JP5171871B2 - 光伝導素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電磁波を発生させる又は検出するために用いる電磁波発生・検出用構造体、光半導体装置及び電磁波発生・検出用構造体の製造方法に関し、特に、テラヘルツ電磁波(本明細書ではほぼ30GHz〜30THzの周波数領域の電磁波を指す用語として用いる)等の高周波電磁波を発生させる又は検出するための技術分野に関する。
テラヘルツ電磁波などの高周波電磁波の発生には、光スイッチ素子を用いた光伝導アンテナ(光伝導素子)が多く用いられている。光伝導素子を用いたテラヘルツ電磁波発生・検出素子は、例えば、光伝導部と、光伝導部の所定の面上に形成され互いに分離された2つの導電部とを有し、前記2つの導電部の少なくとも一部同士が前記所定の面に沿った方向に所定間隔を開ける様に配置された素子である。
前記素子を用いてテラヘルツ電磁波を発生させる方法は、以下の通りである。通常は、前記2つの導電部間にバイアス電圧を印加しても、2つの導電部間(ギャップ部分)の抵抗値が非常に高いため電流は殆ど流れない。ギャップ部分にフェムト秒パルスレーザ光等の励起パルス光を照射すると、ギャップ部分に自由キャリアが生成される。その瞬間だけギャップ部分の抵抗値が下がり、導電部間に電流が流れる。すると、このパルス状の電流(これを含め励起光により生じる電流を光電流と定義する)を時間で1階微分した値に比例した電場振幅を持ったテラヘルツ電磁波が発生する。このとき、導電部がアンテナとしての役割を果たし、その形状に応じた周波数帯の電磁波が光伝導素子の外部に向けて発せられる。アンテナ構造には、ダイポール型、ボウタイ型、ストリップライン型などが用いられている。ここにおいて、テラヘルツ電磁波が発生することは光伝導部の材料、構造などでほぼ決まり、テラヘルツ周波数領域内のどの辺の周波数の電磁波になるかは、励起パルス光のプロフィール、導電部の形状などにより決定される。
前記バイアス電圧の大きさは、導電部間隔が5μm程度のいわゆるダイポールアンテナと呼ばれる構造の導電部を有する光伝導素子の場合で、20V程度であるが、導電部間隔が数cmあるような大口径光伝導素子の場合は数十kVに達することもある。どちらの場合も、導電部間の電場は非常に強く、また、電場が強いほど、発生するテラヘルツ電磁波も強くなる。本明細書において、導電部間にバイアス電圧1Vを印加した時に光伝導素子から発生するテラヘルツ電磁波のエネルギーを、光伝導素子に入射する励起光のエネルギーで除した値を、光-テラヘルツ変換効率(ないし光-電磁波変換効率)と定義する。
一方、光伝導素子を用いてテラヘルツ電磁波を検出する方法は、以下の通りである。ギャップ部分(光伝導部)にフェムト秒パルスレーザ光等の励起パルス光を照射して、前記ギャップ部分に自由キャリアを生成する。同時に、テラヘルツ電磁波を前記ギャップ部に入射させる。すると、励起パルス光によって前記ギャップ部分に生じた自由キャリアは、テラヘルツ電磁波の電場によって加速される。このとき、導電部間に流れる電流を検出することにより、テラヘルツ電磁波を検出できる。本明細書において、1mWの励起光を光伝導部中に照射してテラヘルツ電磁波を検出した時、導電部間に流れる電流を入射テラヘルツ光のエネルギーで除した値をテラヘルツ検出感度(ないし電磁波検出感度)(A/W)と定義する。
光伝導素子の光-テラヘルツ変換効率を高くするには、励起光によって生成した光伝導部の自由キャリアの移動度が大きいことが要求される。自由キャリアの移動度が大きければ、光電流を時間で1階微分した値が大きくなるからである。同様に、テラヘルツ検出感度の高い光伝導素子には、励起光によって生成した光伝導部中の自由キャリアの移動度が大きいことが要求される。自由キャリアの移動度が大きければ、テラヘルツ電磁波によって自由キャリアは容易に加速され、より大きな電流が流れるからである。
図11に示す様に、光伝導素子の従来の製造方法の一例では、半絶縁性GaAs基板51を300℃程度以下の温度に保持した状態で、半絶縁性GaAs基板51上面にGaAs膜52をエピタキシャル成長させる。このGaAs膜は、過剰な砒素を多く含み、それらが点欠陥56を形成し自由キャリアの再結合中心となる(図11(A))。そのため、自由キャリアのキャリア寿命が短く、キャリアの移動度が小さくなる。そして、エピタキシャル成長終了後に同じ装置内で前記半絶縁性GaAs基板51を600℃程度で砒素雰囲気中で加熱する。この様にして形成されたGaAs膜をLT-GaAs膜52aと言う。LT-GaAs膜は、図11(A)のGaAs膜と比べて、長いキャリア寿命(すなわち、比較的大きなキャリア移動度)、高い抵抗率を有していることが知られている。言い換えれば、LT-GaAs膜中には、過剰な砒素が凝集した砒素のクラスター57が形成され、砒素のクラスター57以外の領域ではストイキオメトリックなGaAs結晶となるため、自由キャリアの移動度が増大し、自由キャリアを提供する不純物準位が減少するため、抵抗率が高くなる(図11(B))。
