以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るプラスチックレンズ原料液注入方法を実施するためのプラスチックレンズ原料液注入装置の機能構成図、図2は本発明に係るレンズ原料液注入手順を示すフローチャート、図3(a)は本発明のレンズ原料液注入方法に用いる成形型の正面図、(b)はA−A線断面図、図4−1〜図4−10は本発明によるレンズ原料液注入手順における各状態を示した図である。
はじめに、第1の実施の形態において使用する成形型について図3を参照して説明する。
図3において、成形型70は眼鏡用プラスチックレンズを成形するための成形型であり、眼鏡レンズの前面を形成するための成形面71a(通常は凹面)を備えた上型モールド71と、眼鏡レンズの後面を形成するための成形面72a(通常は凸面)を備えた下型モールド72と、これら上型モールド71および下型モールド72(以下、これら2つのモールドを示す場合に単に上下モールド71、72ともいう)をそれぞれの成形面71a、71bを内側に対向させて所定の間隔をおいて配置させるとともに前記上下モールド71、72の両成形面71a、71b間の空間の周囲を密閉してキャビティ90を形成するガスケット80とからなる。
前記上下モールド71、72は、ガラス等の材料から形成され、正面視形状が円形のレンズ形状をしており、それら縁面71b、72bは円柱状の面からなっている。
前記ガスケット80は、前記上下モールド71、72の周囲に配置される円筒状の円筒体部81と、この円筒体部81の外周に設けられて前記キャビティ90へ原料液を注入する入り口となる注入口部83と、前記円筒体部81に設けられて前記キャビティ90内の気体とキャビティ90に充填されて溢れた原料液とを排出するときの出口となるとともに、この溢れた原料液を再びキャビティ90内に注入するときの入口となる排出口部84とを備えている。このガスケット80は、弾性を有する樹脂(例えば熱可塑性樹脂)からなり、射出成形等により一体に形成されている。
前記ガスケット80の円筒体部81は、両端が開口した円筒状をしている(以下、上型モールド71が配置される側の開口を上側開口81c、下型モールド72が配置される側を下側開口81dともいう)。円筒体部81の内壁面81aには、前記上下モールド71、72の両成形面71a、71bの周縁に当接することにより前記上下モールド71、72の位置決めとシールを行なう突起帯部82が全内周にわたって一体に突設されている。この突起帯部82は、その上面82aと側面82bとからなる角部分が上型モールド71の成形面71a周縁と当接され、側面82bと下面82cとからなる角部分が下型モールド72の成形面72a周縁と当接される。なお、突起帯部82の上面82aは、前記上型モールド71の成形面71aと接しやすいように内側に行くほど円筒体部81の上側開口81c側に向かうように傾斜した面になっている。また、突起帯部82の側面82bは円筒状の面からなり、成形される眼鏡レンズの縁面を形成する成形面となる。円筒体部81の内径は、前記上下モールド71、72の外径より若干小さく形成されており、この円筒体部81に挿入された上下モールド71、72は、そのそれぞれの縁面71b、72bが円筒体部81の弾性復元力により内側に押圧されて保持される。
前記排出口部84は、前記キャビティ90と成形型70の外部とを連通する排出孔841と、前記円筒体部81の外壁面81bに設けられ前記排出孔841を内部に有する排出口管部842と、この排出口管部842の外端に設けられ後述する注入装置1の排出ノズル23(図1、図4−1)の受け入れ口となる排出ノズル受部843とを有する。
前記排出口管部842は、前記円筒体部81の外壁面81bから外側に、この円筒体部81の直径方向に延設されている管である。
前記排出孔841は、前記円筒体部81と排出口管部842を円筒体部81の直径方向に貫通するように形成された孔で、一方の開口(内側開口)841aが円筒体部81内に開口し、他方の開口(外側開口)841bが排出口管部842の外端に開口し排出ノズル受部843の内部に連通している。前記内側開口841aは、ガスケット80に保持される上下モールド71、72の間に位置するように前記突起帯部82の側面82bに開口している。
前記排出ノズル受部843は、前記排出孔841と連通する空洞843eを有している。この空洞843eを形成する排出ノズル受部843の内壁面843aは、前記排出口管部842と連結されている側の端(内側端)843bの内径が前記排出孔841の外側開口841bの内径より大きく、排出ノズル受部843の外側の開口843cに向かうほど内径が大きくなる円錐面状をしている。そして、この排出ノズル受部843の内壁面843aの内側端843bと、前記排出孔841の外側開口841bとは段状部843dを介して接続されている。この段状部843dと排出孔841の内壁面841cとからなる角部分が、前記排出ノズル23の外周と密着して排出ノズル23と排出口部84の連結部分を密閉するシール部844となる。
前記注入口部83は、前記排出口部84の隣りに並設され、前記キャビティ90と成形型70の外部とを連通する注入孔831と、前記円筒体部81の外壁面81bに設けられ前記注入孔831を内部に有する注入口管部832と、この注入口管部832の外端に設けられ後述する注入装置1の注入ノズル13(図1、図4−1)の受け入れ口となる注入ノズル受部833とを有する。
前記注入口管部832は、前記円筒体部81の外壁面81bから外側に、前記排出口管部842と並行に延設されている。
前記注入孔831は、前記円筒体部81と注入口管部832を前記排出孔841に平行な方向に貫通するように形成された孔で、一方の開口(内側開口)831aが円筒体部81内に開口し、他方の開口(外側開口)831bが注入口管部832の外端に開口し注入口部83の内部に連通している。前記内側開口831aは、ガスケット80に保持される上下モールド71、72の間に位置するように前記突起帯部82の側面82bに開口している。
前記注入ノズル受部833は、前記注入孔831と連通する空洞833eを有している。この空洞833eを形成する注入ノズル受部833の内壁面833aは、前記注入口管部832と連結されている側の端(内側端)833bの内径が前記注入孔831の外側開口831bの内径より大きく、注入ノズル受部833の外側の開口833cに向かうほど内径が大きくなる円錐面状をしている。そして、この注入ノズル受部833の内壁面833aの内側端833bと、前記注入孔831の外側開口831bとは段状部833dを介して接続されている。この段状部833dと注入孔831の内壁面831cとからなる角部分が、前記注入ノズル13の外周と密着して注入ノズル13と注入口部83との連結部分を密閉するシール部834となる。
次に、上型モールド71と下型モールド72をガスケット80に組み付けて成形型70を形成する手順について説明する。
