JP5168425B1 - フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面性状に優れ、溶接部の耐食性および酸洗性に優れたフェライト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.010%以下、Si:0.15〜0.60%、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Al:0.2%以下、Cr:17.0〜19.0%、Cu:0.3〜0.5%、Ni:0.6%以下、Ti:0.10〜0.20%、N:0.015%以下、C+N:0.02%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記式(1)を満たすことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
Ti%/(C%+N%)≧8 (1)
ここで、C%、N%、Ti%は、それぞれC、N、Tiの含有量(質量%)を表す。
【選択図】なし

Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼に関し、表面性状に優れ、且つ、溶接部の耐食性および酸洗性に優れたフェライト系ステンレス鋼に関するものである。
ステンレス鋼の中では、その優れた耐食性によりオーステナイト系ステンレス鋼のSUS304(18%Cr−8%Ni)(日本工業規格、JIS G 4305)が広く使われている。しかし、この鋼種は、Niを多量に含むため高価である。
これに対して、特許文献1には、成分組成として、C:0.03%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Al:0.1%以下、Cr:20.5%以上、22.5%以下、Cu:0.3%以上、0.8%以下、Ni:1.0%以下、Ti:4×(C%+N%)以上、0.35%以下、Nb:0.01%以下、N:0.03%以下、C+N:0.05%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。
このステンレス鋼板はその優れた耐食性とNiを使用しないことによる経済性から、建築部材、産業機械、厨房類に広く使用されている。
特許第4396676号公報
しかし、特許文献1に開示されるフェライト系ステンレス鋼板が産業機械等に用いられる場合には、同一鋼種同士だけでなく、異鋼種、特にSUS304と溶接されて使用されることが多い。その場合も良好な耐食性を保つことが求められる。本鋼種は同一鋼種での溶接部は良好な耐食性を持つが、SUS304とTIG溶接された場合、溶接部の耐食性が母材より低下する場合が起こるという問題がある。
溶接部の耐食性は、溶接時の熱履歴で鋼中のC、NがCrと結合して、クロム炭窒化物として粒界に析出することにより、粒界にクロム欠乏層が生じることにより起こる(鋭敏化)。これを防ぐために、鋼中のC、Nを低減するとともに、適量のTiを添加して、C、Nをチタン炭窒化物として固定化して、クロム炭窒化物の生成を防止する方法が取られている。この方法により、特許文献1に開示されるフェライト系ステンレス鋼板同士でのTIG溶接部は良好な耐食性を維持している。
しかし、上記鋼板のC含有量が0.01%程度であるのに対して、SUS304はC含有量が0.04〜0.05%と高いために、上記鋼板とSUS304との接合部で、鋭敏化を防止するためには、Ti添加量を0.4〜1.0%程度までに高めなければならない。
しかし、このようにTiを添加すると鋼が脆くなったり、Tiが窒素と結合してTiNとなりこれが集合して、いわゆるチタンストリンガーの大量発生により表面性状が著しく損なわれてしまう。
このように、従来技術ではSUS304との異鋼種TIG溶接部の耐食性と表面性状の両立は困難であった。また、溶接を行うと表面に酸化皮膜が生成して(溶接焼けとも呼ばれる)美観が損なわれるので、酸洗で該酸化皮膜を除去する必要がある。しかし、特許文献1に開示されたフェライト系ステンレス鋼は、その溶接部の酸化皮膜は酸洗で除去されにくいという問題があった。
本発明は、かかる事情に鑑み、表面性状に優れ、且つ、同一鋼種同士だけでなく異鋼種、特にSUS304と溶接されて使用される場合も、溶接部の耐食性および酸洗性に優れたフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
