JP5182790B2 - カーカスプライ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、カーカスプライ用ゴム組成物および該ゴム組成物を有するカーカスプライを備える空気入りタイヤに関する。
近年、環境問題への関心の高まりから、石油資源由来の原料の使用量を低減するための方法が種々の技術分野で検討されている。現在一般的に市販されているタイヤは、全重量の半分以上が石油資源である原料から構成されている。たとえば、一般的な乗用車用タイヤは、合成ゴム約20質量%、カーボンブラック約20質量%、軟化剤、合成繊維などを含んでいるため、タイヤ全体の約50質量%以上が石油資源の原料から構成されている。また、タイヤ用のゴム組成物には、粘着性の向上および粘度の低減により加工性を向上させる目的で、粘着付与剤が配合されるが、この粘着付与剤としても、C5系樹脂、C9系樹脂、フェノール系樹脂などの石油資源由来の樹脂が一般的に用いられている。そこで、石油資源由来の原料を用いる場合と同様ないしそれ以上の要求特性を満足する、天然資源由来の原料を用いたタイヤ用ゴムの開発が望まれている。
ここで、工業作業性を満足し、グリップ性に優れた性能が得られるトレッドゴム組成物を提供する目的で、ジエン系ゴム100重量部に対し、テルペン系樹脂を100〜150重量部配合してなるトレッドゴム組成物が知られている。また、ジエン系ゴム成分のうち天然ゴムまたはポリイソプレンゴムを50重量部以上含み、特定の動粘度のテルペン樹脂を1〜50重量部配合してなることにより、石油系アロマオイルに代わる、環境への付加が小さいタイヤ用ゴム組成物を提供できる技術も知られている。さらに、同様の目的で、ジエン系ゴム成分のうち天然ゴムを50重量部以上含み、シリカを60重量%以上含む補強性充填剤を含み、特定の軟化点、水酸基価および動粘度のフェノール変性テルペン樹脂を0.5〜15重量部配合してなるタイヤトレッド用ゴム組成物も知られている。しかしながら、これらのゴム組成物は、石油系樹脂を配合せずに天然資源材料を多く配合し、環境への負荷を低減したものではあるものの、カーカスプライ用のゴム組成物およびこれに要求される性能については何ら考慮されておらず、また、加工性は十分なものではない。
また特開平11−11106号公報(特許文献1)には、ジエン系ゴムとイソブチレン/p−メチルスチレン共重合体の臭化物からなるゴム成分100重量部に対し、粘着付与剤1〜10重量部を含有するケースコード被覆ゴム層用ゴム組成物を用いたインナーライナーのないチューブレスタイヤが開示されており、この粘着付与剤としてテルペン樹脂、ロジン誘導体が例示されている。特許文献1によれば、このようなゴム組成物を用いたことで他のタイヤ部材との接着性が優れると記載されている。
また、特開2004−2584号公報(特許文献2)には、ゴム成分100重量部に対し、充填剤40〜500重量部およびレジン15重量部以上を配合したタイヤ用ゴム組成物が開示されており、このレジンとしてテルペン樹脂、ロジン樹脂が例示されている。特許文献2によれば、このような組成とすることでトレッド部に用いてウエットグリップ性能および耐摩耗性を両立することができると記載されている。
さらに、特開2006−63093号公報(特許文献3)には、天然ゴムおよび/またはエポキシ化天然ゴムを80重量%以上含むゴム成分100重量部に対し、8重量部以上のレジンおよび白色充填剤80重量%以上からなる充填剤を含有するトレッド用ゴム組成物が開示されており、このレジンとしてテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、ロジン樹脂が例示されている。特許文献3によれば、石油外資源の含有率を高めることができるとともに、従来の性能を同等に維持できると開示されている。
しかしながら、特許文献1〜3のいずれに開示された発明も、カーカスプライ用ゴム組成物およびこれに要求される性能については何ら考慮されておらず、また、加工性は十分なものとは言い難い。
特開平11−11106号公報 特開2004−2584号公報 特開2006−63093号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、石油資源由来の原料の使用量を低減しつつ、カーカスプライ用のゴム組成物に所望される特性の維持と加工性向上との両立が可能なカーカスプライ用ゴム組成物およびそれを用いたゴム成形体を有するプライを備える空気入りタイヤを提供することである。
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物は、30〜70質量%の天然ゴムと30〜70質量%の変性天然ゴムとからなる天然ゴム成分を含むゴム成分と、前記ゴム成分100質量部に対して20〜60質量部のシリカ、0.5〜15質量部のテルペン系樹脂およびロジン系樹脂のうちの少なくともいずれかとを含むことを特徴とする。
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物に用いられる変性天然ゴムはエポキシ化天然ゴムであることが好ましい。
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物におけるゴム成分は、天然ゴム成分からなることが好ましい。
本発明はさらに、上述した本発明のゴム組成物と、当該ゴム組成物に埋設されたタイヤ用コードとから構成されるカーカスプライを備える空気入りタイヤについても提供する。