図9に、非特許文献1に記載の光伝導素子の従来の製造方法の一例を示す。以下に、この光伝導素子の従来の製造方法の一例について説明する。まず、成長装置53内で、厚さ500μmの半絶縁性GaAs基板51(図9(A))の温度を250℃に保持し、半絶縁性GaAs基板51の(100)面上に分子ビームエピタキシー法を用いてGaAs膜52を厚さ1.5μm成長させる(図9(B))。アニールされていないGaAs膜52の成長終了後に、同じ装置53内で、前記半絶縁性GaAs基板51の温度をエピタキシャル成長時の温度以上である600℃に上昇させ、GaAs膜52を5分間加熱する(図9(C))。その後、アニールしたLT-GaAs膜52a上に、一層目のチタン薄膜と二層目の金薄膜からなる積層構造の導電部55a、55bをフォトリソグラフィーなどを用いて形成する(図9(D))。
図10に、従来の製造方法で製造した光伝導素子の一例の平面概略図を示す。図10の例のボウタイ型アンテナ構造の導電部55a、55bの構造では、底辺800μmの直角二等辺三角形の直角の頂上部から5μmの部分を切り取った左右対称な二つの台形を、5μmの隙間gを空けて対向させている。
上で述べたような従来の製造方法で作製した光伝導素子を使用した場合、光伝導素子に励起光を12mW入射し、30Vのバイアス電圧をかけて、2μW程度のテラヘルツ電磁波出力が得られる(非特許文献1参照)。また、こうした光伝導素子を用いてテラヘルツ電磁波を検出する場合では、光伝導素子に4mWの励起光を入射し、1μWのテラヘルツ電磁波を入射させたときに、1nA程度の電流が流れる(非特許文献1参照)。
テラヘルツ光は、イメージングやセンシングなどへの実際的な応用が期待され、産業化が大いに待たれている。テラヘルツ光の産業上の応用に欠かせないのが、光-電磁波変換効率が高い素子を得ることである。しかし、上述した光伝導素子の光-電磁波変換効率は、十分高いとは言えない。そこで、本発明は、光-電磁波変換効率を向上する技術を提供するものである。
上記課題に鑑み、本発明のテラヘルツ光発生素子またはテラヘルツ光検出素子の製造方法は、基板温度が150℃以上300℃以下で、エピタキシャル成長させることでGaAs膜を基板上に形成する工程と、前記GaAs膜が形成された前記基板を、基板温度が600℃以上800℃以下で、砒素雰囲気中で加熱する第1の加熱工程と、前記第1の加熱工程の後、基板温度が700℃以上800℃以下で、水素または不活性ガス雰囲気中で前記基板を加熱する第2の加熱工程と、前記第2の加熱工程の後、前記基板の前記GaAs膜上に導電部を形成する工程と、を有し、前記第2の加熱工程では、前記GaAs膜上にGaAs基板を載せた状態で、前記基板を加熱することを特徴とする。
また、上記課題に鑑み、本発明の電磁波を発生させる又は検出するために用いる電磁波発生・検出用構造体は、基板と、基板上に配された化合物半導体を含む層と、前記層上にギャップを隔てて配された複数の導電部を備え、前記層中にキャリアを捕獲するための粒子があり、前記層中の粒子の中心間の平均間隔が、基板温度が300℃程度以下で基板上に形成された後に砒素を含む雰囲気中で加熱されて形成された化合物半導体を含む層中のキャリアを捕獲するための粒子の中心間の平均間隔より大きく、前記層中の粒子の中心間の平均間隔から前記層中の粒子の平均粒子径を引いた値が、前記基板上に配された化合物半導体のキャリアの平均自由行程距離程度以下であることを特徴とする。ここにおいて、例えば、前記層中の粒子の中心間の平均間隔はほぼ42nm以上である。
また、上記課題に鑑み、本発明の電磁波を発生させる又は検出するために用いる電磁波発生・検出用構造体は、基板と、基板上に配された化合物半導体を含む層と、前記層上にギャップを隔てて配された複数の導電部を備え、前記層中にキャリアを捕獲するための粒子があり、前記層中の粒子の平均粒子径が、基板温度が300℃程度以下で基板上に形成された後に砒素を含む雰囲気中で加熱されて形成された化合物半導体を含む層中の粒子の平均粒子径より大きく、前記層中の粒子の中心間の平均間隔から前記層中の粒子の平均粒子径を引いた値が、前記基板上に配された化合物半導体のキャリアの平均自由行程距離程度以下であることを特徴とする。ここにおいて、例えば、前記層中の粒子の平均粒子径はほぼ9.3nm以上である。
