JP5202024B2 - 硬質皮膜の形成方法 - Google Patents

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Description

この発明は、基材の表面に、硬度が高い硬質皮膜を形成する硬質皮膜の形成方法に関する。
現在、構造材料には軽量化が求められ、かつ衝撃、荷重、摩擦に対して耐摩耗、高耐久性の機能を有する材料が求められている。そこで、比重の小さい材料からなる基材の表面に耐摩耗、耐久性の高い皮膜を形成することが考えられる。
基材の表面に機能性皮膜をコーティングする方法として、化学蒸着(CVD:ChemicalVapor Deposition)、物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)、印刷、溶射及びコールドスプレーなどの手法が挙げられる。これらの手法は、基材の表面に比較的簡単に異なる機能を付与できることから、工業上多方面に用いられている。その付与できる機能は、潤滑、耐摩耗、高硬度及び耐食など様々あり、各種用途に対して皮膜材料が適宜選択され、コーティングされている。
ここで、耐摩耗性、耐久性の高い皮膜を得るために、例えば、セラミックスなどが皮膜材料として選択することができる。この種の皮膜は、一般にCVD又はPVDにより基材上に形成される(特許文献1参照)。これによって得られる皮膜は、最大でも100μm程度の厚みしか持たないことから、高負荷、連続すべり摩擦部位などにおいては応力を保持できず、または摩耗などにより皮膜が消滅するおそれがあり、適さない場合が多い。一方、比較的厚い皮膜を形成できる手法として、溶射が挙げられる。しかし、溶射では、皮膜材料が限定され、さらに気孔を多く含む材料を溶融状態にするため熱的影響を受けるなど機械的性能に劣る場合が多い(特許文献2参照)。
ここで、コールドスプレーまたはショットコーティングなどの皮膜形成方法は、原料粉末の融点以下、室温程度または室温以上に加熱された搬送ガスに原料粉末を混合させて、高速に加速させた原料粉末を相手材料(基材)に噴射することで、原料粉末を基材の表面に積層し、皮膜を形成する工法である。これらの工法は、冷間処理であることから、原料粉末及び基材が熱的な変質を起こさない。このため、工法としては、材料選択に富み、さらに厚い皮膜が作製でき、比較的生産性が高く、基材と皮膜の密着力も高いことが知られている(特許文献3参照)。しかし、上記工法では、原料粉末に比較的硬度の低い金属または合金が主として用いられており、セラミックスなど高硬度、脆性挙動を示す原料粉末による成膜には適さない。
ところで、Feを主原料とする金属において、母相にオーステナイト相を含む場合、冷間加工を施すことにより、オーステナイト相からマルテンサイト相が生じること、すなわち加工誘起マルテンサイト変態(加工誘起変態)が起きることが知られている。「加工誘起変態」とは、一般に、マンガン鋼や準安定ステンレス鋼を加工するとMs点(マルテンサイト生成温度)が上昇してマルテンサイト変態が促進される現象をいう。ここで、Feを主原料とする金属材料の代表例としては、オーステナイト鋼、ハッドフィールド鋼、残留オーステナイト相を含む軸受鋼などが挙げられる。この加工誘起変態が生じると、加工誘起マルテンサイト生成量の増加に伴い、硬度や剛性の増加など機械的性質の変化がもたらされる。このため、耐久性、耐摩耗性を向上させたい場合に、この加工誘起変態を生じさせることは極めて有効であり、従来は、例えば、基材を冷間でプレス、圧延、ピーニングなどすることによって行われていた(特許文献4,5参照)。あるいは、コールドスプレーにより基材に皮膜を形成する方法が開示されている(特許文献6参照)。
特開平5−255866号公報 特開平11−172408号公報 特開2005−95886号公報 特許第3486753号公報 特開2005−201254号公報 特開2006−52449号公報
しかしながら、特許文献4,5に記載の方法による耐摩耗性、耐久性の付与では、基材に直接加工を行う方法であることから、加工が困難な材料、材料が変態しないもの、製品に対しては、上記方法による加工誘起変態は有効でない。また、特許文献6に記載の方法では、比較的硬度の低い金属が原料粉末として皮膜に用いられることから、硬度の高い皮膜を形成することが困難であった。