本発明によれば、石油資源由来の原料の使用量を低減しつつ、カーカスプライ用のゴム組成物に所望される特性の維持と加工性向上との両立が可能なカーカスプライ用ゴム組成物およびそれを用いたゴム成形体を有するカーカスプライを備える空気入りタイヤを提供することができる。
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物は、ゴム成分と、当該ゴム成分100質量部に対して20〜60質量部のシリカ、0.5〜15質量部のテルペン系樹脂およびロジン系樹脂のうちの少なくともいずれかを含有する。また、本発明において用いられるゴム成分は、30〜70質量%の天然ゴム(NR)と、30〜70質量%の変性天然ゴムとからなる天然ゴム成分(以下、単に「天然ゴム成分」ともいう)を含有する。
<ゴム成分>
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物において、ゴム成分は、天然ゴムおよび変性天然ゴムからなる天然ゴム成分を含有する。本発明におけるゴム成分は、このような天然ゴム成分を10〜100質量%の範囲内で含有することが好ましい。
本発明に用いられる天然ゴムは、天然ゴムとして知られるものであればいずれのものも含まれ、原産地等は限定されない。このような天然ゴムは、シス1,4ポリイソプレンを主体として含むが、要求特性に応じてトランス1,4ポリイソプレンを含むこともできる。したがって、上記天然ゴムには、シス1,4ポリイソプレンを主体として含む天然ゴムの他、たとえば南米産アカテツ科のゴムの一種であるバラタなど、トランス1,4イソプレンを主体として含む天然ゴムも含まれる。本発明における天然ゴム成分は、このような天然ゴムを1種または2種以上(すなわち1成分または2成分以上)含むことができる。このような天然ゴムとしては、たとえば、RSS#3、TSRなどのグレードの天然ゴムを好適に用いることができる。
本発明に用いられる変性天然ゴムは、上述した天然ゴムを変性または精製したものを指し、たとえばエポキシ化天然ゴム(ENR)、脱タンパク天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどが挙げられる。本発明における天然ゴム成分は、このような変性天然ゴムを1種または2種以上含むことができる。上記中でも、本発明における天然ゴム成分は、変性天然ゴムとしてエポキシ化天然ゴムを含むことが好ましい。
エポキシ化天然ゴムは、天然ゴムの不飽和二重結合がエポキシ化された変性天然ゴムの一種であり、極性基であるエポキシ基により分子凝集力が増大する。そのため、天然ゴムよりもガラス転移温度(Tg)が高く、かつ機械的強度や耐摩耗性、耐空気透過性に優れる。このようなエポキシ化天然ゴムとしては、たとえばENR25(クランプーランスガリー社製)(エポキシ化率:25%)、ENR50(クランプーランスガリー社製)(エポキシ化率:50%)などの市販のものを用いてもよいし、天然ゴムをエポキシ化したものを用いてもよい。天然ゴムをエポキシ化する方法としては、特に限定されるものではなく、たとえばクロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などを挙げることができる。過酸法としては、たとえば天然ゴムのエマルジョンに過酢酸や過蟻酸などの有機過酸をエポキシ化剤として反応させる方法を挙げることができる。なお、エポキシ化率とは、エポキシ化前の天然ゴム中の二重結合の全数のうちエポキシ化された数の割合((エポキシ化された二重結合の数)/(エポキシ化前の二重結合の数))を意味し、たとえば滴定分析、核磁気共鳴(NMR)分析などにより求められる
本発明において、ゴム成分中の天然ゴム成分の含有率は50質量%以上であることが好ましい。ゴム成分中の天然ゴム成分の含有率が50質量%未満であると、石油資源由来の原料の使用量の低減効果が十分得られない傾向にあるためである。ゴム成分中の天然ゴム成分の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。石油資源由来の原料の使用量の低減効果が良好である点で、ゴム成分中の天然ゴム成分の含有率は100質量%である(すなわち、ゴム成分が天然ゴム成分からなる)ことが好ましいが、たとえばゴム成分中の天然ゴム成分の含有率を50質量%以下、さらに30質量%以下とし、ゴム成分中の残部として天然ゴム成分以外のゴムを配合しても良い。
また、ゴム成分は、本発明の効果を損なわない範囲で石油資源由来のゴムを含有しても良い。石油資源由来のゴムとしては、たとえば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレン共重合体ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、イソブチレンとp−メチルスチレンとの共重合体のハロゲン化物などを例示できる。
<シリカ>
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物は上述したゴム成分に加え、シリカを含有する。シリカは、補強用充填剤として機能するものであり、シリカを配合することにより、得られるカーラスプライにおけるゴム組成物の引張強度を向上させることができる。また、シリカは石油外資源由来であるため、たとえばカーボンブラックなどの石油資源由来の補強剤を主な補強剤として配合する場合と比べて、ゴム組成物中の石油資源由来の原料の使用量を低減できる。本発明のカーカスプライ用ゴム組成物は、上述したゴム成分100質量部に対し20〜60質量部のシリカを含有する。
