JP5171847B2 - 改良された一体型薬物送達システム - Google Patents

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Description

一体型薬物送達システム
発明の分野
この発明の分野は、ポリマー、好ましくはポリエステルの塩析および架橋を適用して、上記ポリマーの物理化学的および物理機械的な特性を変性し、速度が変調された薬物送達システムを達成することである。
発明の背景
ポリマー材料の物理化学的および物理機械的な変性と薬物送達装置からの関連する放出反応速度との相関は、塩析および架橋などの現象が発生する機構を我々が理解および解明するのに重要である(ダシェフスキー(Dashevsky)ら、2005;ダヤル(Dayal)ら、2005;ファン(Huang)ら、2005;ジョーンズ(Jones)ら、2005;ヤン(Young)ら、2005)。
塩析および架橋は、薬物送達装置の放出反応速度、ならびに拡散、緩和および浸食などの現象に影響を及ぼすポリマーの物理化学的および物理機械的な特性の転移に重大な影響がある(アブゴウスタキス(Avgoustakis)、2004;イヅツ(Izutsu)およびアオヤギ(Aoyagi)、2005)。結合振動、形態、弾性およびガラス転移温度の変化によって起こる三次元ポリマーネットワークの変更は、塩析および架橋中のポリマー−塩およびポリマー−ポリマーのイオン相互作用によって達成されることができる。
塩析、コロイド現象は、塩濃度に比例した自由エネルギの確率的揺らぎを引起す塩によって、ポリマーの形態、弾性およびガラス転移温度を変化させる能力を有する(ホルバート(Horvath)、1985;タナカ(Tanaka)およびタカハシ(Takahashi)、2000)。チャン(Zhang)ら(1995)は、塩が生体内分解性ポリエステルの放出および膨潤反応速度を変調することもできることを示した。ピレー(Pillay)およびファシヒ(Fassihi)(1999)は、電解質含有物が如何に構成および水和マトリクス内のミクロ環境を変更して、膨潤反応速度および物理的剛性を制御できるかについて報告した。さらに、ヒロシュウ(Hiroshu)(2003)は、イオン双極分子結合によるポリエステルに対するカルシウムおよびマグネシウムなどの二価イオンの錯体形成について説明した。これらのイオン化塩が存在することによって、折畳むことができない拡散チャネルをポリマー構造内に形成できる。マトリクスが水和するにつれて、塩およびポリマーは水和の水を奪い合い、プログラムされた放出速度をもたらす(ピレーおよびファシヒ、2001;スウェンソン(Swenson)、2001)。したがって、塩は、溶媒和しようとして水分子を引き寄せ、それによってポリマーを脱水する。
塩析の主な機構のうちの1つは、塩が引起す水分子の表面張力の増大である(エイゲン(Eigen)およびウィッケ(Wicke)、1964;メランダー(Melander)およびホルバート、1977)。電子ドナー/アクセプタの相互作用は塩析技術の重要な部分である。なぜなら、水溶液中のさまざまな陰イオン種および陽イオン種が、OHポリエステルなどの熱可塑性ポリマーを塩析する効力に従って、ある特定の変化の程度を指図するためである。アラカワ(Arakawa)およびティマシェフ(Timashef)(1982)による熱力学的調査によって、疎水性ポリマーの溶解を減少させる塩は、選択的に近傍から排除され、ポリマーに強く結合されて、コスモトロープ(kosmotrope)と呼ばれるのに対して、ポリマー溶解度を増大させる塩は、ポリマーとの弱い選択的結合を示し、ポリマー表面に落ち着く傾向があることが実証された(ガリンスキー(Galinski)ら、1997;メルバート(Mo
elbert)ら、2004)。
静電気およびLifshitz-Van der Waalsを含む多種多様な力が存在するが、塩析現象の原因である相互作用は、電子ドナー/アクセプタによって規定される水和力によって支配されるように思われる。コスモトロープは、ポリマー相互作用を可能にする分子間および分子内構造を堅くする傾向があり、したがって、ポリマーの弾性、吸収のエネルギおよび変形係数を含むポリマー特性を高める。
ポリマー水溶液中で、塩析は水構造の安定化を引起し、それによって、水分子とポリマー鎖との水素結合を減少させる。これは、ポリマー鎖間の疎水性相互作用を高める代替的なモードである(ボーレン(Bolen)およびバスカコフ(Baskakov)、2001;バレリー(Valery)ら、2004)。これらの鎖は、それらのモノマー間に化学結合を導入することによって(架橋)、およびポリマー鎖と塩との間に化学結合を導入することによって堅くなり、ポリマーの特性をさらに変容させる(ニストロム(Nystrom)ら、1995)。結果として生じる架橋されたポリマーネットワークは、ポリマー結合の加水分解が最小限であって寸法的に安定しており、優れた構造的整合性を示し、ポリマーネットワークを持続的な薬物送達用途に適したものにする。ポリマー強度は架橋の度合によって制御される一方、これらのネットワークの劣化速度は化学組成によって独立して制御されることができる。
