JP5192184B2 - 滅菌方法および装置 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化エチレンガス(EOG)等の滅菌ガスの雰囲気中に医療器材等の被滅菌物を置くことにより被滅菌物を滅菌処理する滅菌方法および装置に関するものである。
現在、医療用具等の滅菌処理における一般的な方法の一つとして、滅菌効果の高い酸化エチレンガス等の滅菌ガスを用いる方法が行なわれている。ここで用いられる酸化エチレンガスは、滅菌効果が高い反面、人体へ付着したり吸入されたりすると、その濃度によっては急性中毒や抹消神経障害等を引き起こしたり、発がん性が懸念されたりしている。従って、酸化エチレンを用いて滅菌した医療器具等を用いる場合には、滅菌終了後に被滅菌物の残留酸化エチレンを除去することが不可欠である。
このような酸化エチレンの規制に関しては、例えば、下記の非特許文献1によれば、アメリカ食品医薬品局(FDA)が推奨した医療用具中の酸化エチレン残留規制値は、被滅菌物の種類により5〜250ppmの範囲が示されている。また、下記の特許文献1には、日本国内においても酸化エチレン滅菌装置で滅菌を行なう場合には、上記FDAの規制値以下となるように残留酸化エチレンを除去することが推奨されることが記載されている。
そこで、一般に、酸化エチレンを用いた医療用具の滅菌処理では、滅菌後に被滅菌物から有毒な酸化エチレンを離脱させるために空気置換(エアレーション)工程が必須となっている。
「医療現場の滅菌 改訂」,小林寛伊編,株式会社へるす出版,P.31〜32,(2003) 特開2002−11080
上述したエアレーション工程は、被滅菌物の材質や形状、大きさにも依存するが、10時間〜24時間以上にわたって行なわれ、一連の滅菌処理の中でも最も長時間を要する工程となっている。このため、一連の滅菌処理作業には合計一昼夜以上の時間が必要となっているのが実情である。このエアレーション作業は避けようがないため、滅菌装置の使用者には、一連の滅菌作業時間や滅菌装置台数等に余裕を持って運用することが要求されている。
例えば、上記特許文献1によれば、残留酸化エチレン濃度を250ppmまで低下させるのに10時間、100ppmまで低下させるのに48時間、5ppmまで低下させるのに72時間を要することが記載されている。このため、上記特許文献1では、規制値上限が異なる複数種類の被滅菌物毎に滅菌槽を分けて独立して制御するようにしている。例えば、最も長時間のエアレーションが必要な被滅菌物用の滅菌槽でエアレーション工程のみを行なっている間に、比較的短時間のエアレーションでよい被滅菌物用の滅菌槽では、滅菌工程およびエアレーション工程の合計2工程を行なってしまうように制御する。このように、必要なエアレーション時間に合わせて滅菌槽毎にスケジューリングし、複数槽を同時に制御することで、複数種類の被滅菌物について少しでも効率よく滅菌処理を行なう工夫がなされている。
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、結局、長時間のエアレーションを行なうために複数の滅菌槽を準備したり制御スケジュールを組んだりしなければならない。このように、本質的なエアレーション時間の短縮には至っておらず、一連の滅菌処理作業時間の短縮に関して、目覚しい解決には至っていないのが現状である。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、従来のエアレーション工程に比べて極めて短時間で残留滅菌ガス濃度を低下させるようにした滅菌方法および装置の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の滅菌方法は、所定濃度以上の滅菌ガス中に、紙と樹脂フィルムで形成された滅菌バッグ内に封入した状態で被滅菌物を存在させて滅菌する滅菌工程と、