ガスケット80に、その円筒体部81の上側開口81cから上型モールド71をその成形面71aを内側にして挿入し、成形面71aの周縁部が突起帯部82の上面82aに当接するまで上型モールド71を挿入する。一方、円筒体部81の下側開口81dからは下型モールド72をその成形面72aを内側にして挿入し、成形面72aの周縁部が突起帯部82の下面82cに当接するまで下型モールド72を挿入する。挿入された上型モールド71と下型モールド72は、それそれの縁面71b、72bが円筒体部81の内壁面81aにより内側に押圧されてガスケット80における所定の位置に保持される。そして、上型モールド71の成形面71aと、下型モールド72の成形面72aと、円筒体部81の内壁面81a(この例では突起帯部82の側面82b)とによって、成形したい眼鏡レン形状に相当する空間であるキャビティ90が形成される。
ここで、上記した成形型70の例では、上下モールド71、72を突起帯部82に当接させて位置決めしているが、上下モールド71、72の一方を突起帯部82に当接させずに所望の位置まで挿入することで位置決めをしてもよい。その場合は、突起帯部82の前記一方のモールド成形面との当接部分を省略でき、モールドの縁面と円筒体部81の内壁面81aとの密着でキャビティ90を密閉する。また、上下モールドの71、72の両方を突起帯部82に当接させずに所望の位置まで挿入することで位置決めをしてもよい。その場合は、突起帯部82を省略でき、それぞれのモールド71、72の縁面71b、72bと円筒体部81の内壁面81aとの密着でキャビティ90を密閉する。
また、上記した成形型70の例では、上下モールド71、72を、ガスケット80の円筒体部81の弾性復元力を利用して保持しているが、上下モールド71、72を両外側から内側に挟む器具を用いて上下モールド71、72を突起帯部82に押し当てて密閉保持してもよい。その場合は円筒体部81で上下モールド71、72を保持しないので、円筒体部81の内径は、上下モールド71、72の外径とほぼ同じか大きくすることができる。上記した成形型70は、排出孔841が円筒体部81の直径方向に形成されているので、排出孔841の内側開口841aが最上点となるように成形型70を垂直あるいは傾斜させた状態で原料液の注入を行なうことにより、キャビティ90に気体が残留させずに原料液を充填することが可能になり好ましい。
また、成形型70は、注入孔831と排出孔841の方向が平行で、注入ノズル受部833のシール部834と排出ノズル受部843のシール部844の高さがほぼ同じになっているので、注入ノズル13および排出ノズル23を同じ方向に同じ高さまで注入口部83および排出口部84に挿入することにより、注入ノズル13と注入口部83との連結、並びに、排出ノズル23と排出口部84を連結させることができ、後述する注入装置1のノズル連結部による連結動作を簡単にできる。
また、注入口部83と排出口部84とを並設し、注入ノズル受部833と排出ノズル受部843を同じ高さに位置させているので、後述する注入装置1の注排口封止部50(図1)による封止動作を簡単にできる。特に、この例のように、注入ノズル受部833の開口833cと排出ノズル受部843の開口843cとを同一平面上に位置するようにすると、それら開口833c、843cにフィルム等を貼り付けて封止するのが容易になる。
次に、第1の実施の形態に係る眼鏡用プラスチックレンズ原料液注入装置について、図1を参照して説明する。このプラスチックレンズレンズ原料液注入装置1は、成形型70にレンズ原料液を供給するための注入管路11を備えた注入部10と、成形型70のキャビティ90内の気体を排出するとともにキャビティ90から溢れた原料液を流入させて再注入もしくは排出するための排出管路21を備えた排出部20と、成形型70を所定の位置および向きに保持する成形型保持部30と、成形型70の注入口部83と前記注入管路11の先端部(注入ノズル)13とを連結する手段(注入管路連結手段)、並びに、成形型70の排出口部84と前記排出管路21の先端部(排出ノズル)23とを連結する手段(排出管路連結手段)を構成するノズル連結部40と、原料液の充填が完了した成形型70の注入口部83および排出口部84を封止する注排口封止部50と、これら注入部10、排出部20、成形型保持部30、ノズル連結部40、および、注排口封止部50の動作を制御する制御部60とを有する。
前記注入部10は、レンズ原料液が蓄えられた原料液貯留タンク12(以下、単にタンク12という)と、このタンク12に蓄えられた原料液を成形型70が原料液注入のために配置される位置(注入位置)Pに導き先端11aの開口から吐出する導管であって、後端11bがタンク12に接続され、先端開口が成形型70の注入口部83の注入孔831に連結されて成形型70内に原料液を注入する注入管路11と、前記注入管路11の途中に設けられた開閉バルブであって、このバルブの開閉動作により原料液の注入と停止を行なう注入バルブ14と、タンク12内に蓄えられた原料液を注入管路11に送り出すための加圧手段15とを有する。
前記タンク12は、プラスチックレンズの原料液を気密に蓄えておくことができる容器であり、内部の気圧を正圧にする前記加圧手段15が設けられている。この加圧手段15によりタンク12内を加圧することによりタンク12内の原料液が注入管路11に押し出されて注入管路11の先端11aから吐出される。加圧手段15としては、例えばコンプレッサや空気圧タンク等を用いることができる。タンク12には、原料液を攪拌する手段や原料液を脱気するため減圧手段(例えば真空ポンプ)等を設けてもよい。
タンク12に蓄えられる眼鏡用プラスチックレンズ原料液としては、公知のモノマーが使用でき、具体的には、例えばメチルメタクリレート単独系のもの、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする系のもの、ジエチレングリコールビスアリルカーボネイト系のもの、ジエチレングリコールビスアリルカーボネイトと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする系のもの、イオウ含有系のもの、ハロゲン含有系のもの、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン等の各系のものが挙げられる。なお、ここで言うポリウレタン系のものは、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物およびポリオール化合物とが反応してできた系のものを言い、例えば、m−キシレンジイソシアネートとペンタエリトリトールテトラキスプロピオネートとの混合モノマー系のものがある。
