JP5214946B2 - 布地の透け防止用着色剤組成物、当該着色剤組成物を用いた着色方法及び裏面が着色された布地 - Google Patents

布地の透け防止用着色剤組成物、当該着色剤組成物を用いた着色方法及び裏面が着色された布地 Download PDF

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Description

本発明は、透け防止機能付与を目的として布地の裏面を着色するための最適な着色剤組成物、当該着色剤組成物を用いた着色方法及び当該着色剤組成物によって裏面が着色された布地に関するものであり、具体的には白地又は淡色地の衣類(スカート、スラックス、白衣、水着等)の裏地を着色することによる布地の透け防止に関するものである。
白地又は淡色地の衣類を着用した場合、布地の光線の透過性が高いため、当該衣類の内側に着用した下着の色や形状、肌の色、体毛等が透けて見え美観上好ましくない。特に衣類が汗などの水分を含んだ場合にこの問題点が一層顕著になる。
上記の問題を解決するために、これまでは布地を厚くする方法、別の布を裏地として用いる方法等が図られてきた。
しかし、これらの方法は布地本来の風合いを損なうという欠点がある。特に布地が薄地である場合には、布地が本来有する特性を大きく減ずることになり不適当である。更に布地が白地や淡色地であった場合には、その厚みを厚くしても透け防止効果が不十分であったり、裏地の色が表面に映ってしまうなど満足するものではなかった。
これらの改善策として、布地裏面に染料の光吸収層を設けることで光線の透過を抑制し、透けを防止する方法が開示されている(特許文献1)。
しかしながら、色材として染料を用いているため、汗等の水分により染料が溶出し、肌や下着が汚染するという問題が生じる。
また、染料による染色性は、染料と布地の結合力(親和性)に支配されるため、素材に対して染色性の良好な染料の選択が必須である。そのため異種素材の混紡に対しては、一様な染色が難しい。これを解決するために染色工程を複数回行う方法も考えられるが、製造コストが増加するなどの問題がある。
更に、染料は布地に対する浸透性が高いため、布地の裏面表層のみを着色することは困難である。特に布地が薄かったり、白地や淡色地であれば、その困難性が一層増大する。そのため乾式転写法や湿式転写法等が用いられているが、染色の再現性や工程の単純化によるコスト低減を考慮すれば、布地に対して直接着色する方法が望ましい。
このような点から、顔料による着色が求められるが、布地表面に顔料を塗布したのみでは、衣類が肌や下着などと擦れた場合に顔料が剥離したり、顔料を布地に固着する成分による風合いの低下などの問題が生じる。
特開昭55−62283号公報
本発明の目的は、布地の透け防止用着色剤組成物、当該着色剤組成物を用いた着色方法及び裏面が着色された布地を提供することである。特に、色材溶出による汚染が少なく、摩擦に対する堅牢度が高く、風合いの低下が少なく、素材と色材との選択性に優れ、染色工程の単純化が可能な、着色剤組成物、着色方法及び裏面が着色された布地を提供することである。
本発明者は、鋭意検討した結果、顔料をポリマー粒子分散体とともに布地の裏面に着色することにより、上記課題が達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下に示す着色剤組成物、それを用いた着色方法、及びそれにより着色した布地を提供するものである。
1.透け防止用着色剤組成物であって、組成物全量に対して
・0.002質量%から1質量%の顔料、
・ポリマー粒子分散体、及び
・水
を含有する透け防止用着色剤組成物。
2.ポリマー粒子分散体がポリウレタン、ポリエステル、及びポリアクリルからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことを特徴とする上記1記載の透け防止用着色剤組成物。
3.ポリマー粒子分散体のガラス転移温度が20℃以下であることを特徴とする上記1又は2記載の着色剤組成物。
4.顔料の平均粒子径が150nm以下であることを特徴とする上記1から3のいずれか一つに記載の着色剤組成物。
5.顔料が黒色顔料であることを特徴とする上記1から4のいずれか一つに記載の着色剤組成物。
6.上記1から5記載のいずれか一つに記載の透け防止用着色剤組成物を用いて布地の裏地を着色する方法。
7.少なくとも
・顔料、及び
・ポリマー粒子分散体成分
により裏面が着色され、その明度が40〜93(L*;D65−2°)であることを特徴とする布地。
8.ポリマー粒子分散体成分がポリウレタン、ポリエステル、及びポリアクリルからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことを特徴とする上記7記載の布地。
