JP5196522B2 - 移植用膵島の評価方法 - Google Patents

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本発明は、移植用膵島の評価方法に関する。より詳しくは、単離された膵島の機能と生存性を統合的に判断することにより、その移植適応性を正確に予見しうる、簡便かつ迅速な移植用膵島の評価方法に関する。
エドモントンプロトコールと呼ばれるステロイドを使用しない新しい免疫抑制法の登場以降、膵島移植は世界中で注目され、現在まさに一型糖尿病に対する理想的根治療法として確立されようとしている(非特許文献1)。しかし、移植用膵島の供給源は、限られており、治療を希望する全ての一型糖尿病患者の要望を満たすことはできない。さらに、我国においては、社会的および宗教的理由によって脳死ドナーが極端に少ないという特有の事情があり、膵臓の供給源を心停止ドナーに頼らざるを得ないのが現状である。こうした供給源確保の問題に対し、本発明者は、既に膵島分離回路中の溶存酸素濃度を高めることによって、膵島移植に十分な質および量の膵島を得る方法を開発している。
しかしながら、移植に必要な膵島が確保されたとしても、移植の成績は変動が大きく、一定した効果を得ることができないのが実情である。たとえば、わが国では、2005年6月30日までに29回の膵島分離が行われ、15回の移植が9人の患者に行われたが、インスリン離脱に至ったのは、わずか3人にすぎない(非特許文献2)。これは、移植用膵島のViability(生存性)とFunction(機能)を移植前に客観的かつ確実に評価する方法がないことから、実際に移植してみなければ移植効果を知ることができないという問題に起因する。そのため、移植された膵島の生体内での機能を移植前に的確に予見することができる客観的な評価方法の開発が必要である。
従来、移植用膵島の評価方法としては、(1)機能試験、(2)生存性試験 が知られている。
(1)機能試験(Function test)
従来行なわれてきた機能試験は、6ウェル細胞培養プレートの各ウェルに異なる膵島サンプルを配置し、3ウェルを低濃度グルコース溶液下で、残りの3ウェルを高濃度グルコース溶液下で、2時間インキュベーションし、インキュベーション中に各ウェルに放出されたインスリンの総量を測定し、低濃度グルコース群と高濃度グルコース群とのインスリン産出量の比を刺激指数(stimulation index, SI)として評価していた。
しかし、この方法では、各ウェルに異なる膵島サンプルが配置されることから、各ウェル間のサンプルサイズ(構成細胞数)が変動することにより、各ウェル間のSIも変動することとなる。また、膵島はそもそも均一な細胞の集団ではなく、機能や活性が異なるヘテロな細胞の集団である。そのため、たとえ同一サイズのサンプル(構成細胞数が同一であるサンプル)が配置されたとしても、それは移植される膵島自体のグルコース濃度変化によるインスリン産出量を測定してはいないので、移植される膵島そのものの機能を正しく評価することはできないという欠点があった。
また、従来法の別の大きな欠点は、温度や湿度、更にチューブの揺れ具合といった環境変化に対して膵島が鋭敏に分泌するインスリンが検査に与える影響を排除していないことである。すなわち、膵島が試験チューブに移動させられる過程における様々な環境変化に接触したことによって培養液中に放出されたインスリンにより、当初低濃度グルコース溶液に接触するにもかかわらずインスリンのベースラインが上がり、本来の目的であるグルコース刺激により生じたインスリン産出量の変化がマスクされてしまい、個々の膵島の機能を正しく評価することができないという欠点があった。
(2)生存性試験(Viability test)
従来行なわれてきた生存性試験は、膵島を構成する細胞の生死を判定するのみであって、これらの細胞が生存していても膵島としての機能を発揮するか否かを判定するものではなかった。
具体的にいえば、従来法では、トリパンブルーを用いる色素排除法やフルオレセインニ酢酸(FDA)とヨウ化プロピジウム(PI)を用いた二重染色法が生存性試験に用いられていた。これらの試験方法は、ともに色素の細胞膜透過性の変化を指標とするものであって、感度が低く、細胞の代謝能力の低下等の微妙な生理活性の変化を反映することができないという欠点があった。また、薬剤を膵島細胞に接触させることから、薬剤自体が試験結果に及ぼす影響を無視することができないという欠点もあった。実際、これらの評価法は実際の臨床現場において全く有用でないことが報告されている(非特許文献3)。
以上のとおり、従来法では移植用膵島の質を的確に評価することはできず、こうした問題点を有しない、移植用膵島の新たな評価方法の開発が望まれている。特に、移植ドナーが制限されその数も少ないわが国においては、移植成績を向上させるためにも、客観的かつ確実な移植用膵島の評価方法の開発が切望されている。
James Shapiro他著、N Engl J Med、343(4):230、2000年 膵・膵島移植研究会ワーキンググループ 「膵島移植班」ホームページ、わが国における膵島移植の成績、http://square.umin.ac.jp/JITR/seiseki.htm Barnett MJ他著、Cell Transplantation、13(5):481-488、2004年