前記注入管路11の先端部は、注入管路11を通ってきた原料液を外部に流出させる筒口であるとともに、成形型70の注入口部83と気密に連結される部分となる注入ノズル13からなっており、この注入ノズル13はその内部を貫通する吐出孔13aを備えた円筒状をしている。注入ノズル13の先端側には、先に行く程に径が小さくなる円錐状のテーパ面13cが形成されており、その最も径が小さくなる先端13dの中央に吐出孔13aの開口13bが位置している。また、注入ノズル13の後端側には、注入管路11を構成する管との接続構造13eが設けられている。
注入ノズル13の先端13dの外径は、成形型70の注入口部83(図3)の注入孔831の外側開口831bの内径より小さく、テーパ面13cの最も後端の部分の外径は、注入孔831の外側開口831bの内径より大きく形成されている。このような形状にすることにより、この注入ノズル13が注入口部83に挿入され、注入ノズル13の先端13dが注入孔831に挿入されると、注入ノズル13のテーパ面13cと注入口部83のシール部834とが密着して、注入ノズル13と注入口部83との連結部分がシールされる。
注入管路11を構成する管としては、金属製や樹脂製のものが利用できる。なお、この例では、注入ノズル13と成形型70の注入口部83を連結・離脱させる際に注入ノズル13を上下に移動させるので、この移動を妨げないように注入管路11の少なくとも注入ノズル13が接続される側は柔軟性を有する樹脂チューブで構成されている。また、注入管路11や注入ノズル13の吐出孔13aの内径は、原料液の注入流量や原料液の特性(例えば粘度や表面張力等)を考慮して適宜設定するとよい。
前記注入管路11の途中には、前記制御部60からの信号を受けて開閉が制御される自動調節弁である注入バルブ14が配置されている。注入バルブ14が開かれると原料液は注入ノズル13の吐出孔13aの開口13bから吐出し、注入バルブ14が閉じられると原料液の吐出は停止する。なお、この注入バルブ14には開度や開閉速度も制御可能なものを用いると注入流量を調整したり、注入途中で注入流量を変更したりできるので好ましい。なお、注入バルブ14としては、開閉バルブの代わりにローラーポンプを用いることもできる。その場合は、注入管路11の途中の弾性チューブで構成された部分にローラーポンプを設置し、ローラーポンプのローラーが弾性チューブを潰しながら繰り返し注入管路11の先端11a側にしごいている状態が注入バルブ14を開いた状態に相当し、ローラーが弾性チューブを潰したまま停止している状態が注入バルブ14を閉じた状態に相当する。
前記排出部20は、成形型70から排出された原料液を溜め置いて回収するための原料液回収容器(以下、単に回収容器という)22と、成形型70のキャビティ90内の気体やキャビティ90から溢れ出た原料液を先端21aの開口から流入させ、後端21b側に導く導管であって、後端21bが前記回収容器22のところに位置し、先端開口が成形型70の排出口部84の排出孔841に連結される排出管路21と、この排出管路21の途中に設けられた開閉バルブである排出バルブ24と、原料液が前記排出管路21に流入したことを検知する流入検知手段(センサ)25とを有する。
前記回収容器22は、排出管路21にその先端21aから流入した原料液がこの排出管路21を通って後端21bから流出した場合に、その流出した原料液が注ぎ込まれる容器であり、この回収容器22に溜まった原料液はレンズ原料液や他の資源として再利用される。排出管路21の後端21bと回収容器22との間の空間は、注入位置Pと同じ気圧(例えば大気圧)の外気に開放されており、排出管路21への原料液の流入やその流入した原料液の再注入を容易にしている。
排出管路21の先端部は、キャビティ90内の気体とキャビティ90から溢れ出た原料液の流入並びにこの流入した原料液の流出をさせる筒口であるとともに、成形型70の排出口部84と気密に連結される部分となる排出ノズル23からなっており、この排出ノズル23は、前記注入ノズル13と同様の形状をしている。すなわち、この排出ノズル23はその内部を貫通する流入孔23a(図4−1)を備えた円筒状をしており、先端側には、先に行く程に径が小さくなる円錐状のテーパ面23cが形成されている。そして、そのテーパ面23cの最も径が小さくなる先端23dの中央に流入孔23aの開口23bが位置している。また、排出ノズル23の後端側には、排出管路21を構成する管との接続構造23eが設けられている。この排出ノズル先端23dの外径は、前記成形型70の排出口部84の排出孔841の外側開口841bの内径より小さく、テーパ面23cの最も後端の部分の外径は、排出孔841の外側開口841bの内径より大きく形成されている。このような形状にすることにより、この排出ノズル23が排出口部84に挿入され、排出ノズル23の先端23dが排出孔841に挿入されると、排出ノズル23のテーパ面23cと排出口部84のシール部844とが密着して、排出ノズル23と排出口部84との連結部分がシールされる。
排出管路21を構成する管としては、金属製や樹脂製のものが利用できる。なお、この例では、排出ノズル23と成形型70の排出口部84を連結・離脱させる際に排出ノズル23を上下に移動させるので、この移動を妨げないように排出管路21の少なくとも排出ノズル23が接続される側は、柔軟性を有する樹脂チューブで構成されている。また、排出管路21や排出ノズル23の流入孔23aの内径は、原料液の流入流量や原料液の特性(例えば粘度、表面張力等)を考慮して適宜設定するとよい。
前記排出管路21の途中には、前記制御部60からの信号を受けて開閉が制御される自動調節弁である排出バルブ24が配置されている。排出バルブ24が開かれた状態では、排出管路21内は、外気と同じ気圧(例えば大気圧)になっているので、キャビティ90から溢れて排出口部84に達した原料液は、排出ノズル23の流入孔23aから容易に排出管路21内に流入する。また、原料液が排出管路21内に流入後、排出バルブ24を閉じると、排出管路21内への原料液の流入は停止し排出管路21内に原料液が滞留したまま保持される。その後排出バルブ24が開かれると排出管路21内は再び外気と同じ気圧になるので、流入した原料液はその自重により排出ノズル23の流入孔23aから吐出される。なお、排出バルブ24には開度や開閉速度も制御可能なものを用いると流入流量や吐出流量を調整できるので好ましい。
前記流入検知手段25は、原料液が排出管路21内に流入したかどうかを検知するためのセンサであり、排出管路21の所定の位置(流入検知位置DP)まで原料液が流入してきたかどうかを検知できるように排出管路21の途中に設けられている。この流入検知手段25による検出値は前記制御部60に継続して送出され、その検出値に基づいて制御部60は排出管路21へ原料液が流入したかどうかを判断する。
流入検知手段25としては、非接触式や接触式のセンサが利用できるが、原料液に接触させずに測定できるという点で非接触式センサが好ましく、また、原料液は透明なので透明体を検知可能なセンサを用いると好ましい。このような非接触式センサとしては、光電センサ、近接センサ、視覚センサ、超音波センサ、赤外線センサ等が利用できる。本実施の形態では、透過式の光電センサを用いた場合で説明する。