また、上記課題に鑑み、本発明の光半導体装置は、上記の電磁波発生・検出用構造体と、前記構造体上の前記導電部間のギャップに向けて電磁波を照射するための照射部を備えることを特徴とする。この光半導体装置は、テラヘルツ光発生素子、テラヘルツ光検出素子などとして好適に用いることができる。
本発明により、化合物半導体を含む層中のキャリアを捕獲するための粒子の特有の分布構造などに起因して、従来の光伝導素子よりも光-電磁波変換効率が向上した素子を提供することが可能になる。
本発明の実施例の光伝導素子の製造方法を説明するための断面概略図である。 本発明の実施例の光伝導素子を説明するための平面概略図である。 本発明の光伝導素子を用いてテラヘルツ電磁波を発生する実験の模式図である。 本発明の光伝導素子を用いてテラヘルツ電磁波を検出する実験の模式図である。 従来の光伝導素子と本発明の光伝導素子とのテラヘルツ電磁波振幅を比較したグラフである。 本発明の別の実施例の光伝導素子の製造方法を説明するための断面概略図である。 本発明の別の実施例の光伝導素子を説明するための平面概略図である。 砒素凝集を含むGaAs膜を説明する図である。 従来の光伝導素子の製造方法を説明するための断面概略図である。 従来の光伝導素子の平面概略図である。 300℃以下の温度でエピタキシャル成長させたGaAs膜をエピタキシャル成長装置内でエピタキシャル成長温度以上に加熱することによる、該GaAs膜の物理的変化を示した模式図である。
図1は、本発明による光伝導素子製造方法(電磁波を発生させる又は検出するための構造体の製造方法)の一実施形態、及び完成した光伝導素子の一実施形態を示す断面図である。図中において、符号1は基板を示し、符号2は低温成長したGaAs膜を示し、符号2aはアニールしたLT-GaAs膜を示す。また、符号2bは、アニールしたLT-GaAs膜2aを、さらに基板温度600℃程度以上で加熱したGaAs膜を示し、符号3は成長装置を示し、符号4は加熱炉を示し、符号5a、5bは導電部を示す。ここの実施形態では、GaAsを用いているが、GaAs以外の化合物半導体としては、II-VI族やIII-V族の化合物半導体が考えられ、特にIII-V族の化合物半導体が好ましく用いられる。具体的には、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)やインジウムガリウム砒素(InGaAs)などで砒素凝集物が含まれている化合物半導体である。他にも、GaP、(AlGa1−X1−YInAs、GaIn1−XP等が考えられる。また、砒素以外の凝集物が含まれている半導体(InAs、AlAs、ZnTe、ZnSe)も考えられる。
本実施形態の光伝導素子製造方法では、まず、化合物半導体膜2を基板1上に形成する(図1(B))。形成方法としては、エピタキシャル成長、真空蒸着、スパッタ等がある。エピタキシャル成長させる方法としては、有機金属気相成長法(MOCVD)や分子線結晶成長法(MBE)等があり、その中でも分子ビームエピタキシー法を用いて行うことが、欠陥以外の領域に良好な結晶性のものが得られる観点から、好ましい。このときの基板温度は300℃以下で行う。
基板温度ほぼ150℃以上300℃以下がテラヘルツ波を発生・検出するために用いる膜を形成するのに好適で、さらに好ましくは、ほぼ200℃以上270℃以下である。ほぼ200℃以上270℃以下で膜をエピタキシャル成長させることにより、テラヘルツ波を発生・検出するために最適な膜を提供することができる。これは、膜中にテラヘルツに最適な欠陥が形成されたものと考えられるからである。一方、300℃程度より高いと、キャリアを補足するためのクラスターを形成するための砒素の量が少なくなり好ましくない。
そして、化合物半導体膜2を形成した後に、図1(C)で示す様に、砒素雰囲気中で前記化合物半導体膜を基板温度600℃程度で加熱する(第1の加熱工程)。この第1の加熱工程は、前記化合物半導体膜中の砒素のクラスターを形成するためのものであり、600℃でなくても、砒素がクラスターを形成する温度であれば良く、600℃以上であれば良いと考えられる。例えば、ほぼ600℃以上800℃以下で加熱すれば同様の効果が得られると考えられる。