本発明の目的は、移植された膵島の生体内での機能を移植前に的確に予見でき、かつ、臨床応用に適した簡便で迅速な移植用膵島の評価方法を提供することにある。
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、発明者らは、移植された膵島が示す成果を的確に予測するためには、機能試験又は生存性試験のいずれか一方のみでは、不十分であり、両者を組み合わせて統括的に判断することが重要であると考えた。さらに、従来の機能試験や生存性試験の欠点を改良することで、移植用膵島の機能(Function)と生存性(Viability)をより的確に評価する簡便な方法を検討した。そして、(1)採取した膵島の糖負荷に対する刺激指数(SI)及び(2)採取した膵島の呼吸活性を組み合わせることにより、簡便、迅速かつ高精度に移植用膵島を評価できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、単離された膵島サンプルについて、そのグルコース応答性インスリン産生能と呼吸活性値を統括的に評価することにより、前記膵島の移植適応性を評価することを特徴とする、移植用膵島の評価方法に関する。
ある実施態様において、本発明の方法は下記工程を含む:
1) 単離された膵島サンプルについて、グルコース濃度変化に対する同一膵島サンプルのインスリン産生能の変化を測定し、
2) 単離された膵島サンプルの呼吸活性値を測定し、
3) 上記インスリン産生能の変化及び呼吸活性値に基づき、単離された膵島の移植適応性を評価する。
上記グルコース応答性インスリン産生能の変化は、次式で示されるインスリン産生の刺激指数(Stimulation Index:以下SI)によって評価することができる。たとえば、グルコース応答性インスリン産生のSIが1.7以上、かつ、呼吸活性値が4.5×1014/mol・s-1以上の場合に、膵島は移植適応性ありと判断する。
別な実施態様において、本発明の方法は、下記工程を含む:
1) 単離された膵島サンプルについて、グルコース濃度変化に対する同一膵島サンプルの呼吸活性値の変化を測定し、
2) 上記呼吸活性値の変化に基づき、単離された膵島の移植適応性を評価する。
上記呼吸活性値の変化は、次式で示される呼吸活性の刺激指数(SI)によって評価することができる。たとえば、上記呼吸活性SIが1.5以上の場合に、上記膵島は移植適応性ありと判断する。
なお、上記呼吸活性値としては、たとえば、膵島細胞表面の局所酸素濃度変化量を用いることができる。
本発明はまた、単離された膵島について、そのグルコース応答性インスリン産生能と呼吸活性値を評価するための測定機構と、得られたグルコース応答性インスリン産生能と呼吸活性値から前記膵島の移植適応性を判断する機構を有する、移植用膵島の評価用システムを提供する。
ある態様において、本発明の評価システムは下記の機構を有する:
1) 単離された膵島サンプルについて、グルコース濃度変化に対する同一膵島サンプルのインスリン産生能の変化を測定する機構、
2) 単離された膵島サンプルの呼吸活性値を測定する機構、
3) 上記インスリン産生能の変化及び呼吸活性値に基づき、単離された膵島の移植適応性を評価し、出力するデータ処理機構。
また別な態様において、本発明の評価システムは下記の機構を有する:
1) 単離された膵島サンプルについて、グルコース濃度変化に対する同一膵島サンプルの呼吸活性値の変化を測定する機構、
2) 上記呼吸活性値の変化に基づき、単離された膵島の移植適応性を評価し、出力するデータ処理機構。
上記呼吸活性値を測定する機構としては、たとえば、走査型電気化学顕微鏡を有する局所酸素濃度変化量の測定機構を適用することができる。
本発明によれば、移植された膵島の生体内での機能を移植前に的確に、また簡便かつ迅速に予見できる。
1.定義
膵島
「膵島」とは、別名ランゲルハンス氏島とも呼ばれる、平均約2000個の膵島細胞より構成される細胞塊である。膵島は、グルカゴンを分泌するα細胞、血糖低下作用を有するインスリンを分泌するβ細胞、ソマトスタチンを分泌するδ細胞および膵ポリペプチドを分泌するPP細胞の4種の細胞からなる。膵島移植は、この膵島のみを取り出して、局所麻酔下に肝臓内の血管である門脈に注入することにより、インスリン依存性の一型糖尿病の治療法として、インスリン産生β細胞の移植を目的として行なわれる。
移植用膵島
本発明にかかる「移植用膵島」とは、一型糖尿病の治療を目的として、ヒトを含む哺乳動物への移植のために、生体又は死体から単離された膵島をいう。「移植用膵島」は、所定の目的を達成するために、移植した際に一型糖尿病の病的状態を回復するのに十分な生存性(Viability)と機能(Function)を有することが必要である。
移植適応性
