JP5207319B2 - トンネル構造物の打設コンクリートの養生方法 - Google Patents
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Description
トンネル構造物の場合、通常材齢1日(コンクリート打設後15〜20時間)で脱枠し、コンクリート表面は何も保護されない剥き出しの状態となり、表面からの水分の蒸散による表面の乾燥によって、コンクリートの硬化強度発現に必要な水和反応を持続するための水分が不足することになる。
そのため、養生不足による表面の欠陥(ひび割れ等)の発生や、強度低下等による長期耐久性の低下が懸念され、極端な場合は、コンクリート片の剥落や崩落など、人身事故に繋がる重大な問題が発生したり、公共構造物の資産の劣化が考えられる。
また、コンクリート表面に形成した空間部を霧で充満させることにより、均一な湿度状態にある養生空間を形成することができ、これにより、コンクリートの硬化強度発現に必要な水和反応を持続するための水分の蒸散をなくすとともに、微粒子状の水分を積極的に供給することにより、コンクリート表面の緻密化や強度発現の増進に寄与し、コンクリート表面の欠陥の発生を低減することができるようにしたものである。
上記従来のコンクリートの養生装置は、コンクリートの表面温度を検出し、その表面温度と略同じ温度に調節した水を噴霧するもので、コンクリートの表面温度、この温度は、コンクリートの打設厚さによっても変わってくるが、型枠脱枠後の2日間で約23℃から約35℃まで上がった後に約20℃まで下降し、その後の5日間は安定した一定の温度(約20℃)となることから、この温度を概ねキープするように制御されている。
しかしながら、コンクリートの表面温度と略同じ温度に調節した水を噴霧する方法では、コンクリートの養生装置による養生期間(この期間は、トンネル工事の作業性やコストの点で制約がある。)の間にコンクリートの温度が十分に下がりきらないことが多く、養生を終了した時点で、コンクリートの温度とトンネル坑内の温度との温度差によりコンクリートが急激に冷やされ、コンクリートにひび割れが発生する場合があるという問題があった。
具体的には、トンネル内側のコンクリート1の表面から数十cm離れるように、トンネルより一回り小さい断面形状のアーチフレーム5をH鋼材等で骨組みし、このアーチフレーム5を覆うように防水シート2を被せる。
アーチフレーム5の両端には、コンクリート1の表面との隙間を塞ぐエアーバルク等からなる仕切壁6が設けられ、これにより、コンクリート1の表面と外部空気とを遮断した略密閉の空間部3を確保する。この空間部3は気密性が保持され、保温性・保湿性が確保される。
また、アーチフレーム5の下部には車輪7が設けられており、この車輪7は、トンネルの下部両側で長さ方向に敷設されたレール8上を移動することができる。養生装置4は、この車輪7を介してトンネルの内部を長さ方向に移動することができる。
防水シートの設置位置は、コンクリート1の表面から10cmから1mの隙間をあけて空気が逃げないようにコンクリート1の表面を覆う。
この隙間を選定した理由は、10cmよりも少ない場合、噴霧ノズル等がコンクリート1の表面に接触し傷つける可能性が大きい。1m以上離した場合、コンクリート1の表面との隙間が拡がり、温度を調節する体積量が増大したり、温度を調節するために噴霧する水の量が増大し、水温調節のためのユニット等が大型となるためである。
このように、均一な湿度状態を保持することにより、コンクリート1の硬化強度発現に必要な水和反応を持続するための水分の蒸散がなく、逆に微粒子状の水分を積極的に供給することにより、表面の緻密化や強度発現の増進に寄与し、コンクリート1の表面の欠陥の発生を低減することができる。
なお、養生空間の湿度は、特に限定されるものではないが、通常、80%以上に保持するようにするが、トンネル工事の作業性(足場状態の悪化)や使用する水のコスト等を勘案すると、80〜90%程度に保持することが好ましい。
