JP5185641B2 - 高速ガス溶射装置、プラズマ溶射装置及び噴射口部材 - Google Patents

高速ガス溶射装置、プラズマ溶射装置及び噴射口部材 Download PDF

Info

Publication number
JP5185641B2
JP5185641B2 JP2008019336A JP2008019336A JP5185641B2 JP 5185641 B2 JP5185641 B2 JP 5185641B2 JP 2008019336 A JP2008019336 A JP 2008019336A JP 2008019336 A JP2008019336 A JP 2008019336A JP 5185641 B2 JP5185641 B2 JP 5185641B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thermal spray
thermal
gas
spraying
spray material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2008019336A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009179846A (ja
Inventor
伸雄 米倉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Hardfacing Corp
Original Assignee
Nippon Steel Hardfacing Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Hardfacing Corp filed Critical Nippon Steel Hardfacing Corp
Priority to JP2008019336A priority Critical patent/JP5185641B2/ja
Publication of JP2009179846A publication Critical patent/JP2009179846A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5185641B2 publication Critical patent/JP5185641B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Nozzles (AREA)
  • Coating By Spraying Or Casting (AREA)

Description

本発明は、被溶射材に対して溶射材料を溶射する溶射装置に係り、溶射材料の溶射装置内部への付着を防ぐことのできる溶射材料を供給する供給部および燃焼ガスが噴射される溶射装置の先端部分の構造に関するものである。
従来、耐摩耗性や耐食性などに優れる緻密な溶射皮膜を得るために、高速ガス溶射機やプラズマガス溶射機が使用されている。
例えば、米国特許5,271,965号公報には高速ガス溶射機の一例が記載されている。この特許に基づいて市販されている高速ガス溶射機を図1に示す。この高速ガス溶射機は大きく分けて、後端に配置された燃焼室尾栓1と、その溶射方向前方の燃焼室2と、燃焼室2に連結される溶射ノズル5から構成されている。
燃料室尾栓1には、灯油又はケロシンなどの燃料を溶射方向前方に高速で供給する燃料供給孔7と、酸素ガスを溶射方向前方に高速で供給する酸素供給孔8が配置されている。
燃焼室尾栓1が取り付けられる燃焼室2は、円筒状に形成されており、溶射ノズル5との連結部分には、直径が小さく絞られた後徐々に広がっていく形状のラバル型ノズル3が形成されている。
燃焼室2とラバル型ノズル3を介して連結される溶射ノズル5は、内径が約11mmで10cmから20cm程度の長さを有する銅管であり、外側から水冷されている。溶射ノズル5のラバル型ノズル3側には溶射材料を供給する溶射材料供給部4が配置されている。溶射材料にはNi基、Ni−Cr基又はCo基の合金に、耐摩耗性など必要とする特性に合わせた材料を加えた材料が用いられる。
溶射を行う場合には、まず燃焼室尾栓1に設置された灯油又はケロシン供給孔7および酸素供給孔8から供給された燃料および酸素を燃焼室2内で燃焼させる。この際の燃焼室2内の燃焼ガスは、圧力が約0.7MPa、燃焼温度が3000℃程度となる。そして、燃焼ガスはラバル型ノズルに送り込まれ、ラバル型ノズル3を通過する際に音速から超音速(マッハ2.5程度)に加速され、溶射ノズル5に供給される。そして、ラバル型ノズル3と溶射ノズル5の連結部分において、加速された燃焼ガスに対して溶射材料供給部4から溶射材料が吹き込まれる。溶射材料は燃焼ガスによって加速されると共に加熱される。燃焼ガスと溶射材料とは、溶射ノズル5を通過することで整流され、集束性が高められて溶射ノズル5の先端から噴射される。これにより、溶射材料を非常に高速で噴射して、被溶射材に溶射することができる。
このような溶射機によれば、溶射材料を高速で溶射することができるため、被溶射材との密着性に優れた緻密な溶射皮膜を形成することが可能である。
米国特許5,271,965号 特開2003−129212号公報
上記のような、高速ガス溶射機を用いて溶射を行う場合には、溶射材料として、通常、粒径が30μmから40μmの粒子状の溶射材料を用いている。
しかし、この程度の粒径を有する溶射材料を用いて被溶射材に溶射皮膜を形成すると、その溶射皮膜の中に、面積比で1%から3%の気孔が生じてしまうという問題がある。溶射皮膜中に気孔が存在すると溶射皮膜の緻密性が低くなり、気孔が存在しない場合に比べて耐摩耗性、皮膜強度、被溶射材との密着性などが低下する。さらに、皮膜の内部にまで貫通するような気孔が形成されてしまった場合には、耐食性が低下することにもつながる。
そこで、上記従来の粒径より小さい粒径を有する溶射材料を使用して溶射を行うことにより、被溶射材に形成された溶射皮膜中における溶射材料の占める割合を高め、気孔を減少させることについて検討が行われている。そして、図2には、燃料として灯油を15.9リットル/h、酸素を48m/hの流量で供給して燃焼し、溶射材料としてWC−Co粒子を供給した場合に、溶射ノズルの先端から燃焼ガス流れの下流方向の300mmの位置において粒子の速度を測定した結果のグラフを示す。この図2に示す、溶射粒子の粒径と粒子の速度との関係からわかるように、粒径を小さくすることによって、粒子の速度が上昇するという効果も得られる。粒子速度がより高速であれば、粒子が被溶射材に衝突する際により扁平に変形して、より緻密な膜が得られる。したがって、従来の粒径より小さい粒径の溶射材料を溶射することができれば、より緻密な膜が得られると考えられる。
しかし、従来の高速ガス溶射機においては、溶射ノズル5内に吹き込まれて溶融した溶射材料が水冷された溶射ノズル5の内壁に接触し、付着、酸化する現象が生じる問題がある。溶射材料が内面に付着すると、溶射ノズル5内面に粗さが生じさらに溶射材料の酸化物の堆積を起こすなど、燃焼ガスの流れの乱れや溶射ノズル5の閉塞の原因となる。図3には、内面に酸化した溶射材料が付着した状態の溶射ノズル5の断面図を示す。
また、堆積した酸化溶射材料は、溶射ノズル5内面から剥がれ落ちて燃焼ガスによって噴射されるスピッティングという現象の原因ともなる。スピッティングが起こって剥がれ落ちた酸化溶射材料は燃焼ガスによって被溶射材に吹き付けられることになるが、被溶射材から欠落してピンホ−ルになったり欠落しない場合には突起物となって品質が低下し製品とならないため溶射皮膜を再研磨し、再溶射せざるを得なくなる。