さらに、起こり得るポリマー特性の転移に加えて、薬物放出反応速度および機構は、ポリマー材料の物理機械的特性の変化によっても大きく影響を受け得る。一体型ポリマー装置からの薬物放出の機構についてはさまざまな調査が報告してきた。原則的に、一体型装置は、ポリマーマトリクス内に分散した均質な薬物を含む単純な薬物送達システムである。ランガー(Langer)およびペッパス(Peppas)(1981)は、一体型マトリクスからの薬物の放出全体の間に、2つの特有のプロセス、すなわちポリマーの膨潤および「真の」溶解を観察できることを提案した。膨潤可能なシステムの場合、装置は溶解媒体と接触して一旦速やかに膨潤する。したがって、薬物放出は、システムの水和速度によって制御される。初期の急速な薬物放出局面を最小限にするために、利用されるポリマーは、溶解に先立って「保護的な」ゲル層を形成することができなければならない。メラトニンなどの水溶性薬物に、制御された薬物放出反応速度を提供するように一体型システムを設計することは、多くの場合難題である。ピレーおよびファシヒ、2000は、これらの難点が以下の要因のせいであり得ると仮定した。その要因とは、
(i) 薬物放出中にバースト効果を引起す薬物の親水性の増大、
(ii) 薬物の溶解および拡散に関連する、時間依存性のプロセスにわたるポリマーの緩和または解きほぐしの正確な管理の欠如、および
(iii) 時間にともなう拡散経路長の増大を制御する複雑さが容易に達成可能でないこと、である(ピレーおよびファシヒ)。
しかしながら、このシステムの固有の無効性は、塩を用いてシステムの内部形状を変調することによって操作できる。塩は、水溶性薬物の放出を遅らせる現象である「周辺マトリクス硬化」として顕在化する示差膨潤境界およびテクスチャ可変マトリクスを実証することによって、溶解および薬物放出を制御することに非常に成功した。したがって、ここでは、我々は、一体型薬物送達マトリクスからのメラトニンの放出を制御する能力の機構的理解を深めるために統計学的アプローチを用いて、塩析されたポリ乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)、α−OHポリエステル内で起こる物理化学的および物理機械的な転移を評価した。これらの塩析された錯体は、「PLGA足場材(scaffold)」と名付けられた。
発明の目的
この発明の目的は、薬学的活性成分を運ぶポリマーの塩析および架橋によって薬物送達を変調するための手段を提供し、一体型薬物送達剤形を提供することである。
発明の概要
この発明に従って、塩析または架橋されたポリマーと、それとともに配置された薬学的活性剤とを含む一体型薬物送達剤形であって、上記塩析または架橋されたポリマーは、上記薬学的活性剤を重合によって封入するが、使用時に水媒体と接触して漸進的に緩和して、予め定められた速度で上記薬学的活性剤を放出するように機能する、一体型薬物送達剤形を提供する。
塩析または架橋されたポリマー材料が、使用時に、水媒体に晒されたときの上記ポリマーのポリマー緩和の速度に応じて、長期間にわたって薬学的活性剤の放出を制御できるポリ乳酸グリコール酸共重合体であることも提供する。
塩析または架橋反応が、上記薬学的活性剤と組合さって、代替的には上記ポリマー材料自体に起こって、上記薬学的活性剤のポリマー封入をもたらす反応の確率的揺らぎを引起すことも提供する。
ポリマー緩和反応が、上記剤形の外側境界から内側境界に向かって時間依存性の態様で起こり、したがって、水媒体の内側への侵入が、上記剤形または錠剤の上記外側境界から内核に向かう方向にポリマー鎖の漸進的な緩和を引起すときに、封入された薬学的活性剤の外方拡散を制御された態様で制限することをさらに提供する。
好ましくはホフマイスターシリーズの塩からの、上記ポリマーおよび架橋試薬、好ましくは無機塩、さらに好ましくは無機イオン性塩の塩析および架橋反応も提供し、上記ホフマイスターシリーズの塩の例は、塩化ナトリウム、塩化アルミニウムおよび塩化カルシウムである。
上記ポリマーが、ポリエステル、好ましくはポリ乳酸および/またはその共重合体、さらに好ましくはポリ乳酸グリコール酸共重合体であることをさらに提供する。
この発明は、塩析または架橋されたポリマーと、それとともに配置された薬学的活性剤とを含む一体型薬物送達剤形を生成する方法であって、上記薬学的活性剤を重合によって封入するが、使用時に水媒体と接触して漸進的に緩和して、予め定められた速度で上記薬学的活性剤を放出するようにポリマーを塩析または架橋するステップを備える、方法に及ぶ。