本発明で膵島の「移植適応性」とは、膵島移植の成果(成績)であって、移植された膵島の生着が生体内で十分に得られる状態を指している。あくまで目安ではあるが、具体的には、ヒト臨床においては一度目の膵島移植で空腹時血中C-peptideが0.3ng/mL以上、外因性インスリン投与量が移植前の3分の2以下を示し、二度目の移植においては外因性インスリン投与量が移植前の3分の1以下を示し、三度目の移植においては外因性インスリン投与量が一桁、あるいは必要なくなる状態を意味する。なお、動物実験モデルにおいては十分量の膵島グラフトを準備することが可能であるため、糖尿病動物モデルの糖尿病よりの治癒をもって移植適応性を判断し得る。
グルコース応答性インスリン産生能と呼吸活性の統括的評価
本発明では、単離された膵島サンプルの「機能=グルコース応答性インスリン産生能」と「生存性=呼吸活性」を統括的に評価することにより、膵島の移植適応性を判断する。ここで、グルコース応答性インスリン産生能と呼吸活性は別々に測定して、その結果を統括的に評価してもよいし、同一の試験で同時に評価してもよい。すなわち、「グルコース応答性インスリン産生能と呼吸活性を統括的に評価する」とは、グルコース応答性インスリン産生能の測定と呼吸活性の測定を別個に行ない、その結果を組み合わせて評価することのほか、グルコース応答性インスリン産生能と呼吸活性を同時に評価できる試験を行い、その結果から評価することの両方を包含する。したがって、発明者らが開発した呼吸活性SIのように、機能(グルコース応答性インスリン産生能)と生存性(呼吸活性)の両方を反映した測定もまた、グルコース応答性インスリン産生能と呼吸活性の統括的評価に含まれる。
グルコース応答性インスリン産生能
本発明において、膵島の「グルコース応答性インスリン産生能」とは、グルコース濃度変化に応答した膵島細胞からのインスリン分泌であって、従来公知の糖負荷試験や、発明者らが開発した新型糖負荷試験などによって評価できる。特に、サンプルの均一性と測定値の正確性が担保されている新型糖負荷試験によって測定した刺激指数を用いて評価することが好ましい。
刺激指数(SI)
本発明で用いられる「刺激指数(SI=Stimulation Index)は、単離された移植膵島の機能(Function)を評価する指標であって、刺激=糖負荷(グルコース濃度変化)に対する膵島の応答(インスリン分泌)として評価される。
たとえば、発明者らの新型糖負荷試験により膵島のインスリン産生について、刺激指数を測定する場合、そのSIは次式のように定義される:
測定方法の詳細は、次項において詳述する。
呼吸活性値
本発明にかかる「呼吸活性値」は、膵島サンプルの酸素消費量を示す値であって、移植膵島の生存性(Viability)を評価する指標である。次項では、呼吸活性値を膵島細胞表面の局所酸素濃度変化量として測定する方法について詳述する。
呼吸活性SI
本発明にかかる「呼吸活性の刺激指数(呼吸活性SI)」は、糖負荷に応答した呼吸活性値の変化であって、そのSIは次式のように定義される:
2.膵島の評価方法
本発明では、膵島の「機能=グルコース応答性インスリン産生能」と「生存性=呼吸活性」を統括的に評価することで、より正確に膵島の移植適応性を判断する。
以下、具体的な実施形態として、
(1)新型糖負荷試験(New SGS test)と呼吸活性測定を組み合わせて膵島の移植適応性を評価する方法
(2)呼吸活性SIにより膵島の移植適応性を評価する方法
について、具体的に説明する。
2.1 新型糖負荷試験と呼吸活性測定による評価
新型糖負荷試験(New SGS test)
「新型糖負荷試験」は、発明者らが開発した、移植用膵島の機能試験である。本試験では、従来法で問題となっていたサンプルの不均一性の問題を改善するため、同一の膵島サンプルについて、異なるグルコース濃度に対するインスリン産生能の変化を測定する。また、膵島が試験チューブに移動する過程における様々な環境変化によるインスリンベースライン値上昇の影響を排除するため、膵島機能に影響を与えない範囲での十分な洗浄の後に測定を行う。
具体的には、測定容器として、従来のマイクロプレートではなく、膵島を透見できるポリスチレン性の至適サイズを有するプラスチックチューブを用いる。プラスチックチューブは、溶液の交換が容易であり、かつ、最小溶液量での検出が可能となり、さらに可視的に膵島の存在を確認することができることから、膵島の吸い込みを確実に阻止することが可能であり、同一膵島のグルコース濃度に対する反応性の変化を容易かつ迅速に検出することができる。
測定対象である膵島サンプルは、その大きさが統一されていることが望ましいが、本試験は同一膵島がグルコース応答性に産生するインスリン量の比を検出しているために、各試験において大きく異なることがなければ、他の機能試験のように膵島の大きさを厳密に同一化する必要はない。好ましくは、直径100〜200μmの膵島をサンプルとして使用し、さらに好ましくは、直径150μm前後の膵島をサンプルとして使用する。
まず、プラスチックチューブに溶液を2mL満たしたラインをつける。次に、低濃度グルコース溶液を1.5mL満たし、37℃のウォーターバスの中で10分間インキュベートする。
好適には、容量100μlのマイクロキャピラリーを用いることによって、膵島サンプルを1つずつ識別しながら拾い上げ、予め37℃に温めておいた各プラスチックチューブに同じ大きさの膵島サンプルを一定量(たとえば20個づつ)短時間に正確に静置するようにする。
