JP5212974B2 - 熱硬化性樹脂の可溶化処理法およびその処理に用いる溶媒 - Google Patents

熱硬化性樹脂の可溶化処理法およびその処理に用いる溶媒 Download PDF

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Description

本発明は、熱硬化性樹脂を含有する部品をバイオマス由来のタール中にて加熱処理して、熱硬化性樹脂を含有する部品から熱硬化性樹脂を可溶化する方法に関する。特に、熱硬化性樹脂を含有する部品をバイオマスを乾留して得られるタール中にて加熱処理して、熱硬化性樹脂を含有する部品から熱硬化性樹脂を可溶化する方法に関する。また、本発明は、特定のタールからなる熱硬化性樹脂可溶化溶媒に関する。
熱硬化性樹脂は、優れた電気絶縁性、耐熱性、耐候性、耐薬品性、機械的強度等を示すため、各種部品の材料として広く用いられている。近年の技術の進歩は目覚しく、例えば自動車部品、電化製品部品などとして熱硬化性樹脂製部品が多用されているし、また、例えば熱硬化性樹脂を用いたプリント印刷配線板を組み込んだ製品など各種製品もいたるところに使用されており、人々はその恩恵を蒙っているところである。ところが、経時変化等の理由により前記熱硬化性樹脂製部品や各種製品が本来有する機能を果たさなくなると、それら部品や製品は廃棄されることになる。また、他のいろいろな理由により前記部品や製品は廃棄されることもある。これら廃棄された部品や製品の処理が問題となっており、廃棄された熱硬化性樹脂製部品や製品の処理に関する技術は数多く報告されている。
例えば、リン酸類及びアルコール系溶媒を必須成分として含む処理液を不飽和ポリエステル樹脂硬化物と接触させ、当該不飽和ポリエステル樹脂硬化物を分解処理する技術が報告され(特許文献1)、セシウム及び/またはルビジウムの酢酸塩、炭酸塩及び重炭酸塩の1種以上と、アルコール系溶媒とを必須成分として含む処理液を不飽和ポリエステル樹脂硬化物と接触させ、当該不飽和ポリエステル樹脂硬化物を分解処理する技術が報告されている(特許文献2)。これらの技術は、処理液を不飽和ポリエステル樹脂硬化物と接触させる条件が180〜220℃の範囲であり、温和な条件で処理することが可能な点で有利であるが、アルコール系溶媒に含ませる物質に不都合さが残るなど、処理液の組成などの点でさらに改善されることが望まれる。
また、処理液中でエポキシ樹脂硬化物に超音波振動を与えることによりエポキシ樹脂硬化物を分解または溶解する技術が報告されているが(特許文献3)、この技術では超音波振動を与える点が要件となってしまう。
一方、炭素繊維と酸無水物硬化エポキシ樹脂とから構成される複合材料に、アルカリ金属化合物とアルコール系溶媒を必須成分として含む処理液を接触させ、前記複合材料から炭素繊維と酸無水物硬化エポキシ樹脂とを分離する方法が報告されており(特許文献4)、エポキシ樹脂硬化物に、アルカリ金属化合物、リン酸類、リン酸類の塩、有機酸、有機酸の塩からなる群より選択される1種以上のエポキシ樹脂分解触媒、有機溶媒および水からなる処理液を接触させ、エポキシ樹脂硬化物を溶解する技術が報告されている。これらの技術も常圧下、150℃〜180℃という温和な条件で処理できる点で有利であるが、処理液の組成などの点でさらに改善されることが望まれる。
特開2002−194137号公報 特開2006−131698号公報 特開2005−344058号公報 特開2005−255835号公報 特開2005−255902号公報
一方、バイオマスや石炭を利用する技術として燃焼発電技術が知られているが、それ以外に、原料ガスやコークス、炭を製造する技術も知られている。また、所謂廃棄物系バイオマスの有効利用を目的とする技術開発も盛んに行われている。
上記の実情に鑑み、本発明の課題は、改善された熱硬化性樹脂の可溶化方法を提供することにある。また、バイオマス、特に廃棄物系バイオマスを利用した熱硬化性樹脂の可溶化方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究する最中、建築系有機廃棄物等を含む木質系バイオマスに着目し、それを不活性ガス雰囲気下にて乾留して得たタールを熱硬化性樹脂製硬化物に接触させ、加熱処理すると、意外にも当該熱硬化性樹脂製硬化物から熱硬化性樹脂が可溶化されるという知見を得た。さらに、高圧下で熱硬化性樹脂製硬化物を加熱処理させると、極めて高い可溶化率を達成することができるという知見も得た。それらの知見に基づきさらに研究を重ねついに本発明を完成させた。