上記滅菌工程後の被滅菌物を液状もしくは超臨界状態の二酸化炭素中に存在させて被滅菌物の表面に吸着されていた滅菌ガスを二酸化炭素中に抽出させて除去する滅菌ガス除去工程とを行ない、
上記滅菌ガス除去工程は、被滅菌物を滅菌バッグ内に封入したままの状態で被滅菌物の表面から滅菌ガスを除去し、
さらに、上記滅菌ガス除去工程で使用された液状もしくは超臨界状態の二酸化炭素から滅菌ガスを分離して燃焼させることにより除害する除害工程を行なうことを要旨とする。
上記目的を達成するため、本発明の滅菌装置は、所定濃度以上の滅菌ガス中に、紙と樹脂フィルムで形成された滅菌バッグ内に封入した状態で被滅菌物を存在させて滅菌する滅菌手段と、上記滅菌後の被滅菌物を液状もしくは超臨界状態の二酸化炭素中に存在させて被滅菌物の表面に吸着されていた滅菌ガスを二酸化炭素中に抽出させて除去する滅菌ガス除去手段とを備え、
上記滅菌ガス除去手段は、被滅菌物を滅菌バッグ内に封入したままの状態で被滅菌物の表面から滅菌ガスを除去し、
さらに、上記滅菌ガスの除去で使用された液状もしくは超臨界状態の二酸化炭素から滅菌ガスを分離して燃焼させることにより除害する除害手段を備えることを要旨とする。
すなわち、本発明は、滅菌後の被滅菌物を液状もしくは超臨界状態の二酸化炭素中に存在させ、紙と樹脂フィルムで形成された滅菌バッグ内に被滅菌物を封入したままの状態で被滅菌物の表面から滅菌ガスを除去する。このように、滅菌後の被滅菌物を液状もしくは超臨界状態の二酸化炭素中に存在させることにより、被滅菌物の表面に吸着していた滅菌ガス分子が二酸化炭素中に溶解・抽出され、長時間のエアレーションを行なわなくても極めて短時間で被滅菌物の表面から滅菌ガスを除去し、その濃度を低下させることができる。また、滅菌ガスの除去で使用された液状もしくは超臨界状態の二酸化炭素から滅菌ガスを分離して燃焼させることにより除害することができる。
本発明の滅菌方法は、所定濃度以上の滅菌ガス中に被滅菌物を存在させて滅菌する滅菌工程と、高圧で液相を呈する滅菌ガス可溶性の媒体を液状もしくは超臨界状態とした中に上記滅菌工程後の被滅菌物を存在させて被滅菌物の表面から滅菌ガスを除去する滅菌ガス除去工程とを行なう。高圧で液相を呈する滅菌ガス可溶性の媒体としては、例えば二酸化炭素を用いることができる。
図1は、本発明の滅菌方法に用いる本発明の滅菌手段としての滅菌器の一例を示す図である。
上記滅菌器は、滅菌室内を大気圧以下に保持して滅菌等の処理を行なう陰圧タイプのガス滅菌器を示し、滅菌用ガスとして100%濃度の酸化エチレンガスを使用したものを例示して説明する。なお、滅菌用ガスとしては、100%濃度の酸化エチレンガスだけでなく、例えばCOで希釈されている混合ガス等を使用することもできる。
上記滅菌器は、内部に被滅菌物が収容される滅菌室1と、上記滅菌室1内を減圧する真空ポンプ2と、上記滅菌室1に導入する滅菌用ガスとなる液化滅菌剤が充填されて破缶が可能なカートリッジ缶3が挿入され保持する缶保持部4と、上記缶保持部4に保持されたカートリッジ缶3を穿孔針5により穿孔して破缶する破缶手段としての破缶機構6とを備えている。
また、上記滅菌室1内に所定量の水を貯留する貯留容器8と、上記貯留容器8に給水管10により給水を行うための滅菌室1の外部に設けられた給水ボトル9とを備えている。上記給水ボトル9および貯留容器8は給水機構72を構成する。
上記滅菌室1内の貯留容器8と給水ボトル9を接続する給水管10には、給水ボトル9から貯留容器8への給水をオンオフする給水弁15が設けられている。また、上記給水ボトル9には、給水ボトル9内の水量を検知するためのフロートスイッチ16が設けられている。