まず、低濃度グルコース含有溶液中でのインスリン分泌量を測定する。膵島サンプルをプラスチックチューブに入れた後、37℃で一定時間(たとえば5分間)、緩やかな震盪下(たとえば22rpm)でインキュベートする。その後37℃で一定時間(たとえば5分間)静置する。静置後、各チューブから一定量(たとえば1.2mLずつ)低濃度グルコース溶液を吸引し、新しい低濃度グルコース溶液を一定量(たとえば1.2mL)追加する。その後37℃で一定時間(たとえば5分間)、緩やかな震盪下(たとえば22rpm)でインキュベートし、37℃で一定時間(たとえば5分間)静置させる。この操作をもう一度繰り返し行う。インキュベーションの際は、必要に応じ、攪拌や振盪等の処置を加えてもよい。十分な洗浄が終了した後、各チューブから一定量(たとえば1.3mL)廃液し、低濃度グルコース溶液を予め線を記してある2.0mLのラインまで追加する。その後、37℃で一定時間(たとえば30分間)、緩やかな震盪下(たとえば22rpm)でインキュベートする。その後37℃で一定時間(たとえば5分間)、静止させる。静置後、溶液の一定量(たとえば1.5mL)をサンプルとして採取し、そのインスリン濃度を測定する。
次に、高濃度グルコース含有溶液中でのインスリン分泌量を測定する。上記の測定に用いたプラスチックチューブ内の膵島サンプルに、予め37℃に保温しておいた高濃度グルコース含有溶液を加え、37℃で一定時間(たとえば、30分間)、緩やかな震盪下(たとえば22rpm)でインキュベーションする。その後37℃で一定時間(たとえば5分間)、静止させる。インキュベーションの際は、必要に応じ、攪拌や振盪等の処置を加えてもよい。静置後、溶液の一定量をサンプルとして採取し、インスリン濃度を測定する。
対照群として、上記の高濃度グルコース含有溶液に代えて低濃度グルコース含有溶液を加えて測定する群も設け、そのインスリン濃度も同様に測定する。
なお、本発明において「低濃度グルコース」とは、1〜5、5mM、好ましくは1.67〜2.5mMグルコースを意味し、たとえば約1.67mMの濃度のグルコース溶液を用いる。また、本発明において「高濃度グルコース」とは、5.5〜30mM、好ましくは16.7〜25mMグルコースを意味し、たとえば約16.7mMの濃度のグルコース溶液を用いる。溶液の組成は、膵島の機能を維持することができるものであればよく、たとえば、CaやMgのような2価のカチオン、血清等の栄養補給成分を含むHEPESのようなバッファーを用いることができる。
サンプル中のインスリン濃度は、たとえば、市販のキットを用いてELISA法等により測定することができる。サンプルは、すぐにインスリン濃度を測定しない場合、氷上で保存しておく。長期間サンプルを保存する場合、2ヶ月間程度であれば−20℃程度で、それ以上の場合であれば−80℃程度で保存しておくことが好ましい。
こうして測定した、低濃度グルコース含有溶液中でのインスリン濃度と高濃度グルコース含有溶液中でのインスリン濃度を前述の(式1)にあてはめ、インスリン産生の刺激指数(SI)を求める。
SIは複数のサンプル、好ましくは1〜6サンプル、より好ましくは1〜3サンプルについて測定し、最終的に平均値を求めて、後述の評価に用いる。
呼吸活性測定
「呼吸活性値」は、膵島の酸素消費量であり細胞の生存性の指標となる。たとえば、発明者らが開発した走査型電気化学顕微鏡を用いる方法により、膵島細胞表面に形成される局所的酸素濃度勾配から膵島の酸素消費量を測定することができる。この方法は、測定に要する時間が非常に短く、1サンプルあたり1〜2分程度で測定することができる。さらに、感度が非常に高く、無侵襲的計測であるため、膵島細胞生存性を正確に判定できるという利点もある。
走査型電気化学顕微鏡は、酸素の還元電位を検出する微小電極を探針とし、試料表面近傍の酸素濃度勾配を電気化学的に計測する装置である。電気化学計測用多検体ウェル(特開2004−108863及び特開2004−108971)を測定溶液で満たし、微小電極に対応する参照極及び対極を多検体ウェル内に配置し、前記微小電極を作用極とし、前記参照極及び対極間で電位制御及び電流検出を行う。微小電極の3次元位置制御(走査)により試料近傍の酸素濃度を還元電流値として検出する。
電気化学顕微鏡計測装置は、顕微鏡ステージ上に設置した微小電極、微小電極位置決め装置、微小電流計測装置、温度制御装置を含む。走査型電気化学顕微鏡を用いた細胞呼吸活性の評価方法は、たとえば、特開2001−330582に、電気化学顕微鏡計測装置は、たとえば、特開2002−122568に開示されている。また、この方法に適した、電気化学計測用多検体ウェルが特開2004−108863及び特開2004−108971に開示されている。
サイズが微小(試料の直径が50〜400μm)でかつ球あるいは円といったシンプルな形状の試料については、球状試料と周囲の溶液との間で物質収支が存在し、試料表面からの距離に比例して物質の濃度勾配が形成されることから、球面拡散の式を適用することができ、試料−溶液間の物質収支速度を定量することができる。本発明では、膵島近傍の局所酸素濃度変化を計測することにより、膵島の酸素消費量、つまり呼吸活性を評価する。
