JP5207319B2 - トンネル構造物の打設コンクリートの養生方法 - Google Patents

トンネル構造物の打設コンクリートの養生方法 Download PDF

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Description

本発明は、トンネル構造物の打設コンクリートの養生方法に関し、特に、トンネル構造物における脱枠後のコンクリートに対し最適な養生温度の管理を行い、コンクリートのひび割れを防止するようにしたトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法に関するものである。
トンネル構造物の本体部材であるコンクリートは、これまでコンクリート打設後の養生に関しては、早期に脱枠移動したり工期が限られる等の施工時の制約や、また、アーチ状でコンクリートの表面が下向きであるなどの構造の特殊性により、何も実施されない状態であった。
トンネル構造物の場合、通常材齢1日(コンクリート打設後15〜20時間)で脱枠し、コンクリート表面は何も保護されない剥き出しの状態となり、表面からの水分の蒸散による表面の乾燥によって、コンクリートの硬化強度発現に必要な水和反応を持続するための水分が不足することになる。
そのため、養生不足による表面の欠陥(ひび割れ等)の発生や、強度低下等による長期耐久性の低下が懸念され、極端な場合は、コンクリート片の剥落や崩落など、人身事故に繋がる重大な問題が発生したり、公共構造物の資産の劣化が考えられる。
このため、打設型枠を取り外したコンクリートの表面から隙間をあけてアーチフレームを骨組みし、アーチフレームを覆うように防水シートを被せるとともにアーチフレームの両端にコンクリート表面との隙間を塞ぐ仕切壁を設けて外部と遮断した空間部を形成し、前記空間部に45〜60μmの微霧の水を噴霧する噴霧ノズル及びコンクリートの水和反応による温度変化を検出する温度センサをアーチフレームに配設したトンネル構造物のコンクリートの養生装置が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
そして、このコンクリートの養生装置は、コンクリートの養生に最適な温度でその表面を湿潤させることができ、これにより、脱枠後のコンクリートに対して材齢毎の最適な養生管理を行うことができる。
また、コンクリート表面に形成した空間部を霧で充満させることにより、均一な湿度状態にある養生空間を形成することができ、これにより、コンクリートの硬化強度発現に必要な水和反応を持続するための水分の蒸散をなくすとともに、微粒子状の水分を積極的に供給することにより、コンクリート表面の緻密化や強度発現の増進に寄与し、コンクリート表面の欠陥の発生を低減することができるようにしたものである。
特開2008−223372号公報 特開2004−285803号公報
ところで、コンクリートは、養生温度が高いと反応が早まり急速に硬化するが、内部と外部とで温度差が生じるとひび割れが発生することがある。
上記従来のコンクリートの養生装置は、コンクリートの表面温度を検出し、その表面温度と略同じ温度に調節した水を噴霧するもので、コンクリートの表面温度、この温度は、コンクリートの打設厚さによっても変わってくるが、型枠脱枠後の2日間で約23℃から約35℃まで上がった後に約20℃まで下降し、その後の5日間は安定した一定の温度(約20℃)となることから、この温度を概ねキープするように制御されている。
しかしながら、コンクリートの表面温度と略同じ温度に調節した水を噴霧する方法では、コンクリートの養生装置による養生期間(この期間は、トンネル工事の作業性やコストの点で制約がある。)の間にコンクリートの温度が十分に下がりきらないことが多く、養生を終了した時点で、コンクリートの温度とトンネル坑内の温度との温度差によりコンクリートが急激に冷やされ、コンクリートにひび割れが発生する場合があるという問題があった。
本発明は、上記従来のコンクリートの養生装置の有する問題点に鑑み、コンクリートの表面温度が、脱枠後2〜3日目の高温状態から安定した一定の温度に下がるときの温度降下を緩やかにして、コンクリートのひび割れを防止することができるトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法は、打設型枠を取り外したコンクリートの表面から隙間をあけてアーチフレームをトンネルの内部を長さ方向に移動可能に骨組みし、アーチフレームを覆うように防水シートを被せるとともにアーチフレームの両端にコンクリートの表面との隙間を塞ぐ仕切壁を設けて外部と遮断した空間部を形成し、アーチフレームに配設した噴霧ノズルから空間部に微霧の液体を噴霧するようにしたトンネル構造物のコンクリートの養生方法において、空間部の温度がトンネル坑内温度と略同一温度となるように噴霧する液体の温度及び水量を制御するとともに、空間部の上部と下部とを繋ぐ配管と、該配管に介在した空気流を生じさせる機能のみを有する吸引手段とから構成したアーチフレームに取り付けた循環機構により、空間部の空気を空間部の上部と下部との間で循環させることを特徴とする。