シリカは、湿式法により調製されたものであってもよく、乾式法により調製されたものであってもよい。また、好ましい市販品としては、たとえば、ウルトラジルVN2(デグッサ製)(BET比表面積:125m2/g)、ウルトラジルVN3(デグッサ製)(BET比表面積:210m2/g)などを例示できる。
<テルペン系樹脂、ロジン系樹脂>
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物は、テルペン系樹脂およびロジン系樹脂のうちの少なくともいずれかを含有する。中でも、テルペン系樹脂を含有することが特に好ましい。なお、複数種のテルペン系樹脂、ロジン系樹脂を含有していてもよい。
ここで、本明細書中でいう「テルペン系樹脂」とは、一般に植物の葉、樹、根等から得られる植物精油に含まれるテルペン化合物を主モノマーとして重合された樹脂を指す。テルペン化合物は、一般に、イソプレン(C58)の重合体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、たとえばα−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、カンフェン、トリシクレン、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類などが挙げられる。
本発明におけるテルペン系樹脂には、上述したテルペン化合物を原料とする、たとえばα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β−ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂も含まれる。ここで、本発明における芳香族テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエンなどが挙げられ、また、テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、たとえばフェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。
このようなテルペン系樹脂としては、たとえばPX300N(ヤスハラケミカル(株)製)などの市販品を好適に用いることができる。
また、本明細書中でいう「ロジン系樹脂」は、松脂を加工することにより得られる、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸などの樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの天然産のロジン樹脂(重合ロジン)の他、水素添加ロジン樹脂、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などの変性ロジン樹脂、ロジングリセリンエステルなどのロジンエステル、ロジン樹脂を不均化することによって得られる不均化ロジン樹脂なども包含する。
このようなロジン系樹脂としては、たとえばトール油ロジンTP90B(ハリマ化成(株)製)などの市販品を好適に用いることができる。
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物は、上述したテルペン系樹脂およびロジン系樹脂のうちの少なくともいずれか(特にはテルペン系樹脂)を、ゴム成分100質量部に対して0.5〜15質量部含有する。テルペン系樹脂およびロジン系樹脂のうちの少なくともいずれかの含有量がゴム成分100質量部に対して0.5質量部未満である場合には、加工性の向上がみられず、また、テルペン系樹脂およびロジン系樹脂のうちの少なくともいずれかの含有量がゴム成分100質量部に対して15質量部を超える場合には、引張特性が劣るためである。本発明のカーカスプライ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し上述したテルペン系樹脂およびロジン系樹脂のうちの少なくともいずれかを2〜10質量部含有することが好ましく、3〜5質量部含有することがより好ましい。
<シランカップリング剤>
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物は、上述したようにシリカを含有するが、このシリカとともに、シランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、従来公知のシランカップリング剤を用いることができ、たとえば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系;γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系;3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系;3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系;などを挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のなかでも、加工性が良好であるという理由から、Si69(デグッサ製)(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)、Si266(デグッサ製)(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)などが好ましく用いられる。