膵島表面の酸素濃度(C)及び膵島沖合の酸素濃度(C)を測定し、これから酸素濃度差(ΔC)=C−Cを求める。これを下記の式に代入することによって、酸素消費量(F)を求めることができる。
呼吸活性値は複数のサンプル、好ましくは1〜50サンプル、より好ましくは5〜10サンプルについて測定し、最終的に平均値を求めて、後述の評価に用いる。
移植適応性の評価
上記のようにして求めたインスリン産生の刺激指数(SI)と呼吸活性値から、膵島の移植適応性を判断する。
判断の基準は、ドナーの種によって適宜設定される。発明者らは、ラットを用いた試験により、グルコース応答性インスリン産生の刺激指数(SI)が1.7以上で、膵島グラフトの呼吸活性値が4.5×1014/mol・s−1以上のケースにおいては、膵島は移植後良好な機能を発揮することを確認した。ヒト膵島は、多くのin vitro膵島機能検査においてラットに近い値を示すことが知られているため、実際の臨床ケースでも上記のラットの閾値にかなり近い値が得られることが期待される。よって、ヒトの場合においても、インスリン産生の刺激指数(SI)が1.7以上であり、かつ、呼吸活性値が4.5×1014/mol・s−1以上であれば、対象の膵島は移植適応性があると判断できる。
2.2 呼吸活性SIによる評価
呼吸活性SI
「呼吸活性SI(呼吸活性の刺激指数)」の測定は、発明者らが開発した手法であって、呼吸状態を通して細胞の生存性をみるとともに、糖負荷に応答した細胞の代謝上昇(呼吸活性も上昇)を評価することにより、膵島の機能と生存性の両方を評価する手法である。
この方法では、前項の新型糖負荷試験に従い、同一膵島サンプル低濃度グルコース含有溶液中での呼吸活性値と高濃度グルコース含有溶液中での呼吸活性値を求める。次いで、前述の(式2)にしたがい、その比=呼吸活性SIを求める。
呼吸活性値は、前項の呼吸活性値測定に従い、膵島細胞表面の局所酸素濃度の変化量として、走査型電気化学顕微鏡を用いて測定する。この方法は、測定に要するサンプルが少なく、高感度な結果が得られるという利点に加えて、1つの試験で機能と生存性の2つのファクターを同時評価できるという利点も有する。
呼吸活性SIは複数のサンプル、好ましくは1〜50サンプル、より好ましくは5〜10サンプルについて測定し、最終的に平均値を求めて、後述の評価に用いる。
移植適応性の評価
上記のようにして求めた呼吸活性SIから、膵島の移植適応性を判断する。
判断の基準は、ドナーの種によって適宜設定される。発明者らは、ラットを用いた試験により、呼吸活性SIが1.5以上のケースにおいては、膵島は移植後良好な機能を発揮することを確認した。ヒト膵島は、多くのin vitro膵島機能検査においてラットに近い値を示すことが知られているため実際の臨床ケースでも上記のラットの閾値にかなり近い値が得られることが期待される。よって、ヒトの場合においても、呼吸活性SIが1.5以上である場合に、対象の膵島は移植適応性があると判断できる。
3. 膵島評価用システム
本発明はまた、上記の評価方法を実施するためのシステムも提供する。前記システムは、単離された膵島について、そのインスリン産生能と呼吸活性を評価するための測定機構と、得られたインスリン産生能と呼吸活性値から前記膵島の移植適応性を判断する機構を有する。
3.1 新型糖負荷試験と呼吸活性測定により膵島の移植適応性を評価するためのシステム
新型糖負荷試験と呼吸活性測定により膵島の移植適応性を評価するためのシステムは、
1) 単離された膵島サンプルについて、グルコース濃度変化に対する同一膵島サンプルのインスリン産生能の変化を測定する機構と、2) 単離された膵島サンプルの呼吸活性値を測定する機構と、3) 上記インスリン産生能の変化及び呼吸活性値に基づき、単離された膵島の移植適応性を評価し、出力するデータ処理機構を有する。
上記インスリン産生能の変化を測定する機構は、膵島サンプルの入ったマイクロキャピラリー収容部と、低濃度グルコース含有溶液および高濃度グルコース含有溶液収容部を有し、各グルコース含有溶液を導入、排出、洗浄する手段を有する。さらに、インスリン濃度を測定するための手段、たとえばELISA法であれば、抗体との反応を行なう手段と、反応によって生じる発光あるいは呈色を検出するための検出手段を有し、得られた検出結果を後述のデータ処理部に送る。
上記呼吸活性値を測定する機構は、呼吸活性を局所酸素濃度変化量により測定する場合であれば、前述したような走査型電気化学顕微鏡を有し、得られた測定結果を後述のデータ処理部に送る。
上記データ処理機構は、コンピューターにより、得られたインスリン産生能の変化及び呼吸活性値に基づき膵島の移植適応性を評価して、その結果を出力する。
なお、本発明のシステムは上記した機構のほか、必要な試薬を格納する手段、各部を制御して測定を適切に実施するための制御手段等を有する。
3.2 呼吸活性SIにより膵島の移植適応性を評価するためのシステム