ここで、エンジンバルブはエンジンの吸気、排気のために往復運動するものであり、その運動は、ロッカーアームなどによりエンジンバルブの軸端面を押し引きすることで行われるようになっている。このとき、エンジンバルブの軸端面には、繰り返し衝撃、摩擦が与えられ、これに耐え得るには、500μm程度の厚みを有した硬度の高い皮膜が必要となる。従来は、エンジンバルブの軸端面に高硬度材の貼り付けが行われていたが、生産性又はコストの観点から問題となる。また、チタン合金からなるエンジンバルブでは酸化処理が用いられているが、更なる耐久性の向上が求められている。このため、加工誘起変態による高硬度皮膜を基材上に直接形成する方法の開発が要請されている。
この発明は、かかる従来の要請に鑑みてなされたものであって、その目的は、冷間で加工誘起変態を生じさせることにより基材の表面に硬質皮膜を形成することを可能とした硬質皮膜の形成方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基材の表面に固相状態の金属粉末を圧縮性の気体を媒体として吹き付けて硬質の金属皮膜を形成する硬質皮膜の形成方法において、金属粉末は加工誘起変態が生じる金属材料で構成されており、金属粉末を加工誘起変態が生じる高速で基材に叩きつけることにより、金属粉末を扁平に塑性変形させながら基材の表面に幾重にも堆積させ且つ堆積した金属粉末に加工誘起変態を生じさせて基材に叩きつける前の金属粉末より高い硬さの金属皮膜を基材の表面に形成すること、を趣旨とする。
上記発明において最も注目すべきことは、形成された皮膜の硬度が原料の金属粉末よりも高いことである。高速で噴射された金属粉末は、基材の表面に衝突したときに塑性変形しながらその表面上に堆積して皮膜となる。さらに、基材の表面に形成された皮膜は、後続する金属粉末の衝突によりさらに変形が進行する。このように変形を繰り返すことにより、堆積した金属粉末、皮膜は、誘起されて変態し、硬度が増す。また、形成された皮膜は、対象となる基材の表面全体に均一な厚みで形成される。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、金属粉末は、平均粒子直径が5〜100μmで、Feを主原料とするオーステナイト相を有する金属からなることを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、金属粉末の平均粒子直径の大きさを5〜100μmに限定したのは、5μm以下では基材に付着するだけの運動エネルギーが粒子に与えられず、100μm以上では、粒子が十分に加速されないため基材に付着するだけの運動エネルギーが粒子に与えられないからである。また、金属粉末の材料をFeを主原料とするオーステナイト相を有する金属に限定したのは、この金属が加工によって誘起され、マルテンサイト相に変態し、硬度が増すためである。この硬度の増加によって、耐摩耗性、耐久性の高い皮膜が得られる。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明のエンジンバルブは、請求項1に記載の硬質皮膜の形成方法による皮膜を軸端面に形成したことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、自動車、二輪車などに用いられるエンジンバルブは、軽量化が必要な一方、苛酷な繰り返し応力、高温摩擦環境にさらされる。軽量な軸端面に耐摩耗性、高耐久性の皮膜を形成することは、機能はもちろん、生産性、コストの観点からも極めて有効な手段である。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明のエンジンバルブは、請求項2に記載の硬質皮膜の形成方法による皮膜を軸端面に形成したことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、自動車、二輪車などに用いられるエンジンバルブは、軽量化が必要な一方、苛酷な繰り返し応力、高温摩擦環境にさらされる。軽量な軸端面に耐摩耗性、高耐久性の皮膜を形成することは、機能はもちろん、生産性、コストの観点からも極めて有効な手段である。
請求項1又は2に記載の発明によれば、基材、皮膜に熱的影響を与えることなく、局所に比較的簡単、安価に高硬度な皮膜を形成することができる。
請求項3又は4に記載の発明によれば、高硬度の皮膜により軸端面が覆われることから、長期の繰り返し応力、摩耗に耐える耐久性を軸端面に付与することができる。