上記滅菌器は、本体の内部に略直方体状の缶体によって滅菌室1が設けられている。上記滅菌室1内には、例えば図示しないかご等により被滅菌物が収容されるようになっている。上記滅菌室1は、装置の前面に被滅菌物の出し入れをするための開放部を有し、この開放部を気密状に密閉して閉じるための開閉扉21が設けられている。
上記開閉扉21を開いたところには、カートリッジ缶3を保持する缶保持部4が設けられ、上記開閉扉21を開くとカートリッジ缶挿入口が開口するように構成されている。すなわち、上記開閉扉21は、上記缶保持部4のカートリッジ缶挿入口を閉じる開閉扉21として機能する。そして、上記缶保持部4には、カートリッジ缶3を破缶するための破缶機構6が付属している。
また、上記開閉扉21には、上記開閉扉21が開くのをロックするロック手段としてのロック機構22を備えており、図示しない制御手段の制御により、所定の条件において開閉扉21が開くのをロックしたりロックを解除したりする制御を行うように構成されている。
上記滅菌室1には、排気路25により真空ポンプ2が接続され、滅菌室1内を減圧しうるようになっている。上記排気路25には排ガスの流通をオンオフするための排気弁30が設けられるとともに、上記排気弁30より上流側には、上記滅菌室1内の圧力を検知する第1圧力計33が設けられている。また、上記滅菌室1の外周には、ヒータ74が巻回されて滅菌室1内を所定の滅菌温度に加熱するようになっている。
また、上記排気路25に合流するように、排気路25内を流通する排ガスを希釈する希釈空気を導入するための希釈路26が接続されている。上記希釈路26には、希釈空気を濾過する希釈フィルタ29と、希釈空気の流通をオンオフするための希釈弁31が設けられている。
一方、上記滅菌室1には、滅菌室1内に空気を吸気するための吸気路27が接続されている。上記吸気路27には、吸気する空気を濾過する吸気フィルタ28と、吸気空気の流通をオンオフするための吸気弁32が設けられている。
また、上記真空ポンプ2の下流側には、上記滅菌室1から排出された排ガス内の滅菌ガスを吸着する吸着塔(図示せず)、上記吸着塔から排出された排ガス内の滅菌ガスを触媒燃焼させる触媒燃焼装置(図示せず)とを有する除害機構73が接続されている。
図2は、本発明の滅菌方法に用いる本発明の滅菌ガス除去手段としての滅菌ガス除去器の一例を示す図である。
上記滅菌ガス除去器は、炭酸ガス導入路37、排液路38、排気路39が接続された高圧容器35を備えて構成されている。
上記炭酸ガス導入路37には、液化炭酸ガスボンベ36が接続されて高圧容器35内に高圧の炭酸ガスを導入するようになっている。上記炭酸ガス導入路37には、逆止弁42、フィルタ44、締切弁43が設けられるとともに、導入炭酸ガスの導入圧を計測する第2圧力計46が設けられ、さらに放圧弁45が設けられた放圧路53が分岐している。
上記排気路39には、排気弁41が設けられるとともに、高圧容器35内の圧力を計測する第3圧力計49が設けられている。さらに、上記排気路39には、所定の圧力を超えたときに自動的に放圧する安全弁47が設けられている。上記排気路39の高圧容器35内に開口した端部は、高圧容器35の天井部近傍に開口しており、炭酸ガス導入路37から高圧の炭酸ガスが導入され、高圧容器35内に炭酸ガスが充満して所定の高圧になって炭酸ガスが液状化したときに、微開とした排気弁41から粉末状の炭酸ガスが噴出することで、高圧容器35内部が液化炭酸ガスで充満したことを検知するようになっている。なお、図2中符号48は圧力センサである。
また、上記排液路38には排液弁40が設けられ、高圧容器35内に開口した端部は、高圧容器35の底部近傍に開口しており、滅菌ガス除去処理が終了したときに迅速に内部の液化炭酸ガスを排出しうるようになっている。