そして、従来の粒径より小さな粒径を有する溶射材料を用いて溶射を行うと、溶射装置内部への付着やスピッティングはさらに顕著になってしまう。これは、溶射粒子が小さいと比表面積が大きくなり、粒子が過度に加熱されて粒径が大きい場合より溶融しやすくなるためである。これは、図2に示した粒径と粒子速度との関係を測定した場合と同様の条件において、溶射粒子の粒径と粒子温度の関係を測定した結果を表す図4からも明らかである。図4に示すように、溶射粒子の粒径が小さいと燃焼ガスの熱により粒子の温度が非常に高温となる。その結果、溶射粒子の温度が溶射に適した温度を超えてしまい、粒子が溶融してしまう。そして、溶射粒子が溶融することにより、溶射装置内部への付着が起こりやすくなってしまう。
このように、図1に示すような従来の溶射装置をそのまま用いて、粒径の小さい溶射材料を長時間安定して溶射することは非常に困難であった。
そのため、上記のような通常の粒子径の溶射材料を使用した場合のみならず、緻密な溶射皮膜を形成するために粒子径の小さい微粉の溶射材料を使用した場合にも、スピッティングの発生が起こりにくい高速ガス溶射機が求められていた。
この課題に対して、特許文献2(特開2003−129212号公報)には、溶射材料を供給するノズルを溶射装置の溶射方向前方側に配置した溶射機が記載されている。当該溶射機の構造を図5に示す。この溶射機によれば、溶射材料供給ノズルが溶射装置の溶射方向前方側に配置されているため、スピッティングが生じにくいという効果が得られるとしている。
また、この溶射機は、燃焼ガスが流通する空孔の途中に段差を設け、その端面に燃焼ガスを包囲するような筒状の気流を噴出する噴出口を有している。これにより、燃焼ガスを筒状の気流で包囲しながら噴射することができる。そして、溶射材料供給ノズルは、その先端が溶射機の空孔の(第2の空孔の下流側)内面に突出して、上記筒状の気流の内側に溶射材料を供給する構成としている。これによって、溶射材料は筒状の気流の内側において軟化、溶融されて溶射機の外部に吐出されるため、溶融した溶射材料が溶射機の内部に付着することや、それによるスピッティングが起こりにくいとの効果が得られるとしている。
しかし、このような溶射機の構造の場合には、溶射材料を供給するノズルの先端が噴射孔内面に突き出しているため、上記筒状の圧縮空気はこのノズルの先端を突っ切ることになり、気流が乱れてしまう。また、燃焼ガスもこの気流の乱れの影響を受け、気流の乱れが生じてしまう。筒状ガスの気流の乱れが発生すると、溶射粒子が燃焼ガス内に円滑に進入することが妨げられてしまう。燃焼ガス内に入りきらない溶射粒子は、溶射方向前方に進行せずに周囲に飛散して、溶射機の噴射孔先端部を損傷したり溶射皮膜に混入して皮膜の品質を低下させたりする原因となる。
また、ノズルの先端が空孔の内面に突出する構造となっているため、溶射材料を供給するノズルが燃焼ガスの熱により溶融しないように、ノズルの先端を燃焼ガスから離す必要がある。ノズルの先端が燃焼ガスから離れていると溶射材料が燃焼ガス中に引き込まれず、高速の燃焼ガスに弾き飛ばされてしまう場合がある。そして、溶射材料が10μmより小さい粒径の微粉の場合には、運動エネルギーが小さいため燃焼ガスの表面で弾き飛ばされる割合が高くなり、被溶射材の品質の低下や、溶射機自身の損傷、歩留の低下などの原因となる。
このような課題から、本願発明は粒径の小さい微粉の溶射材料を使用した場合であっても、溶射材料の溶射装置内部への付着やスピッティングが起こりにくく、溶射材料を円滑に燃焼ガス内に導入することができるような構造を有する高速ガス溶射機を提供することを目的とする。
また、本発明の高速ガス溶射装置は、燃焼ガスを溶射方向に噴射する溶射ノズルと、溶射ノズル内を流れる燃焼ガスに対して平均粒径10μm以下の溶射材料を供給する溶射材料供給部とを有し、燃焼ガスによって溶射材料を被溶射材に溶射する溶射装置であって、溶射材料供給部による溶射材料の供給位置を、溶射ノズルの先端の噴射口との間隔が30mm以内の位置に設定したことを特徴とする。
また、本発明の噴射口部材は、溶射ノズルから溶射方向に噴射される燃焼ガスによって平均粒径10μm以下の溶射材料を被溶射材に溶射する高速ガス溶射装置の、溶射ノズルの先端に取り付けられる噴射口部材であって、溶射ノズルの内径と同等以上の内径を有し、溶射ノズルと連通して前記溶射ノズルから供給される燃焼ガスを溶射方向に噴射する噴射口と、噴射口内を流れる燃焼ガスに対して溶射材料を供給する溶射材料供給部とを有し、溶射材料供給部から供給された溶射材料が燃焼ガスの熱によって溶融する前に噴射口から排出されるように、溶射材料供給部による溶射材料の供給位置を設定したことを特徴とする。
本発明の溶射装置によれば、溶射材料供給部から燃焼ガスに対して供給された溶射材料が、燃焼ガスの熱により溶融する前に、溶射装置の噴射口から排出されるような位置に溶射材料供給部の供給位置が設定されているため、溶射装置の内部に溶射材料が付着したりスピッティングが起こったりすることを防ぐことができる。
また、本発明の溶射装置によれば、溶射材料が粒径の小さい粒子であっても溶射装置内部への付着やスピッティングを防ぐことが可能であるため、被溶射材に対して溶射材料が緻密に堆積した皮膜を形成することができ、より耐摩耗性、耐食性等に優れた溶射皮膜が得られる。
以下、図面に示す本実施形態に基づいて、本願発明に係る溶射装置を説明する。本実施形態の溶射装置は、耐摩耗性、耐食性などが要求されるロールなどの被溶射材に向けて、溶射材料を高速で溶射する溶射装置であって、粒径の小さい溶射材料でも安定して溶射することを可能とするものである。
(実施例1)
図6は、本実施形態の実施例1の高速ガス溶射装置100の断面図である。高速ガス溶射装置100は大別すると、燃焼室101とその溶射方向前方に配置される溶射ノズル103から構成される。
燃焼室101は、溶射方向に長手方向を有して筒状に形成され、燃焼室101の後端は燃料供給部106と酸素ガス供給部107を有する燃焼室尾栓105により密閉される。この燃料供給部106からは燃料が、酸素ガス供給部107からは酸素ガスが、溶射ノズル103の方向(以下、「溶射方向」とする。)に向けて高速で供給される。燃料としては、灯油などを用いる。燃料(灯油)の流量は15.5リットル/h〜26.5リットル/h程度が好ましく、酸素の流量は48m/h〜53m/h程度が好ましい。燃焼室101の溶射ノズル103との連結部分にはラバル型ノズル102が形成されている。ラバル型ノズル102は燃焼室101の径から小さく絞り込まれた後、径が徐々に大きくなる形状のノズルである。ラバル型ノズル102に対して高圧で流体を供給すると、通過する流体の速度を大幅に加速することが可能であり、供給する流体の温度、圧力によっては超音速にまで速度を上昇させることができる。
燃焼室101及びラバル型ノズル102の溶射方向前方に配置される溶射ノズル103は、燃焼室101のラバル型ノズル102の先端と同じ径であり、長手方向に渡ってその径が一定の中空の銅管である。長さは10cmから20cm程度のものが好ましい。この溶射ノズル103は燃焼室101から供給される高速の燃焼ガスを整流し、集束性を高める。そのため、上記の長さより短いと整流効果や集束効果が少なく、また、上記の範囲より長すぎると、燃焼ガスの速度が低下してしまう。
この溶射ノズル103の先端は、溶射装置100の先端部分において外部に開口しており、溶射装置100から燃焼ガスとともに溶射材料が噴射される噴射口103aを形成する。