塩析または架橋されたポリマー材料が、使用時に、水媒体に晒されたときの上記ポリマーのポリマー緩和の速度に応じて、長期間にわたって薬学的活性剤の放出を制御できるポリ乳酸グリコール酸共重合体であることも提供する。
塩析または架橋反応が、上記薬学的活性剤と組合さって、代替的には上記ポリマー材料自体に起こって、上記薬学的活性剤のポリマー封入をもたらす反応の確率的揺らぎを引起すことも提供する。
好ましくはホフマイスターシリーズの塩からの、上記ポリマーおよび架橋試薬、好ましくは無機塩、さらに好ましくは無機イオン性塩の塩析および架橋反応も提供し、上記ホフ
マイスターシリーズの塩の例は、塩化ナトリウム、塩化アルミニウムおよび塩化カルシウムである。
上記ポリマーが、ポリエステル、好ましくはポリ乳酸および/またはその共重合体、さらに好ましくはポリ乳酸グリコール酸共重合体であることもさらに提供する。
添付の図面を参照して、この発明に係る一体型薬物送達剤形の一実施の形態について以下で説明する。
(a)吸収エネルギ、(b)変形係数、および(c)マトリクス弾性を求めるためのPLGA足場材の典型的な力−距離および力−時間プロファイルを示す(N=10)。 NaClで塩析されたPLGA[(a)および(b)]、CaCl2で塩析されたPLGA[(c)および(d)]、およびAlCl3で塩析されたPLGA[(e)および(f)]の表面形態を示すPLGA足場材の一連の選択された走査型電子顕微鏡写真である。 PLGA足場材の物理機械的特性の差を示すプロファイルである。プロット(a)は弾性(R)であり、プロット(b)は吸収エネルギ(E)であり、プロット(c)は変形係数(DM)である。 塩析されたPLGA足場材の物理機械的特性、すなわち(a)弾性(R)(%)、(b)吸収エネルギ(E)(J)、および(c)変形係数(DM)(N/mm)に対する独立製剤変数の影響を示す典型的な表面応答プロットである。AC=AlCl3、CC=CaCl2、SC=NaClであり、−1=0w/v%、0=5w/v%、1=10w/v%である。 パラメータの組合せの存在下での、弾性についての、NaCl(a)および(d);CaCl2(b)および(e);AlCl3(c)および(f)の主なならびに相互作用の影響を解釈するために用いられた一連の典型的なプロファイルを提示する。 実験応答値と当てはめ応答値との相関を示すプロファイルを示す。R=弾性、E=吸収エネルギ、DM=変形係数である。 未処理PLGAから塩析されたPLGA足場材への転移を示す、重ね合わせた5つのFTIRプロファイルである。(a)=未処理PLGA、(b)=NaClで塩析されたPLGA、(c)=CaCl2で塩析されたPLGA、(d)=AlCl3で塩析されたPLGA、および(e)=NaCl+CaCl2+AlCl3の組合せで塩析されたPLGAである。 (a)未処理PLGA、(b)NaClで塩析されたPLGA、(c)CaCl2で塩析されたPLGA、(d)AlCl3で塩析されたPLGA、および(e)NaCl、CaCl2およびAlCl3の組合せで塩析されたPLGA、の熱転移を示す未処理PLGAおよび塩析されたPLGA足場材の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルを示す。 PLGA足場材の形成中に薬物が(a)(b)架橋されなかった場合、または(c)架橋された場合、のポリマーからのメラトニンの放出プロファイルを示す。
発明の実施の形態の詳細な説明
1.材料および方法
1.1 材料
PLGAは、ベーリンガー・インゲルハイム・ファーマ社(Boehringer Ingelheim Pharma)(インゲルハイム、ドイツ)から得られた(レゾマー(Resomer(登録商標))RG504 50:50;MW48,000;i.v.0.48〜0.60dl/g)。アセ
トンが溶媒として用いられ、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)(ロシェル・ケミカルズ社(Rochelle Chemicals)、南アフリカ)、および塩化アルミニウム(AlCl3)(メルク社(Merck)、ダルムシュタット、ドイツ)がイオン性塩として用いられた。オルトリン酸一水素二ナトリウム(Na2HPO4)およびリン酸二水素カリウム(KH2PO4)は、南アフリカのザールケミ株式会社(Saarchem (Pty) Ltd.)から得られた。モデル薬物であるメラトニンは、ドイツのシグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Co.)から得られた。
1.2 実験デザインの構築
製剤最適化に必要な実験の数をモデリングし、ミニタブ(Minitab)V14(ミニタブ社(Minitab)、アメリカ合衆国)を用いて、PLGA足場材の物理化学的および物理機械的な特性に対する独立製剤変数の主なおよび相互作用の影響を立証するために、3要因3レベルBox-Behnken統計学的デザインが構築された。
1.3 PLGA足場材の調製