発明者等は、適量のSiを添加すると、チタン炭窒化物の析出が凝固の初期段階で促進されて、析出物の寸法が小さくなり、チタンストリンガーの問題を解消できること、溶接時に酸化皮膜の生成が抑制されて、溶接後の酸洗で酸化皮膜が除去されやすくなることを見出した。さらに、Cr添加量を適正化することにより、SUS304とのTIG溶接部に、マルテンサイト相を析出させることにより、鋭敏化を防止できることを見出した。
これにより、良好な耐食性を持ち、表面研削を行うことなく熱延焼鈍酸洗板から良好な表面品質の冷延焼鈍酸洗板を製作でき、さらにSUS304とのTIG溶接部の耐食性および酸洗性も良好なフェライト系ステンレス鋼が得られることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、C:0.010%以下、Si:0.15〜0.60%、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Al:0.2%以下、Cr:17.0〜19.0%、Cu:0.3〜0.5%、Ni:0.6%以下、Ti:0.10〜0.20%、N:0.015%以下、C+N:0.02%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記式(1)を満たすことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
Ti%/(C%+N%)≧8 (1)
ここで、C%、N%、Ti%は、それぞれC、N、Tiの含有量(質量%)を表す。
[2]前記成分組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0020%、B:0.0003〜0.0020%の中から選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする上記[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[3]前記成分組成に加えてさらに、下記式(2)を満たすことを特徴とする上記[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
Si%/Ti%≧1.3 (2)
ここで、Si%、Ti%は、それぞれSi、Tiの含有量(質量%)を表す。
[4]前記成分組成に加えてさらに、下記式(3)を満たすことを特徴とする上記[1]乃至[3]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
Si%/Cr%≧0.013 (3)
ここで、Si%、Cr%は、それぞれSi、Crの含有量(質量%)を表す。
本発明によれば、同一鋼種同士だけでなく異鋼種、特にSUS304と溶接されて使用される場合も良好な溶接部の耐食性を有するフェライト系ステンレス鋼が得られる。また、本発明のステンレス鋼板は、適量のSiを添加することによりチタンストリンガーの発生を防止できるので、チタンストリンガーの発生を防止するための熱延板での表面研削が不要となり、安価に製造することができる。さらに、溶接部に生成した酸化皮膜を酸洗で容易に除去して良好な外観が得られる。
以下に本発明の各構成要件の限定理由について説明する。
[成分組成]
はじめに、本発明の鋼の成分組成を規定した理由を説明する。なお、成分%は、すべて質量%を意味する。
C:0.010%以下、N:0.015%以下、C+N:0.02%以下
CおよびNは溶接部の耐食性を低下させるので少ないほうが望ましく、C:0.010%以下、N:0.015%以下、C+N:0.02%以下とする。
Si:0.15〜0.60%
Siは、チタン炭窒化物の析出を制御し、表面性状を向上させるのに必要な元素である。しかし、0.15%未満ではその効果は得られず、多量に添加すると加工性と冷延板焼鈍時の酸洗性を低下させるので、Si量は0.15〜0.60%の範囲とする。好ましくは0.20〜0.50%の範囲である。さらに好ましくは0.20〜0.40%の範囲である。
Mn:0.5%以下
Mnは、脱酸作用があるが、鋼中で硫化物を形成し、著しく耐食性を低下させるため添加量は低い方が望ましく、製造時の経済性を考慮して0.5%以下とする。ただし、Mn量が少なすぎると介在物が増えるので、好ましくは0.1〜0.4%の範囲である。
P:0.04%以下
Pは、熱間加工性の点から少ない方が望ましく、0.04%以下とする。
S:0.01%以下
Sは、熱間加工性及び耐食性の点から少ないほうが望ましく、0.01%以下とする。好ましくは、0.006%以下である。
Al:0.2%以下
Alは、脱酸に有効な成分であるが、過剰添加はAl系の非金属介在物の増加により表面疵を招くとともに加工性も低下させることから、0.2%以下とする。Alは、溶接能率を低下させることから、好ましくは、0.06%以下である。