呼吸活性SIにより膵島の移植適応性を評価するためのシステムは、1) 単離された膵島サンプルについて、グルコース濃度変化に対する同一膵島サンプルの呼吸活性値の変化を測定する機構、2) 上記呼吸活性値の変化に基づき、単離された膵島の移植適応性を評価し、出力するデータ処理機構を有する。
上記呼吸活性値の変化を測定する機構は、膵島サンプルの入ったマイクロキャピラリー収容部と、低濃度グルコース含有溶液および高濃度グルコース含有溶液収容部を有し、各グルコース含有溶液を導入、排出、洗浄する手段と、呼吸活性値を測定する手段を有する。呼吸活性を局所酸素濃度変化量により測定する場合、測定部は、前述したような走査型電気化学顕微鏡を有し、得られた測定結果を後述のデータ処理部に送る。
上記データ処理機構は、コンピューターにより、得られた呼吸活性値に基づき呼吸活性SIを算出し、膵島の移植適応性を評価して、その結果を出力する。
なお、本発明のシステムは上記した機構のほか、必要な試薬を格納する手段、各部を制御して測定を適切に実施するための制御手段等を有する。
4. その他
本発明の評価方法を用いることにより、移植適応性に優れた膵島を選択し、膵島移植の成功率を向上させることができる。本発明の方法で移植適応性ありと判断された膵島は、その機能と生存性の両面において優れ、移植後の高い生着率と機能性が期待される。
本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
実施例1:新型糖負荷試験と呼吸活性測定による評価
1.新型糖負荷試験
試験方法
「新型糖負荷試験」は、発明者らが開発した、移植用膵島の機能試験である。本試験では、従来法で問題となっていたサンプルの不均一性の問題を改善するため、同一の膵島サンプルについて、異なるグルコース濃度に対するインスリン産生能の変化を測定する。また、膵島が試験チューブに移動する過程における様々な環境変化によるインスリンベースライン値上昇の影響を排除するため、膵島機能に影響を与えない範囲での十分な洗浄の後に測定を行う。具体的には、測定容器として、従来のマイクロプレートではなく、膵島を透見できるポリスチレン性の至適サイズを有するプラスチックチューブを用いる。プラスチックチューブは、溶液の交換が容易であり、かつ、最小溶液量での検出が可能となり、さらに可視的に膵島の存在を確認することができることから、膵島の吸い込みを確実に阻止することが可能であり、同一膵島のグルコース濃度に対する反応性の変化を容易かつ迅速に検出することができる。測定対象である膵島サンプルは、その大きさが統一されていることが望ましいが、本試験は同一膵島がグルコース応答性に産生するインスリン量の比を検出しているために、各試験において大きく異なることがなければ、他の機能試験のように膵島の大きさを厳密に同一化する必要はない。試験手順の詳細は以下の通りである。
1) ウォーターバスを37℃に設定する。
2) ポリスチレン性プラスチックチューブに2mlのラインをつける。
3) チューブに1.5mlの低濃度グルコース溶液を入れ、37℃のウォーターバスの中で10分間インキュベートする。使用する低濃度グルコース溶液、高濃度グルコース溶液も一緒に温めておく。
4) 20個の膵島をピックアップし、プラスチックチューブ入れ、37℃で5分間、22rpmで動かしながらインキュベートする。その後37℃で5分間静置する。
5) 各チューブから1.2mlずつ低濃度グルコース溶液を吸引し、新しい低濃度グルコース溶液を1.2ml追加する(膵島を吸引しないよう注意)。その後37℃で5分間、22rpmでインキュベート、37℃で5分間静置させる。
6) 上記5)をもう1度繰り返す。
7) 各チューブから1.3ml廃液し、低濃度グルコース溶液を1.8ml追加する。
8) 37℃で30分間、22rpmでインキュベートする。その後37℃で5分間、静置させる。
9) プラスチックチューブから膵島を吸わないよう気をつけながら1.5mlのサンプルを採取し、エッペンドルフチューブに移す。採取したサンプルはすぐに氷上に配置する。
10) 1本のチューブには引き続き低濃度グルコース溶液、3本のチューブには高濃度グルコース溶液を1.5mlずつ追加する。
11) 37℃で30分間、22rpmでインキュベートする。その後、37℃で5分間静置させる。
12) 各プラスチックチューブから1.5mlのサンプルを採取する。
13) 採取したサンプルは3800rpmで5分間遠心する。遠心後、各チューブから1mlずつサンプルを採取する。
14) サンプルは−80℃の冷凍庫で保存し、後日ELISAを行い、低濃度グルコース溶液と高濃度グルコース溶液におけるインスリン含有量の値の比を算出する。
8週齢の雄性Lewis ratよりType V collagenase (1mg/1mL:SIGMA)を使用し膵島を分離した。分離後、10%ウシ血清入りRPMI溶液で12時間培養し、その後、膵島に各々0(n=7)、40(n=6)、50(n=6)、60(n=7)、80(n=7)秒のheat shockを加え、様々なアポトーシス状態を引き起こした。その上で、各群よりサンプリングを行い、上記手順に従い各群における膵島機能の評価を行った。様々なアポトーシス状態を引き起こした各群の膵島は、それぞれ同種同系の雄性Lewis ratへ 7 IEQs/g(レシピエント体重)で経門脈的に移植され、移植成績と上記膵島機能試験の相関を検討した。