表1に概説されたBox-Behnkenデザインテンプレートに従って、アセトンおよびイオン性塩の組合せを用いて塩析およびその後の架橋によってPLGA足場材を調製した。15mLのアセトンに溶解した0.4gのPLGAを含む14個のポリマー溶液を調製した。75mLの0w/v%、5w/v%または10w/v%のNaCl、CaCl2またはAlCl3を含む架橋溶液をポリマー溶液に添加し、30分間攪拌した。結果として生じるPLGA足場材を、500mLの脱イオン水で三度洗浄して室温で一定の質量に乾燥させた架橋溶液から除去した。物理化学的および物理機械的評価に先立って、各PLGA足場材を最大48時間保管した。
応答についての二次モデルを式1に示す。
ここで、応答は各要因レベルに関連付けられ、b0…b9は回帰係数であり、[NaCl]、[CaCl2]および[AlCl3]は独立製剤変数である。
1.4 PLGA足場材の形態学的特徴
熱放射JEOL JSM−(日本電子光学研究所、東京、日本)電子顕微鏡写真を利用して、走査型電子顕微鏡(Scanning Electronic Microscopic)(SEM)画像からPLGA足場材の表面形態を査定した。炭素の層を用いたスパッタコーティングに先立って、PLGA足場材の試料を区画して、アルミニウムスタブに搭載した。20kVの加速電圧で、さまざまな倍率で、各試料を見た。
1.5 PLGA足場材の物理機械的特性の判断
テクスチャ・アナライザ(Texture Analyzer)(TA.XTplus テクスチャ・アナライザ、ステーブル・マイクロシステムズ社(Stable Microsystems)、英国)を用いて、PLGA足場材の物理機械的特性を評価した。テクスチャ指数ソフトウェア(Texture Exponent software)V3.2を利用して、毎秒200ポイントの速度で、精度および再現性が高い応力−歪みプロファイルを取込み、その後分析した。先端が平坦な3.5cmの円形鋼製プローブを力変換器に取付けた。吸収エネルギ、変形係数およびマトリクス弾性を得るために利用されたパラメータ設定を表2に示す。
吸収エネルギ、マトリクス弾性および変形係数を解明するために、PLGA足場材毎の力−距離および力−時間プロファイルを生成した。物理機械的特性を量化するために用いられた典型的なテクスチャプロファイルを図1に示す。
図1(a)は、吸収エネルギ、すなわち、アンカー1とアンカー2との間の曲線(AUC)[Nm=ジュール]の下の総面積を計算するために力−距離プロファイルで用いられたアンカーを示す。図1(b)は、変形係数(応力を加えるとPLGA足場材が形を変化させる傾向)、すなわち、アンカー1と試料分析中に達成された最大力との間の傾きを求めるために利用されたアンカーを示す。図1(c)は、マトリクス弾性、すなわち、力−
時間プロファイルについてのアンカー2とアンカー3との間のAUCおよびアンカー1とアンカー2との間のAUCの割合(AUC32/AUC12)を計算するために利用されたアンカーを示す。
1.6 PLGA足場材内での分子構造変容の解明
未処理PLGAおよびPLGA足場材に対してフーリエ変換赤外線(Fourier Transform Infra-Red)(FTIR)分光法を行なって、ニコレット・インパクト(Nicolet Impact)400D(ニコレット・インスツルメント・コーポレイション(Nicolet Instrument Corporation)、ペンシルバニア、アメリカ合衆国)器具を用いて、塩析およびその後の架橋に起因してポリマー主鎖内でおそらく起こる化学的変容を求めた。臭化カリウム(KBr)ディスクアプローチを利用し、それによって、7.5mgの各PLGA足場材の試料を200mgのKBrで粉砕し、ベックマン液圧プレス(Beckman Hydraulic Press)(WIKAインスツルメンツ株式会社(WIKA Instruments (Pty) Ltd)、ヨハネスブルグ、南アフリカ)を用いて透明な円形ディスクの中で圧縮した。すべての試料について背景走査が得られ、中間の分解能で4000〜400cm-1の間で%透過率を記録した。
1.7 PLGA足場材の熱転移分析
比熱容量および潜熱の転移を記録するために示差走査熱量測定法(Differential Scanning Calorimetry)(DSC)が用いられ、これは、未処理PLGAを架橋することによる足場材形成の結果としての非晶質構造または結晶構造の変化を示した。熱転移は、コントローラモデルTAC1/DX(パーキン−エルマー社(Perkin-Elmer, Inc.)、アメリカ合衆国)に接続されたパーキン−エルマー Pyris-1に記録された。10℃/分の速度で25℃から400℃に徐々に試料を加熱した。5〜10mgの各PLGA足場材の試料は、圧着されたアルミニウム皿内に置かれ、熱勾配を受けた。サーモグラムが得られ、その後サーモグラムを分析した。
1.8 塩析されたPLGA一体型マトリクスの調製