Cr:17.0〜19.0%
Crは、耐食性改善に有効であり、良好な耐食性を得るためには17.0%以上の添加が必要であるが、19.0%を超えての添加はSUS304とのTIG溶接部でマルテンサイトが生成しなくなり耐食性低下を防止できなくなるので、Cr量は17.0〜19.0%の範囲とする。好ましくは17.5〜18.5%の範囲である。より好ましくは18.0〜18.5%の範囲である。
Cu:0.3〜0.5%
Cuは、耐食性を確保するために必要な元素であり、そのためには少なくとも0.3%以上添加することが必要である。しかし、0.5%を超えると熱間加工性が劣化する。従ってCu量は0.3〜0.5%の範囲とする。
Ni:0.6%以下
Niは、耐食性向上に有効であるが、高価な元素であることと0.6%を超えて添加すると応力腐食割れを発生する可能性があるので、0.6%以下とする。好ましくは0.4%以下である。
Ti:0.10〜0.20%、Ti%/(C%+N%)≧8
Tiは、溶接部の耐食性を確保するために必要不可欠な成分であり、0.10%以上でかつ、Ti%/(C%+N%)≧8の添加が必要である。しかし、0.20%を超えて過剰に添加すると熱延板の表面性状を悪化させる。よって、Ti量は0.10〜0.20%の範囲とする。溶接部の耐食性を確保するためには、Ti%/(C%+N%)≧10が望ましい。ここで、C%、N%、Ti%は、それぞれC、N、Tiの含有量(質量%)を表す。
以上が本発明の基本化学成分であるが、さらにCa、Bの1種または2種を添加することができる。
Ca:0.0005〜0.0020%
Caは、連続鋳造の際に発生しやすいTi系介在物析出によるノズルの閉塞を防止するのに有効な成分である。0.0005%未満ではその効果がなく、0.0020%を超えると耐食性が低下するので、Ca量は0.0005〜0.0020%の範囲とする。
B:0.0003〜0.0020%
Bは、低温二次加工脆化を防止するのに有効である。0.0003%未満ではその効果がなく、0.0020%を超えると熱間加工性が低下するので、B量は0.0003〜0.0020%の範囲とする。好ましくは0.0003〜0.0010%の範囲である。
上記以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。不純物の例として、Cr鉱石からV、Coが混入することがあるが、混入すると鋼が硬くなり加工性が低下するので、それぞれ0.5%以下とする。
Si%/Ti%≧1.3
Ti添加量が多い場合、大きなチタン炭窒化物が析出して表面性状が劣化しやすい。そこで、Ti添加量が多い場合は、Si添加量を増やして、凝固の初期段階でのチタン炭窒化物の析出をさらに促進させて、大きなチタン炭窒化物の析出を防止する必要がある。このために、Si%/Ti%≧1.3のSi添加が望ましい。ここで、Si%、Ti%は、それぞれSi、Tiの含有量(質量%)を表す。
Si%/Cr%≧0.013
ステンレス鋼の溶接を行うと表面に酸化皮膜が生成して美観が損なわれるので、多くの用途では酸洗でこの酸化皮膜を除去しなければならない。しかし、フェライト系ステンレス鋼の中でCr含有量が多いものでは、Cr酸化物が多い酸化皮膜が生成し、酸洗で除去しにくい問題がある。そこで、SiはCrより酸化されやすいので、Cr含有量に対するSi含有量の比率を上げて、Si酸化物の生成量を増やして、Cr酸化物の生成を抑制すると、酸化皮膜は酸洗で除去しやすくなることを見出した。この効果を得るために、Si%/Cr%≧0.013が望ましい。ここで、Si%、Cr%は、それぞれSi、Crの含有量(質量%)を表す。
[製造方法]
次に本発明の溶接部の耐食性、酸洗性および表面性状に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法について説明する。
本発明鋼の高効率な製造方法としては、スラブに連続鋳造し、1100〜1250℃に加熱して熱間圧延を行い熱延コイルとして、これを熱延板連続焼鈍・酸洗ラインで800〜1000℃の温度で焼鈍し酸洗を行い、次に、冷間圧延を施し冷延板として、仕上げ焼鈍と酸洗を行う方法が推奨される。詳細には以下の通りである。
まず、転炉、電気炉等と強攪拌・真空酸素脱炭処理(SS−VOD)あるいはアルゴン・酸素脱炭処理(AOD法)による2次精錬で上記の化学成分範囲に調整された溶鋼を溶製する。次いで、上記溶鋼から連続鋳造または造塊でスラブを溶製する。鋳造方法は、生産性、品質の面から連続鋳造が好ましい。
鋳造により得られたスラブは、必要により1100〜1250℃に再加熱し、熱間圧延し、800〜1000℃の温度で熱延板焼鈍した後酸洗する。良好な機械的特性・加工性を得るためには、熱延板焼鈍温度は850〜950℃が好ましい。