9.ポリマー粒子分散体のガラス転移温度が20℃以下であることを特徴とする上記7又は8記載の布地。
10.顔料の平均粒子径が150nm以下であることを特徴とする上記7から9のいずれか一つに記載の布地。
11.顔料が黒色顔料であることを特徴とする上記7から10のいずれか一つに記載の布地。
12.表地が白又は淡色により着色されていることを特徴とする上記7から11のいずれか一つに記載の布地。
13.上記7から12のいずれか一つに記載の布地を使用した衣類。
本発明による透け防止加工を施した布地は、着色剤として顔料を用い、当該顔料を布地に固着させるためのポリマー粒子を用いているため、
・布地が白色や淡色であっても十分な透け防止効果を発現させることができる。
・色材が布地の表面方向に浸透することがないので、裏面の色が表面に映ること(以下色映りという)がない。
・染料のように水分による色材の溶出がない。
・擦過による色材の剥離が発生しない。
・布地の風合いを低下させない。
・混紡布地に対しても単一の着色剤組成物で、一回で染色可能である。
・転写工程が不要で染色工程を単純化できる。
という優れた利点がある。
このように本発明による透け防止加工を施した布地が、従来のものと比較して優れている理由としては、以下のことが考えられる。
従来、染料を使用して布地裏面を染色した場合は、染料が着色剤組成物の溶媒成分に溶解しているため、その溶媒成分とともに布地裏面から表面方向に浸透しやすく、色映りが発生し好ましくない。特に布地が白地や淡色地であったり、薄手であった場合にはより顕著となる。この問題を解決するためには、色材成分をできるだけ浸透させずに、裏面の表層部分に留めさせなければならない。
これに対して、本発明の着色剤組成物及び着色方法においては、着色剤組成物の溶媒に対して不溶性な顔料を使用しているので、溶媒成分に引っ張られることなく布地裏面の表層に色材が残存しやすい。更にはポリマー粒子分散体が配合されているので、繊維間の空隙部に対して目止め効果が働く。これらの相乗作用により、色材が裏面の表層部分に留まるため白地や淡色地、薄手の布地を着色しても色映りが発生しないという特性を有している。
また、表層部分に顔料が存在しても、溶媒成分の蒸発に伴いポリマー粒子が被膜化することで顔料を布地に対して強固に固着することができるため、摩擦に対する堅牢性や耐水性が発現される。
さらに、ポリマー粒子による固着は、布地素材との親和性に影響を受けないため、染料による染色のように素材と色材の親和性を考慮することなく、混紡素材に対しても単一の着色剤組成物で、一回での着色処理が可能となる。
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明において「布地」とは、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、あるいはこれらの混合物からなる、糸、布帛、織物、不織布、及びこれらから製造された製品を意味するものである。
また、「布地の裏面」とは、例えば衣類においては身体側の面を意味し、「表面」とはその反対の面を意味する。衣類以外の用途、例えば物品の包装や表装に用いる場合には、「裏面」は内容物側の面を意味し、「表面」とはその反対の面を意味する。
本発明の着色剤組成物に用いる顔料としては、水及び水性溶媒に分散する全ての無機系及び有機系顔料が挙げられる。また、樹脂粒子を染料や顔料で着色した擬似顔料も使用可能である。
無機系顔料としては、例えば、金属粉、金属含有化合物粉等が、また、有機系顔料としては、例えば、アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキ顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料等が挙げられる。
より具体的には、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、チタンブラック、鉄黒、黒鉛、銅クロムブラック、コバルトブラック、べんがら、酸化クロム、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、群青、バライト粉、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等の無機系顔料、アニリンブラック、ペリレンブラック、シアニンブラック、樹脂粒子を黒色の染料又は顔料で着色した擬似顔料、C.I.ピグメントブルー1、同ブルー15、同ブルー17、同ブルー27、同レッド5、同レッド22、同レッド38、同レッド48、同レッド49、同レッド53、同レッド57、同レッド104、同レッド146、同レッド245、同イエロー1、同イエロー3、同イエロー4、同イエロー12、同イエロー13、同イエロー14、同イエロー17、同イエロー34、同イエロー55、同イエロー74、同イエロー83、同イエロー95、同イエロー166、同イエロー167、同オレンジ13、同オレンジ16、同バイオレット1、同バイオレット3、同バイオレット19、同バイオレット23、同バイオレット50、同グリーン7等の有機系が挙げられる。本発明においては、上記顔料を単独で、または2種類以上を混合し使用することができる。