この場合において、噴霧する液体に、コンクリート改質剤を添加することができる。
本発明のトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法によれば、空間部の温度がトンネル坑内温度と略同一温度となるように噴霧する液体の温度を制御するとともに、空間部の空気を循環機構により循環させることにより、養生空間を平均温度が夏場には25℃、冬場には15℃程度となるトンネル坑内温度と略同一温度として脱枠後2〜3日のコンクリート表面温度の上昇を抑え、高温状態から安定した一定の温度に下がるときの温度降下を緩やかなものとすることができ、ひび割れの発生を有効に防止するとともに、空間部の空気を強制的に循環させ空間部の温度を均一化することによって、コンクリート表面全体に亘ってひび割れの発生を防止するトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法を提供することができる。
また、循環機構を空間部の上部と下部とを繋ぐ配管と、該配管に介在した吸引手段とから構成し、空間部の空気を、空間部の上部と下部との間で循環させることにより、空間部の温度を確実に均一化することができる。
また、噴霧する液体に、コンクリート改質剤を添加することにより、空間部に噴霧された霧中に含まれる改質剤の成分がコンクリート表面よりコンクリート内部に十分に浸透し、コンクリートの組織を緻密化することができる。
本発明のトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法を適用したトンネル施工の一実施例を示し、(a)は施工するトンネルの断面図、(b)は左半が(a)のB矢視断面図、右半が(a)のA矢視断面図である。 制御機構を示す概要図である。 循環機構を説明する一部切欠断面の正面図である。 本発明のトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法の実験例を示す斜視図である。 ひび割れ発生確率と安全係数との関係を示すグラフである。
以下、本発明のトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜図4に、本発明のトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法の一実施例を示す。
このトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法に用いるコンクリートの養生装置4は、打設型枠を取り外したコンクリート1の表面から隙間をあけてアーチフレーム5を骨組みし、アーチフレーム5を覆うように防水シート2を被せるとともにアーチフレーム5の両端にコンクリート1の表面との隙間を塞ぐ仕切壁6を設けて外部と遮断した空間部3を形成し、前記空間部3に微霧の液体、例えば、水(以下、本明細書において、「水」という。)を噴霧する噴霧ノズル9及び空間部3の温度を測定する温度センサTをアーチフレーム5に配設し、前記空間部3の温度をトンネル坑内温度と略同一温度となるように噴霧する水の温度を制御する制御機構10と、前記空間部3の空気を循環させる循環機構20とを備えるようにしている。
略密閉の空間部3を形成する養生装置4は、図1に示すように設けられる。
具体的には、トンネル内側のコンクリート1の表面から数十cm離れるように、トンネルより一回り小さい断面形状のアーチフレーム5をH鋼材等で骨組みし、このアーチフレーム5を覆うように防水シート2を被せる。
アーチフレーム5の両端には、コンクリート1の表面との隙間を塞ぐエアーバルク等からなる仕切壁6が設けられ、これにより、コンクリート1の表面と外部空気とを遮断した略密閉の空間部3を確保する。この空間部3は気密性が保持され、保温性・保湿性が確保される。
また、アーチフレーム5の下部には車輪7が設けられており、この車輪7は、トンネルの下部両側で長さ方向に敷設されたレール8上を移動することができる。養生装置4は、この車輪7を介してトンネルの内部を長さ方向に移動することができる。
防水シートは、厚さ0.8〜1.2mm、材質プラスチック系のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン共重合体ビチューメント(ECB)又はポリプロピレン共重合体(PPC)のいずれでもよい。
防水シートの設置位置は、コンクリート1の表面から10cmから1mの隙間をあけて空気が逃げないようにコンクリート1の表面を覆う。