以上の燃焼室101、ラバル型ノズル102および溶射ノズル103の基本的な構成は、図1に示したような従来の高速ガス溶射装置と同様の構成である。
次に、本実施例の溶射装置100の特徴的な部分である、溶射材料供給部104について説明する。溶射材料供給部104は、溶射ノズル103の溶射方向先端側に配置されている。この溶射材料供給部104は、従来の溶射装置における通常の溶射材料を供給するために用いられるノズルと同様の構造であるが、溶射材料の供給位置である先端部104aが溶射ノズル103の内面に突出しないように開口している。また、溶射材料供給部104は不図示の溶射材料供給装置に接続されており、溶射材料供給装置から供給される溶射材料は、溶射材料供給部104の先端部104aから、溶射方向に高速で移動する燃焼ガスに対して供給される。またこのとき、溶射材料は不図示の溶射材料供給装置から窒素ガス等のキャリアガスによって溶射材料供給部104に運ばれ、キャリアガスとともに燃焼ガスに対して吹き込まれることによって供給される。
溶射材料供給部104による溶射材料の供給位置について説明する。溶射材料供給部104による、燃焼ガスに対する溶射材料の供給位置である先端部104aは、溶射装置100内部において溶射材料供給部104から燃焼ガスに対して供給された溶射材料が、燃焼ガスにより溶融してしまう前に溶射装置100の噴射口103aから外部に排出されるように、溶射材料を供給できる位置に設定されている。
図1に示した従来の溶射装置のように、溶射ノズル5とラバル型ノズル3の間に溶射材料供給部4が配置されていると、溶射材料が溶射ノズル5内部を通過していく間に溶射材料の粒子が溶融して、水冷された溶射ノズル5内面に付着しやすかった。
一方、本実施例の溶射装置100においては、上記のように、溶射材料の供給位置である先端部104aが、燃焼ガスに対して溶射材料が供給されてから溶融する前に噴射口103aから溶射装置100の外部に噴射されるような、従来に比べて燃焼ガス流れの下流側の位置に設定されている。そのため、溶射材料の粒子が溶射ノズル103の内部において付着しやすい状態となる前に溶射装置100外に排出されることとなり、溶射ノズル103の内面などへの溶射材料の付着が起こりににくくすることができる。付着が起こりにくくなることにより、スピッティングの発生も効果的に防ぐことができる。
上記のような条件を満たす溶射材料供給部104による溶射材料の供給位置として、溶射材料の溶融温度をT1、溶射材料の粒子の噴射口103aにおける温度をT2とすると、
T1>T2 (1)
なる条件を満たして溶射材料を供給することができる位置に、溶射材料供給部104の供給位置(先端部104a)を設定することが好ましい。このような位置に先端部104aを配置すれば、溶射材料は付着しやすい溶融状態となる前に溶射装置100から排出され、溶射材料の装置内部への付着やスピッティングを防ぐことができる。
また、本実施形態においては、溶射材料供給部104による溶射材料の供給位置である先端部104aを、溶射装置100の先端に位置する噴射口103aとの間隔が30mm以内の位置に配置している。この位置であれば、上記の条件を満たすことができ、溶射材料が溶射材料供給部104から燃焼ガス中に供給されても溶射ノズル103内面などへ溶射材料が付着することなく装置外に噴射され、スピッティングを防止することができる。30mmより燃焼ガス流れの上流側に配置した場合には、溶射材料の溶射ノズル103内への付着やスピッティングが発生する。なお、溶射ノズル103内への付着やスピッティングの発生は目視により確認した。
また、当該範囲の位置に溶射材料供給部104の溶射材料供給位置を設定すると、従来に比べて溶射材料が溶射ノズル103内部を通過する距離が非常に短いので、溶射材料が溶射ノズル内面に衝突して摩耗することを防ぐことができるという効果も得られる。図1に示したような従来の溶射装置の場合には、溶射ノズル5の燃焼室2側の端から終端まで溶射材料が通過するため、溶射ノズル5内面が摩耗してしまい、溶射ノズルの寿命が非常に短かった。しかし、本実施例のように溶射材料の供給位置(104a)が噴射口103aの付近に配置されていれば、溶射ノズル103内を通過する距離は短くなるので、溶射ノズル103内面の摩耗を防ぐことができる。
なお、図6に示す溶射装置100には、溶射材料供給部104が溶射ノズル103の先端側の上下二箇所に設けられているが、一か所でも構わないし、複数箇所設けてもよい。
溶射材料供給部104から供給する溶射材料としては、Ni基、Ni−Cr基、Co基などの合金と要求される耐性に合わせた機能を有する材料とを混合したものを用いることができる。また、その溶射材料の平均粒子径は、レーザー回析散乱式測定法により算出されるメジアン径とも呼ばれるD50%40μm〜0.5μmの大きさのものを用いることができる。通常の高速ガス溶射装置では、一般に微粉と呼ばれる平均粒子径が10μmより小さい径の粒子の溶射材料を用いると、粒子の温度が上昇しすぎて溶融してしまうため、溶射機内部に容易に付着して、スピッティングや溶射ノズルの閉塞を起こしやすかった。しかし、本実施例の高速ガス溶射装置100によれば、溶射ノズル103内部への付着が起こりにくくスピッティングを効果的に防ぐことができるため、従来の高速ガス溶射装置では使用することが難しかった、平均粒径10μm以下の粒径の粒子を含む微粉溶射材料であっても安定して溶射することができる。
また、本実施例の溶射材料供給部104は、先端部104aが溶射ノズル103の内面に突出せずに配置されており、溶射ノズル103内を流れる燃焼ガス内に突出していない。溶射材料供給部104の先端が燃焼ガス内に突出している場合には燃焼ガスの気流が乱れて、供給された溶射材料が燃焼ガスに弾き飛ばされる場合がある。そのため、本実施例のように溶射材料供給部104の先端部104aが溶射ノズル103の内面に突出しないように配置するのが好ましい。さらに、溶射材料供給部104の先端部104aが高温の燃焼ガス中に突出していないため、溶射材料供給部104が溶損することも防ぐことができる。
その他の構成としては、燃焼室101や溶射ノズル103の周囲には、溶射装置100を冷却する冷却水を循環するための冷却管108が配置されている。冷却水は、冷却管供給孔108aから導入され、冷却管排出口108bから排出される。溶射装置100は溶射時には非常に高温になるため、このような冷却構造を有するのが好ましい。
次に、本実施形態の溶射装置100の動作を説明する。
上記のように、本実施形態の高速ガス溶射装置100は、その後端に配置される燃料供給部106および酸素ガス供給部107から高速で供給される燃料および酸素に点火して得られる高速の燃焼ガスを溶射ノズル103のから噴射し、その燃焼ガスに対して溶射材料を供給することで、溶射材料を高速で被溶射材に衝突させる。
まず、灯油などの燃料と酸素を燃焼室101後方の燃料供給部106と酸素ガス供給部107から、それぞれ、燃料(灯油)を流量15.5リットル/h〜26.5リットル/h程度で、酸素を流量48m/h〜53m/h程度で供給する。その状態で燃料に点火して燃焼させ、燃焼ガスを燃焼室101から溶射ノズル103先端の噴射口103aに向けて高速で噴射する。その際に、燃焼ガスはラバル型ノズル102を通過することにより、燃料供給部106及び酸素ガス供給部107から供給される速度からさらに高速に加速され、超音速に達する。加速された燃焼ガスは、溶射ノズル103を通過する際に整流され、集束性が高められる。
