JP5212974B2 - 熱硬化性樹脂の可溶化処理法およびその処理に用いる溶媒 - Google Patents
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Description
また、処理液中でエポキシ樹脂硬化物に超音波振動を与えることによりエポキシ樹脂硬化物を分解または溶解する技術が報告されているが(特許文献3)、この技術では超音波振動を与える点が要件となってしまう。
上記の実情に鑑み、本発明の課題は、改善された熱硬化性樹脂の可溶化方法を提供することにある。また、バイオマス、特に廃棄物系バイオマスを利用した熱硬化性樹脂の可溶化方法を提供することにある。
また、請求項1の発明は、バイオマスを不活性ガス雰囲気下加熱処理して得られるタールを蒸留処理するか、あるいはバイオマスを不活性ガス雰囲気下加熱処理して得たタールを200℃以上で加熱処理して沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去して得た残渣からなるタールであって、下記沸点が200℃以上の成分からなるタールを、熱硬化性樹脂を含有する部品と接触させ、200℃〜300℃で加熱処理することを特徴とする熱硬化性樹脂の可溶化処理法に関する発明でもある。
200℃以上の所定温度で30分間加熱したときにタールの重量減少が加熱処理前のタールを基準として10重量%以下であるタール。
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかの発明において、沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去して得た残渣からなるタールであって、沸点が200℃以上の成分からなるタールにアルカリ成分を配合することを特徴とする。
請求項6の発明は、上記請求項1〜5のいずれかの発明において、熱硬化性樹脂を含有する部品を0.1MPa〜5.0MPaの圧力雰囲気下で加熱処理することを特徴とする。
本発明でいうバイオマスとは、固体有機物ということができ、また、国連食糧農業機関(FAO)による、麦わら、サトウキビ、米糠、草木等の農業系有機物;製紙廃棄物、製材廃材、除間伐材、薪炭林等の林業系有機物;家畜廃棄物等の畜産系有機物;水産加工残滓等の水産系有機物;生ゴミ、ゴミ由来固形化燃料、庭木、建設廃材、下水汚泥等の廃棄物系等のいずれかに分類される有機物ということもできる。これらの中では、麦わら、サトウキビ、米糠、草木等の農業系有機物;製紙廃棄物、製材廃材、除間伐材、薪炭林等の林業系有機物;生ゴミ、ゴミ由来固形化燃料、庭木、建設廃材、下水汚泥等の廃棄物系等のいずれかに分類される有機物が好ましい。さらには、製紙廃棄物、製材廃材、除間伐材、薪炭林等の林業系有機物に分類される有機物に庭木、建設廃材等を含めた木質系バイオマスがとくに好ましい。
これらバイオマスを乾燥処理、精製処理、切断・破砕処理など各種前処理を施した後に使用することが好ましい。例えば、木質系バイオマスでは、数cm〜数十cm程度の固形片にしておくことが有効である。また、さらに細かく粉砕してもよい。
本発明においては、上記バイオマスを不活性雰囲気下にて加熱処理することによりバイオマスからタールを得ることができる。これを言い換えると、バイオマスを乾留して乾留液を得ることが重要であるともいえる。
本発明では、加熱炉内にバイオマスを投入し、バイオマスからタール状物を得る温度まで上昇させ、ついで当該温度にて加熱処理することになる。
上記加熱条件は、用いるバイオマスの種類、性状、量などにより変動するので好ましい条件を一概に規定することはできない。強いて記載するなら、例えば、50℃〜150℃/時の速度で上昇させ、ついで200℃〜600℃で30分〜150分加熱処理する条件を挙げることができるが、その範囲に限定されない。
沸点200℃以上の成分からなるタールを使用することにより、常圧で還流器を付けて反応器内を200℃以上に加熱することができるので有利である。ここで、沸点が200℃以上の成分からなるタールとは、200℃以上の所定温度で30分間加熱したときにタールの重量減少が加熱処理前のタールを基準として所定量%以下であるタールをいう。前記所定温度の上限はタールが熱分解されない温度である。この温度は測定するタールにより変動するので一概に規定することができない。前記所定量は、熱硬化性樹脂の可溶化処理と関係するので一概に規定しにくいが、例えば10重量%以下とすることができ、5重量%以下の方が好ましく、3重量%以下の方がより好ましい。
より具体的に説明すると、沸点が200℃以上の成分からなるタールは、例えば、タール10gを200℃で攪拌しながら30分間加熱したときにタールの重量減少が約10重量%以下のタールを示すことができる。また、タール10gを200℃で攪拌しながら30分間加熱したときにタールの重量減少が約5重量%以下のタールが好ましい。さらに、タール10gを200℃で攪拌しながら30分間加熱したときにタールの重量減少が約5重量%以下のタールがより好ましい。
ここでいうタールを所定温度で30分間加熱する条件としては、例えば、タール10gを300mlのフラスコに収め、200℃/30分のスピードで200℃に到達するまで加熱し、ついで、200℃で30分間加熱処理する条件を例示できる。なお、重量減少は通常の測定法で知ることができる。
前記沸点が200℃以上の成分からなるタールは、例えば、タールを蒸留することによって得ることが出来る。また、バイオマスから得たタールを200℃以上で加熱処理して留出物を留出除去して得ることもできる。
なお、本発明では熱硬化性樹脂を含有する部品の共存下にて上記加熱処理を行ってもよい。また、アルカリ成分の共存下にて上記加熱処理を行ってもよい。
本発明では、上記熱硬化性樹脂には、慣用の配合剤が配合されていてもよい。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、充填材などを例示することができる。