さらに、図1(D)で示す様に、前記化合物半導体膜を、この化合物半導体と化学反応をしないガス雰囲気中で基板温度600℃程度以上に加熱する(第2の加熱工程)。この第2の加熱工程で、前記化合物半導体膜中に、テラヘルツ電磁波(30GHz〜30THz)を効率良く発生させるための分布構造(大きさ、形状、クラスター密度など)に砒素を凝集させてクラスターを形成する。第2の加熱工程としては、ほぼ700℃以上800℃以下が好ましい。また、望ましくない化合物半導体膜からの砒素蒸発を防止するために、加熱雰囲気は、水素で行うことが好ましいが、不活性ガス雰囲気下でも同様の効果が得られる。窒素雰囲気下では、条件により窒化ガリウムを形成してしまうので、好ましくないが、窒化ガリウムを形成しない条件になっていれば窒素雰囲気でも良い。また、加熱炉4内での熱の伝わり良さの確保、雰囲気の作り易さ、砒素の蒸発防止などの観点から、加熱雰囲気の全圧は、大気圧近傍が好ましい。大気圧近傍とは、1気圧(101325Pa)近傍であり、例えば、70927.5Pa〜131722.5Paの東京において観測される範囲の大気圧内のものを言う。
ここで実現される化合物半導体層中では、前記クラスターないし粒子の中心間の平均間隔が、基板温度が300℃程度以下で基板上に形成された後に砒素を含む雰囲気中で加熱されて形成された化合物半導体を含む層中のキャリアを捕獲するための粒子の中心間の平均間隔より大きく、前記粒子の中心間の平均間隔から前記粒子の平均粒子径を引いた値が、化合物半導体のキャリアの平均自由行程距離程度以下となっている。より具体的には、粒子の中心間の平均間隔が、ほぼ42nm(これは、図11(B)に示す従来のLT-GaAs膜(第1の加熱工程後のもの)中のクラスターないし粒子の中心間の平均間隔の数値にほぼあたる)以上になっている。或いは、前記粒子の平均粒子径が、基板温度が300℃程度以下で基板上に形成された後に砒素を含む雰囲気中で加熱されて形成された化合物半導体を含む層中のキャリアを捕獲するための粒子の平均粒子径より大きく、前記粒子の中心間の平均間隔から前記粒子の平均粒子径を引いた値が、化合物半導体のキャリアの平均自由行程距離程度以下となっている。より具体的には、粒子の平均粒子径が、ほぼ9.3nm(これは、図11(B)に示す従来のLT-GaAs膜中のクラスターないし粒子の平均粒子径の数値にほぼあたる)以上になっている。
ここでの平均自由行程は次の様に求められる。熱平衡でのキャリアのエネルギー分配則と、キャリアの移動度と緩和時間の関係式から、前記第2の加熱工程後の結晶性を有するGaAs中のキャリア(電子)の平均自由行程距離は約146nmと求まる。ここで、GaAs中の電子の移動度を8500cm/(Vs)と見積もった(丸善株式会社 電子材料シリーズ「ガリウム砒素」p29参照)。また、GaAs中の電子の有効質量を、電子の静止質量の0.067倍であると見積もった(同上)。これらの数値は、前記第2の加熱工程後の結晶性を考慮すれば妥当な数値である。
こうした構造により、より高い光-テラヘルツ変換効率(光-電磁波変換効率)が得られる理由は次の通りである。テラヘルツ電磁波の効率的発生には、キャリアの移動度が高く、かつキャリア(電子)が平均自由行程距離を移動するより先に砒素等の凝集にトラップされることが求められると考えられる。なぜなら、キャリア移動度が高いほど大きな光電流が流れるからであり、またキャリアが平均自由行程以上の距離を進行するとフォノン等により散乱されるからである。従来例では、砒素凝集周辺のGaAsの結晶性が比較的悪いが、本実施形態では砒素凝集周辺のGaAsの結晶性が向上しているため、キャリア移動度が高くなっている。また、本実施形態では、例えば、砒素凝集中心間平均距離から砒素凝集の平均粒子径を引いた値が、キャリアの平均自由行程距離程度以下であって粒子中心間平均間隔がほぼ42nm以上であるか粒子平均粒子径がほぼ9.3 nmであるため、キャリアが散乱される前に砒素凝集にトラップされると考えられる。こうして、上記実施形態を含む本発明では、化合物半導体を含む層中のキャリアを捕獲するための粒子が上記の如き特有の分布構造を有することなどに起因して、従来の光伝導素子よりも光-電磁波変換効率が向上した素子を実現できることになる。
前記第2の加熱工程の加熱後、図1(E)で示す様に、膜2b上に導電部5a、5bを形成する。ここでは、導電部5a、5bは膜2bの同一面上に形成されているが、膜2bの上下の異なる面上に適当なギャップを隔てて形成されたりしてもよい。導電部5a、5bはアンテナとして用いる形態が好ましく、形状としては、ボウタイ型、ダイポール型、パッチ型、スロット型、スパイラル型、ログペリ型等がある。また、異なる型のものを同時に用いたり、同じ型を複数用いることもできる。導電材料としては、一層目にチタン、二層目に金を蒸着したものを用いているが、一層目に金ゲルマニウム合金、二層目にニッケル、三層目に金を蒸着し、アロイ化したもの(AuGe/Ni/Au導電部)を用いても良い。また、一層目に金ゲルマニウム合金、二層目に金を蒸着し、アロイ化したもの(AuGe/Au導電部)を用いても良い。AuGe/Ni/Au導電部やAuGe/Au導電部を用いると、導電部・基板間のコンタクト抵抗が低下し、より高い光-テラヘルツ変換効率が得られる。