以下、本発明における硬質皮膜の形成方法を具体化した一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1に、この実施形態における硬質皮膜の形成方法の概要を概略図により示す。この硬質皮膜の形成方法は、(1)オーステナイト相を有する固相状態の金属粉末(「合金粉末」の場合を含む。)を、圧縮性(2〜4MPa)の空気又は窒素、ヘリウム等の不活性ガスとチャンバー11にて混合し、加工誘起マルテンサイト変態(加工誘起変態)が生じる高速(500m/秒以上)で加速させる工程、(2)高速で加速された金属粉末を、噴射ノズル12から、基材13に向けて噴射して基材13の表面に叩きつける工程、(3)基材13の表面に叩きつけた金属粉末を変形させ、堆積させて皮膜14とする工程、を備える。
ここで、原料粉末である金属粉末を冷間で高速により噴射ノズル12から噴射する方法として、例えば、コールドスプレー法、ショットコーティング法が挙げられる。原料粉末である金属粉末を基材13の表面にて変形させることで加工誘起変態を生じさせ、積層できれば、その方法の種類は問わない。また、コールドスプレー法などの後にショットピーニング法や打撃法などの追加による加工誘起変態を増長する手段も含む。
次に、上記した形成方法による硬質皮膜を軸端面、すなわち軸端部の端面に形成したエンジンバルブについて説明する。
図2に、この実施形態のエンジンバルブ1を正面図により示す。このエンジンバルブ1は、エンジンの吸気バルブや排気バルブとして使用されるものであり、軸部2と、その軸部2の一端(基端)に形成された傘部3と、軸部2の他端(先端)に形成された溝部4及び軸端部5とを備える。この実施形態で、上記構成部位2〜5は、チタン合金を基材として形成される。また、軸端部5の先端には、任意の硬さを有する硬質皮膜6が形成される。この硬質皮膜6は、後述する「粉末衝突堆積処理」により軸端部5に形成されたものであり、所定の金属から形成される。この硬質皮膜6が軸端部5に設けられることで、ロッカーアームやバルブリフタなどとの頻繁な接触に対して、軸端部5が他の部分よりも高い耐摩耗性及び耐久性を得ることができる。
次に、上記したエンジンバルブ1の製造方法について説明する。図3に、エンジンバルブ1の製造方法をフローチャートにより示す。このフローチャートに付された各番号(1)〜(7)に沿って順次説明する。
(1)基材の鍛造を行う。これにより、基材から、軸部2、傘部3、溝部4及び軸端部5を含んだ原形状をなすワークが得られる。
(2)ワークの熱処理を行う。これにより、ワーク全体の組織が調整される。
(3)ワークの機械加工を行う。これにより、ワークがエンジンバルブの形に切削、研削加工される。
(4)ワークの仕上げ加工を行う。これにより、エンジンバルブとしての寸法精度や面粗度が仕上げられる。
(5)ワークの表面処理を行う。これにより、各部位の表面に耐摩耗性を付与するために、メッキや窒化が施される。
(6)この実施形態の技術的特徴である「粉末衝突堆積処理」を実施する。この実施形態では、「粉末衝突堆積処理」を、コールドスプレー法により行う。この処理により、ワークに硬質皮膜6(図2参照)が形成される。ここで、硬質皮膜6を形成するために、固相状態の金属粉末が原料粉末として使用される。この金属粉末は、平均粒子直径が「5〜100μm」で、「Feを主原料とするオーステナイト相を有する金属」から構成される。
図4に、「粉末衝突堆積処理」のための装置を概略図により示す。下記の表1に、この「粉末衝突堆積処理」のための各種条件の一例を示す。
この処理装置は、噴射ガス(例えば、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、空気等)を調整して供給するガス供給装置21と、ガス供給装置21から導出されるガスを加熱するガスヒータ22と、硬質皮膜6のための原料粉末である金属粉末を供給する原料供給装置23と、原料供給装置23から導出される金属粉末を、ガスヒータ22から導出されるガスの噴射流に乗せるチャンバー25aと、その金属粉末を噴射する噴射ノズル25bを含む噴射装置25と、上記(5)の表面処理を済ませたエンジンバルブのワーク10をクランプしながら回転させるクランプ装置26とを備える。ガス供給装置21は、ガスを溜めた
ガスボンベ27と、ガスボンベ27から導出されるガス流量を調整するガスコントローラ28とを含む。原料供給装置23は、金属粉末を溜めた原料ボンベ29と、原料ボンベ29から導出される原料流量を調整する原料コントローラ30とを含む。ガスボンベ27から噴射装置25までの間で各機器27,28,22,25は、互いにガス配管31により接続される。原料ボンベ29から噴射装置25までの間で各機器29,30,25は、互いに原料配管32により接続される。ガスヒータ22は、噴射装置25へ供給される不活性ガスに「300〜400℃」程度の予熱を与える。