試験結果
移植成績と上記膵島機能試験の相関はr=0.57、p=0.0006であり、有意な相関を認めた。治癒群におけるグルコース応答性インスリンS.IのMean±SEMは7.05±1.86であり、非治癒群におけるグルコース応答性インスリンS.IのMean±SEMは1.31±0.17であった。グルコース応答性インスリンS.Iが1.7以上のケースにおいては、14例中11例(78.6%)で治癒を認めた。
従来法はこれまでヒト臨床膵島移植において、移植成績と全く相関しないことが判明している。今回我々が確立した新型糖負荷試験を、ヒト臨床膵島移植における移植2週後のC-peptide/Glucose比との相関により比較検討してみると(n=18)、有意差は得られなかったものの、グルコース応答性インスリンS.I<1.5のケースにおけるC-peptide/Glucose比のMean±SEMは0.21±0.07であるのに対し、グルコース応答性インスリンS.I>7.0のケースにおけるC-peptide/Glucose比のMean±SEMは0.39±0.08であり、明らかに従来法に比べ有用であることが判明した。
2.呼吸活性測定
試験方法
8週齢の雄性Lewis ratよりType V collagenase (1mg/1mL:SIGMA)を使用し膵島を分離した。分離後、10%ウシ血清入りRPMI溶液で12時間培養し、その後、膵島に各々0(n=7)、40(n=6)、50(n=6)、60(n=7)、80(n=7)秒のheat shockを加え、様々なアポトーシス状態を引き起こした。その上で、各群より無作為に直径約200umの膵島を10個サンプリングし、 走査型電気化学顕微鏡により各々の呼吸活性値を測定した。多検体測定プレート内にマウス胚用HTF培地の一部組成を改変した測定溶液を5 ml入れ、プレート底部に施したマイクロウェル内に膵島を導入した後、それぞれウェル底部の中心に静置した。マイクロ電極は酸素が還元可能な-0.6V vs. Ag/AgClに電位を保持し、微小電極を膵島直近に手動で移動した後、移動速度30 μm/sec、走査距離160 μmの条件で膵島近傍を鉛直方向にコンピューター制御により走査した。1回の測定につき3回微小電極を走査した後、膵島の酸素消費量は球面拡散理論式に基づき専用の解析ソフトで算出した。様々なアポトーシス状態を引き起こした各群の膵島は、それぞれ同種同系の雄性Lewis ratへ7 IEQs/g(レシピエント体重)で経門脈的に移植され、移植成績と上記膵島生存性試験の相関を検討した。
試験結果
移植成績と上記膵島生存性試験の相関はr=0.72、p<0.0001であり、有意な相関を認めた。治癒群における膵島グラフトの呼吸活性値のMean±SEMは5.44±0.24であり、非治癒群における膵島グラフトの呼吸活性値のMean±SEMは2.08±0.44であった。膵島グラフトの呼吸活性値が4.5以上のケースにおいては、14例中12例(85.7%)で治癒を認めた。
3.膵島移植成績
8週齢の雄性Lewis ratを使用した同種同系膵島移植実験における移植成績の評価は、移植2週間後に糖尿病が治癒しているかどうかをもって判定した。糖尿病の治癒の判定は、随時血糖値が200mg/dL以下となっていることをもって治癒と判定した。
新型糖負荷試験による膵島機能検査では、検査陽性例のうち78.6%が実際に移植後良好な機能を発揮し、呼吸活性測定法による膵島生存性検査では、検査陽性例のうち85.7%が実際に移植後良好な機能を発揮した。新型糖負荷試験および呼吸活性測定法を組み合わせることにより、グルコース応答性インスリンS.Iが1.7以上かつ膵島グラフトの呼吸活性値が4.5以上のケースにおいては、11例中11例(100%)で実際に移植後良好な機能を発揮した。さらに、新型糖負荷試験および呼吸活性測定法を組み合わせた場合、検査的中率は93.9%であり、これまでにない移植成績との高い相関を認めた。
実施例2:呼吸活性SIによる評価
試験方法
「呼吸活性SI(呼吸活性の刺激指数)」の測定は、呼吸状態を通して細胞の生存性をみるとともに、糖負荷に応答した細胞の代謝上昇(呼吸活性も上昇)を評価することにより、膵島の機能と生存性の両方を評価する手法である。この方法では、新型糖負荷試験に従い、同一膵島サンプル低濃度グルコース含有溶液中での呼吸活性値と高濃度グルコース含有溶液中での呼吸活性値を求める。次いでその比より呼吸活性SIを求める。呼吸活性値は、走査型電気化学顕微鏡を用いて膵島近傍に形成される酸素濃度勾配を電気化学的に測定し、球面拡散理論式に基づき算出した。この方法は、測定に要するサンプルが少なく、高精度な結果が得られるという利点に加えて、1つの試験で機能と生存性の2つのファクターを同時評価できるという利点も有する。