透過式光電センサからなる流入検知手段25は、光を照射する投光部25aと、この投光部25aからの光を受光して光量の変化を電気信号に変換し検出値として制御部60へ出力する受光部25bとを備えている。投光部25aと受光部25bは、排出管路21の途中にこの排出管路21を挟んで対向して配置されている。投光部25aと受光部25bが設置される位置の排出管路21は、透明な管で構成されており、投光部25aから放射された光が排出管路21を横断して受光部25bに到達可能にしている。この例では、投光部25aの投光軸Aと受光部25bの受光軸とが一致するように配置されており、排出管路21内を原料液が流入してきたかどうかが検知される位置(流入検知位置)DPは、前記投光軸Aと排出管路21とが交差する位置となる。このように構成することにより、流入検知位置DPに原料液が有るときと無い時とで受光部25bで検出される検出値が異なるため、この検出値に基づいて流入検知位置DPまで原料液が流入してきたかどうかを判断することができる。
流入検知位置DPは、排出管路21の先端21aから近いほど、排出管路21に流入する原料液の量が少ないうちに検知できるので好ましいが、本発明は排出管路21に流入した原料液を再度キャビティ90に注入するので、排出管路21の先端21aから離れた位置であってもよい。また、排出ノズル23の位置より排出管路21の先端側に流入検知位置DPを設けると、排出バルブ24に原料液が達する前に検知できるという点で好ましいが、排出バルブ24より排出管路21の後端側に設けることもできる。このように本発明においては、流入検知手段25の設置位置について自由度があるので、本実施の形態のように排出ノズル23を移動させる必要がある場合でも、その移動の影響を受けない位置に流入検知手段25を設けることができる。
成形型70に連結された状態での排出ノズル23の流入孔23aの開口23bの高さ位置は、流入検知位置DPより下側にすると、排出管路21内に流入した原料液が排出バルブ24を開いたときに自重により排出ノズル23から流出しやすくなるので好ましい。なお、排出管路21内に流入した原料液が成形型70内に再注入されずに排出管路21の後端21bに達して流出した場合は前記回収容器22に注がれて回収される。
前記成形型保持部30は、図示しない搬送手段によって注入位置Pに搬送されてきた成形型70を所定の位置および向きに保持する装置である。本実施の形態においては、成形型保持部30は、成形型70の円筒体部81を上下から挟む部分である保持部31と、この保持部31を駆動する駆動部32とを有している。成形型70が注入位置Pに搬入された後に、成形型70はその排出孔841の内側開口841aがキャビティ90における最上点にくるように垂直に立てた状態で、この成形型保持部30により保持される。原料液注入完了後は、成形型70は成形型保持部30から解放され、搬送手段により注入位置Pから搬出される。成形型保持部30の動作は制御部60によって制御される。
前記ノズル連結部40は、注入ノズル(注入管路先端部)13と成形型70の注入口部83との連結および離脱、並びに、排出ノズル(排出管路先端部)23と成形型70の排出口部84との連結および離脱を行なう装置であり、注入ノズル13と排出ノズル23を保持するノズル保持部41と、そのノズル保持部41を上下に移動させる駆動部42とを有している。
前記ノズル保持部41は、注入ノズル13と排出ノズル23を、それぞれの先端13d、23dを下向きに、成形型70の注入孔831と排出孔841の中心間隔と同じ中心間隔で同じ高さに垂直に保持している。
前記駆動部42は、ノズル保持部41を垂直方向に上下に移動させることにより、注入ノズル13を注入口部83の注入孔831の中心軸上で昇降させるとともに、排出ノズル23を排出口部84の排出孔834の中心軸上で昇降させる駆動部である。
原料液注入開始前に、両ノズル13、23のテーパ面13c、23cが、注入・排出口部83、84のシール部834、844にそれぞれ密着する位置まで前記ノズル保持部41を垂直方向に降下させて、両ノズル13、23を注入・排出口部83、84にそれぞれ連結する。原料液注入完了後は、ノズル保持部41を垂直方向に上昇させて両ノズル13、23を注入・排出口部83、84からそれぞれ離脱させ、成形型70の搬入、搬出、注入、排出口部83、84の封止等の工程の妨げにならない位置に待避させる。ノズル連結部40の動作は制御部60によって制御される。
なお、本実施の形態においては、成形型70の注入、排出口部83、84のシール部834、844は、成形型70が成形型保持部30によって保持された状態において同じ高さに位置しているので、両ノズル13、23はノズル保持部41に同じ高さで保持されているが、シール部834、844の高さが異なる場合は、それに合わせてノズル保持部41における両ノズル13、23の取り付け高さを変えるとよい。
また、ノズル保持部41は、両ノズル13、23を保持し、駆動部42によって上下動させているが、注入ノズル13と排出ノズル23を別々に保持して、それぞれ別々に駆動させてもよい。
また、本実施の形態では、成形型70の位置を固定した状態で、ノズル連結部40が両ノズル13、23を上下動させて連結、離脱を行っているが、両ノズル13、23の位置を固定した状態で、ノズル連結部40が成形型70を上下動させてもよい。
前記注排口封止部50は、原料液が充填された成形型70の注入口部83および排出口部84を封止する装置である。本実施の形態では、注入ノズル受部833(図3)の開口833cと排出ノズル受部843の開口843cに、熱接着層を備えた封止フィルム95を熱圧着により貼り付けて封止しており、封止フィルム95を供給する封止フィルム供給部52と、供給されたフィルム95を両受部833、843の開口833c、843cに押し当てて加熱するヒータ51とを有している。なお、成形型70の封止方法としてはこれ以外の方法も採用でき、例えば、注入ノズル受部833と排出ノズル受部843にカバーや栓を取り付けたり、注入口管部832や排出口管部842を圧力を加えながら加熱して溶着させたりしてもよい。
なお、本実施の形態では、注入ノズル受部833の開口833cと排出ノズル受部843の開口843cとが同一平面上位置しているので一枚のフィルムで両開口833c、843cを同時にシールすることができるので好ましい。また、本発明によれば原料液充填完了後の成形型70内の原料液液面は正確に設定されるので、両受部開口833c、843cに原料液が付着して封止の支障をきたすおそれがない。