薬物を含まないPLGA試料または薬物を装填したPLGA試料の製剤を、Box-Behnken統計学的デザインに従ってさまざまな濃度で塩析した。薬物を含まないPLGAのために、300mgの塩析されたPLGAおよび10mgのメラトニンを含む混合物を直接圧縮することによってマトリクスを調製し、ベックマン液圧プレス(ベックマン・インスツルメンツ社(Beckman Instruments, Inc.)、フラートン、アメリカ合衆国)を用いて、薬物を装填した350mgの各バリアントを圧縮した。
1.9 PLGA足場材の薬物封入効率(drug entrapment efficiency)(DEE)
各足場材を100mLのアセトンに浸して足場材の完全な溶解を行なうことによって、DEE調査を行なった。その後、278nmの紫外分光法を用いて、3回同じ方法でメラトニン含有量を確立した。
1.10 一体型マトリクスからのインビトロでの薬物放出
50rpmの改善されたUSP25装置を用いて、500mLのリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline)(PBS)(pH7.4;37℃)中で薬物放出調査を行なった。メラトニン検査は、紫外分光法(278nm)(SPECORD40、イェーナ、ドイツ)で行なわれた。溶解データは、時点アプローチとして知られているモデル独立分析を受けた。簡単にいうと、製剤毎に30日に設定された平均溶解時間(MDT30)を計算した。平均溶解時間を適用することによって、薬物放出性能の分析がより精密になり、いくつかの溶解データセットの比較がより正確になった。この点に関して、式2を利用した。
2.結果および考察
2.1 未処理PLGAポリマー鎖と架橋イオンとの提案される相互作用
Na+、Ca2+およびAl3+の溶媒和されたイオン対は、イオン反応を容易にする電子ノードに発展する。これらの溶媒和されたイオン対は、ポリマーマトリクス内のCl-およびO2-の隣接する陽イオンを引寄せることができ、したがって、PLGA分子構造内のラクチドおよびグリコリド鎖の架橋に寄与する。この架橋反応は、塩析イオンのイオン化エネルギ、溶液における水和エンタルピー、およびモノマーPLGA単位の熱力学的安定性に主に依存する。さらに、各塩の配位数、すなわちそれぞれAl3+、Na+およびCa2+の8、6および4、ならびにイオンの原子サイズ(表3)も、架橋中に隣接する陽イオンを引寄せることに影響を及ぼし、最も高い配位数および原子サイズを有するイオンおよび/または塩が架橋反応に最も影響を及ぼし、その後、未処理PLGAポリマー構造を変性して堅固なPLGA足場材を生成する中心的要因をもたらす。
この調査で用いられた塩、すなわちNaCl、CaCl2およびAlCl3は、結果として生じるPLGA足場材の物理化学的、物理機械的および形態学的な構造に関して異なっている。さらに、PLGA構造内の形状および立体配向は異なっており、したがって、水分子がマトリクス内に吸収される能力は、ポリマー−塩の相互作用の速度、反応性、関係するイオンの原子サイズおよび配位数、イオンの結晶格子パッキングの性質、ならびに塩析およびその後の架橋中に存在するポリマー基板に依存する。
2.2 PLGA足場材形態の走査型電子顕微鏡画像分析
PLGA足場材形成中の架橋の結果、さまざまな繊維体積および直径、相互接続および細孔の大きさを備える三次元構造が、ポリマー−塩相互作用から得られた。塩の存在は、固体−液体界面に高いエントロピーのエリアを発生させ、独特な形態を有する変化した繊維質構造をもたらした(図2)。塩とPLGA分子とのイオン相互作用は、架橋イオンのイオン化エネルギ、溶液における水和エンタルピー、ならびに未処理PLGAのラクチド−グリコリドストランドにおける塩および水の熱力学的安定性および分子蓄積に依存していた。結果として、各PLGA足場材のいくつかの形態的配座が得られた(図2)。さらに、各塩の配位数は、形成された共有結合の数に影響を及ぼした。したがって、水分子が塊になって詰められたPLGA分子(酸素残基)にある水素結合、ならびに他の分子内お
よび分子間の力が、新しく形成されたPLGA足場材の細孔および繊維の性質ならびに大きさを決定した。
NaClで塩析されたPLGA足場材のSEM画像によって、相互接続された細孔が均一に分布しており、相互接続された細孔は、神経網原型において架橋された繊維の均質性を維持する微孔性構造の支柱によって分割されていることが明らかになった(図2aおよび図2b)。これらの繊維は、0.1〜1.4μmの間の範囲の細孔および繊維の直径を有し、0.01〜0.03μm3の範囲の繊維体積を有していた。図2cおよび図2dにおいて、二価塩CaCl2は、細孔の大きさおよび直径の尺度が7.5〜15μmの間の範囲でありかつ繊維体積が800〜14000μm3である独特な多量の小柱構造の相互接続チャネルを有する小繊維合成PLGA足場材を生成した。図2eおよび図2fにおいて、三価塩、すなわちAlCl3で塩析されたPLGA足場材は、細孔の大きさおよび直径が0.03〜0.10μmでありかつ繊維体積が0.09〜0.17μm3の間の範囲であるPLGA足場材構成の分岐した相互接続をもたらす独特な架橋を有する優れた繊維質形態を明らかにした。