この隙間を選定した理由は、10cmよりも少ない場合、噴霧ノズル等がコンクリート1の表面に接触し傷つける可能性が大きい。1m以上離した場合、コンクリート1の表面との隙間が拡がり、温度を調節する体積量が増大したり、温度を調節するために噴霧する水の量が増大し、水温調節のためのユニット等が大型となるためである。
アーチフレーム5には、多数の噴霧ノズル9が要所に配設されており、例えば、平均粒子径が、45〜60μmの微霧の水を略密閉の空間部3に均一に噴霧して充満させることにより、均一な湿度状態にある養生空間を形成する。
このように、均一な湿度状態を保持することにより、コンクリート1の硬化強度発現に必要な水和反応を持続するための水分の蒸散がなく、逆に微粒子状の水分を積極的に供給することにより、表面の緻密化や強度発現の増進に寄与し、コンクリート1の表面の欠陥の発生を低減することができる。
なお、養生空間の湿度は、特に限定されるものではないが、通常、80%以上に保持するようにするが、トンネル工事の作業性(足場状態の悪化)や使用する水のコスト等を勘案すると、80〜90%程度に保持することが好ましい。
噴霧ノズル9は、噴霧部の口径により一般に超微霧10μm以下、微霧10〜100μm、細霧100〜300μm、中霧0.3〜1.0mm、粗霧1.0mm以上に分類される。
さらに、噴霧する面積や体積及び方向により、噴霧ノズル9を選定することが重要となる。すなわち、直接コンクリート1に噴霧するとセメントが水和反応した後でコンクリート1の表面に色が付着して美観上問題となることや、水和反応に必要以上の噴霧を行うことは不経済となる。
超微霧のときは体積や面積を考慮すると噴霧ノズル9の数が多く必要となる。このようなことを総合的に検討、実験した結果、微霧の45〜60μmの範囲が最も適していることがわかった。
噴霧ノズル9の噴霧角度は、コンクリート1の表面までの距離や面積、体積、噴霧ノズル9の数を考慮した結果、80度が望ましい。また、噴霧ノズル9のピッチは、微霧用・角度80度を用いたとき3m間隔が最適である。
また、噴霧ノズル9から空間部3に水を噴霧することによって、空間部3の湿度が上昇することになるが、空間部3の湿度が、80〜90%程度を維持するように、水の噴霧量を調節すること、トンネル坑内の作業環境を良好に維持する点からも好ましい。
制御機構10は、噴霧ノズル9から空間部3に噴霧する水の温度を、空間部3の温度がトンネル坑内の温度と略同一の温度となるように制御するもので、アーチフレーム5の適所、本実施例においては周方向の3箇所に配設(同様に、トンネルの長手方向に、適宜間隔で配設するようにする。)した温度センサTの温度に基づいて、冷却又は加温を行うチラー12を制御することによって、チラー12に水を循環させる循環タンク11内の水の温度を制御するようにしている。
ここで、空間部3の温度がトンネル坑内の温度と略同一の温度となるように制御するとは、少なくとも、養生装置4の最後尾の位置(図4に示す、第3スパンS3)における空間部3の温度が、トンネル坑内の温度に対して±1℃程度の範囲になるように制御することをいう。
空間部3の温度を測定する温度センサTは、マイナス20℃から100℃までの測定範囲を有するものであれば適している。噴霧状況を踏まえると熱電対タイプφ6.4mm、長さ20cm程度のものが望ましい。
また、制御機構10は、チラー12の冷却・加熱温度を制御するほかに、噴霧ノズル9に水を送るプランジャーポンプP1及び送水ポンプP2、P3の駆動制御、送水ポンプP2、P3からの送水をプランジャーポンプP1に切り換えて送水する三方電磁弁13の開閉制御を行い、プランジャーポンプP1の送水量を制御する。
プランジャーポンプP1から噴霧ノズル9に送る水は、チラー12によって所定温度に調節された、例えば、300リットルの容量をもつ循環タンク11の水を送水ポンプP2から送水して利用するようにしている。
そして、通常、循環タンク11の水は、例えば、1000リットルの容量をもつ給水タンク15から給水されているが、循環タンク11に配設したボールタップ等の定水位弁14により、循環タンク11の水位が一定水位を超えたときに給水タンク15からの給水を遮断するようにしている。
循環タンク11及び給水タンク15には、フロートスイッチ等からなる水位計Fを配設し、水位計Fの水位信号を制御機構10に送信することによって、循環タンク11及び給水タンク15に貯留される水の量、特に、給水タンク15の水の量を監視するようにしている。
循環機構20は、特に限定されるものではないが、本実施例においては、トンネル坑内に配置し、空間部3の上部と下部とを繋ぐ配管21と、この配管21の経路に配設した吸引手段22とから構成するようにしている。
より具体的には、図3に示すように、φ200の複数の蛇腹ダクト21aをダクトジョイント21bによって連結し、端部を吸込口23及び吹出口24として防水シート2を貫通して空間部3に挿入している。