そして、その燃焼ガスに対して、溶射ノズル103の先端側に配置された溶射材料供給部104から溶射材料が供給される。上記のように、溶射材料供給部104からの溶射材料の供給位置(104a)は、溶射材料が燃焼ガスに供給されて溶射材料の粒子が溶融する前に噴射口103aから排出される位置に設定される。そのため、燃焼ガスに供給された溶射材料は、溶融してしまう前に溶射装置100外へ噴射され、溶射ノズル103などに付着することがない。溶射装置100内部に付着せずに噴射された溶射材料は、被溶射材に到達するまでの間に、それぞれの溶射材料の溶射に適した温度に達し、被溶射材に衝突して溶射皮膜が形成される。ここで、従来のような10μm〜30μm程度の粒径の溶射材料の場合には、微粉の溶射材料に比べて温度が上昇しにくい。したがって、燃焼ガスに導入されてから被溶射材に衝突するまでの距離が短すぎると、溶射に適した温度に上昇する前に被溶射材に到達してしまう。そうすると、溶射被膜の質の低下を招くことになる。しかし、本実施例の溶射装置のように、粒径の小さい(平均粒径10μm以下)溶射材料を使用する場合には、図4に示したグラフからもわかるように、温度が上昇しやすい。そのため、燃焼ガスに導入されるのが溶射ノズル103の先端部分であっても、溶射に適した温度に達して溶射される。
また、本実施例の溶射材料供給部104は超音速で流れている燃焼ガスに対して直接溶射材料を供給しているため、動圧による負圧化により溶射材料が燃焼ガスに速やかに引き込まれていく。そのため、溶射材料が燃焼ガスに弾き飛ばされて溶射機を損傷することがない。また、歩留も向上することができる。
(実施例2)
図7は、本実施形態の実施例2の高速ガス溶射装置200の断面図である。本実施例2は、溶射材料供給部204が傾斜している点で実施例1の溶射装置100と異なる。それ以外の構成は実施例1の高速ガス溶射装置100と同じであるので、説明が重複する部分は省略する。また、実施例1の溶射装置100と同じ部材には同じ番号を付す。
図6に示す実施例1の溶射材料供給部104は、溶射方向に直交する方向に向けて溶射材料を供給するように形成されているが、本実施例の溶射材料供給部204は、溶射方向に直交する方向に対して、溶射ノズル103側に傾斜して形成されている。すなわち、溶射方向に直行する方向よりも、溶射方向下流側に傾いた向きに溶射材料が供給されるように、溶射材料供給部104が傾斜して配置されている。これによって、溶射材料供給部204が溶射方向に直行して配置されている場合に比べて、溶射材料が燃焼ガスの進行方向に向けて供給されることになるので、溶射材料を燃焼ガス中に引き込みやすくすることができる。
また、溶射材料供給部204の傾斜角は、溶射材料の供給方向の延長線上が、噴射口103aよりも溶射装置200の外側となるような角度で配置してもよい。このように溶射材料供給部204を配置することによって、溶射材料が燃焼ガスを突っ切って進行してしまっても、溶射材料の供給方向の延長線上が溶射装置200の外側であるため、溶射材料が溶射ノズル203の内面等の溶射装置内部に衝突したり付着したりすることを防ぐことができる。
本実施例の溶射材料供給部204は、実施例1の場合と同様に、溶射装置200内部において溶射材料供給部204の先端部204aから燃焼ガスに対して供給された溶射材料が、燃焼ガスにより溶融してしまう前に溶射装置200の噴射口103aから外に排出されるように、溶射材料を供給することができる位置に配置する。
さらに、溶射材料の溶融温度をT1、溶射材料の粒子の噴射口103aにおける温度をT2とすると、
T1>T2 (1)
なる条件を満たして溶射材料を供給することができる位置に溶射材料供給部204の先端部204aを配置することが好ましい。
なお、本実施例においては、実施例1と同様に、溶射材料供給部204の先端部204aを、溶射装置200の先端に位置する噴射口103aとの間隔が30mm以内の位置に配置している。
なお、溶射材料供給部204は、溶射材料が上述のように溶射方向側に傾斜した方向に供給されれば、どのように形成してもよい。すなわち、溶射材料供給部204の先端部204a(供給位置)が、その溶射材料供給方向上流側の部分よりも溶射方向前方側に配置されることにより、傾斜部分を形成し、当該傾斜部分を通過することにより溶射材料が燃焼ガスに対して斜めに供給することができればよい。図6に示す本実施例の溶射装置200においては、溶射材料供給部204全体が傾斜して配置されているが、例えば、溶射材料供給部204の先端側のみを傾斜させた形状としてもよい。つまり、溶射材料の供給方向が燃焼ガスの流れ方向の成分を有するように、溶射材料を供給することができるような形状であればよい。
(実施例3)
図8は、実施例3の高速ガス溶射装置300の断面図である。本実施例3の溶射装置300は、溶射装置の先端部から、噴射口103aから噴射される溶射材料を含む燃焼ガスを包囲するように筒状の気流の筒状ガス311を供給する、筒状ガス供給部310を有している点がこれまでの実施例と異なる。この筒状ガス供給部310から不活性ガスを供給して、燃焼ガスを包囲する筒状ガス311を形成することにより、筒状ガス311の気流の内部を不活性ガス雰囲気化にして、燃焼ガスの流れが大気中の酸素を巻き込むことを防ぎ、溶射材料の酸化を抑制することができる。溶射材料供給部104の先端部104aの配置位置の条件およびその他の構成は、実施例1の溶射装置100と同様である。
以下、溶射装置300を具体的に説明する。なお、すでに説明した構成と同じ点については、説明を省略する。
筒状ガス供給部310は、不図示のガス供給装置から供給された不活性ガスを、噴射口103aを包囲するように形成されたスリット状の筒状ガス供給孔310aから噴射するものである。噴射口103aを包囲するように筒状ガス供給孔310aが形成されているので、筒状ガス供給孔310aから不活性ガスを噴射すると、噴射口103aから噴射される燃焼ガスを包囲するような不活性ガスの筒状(トンネル状)の気流(筒状ガス311)を形成することができる。
このようにして、溶射材料を含む燃焼ガスを筒状ガス311で包囲しながら溶射を行うことにより、燃焼ガス中の溶射材料の表面が酸化することを防ぐことができる。筒状ガス311がない場合には、溶射材料を含む燃焼ガスが噴射口103aから噴射された後、被溶射材に衝突して溶射材料が衝突するまでの間、燃焼ガスは空気に接触して高速で流れていく。そのため、燃焼ガスは周囲の空気を巻き込んでいき、その空気中の酸素によって溶射材料の粒子の表面が酸化してしまう。酸化被膜を形成した粒子は、粒子間の結合力が低下し、被溶射材との付着力が低下する。
しかし、本実施例の溶射装置300を用いて、燃焼ガスを不活性ガスの筒状ガス311で包囲しながら溶射すれば、不活性ガス雰囲気化を燃焼ガスが流れることになり、燃焼ガスが巻き込む空気を少なくすることができる。その結果として、燃焼ガス中の酸素分圧が低くなり、燃焼ガス中の溶射材料が酸化することを防ぐことができる。
この筒状ガス供給孔310aは、燃焼ガスを包囲することができるような形状であればよいが、噴射口103aは通常円形であり、燃焼ガスも円柱状に噴射されるため、円形であるのが好ましい。
また、筒状ガス供給部310から供給する筒状ガス311の不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。そのほか、空気を供給して筒状ガスを形成してもよく、空気の場合でも筒状ガス内の減圧により溶射材料の酸化をある程度防ぐことが可能である。
筒状ガス311の流量は1リットル/sec以上であるのが好ましい。
また、筒状ガス供給孔310aから噴射される筒状ガス311の集束性を高めるために、筒状ガス供給孔310aの外周面を噴射方向前方に延長させるようにしてもよい。図9には筒状ガス供給孔310aの外側部分が噴射方向前方に延長した延長部310eを有する溶射装置300を示す。