一般的に、ポリマー溶液に塩析イオンを導入することによって、未処理PLGAポリマー構造が、架橋されたラクチド−グリコリド鎖への固定された三次元構成を呈することが容易になる。さらに、このような構成によって生じる隣接する空隙は、未処理PLGA鎖間の相互作用が短距離であったり長距離であったりするために作り出される空隙の寸法に従って水分子を収容することができた。これらの空隙は、塩析およびその後の架橋反応の速度に依存する水分子を結合するための空間を大いに提供した。PLGA足場材の小繊維性質の増大は、マトリクス弾性などの物理機械的特性を増大させた。PLGA足場材の各顕微鏡写真に現われた形態の明確な差は、足場材の汎用性を示唆しており、したがって、特定の用途に合う適合された製造に好適であり得る。
2.3 PLGA足場材の物理機械的特性を量化するためのテクスチャプロファイル分析
テクスチャプロファイルの分析は、PLGA足場材のための応力−歪み関係に関する見識を提供した。結果によると、利用される塩のタイプおよび濃度に主に依存する弾力性を達成するために急速なイオン塩析およびその後の架橋によって、未処理PLGAを非常に弾性のあるポリマー材料に変性できることが実証された。NaClおよびAlCl3で塩析されたPLGA足場材のマトリクス弾性値は、CaCl2で塩析されたPLGA足場材のマトリクス弾性値よりも優れていた(図3)。
塩析中に利用された塩の物理化学的性質は、PLGA足場材の粘弾性挙動を強めるミクロ環境を作り出した。粘弾性はPLGA足場材の高密度化をもたらし、その結果、足場材がテクスチャ分析中に応力下で変形することに対する耐性をもたらした。図4aおよび図4bは、たとえば製剤2、12および14において、NaClおよびAlCl3の濃度が増大すると、弾性および吸収エネルギが大幅に増大することを明らかにした。CaCl2の濃度は、製剤6、9および13において実証されるように、吸収エネルギに反比例することがわかった。弾性および変形係数の増加は、図4bおよび図4cに示される単位体積当たりPLGA足場材が吸収するエネルギの量に線形に相関していた。
これらのプロファイルが明らかにした物理機械的特性の変性は、図2に示されるPLGA足場材の高密度の表面形態と一致している。一般的に、NaClおよびAlCl3などの、細孔がより小さくかつより均一であるより緻密なポリマー構造を生成する塩は、PLGA足場材の物理機械的特性を強めるのに対して、より大きな細孔を発生させる塩は、弾性を減少させた。
さらに、結果として生じるさらなる水分子の蓄積はマトリクスに対してより多くの双極分子を与え、この双極分子は、PLGA主鎖内の活性にそれほど応答しなかった。フェリー(Ferry)(1980)は、双極分子および界面張力の寄与因子である水分子の存在がマトリクス弾性を減少させることを報告した。極性を持つ双極分子がPLGA主鎖に近接していること、および双極分子がPLGA鎖の構成活性によって影響を受ける程度は、PLGA足場材の合計弾性、吸収エネルギおよび変形係数に直接影響を及ぼした。
2.4 従属変数間の相互作用を示す応答表面プロット
足場材形成による未処理PLGAの物理機械的特性の変性に対する塩の個々のおよび相乗的な効果を視覚的に実証するために表面プロット(図4)を構築した。図4aは、濃度がより低ければ(0〜5w/v%の間)、NaClは15%の限界までPLGA足場材の弾性を大幅に増大させ、15%の限界において、(5w/v%を上回って)NaClがさらに増加すると、いずれも弾性を減少させることを明らかにした。AlCl3の濃度が低ければ(0〜5w/v%の間)、10%の弾性が維持され、5w/v%を超えてAlCl3がさらに増加すると、弾性が線形に増大した。
図4bは、CaCl2の濃度が5w/v%を上回ると、吸収エネルギを低下させ、10w/v%のCaCl2は、PLGA足場材がエネルギを吸収する能力を大幅に減らすことを示した。さらに、図4cは、CaCl2の濃度がPLGA足場材の変形係数に及ぼす影響が小さいのに対して、AlCl3の濃度の増大がPLGA足場材の変形係数を大きく増大させたことを示す。以下の三次元表面プロットは、独立製剤変数の変化によって生じる応答(物理機械的特性)の各々を示す。
2.5 さまざまな応答に対する主なおよび相互作用の影響の判断