すなわち、請求項1の発明は、バイオマスを不活性ガス雰囲気下加熱処理して得られるタールを蒸留処理するか、あるいはバイオマスを不活性ガス雰囲気下加熱処理して得たタールを200℃以上で加熱処理して沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去して得た残渣からなるタールであって、沸点が200℃以上の成分からなるタールを、熱硬化性樹脂を含有する部品と接触させ、200℃〜300℃で加熱処理することを特徴とする熱硬化性樹脂の可溶化処理法に関する。
また、請求項1の発明は、バイオマスを不活性ガス雰囲気下加熱処理して得られるタールを蒸留処理するか、あるいはバイオマスを不活性ガス雰囲気下加熱処理して得たタールを200℃以上で加熱処理して沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去して得た残渣からなるタールであって、下記沸点が200℃以上の成分からなるタールを、熱硬化性樹脂を含有する部品と接触させ、200℃〜300℃で加熱処理することを特徴とする熱硬化性樹脂の可溶化処理法に関する発明でもある。
200℃以上の所定温度で30分間加熱したときにタールの重量減少が加熱処理前のタールを基準として10重量%以下であるタール。
請求項2の発明は、上記請求項1の発明において、タールを200℃以上で加熱処理することが、熱硬化性樹脂を含有する部品の共存下にてタールを200℃以上で加熱処理して沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去することを特徴とする。
請求項3の発明は、上記請求項1または2の発明において、沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去して得た残渣からなるタールであって、沸点が200℃以上の成分からなるタールのH/C値およびC/O値(ただし、Hは水素原子、Cは炭素原子、Oが酸素原子を示す)がそれぞれ0.8〜2.5(原子数比)および0.1〜1.2(原子数比)であることを特徴とする。
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかの発明において、沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去して得た残渣からなるタールであって、沸点が200℃以上の成分からなるタールにアルカリ成分を配合することを特徴とする。
請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいずれかの発明において、熱硬化性樹脂を含有する部品が、少なくとも熱硬化性樹脂およびガラス繊維を含む基板であることを特徴とする。
請求項6の発明は、上記請求項1〜5のいずれかの発明において、熱硬化性樹脂を含有する部品を0.1MPa〜5.0MPaの圧力雰囲気下で加熱処理することを特徴とする。
以下に本発明を詳細に記述する。
本発明でいうバイオマスとは、固体有機物ということができ、また、国連食糧農業機関(FAO)による、麦わら、サトウキビ、米糠、草木等の農業系有機物;製紙廃棄物、製材廃材、除間伐材、薪炭林等の林業系有機物;家畜廃棄物等の畜産系有機物;水産加工残滓等の水産系有機物;生ゴミ、ゴミ由来固形化燃料、庭木、建設廃材、下水汚泥等の廃棄物系等のいずれかに分類される有機物ということもできる。これらの中では、麦わら、サトウキビ、米糠、草木等の農業系有機物;製紙廃棄物、製材廃材、除間伐材、薪炭林等の林業系有機物;生ゴミ、ゴミ由来固形化燃料、庭木、建設廃材、下水汚泥等の廃棄物系等のいずれかに分類される有機物が好ましい。さらには、製紙廃棄物、製材廃材、除間伐材、薪炭林等の林業系有機物に分類される有機物に庭木、建設廃材等を含めた木質系バイオマスがとくに好ましい。
これらバイオマスを乾燥処理、精製処理、切断・破砕処理など各種前処理を施した後に使用することが好ましい。例えば、木質系バイオマスでは、数cm〜数十cm程度の固形片にしておくことが有効である。また、さらに細かく粉砕してもよい。
本発明では、上記バイオマスを不活性雰囲気下にて加熱処理することが必要である。ここでいう不活性雰囲気とは乾留処理によりバイオマスが燃焼されないような雰囲気をいい、例えば、窒素ガス雰囲気、炭酸ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気などを上げることができるが、それらに限定されない。