ここで、原料供給装置23から導出される金属粉末の平均粒子直径は「5〜100μm」(好ましくは「5〜30μm」)となっている。ガス供給装置21から導出されるガスは、ガスヒータ22により所定温度(300〜600℃)に予め加熱される。このガス加熱温度は、金属粉末の材質、粒径や、硬質皮膜6に要求される硬さに応じて設定される。そして、所定の圧力と温度に調整されたガスを噴射装置25の噴射ノズル25bから高速流にして噴射し、そのガス高速流に、所定の供給量に調整された金属粉末を投入して、噴射装置25の噴射ノズル25bから「500m/秒以上」の速度で噴出させる。このとき噴出される金属粉末をワーク10の対象部位である軸端部5の端面に高速で衝突させながら、図4に示すように、ワーク10をクランプ装置26により回転させる。このとき、軸端部5では、高速で噴射された金属粉末が、軸端部5の基材の表面に衝突して塑性変形しながらその表面上に堆積する。このようにしてワーク10の軸端部5に硬質皮膜6が形成される。
この実施形態における「粉末衝突堆積処理」によれば、金属粉末を加工誘起変態が生じる音速以上の高速で軸端部5の基材に叩きつけることにより、金属粉末より高い硬さの金属皮膜である硬質皮膜6を基材の表面に形成するようにしている。図5に、図2の鎖線円S1の部分を拡大断面図により示す。図5に示すように、基材である軸端部5の表面には、扁平に塑性変形した多数の金属粉末15が幾重にも堆積することで所定の厚さを有する硬質皮膜6が形成されることが分かる。
(7)最後に、ワーク10の軸端部ラップ加工を行う。これにより、「粉末衝突堆積処理」の結果、面粗度が悪化した軸端部5の表面のラップ仕上げが行われる。
上記の各工程を経ることにより、エンジンバルブ1が完成する。
以上説明したこの実施形態のエンジンバルブ1によれば、軸端部5の端面に硬質皮膜6が設けられるので、この部分で耐摩耗性及び耐久性が得られる。この実施形態では、金属粉末を加工誘起変態が生じる音速以上の高速で基材に叩きつけることにより、金属粉末より高い硬さの金属皮膜である硬質皮膜6を、軸端部5の基材の表面に形成している。ここで最も注目すべきことは、形成された硬質皮膜6の硬度が原料の金属粉末よりも高いことである。音速以上の高速で噴射された金属粉末は、基材の表面に衝突したときに塑性変形しながらその表面上に堆積して皮膜となる。さらに、基材の表面に形成された皮膜は、後続する金属粉末の衝突によりさらに変形が進行する。このように変形を繰り返すことにより、堆積した金属粉末、皮膜は、誘起されて変態し、硬度が増す。また、形成された皮膜は、対象となる基材の表面全体に均一な厚みで形成される。この結果、エンジンバルブ1の軸端部5にて、基材、皮膜に熱的影響を与えることなく、局所に比較的簡単、安価に高硬度な硬質皮膜6を均一に形成することができる。
また、この実施形態では、エンジンバルブ1の軸端部5の硬度を高めるために、軸端部5に耐熱鋼等を溶接し、その溶接部分を機械加工する必要なく、すなわち基材に別途金属を接合する必要なくエンジンバルブ1の軸端部5に硬質皮膜6を設けることができ、局所に硬質皮膜6を有するエンジンバルブ1を得ることができる。この意味で、基材に別途金属を接合することのない分だけエンジンバルブ1の製造工数を省略することができる。
この実施形態で、硬質皮膜6を形成するための金属粉末の平均粒子直径の大きさを「5〜100μm」に限定したのは、「5μm以下」では、基材に付着するだけの運動エネルギーが粒子に得られず、「100μm以上」では、粒子が十分に加速されないため基材に付着するだけの運動エネルギーが粒子に与えられないからである。また、金属粉末の材料を「Feを主原料とするオーステナイト相を有する金属」に限定したのは、この金属が加工によって誘起され、マルテンサイト相に変態し、硬度が増すためである。この硬度の増加によって、耐摩耗性、耐久性の高い硬質皮膜6が得られる。
この実施形態で、自動車、二輪車などに用いられるエンジンバルブ1は、軽量化が必要な一方、苛酷な繰り返し応力、高温摩擦環境にさらされる。ここで、軽量なエンジンバルブ1の軸端部5の端面に耐摩耗性、高耐久性の硬質皮膜6を形成することは、機能はもちろん、生産性、コストの観点からも極めて有効な手段である。エンジンバルブ1の軸端部5の端面が、高硬度の硬質皮膜6により覆われることから、長期の繰り返し応力、摩耗に耐える耐久性をエンジンバルブ1の軸端部5の端面に付与することができる。
以下に、上記したようにエンジンバルブ1の軸端部5に硬質皮膜6を設けた場合の各種実施例について説明する。なお、実施例1〜3は、オーステナイト相を有する固相状態の金属粉末を基材の表面に音速以上の高速で叩きつけて硬質の金属皮膜を形成した場合であり、比較例1〜4は、金属粉末の硬度の違いを示す。使用された原料粉末の種類を表2に示す。