このように、筒状ガス供給孔310aの外周面が内周面よりも噴射方向前方に延びていることにより、その延長した外周面の部分に沿って筒状ガス311が流れる。そうすると、延長部310eがない場合よりも筒状ガス311が外側に膨らんでいくことを抑えることができるため、より円筒に近い筒状ガス311を形成することができる。そして、筒状ガス311の広がりを抑えることで、溶射材料の酸化を防ぐ効果を向上することができる。また、燃焼ガスを整流する効果も得られ、全体として溶射被膜の質を向上することができる。
なお、延長部310eの延長する長さは、適宜設定することができるが、10mm以上であるのが好ましい。また、図9に示した延長部310eは、筒状ガス供給孔310aの外周面を含む溶射装置300の先端部分全体を噴射方向前方に延長した形状であるが、これに限られるものではなく、外周面のみが延長されるように筒状の延長部を取り付けるようにしてもよい。
また、本実施例3において示した図8および図9において、溶射材料供給部104は実施例1のように溶射方向に直交する方向に形成したものを示したが、本実施例3においても実施例2に示したように、溶射材料供給部を傾斜して配置することもできる。溶射材料供給部を傾斜させて配置し、溶射方向に向けて溶射材料を供給すれば、燃焼ガスの気流の乱れをより少なくすることが可能である。
(実施例4)
図10は、実施例4の高速ガス溶射装置400の断面図である。本実施例の溶射装置400は、溶射ノズル103の先端に燃焼ガスが噴射される噴射口部材としての噴射部420bを備えている点が、前述の実施例とは異なる。そして、溶射材料供給部404はこの噴射部420bに配置されており、噴射部420bを除いた溶射装置本体420a部分は従来の高速ガス溶射装置と同じ構成である。溶射材料供給部404の溶射材料供給位置である先端部404aは噴射部420bの燃焼ガスが噴射される噴射口403aから前述した実施例と同じ条件を満たす位置に配置される。これによって、実施例1の溶射装置100と同様に、溶射装置内部への溶射材料の付着やスピッティングを防ぐことができる。
したがって、本実施例の溶射装置400は、従来の高速ガス溶射装置に噴射部420bを取り付けることで構成することができるため、従来の溶射装置をそのまま利用して粒径の小さい微粉溶射材料であってもスピッティングが起こりにくい溶射装置400が得られる。
以下、具体的に本実施例の溶射装置400の構成を説明する。なお、重複する部分については、説明を省略する。
本実施例の溶射装置400は、上述のように溶射装置本体420aとその溶射ノズル103の溶射方向先端に取り付けられた噴射口部材としての噴射部420bから構成される。溶射装置本体420aは図1に示すような従来の溶射装置と同様の構成であり、前述の実施例1〜3の溶射装置とは異なり、溶射ノズル103の溶射方向先端に溶射材料供給部は配置されていない。
溶射装置本体420aの溶射ノズル103は溶射ノズル103の内径以上の内径を有する噴射口403aを有する噴射部420bと連結されている。噴射口403aは溶射ノズル103との連結部分から溶射方向の先端の開口部403bまで一定の径を有する。また、その内径は、溶射ノズル103の内径と同径かそれ以上の径である。溶射ノズル103の内径よりも小さい内径とすると、溶射ノズル103と噴射口403aとの連結部分に段差ができてしまい、燃焼ガスの気流が乱れるため好ましくない。
溶射装置400の溶射材料供給部404は噴射口403aの溶射方向先端の開口部403b側に配置されている。この溶射材料供給部404はその先端部404aが噴射口403aの内面に突出しないように開口している。また、溶射材料供給部404は不図示の溶射材料供給装置に接続され、溶射材料は当該装置から溶射材料供給部404へキャリアガスにより供給される。
この溶射材料供給部404の先端部404a(溶射材料の供給位置)は、溶射材料供給部404から燃焼ガスに供給された溶射材料が、燃焼ガスにより溶融してしまう前に溶射装置400の噴射口403aの開口部403bから排出されるように、溶射材料を供給することができる位置に配置されている。すなわち、溶射材料供給部404から供給された溶射材料が、噴射口403a内部で燃焼ガスにより加熱され、溶射材料の溶融温度に達して溶融する前に、開口部403bから溶射装置400の外へ噴射されるような位置に溶射材料供給部404の先端部404aを配置する。
このような位置に溶射材料供給部404の先端部404aを配置することにより、溶射粒子が溶融して溶射装置内部に付着しやすい状態となる前に溶射材料を溶射装置400の外部に排出することができる。これにより、溶射材料が溶射装置本体420aや噴射部420bの内部に付着することを低減し、スピッティングも防止できる。
また、上記のような条件を満たす溶射材料供給部404の先端部404aの位置は、前述した実施例の場合と同様に溶射材料の温度条件から定義することができる。すなわち、溶射材料の溶融温度をT1、溶射材料の粒子の噴射口403aの開口部403bにおける温度をT3とすると、
T1>T3 (2)
なる条件を満たして溶射材料を供給することができる位置に、先端部404aを配置することが好ましい。このような位置に先端部404aを配置すれば、溶射材料は付着しやすい溶融状態となる前に溶射装置400から排出され、溶射材料の装置内部への付着やスピッティングを防ぐことができる。
なお、本実施例においては、溶射材料供給部404の溶射材料の供給位置である先端部404aを、噴射部420bの先端からの間隔が30mm以内の位置に配置している。この位置であれば、上記の条件を満たすことができ、溶射材料が溶射材料供給部404から燃焼ガス中に供給されても噴射口403aの内面などへ溶射材料が付着することなく溶射装置400の外に噴射され、スピッティングを防止することができる。
また、当該範囲の位置に溶射材料供給部404を配置すると、溶射材料が溶射ノズル103内部を通過しないので、溶射材料による溶射ノズル103内面の摩耗がない。また、噴射口403aの内部を通過する距離が短いので、溶射材料が噴射口403a内面に衝突して摩耗することを防ぐことができる。
なお、図10に示す溶射装置400には、溶射材料供給部404が噴射部420bの先端側の上下二箇所に設けられているが、一か所でも構わないし、複数箇所設けてもよい。
また、実施例2に示したように、この溶射材料供給部404を傾斜させて配置することもでき、溶射材料の供給方向を溶射方向に傾斜させて供給すれば、実施例2の場合と同様に燃焼ガスの気流の乱れをより少なくすることが可能である。
本実施例の溶射材料供給部404は、先端部404aが噴射部420bの噴射口403aの内面に突出せずに配置されており、噴射口403a内を流れる燃焼ガス内に突出していない。溶射材料供給部404の先端部404aが燃焼ガスに対して突出している場合には燃焼ガスの気流が乱れて、供給された溶射材料が燃焼ガスに弾き飛ばされる場合がある。そのため、本実施例のように溶射材料供給部が噴射口403aの内面に突出しないように配置するのが好ましい。さらに、溶射材料供給部404の先端部404aが高温の燃焼ガス中に突出していないため、溶射材料供給部404が溶損することも防ぐことができる。
また、図10に示す本実施例の溶射装置400の噴射部420bは、実施例3で説明した筒状ガス411を噴射する筒状ガス供給部410を有している。この筒状ガス供給部410および筒状ガス供給孔410aと、この筒状ガス供給孔410aから噴射される不活性ガスにより形成される筒状ガス411の作用、効果は実施例3で説明したものと同じである。