本発明においては、上記バイオマスを不活性雰囲気下にて加熱処理することによりバイオマスからタールを得ることができる。これを言い換えると、バイオマスを乾留して乾留液を得ることが重要であるともいえる。
上記バイオマスを加熱炉内で加熱処理することが好ましい。加熱炉についてはバイオマスからタール状物を得ることができる装置が備わっている加熱炉である限り、特に制限されない。
本発明では、加熱炉内にバイオマスを投入し、バイオマスからタール状物を得る温度まで上昇させ、ついで当該温度にて加熱処理することになる。
上記加熱条件は、用いるバイオマスの種類、性状、量などにより変動するので好ましい条件を一概に規定することはできない。強いて記載するなら、例えば、50℃〜150℃/時の速度で上昇させ、ついで200℃〜600℃で30分〜150分加熱処理する条件を挙げることができるが、その範囲に限定されない。
本発明でいうタールは、バイオマスを熱分解して得る粘性のある褐色ないし黒色の油状液体を意味する。このタールのH/C値およびC/O値(ただし、Hは水素原子、Cは炭素原子、Oが酸素原子を示す)がそれぞれ0.8〜2.5(原子数比)および0.1〜1.2(原子数比)であることが好ましく、1.10〜2.50(原子数比)および0.25〜1.10(原子数比)であることがより好ましい。ここで、タールのH/C値およびC/O値の測定法は従来から知られている元素分析法を採用することにより容易に知ることができる。
本発明でいうタールは、また、沸点が200℃以上の成分からなることが好ましい。
沸点200℃以上の成分からなるタールを使用することにより、常圧で還流器を付けて反応器内を200℃以上に加熱することができるので有利である。ここで、沸点が200℃以上の成分からなるタールとは、200℃以上の所定温度で30分間加熱したときにタールの重量減少が加熱処理前のタールを基準として所定量%以下であるタールをいう。前記所定温度の上限はタールが熱分解されない温度である。この温度は測定するタールにより変動するので一概に規定することができない。前記所定量は、熱硬化性樹脂の可溶化処理と関係するので一概に規定しにくいが、例えば10重量%以下とすることができ、5重量%以下の方が好ましく、3重量%以下の方がより好ましい。
より具体的に説明すると、沸点が200℃以上の成分からなるタールは、例えば、タール10gを200℃で攪拌しながら30分間加熱したときにタールの重量減少が約10重量%以下のタールを示すことができる。また、タール10gを200℃で攪拌しながら30分間加熱したときにタールの重量減少が約5重量%以下のタールが好ましい。さらに、タール10gを200℃で攪拌しながら30分間加熱したときにタールの重量減少が約5重量%以下のタールがより好ましい。
ここでいうタールを所定温度で30分間加熱する条件としては、例えば、タール10gを300mlのフラスコに収め、200℃/30分のスピードで200℃に到達するまで加熱し、ついで、200℃で30分間加熱処理する条件を例示できる。なお、重量減少は通常の測定法で知ることができる。
前記沸点が200℃以上の成分からなるタールは、例えば、タールを蒸留することによって得ることが出来る。また、バイオマスから得たタールを200℃以上で加熱処理して留出物を留出除去して得ることもできる。
なお、本発明では熱硬化性樹脂を含有する部品の共存下にて上記加熱処理を行ってもよい。また、アルカリ成分の共存下にて上記加熱処理を行ってもよい。
かくして得られたタールを、熱硬化性樹脂を含有する部品と接触させ、加熱処理することが本発明の一つの大きな特徴である。ここで、熱硬化性樹脂は、すでに広く知られている樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを例示することができるが、本発明ではこれら例示された樹脂に何ら限定されない。
本発明では、上記熱硬化性樹脂には、慣用の配合剤が配合されていてもよい。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、充填材などを例示することができる。
上記熱硬化性樹脂を含有する部品の具体例は、プリント印刷基板などを含む各種基板、封止されたIC等の電子部品、各種複合材料、電化製品等の各種筐体、自動車部品等を挙げることができるがそれらに何ら制限されない。本発明では特に各種基板が好ましい。ここで基板とはパソコンやテレビなどの電子電気機器に使用されているプリント基板 をいう。なお、本発明では、熱硬化性樹脂を含有する部品に熱硬化性樹脂自体も含み、また、前記熱硬化性樹脂を含有する部品を備える製品も含まれる。