吸引手段22は、いずれかのダクトジョイント21bに配設するようにしているが、吸引手段22として一般的なダクトファンを使用し、一部のダクトジョイントの代わりにダクトファンを使用したり、吸込口23や吹出口24にダクトファンを使用したりすることもできる。
そして、循環機構20は、蛇腹ダクト21a及び/又はダクトジョイント21bに配設したUボルト等からなる取付部材25を介して、アーチフレーム5に取り付けるようにしている。
このように、比較的安価な蛇腹ダクト21aをダクトジョイント21bからなる連結部材を用いて連結し、アーチフレーム5に取り付けることにより、施工の容易化と低コスト化を図ることができる。
なお、本実施例においては、上記のとおり、空間部3の上部の温度の高い空気を、温度の低い空間部3の下部へ送り込み、空間部3において下部から上部への空気流を生じさせることによって空気を循環させ、これにより、空間部3の温度を均一化するようにしているが、空気の循環させる方法はこれに限定されず、例えば、空間部3の下部の温度の低い空気を、温度の高い空間部3の上部へ送り込み、空間部3において上部から下部への空気流を生じさせることによって空気を循環させるようにすることもできる。
トンネル内のコンクリート1は、例えば、約10mの長さを1スパンSとして施工されるが、本実施例では、養生装置4が3スパン等の複数のスパン長さを有しており、これにより、1スパンSの脱枠毎に養生装置4を前進させながら、複数のスパンSを同時に養生することができる。
この場合、養生装置4の各スパンSは、連続した空間部3を構成するようにするほか、養生装置4を各スパンSに区画して略密閉の空間部3をスパンS毎に分割し、脱枠毎に養生装置4を1スパン前進させることにより、脱枠後のコンクリート1を各スパン単位で、その材齢に応じて変化する空間部3の温度をトンネル坑内温度に調整しながら順次養生することができる。
そして、養生装置4を各スパンSに区画して略密閉の空間部3をスパンS毎に分割する場合も、スパンS毎に分割された空間部3の温度に大きな差が生じないようにする。
例えば、図4に示す、第1スパンS1は、覆工型枠の直後の養生スパンであり、脱枠直後の最もコンクリート1の表面温度が高く、空間部3をトンネル坑内の温度と略同一の温度とするため、より具体的には、少なくとも、養生装置4の最後尾の位置(図4に示す、第3スパンS3)における空間部3の温度が、トンネル坑内の温度に対して±1℃程度の範囲になるようにするために、噴霧する水の温度及び噴霧量を最も慎重に制御管理すべき最初のスパンである。
このとき、空間部3の温度は、上昇するコンクリート1の表面温度に伴って上昇傾向にあるため、噴霧する水の温度及び噴霧量をスパン毎に制御する場合には、噴霧する水の温度を他のスパンより低く設定したり、噴霧ノズル9を配設する間隔を他のスパンよりも小さく設定し、空間部3を強制的に冷却するようにすることが好ましい。そして、温度センサTの温度と循環タンク11の水温(チラー12での冷却温度)とを制御機構10によってフィードバック制御しながら空間部3の温度がトンネル坑内温度と略同一温度となるように制御する。
第2スパンS2は、中間の養生スパンであり、コンクリート1の表面温度はピーク温度を超え下降パターンを示し、安定した一定の温度となるスパンである。よって、第1スパンS1で空間部3の温度を坑内温度と略同一温度とすることにより急激な温度降下がなくひび割れの発生が防止されていることとなり、制御機構10による精密な温度制御の必要はなく、第2スパンS2においては、トンネル坑内に設置することによって水温が坑内温度と略同一となっている水を、制御機構10、チラー12によって水温調整することなく、噴霧ノズル9から空間部3に噴霧すればよい。
第3スパンは、最終のスパンであり、コンクリート1の表面温度は安定して推移し、急激な温度変化や湿度変化を防止する観点から、第2スパンS2と同様に、トンネル坑内に設置することによって水温が坑内温度と略同一となっている水を、制御機構10、チラー12によって水温調整することなく、噴霧ノズル9から空間部3に噴霧すればよい。
なお、噴霧する水の温度及び噴霧量をスパン毎に制御せずに養生装置4全体で制御する場合は、少なくとも、第3スパンS3における空間部3の温度が、トンネル坑内の温度に対して±1℃程度の範囲になるように、養生装置4全体の噴霧する水の温度及び噴霧量を制御するようにする。
ところで、コンクリート1のひび割れ発生を事前に検討する場合、図5に示すように、ひび割れ発生確率と関係付けられるひび割れ指数(図5においては安全係数として示す)の経時変化をみることによってひび割れが発生する可能性を評価することができる。
ひび割れ指数Icr(t)は、
Icr(t)=ftk(t)/σt(t)
ここで、
ftk(t):材齢t日におけるコンクリート引張強度