塩のタイプおよび濃度の主なおよび相互作用の影響、ならびにPLGAの物理機械的特性に対するそれらの影響を図5に示す。弾性、吸収エネルギおよび変形係数モデル項の重要な変数を視覚的に確認させるために、主なおよび相互作用の影響のプロットが行なわれた。応答に対する影響は、主な効果(すなわち、塩)、ならびにポリマー基板、溶媒、水の体積、および最後の変数の相互作用までの塩析反応時間などの他の相互作用に帰することがわかった。相互作用の度合は、要因の数とともに指数関数的に上昇することが観察された。中心点からの逸脱は、試験される範囲にわたる応答の変化を示していた。視覚的に、プロットの平均値のずれは、影響の最小二乗推定値である。図5a、図5c、図5dおよび図5fにおけるようなより高い傾きによって示される大きなずれは重要な変数を意味する一方で、より低い傾きによって示される小さなずれは、与えられたプロットの中で取るに足らない変数を意味していた。図5bおよび図5eにおけるような平行なプロットは、独立製剤変数の相互作用が最小限であるかまたは相互作用がないことを暗に意味していた。
図5に示されるように、塩のタイプおよび濃度は、PLGA変性の性質および程度の点で極めて重要な役割を果たしていた。図5cにおいて、一価塩であるNaClは弾性に最も大きな影響を及ぼし、最適な弾性は5w/v%で経験した。二価塩CaCl2は、濃度の変化にかかわらず、弾性に対する影響は小さかった。三価塩AlCl3の濃度が5w/v%から増大するにつれて弾性が増大することも観察された。類似の相関は図3および図4からわかるであろう。これらの観察された弾性の転移は、マトリクス水和シースに存在する水分子構造の変化、およびさまざまな塩が存在することに起因するPLGAと溶媒との相互作用の調整などのいくつかの影響の組合せからの寄与として説明できる。
2.6 二次モデルを利用する実験的応答と当てはめ応答との相関
図6は、従属製剤変数、すなわち弾性、吸収エネルギおよび変形係数についての当てはめ値と実験値との近い相関を示す。当てはめ値と実験値との間に大きな差は見られなかっ
た(p>0.05)。したがって、これは、Box-Behnkenデザインが、未処理PLGAの、塩析されたPLGA足場材への変性に対するさまざまな塩の影響を評価するための好適な統計学的アプローチを提供することを示した。
2.7 ポリマー−塩相互作用およびポリマー構造転移の査定
図7に示されるFTIRプロファイルで観察されるように、塩との相互作用にかかわるPLGAの官能基は類似していた。しかしながら、指紋領域におけるこれらの結合振動の度合および程度は異なっていた。これは、溶液中のポリマー−塩相互作用が、塩の分子構造、ならびにPLGA足場材が実証する多様な形態学的、物理化学的および物理機械的な転移をもたらすPLGAの化学的主鎖によって、明らかに影響を受けることを暗に意味していた。
塩析およびその後の架橋中に、塩は水中でイオン化し、δ、Π、σ、C−OおよびH基と反応して、PLGA鎖間に水素、エーテル結合および塩−酸素結合を形成した。これは、PLGA分子構造内のラクチド−グリコリド単位の架橋をもたらした。水素、エーテルおよびイオン−酸素結合は、PLGAの遊離したぶら下がったカルボニル基の間の塩によって、共鳴安定化した結合に形成された。これは、1180〜1300cm-1(COC)、3200〜3700cm-1(OH伸縮)、1600〜1900cm-1(CO)の周波数範囲の顕著な振動増加、および1530〜2500cm-1の範囲のC=O基(曲げ)振動強度の同期的減少によって実証された。PLGAに存在する脂肪族エステル結合の透過率の強度も減少した。さらに、不均一な長さのポリマー鎖によって形成される架橋は、さらなる振動強度をもたらす三次元高密度ネットワークをもたらした(図7)。
2.8 PLGA足場材内の熱転移
図8は、さまざまなポリマー−塩相互作用に起因するエンタルピー変化を示す。PLGAの塩析中、PLGA足場材のエンタルピーは、電子エネルギの増加に帰する立体歪みの増大によって高められた。さらに、エンタルピー変化は、また、システムの結合エネルギおよび共鳴安定化を増大させる結合形成の結果起こり、それによって、PLGA足場材の内部エネルギおよびエンタルピーを増大させる。さらに、結合伸縮、結合角度変形およびポリマー−塩相互作用が引起す立体歪みは、システムの内部エネルギおよびエンタルピーを増大させた。分子が架橋反応を開始するのに十分な移動度を得ると、基本的にガラス転移点を表わす40〜47℃の温度範囲で発熱変化が起こった。
表4は、DSCプロファイルの分析から得られた重要なパラメータを列挙している。図8a〜図8eにおいて、加熱サイクルでのガラス状態からゴム状態へのステップ転移は、それぞれ47.24℃、41.79℃、40.19℃、43.35℃および42.82℃で急激なピークが生じることが明らかに観察された。PLGA足場材の融点範囲は140〜160℃であり、これは、280〜300℃の融点範囲を有する未処理PLGAから大幅に減少していた。ポリマー−塩複合体の再結晶化およびさらなる分解が、410〜430℃の間で起こった。