8週齢の雄性Lewis ratよりType V collagenase (1mg/1mL:SIGMA)を使用し膵島を分離した。分離後、10%ウシ血清入りRPMI溶液で12時間培養し、その後、膵島に各々0(n=7)、40(n=6)、50(n=6)、60(n=7)、80(n=7)秒のheat shockを加え、様々なアポトーシス状態を引き起こした。その上で、各群より無作為に直径約200umの膵島を10個サンプリングし、上記手順に従い各々の呼吸活性SIを測定した。様々なアポトーシス状態を引き起こした各群の膵島は、それぞれ同種同系の雄性Lewis ratへ7 IEQs/g(レシピエント体重)で経門脈的に移植され、移植成績と上記膵島呼吸活性SIの相関を検討した。
試験結果
移植成績と上記膵島呼吸活性SIの相関はr=0.75、p<0.0001であり、有意な相関を認めた。治癒群における膵島グラフトの呼吸活性SIのMean±SEMは1.92±0.19であり、非治癒群における膵島グラフトの呼吸活性SIのMean±SEMは0.65±0.10であった。膵島グラフトの呼吸活性SIが1.5以上のケースにおいては、11例中10例(90.9%)で治癒を認めた。
本発明は一型糖尿病の根治療法である膵島移植の術前の膵島評価方法として有用である。さらに、本発明の方法やシステムは、適宜変更と改良を加えることにより、腎臓や肝細胞を含む他の臓器移植および組織移植における術前評価方法としても利用可能である。

Claims (8)

  1. 単離された膵島サンプルについて、そのグルコース応答性インスリン産生能と呼吸活性値を統括的に評価することにより、前記膵島の移植適応性を評価することを特徴とする、移植用膵島の評価方法であって、
    1) 単離された膵島サンプルについて、グルコース濃度変化に対する同一膵島サンプルのインスリン産生能の変化を測定する工程、
    2) 単離された膵島サンプルの呼吸活性値を測定する工程、
    3) 上記インスリン産生能の変化及び呼吸活性値に基づき、単離された膵島の移植適応性を評価する工程
    を含み、
    前記グルコース応答性インスリン産生能の変化が、次式で示されるインスリン産生の刺激指数(Stimulation Index:SI)によって評価されるものであり、

    (式中、低濃度グルコース含有溶液は1〜5.5mMの濃度であり、高濃度グルコース含有溶液は16.7〜25mMの濃度である)
    前記グルコース応答性インスリン産生のSIが1.7以上、かつ、呼吸活性値が4.5×1014/mol・s-1以上の場合に上記膵島は移植適応性ありと判断する、前記評価方法。
  2. 下記工程を含む、請求項1に記載の方法:
    1) 単離された膵島サンプルについて、グルコース濃度変化に対する同一膵島サンプルの呼吸活性値の変化を測定し、
    2) 上記呼吸活性値の変化に基づき、単離された膵島の移植適応性を評価する。
  3. 上記呼吸活性値の変化が、次式で示される呼吸活性の刺激指数(SI)である、請求項2に記載の評価方法

    (式中、低濃度グルコース含有溶液は1〜5.5mMの濃度であり、高濃度グルコース含有溶液は16.7〜25mMの濃度である)。
  4. 上記呼吸活性SIが1.5以上の場合に、上記膵島は移植適応性ありと判断する、請求項3に記載の評価方法。
  5. 上記呼吸活性値が、膵島細胞表面の局所酸素濃度変化量である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の移植用膵島の評価方法。
  6. 単離された膵島について、そのグルコース応答性インスリン産生能と呼吸活性値を評価するための測定機構と、得られたグルコース応答性インスリン産生能と呼吸活性値から前記膵島の移植適応性を判断する機構を有する、移植用膵島の評価用システムであって、
    1) 単離された膵島サンプルについて、グルコース濃度変化に対する同一膵島サンプルのインスリン産生能の変化を測定する機構、
    2) 単離された膵島サンプルの呼吸活性値を測定する機構、
    3) 上記インスリン産生能の変化及び呼吸活性値に基づき、単離された膵島の移植適応性を評価し、出力するデータ処理機構
    を有し、
    前記データ処理機構は、前記グルコース応答性インスリン産生能の変化を、次式で示されるインスリン産生の刺激指数(Stimulation Index:SI)によって評価し、

    (式中、低濃度グルコース含有溶液は1〜5.5mMの濃度であり、高濃度グルコース含有溶液は16.7〜25mMの濃度である)
    前記グルコース応答性インスリン産生のSIが1.7以上、かつ、呼吸活性値が4.5×1014/mol・s-1以上の場合に上記膵島は移植適応性ありと判断する、前記システム。
  7. 下記の機構を有する請求項6に記載のシステム:
    1) 単離された膵島サンプルについて、グルコース濃度変化に対する同一膵島サンプルの呼吸活性値の変化を測定する機構、
    2) 上記呼吸活性値の変化に基づき、単離された膵島の移植適応性を評価し、出力するデータ処理機構。
  8. 上記呼吸活性値を測定する機構が、走査型電気化学顕微鏡を有する局所酸素濃度変化量の測定機構である、請求項6または7に記載のシステム。
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