上記タールを、熱硬化性樹脂を含有する部品と加熱処理する方法は、本発明の所期の目的を達成することができる限り何ら制限されない。タールの種類や量、熱硬化性樹脂を含有する部品の種類や大きさなどにより適宜変更されるので好ましい条件を一概に規定することはできない。
強いて記載するなら、熱硬化性樹脂を含有する部品1に対して、タールを1〜20倍(重量比)となるよう調整して、加熱処理する方法が挙げられる。加熱処理するときの温度は、例えば200℃〜300℃が挙げられるが、その範囲に限定されない。接触時間は、例えば30分〜150分が挙げられるが、その範囲に限定されない。接触させるときの圧力は、常圧でよいが、例えば0.1MPa〜5.0MPa程度とすることが好ましい。
本発明の可溶化処理に際して、タールにアルカリ成分を配合させておくと、より可溶化率を向上させることができ、好ましい効果をもたらすことが可能となる。上記アルカリ成分としては、NaOH、KOH、NaCO、NaHCO、KCO、KHCO、Ca(OH) などを挙げることができるが、例示された化合物に限定されない。アルカリ成分の配合量はタール1に対してアルカリ成分を0.0001〜0.2(重量比)とすることが好ましいが、この範囲に何ら限定されない。
本発明での可溶化処理により樹脂を含有する部品から熱硬化性樹脂が可溶化される機構は全て解明されたわけではないが、おそらく樹脂を含有する部品中の熱硬化性樹脂に含まれるエステル結合などの弱い結合が開裂し、樹脂がオリゴマーなどの低分子量成分に変化し、タールに可溶化されると推測される。
熱硬化性樹脂を含む部品が可溶化され、各種有用物質を回収することができるので、その点でも本発明は有利である。例えば、プリント印刷配線板に含まれる熱硬化性樹脂が可溶化され、プリント印刷配線板に存在する貴金属やガラス繊維を回収することができる。
本発明によれば、バイオマスから得られるタールを使用して熱硬化性樹脂を含む部品から熱硬化性樹脂を可溶化することができる。特に廃棄性バイオマスを使うと、熱硬化性樹脂を常圧下で可溶化できる安価な重質溶媒が容易に得られ、また今まで廃棄されていたバイオマスを有効利用することになり、環境を優しくするという意味で大きな意味がある。また、廃棄処理されていた熱硬化性樹脂を含む部品から資源を回収することができるともいえるので、その点でも本発明は実用的であるといえる。
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。本発明はこれらの実施例になんら限定されない。
(実施例1)杉チップのタール(1)によるエポキシ樹脂の可溶化
(タールの調製)
杉チップ(10cm×10cm×2mm)100kgを図1に示す装置のレトルト内に投入し、1気圧窒素雰囲気下で前記レトルト内温度を540℃まで100℃/時の速度で昇温させ、同温度で1時間熱分解処理し、7.3kgのタールを得た(収率は7.3%)。得られたタールのうち、レトルトから得たタール(3)は1.0kg、ガス排出口に接続した冷却部から得たタール(1)は6.3kgであった。
タール(1)およびタール(3)のH/C値はそれぞれ2.4、1.0で、C/O値はそれぞれ1.1、0.2であった。
(タールを用いた可溶化処理)
内容積300mLの丸型フラスコにエポキシ樹脂製プリント基板(0.5cm×0.5cm×1mm)2g、および上記タール(3)20gを加え、水酸化ナトリウムを0.2g添加し、マグネットスターラーで攪拌しながら、220℃まで昇温し、軽質留物を留出させ、220℃以上の沸点を有するタールを得た。
次に、前記丸型フラスコに冷却機を接続して溶媒を乾留させながら、220℃で120分間可溶化処理を行った。可溶化処理終了後、フラスコ内の可溶化処理物をろ過して、液体生成物と固体残渣に分離した。固体残渣は蒸留水およびテトラヒドロフラン中で洗浄した後、110℃で12時間減圧乾燥させて、1.62gの固体残渣を得た。なお、前記エポキシ樹脂製プリント基板2gは1.2gのガラス繊維を含んでいた。
エポキシ樹脂製プリント基板の可溶化率は48%であった。
なお、可溶化率は下記式により算出した。
可溶化率= 100−(C−B)/(A−B)×100
ただし、式中、Aはエポキシ樹脂製プリント基板重量、Bはエポキシ樹脂製プリント基板中に含まれるガラス繊維重量、Cは減圧乾燥残渣重量、