酸洗された熱延板は冷間圧延、仕上げ焼鈍、冷却、酸洗の各工程を順次経て、冷延焼鈍板とする。
冷間圧延時の圧下率は、伸び性、曲げ性、プレス成形性等の機械的特性を確保するために50%以上が好ましい。また、冷間圧延は1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延としてもよい。冷間圧延、仕上げ焼鈍、酸洗の工程は繰り返し行ってもよい。
さらに、冷延板連続焼鈍ラインで冷延板焼鈍と酸洗を行う。また、必要に応じて光輝焼鈍ラインで焼鈍を行っても良い。
表1に示す発明例A1〜A5、および比較例C1〜C5の組成を有するフェライト系ステンレス鋼を30kg鋼塊に溶製した後、1150℃の温度に加熱して熱間圧延を行って板厚4.0mmの熱延板とした。次いで、950℃、アルゴンガス雰囲気で焼鈍した後、冷間圧延を行い、板厚0.8mmの冷延板を製作した。次いで、930℃、アルゴンガス雰囲気で焼鈍し、フッ酸と硝酸の混合酸を使用して酸洗を行った。
以上により得られた発明例A1〜A5、および比較例C1〜C5に対して、600番の研磨紙で表面を研磨し、供試材とした。
供試材に対して、JIS H 8502に準じて塩水噴霧サイクル試験を行った。塩水噴霧サイクル試験は、5%NaCl噴霧(35℃、2hr)→乾燥(60℃、4hr、相対湿度20〜30%)→湿潤(40℃、2hr、相対湿度95%以上)を1サイクルとして、15サイクルを行った。
次に、C1を除く残りの供試材に対して、同材(同一鋼種)でのTIG溶接部耐食性試験を行った。この試験では、それぞれの供試材から採取した2枚の板をTIG溶接で接合し、それらの表面を600番の研磨紙で研磨した後、上記の塩水噴霧サイクル試験を15サイクル行い、耐食性を調べた。
次に、C1、C2、C3を除く残りの供試材に対して、SUS304との異鋼種TIG溶接部耐食性試験を行った。この試験では、それぞれの供試材から採取した板と0.8mm厚のSUS304をTIG溶接で接合し、それらの表面を600番の研磨紙で研磨した後、上記の塩水噴霧サイクル試験を15サイクル行い、耐食性を調べた。
以上により得られた結果を表1に示す。
Figure 0005168425
なお、表1において、各試験の判定基準は以下の通りである。
(1)塩水噴霧サイクル試験結果:15サイクル試験後の発錆面積が、20%未満が○(合格)、20%以上が×(不合格)と判定した。
(2)同材(同一鋼種)TIG溶接部耐食性試験結果:同材(同一鋼種)同士でTIG突き合わせ溶接を行い、表面を600番の研磨紙で研磨した後、塩水噴霧サイクル試験15サイクル後の溶接部(溶接金属、および熱影響部)の発錆率が、20%未満が○(合格)、20%以上が×(不合格)と判定した。
(3)SUS304との異鋼種TIG溶接部耐食性試験結果:SUS304とTIG突き合わせ溶接を行い、表面を600番の研磨紙で研磨した後、塩水噴霧サイクル試験15サイクル後の溶接部(溶接金属、および熱影響部)の発錆率が、20%未満が○(合格)、20%以上が×(不合格)と判定した。
なお、(2)および(3)のTIG溶接は、表面、裏面ともにシールドガスとしてArガスを流し、溶加材は使用せず、裏ビードの幅が板厚程度になるように行った。これらの溶接条件は、溶接速度:600mm/min、溶接電圧:10〜12V、溶接電流:70〜110A、シールドガス量:表10リットル/min、裏5リットル/minである。
塩水噴霧サイクル試験においては、Cr含有量が16.5%と低い比較例C1は発錆面積が大きく耐食性が劣っていた。同材(同一鋼種)TIG溶接部耐食性試験においては、Ti含有量が0.07%と少ないC2、Ti%/(C%+N%)が6.2と低いC3は、発錆面積が大きく耐食性が劣っていた。SUS304との異鋼種TIG溶接部耐食性試験においては、Cr添加量が19.4%と高い比較例C4、および特許文献1に開示されるフェライト系ステンレス鋼板の比較例C5は、発錆面積が大きく耐食性が劣っていた。
以上より、本発明例では、母材の耐食性、同材(同一鋼種)TIG溶接部耐食性、SUS304との異鋼種TIG溶接部耐食性のいずれの特性にも優れることが明らかとなった。
表2に示す発明例B1〜B6、および比較例D1〜D4(D4は特許文献1に開示されるフェライト系ステンレス鋼)の組成を有するフェライト系ステンレス鋼を150tonVODで溶製した後、連続鋳造でスラブに鋳造した。これを、1150℃の温度に加熱して熱間圧延を行って板厚4.0mmの熱延コイルとした。