また、上記高圧容器35には、内部の温度を検知する第1温度センサ50が設けられるとともに、液化炭酸ガスの温度を制御するためのヒータ51と、当該ヒータ51の温度を検知する第2温度センサ52とが設けられている。
つぎに、まず、図1に示した滅菌器を用いた通常の滅菌処理を説明する。
図示しない制御手段により、上述した破缶機構6、給水機構72、除害機構73をそれぞれ構成する機器、弁、センサ、真空ポンプ2等を制御して滅菌処理を行う。
〔カートリッジ缶・被滅菌物受入工程〕
まず、初期状態では、開閉扉21が閉じられ、ロック機構22により開閉扉21がロックされた状態である。ついで、装置の電源がオンにされると、上記穿孔針5の初期位置を確認した後、ロック機構22のロックを解除し、開閉扉21の開扉を許容し、カートリッジ缶3を受け入れ可能な状態にする。
ついで、ユーザにより開閉扉21が開けられ、カートリッジ缶3が缶保持部4に挿入され、滅菌バッグ12に封入された状態の被滅菌物13が滅菌室1に収容されて開閉扉21が閉じられると、滅菌処理開始の指示操作の入力を受け付ける。この指示操作入力の受け付けは、図示しないタッチパネル等により行うことができる。上記指示操作の入力を受け付けると、ロック機構22により開閉扉21をロックし、次のステップに進む。
〔給水工程〕
まず、排気弁30を開弁して他の弁を閉じた状態で真空ポンプ2を稼動することにより、滅菌室1内を減圧する。この真空ポンプ2の駆動が開始したときに、第1圧力計33により、上記滅菌室1の圧力低下状態の異常を検知する。さらに、給水ボトル9のフロートスイッチ16により、給水ボトル9内の水の残量不足を検知する。各異常が検知されると図示しない警報ランプやブザー等により警報するとともに制御を一時停止する。
上記異常が報知されない場合は、つぎのステップに進み、滅菌室1が所定の真空度(例えば−20kPa程度)まで減圧されたときに真空ポンプ2を停止するとともに排気弁30を閉じ、給水弁15を所定時間開弁して給水ボトル9の水を所定量だけ貯留容器8内に吸い上げる。このように、滅菌室1に水を導入することにより、滅菌処理中の滅菌室1内を例えば30〜40%rh程度の所定の湿度に保持して十分な滅菌効果を得るようになっている。
〔滅菌ガス導入工程〕
ついで、排気弁30を開弁した状態で再び真空ポンプ2を稼動するとともに、滅菌室1のヒータ74をオンにし、滅菌室1の加熱と減圧を行う。滅菌室1内が所定の真空度(例えば−85kPa程度)まで低下したことを第1圧力計33で検知し、かつ、滅菌室1内が所定の滅菌温度(例えば40〜55℃程度)まで加熱されていることを図示しない温度センサで検知すると、次のステップに進む。真空度と温度のいずれか一方でも所定値に達しない場合、次のステップには進まず、異常と判断して警報ランプやブザー等により警報する。次のステップでは、まず、排気弁30を閉じて真空ポンプ2を停止し、破缶機構6を稼動して穿孔針5でカートリッジ缶3を破缶し、滅菌ガスを滅菌室1内に導入する。
〔滅菌工程〕
滅菌ガスの導入後は、そのまま滅菌室1のヒータ74の温度制御を継続し、所定時間(例えば3〜6時間程度)滅菌処理が行われる。
〔排気工程〕
滅菌処理が終わると、真空ポンプ2を稼動し、除害機構73の触媒燃焼装置の温度制御をしながら、希釈弁31と排気弁30とを交互に開弁し、滅菌室1内を減圧する。排気の初期段階では滅菌ガスが大量に排出されるため、希釈弁31の開弁時間を排気弁30の開弁時間よりも大きくして希釈率を高くし、排気が進むにつれて徐々に排気される滅菌ガスが少なくなるため徐々に排気弁30の開弁時間を長くするよう制御する。
所定の真空度まで減圧されたら、真空ポンプ2を稼動しながら希釈弁31を開けて除害機構73側に空気を流通させながら、排気弁30を閉じて吸気弁32を開け、滅菌室1内の圧力を大気圧まで戻す。