前記制御部60は、前記注入バルブ14と排出バルブ24の開閉を制御するバルブ開閉制御機能61と、前記流入検知手段25から送られてきた検出値を基に流入検知位置DPに原料液が到達したかどうかを判断する流入検知機能62と、前記成形型保持部30の動作を制御する成形型保持制御機能63と、前記ノズル連結部40の動作を制御するノズル連結制御機能64と、前記注排口封止部50の動作を制御する注排口封止制御機能65と、これら各機能61、62、63、64、65を制御する主制御部66とを有する。また、前記制御部60には、前記流入検知手段25によって検出された検出値に基づいて原料液が流入検出位置DPまで到達したかどうかを前記流入検知機能62で判定する際に用いる判定値が判定値記憶部67に予め記憶されている。この判定値としては、例えば、原料液が検出位置DPに達しているときの検出値と達していないときの検出値の境界値であり、予め流入検知位置DPに原料液が有るときと無いときの流入検知手段25による検出値を調べておき、それぞれの検出値の平均値の中間の値を検出値として設定することができる。前記流入検知機能62は、前記流入検知手段25から送信されてくる検出値と前記流入判定値記憶部に記憶されている判定値とを比較して、検出値が判定値より大きいか小さいかで流入検知位置DPにおける原料液の有無を判定する。
制御部60としては、コンピュータ、プログラム、各機器と信号送受信可能に接続するインターフェース、入力手段、出力手段等で構成される。制御部60の各機能は、複数の機器、コンピュータ、プログラム等に適宜分散、統合させてもよい。なお、制御部60の制御の詳細は後述する。
次に、第1の実施の形態の注入装置1の注入動作や制御について、図1、図2および図4−1〜図4−10を用いて説明する。
はじめに、注入バルブ14と排出バルブ24は閉じられた状態にあり、原料液貯留タンク12には予め調整されたレンズ原料液Mが蓄えられている。そして、タンク12内は加圧手段15により外気圧より高い状態に加圧されている。また、注入ノズル13と排出ノズル23は図1に示す上方の待避位置に待避している。この状態で図示しない搬送装置は、成形型70を注入位置Pに搬入する(ステップS1:成形型搬入工程)。
注入位置Pに成形型70が搬入されると、制御部60の主制御部66は、成形型保持制御機能63により成形型保持部30を動作させて成形型70を所定の位置および所定の向きで保持させる(ステップS2:成形型保持工程、図4−1)。
成形型70の保持完了後、主制御部66はノズル連結制御機能64によりノズル連結部40を動作させて、注入ノズル13と排出ノズル23を所定高さまで降下させる。これにより、注入ノズル13と排出ノズル23は注入口部83の注入ノズル受部833および排出口部84の排出ノズル受部843にそれぞれ挿入されて、注入ノズル13の先端13dおよび排出ノズル23の先端23dが注入孔831および排出孔841にそれぞれ挿入される。そして、注入ノズル13のテーパ面13cと排出ノズル23のテーパ面23cが注入口部83のシール部834および排出口部84のシール部844にそれぞれ密着して、注入ノズル13および排出ノズル23が注入口部83および排出口部84にそれぞれ連結される(ステップS3:ノズル連結工程、図4−2)。
両ノズル13、23の連結完了後、主制御部66はバルブ開閉制御機能61により排出バルブ24を開く(ステップS4:排出バルブ開放工程)。これにより排出管路21内は外気と同じ気圧になる。なお、成形型70への最初の原料液注入時には、排出管路21に原料液は流入していないので、流入原料液の再注入は行なわれない。
排出バルブ24開放後、主制御部66はバルブ開閉制御機能61により注入バルブ14を開く(ステップS5:原料液注入開始工程)。これにより注入管路11を原料液が流れ、注入ノズル13の先端から原料液Miの吐出を開始する。吐出された原料液Miは注入孔831を通って成形型70内に注入されてキャビティー90の底に溜まりだし、成形型70内の原料液Mの液面LSm(図4−3)は徐々に上昇する。このときキャビティ90内の空気は、排出ノズル23から排出管路21を通り、排出管路21の後端21bから外部に排出される。成形型70内の原料液Mの液面LSmはさらに上昇を続け、やがて排出孔841の内側開口841aに到達し排出孔841内を上昇して排出ノズル23の先端23dに到達する(図4−4)。そして、原料液Mは排出ノズル23の先端より流入し、排出管路21内に流入した原料液Me(図4−5)の液面LSeは排出管路21をさらに上昇する。
このとき流入検知機能62は、流入検知手段25から送信されてくる検出値と判定値記憶部67に記憶されている判定値との比較を継続して行なっており、排出管路21内の原料液Meの液面LSeが流入検知位置DPに到達すると、前記流入検知機能62による判定が原料液無しの判定から原料液有りの判定に変わり原料液流入が検知される。そして、流入検知機能62は原料液流入を検知したこと示す信号を主制御部66に送信する(ステップS6:流入検知工程)。
流入検知の信号を受信した主制御部66は、バルブ開閉制御機能61により注入バルブ14および排出バルブ24を閉じる。これにより、キャビティ90への原料液Mの注入が停止されるとともに、排出管路21内に流入した原料液Meの液面LSeの上昇も停止する(ステップS7:原料液注入停止工程)、図4−5)。このとき、排出管路21内の液面LSeは、流入検知から両バルブ14、24の閉止までのタイムラグにより検知位置DPより僅かに上に位置している。
両バルブ14、24閉止後、主制御部66はノズル連結制御機能64によりノズル連結部40を動作させ、注入ノズル13と排出ノズル23を上昇させて所定の待避位置まで移動させる。これにより両ノズル13、23は注入・排出口部83、84から離脱する(ステップS8:ノズル離脱工程)、図4−6)。このとき両バルブ14、24が閉じているため、注入管路11内にある原料液Miおよび排出管路21内にある原料液Meはそのまま保持される。また、成形型70の注入口部83および排出口部84にあるそれぞれの原料液Mの液面LSmは、注入ノズル13の先端13dおよび排出ノズル23の先端23dの先端があった高さ位置にほぼ同じ高さに位置している。
両ノズル13、23離脱後、主制御部66は注排口封止制御機能65により封止フィルム供給部52を動作させて熱接着層を備えた封止フィルム95を注入ノズル受部833の開口833cおよび排出ノズル受部843の開口843cに供給する。そして、ヒータ51を封止フィルム95の上面から両受部833,843の開口833c、843cに押し当てて加熱することにより封止フィルム95が両開口833c、843cに接着されて注入口部83および排出口部84を封止する(ステップS9:注入排出口部封止工程)、図4−7)。
注入・排出口部封止後、主制御部66は成形型保持機能63により成形型70を解放し搬送手段に受け渡す。このため、成形型70は搬送手段により流入位置Pから搬出される(ステップS10:成形型搬出工程)。
原料液を注入する次の成形型が無い場合は注入工程を終了し、次の成形型が有る場合は、前記ステップS1〜S10の処理を注入する成形型が無くなるまで繰り返す。