次いで、950℃の燃焼ガス雰囲気中で焼鈍した後、硫酸を用いて酸洗し、続いて、フッ酸と硝酸の混合酸を使用して酸洗を行って熱延焼鈍酸洗コイルとした。次いで、冷間圧延で板厚0.8mmとし、930℃の燃焼ガス雰囲気中で焼鈍した後、中性塩電解を行い、続いて、フッ酸と硝酸の混合酸を使用した酸洗を行い、冷延焼鈍酸洗コイルとした。得られた冷延焼鈍酸洗板の表面性状の判定を目視で行った。
さらに、得られた冷延焼鈍酸洗板に対して、600番の研磨紙で表面を研磨し、供試材とした。実施例1と同様にJIS H 8502に準じた塩水噴霧サイクル試験、同材(同一鋼種)TIG溶接部耐食性試験およびSUS304との異鋼種TIG溶接部耐食性試験を行った。
以上により得られた結果を表2に示す。
Figure 0005168425
なお、表2において、各試験の判定基準は以下の通りである。
(1)塩水噴霧サイクル試験結果:15サイクル試験後の発錆面積が、20%未満が○(合格)、20%以上が×(不合格)と判定した。
(2)同材(同一鋼種)TIG溶接部耐食性試験結果:同材(同一鋼種)同士でTIG突き合わせ溶接を行い、表面を600番の研磨紙で研磨した後、塩水噴霧サイクル試験15サイクル後の溶接部(溶接金属、および熱影響部)の発錆率が、20%未満が○(合格)、20%以上が×(不合格)と判定した。
(3)SUS304との異鋼種TIG溶接部耐食性試験結果:SUS304とTIG突き合わせ溶接を行い、表面を600番の研磨紙で研磨した後、塩水噴霧サイクル試験15サイクル後の溶接部(溶接金属、および熱影響部)の発錆率が、20%未満が○(合格)、20%以上が×(不合格)と判定した。
(4)冷延焼鈍酸洗板の表面性状:表面欠陥(線ヘゲやチタンストリンガーによる、形状異常や白筋模様状色異常)がある部分の長さ(1m未満は1mに換算)の板全長に対する割合で判断し、欠陥率が、10%未満が○(合格)、10%以上が×(不合格)と判定した。
なお、(2)および(3)のTIG溶接は、表面、裏面ともシールドガスとしてArガスを流し、溶加材は使用せず、裏ビードの幅が板厚程度になるように行った。それらの溶接条件は、溶接速度:600mm/min、溶接電圧:10〜12V、溶接電流:70〜110A、シールドガス量:表10リットル/min、裏5リットル/minである。
表面性状の判定においては、Si添加量が0.07%と低い比較例D1、Ti添加量が0.28%と高い比較例D2および0.29%と高い比較例D4、Cu添加量が0.55%と高い比較例D3はいずれも冷延焼鈍酸洗板の表面性状が劣っていた。一方、発明例であるB1〜B6はいずれも表面性状が優れていた。塩水噴霧サイクル試験、同材(同一鋼種)TIG溶接部耐食性試験、およびSUS304との異鋼種TIG溶接部耐食性試験に関しては、発明例であるB1〜B6はいずれの試験においても良好な耐食性を示した。
表3に示す発明例E1〜E10およびG1〜G6の組成を有するフェライト系ステンレス鋼を150tonVODで溶製した後、連続鋳造でスラブに鋳造した。なお、E3、E6のB量、Ca量、E9、G4のB量およびG6のCa量はいずれも不可避的不純物レベルの含有量である。上記各スラブを、1150℃の温度に加熱して熱間圧延を行って板厚4.0mmの熱延コイルとした。
次いで、950℃の燃焼ガス雰囲気中で焼鈍した後、硫酸を用いて酸洗し、続いて、フッ酸と硝酸の混合酸を使用して酸洗を行って熱延焼鈍酸洗コイルとした。次いで、冷間圧延で板厚1.2mmとし、930℃の燃焼ガス雰囲気中で焼鈍した後、中性塩電解を行い、続いて、フッ酸と硝酸の混合酸を使用した酸洗を行い、冷延焼鈍酸洗コイルとした。
この段階で、得られた冷延焼鈍酸洗板の表面性状の判定を目視で行った。冷間圧延により板厚を薄くしていくと表面のチタンストリンガーが伸ばされて周囲と同化して目立たなくなる。実施例2では冷間圧延で板厚を0.8mmとしたが、実施例3ではそれより厚い1.2mmとしたので、チタンストリンガーの存在を検出しやすい条件である。さらに、得られた冷延焼鈍酸洗板に対して、600番の研磨紙で表面を研磨し、供試材とした。実施例1、2と同様にJIS H 8502に準じた塩水噴霧サイクル試験、同材TIG溶接部耐食性試験、SUS304との異鋼種TIG溶接部耐食性試験と新たにTIG溶接部酸洗性試験を行った。
以上により得られた結果を表3に示す。
Figure 0005168425
なお、表3において、各試験の判定基準は以下の通りである。
(1)塩水噴霧サイクル試験結果:15サイクル試験後の発錆面積が、20%未満が○(合格)、20%以上が×(不合格)と判定した。
(2)同材(同一鋼種)TIG溶接部耐食性試験結果:同材(同一鋼種)同士でTIG突き合わせ溶接を行い、表面を600番の研磨紙で研磨した後、塩水噴霧サイクル試験15サイクル後の溶接部(溶接金属、および熱影響部)の発錆率が、20%未満が○(合格)、20%以上が×(不合格)と判定した。