さらに、噴霧する面積や体積及び方向により、噴霧ノズル9を選定することが重要となる。すなわち、直接コンクリート1に噴霧するとセメントが水和反応した後でコンクリート1の表面に色が付着して美観上問題となることや、水和反応に必要以上の噴霧を行うことは不経済となる。
超微霧のときは体積や面積を考慮すると噴霧ノズル9の数が多く必要となる。このようなことを総合的に検討、実験した結果、微霧の45〜60μmの範囲が最も適していることがわかった。
噴霧ノズル9の噴霧角度は、コンクリート1の表面までの距離や面積、体積、噴霧ノズル9の数を考慮した結果、80度が望ましい。また、噴霧ノズル9のピッチは、微霧用・角度80度を用いたとき3m間隔が最適である。
また、噴霧ノズル9から空間部3に水を噴霧することによって、空間部3の湿度が上昇することになるが、空間部3の湿度が、80〜90%程度を維持するように、水の噴霧量を調節すること、トンネル坑内の作業環境を良好に維持する点からも好ましい。
ここで、空間部3の温度がトンネル坑内の温度と略同一の温度となるように制御するとは、少なくとも、養生装置4の最後尾の位置(図4に示す、第3スパンS3)における空間部3の温度が、トンネル坑内の温度に対して±1℃程度の範囲になるように制御することをいう。
循環タンク11及び給水タンク15には、フロートスイッチ等からなる水位計Fを配設し、水位計Fの水位信号を制御機構10に送信することによって、循環タンク11及び給水タンク15に貯留される水の量、特に、給水タンク15の水の量を監視するようにしている。
吸引手段22は、いずれかのダクトジョイント21bに配設するようにしているが、吸引手段22として一般的なダクトファンを使用し、一部のダクトジョイントの代わりにダクトファンを使用したり、吸込口23や吹出口24にダクトファンを使用したりすることもできる。
そして、循環機構20は、蛇腹ダクト21a及び/又はダクトジョイント21bに配設したUボルト等からなる取付部材25を介して、アーチフレーム5に取り付けるようにしている。
このように、比較的安価な蛇腹ダクト21aをダクトジョイント21bからなる連結部材を用いて連結し、アーチフレーム5に取り付けることにより、施工の容易化と低コスト化を図ることができる。
なお、本実施例においては、上記のとおり、空間部3の上部の温度の高い空気を、温度の低い空間部3の下部へ送り込み、空間部3において下部から上部への空気流を生じさせることによって空気を循環させ、これにより、空間部3の温度を均一化するようにしているが、空気の循環をさせる方法はこれに限定されず、例えば、空間部3の下部の温度の低い空気を、温度の高い空間部3の上部へ送り込み、空間部3において上部から下部への空気流を生じさせることによって空気を循環させるようにすることもできる。
この場合、養生装置4の各スパンSは、連続した空間部3を構成するようにするほか、養生装置4を各スパンSに区画して略密閉の空間部3をスパンS毎に分割し、脱枠毎に養生装置4を1スパン前進させることにより、脱枠後のコンクリート1を各スパン単位で、その材齢に応じて変化する空間部3の温度をトンネル坑内温度に調整しながら順次養生することができる。
そして、養生装置4を各スパンSに区画して略密閉の空間部3をスパンS毎に分割する場合も、スパンS毎に分割された空間部3の温度に大きな差が生じないようにする。
このとき、空間部3の温度は、上昇するコンクリート1の表面温度に伴って上昇傾向にあるため、噴霧する水の温度及び噴霧量をスパン毎に制御する場合には、噴霧する水の温度を他のスパンより低く設定したり、噴霧ノズル9を配設する間隔を他のスパンよりも小さく設定し、空間部3を強制的に冷却するようにすることが好ましい。そして、温度センサTの温度と循環タンク11の水温(チラー12での冷却温度)とを制御機構10によってフィードバック制御しながら空間部3の温度がトンネル坑内温度と略同一温度となるように制御する。