<カーボンブラック>
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、補強剤としてカーボンブラックをさらに含有することが好ましい。カーボンブラックを配合することによって、カーカスプライ用ゴム組成物に良好な機械的強度が付与されるが、カーボンブラックは一般に石油資源由来であるため、石油資源由来の原料の使用量を低減するためには、カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して15質量部以下、さらに5質量部以下、さらに3質量部以下であることが好ましい。一方、カーボンブラックを配合することによる機械的強度の向上効果を良好に得る点では、カーボンブラックの配合量が、ゴム成分100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。
カーボンブラックの好ましい市販品としては、たとえば、ショウブラックN220(キャボネットジャパン(株)製)などを例示できる。
<その他の配合剤>
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物には、上記した成分以外にも、従来ゴム工業で使用される他の配合剤、たとえば加硫剤、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫促進助剤、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤などを配合しても良い。
加硫剤としては、有機過酸化物もしくは硫黄系加硫剤を使用することが可能であり、有機過酸化物としては、たとえば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3あるいは1,3−ビス(t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシロキサン、n−ブチル−4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレレートなどを使用することができる。これらの中で、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼンおよびジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。また、硫黄系加硫剤としては、たとえば、硫黄、モルホリンジスルフィドなどを使用することができる。これらの中では硫黄が好ましい。これらの加硫剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、もしくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも一つを含有するものを使用することが可能である。スルフェンアミド系としては、たとえばCBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物などを使用することができる。チアゾール系としては、たとえばMBT(2−メルカプトベンゾチアゾール)、MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩、シクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系化合物などを使用することができる。チウラム系としては、たとえばTMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラム系化合物を使用することができる。チオウレア系としては、たとえばチアカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジオルトトリルチオ尿素などのチオ尿素化合物などを使用することができる。グアニジン系としては、たとえばジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジンフタレートなどのグアニジン系化合物を使用することができる。ジチオカルバミン酸系としては、たとえばエチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛とピペリジンの錯塩、ヘキサデシル(またはオクタデシル)イソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジアミルジチオカルバミン酸カドミウムなどのジチオカルバミン酸系化合物などを使用することができる。アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系としては、たとえばアセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド−アンモニア反応物などのアルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系化合物などを使用することができる。イミダゾリン系としては、たとえば2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系化合物などを使用することができる。キサンテート系としては、たとえばジブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサンテート系化合物などを使用することができる。これらの加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