(3)SUS304との異鋼種TIG溶接部耐食性試験結果:SUS304との異鋼種TIG突き合わせ溶接を行い、表面を600番の研磨紙で研磨した後、塩水噴霧サイクル試験15サイクル後の溶接部(溶接金属、および熱影響部)の発錆率が、20%未満を○(合格)、20%以上を×(不合格)と判定した。
(4)冷延焼鈍酸洗板の表面性状:表面欠陥(線ヘゲやチタンストリンガーによる、形状異常や白筋模様状色異常)がある部分の長さ(1m未満は1mに換算)の板全長に対する割合で判断し、欠陥率が、3%未満が◎(合格、特に優れている)、3%以上10%未満が○(合格)、10%以上が×(不合格)と判定した。
(5)TIG溶接部酸洗性試験:同材(同一鋼種)同士でTIG突合せ溶接を行い、20℃のフッ酸と硝酸の混合酸液(フッ酸5%、硝酸35%)に浸漬した。10分ごとに酸液から引き上げてナイロンブラシで溶接表側(直接溶接アークを当てた面)の酸化皮膜を擦り酸化皮膜の除去具合を観察した。浸漬時間合計が30分以下で酸化皮膜が除去できたものを◎(特に優れている)、30分超え120分以下で除去できたものを○(合格)、120分超えの浸漬でも酸化皮膜が残っていたものを×(不合格)と判定した。
なお、(2)、(3)および(5)のTIG溶接は、表面、裏面ともにシールドガスとしてArガスを流し、溶加材は使用せず、裏ビードの幅が板厚程度になるように行った。これらの溶接条件は、溶接速度:600mm/min、溶接電圧:10〜12V、溶接電流:80〜120A、シールドガス量:表10リットル/min、裏5リットル/minである。
表面性状の判定においては、Si%/Ti%≧1.3である、E1〜E10は表面欠陥率が3%未満で特に優れていた。Si%/Ti%<1.3である、G1〜G6は表面欠陥率が3%以上10%未満の合格であった。このように、Si%/Ti%≧1.3は表面性状の向上に有効である。
TIG溶接部酸洗性の判定においては、Si%/Cr%≧0.013のE2、E4〜E10およびG1、G2は酸洗時間が30分以下で特に優れていた。Si%/Cr%<0.013のE1、E3、およびG3〜G6は酸洗時間が30分超え120分以下の合格であった。このように、Si%/Cr%≧0.013はTIG溶接部の表面坂皮膜の酸洗性の向上に有効である。
E1〜E10およびG1〜G6は、塩水噴霧試験、同材(同一鋼種)TIG溶接部耐食性試験、およびSUS304との異鋼種TIG溶接部耐食性試験において良好な耐食性を示した。
器物、厨房機器、建築内外装材、建築金具、エレベーター・エスカレーター内装材、家電、自動車部品等を中心に、耐食性が要求される部材として好適である。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.010%以下、Si:0.15〜0.60%、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Al:0.2%以下、Cr:17.0〜19.0%、Cu:0.3〜0.5%、Ni:0.6%以下、Ti:0.10〜0.20%、N:0.015%以下、C+N:0.02%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記式(1)を満たすことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
    Ti%/(C%+N%)≧8 (1)
    ここで、C%、N%、Ti%は、それぞれC、N、Tiの含有量(質量%)を表す。
  2. 前記成分組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0020%、B:0.0003〜0.0020%の中から選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  3. 前記成分組成に加えてさらに、下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
    Si%/Ti%≧1.3 (2)
    ここで、Si%、Ti%は、それぞれSi、Tiの含有量(質量%)を表す。
  4. 前記成分組成に加えてさらに、下記式(3)を満たすことを特徴とする請求項1乃至3に記載のフェライト系ステンレス鋼。
    Si%/Cr%≧0.013 (3)
    ここで、Si%、Cr%は、それぞれSi、Crの含有量(質量%)を表す。
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