〔エアレーション工程〕
上記排気工程で行った減圧と大気圧への復元とを複数回繰り返し、滅菌室1内の被滅菌物13に付着した滅菌ガスを所定濃度以下になるまで除去し排出する。ついで、希釈弁31を閉じて排気弁30および吸気弁32を開け、滅菌室1内に空気を流通させて滅菌室1内の空気を入れ替えて残留した滅菌ガスを完全に排出する。
エアレーションが終了すると、真空ポンプ2を停止するとともに滅菌室1のヒータ74および触媒燃焼装置のヒータをオフにし、各弁を全て閉じ、開閉扉21のロック機構22のロックを解除し、滅菌処理が終了した被滅菌物13と使用後のカートリッジ缶3の取出しが可能な状態とする。ユーザが被滅菌物13と使用後のカートリッジ缶3を取出すと、終了処理の操作入力を受け付ける状態となり、タッチパネルでの入力操作の受け付けにより、ロック機構22を作動させて開閉扉21をロックして終了する。
つぎに、本実施形態の滅菌方法について説明する。
本実施形態の滅菌方法では、上記エアレーション工程を行なう代わりに、図2に示した滅菌ガス除去器により滅菌ガス除去工程を行なう。すなわち、滅菌工程が終了した後、エアレーション工程を行なわずに次に述べる滅菌ガス除去工程を行なう。
〔滅菌ガス除去工程〕
滅菌バック12に封入された被滅菌物13を、そのまま滅菌バック12に封入したまま滅菌室1から取出して高圧容器35内に装入し、密閉蓋を閉じる。ついで、排液弁40、放圧弁45を閉じ、排気弁41を微開した状態で、締切弁43を開けて炭酸ガス導入路37から高圧炭酸ガスを高圧容器35内に導入する。
このとき、導入初期は炭酸ガス導入路37からはガス状の炭酸ガスが導入され、高圧容器35内に充満して徐々に圧力が高くなり、所定圧力以上で液状化して液化炭酸ガスで高圧容器35内が満たされる。高圧容器35内が液化炭酸ガスで満たされると、排気路39から粉末状の炭酸ガスが噴出し出すので、その時点で排気弁41と締切弁43を閉じる。
このとき、ヒータ51で高圧容器35を加熱して高圧容器35内の温度が下がりすぎるのを防止し、第1温度センサ50の温度検知結果をヒータ51の制御にフィードバックする。これにより、高圧容器35内を例えば27℃±2℃、6.7MPa±3MPaの範囲の温度と圧力を維持するよう制御する。
15分〜120分程度の滅菌ガス除去処理を行った後、排液弁40を開けて内部の液化炭酸ガスを排出し、高圧容器35から滅菌バッグ12に封止された状態の被滅菌物13を取出して滅菌ガス除去処理を終了する。このように、上記滅菌工程および滅菌ガス除去工程は、被滅菌物13を滅菌バッグ12内に封入した状態でを行なう。
上記滅菌バッグ12は、ガスは通過させるが菌と液体は通過させないバッグであり、紙製バッグ、片面を紙で多面を透明の樹脂フィルムで形成したバッグであり、内部に被滅菌物13を挿入して例えばヒートシール等で封をする。
図3は、本発明の滅菌方法を実施するための滅菌ガス除去手段を備えた滅菌器の一例を示す。
この例では、高圧容器35が滅菌室1を兼ねており、上記高圧容器35内にまず滅菌ガスを導入して滅菌処理を行なうとともに、滅菌処理終了後は上記高圧容器35内に液化炭酸ガスを導入して滅菌ガス除去処理を行いうるようになっている。
図1および図2と同様の部分には同じ符号を付しており、同様の部分は同様の作用効果を奏するが、上記高圧容器35には、給水機構72が接続されて所定量の水を導入しうるようになっている。破缶機構6が接続され、穿孔針5によって破缶されたカートリッジ缶3から滅菌ガスが導入されるようになっている。また、上記高圧容器35には真空ポンプ2および除害機構73が接続されている。図3中符号54は、高圧容器35内の圧力が高くなったときに閉弁する締切弁である。また、上記高圧容器35には、吸気路27が接続され、排気路25に希釈路26が分岐しているのも図1の滅菌器と同様である。