本発明における着色剤組成物中の顔料粒子の平均粒子径は、好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下であり、よりさらに好ましくは100nm以下である。平均粒子径が200nm以下であれば、染色後の布地表面の凹凸を小さくすることができるため、擦過による剥離を低減し、摩擦堅牢度を一定以上のレベルにすることが可能となる。また平均粒子径が10nm未満の顔料粒子が存在すると、発色濃度、耐光性等が低下する傾向がある。従って、本発明に用いる顔料粒子の平均粒子径は、200nm〜10nm、好ましくは150〜10nmであり、さらに好ましくは100〜20nmである。
顔料の平均粒子径を200nm以下に調整する手段としては、上記顔料に、水及び水性溶媒、必要に応じて湿潤剤、濡れ剤、分散安定剤等を添加し、一般に用いられる剪断力付与型分散機を用いて混合する方法が挙げられる。例えば、攪拌型のデゾルバー、ホモミキサー、ヘンシェルミキサー、メディア型のボールミル、サンドミル、アトライナー、ペイントシェーカー、メディアレス型の3本ロール、5本ロール、ジェットミル、ウォータージェットミル、超音波分散機等を用いて所定の時間処理することで、目的の平均粒子径の顔料粒子を得ることができる。
又、分散機で顔料を粉砕分散した後、必要に応じて粗大粒子、微細粒子を除去することにより、所望の平均粒子径を有する顔料粒子をより確実に得ることができる。目的外粒子の除去方法としては、静止沈降法、遠心沈降法、フィルター除去法等が挙げられる。
本発明に用いられる顔料粒子は微細であり、外的要因、着色加工時等に再凝集して、目的の性能を低下させてしまうおそれがある。この再凝集を防止するため、顔料粒子の表面を親水性処理しておくことが好ましい。
このような親水性処理としては、例えば、顔料粒子を界面活性剤や水溶性ポリマーを含む分散剤で処理して、粒子表面に水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の親水基を付与することにより安定性を向上させる方法が挙げられる。界面活性剤としては、アルキルカルボン酸エステル、アルキル硫酸エステル、アルキルリン酸エステル等のアニオン系界面活性剤、脂肪族アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、アルキルエーテル、脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤が挙げられる。また水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アクリル酸(例えば、低分子のポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等)、ポリマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等とスチレンのコポリマー、ポリアミド、ロジン変性マレイン酸等の高分子系分散剤が挙げられる。
さらに、水酸化ナトリウム等によるアルカリ処理、クロム酸等の酸化剤による処理、低温プラズマ処理等のトポケミカル的な手法を用いて、顔料表面を親水性処理することができる。
親水性処理により付与できる親水基の中でも、水酸基、カルボキシル基は、繊維構造体へ着色時にポリマー粒子及び架橋剤との架橋反応が期待でき、堅牢度向上効果が期待できる点で特に好ましい。
本発明における着色剤組成物中の顔料粒子の含有量は、組成物全体に対して0.002〜1質量%、好ましくは0.004〜0.5質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.1質量%である。0.002質量%未満では良好な透け防止効果を得られない傾向があり、逆に1質量%を超えると表面に色が映ってしまい好ましくない。
本発明に用いるポリマー粒子は、水及び水性溶媒中で分散することができるものである。その平均粒子径は500nm以下、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。ポリマー粒子の平均粒子径が500nmを超えると、形成される被膜層が嵩高くなり、バインド力が低下して摩擦堅牢度が低下する傾向がある。逆に平均粒子径が10nm未満であると、顔料を裏面表層付近に留めさせる効果が低減したり、粒子同士の凝集により組成液の保存安定性が低下する傾向がある。従って、本発明に用いるポリマー粒子の平均粒子径は、500nm〜10nm、好ましくは200〜10nmであり、さらに好ましくは100〜20nmである。特にポリマー粒子の平均粒子径を100〜10nmに調整すると、顔料を布地表層に好適に留めさせながら、布地の風合いを損なわず、堅牢性を付与することが可能となる。
