JP5200422B2 - 竪型スクラップ溶解炉を用いた溶銑製造方法 - Google Patents
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Description
一般に、鉄系スクラップには亜鉛めっき材などに由来する亜鉛が相当量含まれており、上記プロセスでは、鉄系スクラップに含まれる亜鉛が炉内を降下する過程で加熱されて金属蒸気となる。この亜鉛の金属蒸気は炉内ガス流に随伴して上昇し、温度が低い炉頂付近に達すると酸化されて微細な酸化亜鉛になり、ダストの一部として炉排ガスとともに排出される。このため炉排ガスから回収されるダストには、亜鉛が20〜30mass%程度含まれている。
このような問題に対して、製鉄用の竪型溶解炉で発生する亜鉛含有ダストを塊成化し、このダスト塊成化物を竪型溶解炉でリサイクル装入することで、2次ダスト(炉にダスト塊成化物を装入して操業した際に生成するダスト)中に亜鉛を濃化させ、亜鉛濃度が高められたダストを回収する方法が知られている(例えば、特許文献2)。
したがって本発明の目的は、竪型スクラップ溶解炉において、炉発生ダストをダスト塊成化物としてリサイクル装入しつつ溶銑を製造する際に、2次ダストの亜鉛濃度を的確に制御することができ、これにより高い亜鉛濃度の2次ダストを安定して回収することができる溶銑製造方法を提供することにある。
[1]竪型スクラップ溶解炉において、鉄系スクラップを主体とする鉄源と、コークスと、当該竪型スクラップ溶解炉において発生する亜鉛含有ダストまたはこれを含むダストを塊成化したダスト塊成化物を炉内に装入し、炉下部に設けられた複数の羽口から熱風を吹き込んで溶銑を製造する方法であって、
炉に装入すべきダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)を予め測定しておき、
コークス中の鋳物用コークスの配合比率(d)を一定とした時の、ダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)とダスト塊成化物の炉装入量(b)と発生2次ダストの亜鉛濃度(c)との既知の関係に基づき、前記測定されたダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)から、目標とする発生2次ダストの亜鉛濃度(c)に応じたダスト塊成化物の炉装入量(b)を求め、この量のダスト塊成化物を炉に装入することを特徴とする、竪型スクラップ溶解炉を用いた溶銑製造方法。
炉に装入すべきダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)を予め測定しておき、
ダスト塊成化物の炉装入量(b)を一定とした時の、ダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)とコークス中の鋳物用コークスの配合比率(d)と発生2次ダストの亜鉛濃度(c)との既知の関係に基づき、前記測定されたダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)から、目標とする発生2次ダストの亜鉛濃度(c)に応じたコークス中の鋳物用コークスの配合比率(d)を求め、この配合比率のコークスを炉に装入することを特徴とする、竪型スクラップ溶解炉を用いた溶銑製造方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの製造方法において、発生2次ダストを精錬用の亜鉛原料として回収することを特徴とする、竪型スクラップ溶解炉を用いた溶銑製造方法。
図1は、竪型スクラップ溶解炉の一例を模式的に示すもので、1炉体、2は炉頂に設けられる原料装入用のホッパー、3は炉下部の周方向において適当な間隔で設けられる複数の羽口(送風羽口)、4はこの羽口3に熱風を供給する熱風管、5は炉体上部の排ガス出口に接続された排気ダクト、6はこの排気ダクト5の途中に設けられる集塵装置である。この溶解炉の大きさ等に本質的な制限はないが、実質的に操業可能若しくは操業上有利なサイズとして、通常は、羽口位置での炉内径が2〜4m程度、炉高が6〜10m程度である。
鉄系スクラップなどの鉄源とコークスは、炉内に同時に装入してもよいし、交互に装入してもよい。
鉄源としては、鉄系スクラップに加えて、例えば、銑鉄、還元鉄、鉄鉱石など装入してもよい。また、鉄源、コークス、ダスト塊成化物以外に、例えば、石灰石、他のダストやスラッジ類の塊成物、木炭や無煙炭等の炭材などを適宜装入してもよい。
図1に示す竪型スクラップ溶解炉(炉床径2m、羽口数6本、羽口からの有効高さ7m)を用い、炉発生ダストをダスト塊成化物としてリサイクル装入しつつ溶銑を製造する方法について、以下のような試験を行った。
この試験では、鉄源として、シュレダー屑、プレス屑などの市中スクラップと製鉄所内で発生したスクラップ屑を9:1の割合(質量比)で含む鉄系スクラップを用いた。また、熱源であるコークスとしては、一般に販売されている鋳物用コークス(質量換算の平均粒径:160mm)と、篩分けにより40mm以上の粒径に調整された高炉用コークス(質量換算の平均粒径:60mm)を用いた。コークス原単位は、ダスト塊成化物の装入量に応じて130〜180kg/tとした。