強いて記載するなら、熱硬化性樹脂を含有する部品1に対して、タールを1〜20倍(重量比)となるよう調整して、加熱処理する方法が挙げられる。加熱処理するときの温度は、例えば200℃〜300℃が挙げられるが、その範囲に限定されない。接触時間は、例えば30分〜150分が挙げられるが、その範囲に限定されない。接触させるときの圧力は、常圧でよいが、例えば0.1MPa〜5.0MPa程度とすることが好ましい。
(実施例1)杉チップのタール(1)によるエポキシ樹脂の可溶化
(タールの調製)
杉チップ(10cm×10cm×2mm)100kgを図1に示す装置のレトルト内に投入し、1気圧窒素雰囲気下で前記レトルト内温度を540℃まで100℃/時の速度で昇温させ、同温度で1時間熱分解処理し、7.3kgのタールを得た(収率は7.3%)。得られたタールのうち、レトルトから得たタール(3)は1.0kg、ガス排出口に接続した冷却部から得たタール(1)は6.3kgであった。
タール(1)およびタール(3)のH/C値はそれぞれ2.4、1.0で、C/O値はそれぞれ1.1、0.2であった。
内容積300mLの丸型フラスコにエポキシ樹脂製プリント基板(0.5cm×0.5cm×1mm)2g、および上記タール(3)20gを加え、水酸化ナトリウムを0.2g添加し、マグネットスターラーで攪拌しながら、220℃まで昇温し、軽質留物を留出させ、220℃以上の沸点を有するタールを得た。
次に、前記丸型フラスコに冷却機を接続して溶媒を乾留させながら、220℃で120分間可溶化処理を行った。可溶化処理終了後、フラスコ内の可溶化処理物をろ過して、液体生成物と固体残渣に分離した。固体残渣は蒸留水およびテトラヒドロフラン中で洗浄した後、110℃で12時間減圧乾燥させて、1.62gの固体残渣を得た。なお、前記エポキシ樹脂製プリント基板2gは1.2gのガラス繊維を含んでいた。
エポキシ樹脂製プリント基板の可溶化率は48%であった。
なお、可溶化率は下記式により算出した。
可溶化率= 100−(C−B)/(A−B)×100
ただし、式中、Aはエポキシ樹脂製プリント基板重量、Bはエポキシ樹脂製プリント基板中に含まれるガラス繊維重量、Cは減圧乾燥残渣重量、
実施例1において、杉チップの代わりに杉背板(5cm×5cm×30cm)を用い、それ以外は実施例1と同様に操作し、3.5kgのタールを得た(収率は3.5%)。得られたタールのうち、レトルトから得たタール(4)は0.5kg、ガス排出口に接続した冷却部から得たタール(2)は3.0kgであった。
タール(2)およびタール(4)のH/C値はそれぞれ2.2、1.2で、C/O値はそれぞれ1.0、0.3であった。
杉チップのタール(3)の代わりに杉背板のタール(2)を用い、それ以外は実施例1と同様に操作し、1.75gの固体残渣を得た。
エポキシ樹脂製プリント基板の可溶化率は31%であった。
実施例2において、杉背板のタール(1)の代わりに杉背板のタール(4)を用い、それ以外は実施例2と同様に操作し、1.60gの固体残渣を得た。
エポキシ樹脂製プリント基板の可溶化率は50%であった。
杉チップのタール(1)20gを内容積200mLのオートクレーブに入れ、エポキシ樹脂製プリント基板(0.5cm×0.5cm×1mm)2gを加え、水酸化ナトリウムを0.2g添加し、窒素ガスを注入し反応器内の圧力を室温で2.0MPaに加圧した。次に電磁攪拌子で攪拌しながら、250℃で60分間可溶化処理した。可溶化処理終了後、オートクレーブ内の可溶化処理物をろ過し、次いで実施例1と同様に操作し、1.2gの固体残渣を得た。
エポキシ樹脂製プリント基板の可溶化率は100%であった。
実施例4において、250℃で60分間可溶化処理した代わりに、220℃で60分間可溶化処理し、それ以外は実施例4と同様に操作し、1.73gの固体残渣を得た。
エポキシ樹脂製プリント基板の可溶化率は34%であった。
Claims (6)
- バイオマスを不活性ガス雰囲気下加熱処理して得られるタールを蒸留処理して得たタール、またはバイオマスを不活性ガス雰囲気下加熱処理して得たタールを200℃以上で加熱処理して沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去して得た残渣からなるタールであって、沸点が200℃以上の成分からなるタールを、熱硬化性樹脂を含有する部品と接触させ、200℃〜300℃で加熱処理することを特徴とする熱硬化性樹脂の可溶化処理法。
- タールを200℃以上で加熱処理することが、熱硬化性樹脂を含有する部品の共存下にてタールを200℃以上で加熱処理して沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去することである請求項1記載の熱硬化性樹脂の可溶化処理法。
- 沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去して得た残渣からなるタールであって、沸点が200℃以上の成分からなるタールのH/C値およびC/O値(ただし、Hは水素原子、Cは炭素原子、Oが酸素原子を示す)がそれぞれ0.8〜2.5(原子数比)および0.1〜1.2(原子数比)であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂の可溶化処理法。
- 沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去して得た残渣からなるタールであって、沸点が200℃以上の成分からなるタールにアルカリ成分を配合することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂の可溶化処理法。
- 熱硬化性樹脂を含有する部品が、少なくとも熱硬化性樹脂およびガラス繊維を含む基板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂の可溶化処理法。
- 熱硬化性樹脂を含有する部品を0.1MPa〜5.0MPaの圧力雰囲気下で加熱処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂の可溶化処理法。
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