化ガリウムの生成が確かめられた。
また、この窒化ガリウムをSEMにより観察したところ、図7に示すごとく、約100μmの板状結晶となって大きく成長していることが確認できた。
なお、本例の窒化ガリウム(GaN)は、ガリウム(Ga)と窒化リチウム(Li3N)とが、アンモニア(NH3)雰囲気中において、以下のように反応することにより得られる。
2Ga+Li3N+NH3 → 2GaN+3LiH
この反応におけるギブス反応生成自由エネルギーは、−217.4kJ/mol(室温)とマイナスとなる。
(参考例3)
本例においては、遷移金属原料物質であるタンタル(Ta)とリチウムアミド(LiNH2)とを、非酸素雰囲気中において反応させることにより遷移金属窒化物である窒化タンタル(TaN)を得る。
以下に、本例の製造方法につき、具体的に説明する。
参考例1と同様にグラファイトるつぼ1に酸化タンタルTa25(アルドリッチ製:純度99.99%)0.441g(1mmol)、リチウムアミド0.183g(8mmol)を秤量し、グラファイトるつぼ1にそれぞれ加えた。次に、図1に示すステンレス製の圧力容器2にグラファイトるつぼ1を静置した。圧力容器2を電気炉3にセットすると共に窒素ガス配管4に取付けられたバルブ42を介して真空ホースを接続し、真空ポンプにより上記圧力容器内を0.2Torr(26.6Pa)まで減圧した(矢印D)。
次に、バルブ42を閉じ、バルブ41を開き圧力容器2に窒素ガス5(日本酸素製:純度99.9995%)を導入し0.4MPaの圧力で加圧した。これにより、上記圧力容器2内を酸素濃度0.001vol%の非酸素雰囲気(窒素雰囲気)とした。
次いで、窒素加圧しながら圧力容器2を400℃、500℃、600℃の3種の温度条件にて、6時間加熱し反応させた。反応終了後、圧力容器2を冷却し、グラファイトるつぼ1の中の生成物6を取り出した。生成物6に1規定塩酸を加え未反応のリチウムアミドを溶解した。この溶液をろ紙によりろ過することにより固形生成物を得た。
固形生成物は参考例1と同様、X線回折測定を行った。その結果、図8に示すように反応温度400℃、500℃で得られた生成物において、TaN(111)、(200)の回折ピークが認められ、TaNの生成が確かめられた。図8における3つの曲線は、下から順に、反応温度400℃、500℃、600℃で得られた生成物のX線回折データを示す。
反応温度600℃の生成物においてTaNの回折ピークが認められないのは、TaNが熱分解しLiTaO3のような複合酸化物に変化したためと考えられる。
図8において、○がTaN、●がTa25、◇がLiTaO3の回折ピークをそれぞれ表す。なお、×は、試料台(substrate)の回折ピークである。
また、反応温度500℃にて得られた窒化タンタルをSEMにより観察したところ、図9に示すごとく、約30〜40μmの結晶が確認できた。
(参考例4)
本例においては、遷移金属原料物質である酸化タンタル(Ta25)と窒化リチウム(Li3N)とを、アンモニア雰囲気中において加熱処理することにより遷移金属窒化物である窒化タンタル(TaN)を得る。
以下に、本例の製造方法につき、具体的に説明する。
参考例1と同様にグラファイトるつぼ1に酸化タンタル(アルドリッチ製:純度99.99%)0.441g(1mmol)、窒化リチウム0.0696g(2mmol)を秤量し、グラファイトるつぼ1にそれぞれ加えた。次に、図1に示すステンレス製の圧力容器2にグラファイトるつぼ1を静置した。圧力容器2を電気炉3にセットすると共に窒素ガス配管4に取付けられたバルブ42を介して真空ホースを接続し、真空ポンプにより上記圧力容器内を0.2Torr(26.6Pa)まで減圧した。
次に、バルブ42を閉じ、バルブ41を開き圧力容器2にアンモニアガス50(太陽日酸:純度99.999%)を導入し0.2MPaの圧力で加圧した。
次いで、アンモニア加圧しながら圧力容器2を300℃、6時間反応させることによりリチウムアミドを生成させ、引き続き反応温度を400℃、500℃、600℃の3種の温度条件にて、6時間加熱し反応させた。反応終了後、圧力容器2を冷却し、グラファイトるつぼ1の中の生成物6を取り出した。生成物6に1規定塩酸を加え未反応のリチウムアミドを溶解した。この溶液をろ紙によりろ過することにより固形生成物を得た。
固形生成物は参考例1と同様、X線回折測定を行った。その結果、図10に示すように参考例3に比べLiTaO3のような複合酸化物の生成が少なく、反応温度400℃、500℃、600℃で得られた生成物においてTaN(111)の回折ピークが認められTaNの生成が確かめられた。図10における3つの曲線は、下から順に、反応温度400℃、500℃、600℃で得られた生成物のX線回折データを示す。
参考例3に比べTaNの回折ピーク強度が弱いのは、反応時間が短いためと考えられる。反応温度400℃、500℃の生成物では、原料である未反応のTa25の回折ピークが認められるからである。
また、反応温度500℃にて得られた窒化タンタルをSEMにより観察したところ、図11に示すごとく、約30〜40μmの結晶が確認できた。
1 白金るつぼ
2 圧力容器
3 電気炉
4 窒素ガス配管
5 窒素ガス
50 アンモニアガス
6 生成物

Claims (1)

  1. ガリウムと窒化リチウムとを、アンモニア雰囲気中において加熱処理することにより、窒化リチウムとアンモニアとを反応させてリチウムアミドを生成させると共に、
    該リチウムアミドとガリウムとを反応させて、窒化ガリウムを得ることを特徴とする窒化ガリウムの製造方法。
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