すなわち、従来の高速ガス溶射機を利用して粒径の小さい溶射材料を溶射する場合にも、このように筒状ガス供給部410を備えた噴射部420bを取り付けて、筒状ガス411を噴射し、筒状ガス内で溶射材料を含む燃焼ガスを噴射することで、燃焼ガス中の溶射材料の酸化を抑制することができる。
筒状ガス供給孔410aは、図9に示したように、筒状ガス供給孔410aの外周面を延長する延長部を設けてもよい。そうすることで、上述のように、筒状ガス411の集束性を高め、溶射材料の酸化を防ぐ効果を向上することができる。
なお、筒状ガス411を噴射する必要がない場合には、筒状ガス供給部410、および筒状ガス供給孔410aを省略してもかまわない。
(実施例5)
図11は、実施例5の高速ガス溶射装置500の断面図である。本実施例の溶射装置500は、ラバル型ノズル102と溶射ノズル103との連結部分の間に燃焼ガスの温度を制御する不活性ガスを供給する温度調整ガス供給部512を備えている。
本実施形態の高速ガス溶射装置は、溶射材料の溶射装置内部への付着やスピッティングの発生を抑えて、平均粒径が10μm以下の微粉溶射材料を用いて溶射することができる。そして、溶射材料の粒径が小さくなると、被溶射材に形成された溶射皮膜中における溶射材料の占める割合(嵩密度)が高まり、気孔を減少させることができるため、緻密な溶射被膜を形成することができる。また、図2に示したように、溶射粒子の燃焼ガス中における速度も上昇するため、被溶射材との密着強度が高い溶射被膜が得られる。
しかし、図4に示したように、溶射材料の粒径が小さくなると、燃焼ガス中での粒子の温度も上昇してしまう。これは、溶射材料が平均粒径10μm以下の粒径の小さい溶射材料であると、平均粒径30μmから40μm程度の通常の溶射材料に比べて比表面積が増大することから燃焼ガスによる溶射粒子の加熱量が大きくなり、粒子温度がさらに上昇しやすくなるからである。溶射材料には様々な組成の材料が用いられるが、それぞれの材料によって溶射に最適な温度が異なる。そのため、最適な温度で溶射できるように燃焼ガスの温度を調整する必要があるが、従来の溶射装置においては、燃料と酸素の量を調整することにより燃焼ガスの温度を調整する方法しかなかった。そのため、温度調整が可能な調整範囲が狭く、その調整範囲に溶射の最適温度があるような溶射材料しか溶射できなかった。
そして、溶射材料の粒径が小さい場合には、上記のように粒子温度が上昇しやすくなり、最適温度を超えてしまう場合があるが、従来の温度調整方法によっては上記のように調整範囲が狭く、最適な粒子温度に調整して溶射することが困難であった。
そこで、本実施例5の溶射装置500は、微粉の溶射材料を用いた場合にも溶射に最適な温度に調整するために不活性ガスを供給する温度調整ガス供給部512を備えている。この温度調整ガス供給部512から燃焼ガス中に不活性ガスを供給することによって、燃焼ガスの温度を下げることができる。燃焼ガスの温度を下げることにより、燃焼ガス中の溶射粒子の温度も低下する。そして、不活性ガスを供給する流量を変えることにより、溶射粒子の温度を制御することが可能である。表1には、温度調整ガス供給部512から供給する窒素ガスの流量を変えた場合の溶射ノズルの先端から燃焼ガス流れの下流側の200mmの位置における溶射粒子の温度を測定した結果を示す。測定条件は、溶射材料として平均粒径5μmのMo微粒子を使用し、灯油の流量を20.8リットル/h、酸素の流量を51m/hとして噴射した。
Figure 0005185641
表1からわかるように、温度調整ガス供給部512から吹き込むガスの流量を変えることにより、溶射粒子の温度を調整することができる。これにより、従来の溶射装置では不可能であった、微粉の溶射材料の温度調整も可能となり、微粉の溶射材料でも溶射に適した温度で溶射することが可能となる。
図11に示す本実施例の溶射装置500は、図6に示した実施例1の溶射装置100に温度調整ガス供給部512を追加したものであるが、実施例2から4の他の実施例についても同様に、温度調整ガス供給部512を追加することができる。
なお、温度調整ガス供給部512は、ラバル型ノズル102より溶射方向前方側に配置されることが好ましい。ラバル型ノズル102より燃焼室101側に配置すると、燃焼室101における燃焼量が減少し、燃焼ガスの速度が低下してしまうためである。
また、実施例4に示した溶射装置400の溶射装置本体420aに従来の溶射装置をそのまま使用する場合には、従来の溶射装置に設けられている溶射材料供給用のノズルから温度調整のための不活性ガスを供給することで、温度調整ガス供給部512を代用することができる。
このように、本実施形態の溶射装置に温度調整ガス供給部512を備えることにより、溶射材料の温度を制御できるようになる。さらに、不活性ガスを供給することで燃焼ガス中の酸素の分圧を下げ、溶射材料が酸化することを防ぐ効果も得られる。
以上の本願発明に係る実施形態に示した高速ガス溶射装置によれば、溶射材料が溶射装置内部に付着してスピッティングを起こすことを防ぐことができる。溶射装置内部への付着やスピッティングが起こりにくいという効果により、溶射材料として従来より小さい粒径の溶射粒子を用いることが可能となり、粒径が大きい溶射材料を用いた場合に比べて皮膜中の気孔が少ないより緻密な溶射皮膜を形成することができる。
さらに、筒状ガス供給孔を設けて溶射材料が吹き込まれた燃焼ガスを取り囲むような筒状のガスを供給すれば、燃焼ガスが周囲の空気を取り込んで溶射材料が酸化することを防ぐことが可能である。溶射材料の酸化を防ぐことにより、被溶射材との密着性の高い皮膜を形成することができる。
なお、本実施形態においては、高速ガス溶射装置について説明したが、プラズマ溶射装置についても、実施例1から5において説明した構成を同様に適用することができる。
すなわち、通常使用されるプラズマ溶射装置の溶射ノズルの先端側に溶射材料供給部を配置し、その溶射材料供給部の供給位置を、溶射材料供給部から供給された溶射材料がプラズマジェットの熱によって溶融する前に溶射装置の先端の噴射口から排出されるように、溶射材料を供給することができる位置に設定する。そのほか、上記各実施例の構成は、高速ガス溶射装置と同様にプラズマ溶射装置にも適用することができる。これにより、プラズマ溶射装置においても高速ガス溶射装置の場合と同様に溶射材料の装置内部への付着やスピッティングを防いで、微粉溶射材料を安定して溶射することができる。
従来の高速ガス溶射装置の断面図。 高速ガス溶射装置の溶射材料の粒子速度と粒子径との関係を示す図。 高速ガス溶射装置の溶射ノズルへの溶射材料の付着を示す概略図。 高速ガス溶射装置の溶射材料の粒子温度と粒子径との関係を示す図。 従来の他の高速ガス溶射装置の断面図。 本実施形態の実施例1の高速ガス溶射装置の断面図。 本実施形態の実施例2の高速ガス溶射装置の断面図。 本実施形態の実施例3の高速ガス溶射装置の断面図。 図8に示す高速ガス溶射装置の、延長部を備えた高速ガス溶射装置の断面図。 本実施形態の実施例4の高速ガス溶射装置の断面図。 本実施形態の実施例5の高速ガス溶射装置の断面図。
符号の説明
100,200,300,400,500 高速ガス溶射装置
101 燃焼室
102 ラバル型ノズル
103 溶射ノズル
103a 噴射口
104,204,404 溶射材料供給部
104a,204a,404a 先端部(溶射材料供給位置)
106 燃料供給部
107 酸素供給部
108 冷却管
310 筒状ガス供給部
310a 筒状ガス供給孔
311 筒状ガス
420a 溶射装置本体
420b 噴射部
512 温度調整ガス供給部

