近年の通信容量の増大に伴い、光波長多重分割(Wavelength Division Multiplexing:WDM)技術を用いた光伝送装置が広く導入されている。これら光伝送装置で構築されるWDMシステムにおいては、各波長チャネルの光信号を監視することにより、伝送信号の品質管理やシステム制御等を行っている。他方、シリコン基板上に形成した石英系ガラス導波路によって構成されたプレーナ光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)の研究開発が盛んに行われており、かかるPLC技術を利用した、アレイ導波路回折格子(Arrayed−Waveguide Grating:AWG)は、光波長合分波を実現する回路であり、WDMシステムの構成部品として重要な役割を果たしている。
WDMシステムにおいて波長多重された光信号を監視する装置の一形態として、AWGと複数のフォトダイオード(PD)を組み合わせた構成が提案され、非特許文献1に開示されている。図28に、AWGとPDによる従来の光波長多重信号監視装置の構成例を示す。AWGは、入力導波路5101、第1のスラブ導波路5102、アレイ導波路5103、第2のスラブ導波路5104、および複数の出力導波路5105から構成されている。これら導波路は、通常シリコン基板上に石英系ガラスにより形成されたコアおよびクラッドから構成される。複数の出力導波路5105はそれぞれ、光ファイバ5108を介して複数のPD5106に光学的に接続されている。また、入力導波路5101は、入力光ファイバ5107に接続されている。
AWGは、入力導波路5101から光波長多重信号を入力すると、出力導波路5105から各チャネルの信号光を分波して取り出すことができる。各出力導波路にPDを接続することにより、各信号光の強度を監視することができる。この構成によれば、AWGで分離された各波長チャネルの信号を各PDで同時かつ独立に検出できるため、光波長多重信号を高速に監視できるという特長がある。
また、AWGのチップ端面に、各出力導波路と結合するように直接PDを実装することで、さらに小型でかつ受光特性に優れた光波長多重信号監視装置も提案されている。この構成を図29に示す。ここで、AWGの各部分の符号は図28と同様であるが、この構成では、PD5106に代えて、筐体と光を透過する材質の窓の中で気密封止されたチップスケールパッケージ型PDアレイ(CSP−PDアレイ)5201が用いられている。CSP−PDアレイについて詳しくは、非特許文献2に開示されている。CSP−PDアレイ5201内に内蔵された各PDの受光面はそれぞれ、AWGの各出力導波路5107と光学的に結合している。
かかるAWGにおいては、入力導波路5101の入力側スラブ導波路5102への接続部、あるいは出力導波路5105の出力側スラブ導波路5104への接続部分に2次モード光を励起するテーパ導波路を設けることで、透過波形を平坦化し帯域を拡大する方法が開発されている。特許文献1には、2次モードを励起するテーパ導波路としてパラボラ関数形状を適用したAWGが開示されている。この方法により、AWGの0.5dB透過バンド幅(透過域において最小損失から0.5dB大きい損失までの波長範囲の幅)特性として、およそ分波チャネル波長間隔の40%を得ることが可能である。従来技術によるAWG型の光波長多重信号監視装置において、この透過スペクトル波形を平坦化する方法を用いることで、各信号光の波長の変動に対して、受光感度の変動を小さく抑えることができる。すなわち、より測定誤差の小さい、信号光強度の監視が可能になる。
また、かかるAWG型の光波長多重信号監視装置においては、出力導波路5105をマルチモード導波路とすることによって、透過波形を平坦化し帯域を拡大する方法も開発されている。特許文献2には、出力導波路としてマルチモード導波路を用いたAWGが開示されている。また、非特許文献3には、出力導波路をマルチモード導波路としたAWGを適用した、AWG型の光波長多重信号監視装置が開示されている。この方法により、AWGの0.5dB透過バンド幅特性として、およそ分波チャネル波長間隔の43%を得ることが可能である。よって、各信号光の波長の変動に対して、受光感度の変動を小さく抑えることができ、より測定誤差の小さい、信号光強度の監視が可能になる。
本発明の実施形態について以下に説明する。まず、本発明の光波長多重信号監視装置におけるAWGの構成と動作を説明する。図1に、本発明の一実施形態にかかる光波長多重信号監視装置におけるAWGの構成例を示す。このAWG100は、入力導波路101、第1のスラブ導波路102、アレイ導波路103、第2のスラブ導波路104、出力導波路105を備えている。出力導波路105は、隣接するM本の導波路からなるグループがNグループあり、全体でM×N本の導波路からなる。光波長多重信号監視装置としては、N波長のWDM信号光が監視可能なように構成されている。
アレイ導波路103の長さは、一定量ΔLずつ順次長くなるよう設計されている。AWG100は石英系PLCにより構成され、導波路の比屈折率差Δが1.5%、コア厚が4.5μmである。入力導波路101、アレイ導波路103、出力導波路105のコア幅は4.5μmである。また、中央の波長チャネルの透過波長は1544.53μm(光周波数194.1THz)である。このとき、アレイ導波路の本数は380本、ΔLは33.9μmである。アレイ導波路103は、第1および第2のスラブ導波路102、104と接続する部分において、間隔9μmで配置されている。
図2は、図1のAWGにおける入力導波路101と第1のスラブ導波路102の接続部、および第2のスラブ導波路104と出力導波路105の接続部を拡大した図である。出力導波路において、ここではM=5とし、Nグループの導波路グループの中の一部を図示している。第2のスラブ導波路104との接続部における出力導波路のグループ間の配置間隔X1は54μm、グループ内でのM本の導波路の配置間隔X2は9μmである。また、入力導波路101の第1のスラブ導波路への接続部にはテーパ導波路201、出力導波路105の第2のスラブ導波路への接続部にはテーパ導波路202が設けられている。ここで、テーパ導波路201の開口幅WIおよびテーパ導波路202の開口幅WOは、それぞれ7μmである。また第1および第2のスラブ導波路102、104の長さは、それぞれ27600μmである。
図3は、上記設計によるAWGにおいて、入力導波路から各出力導波路への透過スペクトルを示したものである。ここで、各出力導波路は、i−1、i、i+1番目の導波路グループに属する15本の出力導波路について示してある。横軸は相対光周波数であり、i番目の導波路グループの3番目の出力導波路の透過中心光周波数をゼロとしている。導波路グループ間の透過波長間隔は0.8nm(100GHz)であり、グループ内の出力導波路間の透過中心波長間隔は0.13nm(16.7GHz)である。また、各出力導波路の透過スペクトル波形はガウス関数形状であり、その3dB透過帯域幅は0.08nm(10GHz)である。
ここで、本発明の光波長多重信号監視装置においては、AWGの各出力導波路グループに属する全ての出力導波路が、最終的に1つのPDと結合するように構成される。このとき、AWGの入力導波路から、1つのPDに到達する光の透過率は、出力導波路グループに属する各出力導波路への透過率の総和となる。
図4は、図3に示した透過スペクトルにおいて、各出力導波路グループに属する5本の出力導波路への透過率の総和のスペクトルを示したものである。すなわち、i−1、i、i+1番目のPDに到達する光の透過スペクトルを示している。図4からわかるように、本発明によるAWGを透過して各PDに到達する光の透過スペクトルは、透過中心波長近傍で略平坦であり、透過帯域から阻止域への透過率変化が十分に急峻であり、優れたクロストーク特性が得られている。
このように、本発明のAWG型の光波長多重信号監視装置においては、AWGの各出力導波路グループに属する複数の出力導波路を、1つのPDと結合させることによって、略平坦な受光感度特性を実現しながらも、クロストーク特性も優れた装置が実現可能である。しかしながら、透過帯域内において透過率の変動(透過率リップル)が残留しており、光波長信号の波長が変動した場合に、PDの受光感度が変動するので、光強度測定においてはリップルの量だけ誤差を有することになる。
上記透過率リップルの低減は、本発明によるAWGにおいて、出力導波路グループに属する各出力導波路への透過スペクトルの3dB透過帯域幅を調整することによって可能となる。具体的には、この3dB透過帯域幅を、各出力導波路への透過スペクトルの透過中心波長間隔の1倍から1.5倍の間に設定する。
図5は、図1および図2の構成のAWGにおいて、テーパ導波路201の開口幅WIを7μmから拡大していった場合の各出力導波路への透過スペクトルの3dB透過帯域幅の変化を示したものである。図5から、WIが15μmの場合において、3dB透過帯域幅は、各出力導波路の透過中心波長間隔である16.7GHzと等しくなり、WIが25μmの場合において、透過中心波長間隔の1.5倍である25GHzに等しくなる。
図6は、例として、WIが19μmの場合における各出力導波路への透過スペクトルを示したものである。この場合に、各スペクトルの3dB透過帯域幅は20GHzになる。図7は、図6に示された出力導波路グループに属する5本の出力導波路への透過率の総和のスペクトルを示したものである。図4と図7を比較すれば分かるように、各出力導波路の3dB透過帯域幅を、透過中心波長間隔の1倍から1.5倍の間に設定することによって、1つの出力導波路グループを経て1つのPDに到達する光の透過スペクトルは、透過率リップルの殆ど無い平坦なものを得ることができる。これによって、本発明の光波長多重信号監視装置においては、光信号の波長が変動した場合であっても、高精度に信号光強度を測定することが可能である。
なお、PDの受光感度スペクトルとして、特許文献1に開示されたAWGを適用した光波長多重信号監視装置と同等の平坦性を得るためには、Mは3以上であることが求められる。しかし、M=2であっても、ガウス関数形状のスペクトルよりは平坦性の高いスペクトルを得ることが可能である。
以下、AWGの各出力導波路グループに属する複数の出力導波路を、1つのPDと結合させる構成を含め、本発明の光波長多重信号監視装置の幾つかの実施例を示す。
本発明の第1の実施例による光波長多重信号監視装置について説明する。本実施例においては、N=40、M=5の構成であり、100GHz間隔40波長チャネルのWDM信号光を監視可能な装置を示す。また、本実施例は、AWGの各出力導波路グループに属する複数の出力導波路を、マルチモード光ファイバを介して1つのPDと結合させる構成例である。
図8は、本実施例における光波長多重信号監視装置の構成を示す平面図である。この監視装置は、AWG1100、入力光ファイバ1107、マルチモード光ファイバ1108、および各接続光ファイバに光学的に結合している単チャネルPD群1106から構成されている。AWG1100は、入力導波路1101、第1のスラブ導波路1102、アレイ導波路1103、第2のスラブ導波路1104、および出力導波路1105を備えている。入力導波路1101は、入力光ファイバ1107と接続され、出力導波路1105は、40の出力導波路グループについて、それぞれに属する5本の出力導波路が1本のマルチモード光ファイバ1108を介してPD1106の1つとそれぞれ接続されている。
使用されるマルチモード光ファイバとしては5本の出力導波路から入力する光が、損失無くいづれかのモードに分配されて結合する程度の口径が必要であり、例えばグレーティッドインデックス型口径50μm(GI50)などがある。また、単チャネルPDとしては、このようなマルチモード光ファイバと損失なく結合する口径があることが必要である。
アレイ導波路1103の長さは、一定量ΔLずつ順次長くなるよう設計されている。AWG1100は石英系PLCにより構成され、導波路の比屈折率差Δが1.5%、コア厚が4.5μmである。入力導波路1101、アレイ導波路1103、および出力導波路1105のコア幅は4.5μmである。また、中央の波長チャネルの透過波長は1544.53μm(光周波数194.1THz)である。このとき、アレイ導波路の本数は380本、ΔLは33.9μmである。アレイ導波路1103は、第1および第2のスラブ導波路1102、1104と接続する部分において、間隔9μmで配置されている。
図9は、図8のAWGにおける、入力導波路1101と第1のスラブ導波路1102の接続部、および第2のスラブ導波路1104と出力導波路1105の接続部を拡大した図である。出力導波路において、Nグループの出力導波路グループの中の一部を図示している。第2のスラブ導波路1104との接続部における、出力導波路のグループ間の配置間隔X1は54μm、グループ内での5本の導波路の配置間隔X2は9μmである。また、入力導波路1101の第1のスラブ導波路への接続部にはテーパ導波路1201、出力導波路1105の第2のスラブ導波路への接続部にはテーパ導波路1202が設けられている。ここで、テーパ導波路1201の開口幅WIは19μm、テーパ導波路1202の開口幅WOは7μmである。また、第1および第2のスラブ導波路1102、1104の長さは、それぞれ27600μmである。
図10は、上記設計によるAWGにおいて、入力導波路から各出力導波路への透過スペクトルを示したものである。ここで、各出力導波路は、i−1、i、i+1番目の導波路グループに属する15本の出力導波路について示してある。横軸は相対光周波数であり、i番目の導波路グループの3番目の出力導波路の透過中心光周波数をゼロとしている。導波路グループ間の透過波長間隔は0.8nm(100GHz)であり、グループ内の出力導波路間の透過中心波長間隔は0.13nm(16.7GHz)である。また、各出力導波路の透過スペクトル波形はガウス関数形状であり、その3dB透過帯域幅は0.16nm(20GHz)である。
図11は、本実施例による光波長多重信号監視装置において、PD1106のそれぞれでの受光感度スペクトルを示している。すなわち、i−1、i、i+1番目のPDに到達する光の受光感度スペクトルを示している。横軸は相対光周波数であり、i番目のPDの受光中心光周波数をゼロとしている。また、PD1106それぞれ単体での受光感度は、1.0A/Wである。図11からわかるように、本実施例による光波長多重信号監視装置の受光感度スペクトルは、受光感度の中心波長近傍で平坦であり、0.5dB(89%)受光バンド幅特性として64GHzを達成している。また、AWGおよびAWGとPDの結合における損失は約2dBと十分小さく、受光感度平坦化による過剰損失はほとんど無い。加えて、受光帯域から阻止域への透過率変化が十分に急峻であり、優れたクロストーク特性が得られている。
このように、本実施例による光波長多重信号監視装置においては、平坦で高い受光感度特性を実現しながらも、クロストーク特性も優れた装置が実現可能である。
本発明の第2の実施例による光波長多重信号監視装置について説明する。本実施例においては、N=40、M=4の構成であり、100GHz間隔40波長チャネルのWDM信号光を監視可能な装置を示す。また、本実施例は、AWGの各出力導波路グループに属する複数の出力導波路を、AWGチップの端面に実装されたCSP−PDアレイのPDと結合させる構成例である。
図12は、本実施例における光波長多重信号監視装置の構成を示す平面図である。この監視装置は、AWG2100、入力光ファイバ2108、および20チャネルのCSP−PDアレイ2106、2107から構成されている。CSP−PDアレイ2106、2107は、光を透過する材料の面において、AWG2100のチップ端面に接着固定されている。AWG2100は、入力導波路2101、第1のスラブ導波路2102、アレイ導波路2103、第2のスラブ導波路2104、および出力導波路2105を備えている。入力導波路2101は、入力光ファイバ2108と接続され、出力導波路2105は、40の出力導波路グループについて、それぞれに属する4本の出力導波路がCSP−PDアレイ2106および2107の一方のPDの1つとそれぞれ光学的に結合されている。ここで、CSP−PDアレイの各PDの配列間隔は250μmであり、各PDの口径としては、80μmのものを用いている。
アレイ導波路2103の長さは、一定量ΔLずつ順次長くなるよう設計されている。AWG2100は石英系PLCにより構成され、導波路の比屈折率差Δが1.5%、コア厚が4.5μmである。入力導波路2101、アレイ導波路2103、出力導波路2105のコア幅は4.5μmである。また、中央の波長チャネルの透過波長は1544.53μm(光周波数194.1THz)である。このとき、アレイ導波路の本数は320本、ΔLは33.9μmである。アレイ導波路2103は、第1および第2のスラブ導波路2102、2104と接続する部分において、間隔9μmで配置されている。
図13は、図12のAWGにおける、入力導波路2101と第1のスラブ導波路2102の接続部、および第2のスラブ導波路2104と出力導波路2105の接続部を拡大した図である。出力導波路において、40グループの出力導波路グループの中の一部を図示している。第2のスラブ導波路2104との接続部における、出力導波路のグループ間の配置間隔X1は45μm、グループ内での4本の導波路の配置間隔X2は9μmである。また、入力導波路2101の第1のスラブ導波路への接続部にはテーパ導波路2201、出力導波路2105の第2のスラブ導波路への接続部にはテーパ導波路2202が設けられている。ここで、テーパ導波路2201の開口幅WIは19μm、テーパ導波路2202の開口幅WOは7μmである。また、第1および第2のスラブ導波路2102、2104の長さは、それぞれ22800μmである。
図14は、図12のAWGにおける出力導波路2105とCSP−PDアレイ2106、2107の接続部を拡大した図である。出力導波路において、40グループの出力導波路グループの中の1グループについて図示している。グループに属する4本の出力導波路は、PDに結合する直前において、一旦マルチモード導波路2301に接続し、マルチモード導波路2301は、AWGのチップ端面において、PDと光学的に結合している。ここで、マルチモード導波路2301の導波路幅は40μm、長さは500μmである。また、グループに属する4本の出力導波路は、間隔10μmでマルチモード導波路2301に接続している。一般に、比較的幅広いマルチモード導波路から空間に放射される光の回折角度は、比較的幅の細いシングルモード導波路のそれに比べて小さい。この構成では、AWGのチップ端面から放射されてPDに届く光のビーム径が比較的小さく、グループに属する4本の出力導波路(それぞれはシングルモード導波路)とPDを結合させる場合に比較して、PDの実装位置がずれた場合であっても、結合損失を抑制できる。すなわち、実装位置の誤差のトレランスに優れているともいえる。なお、グループに属する4本の出力導波路からマルチモード導波路2301へ入射した光は、マルチモード導波路2301のいずれかのモードに分配されて結合するので、両者の接続において損失は殆ど発生しない。
図15は、上記設計によるAWGにおいて、入力導波路から各出力導波路への透過スペクトルを示したものである。ここで、各出力導波路は、i−1、i、i+1番目の導波路グループに属する12本の出力導波路について示してある。横軸は相対光周波数であり、i番目の導波路グループの2番目および3番目の出力導波路の透過中心光周波数の中間をゼロとしている。導波路グループ間の透過波長間隔は0.8nm(100GHz)であり、グループ内の出力導波路間の透過中心波長間隔は0.16nm(20GHz)である。また、各出力導波路の透過スペクトル波形はガウス関数形状であり、その3dB透過帯域幅は0.19nm(24GHz)である。
図16は、本実施例による光波長多重信号監視装置において、CSP−PD2107、2108のそれぞれのPDでの受光感度スペクトルを示している。すなわち、i−1、i、i+1番目のPDに到達する光の受光感度スペクトルを示している。横軸は相対光周波数であり、i番目のPDの受光中心光周波数をゼロとしている。また、各PDの受光感度は、1.0A/Wである。図16からわかるように、本実施例による光波長多重信号監視装置の受光感度スペクトルは、受光感度の中心波長近傍で平坦であり、0.5dB(89%)受光バンド幅特性として50GHzを達成している。また、AWGおよびAWGとPDの結合における損失は約2dBと十分小さく、受光感度平坦化による過剰損失はほとんど無い。加えて、受光帯域から阻止域への透過率変化が十分に急峻であり、優れたクロストーク特性が得られている。
図17は、図12のAWGにおける出力導波路2105とCSP−PDアレイ2106、2107の接続部を拡大した図であり、図14とは別の構成例を示したものである。出力導波路において、40グループの出力導波路グループの中の1グループについて図示している。グループに属する4本の出力導波路は、PDに結合する直前において、導波路幅が徐々に狭められ、またそれぞれの配列間隔も近接して、AWGのチップ端面において、PDと光学的に結合している。ここで、狭められた各出力導波路の幅は1.5μm、配列間隔は5μm、導波路幅と配列間隔を変化する領域の長さは2000μmである。導波路の幅を狭めていくと、導波路への光の閉じ込めが弱くなり、伝播する光のビーム径は拡大する傾向にある。また一般的に、導波路から空間に放射される光の回折角度は、導波路での光のビーム径が大きいほど小さい。よって、この構成では、AWGのチップ端面において、4本の各出力導波路から放射されてPDに届く光のビーム径が比較的小さく、また4本の出力導波路の配列間隔も近接させているので、それぞれのビームの隔たりも比較的小さい。ゆえに、4本の出力導波路をそのままの導波路幅でPDに結合させる場合に比較して、PDの実装位置がずれた場合であっても、結合損失を抑制できる。すなわち、実装位置の誤差のトレランスに優れているといえる。
このように、本実施例による光波長多重信号監視装置においては、平坦で高い受光感度特性を実現しながらも、クロストーク特性も優れた装置が実現可能である。また、本実施例では、CSP−PDアレイをAWGのチップ端面に直接実装する構成によって、第1の実施例に比較して小型の光波長多重信号監視装置が実現可能である。また、図14または図17にあるような出力導波路の構成によって、出力導波路とPD間の結合損失は殆ど無く、かつPDの実装位置の誤差に対するトレランスに優れた、光波長多重信号監視装置が実現可能である。
本発明の第3の実施例による光波長多重信号監視装置について説明する。本実施例においては、N=40、M=3の構成であり、100GHz間隔40波長チャネルのWDM信号光を監視可能な装置を示す。また、本実施例は、第2の実施例と同様に、AWGの各出力導波路グループに属する複数の出力導波路を、AWGチップの端面に実装されたCSP−PDアレイのPDと結合させる構成例である。
図18は、本実施例における光波長多重信号監視装置の構成を示す平面図である。この監視装置は、AWG3100、入力光ファイバ3108、および20チャネルのCSP−PDアレイ3106、3107から構成されている。CSP−PDアレイ3106、3107は、光を透過する材料の面において、AWG3100のチップ端面に接着固定されている。AWG3100は、入力導波路3101、第1のスラブ導波路3102、アレイ導波路3103、第2のスラブ導波路3104、および出力導波路3105を備えている。入力導波路3101は、入力光ファイバ3108と接続され、出力導波路3105は、40の出力導波路グループについて、それぞれに属する3本の出力導波路がCSP−PDアレイ3106および3107の一方のPDの1つと光学的に結合されている。ここで、CSP−PDアレイの各PDの配列間隔は250μmであり、各PDの口径としては、80μmのものを用いている。
アレイ導波路3103の長さは、一定量ΔLずつ順次長くなるよう設計されている。AWG3100は石英系PLCにより構成され、導波路の比屈折率差Δが1.5%、コア厚が4.5μmである。入力導波路3101、アレイ導波路3103、出力導波路3105のコア幅は4.5μmである。また、中央の波長チャネルの透過波長は1544.53μm(光周波数194.1THz)である。このとき、アレイ導波路の本数は240本、ΔLは33.9μmである。アレイ導波路3103は、第1および第2のスラブ導波路3102、3104と接続する部分において、間隔9μmで配置されている。
図19は、図18のAWGにおける、入力導波路3101と第1のスラブ導波路3102の接続部、および第2のスラブ導波路3104と出力導波路3105の接続部を拡大した図である。出力導波路において、40グループの出力導波路グループの中の一部を図示している。第2のスラブ導波路3104との接続部における、出力導波路のグループ間の配置間隔X1は36μm、グループ内での3本の導波路の配置間隔X2は9μmである。また、入力導波路3101の第1のスラブ導波路への接続部にはテーパ導波路3201、出力導波路3105の第2のスラブ導波路への接続部にはテーパ導波路3202が設けられている。ここで、テーパ導波路3201の開口幅WIは20μm、テーパ導波路3202の開口幅WOは7μmである。また、第1および第2のスラブ導波路3102、3104の長さは、それぞれ18200μmである。
図20は、図18のAWGにおける出力導波路3105とCSP−PDアレイ3106、3107の接続部を拡大した図である。出力導波路において、40グループの出力導波路グループの中の1グループについて図示している。グループに属する3本の出力導波路は、PDに結合する直前において、導波路幅が徐々に狭められ、またそれぞれの配列間隔も近接して、AWGのチップ端面において、PDと光学的に結合している。ここで、狭められた各出力導波路の幅は1.5μm、配列間隔は5μm、導波路幅と配列間隔を変化する領域の長さは2000μmである。この構成により、3本の出力導波路をそのままの導波路幅でPDに結合させる場合に比較して、PDの実装位置がずれた場合であっても、結合損失を抑制できる。すなわち、実装位置の誤差のトレランスの面で有利である。
図21は、上記設計によるAWGにおいて、入力導波路から各出力導波路への透過スペクトルを示したものである。ここで、各出力導波路は、i−1、i、i+1番目の導波路グループに属する9本の出力導波路について示してある。横軸は相対光周波数であり、i番目の導波路グループの2番目の出力導波路の透過中心光周波数をゼロとしている。導波路グループ間の透過波長間隔は0.8nm(100GHz)であり、グループ内の出力導波路間の透過中心波長間隔は0.20nm(25GHz)である。また、各出力導波路の透過スペクトル波形はガウス関数形状であり、その3dB透過帯域幅は0.25nm(31GHz)である。
図22は、本実施例による光波長多重信号監視装置において、CSP−PD3107、3108のそれぞれのPDでの受光感度スペクトルを示している。すなわち、i−1、i、i+1番目のPDに到達する光の受光感度スペクトルを示している。横軸は相対光周波数であり、i番目のPDの受光中心光周波数をゼロとしている。また、各PDの受光感度は、1.0A/Wである。図22からわかるように、本実施例による光波長多重信号監視装置の受光感度スペクトルは、受光感度の中心波長近傍で平坦であり、0.5dB(89%)受光バンド幅特性として40GHzを達成している。また、AWGおよびAWGとPDの結合における損失は約2dBと十分小さく、受光感度平坦化による過剰損失はほとんど無い。加えて、受光帯域から阻止域への透過率変化が十分に急峻であり、優れたクロストーク特性が得られている。
このように、本実施例による光波長多重信号監視装置においては、平坦で高い受光感度特性を実現しながらも、クロストーク特性も優れた装置が実現可能である。また、本実施例では、CSP−PDアレイをAWGのチップ端面に直接実装する構成によって、第1の実施例に比較して小型の光波長多重信号監視装置が実現可能である。さらに、出力導波路グループあたりの出力導波路本数Mが少ないために、第2の実施例に比較してAWGの回路サイズが小さくなり、より小型の光波長多重信号監視装置が実現可能である。また、図20にあるような出力導波路の構成によって、出力導波路とPD間の結合損失は殆ど無く、かつPDの実装位置の誤差に対するトレランスに優れた、光波長多重信号監視装置が実現可能である。
本発明の第4の実施例による光波長多重信号監視装置について説明する。本実施例においては、N=40、M=2の構成であり、100GHz間隔40波長チャネルのWDM信号光を監視可能な装置を示す。また、本実施例は、第2または第3の実施例と同様に、AWGの各出力導波路グループに属する複数の出力導波路を、AWGチップの端面に実装されたCSP−PDアレイのPDと結合させる構成例である。
図23は、本実施例における光波長多重信号監視装置の構成を示す平面図である。この監視装置は、AWG4100、入力光ファイバ4108、および20チャネルのCSP−PDアレイ4106、4107から構成されている。CSP−PDアレイ4106、4107は、光を透過する材料の面において、AWG4100のチップ端面に接着固定されている。AWG4100は、入力導波路4101、第1のスラブ導波路4102、アレイ導波路4103、第2のスラブ導波路4104、および出力導波路4105を備えている。入力導波路4101は、入力光ファイバ4108と接続され、出力導波路4105は、40の出力導波路グループについて、それぞれに属する2本の出力導波路がCSP−PDアレイ4106および4107の一方のPDの1つと光学的に結合されている。ここで、CSP−PDアレイの各PDの配列間隔は250μmであり、各PDの口径としては、80μmのものを用いている。
アレイ導波路4103の長さは、一定量ΔLずつ順次長くなるよう設計されている。AWG4100は石英系PLCにより構成され、導波路の比屈折率差Δが1.5%、コア厚が4.5μmである。入力導波路4101、アレイ導波路4103、出力導波路4105のコア幅は4.5μmである。また、中央の波長チャネルの透過波長は1544.53μm(光周波数194.1THz)である。このとき、アレイ導波路の本数は210本、ΔLは33.9μmである。アレイ導波路4103は、第1および第2のスラブ導波路4102、4104と接続する部分において、間隔9μmで配置されている。
図24は、図23のAWGにおける、入力導波路4101と第1のスラブ導波路4102の接続部、および第2のスラブ導波路4104と出力導波路4105の接続部を拡大した図である。出力導波路において、40グループの出力導波路グループの中の一部を図示している。第2のスラブ導波路4104との接続部における、出力導波路のグループ間の配置間隔X1は27μm、グループ内での3本の導波路の配置間隔X2は9μmである。また、入力導波路4101の第1のスラブ導波路への接続部にはテーパ導波路4201、出力導波路4105の第2のスラブ導波路への接続部にはテーパ導波路4202が設けられている。ここで、テーパ導波路4201の開口幅WIは17μm、テーパ導波路4202の開口幅WOは7μmである。また、第1および第2のスラブ導波路4102、4104の長さは、それぞれ13700μmである。
図25は、図23のAWGにおける出力導波路4105とCSP−PDアレイ4106、4107の接続部を拡大した図である。出力導波路において、40グループの出力導波路グループの中の1グループについて図示している。グループに属する2本の出力導波路は、PDに結合する直前において、導波路幅が徐々に狭められ、また導波路の間隔も近接して、AWGのチップ端面において、PDと光学的に結合している。ここで、狭められた各出力導波路の幅は1.5μm、導波路間隔は5μm、導波路幅と間隔を変化する領域の長さは2000μmである。この構成により、2本の出力導波路をそのままの導波路幅でPDに結合させる場合に比較して、PDの実装位置がずれた場合であっても、結合損失を抑制できる。すなわち、実装位置誤差トレランスの面で有利である。
図26は、上記設計によるAWGにおいて、入力導波路から各出力導波路への透過スペクトルを示したものである。ここで、各出力導波路は、i−1、i、i+1番目の導波路グループに属する6本の出力導波路について示してある。横軸は相対光周波数であり、i番目の導波路グループの2本の出力導波路の透過中心光周波数の中間をゼロとしている。導波路グループ間の透過波長間隔は0.8nm(100GHz)であり、グループ内の出力導波路間の透過中心波長間隔は0.27nm(33.3GHz)である。また、各出力導波路の透過スペクトル波形はガウス関数形状であり、その3dB透過帯域幅は0.30nm(37GHz)である。
図27は、本実施例による光波長多重信号監視装置において、CSP−PD4106、4107のそれぞれのPDでの受光感度スペクトルを示している。すなわち、i−1、i、i+1番目のPDに到達する光の受光感度スペクトルを示している。横軸は相対光周波数であり、i番目のPDの受光中心光周波数をゼロとしている。また、各PDの受光感度は、1.0A/Wである。図27からわかるように、本実施例による光波長多重信号監視装置の受光感度スペクトルは、受光感度の中心波長近傍で平坦であり、0.5dB(89%)受光バンド幅特性として34GHzを達成している。また、AWGおよびAWGとPDの結合における損失は約2dBと十分小さく、受光感度平坦化による過剰損失はほとんど無い。加えて、受光帯域から阻止域への透過率変化が十分に急峻であり、優れたクロストーク特性が得られている。
このように、本実施例による光波長多重信号監視装置においては、平坦で高い受光感度特性を実現しながらも、クロストーク特性も優れた装置が実現可能である。また、本実施例では、CSP−PDアレイをAWGのチップ端面に直接実装する構成によって、第1の実施例に比較して小型の光波長多重信号監視装置が実現可能である。さらに、出力導波路グループあたりの出力導波路本数Mが少ないために、第2の実施例や第3の実施例に比較してAWGの回路サイズが小さくなり、より小型の光波長多重信号監視装置が実現可能である。また、図25にあるような出力導波路の構成によって、出力導波路とPD間の結合損失は殆ど無く、かつPDの実装位置誤差に対するトレランスに優れた、光波長多重信号監視装置が実現可能である。
以上、本発明の実施形態と4つの実施例の説明から、本発明による光波長多重信号監視装置では、従来技術のAWG型光波長多重信号監視装置において、透過域における受光感度スペクトルの平坦化を行う場合に、過剰損失が発生する、あるいはクロストーク特性が劣化して、測定精度が低下する問題を解消し、平坦な受光感度特性を実現しながらも、平坦化過剰損失が小さく、かつクロストーク特性に優れた、光波長多重信号監視装置を得ることが示された。
全ての実施例では、光波長多重信号のチャネル数、チャネル間隔、各チャネルの信号波長(光周波数)を特定の数値に限定したが、本発明の適用範囲はこの数値に限定されるものではない。
全ての実施例では、AWG部分の導波路の比屈折率差、コア幅及びコア厚を特定の値に限定したが、本発明の適用範囲は、この値に限定されるものではない。
全ての実施例では、AWG部分の設計パラメーターを特定の値に限定したが、本発明の適用範囲は、このパラメーターに限定されるものではない。
全ての実施例では、出力導波路グループに属する各出力導波路への透過波長の間隔を特定の値に限定したが、本発明の適用範囲は、この値に限定されるものではなく、監視する光波長多重信号のチャネル間隔の1/M以下のいかなる値をもとることが可能である。