σt(t):材齢t日におけるコンクリート最大主引張応力度
である。
で表される。
そして、有害なひび割れを発生させないためには、ひび割れ指数Icr(t)を安全係数γcr以上(Icr(t)≧γcr)とする必要がある。
図5のグラフ注釈に示すように、ひび割れを防止したい場合には、安全係数を1.0以上とすることが求められ、ひび割れ指数は安全係数と同様に1.0以上とする必要がある。
ひび割れ指数は、トンネルの支保パターン及び打設温度によって異なるものの、本発明者等の実験によると、養生温度を15〜25℃(好ましくは20℃)とするときに、20℃、25℃、30℃のいずれの打設温度の場合においても最も高い値を示し、脱枠後のコンクリート1の表面から隙間をあけて形成した空間部3の温度を、短期間に15〜25℃(好ましくは20℃)とすることがひび割れの発生を防止するための最適な養生温度であることがわかった。
空間部3の温度をコンクリート1の表面温度と略同一温度となるように制御する場合には、材齢2〜3日におけるひび割れ指数が1.0に満たない場合があるが、トンネル構造物の打設コンクリートの養生方法によれば、平均温度が夏場には25℃、冬場には15℃程度となるトンネル坑内温度と略同一温度として、ひび割れ指数を1.0以上に保つことができる。また、脱枠後2〜3日のコンクリート表面温度の上昇を抑え、高温状態から安定した一定の温度に下がるときの温度降下を緩やかなものとすることができ、ひび割れの発生を有効に防止するとともに、空間部の空気を強制的に循環させ養生空間の温度を均一化することによって、コンクリート表面全体に亘ってひび割れの発生を防止することができる。
また、必要に応じて、空間部3に噴霧する水に、コンクリート改質剤(コンクリート収縮低減剤等の機能性添加剤を含み、本明細書において、「コンクリート改質剤」という。)を添加することができる。
具体的には、循環タンク11の水に、珪酸リチウム系、珪酸(シリカ)質系、珪酸ナトリウム系、シラン・シロキサン系等のコンクリート改質剤を混入し、このコンクリート改質剤を混入した水をプランジャーポンプP1から噴霧ノズル9に送るようにしている。
これによって、コンクリート1の内部に改質剤が浸透、拡散して空隙内の水酸化カルシウムと反応し、カルシウム・シリカ・水結晶の形成を促し、コンクリート1の水和反応を促進して、コンクリート1の組織を緻密化することができる。
また、一般にコンクリート改質剤等は、硬化したコンクリート表面に1〜2回塗り重ねることによって使用されるものであるが、若材令のコンクリート表面にコンクリート改質剤を噴霧によって供給することにより、コンクリート内部の深い層にまで浸透させることができる。
以上、本発明のトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
また、本発明のトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法は、ボックスカルバートのようなトンネル状構造物を構築する場合にも適用することができ、これを排除しないものである。
本発明のトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法は、脱枠後2〜3日目の高温状態から安定した一定の温度に下がるときの温度降下を緩やかにすることができるという特性を有していることから、例えば、トンネル構造物のコンクリートの養生に好適に用いることができる。
1 コンクリート
2 防水シート
3 空間部
4 養生装置
5 アーチフレーム
6 仕切壁
9 噴霧ノズル
10 制御機構
20 循環機構
21 配管
22 吸引手段

Claims (2)

  1. 打設型枠を取り外したコンクリートの表面から隙間をあけてアーチフレームをトンネルの内部を長さ方向に移動可能に骨組みし、アーチフレームを覆うように防水シートを被せるとともにアーチフレームの両端にコンクリートの表面との隙間を塞ぐ仕切壁を設けて外部と遮断した空間部を形成し、アーチフレームに配設した噴霧ノズルから空間部に微霧の液体を噴霧するようにしたトンネル構造物のコンクリートの養生方法において、空間部の温度がトンネル坑内温度と略同一温度となるように噴霧する液体の温度及び水量を制御するとともに、空間部の上部と下部とを繋ぐ配管と、該配管に介在した空気流を生じさせる機能のみを有する吸引手段とから構成したアーチフレームに取り付けた循環機構により、空間部の空気を空間部の上部と下部との間で循環させることを特徴とするトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法。
  2. 噴霧する液体に、コンクリート改質剤を添加することを特徴とする請求項記載のトンネル構造物の打設コンクリートの養生方法。
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