Claims (12)

  1. 燃焼ガスを溶射方向に噴射する溶射ノズルと、前記溶射ノズル内を流れる燃焼ガスに対して平均粒径10μm以下の溶射材料を供給する溶射材料供給部とを有し、前記燃焼ガスによって前記溶射材料を被溶射材に溶射する溶射装置であって、
    前記溶射材料供給部による前記溶射材料の供給位置を、前記溶射ノズルの先端の噴射口との間隔が30mm以内の位置に設定したことを特徴とする高速ガス溶射装置。
  2. 前記溶射材料供給部は、供給管であって、その先端が前記燃焼ガス内に突出しないように配置されることを特徴とする請求項に記載の高速ガス溶射装置。
  3. 前記溶射材料供給部の、前記溶射材料を前記燃焼ガスに対して供給する供給位置が、該供給位置から所定距離だけ供給方向上流側における位置よりも、前記溶射方向の前方側に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の高速ガス溶射装置。
  4. 前記噴射口を包囲するように筒状に形成され、前記溶射装置から噴射された燃焼ガスお
    よび溶射材料を包囲する筒状の気流を前記溶射方向に供給する筒状ガス供給孔を有するこ
    とを特徴とする請求項1からのいずれか一つに記載の高速ガス溶射装置。
  5. 前記筒状ガス供給孔の外周壁は内周壁よりも前記溶射方向の前方に延出していることを
    特徴とする請求項に記載の高速ガス溶射装置。
  6. 前記筒状ガス供給孔から供給する気体は、不活性ガスまたは空気であることを特徴とす
    る請求項又はに記載の高速ガス溶射装置。
  7. 前記燃焼ガスに対して不活性ガスを吹き込んで燃焼ガスの温度を調整する温度調整ガス供給部を備えることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか一つに記載の高速ガス溶射装置。
  8. プラズマジェットを溶射方向に噴射する溶射ノズルと、前記溶射ノズル内を流れる前記プラズマジェットに対して平均粒径10μm以下の溶射材料を供給する溶射材料供給部とを有し、前記プラズマジェットによって前記溶射材料を被溶射材に溶射するプラズマ溶射装置であって、
    前記溶射材料供給部による前記溶射材料の供給位置を、前記溶射ノズルの先端の噴射口との間隔が30mm以内の位置に設定したことを特徴とするプラズマ溶射装置。
  9. 溶射ノズルから溶射方向に噴射される燃焼ガスによって平均粒径10μm以下の溶射材料を被溶射材に溶射する高速ガス溶射装置の、前記溶射ノズルの先端に取り付けられる噴射口部材であって、
    前記溶射ノズルの内径と同等以上の内径を有し、前記溶射ノズルと連通して前記溶射ノズルから供給される前記燃焼ガスを前記溶射方向に噴射する噴射口と、前記噴射口内を流れる前記燃焼ガスに対して前記溶射材料を供給する溶射材料供給部とを有し、
    前記溶射材料供給部による前記溶射材料の供給位置を、前記噴射口との間隔が30mm以内の位置に設定したことを特徴とする噴射口部材。
  10. 溶射ノズルから溶射方向に噴射されるプラズマジェットによって平均粒径10μm以下の溶射材料を被溶射材に溶射するプラズマ溶射装置の、前記溶射ノズルの先端に取り付けられる噴射口部材であって、
    前記溶射ノズルの内径と同等以上の内径を有し、前記溶射ノズルと連通して前記溶射ノズルから供給される前記プラズマジェットを前記溶射方向に噴射する噴射口と、前記噴射口内を流れる前記プラズマジェットに対して前記溶射材料を供給する溶射材料供給部とを有し、
    前記溶射材料供給部による前記溶射材料の供給位置を、前記噴射口との間隔が30mm以内の位置に設定したことを特徴とする噴射口部材。
  11. 請求項に記載の噴射口部材を取り付けたことを特徴とする高速ガス溶射装置。
  12. 請求項10に記載の噴射口部材を取り付けたことを特徴とするプラズマ溶射装置。
JP2008019336A 2008-01-30 2008-01-30 高速ガス溶射装置、プラズマ溶射装置及び噴射口部材 Expired - Fee Related JP5185641B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008019336A JP5185641B2 (ja) 2008-01-30 2008-01-30 高速ガス溶射装置、プラズマ溶射装置及び噴射口部材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008019336A JP5185641B2 (ja) 2008-01-30 2008-01-30 高速ガス溶射装置、プラズマ溶射装置及び噴射口部材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009179846A JP2009179846A (ja) 2009-08-13
JP5185641B2 true JP5185641B2 (ja) 2013-04-17