表2に示す原料粉末「SUS316L」を使用した。搬送ガスには「3MPa」、「400℃」の窒素ガスを用いた。直径が「5mm」のチタン合金製の軸端部の端面に厚さ「約500μm」の皮膜を形成した。
表2に示す原料粉末「SUS304L」を使用した。搬送ガスには「3MPa」、「400℃」の窒素ガスを用いた。直径が「5mm」のチタン合金製の軸端部の端面に厚さ「約500μm」の皮膜を形成した。
表2に示す原料粉末「SUS304」を使用した。搬送ガスには「3MPa」、「400℃」の窒素ガスを用いた。直径が「5mm」のチタン合金製の軸端部の端面に厚さ「約500μm」の皮膜を形成した。
比較例1
表2に示す「SUS316L」を材料とする原料粉末である。
比較例2
表2に示す「SUS304L」を材料とする原料粉末である。
比較例3
表2に示す「SUS304」を材料とする原料粉末である。
上記実施例1〜3で形成された皮膜の硬度及び原料粉末の硬度の比較例1〜3を表3に示す。なお、皮膜の硬度は皮膜を切断、研磨し、マイクロビッカース硬度計により皮膜(n=30)を測定して平均値を得た。
表3から明らかなように、オーステナイト相を含む原料粉末は、皮膜が形成されるときの衝撃による変形によって加工誘起変態(マルテンサイト変態)が生じ、硬度が増したことが分かる。
図6に、形成された皮膜を切断し、断面を研磨して電子顕微鏡で観察した映像イメージ図を示す。図7に、原料粉末を電子顕微鏡で観察した映像イメージ図を示す。図6において、黒線部分は、つぶれた原料粉末(金属粉末)の粒子の境界線を示す。図7において、ほぼ球形の塊の一つ一つが皮膜形成前の原料粉末(金属粉末)の粒子を示す。図6,7によれば、皮膜形成前にはほぼ球形であった原料粉末(金属粉末)の粒子が、皮膜形成後にはつぶれて変形していることが分かる。
実施例3の仕様「SUS304コールドスプレー皮膜」につき、平面摩耗試験機による摩耗試験を行った。比較のために「Ti酸化処理皮膜」についても同様の摩耗試験を行った。すなわち、サンプルに「1kg」の荷重をかけながら、プレート上を「5mm/s」の摺動速度で、「10mm」の摺動距離を所定の摺動回数だけ往復摺動させた。試験はオイルを供給しない「オイルなし」と、オイルを供給した「オイルあり」について行った。「オイルなし」の場合の摺動回数は「500回」であり、「オイルあり」の場合の摺動回数は「1000回」であった。図8に、サンプルの摩耗量の違いをグラフにより示す。図8から分かるように、「SUS304コールドスプレー皮膜」の耐摩耗性は、「Ti酸化処理皮膜」よりも良好ということが確認できた。
なお、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することができる。
例えば、前記実施形態では、本発明の硬質皮膜の形成方法を、エンジンバルブ1の軸端部5の端面に形成する場合に具体化したが、エンジンバルブ以外の金属部品に具体化することもできる。
硬質皮膜の形成方法の概要を示す概略図。 エンジンバルブを示す正面図。 エンジンバルブの製造方法を示すフローチャート。 「粉末衝突堆積処理」のための装置を示す概略図。 図2の鎖線円の部分を示す拡大断面図。 皮膜の切断・研磨断面の電子顕微鏡による映像イメージ図。 原料粉末の電子顕微鏡による映像イメージ図。 摩耗試験結果を示すグラフ。
1 エンジンバルブ
4 溝部
5 軸端部
6 硬質皮膜
13 基材
14 皮膜
15 金属粉末

Claims (4)

  1. 基材の表面に固相状態の金属粉末を圧縮性の気体を媒体として吹き付けて硬質の金属皮膜を形成する硬質皮膜の形成方法において、
    前記金属粉末は加工誘起変態が生じる金属材料で構成されており、
    前記金属粉末を前記加工誘起変態が生じる高速で前記基材に叩きつけることにより、前記金属粉末を扁平に塑性変形させながら前記基材の表面に幾重にも堆積させ且つ堆積した前記金属粉末に前記加工誘起変態を生じさせて前記基材に叩きつける前の前記金属粉末より高い硬さの金属皮膜を前記基材の表面に形成すること
    特徴とする硬質皮膜の形成方法。
  2. 前記金属粉末は、平均粒子直径が5〜100μmで、Feを主原料とするオーステナイト相を有する金属からなることを特徴とする請求項1に記載の硬質皮膜の形成方法。
  3. 請求項1に記載の硬質皮膜の形成方法による皮膜を軸端面に形成したことを特徴とするエンジンバルブ。
  4. 請求項2に記載の硬質皮膜の形成方法による皮膜を軸端面に形成したことを特徴とするエンジンバルブ。
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