加硫促進助剤としては、たとえば酸化亜鉛、ステアリン酸などを使用できる。
老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系、カルバミン酸金属塩などを適宜選択して使用することができる。
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物は、ステアリン酸金属塩を含有してもよい。ステアリン酸金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、12−ヒドロキシステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛などを挙げることができる。ステアリン酸金属塩のなかでも、耐熱性改良効果およびエポキシ化天然ゴムとの相溶性の観点から、ステアリン酸アルカリ土類金属塩が好ましく、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、12−ヒドロキシステアリン酸バリウムがより好ましい。
オイルとしては、プロセスオイル、植物油脂、またはこれらの混合物、などを例示できる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどを例示できる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油、桐油、などを例示できる。
本発明のカーカスプライ用ゴム組成物は、石油資源由来の原料の使用量を低減しつつ、カーカスプライ用のゴム組成物に所望される特性の維持と加工性向上との両立が可能となったものである。ここで、向上された「加工性」とは、JIS−T 9233の規定に準拠し、ピクマタックテスタ((株)東洋精機製作所製)を用いて測定された(測定条件などの詳細は後述)未加硫ゴム組成物の粘着力から下記計算式によって算出された粘着性指数が105以上(さらに好適には110以上)であることをいう。
・粘着性指数
=(本発明のゴム組成物の粘着力/基準配合ゴム組成物の粘着力)×100
なお、上記計算式中の基準配合ゴム組成物は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂を含有しないこと以外は同じ本発明のゴム組成物と同様の組成に配合されたゴム組成物を指す。
本発明はまた、上述したような本発明のカーカスプライ用ゴム組成物と、当該ゴム組成物に埋設されたタイヤ用コードとから構成されるカーカスプライを備える空気入りタイヤをも提供する。ここで、図1は、本発明の空気入りタイヤの一例を示す概略断面図である。空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、該トレッド部2の両端からタイヤ半径方向内方に延びる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3の内方端に位置するビード部4とを備える。またビード部4,4間にはカーカス6が架け渡されるとともに、このカーカス6の外側かつトレッド部2内にはタガ効果を有してトレッド部2を補強するベルト層7が配される。
上記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ赤道COに対して、たとえば70〜90°の角度で配列する1枚以上のカーカスプライ6aから形成され、このカーカスプライ6aは、上記トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5の廻りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返されて係止される。
上記ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ赤道COに対して、たとえば40°以下の角度で配列した2枚以上のベルトプライ7aからなり、各ベルトコードがプライ間で交差するよう向きを違えて重置している。なお、必要に応じてベルト層7の両端部のリフティングを防止するためのバンド層(図示しない)を、ベルト層7の少なくとも外側に設けても良く、このときバンド層は、低モジュラスの有機繊維コードを、タイヤ赤道COとほぼ平行に螺旋巻きした連続プライで形成する。
またビード部4には、上記ビードコア5から半径方向外方に延びるビードエイペックスゴム8が配されるとともに、カーカス6の内側には、タイヤ内腔面をなすインナーライナゴム9が隣設され、カーカス6の外側は、クリンチゴム4Gおよびサイドウォールゴム3Gで保護される。本発明のカーカスプライ用ゴム組成物は、上記カーカスプライ6aに使用されるものである。