Family

ID=41034047

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008019336A Expired - Fee Related JP5185641B2 (ja) 2008-01-30 2008-01-30 高速ガス溶射装置、プラズマ溶射装置及び噴射口部材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5185641B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6080873B2 (ja) * 2013-02-08 2017-02-15 三菱電機株式会社 無電解めっき方法、及びセラミック基板

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2287276A1 (fr) * 1974-10-07 1976-05-07 United Technologies Corp Pulverisateur thermique et methode de pulverisation en employant cet appareil
JPH08224662A (ja) * 1995-02-23 1996-09-03 Suruzaa Meteko Japan Kk アルミニウム継手の製造方法
JPH09272963A (ja) * 1996-04-09 1997-10-21 Toyota Motor Corp 金型への肉盛方法
JP2001181817A (ja) * 1999-12-22 2001-07-03 Ishikawajima Harima Heavy Ind Co Ltd 溶射方法及び溶射装置
JP4628578B2 (ja) * 2001-04-12 2011-02-09 トーカロ株式会社 低温溶射皮膜被覆部材およびその製造方法
JP3612568B2 (ja) * 2001-10-09 2005-01-19 独立行政法人物質・材料研究機構 Hvof溶射ガンによる金属皮膜形成方法と溶射装置
JP2003129212A (ja) * 2001-10-15 2003-05-08 Fujimi Inc 溶射方法
JP5071706B2 (ja) * 2006-10-11 2012-11-14 独立行政法人物質・材料研究機構 Hvof溶射装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009179846A (ja) 2009-08-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5043548A (en) Axial flow laser plasma spraying
JP3965103B2 (ja) 高速フレーム溶射機及びそれを用いた溶射方法
JP2003073795A (ja) プラズマ溶射用のトーチヘッド
KR20200096403A (ko) 금속 분말 제조 장치 및 그 가스 분사기
KR102546750B1 (ko) 고융점 금속 또는 합금 분말의 미립화 제조 방법
JP5573505B2 (ja) コールドスプレー装置用エジェクタノズル及びコールドスプレー装置
CN111254431B (zh) 一种用于气氛保护的光-粉同路送粉喷嘴
JP2010234373A (ja) レーザ加工用ノズル及びレーザ加工装置
JP7231159B2 (ja) 金属粉末製造装置、及び金属粉末の製造方法
JP5185641B2 (ja) 高速ガス溶射装置、プラズマ溶射装置及び噴射口部材
JP5284774B2 (ja) 粒子加速ノズル付きプラズマ溶射装置およびプラズマ溶射方法
JP2003113406A (ja) ガスアトマイズノズル
JP2009120913A (ja) 成膜用ノズルおよび成膜方法ならびに成膜部材
KR20230036043A (ko) 플라즈마 용사 장치
JP2000351090A (ja) レーザ溶射用ノズル
JP4164610B2 (ja) プラズマ溶射装置
JP2969754B2 (ja) 金属粉末製造装置
JP2897650B2 (ja) 金属微粉末の製造装置
JP2816110B2 (ja) 金属粉末の製造方法およびその装置
JP3009241B2 (ja) 金属粉末の製造装置
JPH0673150U (ja) アーク溶射ガン
KR102041579B1 (ko) 금속분말제조장치
CN112533711A (zh) 金属粉末制造装置及其坩埚容器和熔液喷嘴
JP5523928B2 (ja) アーク溶射装置
WO2016181939A1 (ja) 高速フレーム溶射装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20101022

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110714

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121016

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121217

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130115

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130118

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160125

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees