JP5172393B2 - くん煙剤組成物およびくん煙方法 - Google Patents

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Description

本発明は、くん煙剤組成物およびくん煙方法に関する。
くん煙剤(燻蒸剤ともいう。)は、使用時に加熱して使用されるものであり、くん煙剤の加熱方式(くん煙方法)としては、製剤の一部分を直接加熱することで自己燃焼反応を起こさせる直接加熱方式と、間接的に加熱して熱分解させる間接加熱方式とがある。
くん煙剤としては、従来、発熱性基剤と、有効成分である有害生物駆除用薬剤等を主成分とする組成物が用いられている。
くん煙剤を加熱すると、発熱性基剤が燃焼または分解し、これにより生じる燃焼熱または分解熱で薬剤(有効成分)が気化する。このとき、発熱性基剤より発生するガスおよび煙粒子が推進の働きをするため、気化した薬剤(有効成分)を短時間のうちに空気中に揮散させることができる。そのため、くん煙剤は、有害生物の防除等を効果的に行うことのできる優れた製剤として従来より汎用されている。
これまで、くん煙剤の発熱性基剤としては種々のものが用いられている。これら発熱性基剤としては、ニトロセルロース、アゾジカルボンアミド、p・p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等が一般的である。これらの中でも、有機発泡剤であるアゾジカルボンアミドは、分解温度が約200℃であり、くん煙剤の薬剤として汎用されているピレスロイド系等の殺虫剤を揮散させるのに適していること、大量の分解ガスを発生し、拡散性に優れること等の理由から、くん煙剤(燻蒸剤)の発熱性基剤として現在最もよく使用されている。
また、直接加熱方式の場合、くん煙剤には、加熱によりくん煙を開始した後、外部からの熱の供給がなくなっても燃焼が継続する自己燃焼継続性を付与するために、通常、アゾジカルボンアミドとともに、ニトロセルロース等の自己燃焼継続性を有する化合物(燃焼剤)が発熱性基剤として配合される。
このようなくん煙剤を用いたくん煙方法としては、たとえば、点火具を熱源として用いて製剤の一部を直接加熱し、アゾジカルボンアミドにニトロセルロース等の燃焼剤及び酸化亜鉛等の分解促進剤を混合した発熱性基剤に自己分解反応を行わせるくん煙方法(たとえば特許文献1〜2参照。)、有害生物駆除用薬剤にアゾジカルボンアミドを混合した組成物を酸化カルシウムの水和熱などを利用した間接加熱方式により加熱し、分解生成ガスの作用により薬剤を蒸散させる方法(たとえば特許文献3〜4参照。)等が開発され、実用に供されている。
しかし、アゾジカルボンアミドを主とした発熱性基剤を用いたくん煙剤組成物は、薬剤含量が高くなると、薬剤の揮散に伴う吸熱によりくん煙速度が緩慢となり、薬剤の揮散量が低下するため、薬剤の高含量化が困難であるという問題があった。
これに対し、特許文献5では、アゾジカルボンアミドにニトロセルロースを5〜20%の割合で混合した組成物を、酸化カルシウムの水和熱による間接加熱する燻蒸方法が提案されている。
特許第3054789号公報 特許第3453292号公報 特公昭58−28842号公報 特公昭59−49201号公報 特許第3941893号公報
しかし、ニトロセルロースのような発熱量の大きい燃焼剤を配合する場合、以下のような問題が生じる。すなわち、これらの燃焼剤は火気等に対し危険性が高く、その取扱いや、くん煙剤の製造の際に、安全性を充分に配慮することが必要であるため、生産コストも高くなる。また、ニトロセルロースの配合量が多くなると、発熱量の増大から、くん煙時に急激な発煙や当該組成物の飛散等を起こしやすい。そのため、くん煙時に発生するくん煙ガスの臭気や、屋内の汚染等も問題となる。
特に、間接加熱に使用する場合、燃焼剤から発生する熱に加え、周囲からも多量の熱が供給されることから上記問題が顕著である。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、何らの間接的加熱機構を要さずに、製剤の一部分を直接加熱することで容易にくん煙を開始し、その後も安定的に自己燃焼を継続し、薬剤を効率良く空気中に揮散させることができるくん煙剤組成物およびくん煙方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、発熱性基剤として特定の化合物を特定量配合することにより、燃焼剤の配合量を10質量%以下としても充分に高い薬剤揮散性を達成でき、しかも自己燃焼継続性に優れ、くん煙時の自己燃焼が安定に継続することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]少なくとも1種の有害生物駆除用薬剤(A)と、少なくとも1種の発熱性基剤(B)とを含有するくん煙剤組成物であって、
前記発熱性基剤(B)が、グアニジン誘導体および硝酸塩類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(b1)と、燃焼剤とを含有し、
当該くん煙剤組成物中、前記有害生物駆除用薬剤(A)の含有量が0.1〜35質量%であり、前記化合物(b1)の含有量が30〜80質量%であり、前記燃焼剤の含有量が2〜10質量%であることを特徴とするくん煙剤組成物。
[2]前記化合物(b1)が硝酸グアニジンである[1]に記載のくん煙剤組成物。
[3]前記燃焼剤がニトロセルロースである[2]に記載のくん煙剤組成物。
[4]前記発熱性基剤(B)が、さらに、有機発泡剤を含有する[1]〜[3]のいずれか一項に記載のくん煙剤組成物。
[5]前記有機発泡剤がアゾジカルボンアミドである[4]に記載のくん煙剤組成物。
[6][1]〜[5]のいずれか一項に記載のくん煙剤組成物を直接的に加熱することを特徴とするくん煙方法。
[7]前記加熱を、点火具を用いて行う[6]に記載のくん煙方法。
本発明によれば、何らの間接的加熱機構を要さずに、製剤の一部分を直接加熱することで容易にくん煙を開始し、その後も安定的に自己燃焼を継続し、薬剤を効率良く空気中に揮散させることができるくん煙剤組成物およびくん煙方法を提供できる。
本発明のくん煙剤組成物は、少なくとも1種の有害生物駆除用薬剤(A)(以下、(A)成分ということがある。)と、少なくとも1種の発熱性基剤(B)(以下、(B)成分ということがある。)とを含有する。
(A)成分としては、特に限定されず、駆除対象とする有害生物に応じて、殺虫剤、殺菌剤、忌避剤等の各種薬剤が使用できる。
例えば、代表的な殺虫剤としては、これらに限定されるものではないが、ペルメトリン、アレスリン、レスメトリン、プラレスリン、フェノトリン、エトフェンプロックス、d,d−T−シフェノトリン等のピレスロイド系薬剤;フェニトロチオン、ジクロルボス(DDVP)、ダイアジノン等の有機リン系薬剤;プロポクスル等のカーバメイト系薬剤;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系薬剤などが挙げられる。
殺菌剤としては、これらに限定されるものではないが、イソフタロニトリル、プロシミドン、バイレトン、モレスタン等の農薬用殺菌剤;サイアベンダゾール、3−ヨード2−プロピニルブチルカーバメート(IPBC)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)等の環境衛生用殺菌剤などが挙げられる。
これらの薬剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のくん煙剤組成物中、(A)成分の含有量は、当該くん煙剤組成物の総質量に対し、0.1〜35質量%であり、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が0.1質量%未満の場合は、くん煙時に薬剤に対して過剰な熱量が加わり、薬剤の分解が生じて揮散効率の低下を招くおそれがある。また、該含有量が35質量%を超える場合は、当該組成物を顆粒剤等に製剤化しにくくなるなど、くん煙剤製造上の点で問題があり、実用的でない。
本発明のくん煙剤組成物は、(B)成分として、グアニジン誘導体および硝酸塩類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(b1)を含有する。
グアニジン誘導体としては、グアニジンと、硝酸、炭酸、リン酸等の酸との塩;グアニジンの水素原子の一部または全部がニトロ基、シアノ基等の置換基で置換された化合物;等が挙げられる。具体的には、硝酸グアニジン、炭酸グアニジン、硝酸アミノグアニジンニトログアニジン、ジシアンジアミド等が挙げられる。
硝酸塩類としては、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム等が挙げられる。
これらの化合物は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(b1)としては、安価であること、くん煙時における発熱量の調整や製造上での取扱いの点で優れていることから、硝酸グアニジンが特に好ましい。
本発明のくん煙剤組成物中、化合物(b1)の含有量は、当該くん煙剤組成物の総質量に対し、30〜80質量%であり、30〜70質量%が好ましく、50〜60質量%がより好ましい。化合物(b1)の含有量が30質量%以上であると、薬剤の揮散効率が高く、たとえば(A)成分の含有量が20質量%を超えるような高含量であっても、充分に当該薬剤を揮散させることができる。一方、化合物(b1)の含有量が80質量%を超えると、くん煙不良(立ち消え)を起こし、さらにくん煙剤製造上および実用性の点で問題が生じるおそれがある。
本発明のくん煙剤組成物は、(B)成分として、燃焼剤を含有する。
燃焼剤は、外部からの熱が供給されると分解して発熱(燃焼)し、外部からの熱の供給がなくなっても燃焼が継続する自己燃焼継続性を有する化合物である。燃焼剤としては、一般にくん煙剤の燃焼剤として用いられているものであればいかなるものでも利用できる。具体的には、ニトロセルロース、セルロイド及びこれらの類縁体等が挙げられる。これらの燃焼剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
燃焼剤としては、特に、安価で発熱量が大きいことからニトロセルロースが好ましい。
本発明のくん煙剤組成物中、燃焼剤の含有量は、当該くん煙剤組成物の総質量に対し、2〜10質量%であり、5〜10質量%が好ましい。燃焼剤の含有量が2質量%未満であると、燃焼が継続せず、立ち消えとなるおそれがある。また、燃焼剤の含有量が10質量%を超えると、くん煙時に飛散物が生じるおそれがある。
本発明のくん煙剤組成物は、(B)成分として、さらに、有機発泡剤を含有してもよい。有機発泡剤を含有すると、ガスの噴出量、薬剤の揮散性並びに拡散性が向上する。
有機発泡剤としては、特に限定されず、従来公知のものを利用できる。一般には、加熱により熱分解して多量の熱を発生するとともに炭酸ガスや窒素ガスなどを発生するものが用いられており、具体的には、アゾジカルボンアミド、p・p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
これらの有機発泡剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、分解温度、ガス発生量等の点から、特にアゾジカルボンアミドが好ましい。
本発明のくん煙剤組成物中、有機発泡剤の含有量は、薬剤の揮散効率の点から、当該くん煙剤組成物の総質量に対し、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
有機発泡剤の含有量の下限値は特に限定されず、0質量%であってもよい。つまりを含有しなくてもよい。
有機発泡剤を配合する場合には、当該くん煙剤組成物の総質量に対し、0質量%超であればよく、有機発泡剤を配合することによる効果を充分に得るためには、10質量%以上が好ましい。
本発明のくん煙剤組成物中、(B)成分の含有量は、本発明の効果を考慮すると、当該くん煙剤組成物の総質量に対し、40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%が好ましく、55〜70質量%がより好ましい。
本発明のくん煙剤組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分および(B)成分以外の他の成分を含有してもよい。
該他の成分としては、従来、くん煙剤組成物に配合されている各種添加剤が利用でき、たとえば結合剤、燃焼助剤、安定化剤、賦形剤、香料等が挙げられ、これらはそれぞれ公知のものが利用できる。
結合剤としては、一般に使用されるものであればいかなるものでも良く、たとえばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースとそのCa塩およびNa塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系化合物;デンプン、α化デンプン、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチNa塩等のデンプン系化合物;アラビアゴム、アルギン酸Na、トラガント、ゼラチン等の天然物系化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子系化合物等が挙げられる。
燃焼助剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、尿素、メラミン、メラミン誘導体(工業用メラミン、硝酸メラミン、メラミンホルマリン樹脂など)等が挙げられる。
安定化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、エポキシ化合物(エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油など)等が挙げられる。
賦形剤としては、クレー、タルク、珪藻土、カオリン、ベントナイト、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム等が挙げられる。
本発明のくん煙剤組成物は、通常、(A)成分、(B)成分、結合剤、さらに必要に応じて各種添加剤を混合して、顆粒状等の固形製剤とされる。
固形製剤の形態としては、顆粒状が好ましいが、薬剤の種類、使用場面、使用する容器形状等に応じて、粉状、タブレット状、棒状、ペースト状等の形態とすることも可能である。
固形製剤の製造方法としては一般的に用いられている方法が利用できる。たとえば顆粒状の製剤(顆粒剤)とする場合は、たとえば押出し造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等の、一般的な造粒物の製造方法により製造できる。
押出し造粒法による製造方法の具体例を挙げると、組成物各成分を、ニーダー等により混合し、適量の水を加えて練合し、得られた練合物を、一定面積の開孔を有するダイスを用い、前押し出しあるいは横押し出し造粒機を用い造粒する。該造粒物は、さらにカッター等を用いて一定の大きさに切断し乾燥してもよい。
本発明のくん煙剤組成物は、直接的に加熱して使用される。つまり本発明のくん煙剤組成物は、くん煙剤組成物を直接的に加熱するくん煙方法に用いられる。
本発明のくん煙剤組成物は自己燃焼継続性を有するため、くん煙剤組成物の加熱手段としては、当該くん煙剤組成物を外部から継続的に加熱し続けるための間接加熱手段は必要ではなく、該組成物中の一部分を直接加熱し、くん煙を開始させるだけの熱を発生させる点火具で充分である。すなわち、点火具を用いて当該組成物中の一部分を加熱し、くん煙を開始させるだけの熱を発生させると、その後外部から加熱しなくても、燃焼剤の作用により燃焼が継続する。
前記点火具としては、発熱剤として塩素酸カリウム、硝酸カリウム、鉛丹、酸化鉄、酸化銅等の酸化剤のいずれかと、還元剤として糖類、珪素、鉄、珪素鉄、アルミニウム等のいずれかを混合したものが挙げられる。これらの混合物は、マッチ頭薬などを用いて加熱されると、燃焼により熱を発生する。発熱剤および還元剤は、通常、金属製容器またはセラミック製容器等に充填して使用される。
本発明のくん煙剤組成物を用いてくん煙を行う際の当該くん煙剤組成物の使用量は、(A)成分の種類、くん煙処理を行う空間の容積等に応じて適宜設定すればよい。通常、空間1mあたり、0.2〜2gが好ましく、0.5〜1.5gがより好ましい。
くん煙処理の処理時間(燻煙開始後、当該空間を密閉する時間)は、特に限定されないが、通常、2〜3時間である。
上記本発明のくん煙剤組成物およびくん煙方法によれば、何らの間接的加熱機構を要さずに、製剤の一部分を直接加熱することで容易にくん煙を開始し、その後も安定的に自己燃焼が継続される。そのため、くん煙中の燃焼の立ち消えや、急激な発煙、くん煙物の飛散等を防止でき、くん煙を安定した状態で実施できる。
また、本発明のくん煙剤組成物およびくん煙方法によれば、従来の直接加熱式のくん煙剤に比べてニトロセルロース等の燃焼剤の含量が少なくても、薬剤を効率良く空気中に揮散させることができる。そのため、薬剤を高含量で含み、薬剤が揮散しにくい場合でも、たとえばアゾジカルボンアミド等の有機発泡剤を使用しなくても、直接加熱方式により薬剤を効率良く空気中に揮散させることができる。
また、薬剤を高含量で含む場合以外にも、その組成によっては薬剤の揮散量が低下する場合がある。たとえば、上述したように、アゾジカルボンアミドは、薬剤としてピレスロイド系殺虫剤を用いる場合には適しているが、それよりも低揮散性の薬剤(たとえば高沸点並びに低蒸気圧等の薬剤)を用いた場合には、うまく揮散しないおそれがある。本発明は、薬剤揮散性に優れていることから、このような薬剤を用いる場合でも、薬剤を効率良く空気中に揮散させることができる。
また、本発明においては、上記とは逆に有効成分含量が少ない場合でも、有効成分を分解することなく、効率よく空気中に揮散させることができる。
さらに、本発明のくん煙剤組成物およびくん煙方法は、取扱い上の安全性、使用時の汚染、くん煙ガスの臭気等、実用性の面でも優れている。
これらの効果が得られる理由は、定かではないが、化合物(b1)が、薬剤の揮散に必要な熱を発生する発熱剤として機能するほか、燃焼剤から発生する熱量を、薬剤の揮散に適した範囲内に制御する発熱調整剤として機能し、加熱時に発生する熱量を適度な範囲内に維持するためではないかと推測される。
以下、実施例、試験例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例、試験例に制約されるものではない。
[実施例1〜10、比較例1〜7]
表1〜2に示す組成のくん煙剤組成物を以下の手順で製造した。ペルメトリンとしては、住友化学株式会社製のエクスミン(商品名)を使用した。表1中、「バランス」は、当該組成物の全量が100質量%となる量を示す。
表1〜2に示す各成分を所定量秤りとり、ニーダーに入れて混合撹拌した後、水を加えて練合し、直径2mmの開孔を有するダイスの前押し出し造粒機を用い造粒した。さらに、この造粒物を所定の長さ(2〜5mm)に切断し、70℃に設定した乾燥機により乾燥させて顆粒状のくん煙剤組成物(くん煙顆粒剤)を得た。
上記実施例1〜10および比較例1〜7においては、各成分を混合撹拌し、水を加えて練合した際に得られた練合物の状態及び造粒時の成型性を観察して製造適性(造粒性)を評価した。すなわち、練合物が造粒に適した状態である場合を○、練合物にベタツキがあり、造粒しにくい状態である他、造粒時のまとまりが悪く成型性が不良な場合等を△、造粒できない状態である場合を×として評価した。その結果を表1〜2に示す。
また、実施例1〜10および比較例1〜7で得られたくん煙顆粒剤を、下記のくん煙方法によりくん煙させ、以下の評価を行った。
(くん煙方法)
市販の直接加熱式のくん煙剤製品(「バルサンSPジェット25g」(ライオン社製))の容器の薬剤収納部に各くん煙顆粒剤25gを入れ、当該容器に付属の点火具を熱源としてくん煙顆粒剤の一部分を加熱し、自己燃焼させた。
[くん煙状態評価]
くん煙状態を観察し、内容物の飛散を来たす問題のあるものを「内容物飛散」、燃焼の立ち消えを生じる問題のあるものを「立ち消え」とし、これらの問題の無いものを「正常」とした。その結果を表1〜2に示す。
[有効成分の揮散率評価]
6380Lの室内でくん煙を行った後、室内空気をファンにより攪拌した。この室内空気約20Lを、真空ポンプを用いて、クロマト用シリカゲルを充填したガラス管内に通過させ、有効成分(ペルメトリン)をシリカゲルに吸着させた。次いで、吸着した有効成分を、アセトンにより溶出、回収し、ガスクロマトグラフ法により常法にて定量することにより、捕集した室内空気中の有効成分量(P)を求めた。
また、くん煙前のくん煙顆粒剤についても、当該顆粒剤中の有効成分量(Q)をガスクロマトグラフ法により常法にて求めた。
これらの値から、次式により揮散率(%)を算出した。その結果を表1〜2に示す。