また、上記実施形態は、砒素凝集周辺のGaAsの結晶性が向上しているため、ブレークダウンが起こらない最大バイアス電圧印加時の光-テラヘルツ変換効率である光-テラヘルツ最大変換効率の高い光伝導素子ともなっている。すなわち、高いバイアス電圧をかけても光伝導部が絶縁破壊しなくて、高耐電圧性を有しているので、より高いバイアス電圧をかけることができて、より大きな光電流を生じさせられる。さらに、励起光によって生成した光伝導部中の自由キャリアの移動度が大きいので、テラヘルツ検出感度の高い光伝導素子ともなっている。すなわち、自由キャリアの移動度が大きいので、テラヘルツ電磁波によって自由キャリアは容易に加速され、より大きな電流が流れる。
以下、本発明によるテラヘルツ光発生素子、テラヘルツ光検出素子、それらの製造方法などの具体的な実施例について、図面を参照して説明する。
(実施例1)
実施例1の素子及び製造方法は上記実施形態のそれらと基本的に同じである。本実施例の効果を比較・評価するため、前記第2の加熱工程以外の工程は同一条件で行い、第2の加熱工程のみ条件を変えた五つの素子を製造した。
図1に示す様に、厚さ500μmの半絶縁性GaAs基板1(図1 (A))の温度を250℃に保持し、該半絶縁性GaAs基板1の(100)面上に分子ビームエピタキシー法を用いてGaAs膜2を厚さ1.5μm成長させた(図1 (B))。このGaAs膜2の成長終了後に、エピタキシャル成長装置3内で半絶縁性GaAs基板1の温度を600℃に上昇させ、砒素雰囲気中で10分間加熱した(図1 (C))。
エピタキシャル成長装置3から半絶縁性GaAs基板1を取り出したのち、半絶縁性GaAs基板1を加熱炉4に入れ、水素雰囲気中で半絶縁性GaAs基板1を基板温度600℃以上の温度で10分間加熱した(図1 (D))。このとき、LT-GaAs膜から砒素が熱によって解離することを防止する目的で、異なるGaAs基板を該LT-GaAs膜上に載せても良い。この第2の加熱工程が含まれることが、従来の製造方法と最も異なる点である。ここで、図1 (C)の前工程までを終えた半絶縁性GaAs基板1を五つに分割し(図示せず。図1には基板を分割したことは反映されていない)、それぞれ異なる条件で第2の加熱工程を行った。第2の加熱工程の加熱温度は、それぞれ500℃、600℃、700℃、750℃、800℃とした。
その後、一層目のチタン薄膜、二層目の金薄膜からなる積層構造の導電部5a、5bを、フォトリソグラフィーなどを用いて形成した(図1(E))。図2は、完成した光伝導素子の一例の平面概略図である。導電部5a、5bの構造は、図2に示した様に、底辺800μmの直角二等辺三角形の直角の頂上部から5μmの部分を切り取った左右対称な二つの台形を、5μmの隙間gを空けて対向させたボウタイ型アンテナ構造とした。ただし、上述した具体的な数値、物質名、構造などは、あくまで一例であり、本実施例の範囲はこれら具体的な数値、物質名、構造に拘束されるものではない。
次に、前記光伝導素子を用いたテラヘルツ電磁波発生の構成の実施例を示す。この構成は、図3に示す様に、テラヘルツ電磁波発生素子である前記光伝導素子8と、照射装置系9と、電圧印加部としての出力電圧を調整し得る電源10とを備えている。照射装置系9は、図2及び図3に示す様に、テラヘルツ電磁波発生素子8の導電部5a、5bの間隔gに相当する領域Rに、フェムト秒パルスレーザ光等の超短パルスレーザなどを、励起パルス光として照射する。照射装置系9は、例えば、レーザ光源と、必要に応じて照射領域の大きさを調整するレンズ等とから構成される。
電源10は、その2つの出力端子にそれぞれ接続された電線11a、11bを介して、導電部5a、5b間にバイアス電圧を印加する。
本実施例では、導電部5a、5b間には、電源10によりバイアス電圧が印加されているが、通常は、2つの導電部5a、5b間(ギャップ部分)の抵抗値が非常に高いため電流は殆ど流れない。照射装置系9により、ギャップ部分に、GaAs膜2bのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ超短パルスレーザ光などを照射して、自由キャリアを励起し生成すると、その抵抗値が下がり電流が流れる。励起レーザ光のパルス幅が十分に短く、かつ励起された自由キャリアの寿命が短いため、この電流はごく短時間しか流れない。そして、このとき、電流が時間変化するため、電流値を時間で1階微分した値に比例した電場振幅の電磁波が発生する。励起レーザ光のパルス幅が十分に短ければ(例えば、100fs以下程度)、発生した電磁波をフーリエ変換して得られるスペクトルは高周波側で数THzに達する。これがテラヘルツ電磁波である。