(実施例2)杉背板のタール(2)によるエポキシ樹脂の可溶化
実施例1において、杉チップの代わりに杉背板(5cm×5cm×30cm)を用い、それ以外は実施例1と同様に操作し、3.5kgのタールを得た(収率は3.5%)。得られたタールのうち、レトルトから得たタール(4)は0.5kg、ガス排出口に接続した冷却部から得たタール(2)は3.0kgであった。
タール(2)およびタール(4)のH/C値はそれぞれ2.2、1.2で、C/O値はそれぞれ1.0、0.3であった。
杉チップのタール(3)の代わりに杉背板のタール(2)を用い、それ以外は実施例1と同様に操作し、1.75gの固体残渣を得た。
エポキシ樹脂製プリント基板の可溶化率は31%であった。
(実施例3)杉背板のタール(4)によるエポキシ樹脂の可溶化
実施例2において、杉背板のタール(1)の代わりに杉背板のタール(4)を用い、それ以外は実施例2と同様に操作し、1.60gの固体残渣を得た。
エポキシ樹脂製プリント基板の可溶化率は50%であった。
(実施例4)杉チップのタール(1)によるオートクレーブを用いたエポキシ樹脂の可溶化
杉チップのタール(1)20gを内容積200mLのオートクレーブに入れ、エポキシ樹脂製プリント基板(0.5cm×0.5cm×1mm)2gを加え、水酸化ナトリウムを0.2g添加し、窒素ガスを注入し反応器内の圧力を室温で2.0MPaに加圧した。次に電磁攪拌子で攪拌しながら、250℃で60分間可溶化処理した。可溶化処理終了後、オートクレーブ内の可溶化処理物をろ過し、次いで実施例1と同様に操作し、1.2gの固体残渣を得た。
エポキシ樹脂製プリント基板の可溶化率は100%であった。
(実施例5)杉チップのタール(1)によるオートクレーブを用いたエポキシ樹脂の可溶化の実施例4と異なる例
実施例4において、250℃で60分間可溶化処理した代わりに、220℃で60分間可溶化処理し、それ以外は実施例4と同様に操作し、1.73gの固体残渣を得た。
エポキシ樹脂製プリント基板の可溶化率は34%であった。
本件発明が規定するタールを製造する装置の一例の概略図である。

Claims (6)

  1. バイオマスを不活性ガス雰囲気下加熱処理して得られるタールを蒸留処理して得たタール、またはバイオマスを不活性ガス雰囲気下加熱処理して得たタールを200℃以上で加熱処理して沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去して得た残渣からなるタールであって、沸点が200℃以上の成分からなるタールを、熱硬化性樹脂を含有する部品と接触させ、200℃〜300℃で加熱処理することを特徴とする熱硬化性樹脂の可溶化処理法。
  2. タールを200℃以上で加熱処理することが、熱硬化性樹脂を含有する部品の共存下にてタールを200℃以上で加熱処理して沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去することである請求項1記載の熱硬化性樹脂の可溶化処理法。
  3. 沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去して得た残渣からなるタールであって、沸点が200℃以上の成分からなるタールのH/C値およびC/O値(ただし、Hは水素原子、Cは炭素原子、Oが酸素原子を示す)がそれぞれ0.8〜2.5(原子数比)および0.1〜1.2(原子数比)であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂の可溶化処理法。
  4. 沸点が200℃未満の軽質留分を留出除去して得た残渣からなるタールであって、沸点が200℃以上の成分からなるタールにアルカリ成分を配合することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂の可溶化処理法。
  5. 熱硬化性樹脂を含有する部品が、少なくとも熱硬化性樹脂およびガラス繊維を含む基板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂の可溶化処理法。
  6. 熱硬化性樹脂を含有する部品を0.1MPa〜5.0MPaの圧力雰囲気下で加熱処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂の可溶化処理法。
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