また、送風量は12000〜14000Nm3/h、送風温度は550℃とした。溶銑の出銑温度は1500〜1530℃、炉頂ガス温度は200〜250℃となった。
その結果を図2に示す。これによれば、ダスト塊成化物の装入量が多いほど、発生2次ダスト中の亜鉛濃度は高くなり、また、ダスト塊成化物中の亜鉛濃度が高いほど、発生2次ダスト中の亜鉛濃度も高くなる。したがって、コークス種の配合比率(ここでは、鋳物用コークスと高炉用コークスの配合比率)を一定とした時は、ダスト塊成化物の亜鉛濃度とダスト塊成化物の炉装入量に応じて、発生2次ダストの亜鉛濃度が決まることが判る。
まず、炉に装入しようとするダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)を、塊成化前のダストの成分分析などにより予め測定しておく。一方、図2に示すような「コークス種の配合比率(d)を一定とした時の、ダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)とダスト塊成化物の炉装入量(b)と発生2次ダストの亜鉛濃度(c)との関係」(以下、便宜上「(a),(b),(c)の関係」という)を実験により事前に求めておき、この既知の関係に基づき、前記測定されたダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)から、目標とする発生2次ダストの亜鉛濃度(c)に応じたダスト塊成化物の炉装入量(b)を求め、この量のダスト塊成化物を炉に装入して操業を行う。
例えば、コークス種の配合比率(d)が鋳物用コークス比率60mass%(質量比で鋳物用コークス:高炉用コークス=6:4)の場合、図2に示す「(a),(b),(c)の関係」の対照テーブル(但し、図2は対照データの一部のみを表示してある)が用いられるとすると、次のような操業が行われる。目標とする発生2次ダストの亜鉛濃度(c)が50mass%の場合には、測定されたダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)が31mass%であると、ダスト塊成化物の炉装入量(b)は23kg/tと計算されるので、この量のダスト塊成化物を炉に装入して操業を行う。また、測定されたダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)が22mass%であると、ダスト塊成化物の炉装入量(b)は58kg/tと計算されるので、この量のダスト塊成化物を炉に装入して操業を行う。
上述した本発明の第一の製造方法の場合と同じ竪型スクラップ溶解炉を用い、炉発生ダストをダスト塊成化物としてリサイクル装入しつつ溶銑を製造する方法について、以下のような試験を行った。
使用した鉄系スクラップ、コークスおよびダスト塊成化物、炉の送風条件やコークス原単位などについては、上述した本発明の第一の製造方法の場合と同様とした。
上述した亜鉛濃度が異なるダスト塊成化物を、それぞれ鉄系スクラップおよびコークスとともに炉内に装入し、鋳物用コークスと高炉用コークスの配合比率を変化させて、溶銑の製造を行った。ダスト塊成化物の炉装入量は60kg/tで一定とした。この操業において発生した2次ダストを回収し、その亜鉛濃度を測定した。
まず、炉に装入しようとするダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)を、塊成化前のダストの成分分析などにより予め測定しておく。一方、図3に示すような「ダスト塊成化物の炉装入量(b)を一定とした時の、ダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)とコークス種の配合比率(d)と発生2次ダストの亜鉛濃度(c)との関係」(以下、便宜上「(a),(d),(c)の関係」という)を実験により事前に求めておき、この既知の関係に基づき、前記測定されたダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)から、目標とする発生2次ダストの亜鉛濃度(c)に応じたコークス種の配合比率(d)を求め、この配合比率のコークスを炉に装入して操業を行う。
例えば、ダスト塊成化物の炉装入量(b)が60kg/tの場合、図3に示す「(a),(d),(c)の関係」の対照テーブル(但し、図3は対照データの一部のみを表示してある)が用いられるとすると、次のような操業が行われる。目標とする発生2次ダストの亜鉛濃度(c)が50mass%の場合には、測定されたダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)が31mass%であると、コークス種の配合比率(d)は鋳物用コークス比率:48mass%と計算されるので、この配合比率のコークスを炉に装入して操業を行う。また、測定されたダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)が22mass%であると、コークス種の配合比率(d)は鋳物用コークス比率:97mass%と計算されるので、この配合比率のコークスを炉に装入して操業を行う。