本発明に用いるポリマー粒子は、ガラス転移温度が好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下のものが望ましい。ポリマー粒子のガラス転移温度が20℃を超えると、室温(20℃±10℃)の作業環境下で布地に本発明の着色法を行った場合、ポリマー粒子の被膜化が不十分で、被膜層に空隙部が多数構成され、この空隙部はその後に加熱しても残存し、堅牢性が低下する原因となる。ポリマー粒子のガラス転移温度が20℃以下であれば、室温において均一な被膜化が可能で、良好な堅牢性が得られる。
本発明に用いるポリマー粒子としては、上記物性を満たすものであれば特に制限はなく、一般に入手できるポリマー、例えば、アクリルポリマー、アクリルスチレンコポリマー、アクリルウレタンコポリマー、アクリルウレタンコポリマー、アクリルマレイン酸コポリマー、アクリルブタジエンコポリマー、アクリル酢酸ビニルコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。これらの中でもポリアクリル、ポリウレタン、ポリエステルから選択される少なくとも一種を主成分とするポリマーが布地の風合い、堅牢性の点から好ましい。更に好ましくはポリウレタン若しくはポリエステルを主成分とするポリマーである。
本発明に用いるポリマー粒子は、エマルション、ディスパーション等の形態で使用することができる。その製法は特に限定されないが、遊離の界面活性剤成分が少ない点及びポリマーの親水性の両点から、転相乳化によって得られるコロイダルディスパージョンが好ましい。このようなポリマー粒子を使用すると、比較的堅牢性の高い被膜を得ることができる。
本発明の着色剤組成物中のポリマー粒子の含有量は、ポリマー粒子成分として組成物全体に対して好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。0.5質量%未満では満足する堅牢性が得られない傾向があり、20質量%を超えると布地の風合いが損なわれる傾向がある。
本発明において布地を染色する際の特に好ましい染色方法は捺染着色方法である。
この場合、着色剤組成物の粘度を転写調整版が正常に機能する粘度に調整する必要がある。例えば、シルクスクリーン版の場合、使用されるスクリーンのメッシュから漏れ出ない程度の粘度調整が必要となる。
例えば、目開きが大きい60メッシュのシルクスクリーン版を用いた場合、通常83μmの線径のフィラメントが使用され、開口率が65%、340μmの目開きがあり、透過容積55cm3/m2でも着色剤が浸透しない粘度が必要となる。
上記方式における着色剤組成物の好ましい粘度は、5000mPa・s以上、好ましくは20000mPa・s以上に調整することが望ましい。しかし、粘度が200000mPa・sを超えると、粘度が高すぎるためにスクリーン版メッシュに着色剤組成物が詰まり、着色が行えない傾向がある。従って、目開きが大きい60メッシュのシルクスクリーン版を用いる場合に使用する着色剤組成物の粘度は、好ましくは5000〜200000mPa・s、さらに好ましくは20000〜100000mPa・sである。
目開きが細かい120メッシュのシルクスクリーン版を用いた場合、通常48〜83μmの線径のフィラメントが使用され、開口率が49%、152μmの目開きがあり、透過容積39cm3/m2でも着色剤組成物が浸透しない粘度が必要となり、又、スキージで圧力を加えた際に良好なスクリーンメッシュ通過が必要となる。浸透防止には3000mPa・s以上、好ましくは、15000mPa・s以上の粘度となるように調整することが望ましい。しかし、スキージ圧力時の粘度が150000mPa・sを超えると、粘度が高すぎてスクリーン版メッシュに着色剤組成物が詰まり、着色が良好に行えない傾向がある。従って、目開きが細かい120メッシュのシルクスクリーン版を用いる場合に使用する着色剤組成物の粘度は、好ましくは3000〜150000mPa・s、さらに好ましくは15000〜80000mPa・sである。
高品位、高精度捺染着色を目的とした230メッシュのシルクスクリーン版を用いた場合、通常48〜67μmの線径のフィラメントが使用され、開口率が28%、65μmの目開きがあり、透過容積22m3/m2でも着色剤組成物が浸透しない粘度が必要となり、又、スキージで圧力を加えた際に良好なスクリーンメッシュ通過が必要となる。浸透防止には1000mPa・s以上、好ましくは、2000mPa・s以上の粘度となるように調整することが望ましい。しかし、スキージ圧力時の粘度が120000mPa・sを超えると、粘度が高すぎてスクリーン版メッシュに着色剤組成物が詰まり、着色が良好に行えない傾向がある。従って、目開きがさらに細かい230メッシュのシルクスクリーン版を用いる場合に使用する着色剤組成物の粘度は、好ましくは1000〜120000mPa・s、さらに好ましくは2000〜70000mPa・sである。