なお、2個目以降の成形型に原料液を注入する場合は、前の成形型を注入したときに排出管路21内に流入した原料液が排出管路21の先端側に滞留保持された状態で、排出ノズル23と排出口部84との連結が行なわれる(ステップS3:ノズル連結工程)、図4−8)。そして、両ノズル13、23連結後、排出バルブ24が開かれると、その排出管路21に滞留保持された原料液Meが自重により排出ノズル23の先端から吐出してキャビティ90に再注入される(ステップS4:排出バルブ開放工程)、図4−9)。続いて、注入バルブ14が開くと注入管路11から原料液Miが注入され原料液の注入が開始し、排出管路21から再注入された原料液Meと合わさる(ステップS5:原料液注入開始工程、図4−10)。
なお、上記例では、排出バルブ24を開いた後に注入バルブ14を開くことにより、排出管路21内に残留した原料液Meの成形型70への再注入を容易にしているが、原料液の特性によっては、両バルブ14、24をほぼ同時に開いても再注入に影響しない場合がある。その場合はステップS4の排出バルブ24の開放とステップS5の注入バルブ14の開放をほぼ同時に行なって作業時間を短縮してもよい。
また、ノズル駆動部40が注入ノズル13と排出ノズル23を別々に動作できるようにして、排出ノズル23と排出口部84を連結して排出バルブ24を開いた後に、注入バルブ14と注入口部83を連結して注入バルブ14を開くようにしてもよい。
以上の通り本発明の第1の実施の形態においては、成形型70から溢れ出た原料液Meが排出管路21に流入し次の成形型70への原料液注入時に再注入されるので、原料液Meの無駄を少なくすることができる。また、流入検知手段25により流入検知される位置Pにかかわらず、原料液注入完了後の成形型70内の原料液Mの液面LSmの位置が一定にできるので、流入検知手段25の設置位置の制約が少ない。また、流入検知手段25による流入検知から注入バルブ14閉止までのタイムラグがあっても原料液注入完了後の成形型70内の原料液Mの液面LSmの位置が一定にできるので、流入検知手段25の制約が少なくまたタイムラグを考慮した機構や制御も必要ない。また、原料液Mの注入流量にかかわらず原料液注入完了後の成形型70内の原料液Mの液面LSmの位置は一定にできるので、従来のように成形型70内の液面のズレやバラツキを抑えるために注入流量を少なくする必要が無く、原料液注入を短時間で行なうことができる。
次に第2の実施の形態について図面を参照して説明する。図5は本発明の第2の実施の形態の眼鏡用プラスチックレンズ原料液注入装置の機能構成図、図6は本発明の第2の実施の形態に係るレンズ原料液注入の手順を示すフローチャート、図7(a)は本発明の第2の実施の形態で用いる成形型の正面図、(b)はB−B線断面図、図8−1〜図8−10は本発明の第2の実施の形態における注入手順における状態を示した図である。なお、これらの図において、第1の実施の形態と同様の構成部分については同じ番号を付している。前記第1の実施の形態では、成形型70を立てた状態で、原料液を上から注入し上から排出しているが、この第2の実施の形態は、成形型700を立てた状態で、原料液を下から注入し上から排出する場合の例である。
はじめに、第2の実施の形態において用いる成形型700について、図7を参照して説明する。この第2の実施の形態における成形型700は眼鏡用プラスチックレンズを成形するための成形型であり、上型モールド71と、下型モールド72と、ガスケット800とからなり、内部に成形したい眼鏡レンズ形状に相当する空間でありキャビティ90が形成されている。この上型モールド71と下型モールド72は前記第1の実施の形態と同じなので説明を省略する。
前記ガスケット800は、前記上下モールド71、72の周囲に配置される円筒状の円筒体部81と、この円筒体部81に設けられて前記キャビティ90へ原料液を注入する入り口となる注入口部85と、前記円筒体部81に設けられて前記キャビティ90内の気体とキャビティ90に充填されて溢れた原料液とを排出する出口となるとともに、この溢れた原料液を再びキャビティ90内に注入する入口となる排出口部84とを備える。円筒体部81と排出口部84は、前記第1の実施の形態と同じなので説明を省略する。
前記注入口部85は、前記キャビティ90と成形型700の外部とを連通する注入孔851と、円筒体部81の外壁面81bに設けられ前記注入孔851を内部に有する注入口管部852と、この注入口管部852の外端に設けられ後述する注入装置100の注入ノズル13の受け入れ口となる注入ノズル受部853とを有する。
前記注入口管部852は、前記排出口管部842に対して円筒体部81の外壁面81bで直径方向反対側に、その直径方向外側に延設されている。
前記注入孔851は、前記排出口部84の排出孔841の中心軸と同じ円筒体部81の直径方向に中心軸を有する孔であり、前記円筒体部81と注入口管部852を貫通している。そして、円筒体部81の内部側に開口する一方の開口(内側開口)851aと、注入口管部852の外端側に開口する他方の開口(外側開口)851bとを有している。前記内側開口851aは、ガスケット80に保持される上下モールド71、72の間に位置するように突起帯部82の側面82bに開口している。
前記注入ノズル受部853は、前記注入孔851と連通する空洞853eを有している。この空洞853eを形成する注入ノズル受部853の内壁面853aは、前記注入口管部852と連結されている側の端(内側端)853bの内径が注入孔851の外側開口851bの内径より大きく、注入ノズル受部853の外側の開口853cに行くほど内径が大きくなる円錐面状をしている。そして、この注入ノズル受部53の内壁面853aの内側端853bと、前記注入孔851の外側開口851bとは段状部853dを介して接続されている。この段状部853dと注入孔851の内壁面851cとからなる角部分が、前記注入ノズル13の外周と密着して注入ノズル13と注入口部85との連結部分を密閉するシール部854となる。
前記上型モールド71と下型モールド72を前記ガスケット800に組み付けて成形型700を形成する手順については、第1の実施の形態と同じなので説明を省略する。
この成形型700は、注入孔851と排出孔841が、前記円筒体部81の同一の直径方向に上に位置しているので、前記排出孔841の内側開口841aが最上点となるように成形型700を垂直あるいは傾斜させた状態では、注入孔851の内側開口851aは最下点に位置する。このように成形型700を保持した状態で注入孔851から原料液を注入するとキャビティ90に原料液が流入するときの泡の巻き込みが少なく、また、キャビティ90内に気体が残留させずに原料液を充填することが可能になり好ましい。
次に、第2の実施の形態に係る眼鏡用プラスチックレンズ原料液注入装置100について、図5を参照して説明する。
このプラスチックレンズレンズ原料液注入装置100は、前記成形型700にレンズ原料液を供給するための注入管路11を備えた注入部10と、成形型700のキャビティ90内の気体を排出するとともにキャビティ90から溢れた原料液を流入させて再注入もしくは排出するための排出管路21を備えた排出部20と、成形型700を所定の位置および所定の向きに保持する成形型保持部30と、成形型700の注入口部85と注入管路11の先端部(注入ノズル)13との連結を行なう注入ノズル連結部(注入管路連結手段)410と、成形型700の排出口部84と排出管路21の先端部(排出ノズル)23との連結を行なう排出ノズル連結部(排出管路連結手段)420と、原料液の充填が完了した成形型700の注入口部85を封止する注入口封止部510と、排出口部84を封止する排出口封止部520と、これら注入部10、排出部20、成形型保持部30、注入ノズル連結部410、排出ノズル連結部420、注入口封止部510および排出口封止部520の動作を制御する制御部600とを有する。
前記注入部10は、注入ノズル13を上向きに配置し、この注入ノズル13を所定位置まで上昇させることにより前記注入口部85に連結される以外は前記第1の実施の形態と同じなので説明を省略する。
また、前記排出部20と前記成形型保持部30も第1の実施の形態と同じなので説明を省略する。
前記注入ノズル連結部410は、注入ノズル(注入管路先端部)13と注入口部85との連結および離脱を行なう装置であり、注入ノズル13を保持する注入ノズル保持部411とこの注入ノズル保持部411を上下に駆動させる駆動部412とを有している。
前記注入ノズル保持部411は、注入ノズル13を、その先端13dを上向きに垂直に保持している。前記駆動部412は注入ノズル保持部411を垂直方向に上下に移動させることにより、注入ノズル13を注入口部85の注入孔851の中心軸上で昇降させる駆動部である。
前記排出ノズル連結部420は、排出ノズル(排出管路先端部)23と排出口部84との連結および離脱を行なう装置であり、排出ノズル23を保持する排出ノズル保持部421とこの排出ノズル保持部421を上下に駆動させる駆動部422とを有している。
前記注入ノズル保持部421は、排出ノズル23を、その先端23dを下向きに垂直に保持している。前記駆動部422は、排出ノズル保持部421を垂直方向に上下に移動させることにより、排出ノズル23を排出口部84の排出孔841の中心軸上で昇降させる駆動部である。
原料液注入開始前に、注入ノズル13のテーパ面13cが注入口部85のシール部854に密着する位置まで注入ノズル保持部411を垂直方向に上昇させて、注入ノズル13を注入口部85に連結するとともに、排出ノズル23のテーパ面23cが、排出口部84のシール部844に密着する位置まで排出ノズル保持部421を垂直方向に降下させて、排出ノズル23を排出口部84に連結する。原料液注入完了後は、注入ノズル保持部411を垂直方向に下降させて注入ノズル13を注入口部85から離脱させるとともに、排出ノズル保持部421を垂直方向に上昇させて排出ノズル23を排出口部84から離脱させる。そして、両ノズル13、23は成形型700の搬入、搬出、注入・排出口部85、84の封止等の妨げにならない位置に待避させる。両ノズル連結部410、420の動作は制御部600によって制御される。
前記注入口封止部510は、原料液が充填された成形型700の注入口部85を封止する手段である。本実施の形態では、注入口部85の注入口管部852を溶着して封止しており、注入口管部852を外側から挟んで潰した状態で溶着させる加圧溶着部511を備えている。溶着方法として、超音波溶着や熱板溶着等の方法を用いることができる。なお、排出口封止部520は、排出口部84だけを封止する以外は、第1の実施の形態と同じなので説明を省略する。
前記制御部600は、前記注入バルブ14と排出バルブ24の開閉を制御するバルブ開閉制御機能61と、前記流入検知手段25から送られてきた検出値を基に流入検知位置DPに原料液が到達したかどうかを判断する流入検知機能62と、前記成形型保持部30の動作を制御する成形型保持制御機能63と、前記注入ノズル連結部410と排出ノズル連結部420の動作を制御するノズル連結制御機能640と、前記注入口封止部510と排出口封止部520の動作を制御する注排口封止制御機能650と、これら各機能61、62、63、640、650を制御する主制御部66とを有する。また、前記制御部60には、前記流入検知手段25によって検出された検出値に基づいて原料液が流入検出位置DPまで到達したかどうかを前記流入検知機能62で判定する際に用いる判定値が判定値記憶部67に予め記憶されている。制御部600は、ノズル連結制御機能640が注入ノズル連結部410と排出ノズル連結部420の動作を制御する点と、注排口封止制御機能650が前記注入口封止部510と排出口封止部520の動作を制御する点以外は第1の実施の形態と同じなので説明を省略する。なお、制御部600の制御の詳細は後述する。
次に、第2の実施の形態の注入装置100の注入動作や制御について、図5、図6および図8−1〜図8−10を用いて説明する。
はじめに、注入バルブ14と排出バルブ24は閉じられた状態にあり、原料液貯留タンク12には予め調整されたレンズ原料液Mが蓄えられている。そして、タンク12内は加圧手段15により外気圧より高い状態に加圧されている。また、注入ノズル13は下方の待避位置に待避しているとともに、排出ノズル23は上方の待避位置に待避している。この状態で図示しない搬送装置は、成形型700を注入位置Pまで搬入する(ステップS21:成形型搬入工程)。
注入位置Pに成形型700が搬入されると、制御部600の主制御部66は前記成形型保持制御機能63により成形型保持部30を動作させて成形型700を所定の位置および所定の向きで保持させる(ステップS22:成形型保持工程、図8−1)。
成形型700の保持完了後、主制御部66は、ノズル連結制御機能640により注入ノズル連結部410と排出ノズル連結部420を動作させて、注入ノズル13を所定の高さまで上昇させるとともにと排出ノズル23を所定高さまで降下させる。これにより、注入ノズル13は注入口部85の注入ノズル受部853に挿入されて注入ノズル13の先端13dが注入孔851に挿入され、注入ノズル13のテーパ面13cと注入口部85のシール部854が密着して、注入ノズル13が注入口部85に連結される。また、排出ノズル23は排出口部84の排出ノズル受部843に挿入されて排出ノズル23の先端dが排出孔841に挿入され、排出ノズル23のテーパ面23cが排出口部84のシール部844に密着して、排出ノズル23が排出口部84に連結される(ステップS23:ノズル連結工程、図8−2)。