利用される塩のタイプに応じて、水がポリマーマトリクス内に閉じ込められる可能性があり、したがって、Tgを低下させる可能性がある。イオンの大きさ(Al3+<Na+<Ca2+)は、Tgの低下の度合を決定した。ケリー(Kelly)および同僚(1987)は、ポリマーマトリクス内の水分含有量が10%増大または減少するとTgの大幅な変化が観察されることを報告した。したがって、PLGA鎖の動的活性は、マトリクス内の水分子の領域によって制限され得る。Ca2+のイオン半径が大きいことは、水分子が利用する足場材内の空隙の数が増加することに繋がった。逆に、Na+およびAl3+イオンは、空隙の数を減少させた。したがって、CaCl2で塩析されたPLGA足場材は、40.19℃のより低いTgを有していた。ポーレイティス(Paulaitis)および同僚(2004)による調査によって、溶質の大きさおよび形状へのポリマー水和自由エネルギの依存性に関して検証が行なわれた。さらに、ベルナザーニ(Bernazzani)および同僚(2003)が行なった研究によって、希薄溶液からのポリマーの沈殿がTgを低下させ、これは、マトリクスの結晶性を奪う、架橋によって引起されるより短い鎖端部および自由鎖端部のせいであるかもしれないということが実証された。これも、この調査の成果と一致していた。
2.9 一体型マトリクスからのインビトロでの薬物放出の特徴
理論的には、両方のPLGA一体型マトリクスからの主要な薬物放出機構は、フィッキアン(Fickian)放出機構によるマトリクス層を通る拡散であるべきである。しかしながら、マトリクスの膨潤および浸食も重要な役割を果たした。メラトニンが水溶性であり、PLGAが疎水性ポリマーであるので、薬物放出の速度は、溶解媒体前部がマトリクスの中心に近づくときに薬物放出の拡散経路長が時間が経つにつれて増大するにつれて、時間の関数として減少した。
3.結論
未処理PLGAの物理化学的および物理機械的な特性を変性して、より制御された薬物放出反応速度を達成するためにこの調査で適用された塩析およびその後の架橋アプローチは、大きな可能性を示した。結果として生じる架橋されたPLGA足場材は、優れた構造的整合性を示し、この構造的整合性は、弾性、吸収エネルギおよび変形係数などのパラメータによって決定され、これらのパラメータは、制御された薬物送達の有利な候補にする、PLGA足場材の全体的な堅固さおよび空孔率のレベルに寄与する。実験応答値と当てはめ応答値との近い相関は、実験的最適化のための選択された統計学的デザインの信頼性を実証した。この調査で利用された一価、二価および三価イオン性塩は、未処理PLGAの構造を、優れた物理機械的特性を有する変性されたPLGA足場材に変容させることに好適であることが証明された。これらの優れた特性は、テクスチャプロファイル分析、SEM、DSCおよびFTIR調査によって確認された。一般的に、新しく形成された加水分解で分解可能なPLGA架橋と組合せて、FTIR調査から振動強度転移によって実証されたPLGA主鎖中の結合形成の度合は、速度が変調された薬物送達においてPLGA足場材を適用できることを提示している。この調査は、架橋中の薬物とPLGAとの間に形成された強い結合の結果、PLGAの塩析およびその後の架橋が薬物放出の速度を大いに制御でき、最終的にはゼロ次放出反応速度に繋がることも実証した。
4.参考文献
[参考文献]

Claims (9)

  1. 塩析および架橋されたポリ乳酸グリコール酸共重合体と、それとともに配置された薬学的活性剤とを含む一体型薬物送達剤形であって、
    前記ポリ乳酸グリコール酸共重合体は、塩化ナトリウム、塩化アルミニウムおよび塩化カルシウムからなる群から選択される架橋剤によって塩析および架橋されており、
    前記薬学的活性剤が前記ポリ乳酸グリコール酸共重合体で封入されている、一体型薬物送達剤形。
  2. 前記薬学的活性剤は水溶性である、請求項1に記載の一体型薬物送達剤形。
  3. 前記ポリ乳酸グリコール酸共重合体が錠剤を形成するように圧縮されている、請求項1または2に記載の一体型薬物送達剤形。
  4. 水性媒体に接触した前記錠剤からの前記薬学的活性剤のゼロ次放出を達成でき、該ゼロ次放出が最大30日間持続する、請求項3に記載の一体型薬物送達剤形。
  5. 前記薬学的活性剤はメラトニンである、請求項1〜4のいずれかに記載の一体型薬物送達剤形。
  6. 塩化ナトリウム、塩化アルミニウムおよび塩化カルシウムからなる群から選択される架橋剤によってポリ乳酸グリコール酸共重合体を塩析および架橋する工程を有する、薬学的活性剤を含む一体型薬物送達剤形の製造方法
  7. 前記薬学的活性剤は水溶性である、請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記薬学的活性剤はメラトニンである、請求項6または7に記載の製造方法。
  9. 前記ポリ乳酸グリコール酸共重合体を架橋する工程の前に、前記架橋剤が水に溶解されて架橋溶液が調製される、請求項6〜8のいずれかに記載の製造方法。
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