なお図1には、乗用車用の空気入りタイヤについて例示しているが、本発明はこれに限定されず、乗用車用、トラック用、バス用、重車両用など、各種車両の用途に対して用いられる空気入りタイヤを提供する。
本発明の空気入りタイヤは、本発明のカーカスプライ用ゴム組成物を用いて、従来公知の方法により製造される。すなわち、上述した必須成分、および必要に応じて配合されるその他の配合剤を含有するカーカスプライ用ゴム組成物を混練りし、未加硫の段階でタイヤのカーカスプライの形状に合わせて押出し加工し、これをタイヤ用コードの上下に貼り付けて埋設させてカーカスプライを作製後、タイヤの他の部材とともに、タイヤ成形機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明のタイヤを得ることができる。
なお、本発明のタイヤにおけるカーカスプライは、上述した本発明のカーカスプライ用ゴム組成物を備えるものあれば特に制限されるものではなく、タイヤ用コードとしても従来公知の適宜の材料(たとえば、レーヨン繊維、精製セルロース繊維など)を用いることが可能である。
かかる本発明の空気入りタイヤは、カーカスプライに用いられるゴム組成物における石油資源由来の成分の含有比率がより低減され、省資源および環境保護への配慮が十分なされているとともに、良好な物理的特性の維持と加工性の向上とが両立されたゴム組成物が使用されているため、地球環境に優しい「エコタイヤ」であるとともに、加工性が改善され、さらにカーカスプライとしての所望の特性を有する。
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1および比較例1、2>
表1に示す配合処方に従い、神戸製鋼所(株)製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤を除く配合成分を充填率が58%になるように充填し、回転数80rpmで140℃に到達するまで3分間混練りした。ついで、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を表1に示す配合量で加えた後、オープンロールを用いて、80℃で5分間混練りし、実施例1および比較例1、2に係る配合の未加硫ゴム組成物を得た。
Figure 0005182790
実施例および比較例で使用した各種配合成分の詳細は以下のとおりである。
(1)天然ゴム(NR):RSS#3(テックビーハング社製)
(2)エポキシ化天然ゴム(ENR):ENR25(クンプーランガスリー社製)(エポキシ化率:25%)
(3)カーボンブラック:ショウブラックN220(キャボットジャパン(株)製)
(4)シリカ:ウルトラジルVN3(デグッサ社製)
(5)シランカップリング剤:Si69(デグッサ社製)
(6)オイル:NH60(出光興産(株)製)
(7)樹脂(1):石油系樹脂(マルカレッツT100AS(丸善石油化学(株)製))
(8)樹脂(2):テルペン系樹脂(PX300N(ヤスハラケミカル(株)製)
(9)ワックス:サンノックワックス(大内新興化学工業(株)製)
(10)老化防止剤:サントフレックス6PPD(フレキシス社製)
(11)ステアリン酸:桐(日本油脂(株)製)
(12)酸化亜鉛:亜鉛華(三井金属鉱業(株)製)
(13)硫黄:粉末硫黄(鶴見化学(株)製)
(14)加硫促進剤:ノクセラーNS(大内新興化学工業(株)製)
実施例および比較例で得られた未加硫ゴム組成物について、以下の試験を行った。表1には試験結果についても併せて示している。
(粘着性試験)
JIS−T 9233の規定に準拠して、ピクマタックテスタ((株)東洋精機製作所製)を用いて、測定温度23℃、荷重4.9N、放置時間10秒、引き剥がし速度30mm/分の条件下で、未加硫ゴム組成物の粘着力[N]を測定した。さらに、基準配合ゴム組成物として比較例1のゴム組成物の粘着性指数を100とし、下記計算式により、粘着力を指数表示した。粘着性指数が大きいほど粘着力が大きく、優れていることを示す。
・粘着性指数=(各実施例、各比較例の粘着力/基準配合の粘着力)×100
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の空気入りタイヤの一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 タイヤ、2 トレッド部、3 サイドウォール部、4 ビード部、5 ビードコア、6 カーカス、6a カーカスプライ、7 ベルト層、8 ビードエイペックスゴム、9 インナーライナゴム。

Claims (4)

  1. 30〜70質量%の天然ゴムと30〜70質量%の変性天然ゴムとからなる天然ゴム成分を含むゴム成分と、前記ゴム成分100質量部に対して20〜60質量部のシリカ、2〜10質量部のテルペン系樹脂およびロジン系樹脂のうちの少なくともいずれかとを含む、カーカスプライ用ゴム組成物。
  2. 変性天然ゴムがエポキシ化天然ゴムである、請求項1に記載のカーカスプライ用ゴム組成物。
  3. 前記ゴム成分が前記天然ゴム成分からなる、請求項1または2に記載のカーカスプライ用ゴム組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物と、当該ゴム組成物に埋設されたタイヤ用コードとから構成されるカーカスプライを備える空気入りタイヤ。
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