このように、本発明の着色剤組成物を用いて布地を捺染法で着色する場合は、使用するシルクスクリーン版のメッシュ数、目開き数、透過容積数によって粘度を適宜調整する必要がある。これにより高品位、高精度な着色を行うことができる。
本発明の着色剤に用いるスキージは、シルクスクリーン版上の着色剤組成物に圧力を加え、スクリーンメッシュ中の間隙を良好に通過させ、又、通過不必要な着色剤組成物は良好に掻き取る必要があり、このため適度な弾性が要求される。スキージのショアー硬度が35度以下であると強度が不足し、直ぐに摩耗してしまい、ショアー硬度が91度以上であると弾性が不足し、良好に着色剤組成物を掻き取れないという問題がある。従って本発明の着色法に用いるスキージのショアー硬度は、さらに好ましくは40〜80度であり、この範囲の硬度のものが、物性が高品位で、耐久性がある。スキージの構成材料としては、ショアー硬度物性を満たしていれば、一般に入手できる弾性成型物及び樹脂を制限なく使用することができる。例えば、アクリルゴム、アクリルウレタンゴム、アクリロニトリルゴム、アクリルブタジエンゴム(アクリル酸又はメタクリル酸ブタジエンゴム)、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、エポキシエラストマー、フッ素ゴム等を使用することができる。
上記に例示した着色方法以外にも、従来公知のインクジェットプリンターによる着色も可能である。この場合、本発明の着色剤組成物をインクカートリッジに充填して着色を行う。インクヘッドから吐出させるためには、着色剤組成物の粘度を50mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下、さらに好ましくは10mPa・s以下に調整する必要がある。粘度が50mPa・sを超えると吐出が不安定となる傾向がある。
インクジェット方式による着色法には、着色層が比較的薄く一様に形成されるため、布地の風合いを損なうことが少ないというメリットがある。
本発明の着色剤組成物を所望の粘度にするためには、種々の増粘剤を使用することができる。このような増粘剤としては、例えば、合成高分子、セルロース及び多糖類、ターペンエマルションからなる群から選ばれる少なくとも一種(各単独又はこれらの2種以上の混合物)が挙げられる。
合成高分子としては、例えば、ポリアクリル酸類、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリルアマイド等が挙げられる。セルロースとしては、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。多糖類としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、ローカストビーンガム、ペクチン等が挙げられる。ターペンエマルションとしては、ミネラルターペンと水を非イオン系界面活性剤で乳化させたムース調のエマルション等が挙げられる。
本発明の着色剤組成物は、溶媒として水(水道水、蒸留水、精製水、イオン交換水、純水、海洋深層水等)を用いる。また、水に加え、さらに水以外の溶媒として、保水性の付与、顔料及びポリマー粒子の安定性向上等の点から、水に相溶性のある極性基を有する水性溶媒を使用することが好ましい。このような水性溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、ピロリドン等が挙げられる。これらの水性溶媒の他、流動パラフィン、鉱物油、工業用ガソリンの様な非水性溶媒であっても、乳化剤等で水と混合分散できる溶媒であれば使用可能である。これらは単独で又は2種以上混合して用いることができる。
本発明の着色剤組成物中の水の含有量は、好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは30〜80質量%である。
本発明の着色剤組成物において、ポリマー粒子を単独で使用した場合には、被膜強度、堅牢度が不足することがある。この場合は、顔料やポリマー中の水酸基、カルボキシル基等と架橋反応する架橋剤を添加し、堅牢度を向上させることができる。
利用できる架橋反応としては、メチロール基と水酸基の脱水縮合反応、グリシジル基と水酸基とのエポキシ開環重合反応、イソシアネート基と水酸基、カルボキシル基とのウレタン反応、オキサゾリン基とカルボキシル基とのアミドエステル反応、カルボジイミド基と水酸基及びカルボキシル基とのカルバモイルアミド反応及びイソウレア反応、シラノール基と水酸基の縮合脱水反応、金属アルコキシド基と水酸基による脱水縮合反応、多官能メチロール基と水酸基のメラミン縮合反応、ダイアセトンアクリルアミドとヒドラジドと水酸基による還元脱水反応等が用いられる。これらの水性架橋剤を着色剤組成物中に配合し、加熱すると、顔料及びポリマー粒子の水酸基、カルボキシル基が架橋して三次元ネットワーク構造が形成され、堅牢度が向上する。
本発明の着色剤組成物中の架橋剤の含有量は、好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.2〜2.5質量%である。
本発明の着色剤組成物は、上記以外の成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、従来の着色剤組成物に汎用されている防腐剤、防黴剤、金属塩封鎖剤、pH調整剤、潤滑剤、湿潤剤等の添加物(任意成分)を含有することができる。
防腐剤や防黴剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2,3,5,6−テトラクロロ−4(メチルスルフォニル)ピリジン、安息香酸ナトリウム等、安息香酸やソルビタン酸やデヒドロ酢酸のアルカリ金属塩、ベンズイミダゾール系化合物等が挙げられる。
金属塩封鎖剤としては、ベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、トリルトリアゾール、サポニン類が挙げられる。
pH調整剤としては、尿素、アンモニア水、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、トリポリリン酸ナトリウム等のリン酸のアルカリ金属塩、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。
湿潤剤、潤滑剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリアルキレングリコール誘導体、脂肪酸アルカリ金属塩、シリコンオイルエマルション、ジメチレンポリシロキサンのポリオキシエチレングリコール付加物等のポリエーテル変性シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン粉末、フッ素系界面活性剤、フッ素変性オイル、アセチレングリコール等が挙げられる。
本発明の着色剤組成物を用いて捺染法で着色した布地は、着色剤である顔料が、被膜化したポリマーにより布地表面に固着されているため、着色乾燥後、余分な色材、糊剤、添加剤等を水洗浄により除去する工程を必要としない。また、本発明の着色剤を用いた着色法では、繊維素材毎に適合した色材を選択したり、布地に浸透させるための加温、加圧、攪拌条件を調整する必要もない。従って、本発明の着色法によれば、混紡素材に対しても単一の着色剤を用いて一回の着色処理で着色が可能であり、本発明の着色法は、作業効率、エネルギー効率、水資源効率に優れ、環境汚染等の問題もない優れた着色方法であるといえる。
次に、本発明を顔料調製例、実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例等に限定されるものではない。
〔顔料調製例1〕 ペイントシェーカーでの顔料調製例(顔料1)
カーボンブラック(プリンテックス#25)(*1) 15.0質量部
エチレングリコール 5.0質量部
スチレンマレイン酸樹脂(SMA−1000)(*2) 10.0質量部
アセチレングリコール104H(*3) 0.2質量部
水 69.8質量部
上記成分を上記の通り秤量し、デゾルバーで攪拌し均一化した後、ビーズ容積充填率60%の条件下で上記配合を8時間ペイントシェーカーで攪拌処理した。この顔料調製例1の顔料粒子の平均粒子径を、NICOMP 380ZLS(野崎産業株式会社製)を使用し、NIST(National Institute of Standards and Technology)に認定されたDuke Scientific Corporation 製100nmポリスチレン粒子(3100A)及び300nmポリスチレン粒子(3300A)を使用してレーザー回折法で測定した結果、90nmであった。
〔顔料調製例2〕
上記の顔料調製例1と同様の配合について、ペイントシェーカーの攪拌時間を5分間として処理した。得られた顔料調製例2の顔料粒子の平均粒子径を上記同様に測定した結果、250nmであった。
〔元糊処方例1〕(増粘剤1)
水 98.0質量部
KELZAN(*4) 2.0質量部
上記成分を上記の通り秤量し、ホモミキサーで混合攪拌することで増粘剤を作成し、実施例及び比較例作成時の増粘剤として使用した。
〔元糊処方例2〕(増粘剤2)
水 37.0質量部
ペカゾール3040(*5) 60.0質量部
Hi−ol PKC−500(*6) 1.0質量部
Bismol ET−55(*7) 2.0質量部
上記成分を上記の通り秤量し、ホモミキサーで乳化処理し、ムース状の増粘剤を作成し、実施例及び比較例作成時の増粘剤として使用した。
〔着色剤組成物の調製方法〕
後記表1から3の各成分を秤量し、デゾルバーで約2時間攪拌することで着色剤組成物を調製した。
〔表面着色用白色組成物の調製方法〕
布地の表面を白色に着色する場合は、着色剤組成物を用いた。
水 21.0質量部
タイメークR550(*8) 3.0質量部
ジョンクリルJ−61J(*9) 3.0質量部
増粘剤1 15.0質量部
増粘剤2 58.0質量部
(着色方法)
得られた各実施例及び比較例の着色剤組成物を230メッシュのシルクスクリーン版を用いて上述の方法で着色した。
(明度確認試験)
着色処理した布地について、裏面(着色面)の明度を分光測色計 MSC−IS-2B(スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。明度はL***表色系におけるL*値であり、光源はD65の2°とした。
(透け防止確認試験)
着色処理した布地について、その透け防止性を以下の手順に従って測定及び評価した。
1)布地裏面側に所定の色に着色された試験片を貼り付け、布地の表面側の反射率を測定した。
2)同様に布地裏面側に白色の試験片を貼り付け、布地の表面側の反射率を測定した。
3)所定の波長における反射率の差(上記2から1を引いた差)を算出した。
上記で算出した値が小さいほど透け防止性能が高いことを示す。なお、反射率の試験については、UVPC−2400PC(株式会社島津製作所社製)を用いた。
(表面からの色映り性)
着色処理した布地について、表面の明度を分光測色計 MSC−IS-2B(スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。
(風合い確認試験)
着色処理した布地を、処理前の原反と比較し、その風合いの変化を、指による感覚により判定する。
○:全く変化無し、 △:少し堅めの風合い、 ×:風合い変化が明白
(摩擦堅牢度試験)
着色処理した布地を、JIS L 0849に基づいた試験方法及び判定基準で判定した。乾式及び湿式摩擦堅牢度の評価基準はJIS L 0801の9(染色堅牢度の測定)の基準を採用した。具体的には以下の手順に従った。
摩擦試験機FR−2型(スガ試験機株式会社製)を用いて規定の方法に基づき、試験片(綿 ツイル)と摩擦用白綿布(綿 金巾)を互いに摩擦し、摩擦用白綿布の着色の程度を汚染用グレースケールと比較し、判定した。
JIS L 0801:染色堅牢度試験方法通則
JIS L 0803:染色堅牢度試験用添付白布
JIS L 0805:汚染用グレースケール
結果を表1〜表6に示す。



表1
Figure 0005214946
表2
Figure 0005214946






表3
Figure 0005214946
表4
Figure 0005214946





表5
Figure 0005214946
表6
Figure 0005214946
使用した材料*1〜*16は、下記の通りである。
*1 プリンテックス#25(黒顔料:デグサジャパン株式会社)
*2 SMA−1000(分散剤樹脂:荒川化学工業株式会社製)
*3 アセチレングリコール104H(湿潤剤:日信化学工業株式会社製)
*4 KELZAN(キサンタンガム:三晶株式会社製)
*5 ペガゾール3040(ミネラルスピリット、エクソンモービルコーポレーション製)
*6 Hi−ol PKC−500(乳化剤:林化学工業株式会社製)
*7 Bismol ET−55(乳化増粘剤:東邦化学工業株式会社製)
*8 タイメークR550(酸化チタン:石原産業株式会社製)
*9 ジョンクリルJ−61J(水溶性アクリル樹脂:ジョンソンポリマー社製)
*10 U−205(ウレタン粒子分散体:alberding社製、Tg<10℃)
*11 SF−700(ウレタン粒子分散体:第一工業製薬社製、Tg 6℃)
*12 SF−110(ウレタン粒子分散体:第一工業製薬社製、Tg 48℃)
*13 ジョンクリル7100(スチレンアクリル粒子分散体:ジョンソンポリマー社製、Tg −10℃)
*14 ジョンクリル840(スチレンアクリル粒子分散体:ジョンソンポリマー社製、Tg 16℃)
*15 ジョンクリル734(スチレンアクリル粒子分散体:ジョンソンポリマー社製、Tg 30℃)
*16 ジョンクリル780(スチレンアクリル粒子分散体:ジョンソンポリマー社製、Tg 92℃)
上記表1及び2には本発明の着色剤組成物に関する実施例を、表3には着色剤組成物の比較例を、表4及び5には本発明の布地の実施例を、表6には布地の比較例を示す。