両ノズル13、23の連結完了後、主制御部66は前記バルブ開閉制御機能61により排出バルブ24を開く(ステップS24:排出バルブ開放工程)。これにより排出管路21内は外気と同じ気圧になる。なお、最初の成形型700への原料液注入時には、排出管路21に原料液は流入していないので、流入原料液の再注入は行なわれない。
排出バルブ開放後、主制御部66は前記バルブ開閉制御機能61により注入バルブ14を開く(ステップS25:原料液注入開始工程)。これにより注入管路11を原料液Mが流れ、注入ノズル13の先端から原料液Mの吐出を開始する。吐出された原料液Mは注入孔851を通って成形型700内に注入されて成形型700内の原料液Mの液面LSmが徐々に上昇する(図8−3)。このときキャビティ90内にある空気は、排出ノズル23から排出管路21に流入し、排出管路21の後端21bから外部に排出される。成形型700内の原料液Mの液面LSmはさらに上昇を続け、やがて排出孔841の内側開口841aに到達し、さらに排出孔841内を上昇して、排出ノズル23の先端23dに到達する(図8−4)。そして、原料液Mは排出ノズル23の先端23dより流入し、排出管路21内に流入した原料液Meの液面LSeは排出管路21をさらに上昇する(図8−5)。
このとき流入検知機能62は、流入検知手段25から送信されてくる検出値と判定値記憶部67に記憶されている判定値との比較を継続して行なっており、排出管路21内の原料液Meの液面LSeが流入検知位置DPに到達すると、前記流入検知機能62による判定が原料液無しの判定から原料液有りの判定に変わり原料液流入が検知される。そして、流入検知機能62は原料液流入を検知したこと示す信号を主制御部66に送信する(ステップS26:流入検知工程)。
原料液流入検知の信号を受信した主制御部66は、バルブ開閉制御機能61により注入バルブ14および排出バルブ24を閉じる。これにより、成形型700への原料液Mの注入が停止されるとともに、排出管路21内に流入した原料液Meの液面LSeの上昇も停止する(ステップS27:原料液注入停止工程、図8−5)。このとき、排出管路21内の液面LSeは、流入検知から両バルブ14、24の閉止までのタイムラグにより検知位置DPより僅かに上に位置している。
両バルブ14、24閉止後、主制御部66はノズル連結制御機能64により、注入ノズル連結部410を動作させ、注入ノズル13を降下させて所定の待避位置まで移動させる。これにより注入ノズル13は注入口部85から離脱する(ステップS28:注入ノズル離脱工程)。また、主制御部66は注排口封止制御機能65により注入口封止部510を動作させ、加圧溶着部511により注入口管部852を両側から加圧して挟んだ状態で加熱して溶着する(ステップS29:注入口部封止工程)。このとき注入口管部852の原料液Mが充填されている部分を溶着するとキャビティ90内に泡が入らないという点で好ましい。また、この注入口管部852を潰すことにより、排出管路21内の原料液Meの液面LSeが僅かに上昇する場合がある。なお、上記ステップS28とS29の順番は逆でもよいし、同時進行で行なってもよい。
注入口部封止後、主制御部66はノズル連結制御機能640により、排出ノズル連結部420を動作させ、排出ノズル23を上昇させて所定の待避位置まで移動させる。これにより排出ノズル23は排出口部84から離脱する(ステップS30:排出ノズル離脱工程、図8−6)このとき両バルブ14、24が閉じられているため、注入管路11内にある原料液Miおよび排出管路21内にある原料液Meはそのまま保持される。また、成形型700の排出口部84にある原料液Mの液面LSmは、排出ノズル23の先端23dがあった高さ位置とほぼ同じ高さに位置している。
排出ノズル23離脱後、主制御部66は注排口封止制御機能650により封止フィルム供給部52を動作させて熱接着層を備えた封止フィルム95を排出ノズル受部843の開口843cに供給する。そして、ヒータ51を封止フィルム95の上面から排出ノズル受部843の開口843cに押し当てて加熱することにより封止フィルム95が排出ノズル受部843の開口843cに接着されて排出口部84を封止する(ステップS31:排出口部封止工程、図8−7)。
排出口部84封止後、主制御部66は成形型保持機能63により成形型700を解放し搬送手段に受け渡す。これにより、成形型700は搬送手段により流入位置Pから搬出される(ステップS32:成形型搬出工程)。
原料液を注入する次の成形型が無い場合は注入工程を終了し、次の成形型が有る場合は、前記ステップS21〜S32の処理を注入する成形型が無くなるまで繰り返す。なお、2個目以降の成形型に原料液を注入する場合は、その前の成形型を注入したときに排出管路21内に流入した原料液Meが排出管路21の先端側に滞留保持された状態で、排出ノズル14と排出口部84との連結が行なわれる(ステップS23:ノズル連結工程、図8−8)。そして、両ノズル13、23連結後、排出バルブ24が開かれると、その排出管路21に滞留保持された原料液Meが自重により排出ノズル23の先端から吐出してキャビティ90に再注入される(ステップS24:排出バルブ開放工程、図8−9)。続いて、注入バルブ14が開かれると注入管路11から原料液Miが注入され原料液の注入が開始し、排出管路21から再注入された原料液Meと合わさる(ステップS25:原料液注入開始工程、図8−10)。
なお、上記例では、排出バルブ24を開いた後に注入バルブ14を開くことにより、排出管路21内に残留した原料液Meの成形型700への再注入を容易にしているが、原料液の特性によっては、両バルブ14、24をほぼ同時に開いても再注入に影響しない場合がある。その場合はステップS24およびS25の両バルブ14、24の開閉をほぼ同時に行なって作業時間を短縮してもよい。
以上の通り本発明の第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、成形型700から溢れ出た原料液Meが排出管路21に流入し次の成形型700への原料液注入時に再注入されるので、原料液Meの無駄を少なくすることができる。また、第1の実施の形態と同様に流入検知手段25により流入検知される位置P、流入検知手段25による流入検知から注入バルブ14閉止までのタイムラグ、原料液の注入流量等にかかわらず原料液注入完了後の成形型700内の原料液Mの液面LSmの位置を一定にすることができる。
1…注入装置、10…注入部、11…注入管路、13…注入ノズル、14…注入バルブ、20…排出部、21…排出管路、23…排出ノズル、24…排出バルブ、25…流入検知手段、30…成形型保持部、40…ノズル連結部(注入管、排出管路連結手段)、50…注排口封止部、60…制御部、70…成形型、83、85…注入口部、84…排出口部、90…キャビティ、100…注入装置、410…注入ノズル連結部(注入管路連結手段)、420…排出ノズル連結部(排出管路連結手段)、510…注入口封止部、520…排出口封止部、700…成形型、831…注入孔、841…排出孔。