Figure 0005172393
Figure 0005172393
Figure 0005172393
上記結果に示すとおり、組成物中に硝酸グアニジンを30〜80質量%、ニトロセルロースを2〜10質量%含有することにより、くん煙時飛散を来したり、燃焼継続できず立ち消えすることもなく、正常にくん煙を実施できることが確認できた。
また、有効成分(ペルメトリン)含量が多い場合(実施例1〜6、10)でも、効率よく空気中に揮散させることが可能であることが確認された。また、有効成分含量が少ない場合(実施例7〜9)でも、有効成分を分解することなく、効率よく空気中に揮散させることが可能であることが確認された。
また、ペルメトリンの配合量が30質量%以下の実施例1〜9は、製造適性も良好であった。
一方、アゾジカルボンアミドを主体とした発熱性基剤を用いた比較例1〜2や、ニトロセルロースの配合量が1質量%の比較例3は、揮散率が非常に低かった。
また、ニトロセルロースの配合量が15質量%の比較例4は、くん煙時に内容物の飛散が生じた。
硝酸グアニジンの配合量が25質量%の比較例5〜6は揮散率が低かった。
また、硝酸グアニジンの配合量が85質量%の比較例7は、立ち消えが生じてしまい、揮散率が低くなり、製造適性も不良であった。
なお、上記で用いたペルメトリンを、ペルメトリンよりも低揮散性の薬剤であるエトフェンプロックス(三井化学株式会社製、トレボン(商品名))に変更したところ、同様の結果が得られた。
以上のように、本発明のくん煙剤組成物およびくん煙方法によれば、何らの間接的加熱機構を要さずに、製剤の一部分を直接加熱することで容易にくん煙を開始し、その後も安定的に自己燃焼を継続し、薬剤を効率良く空気中に揮散させることができる。本発明は、特に、(A)成分の含有量が多い場合(たとえば20〜35質量%)や、(A)成分として、比較的揮散させにくい薬剤(たとえば高沸点並びに低蒸気圧等の薬剤)を用いる場合に有用性が高い。
また、本発明のくん煙剤組成物およびくん煙方法は、取扱い上の安全性や使用時の汚染等、実用性の面でも優れている。

Claims (7)

  1. 少なくとも1種の有害生物駆除用薬剤(A)と、少なくとも1種の発熱性基剤(B)とを含有するくん煙剤組成物であって、
    前記発熱性基剤(B)が、グアニジンと、硝酸、炭酸またはリン酸との塩、グアニジンの水素原子の一部または全部がニトロ基もしくはシアノ基で置換された化合物、硝酸アンモニウムおよび硝酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(b1)と、ニトロセルロースおよびセルロイドからなる群から選ばれる少なくとも1種の燃焼剤とを含有し、
    当該くん煙剤組成物中、前記有害生物駆除用薬剤(A)の含有量が0.1〜35質量%であり、前記化合物(b1)の含有量が30〜80質量%であり、前記燃焼剤の含有量が2〜10質量%であることを特徴とするくん煙剤組成物。
  2. 前記化合物(b1)が硝酸グアニジンである請求項1に記載のくん煙剤組成物。
  3. 前記燃焼剤がニトロセルロースである請求項1または2に記載のくん煙剤組成物。
  4. 前記発熱性基剤(B)が、さらに、アゾジカルボンアミド、p・p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンおよびアゾビスイソブチロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機発泡剤を含有し、前記有機発泡剤の含有量が0質量%超30質量%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のくん煙剤組成物。
  5. 前記有機発泡剤がアゾジカルボンアミドである請求項4に記載のくん煙剤組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のくん煙剤組成物を直接的に加熱することを特徴とするくん煙方法。
  7. 前記加熱を、点火具を用いて行う請求項6に記載のくん煙方法。
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