本実施例の製造方法で製造した光伝導素子と、従来の製造方法で製造した光伝導素子の光-テラヘルツ変換効率の比較を行った。図5に、本実施例の効果を示した実験結果を示す。テラヘルツ電磁波発生素子に、従来の製造方法で製造した光伝導素子と、本実施例の製造方法で製造した五つの光伝導素子を用いた。テラヘルツ電磁波検出素子には、従来の製造方法で製造した光伝導素子を共通して用いた。
また、本実施例の効果を示すために比較対象として用いた従来の製造方法で製造した光伝導素子は、背景技術の説明のところで述べ、図9に示した従来の製造方法の一例の通りに製造した。
テラヘルツ電磁波発生素子に入射させる超短パルス光の光強度は、従来の製造方法で製造した光伝導素子、本実施例の製造方法で製造した光伝導素子共に10mWであった。テラヘルツ電磁波発生素子の導電部間に印加したバイアス電圧は、従来の製造方法で製造した光伝導素子、本実施例の製造方法で製造した光伝導素子共に10Vであった。
図5は、横軸に加熱炉4にて加熱する第2の加熱工程時における基板の加熱温度をとり、縦軸に光伝導素子から発せられたテラヘルツ電磁波の振幅を取ったグラフである。縦軸は、従来の製造方法で製造した光伝導素子から発せられたテラヘルツ電磁波の振幅を1とした。
実験結果から分かる様に、加熱炉4で600℃以上で加熱した素子から発せられたテラヘルツ電磁波のほうが、従来の製造方法で製造した光伝導素子から発せられたテラヘルツ電磁波より振幅が大きかった。よって、本実施例の製造方法で製造した光伝導素子は、全般的に、従来の製造方法で製造した光伝導素子より光-テラヘルツ変換効率が向上したことが示された。
また、加熱炉4での加熱温度が700℃であった素子の光-テラヘルツ変換効率は、600℃で加熱した素子に比べ、光-テラヘルツ変換効率が大幅に向上・改善した。一方、750℃および800℃で加熱した素子と700℃で加熱した素子の光-テラヘルツ変換効率は、ほぼ同じであった。すなわち、光-テラヘルツ変換効率の上昇は、700℃で飽和した。このことから、700℃以上で加熱すれば、製造効率良く、光-テラヘルツ変換効率が高い素子を得ることができる。実験結果より、好ましくは、ほぼ700℃以上800℃以下であることが分かる。
(実施例2)
次に、前記光伝導素子を用いたテラヘルツ電磁波検出の構成の実施例を示す。この構成は、図4に示す様に、テラヘルツ電磁波検出素子である前記光伝導素子8と、照射装置系9と、電流検出部としての回路12とを備えている。照射装置系9は、図2及び図4に示す様に、テラヘルツ電磁波検出素子8の間隔gに相当する領域Rに、フェムト秒パルスレーザ光等の超短パルスレーザなどを、励起パルス光として照射する。照射装置系9は、例えば、レーザ光源と、必要に応じて照射領域の大きさを調整するレンズ等とから構成される。電流検出回路12は、その2つの出力端子にそれぞれ接続された電線11a、11bを介して、導電部5a、b間に流れる電流を検出する。
照射装置系9により、ギャップ部分に、GaAs膜2bのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ超短パルスレーザ光などを照射して、自由キャリアを励起し生成する。このとき、ギャップ部にテラヘルツ電磁波を照射すると、テラヘルツ電磁波の電場の振幅に応じて自由キャリアが運動し、電流となって検出される。励起レーザ光のパルス幅が十分に短く、かつ励起された自由キャリアの寿命が短いため、この電流はごく短時間しか流れない。テラヘルツ電磁波と励起光を入射させるタイミングを、少しずつ、ずらすことで、テラヘルツ電磁波の波形を観測することができる。
テラヘルツ電磁波発生素子に、従来の製造方法で製造した光伝導素子を共通して用い、テラヘルツ電磁波検出素子8に、従来の製造方法で製造した光伝導素子及び本実施例の製造方法で製造した光伝導素子を用いた場合に検出された電流値を比較した(図示せず)。
本実施例の製造方法で製造した光伝導素子として、前述した実施例1に述べた通りの製造方法で製造した光伝導素子を用いた。また、本実施例の効果を示すために比較対象として用いた従来の製造方法で製造した光伝導素子は、背景技術の説明のところで述べ、図9に示した従来の製造方法の一例の通りに製造した。
その結果、本実施例の製造方法で製造した光伝導素子を用いてテラヘルツ電磁波を受信したときに電流検出回路12で検出された電流値は、従来の製造方法で製造した光伝導素子を用いてテラヘルツ電磁波を受信したときに電流検出回路12で検出された電流値より全般的に大きかった。よって、本実施例の製造方法で製造した光伝導素子は、従来の製造方法で製造した光伝導素子よりテラヘルツ検出効率が向上したことが示された。
(実施例3)