表4に示されるように、本発明の実施例1〜6で得られた布地は、裏面の明度が高くても、すなわち濃色での着色をしなくても、反射率差が小さい、すなわち透け防止効果が高いことがわかる。また、表面の明度が高いことから色映りが抑制されていることが明らかである。なお実施例6は布地の表面を上記表面着色用白色組成物で着色処理を行った布地の例である。実施例3と比較して、表面の明度が上がっていることから白色度が向上していることがわかる。さらに、反射率差の値が減じていることから、透け防止効果が向上していることがわかる。
実施例7〜14は、摩擦堅牢度を確認する目的で、やや濃色の着色を行っているが、十分な摩擦堅牢度を有していることが明らかである。また、摩擦堅牢度がガラス転移温度に依存することが示唆されている。実施例14は粒子径がやや大きめの顔料を使用しているため、実施例7と比較して摩擦堅牢度がやや低下していることがわかる。
比較例1及び3は、裏面の明度が本発明の上限を超えた例であるが、反射率差が大きく、透け防止効果が十分でないことを示す。
比較例2は、裏面の明度が本発明の下限未満の例であるが、透け防止効果は高いものの、表面の明度が低く、表映りしていることがわかる。
比較例4は、ポリマー粒子分散体に置換して水溶性樹脂ポリマーを用いた例であるが、摩擦堅牢度に劣ることがわかる。

Claims (13)

  1. 布地の透け防止用着色剤組成物であって、組成物全量に対して
    ・0.002質量%から1質量%の顔料(酸化チタンを除く)、
    ・平均粒子径が500nm〜10nmであるポリマー粒子分散体、及び
    ・水
    含有し、
    前記ポリマー粒子分散体が、アクリルポリマー、アクリルスチレンコポリマー、アクリルウレタンコポリマー、アクリルマレイン酸コポリマー、アクリルブタジエンコポリマー、アクリル酢酸ビニルコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、及びポリエステルからなる群より選択される少なくとも一種の成分を含む布地の透け防止用着色剤組成物。
  2. ポリマー粒子分散体がポリウレタン、ポリエステル、及びポリアクリルからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことを特徴とする請求項1記載の着色剤組成物。
  3. ポリマー粒子分散体のガラス転移温度が20℃以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の着色剤組成物。
  4. 顔料の平均粒子径が150nm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の着色剤組成物。
  5. 顔料が黒色顔料であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の着色剤組成物。
  6. 請求項1から5のいずれか1項記載の着色剤組成物を用いて布地の裏面を着色する方法。
  7. 少なくとも
    ・顔料(酸化チタンを除く)、及び
    ・平均粒子径が500nm〜10nmであるポリマー粒子分散体成分
    により裏面が着色され、その明度が40〜93(L*;D65−2°)であることを特徴とし、
    前記ポリマー粒子分散体が、アクリルポリマー、アクリルスチレンコポリマー、アクリルウレタンコポリマー、アクリルマレイン酸コポリマー、アクリルブタジエンコポリマー、アクリル酢酸ビニルコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、及びポリエステルからなる群より選択される少なくとも一種の成分を含む布地。
  8. ポリマー粒子分散体成分がポリウレタン、ポリエステル、及びポリアクリルからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことを特徴とする請求項7記載の布地。
  9. ポリマー粒子分散体のガラス転移温度が20℃以下であることを特徴とする請求項7又は8記載の布地。
  10. 顔料の平均粒子径が150nm以下であることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項記載の布地。
  11. 顔料が黒色顔料であることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項記載の布地。
  12. 表地が白又は淡色により着色されていることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項記載の布地。
  13. 請求項7から12いずれか1項記載の布地を使用した衣類。
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