このように本発明の第二の製造方法によれば、高価な鋳物用コークスの使用量を最適化でき、安価で効率的な溶銑製造を行うことができる。
なお、鋳物用コークスとは、一般に「鋳物コークス」の名称で市販されているコークスであり、質量換算の平均粒径が100mm以上のものを指す。また、高炉用コークスとは、篩分けにより40mm以上の粒径に調整されたコークスであり、質量換算の平均粒径が40mm以上のものを指す。
以下、本発明で使用するダスト塊成化物の好ましい実施形態について説明する。
亜鉛含有ダストを塊成化したダスト塊成化物を竪型スクラップ溶解炉にリサイクル装入するプロセスにおいて、なるべく高い亜鉛濃度の2次ダストを回収するには、炉内で粉化しにくい高強度のダスト塊成化物を用いることが有効である。これは、ダスト塊成化物が炉内で粉化するとダストになるため、炉内でのダスト塊成化物の粉化が抑えられれば、2次ダスト中の亜鉛量は一定でも亜鉛以外のダスト分が減少し、2次ダスト中の亜鉛濃度が上昇することになるからである。しかし、酸化亜鉛を多く含むダストは、酸化亜鉛自体が微粒で且つ粒度分布が狭いため高強度の塊成化物が得られにくく、しかも嵩密度が小さい(通常、嵩密度0.8以下)ために成型性も悪い。
すなわち、圧縮成型法では、亜鉛含有ダストと水硬性バインダーとを主体とする原料に適量の水を加えて混合した後、圧縮成型し、この圧縮成型物を水和硬化させてダスト塊成化物とする。水硬性バインダーとしては、ポルトランドセメントが一般的であるが、それ以外に、例えば、高炉セメント、高炉水砕スラグ微粉末、生石灰、アルミナセメントなどを用いてもよく、これら水硬性バインダーの1種以上を用いることができる。なお、石膏(硫酸カルシウム)などのように硫黄を含有する水硬性バインダーは、溶銑中の硫黄濃度を上昇させるため、あまり好ましくないが、溶銑中から不純物である硫黄を除去する工程に余裕がある場合には使用してもよい。また、硬化速度の調整のために、必要に応じて硬化促進剤を使用してもよい。
また、原料として亜鉛含有ダスト、水硬性バインダー以外の粉粒物を適宜配合してもよい。例えば、原料に適度な粒度分布を与えて成型性を高めるために、亜鉛含有ダストよりも粒度が大きい粉粒物(例えば、焼結篩下粉などのような鉄酸化物を含む粉粒物)を配合することができる。
2 ホッパー
3 羽口
4 熱風管
5 排気ダクト
6 集塵装置
Claims (4)
- 竪型スクラップ溶解炉において、鉄系スクラップを主体とする鉄源と、コークスと、当該竪型スクラップ溶解炉において発生する亜鉛含有ダストまたはこれを含むダストを塊成化したダスト塊成化物を炉内に装入し、炉下部に設けられた複数の羽口から熱風を吹き込んで溶銑を製造する方法であって、
炉に装入すべきダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)を予め測定しておき、
コークス中の鋳物用コークスの配合比率(d)を一定とした時の、ダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)とダスト塊成化物の炉装入量(b)と発生2次ダストの亜鉛濃度(c)との既知の関係に基づき、前記測定されたダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)から、目標とする発生2次ダストの亜鉛濃度(c)に応じたダスト塊成化物の炉装入量(b)を求め、この量のダスト塊成化物を炉に装入することを特徴とする、竪型スクラップ溶解炉を用いた溶銑製造方法。 - 竪型スクラップ溶解炉において、鉄系スクラップを主体とする鉄源と、コークスと、当該竪型スクラップ溶解炉において発生する亜鉛含有ダストまたはこれを含むダストを塊成化したダスト塊成化物を炉内に装入し、炉下部に設けられた複数の羽口から熱風を吹き込んで溶銑を製造する方法であって、
炉に装入すべきダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)を予め測定しておき、
ダスト塊成化物の炉装入量(b)を一定とした時の、ダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)とコークス中の鋳物用コークスの配合比率(d)と発生2次ダストの亜鉛濃度(c)との既知の関係に基づき、前記測定されたダスト塊成化物の亜鉛濃度(a)から、目標とする発生2次ダストの亜鉛濃度(c)に応じたコークス中の鋳物用コークスの配合比率(d)を求め、この配合比率のコークスを炉に装入することを特徴とする、竪型スクラップ溶解炉を用いた溶銑製造方法。 - ダスト塊成化物は、竪型スクラップ溶解炉において発生した亜鉛含有ダストまたはこれを含むダストと水硬性バインダーとを主体とし、水分添加された原料混合物を圧縮成型した後、水和硬化させたダスト塊成化物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の竪型スクラップ溶解炉を用いた溶銑製造方法。
- 発生2次ダストを精錬用の亜鉛原料として回収することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の竪型スクラップ溶解炉を用いた溶銑製造方法。
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