次に、実施例3を説明する。本実施例は以下の如く作製された。
図6に示す様に、厚さ500μmの半絶縁性GaAs基板1(図6(A))の温度を250℃に保持し、半絶縁性GaAs基板1の(100)面上に分子ビームエピタキシー法を用いてGaAs膜2を厚さ1.5μm成長させた(図6(B))。このGaAs膜2の成長終了後に、エピタキシャル成長装置3内で半絶縁性GaAs基板1の温度をエピタキシャル成長温度以上である600℃に上昇させ、砒素雰囲気中で10分間加熱した(図6(C))。エピタキシャル成長装置3の中に有り、LT-GaAs膜2aをエピタキシャル成長させた領域から区切られた領域3aに半絶縁性GaAs基板1を輸送したのち(図6(D))、該領域3aを圧力一気圧で常温の水素で満たしたのち、半絶縁性GaAs基板1を700℃で10分間加熱した(図6(E))。その後、一層目のチタン薄膜、二層目の金薄膜からなる積層構造の導電部5a、5bを、フォトリソグラフィーなどを用いて形成させた(図6(F))。
図7は、完成した光伝導素子の一例の平面概略図である。図7に示す様に、ガリウム砒素(GaAs)膜13上に、一層目のチタン薄膜、二層目の金薄膜からなる積層構造の導電部14a、14bが形成されている。導電部14a、14bの構造は、図7に示した様に、底辺800μmの直角二等辺三角形の頂上部を5μm切り取った左右対称な二つの台形を、5μmの隙間gを空けて対向させたボウタイ型アンテナ構造である。
実施例3によって作製した光伝導素子をテラヘルツ電磁波発生素子及びテラヘルツ電磁波検出素子として使用する方法は、実施例1、実施例2に示したのと同様である。
実施例3によって作製した光伝導素子も、実施例1で作製した光伝導素子と同様に、従来の製造方法で製造した光伝導素子に比べ、光-テラヘルツ変換効率、テラヘルツ検出感度とも改善された。実施例3に特有のメリットとして、製造工程を連続して行えるので製造時間の短縮が図れるという点が挙げられる。
以下に、上記実施例で述べた製造方法で作成されたGaAs膜が、確かに、本発明特有の粒子ないしクラスターの分布構造を有することを確認するための観察実験例を述べる。
(観察実験例1)
本実験例において、上記実施例に記載した方法と同様の方法でGaAs膜を作成した。この製造方法によって作成されたGaAs膜には、図8に示した様に、母材であるGaAs膜15中に砒素凝集16が多数存在する。凝集の観察は、以下に述べる方法で行う。
前記GaAs15中にある砒素凝集16の観察には300kVの透過電子顕微鏡(以下、TEM)を用い、機械研磨とイオンミリング装置により作成したGaAs膜断面の観察を行う。GaAs膜の断面TEM観察から、(1)砒素凝集16の抽出を行って、その個数と面積を求め、(2)観察視野の面積と試料片の厚み(電子エネルギー損失分光を利用)から観察視野の体積や粒子の重心を算出する。上記(1)と(2)の結果から、砒素凝集16の平均粒径と平均粒子間距離(粒子密度の1/3乗根)を求めた。
結論的には、以下のことが確認された。砒素凝集(粒子)16の平均粒径がほぼ9.3nm以上であって砒素凝集中心間平均距離から砒素凝集の平均粒子径を引いた値がキャリアの平均自由行程距離(ほぼ146nm)より小さいか、または凝集中心間(粒子の重心間)の平均距離がほぼ42nm以上であって砒素凝集中心間平均距離から砒素凝集の平均粒子径を引いた値がキャリアの平均自由行程距離(ほぼ146nm)より小さいGaAs膜を用いて光伝導素子を作製することで、従来から知られている方法で作製した光伝導素子よりも振幅が大きいテラヘルツ電磁波を発生させることができた。
一例として、砒素凝集の平均粒径および凝集中心間の平均距離が、上記に述べた範囲にあるGaAs膜を用いて作製した二つの光伝導素子と、砒素凝集の平均粒径および凝集中心間の平均距離が、上記に述べた範囲外にあるGaAs膜を用いて作製した一つの光伝導素子から発生するテラヘルツ電磁波の振幅の大きさを比較したものを以下に述べる。
砒素凝集の平均粒径が約13nm、凝集中心間の平均距離が約55nmであったGaAs膜を用いた光伝導素子と、砒素凝集の平均粒径が約22nm、凝集中心間の平均距離が約80nmであったGaAs膜を用いた光伝導素子と、砒素凝集の平均粒径が9.3nm未満でありかつ凝集中心間の平均距離が42nm未満であるGaAs膜を用いた光伝導素子の三者のテラヘルツ電磁波発生効率を比較した。
上記砒素凝集の平均粒径が9.3nm未満でかつ凝集中心間の平均距離が42nm未満であるGaAs膜は、従来から知られている方法(図9参照)で成長させたLT-GaAs膜を作成することで実現できた。砒素凝集の平均粒径が約13nm、凝集中心間の平均距離が約55nmであるGaAs膜は、実施例1に示した方法でLT-GaAsを作成する上で、図1(D)に示される行程で700℃に加熱することで得られた。砒素凝集の平均粒径が約22nm、凝集中心間の平均距離が約80nmであるGaAs膜は、実施例1に示した方法でLT-GaAsを作成する上で、図1(D)に示される行程で800℃に加熱することで得られた。