第2スパンS2は、中間の養生スパンであり、コンクリート1の表面温度はピーク温度を超え下降パターンを示し、安定した一定の温度となるスパンである。よって、第1スパンS1で空間部3の温度を坑内温度と略同一温度とすることにより急激な温度降下がなくひび割れの発生が防止されていることとなり、制御機構10による精密な温度制御の必要はなく、第2スパンS2においては、トンネル坑内に設置することによって水温が坑内温度と略同一となっている水を、制御機構10、チラー12によって水温調整することなく、噴霧ノズル9から空間部3に噴霧すればよい。
第3スパンは、最終のスパンであり、コンクリート1の表面温度は安定して推移し、急激な温度変化や湿度変化を防止する観点から、第2スパンS2と同様に、トンネル坑内に設置することによって水温が坑内温度と略同一となっている水を、制御機構10、チラー12によって水温調整することなく、噴霧ノズル9から空間部3に噴霧すればよい。
なお、噴霧する水の温度及び噴霧量をスパン毎に制御せずに養生装置4全体で制御する場合は、少なくとも、第3スパンS3における空間部3の温度が、トンネル坑内の温度に対して±1℃程度の範囲になるように、養生装置4全体の噴霧する水の温度及び噴霧量を制御するようにする。
ひび割れ指数Icr(t)は、
Icr(t)=ftk(t)/σt(t)
ここで、
ftk(t):材齢t日におけるコンクリート引張強度
σt(t):材齢t日におけるコンクリート最大主引張応力度
である。
で表される。
そして、有害なひび割れを発生させないためには、ひび割れ指数Icr(t)を安全係数γcr以上(Icr(t)≧γcr)とする必要がある。
図5のグラフ注釈に示すように、ひび割れを防止したい場合には、安全係数を1.0以上とすることが求められ、ひび割れ指数は安全係数と同様に1.0以上とする必要がある。
具体的には、循環タンク11の水に、珪酸リチウム系、珪酸(シリカ)質系、珪酸ナトリウム系、シラン・シロキサン系等のコンクリート改質剤を混入し、このコンクリート改質剤を混入した水をプランジャーポンプP1から噴霧ノズル9に送るようにしている。
これによって、コンクリート1の内部に改質剤が浸透、拡散して空隙内の水酸化カルシウムと反応し、カルシウム・シリカ・水結晶の形成を促し、コンクリート1の水和反応を促進して、コンクリート1の組織を緻密化することができる。
また、一般にコンクリート改質剤等は、硬化したコンクリート表面に1〜2回塗り重ねることによって使用されるものであるが、若材令のコンクリート表面にコンクリート改質剤を噴霧によって供給することにより、コンクリート内部の深い層にまで浸透させることができる。
また、本発明のトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法は、ボックスカルバートのようなトンネル状構造物を構築する場合にも適用することができ、これを排除しないものである。
2 防水シート
3 空間部
4 養生装置
5 アーチフレーム
6 仕切壁
9 噴霧ノズル
10 制御機構
20 循環機構
21 配管
22 吸引手段
Claims (2)
- 打設型枠を取り外したコンクリートの表面から隙間をあけてアーチフレームをトンネルの内部を長さ方向に移動可能に骨組みし、アーチフレームを覆うように防水シートを被せるとともにアーチフレームの両端にコンクリートの表面との隙間を塞ぐ仕切壁を設けて外部と遮断した空間部を形成し、アーチフレームに配設した噴霧ノズルから空間部に微霧の液体を噴霧するようにしたトンネル構造物のコンクリートの養生方法において、空間部の温度がトンネル坑内温度と略同一温度となるように噴霧する液体の温度及び水量を制御するとともに、空間部の上部と下部とを繋ぐ配管と、該配管に介在した空気流を生じさせる機能のみを有する吸引手段とから構成したアーチフレームに取り付けた循環機構により、空間部の空気を空間部の上部と下部との間で循環させることを特徴とするトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法。
- 噴霧する液体に、コンクリート改質剤を添加することを特徴とする請求項1記載のトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法。
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