また、上記高圧容器35には、図2の滅菌ガス除去器と同様に、炭酸ガス導入路37、排気路39、排液路38が接続されている。上記排気路39および排液路38は除害機構73に接続されて排出された液化炭酸ガスの除害を行ない得るようになっている。また、上記高圧容器35には、ヒータ51が設けられているのも図2の滅菌ガス除去器と同様である。したがって、図1の滅菌室1に示したヒータ74は設けられていない。
この滅菌ガス除去手段を備えた滅菌器では、滅菌バッグ12に封入された被滅菌物13を高圧容器35に装入するとともに破缶機構6にカートリッジ缶3を装着し、上述したのと同様の〔給水工程〕〔滅菌ガス導入工程〕〔滅菌工程〕を行い、〔排気工程〕を行なった後、〔滅菌ガス除去工程〕を実施することができる。この装置では、滅菌工程から連続的に滅菌ガス除去工程に移行することができる。
被滅菌物13のサンプルとして、ポリカーボネート樹脂成形品およびABS樹脂成形品(いずれも50mm×50mm×5mm)を準備し、図1に示す滅菌器で真空引きと加湿を1時間、滅菌処理を6時間実施し、その後排気工程を行なわずに取出して、図2に示す滅菌ガス除去器に挿入して液化炭酸ガスに浸漬処理(15分、60分、120分)した。このときの制御圧力範囲は6.6〜7.0MPa、制御温度範囲は26〜29℃とした。
滅菌ガス除去器から取出した各サンプルにつき、残留酸化エチレンガスを分析するために一旦−18℃まで冷却し、滅菌バッグ12を開封して内部のサンプルを220ccのガラス容器に封入し、50℃で5時間放置した後に容器内のガスをシリンジで1ccサンプリングしてその残留酸化エチレン濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。
比較例として、図1に示す滅菌器で、真空引きと加湿を1時間、滅菌処理を8時間、排気工程を5時間、エアレーションを10時間実施して取出したサンプルにつき、上記と同様に残留酸化エチレン濃度を測定した。
その結果を図4に示す。図4に示すように、ポリカーボネート樹脂のサンプルでは排気5時間+エアレーション10時間の比較例で酸化エチレンの残留濃度は133ppmであったのに対し、液化炭酸ガス浸漬後のサンプルは、15分の浸漬で124ppm、60分の浸漬で42ppm、120分の浸漬で27ppmと、わずか15分の浸漬で排気5時間+エアレーション10時間行なったものと同等の残留濃度となった。
また、ABS樹脂のサンプルでは排気5時間+エアレーション10時間の比較例で酸化エチレンの残留濃度は200ppmであったのに対し、液化炭酸ガス浸漬後のサンプルは、15分の浸漬で65ppm、60分の浸漬で6ppm、120分の浸漬で2ppmと、わずか15分の浸漬で排気5時間+エアレーション10時間行なったものよりも大幅に低い残留濃度となった。
以上のように、本実施形態では、滅菌後の被滅菌物13を液状の二酸化炭素中に存在させて被滅菌物13の表面から滅菌ガスを除去する。このように、滅菌後の被滅菌物13を液状の二酸化炭素中に存在させることにより、被滅菌物13の表面に吸着していた滅菌ガス分子が二酸化炭素中に溶解・抽出され、長時間のエアレーションを行なわなくても極めて短時間で被滅菌物13の表面から滅菌ガスを除去し、その濃度を低下させることができる。
なお、上記実施形態および実施例では、被滅菌物13を液状の二酸化炭素すなわち液化炭酸ガスに浸漬して酸化エチレンガスの除去を行なうようにしたが、二酸化炭素を臨界点(温度31℃、圧力7.3MPa)以上としたときに得られる超臨界状態とし、その中に被滅菌物13を存在させて滅菌ガスを除去するようにすることもできる。超臨界状態では、液体のように物質を容易に溶解し、気体のように大きな拡散速度を示すため、液体中に存在させるのと同様に酸化エチレンガスを除去することができる。