実施例1に述べた方法と同様な方法で前記光伝導素子からテラヘルツ電磁波を発生させたところ、砒素凝集の平均粒径が9.3nm未満でかつ凝集中心間の平均距離が42nm未満であるGaAs膜を用いた光伝導素子から発生したテラヘルツ電磁波の振幅を1とすると、砒素凝集の平均粒径が約13nm、凝集中心間の平均距離が約55nmであったGaAs膜を用いた光伝導素子から発生したテラヘルツ電磁波の振幅は1.8程度であった。また、砒素凝集の平均粒径が約22nm、凝集中心間の平均距離が約80nmであったGaAs膜を用いた光伝導素子から発生したテラヘルツ電磁波の振幅も1.8程度であった。
以上に述べた様に、本発明の実施例で作製された光伝導素子は従来の光伝導素子に比べ光-テラヘルツ変換効率が向上・改善されたことが示された。
(観察実験例2)
本実験例においても、上記実施例に記載した方法と同様の方法でGaAs膜を作成した。観察実験例2における凝集の観察は、次に述べる方法で行う。この観察方法では、GaAs膜母材の結晶性をX線回折によって求めた。入射X線をGe(440)4結晶モノクロメータを用いて単色化し、GaAs(400)面からの反射光をGe(220)アナライザー結晶を用いて受光し、逆格子マッピング測定を行なった。そこから、GaAs膜のスポットに関するロッキングカーブの半値全幅を測定した。この測定では、砒素凝集以外の領域の結晶性が測定でき、砒素凝集の分布構造は云わば間接的に観察できる。
X線回折による結晶性測定の結果、砒素凝集の平均粒径が9.3nm未満でかつ凝集中心間の平均距離が42nm未満であるGaAs膜のロッキングカーブの半値幅は約9.65”であり、砒素凝集の平均粒径が約13nm、凝集中心間の平均距離が約55nmであるGaAs膜のロッキングカーブの半値幅は約7.53”であり、砒素凝集の平均粒径が約22nm、凝集中心間の平均距離が約80nmであるGaAs膜のロッキングカーブの半値幅は約8.31”であった。これらのGaAs膜の平均粒径、凝集中心間の平均距離の数値は観察実験例1の方法で確認できる。
図3に示した様な方法で前記光伝導素子からテラヘルツ電磁波を発生させたところ、ロッキングカーブの半値幅が約9.65”であるGaAs膜を用いた光伝導素子から発生したテラヘルツ電磁波の振幅を1とすると、ロッキングカーブの半値幅が約7.53”であるGaAs膜を用いた光伝導素子から発生したテラヘルツ電磁波の振幅は1.8程度であった。また、ロッキングカーブの半値幅が約8.31”であるGaAs膜を用いた光伝導素子から発生したテラヘルツ電磁波の振幅も1.8程度であった。
ここでも、以上に述べた様に、本発明の実施例で作製された光伝導素子は従来の光伝導素子に比べ光-テラヘルツ変換効率が向上・改善されたことが示された。
1 半絶縁性GaAs基板(基板)
2 GaAs膜(化合物半導体を含む層)
2a 第1の加熱工程によるアニール済みLT-GaAs膜
2b、13 第2の加熱工程によるアニール済みLT-GaAs膜
3 GaAs膜のエピタキシャル成長装置
3a GaAs膜のエピタキシャル成長装置内部の別領域
4 加熱炉
5a、5b、14a、14b 導電部
8 光伝導素子
9 照射装置系
12 電流検出回路

Claims (3)

  1. テラヘルツ光発生素子またはテラヘルツ光検出素子の製造方法であって、
    基板温度が150℃以上300℃以下で、エピタキシャル成長させることでGaAs膜を基板上に形成する工程と、
    前記GaAs膜が形成された前記基板を、基板温度が600℃以上800℃以下で、砒素雰囲気中で加熱する第1の加熱工程と、
    前記第1の加熱工程の後、基板温度が700℃以上800℃以下で、水素または不活性ガス雰囲気中で前記基板を加熱する第2の加熱工程と、
    前記第2の加熱工程の後、前記基板の前記GaAs膜上に導電部を形成する工程と、を有し、
    前記第2の加熱工程では、前記GaAs膜上にGaAs基板を載せた状態で、前記基板を加熱することを特徴とする光伝導素子の製造方法。
  2. 前記導電部は、アンテナとして用いられることを特徴とする請求項1に記載の光伝導素子の製造方法。
  3. 前記第2の加熱工程の加熱雰囲気の全圧は、大気圧近傍であることを特徴とする請求項1または2に記載の光伝導素子の製造方法。
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