また、上記実施形態および実施例では、被滅菌物13を滅菌バッグ12に封入された状態で滅菌した例を説明したが、これに限定するものではなく、滅菌バック12に封入しない被滅菌物13を直接滅菌室1や高圧容器35に装入して滅菌および滅菌ガスの除去を行なうようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、本発明を、滅菌室1内を大気圧に対して少し低めの陰圧に保持して滅菌処理を行なう陰圧タイプの滅菌器に適用した例を示したが、これに限定するものではなく、滅菌室1内を大気圧に対して少し高めの陽圧に保持して滅菌処理を行なう陽圧タイプの滅菌器に適用することもできる。
また、上記実施の形態では、滅菌器の滅菌ガスとして、酸化エチレンガスを使用した例を示したが、これに限定するものではなく、滅菌作用を奏するガスであれば各種のガスを適用することができる。また、滅菌ガスの種類等に応じて上述の説明で例示したもの以外にも、適宜の吸着剤を使用することが可能である。
本発明に用いる滅菌器の概略構成図である。 本発明に用いる滅菌ガス除去器の概略構成図である。 滅菌ガス除去手段を備えた滅菌器の一例を示す概略構成図である。 実施例の酸化エチレンの残留濃度の測定結果を示す図である。
符号の説明
1:滅菌室
2:真空ポンプ
3:カートリッジ缶
4:缶保持部
5:穿孔針
6:破缶機構
8:貯留容器
9:給水ボトル
10:給水管
12:滅菌バッグ
13:被滅菌物
15:給水弁
16:フロートスイッチ
21:開閉扉
22:ロック機構
25:排気路
26:希釈路
27:吸気路
28:吸気フィルタ
29:希釈フィルタ
30:排気弁
31:希釈弁
32:吸気弁
33:第1圧力計
35:高圧容器
36:液化炭酸ガスボンベ
37:炭酸ガス導入路
38:排液路
39:排気路
40:排液弁
41:排気弁
42:逆止弁
43:締切弁
44:フィルタ
45:放圧弁
46:第2圧力計
47:安全弁
48:圧力センサ
49:第3圧力計
50:第1温度センサ
51:ヒータ
52:第2温度センサ
53:放圧路
54:締切弁
72:給水機構
73:除害機構
74:ヒータ

Claims (2)

  1. 所定濃度以上の滅菌ガス中に、紙と樹脂フィルムで形成された滅菌バッグ内に封入した状態で被滅菌物を存在させて滅菌する滅菌工程と、
    上記滅菌工程後の被滅菌物を液状もしくは超臨界状態の二酸化炭素中に存在させて被滅菌物の表面に吸着されていた滅菌ガスを二酸化炭素中に抽出させて除去する滅菌ガス除去工程とを行ない、
    上記滅菌ガス除去工程は、被滅菌物を滅菌バッグ内に封入したままの状態で被滅菌物の表面から滅菌ガスを除去し、
    さらに、上記滅菌ガス除去工程で使用された液状もしくは超臨界状態の二酸化炭素から滅菌ガスを分離して燃焼させることにより除害する除害工程を行なうことを特徴とする滅菌方法。
  2. 所定濃度以上の滅菌ガス中に、紙と樹脂フィルムで形成された滅菌バッグ内に封入した状態で被滅菌物を存在させて滅菌する滅菌手段と、上記滅菌後の被滅菌物を液状もしくは超臨界状態の二酸化炭素中に存在させて被滅菌物の表面に吸着されていた滅菌ガスを二酸化炭素中に抽出させて除去する滅菌ガス除去手段とを備え、
    上記滅菌ガス除去手段は、被滅菌物を滅菌バッグ内に封入したままの状態で被滅菌物の表面から滅菌ガスを除去し、
    さらに、上記滅菌ガスの除去で使用された液状もしくは超臨界状態の二酸化炭素から滅菌ガスを分離して燃焼させることにより除害する除害手段を備えることを特徴とする滅菌装置。
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