JP5167190B2 - 高比重安定液及び掘削工法 - Google Patents

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本願発明は、高比重安定液及び掘削工法に関する。
近年の各種掘削工法において、掘削した壁面の保護が極めて重要となっている。それは、壁面の安定化、即ち壁面の崩落防止、逸水の防止等が各種工事、例えば土留掘削工法、くい工法、泥水シールド工法、注入工法、大深度掘削工法等の進捗に大きく関わる故である。
このため、掘削工法において、掘削面に安定液を投入して、壁面に液を浸透させ、その水圧を以って壁面に添加させるベントナイト等を土の粒子に堆留させる工法が多用されている。
又、この安定液は、循環式掘削工法等において、掘削土を地上まで運搬するために使用されている。地下に土留を制作する技術は、従来は土留め掘削中にベントナイト、水及び分散剤を混合し、安定液比重1.03〜1.1程度に制作した安定液を掘削した地中に流し込んで土留壁を形成していた。
現在使用されている安定液は、比重1.10以下で適正な粘度と造壁性を有すること、耐塩、耐セメント性が大で、コンクリートとの置換が良いことが求められている。
このため、土木建築方面で使用されている安定液としては一般的に、清水100重量部に対し、ベントナイト2〜8重量部、CMC0.05〜0.5重量部のものが使用されている。
特開平9−302143号公報 特開2005−36144号公報 特開平7−316554号公報 特開2001−240852号公報
この従来の一般的な安定液においては、その比重は1.03〜1.1と小さいため、大深度土留の掘削の際に、或いは高圧地下水条件下の掘削の際に、崩落、崩壊を起こす危険性が大であった。このような地盤の掘削の際に、これら水圧に対し安定液圧が0.1〜0.3kgf/cm程度上回ることが必要とされていた。
又、従来の安定液は、使用後、廃棄の際に溶液として運搬の必要があり、しかもベントナイトを含む安定液が産業廃棄物に指定されることで、公害物質としての処理方法に難渋すること、その運搬廃棄費用が高価となる欠点がある。
又、従来、高比重を得るための試みとして、例えば粘土鉱物としてベントナイト、カオリン鉱物等を配合したり、増粘剤としてCMCやアニオン性水溶性高分子、アクリルアミド系重合体等を配合する提案がされている。
しかし、これら配合物は、腐敗しにくいこと、毒性がないこと、濾水性に優れていること等の有効な性質を有しながら、増重材としては用いることは困難であったり、使用上の難点があったりで実用性がなかった。
又、石油掘削用泥水に増重材として用いられる硫酸バリウムは、時間経過により分離し易くなり、安定性の確保に難があった。
そこで、本願発明においては、比重の大きい安定液を製造して、従来困難であった大深度掘削、高水圧地質の掘進に対応した強い泥膜形成を行うこと、又、掘削残土公害を減少させることを目的とする。このため、第一に、比重の大きい安定液を廉価に製作すること、次に、公害を発生するベントナイト等を出来るだけ使用せずに安定液を製作することが必要とされる。
しかし、比重を大きくすると、粒子は沈降分離し易くなり、安定液の効果が失われることになるので、一定期間液中に浮遊させるための方法が必要である。
更に、比重の大なる物質の選択において、使用物質を回収して何度でも使用することにより、コスト高を防ぐことが出来ることが肝要である。
本願発明は、上記の課題を解決するため、安定液の主材料として、従来の材料より比重の大きい物質、フェロシリコン(以下、Fs)、鉄粉など磁性のある物質を利用して安定液を製作し、これを使用し、安定液廃棄時には、排出液を磁力により主材料Fsと残渣物に分離して、主材料Fsを吸着回収するように構成するものであり、
第一に、掘削工法等において使用される安定液であって、磁力によって吸着できる磁性体を混入して、安定液比重を1.01〜3.0に保持することを特徴し、
第二に、磁力によって吸着できる磁性体は、鉄粉であることを特徴とし、
第三に、磁力によって吸着できる磁性体は、フェロアロイであることを特徴とし、
第四に、磁力によって吸着できる磁性体は、フェロシリコンであることを特徴し、
第五に、掘削工法において使用される安定液であって、混合量1mに対しフェロシリコン又は鉄粉1000kg〜3000kg、水500kg〜1000kg、ポリマー1〜5kgを含有することを特徴とする磁力によって吸着できる磁性体は、フェロアロイである鉄粉であることを特徴とし、
第六に、安定液に使用される成分の粒径は、最大100μm以下で50μm径以下粒子を50%以上含有することを特徴とし、
第七に、安定液の粘度は、3000mPas以下であることを特徴とする高比重安定液である。
第八に、前記の高比重安定液を掘削孔内に供給し、掘削作業を行うことを特徴とし、
第九に、安定液内の磁力によって吸着出来る磁性体は、磁力により回収し、繰り返し使用することを特徴とし、
第十に、使用した安定液は、回転ドラムにて磁性体を吸着し、他の土砂混合物と分離することを特徴とする掘削工法である。
本発明請求項1によれば、極めて比重の高い安定液が得られる。これにより、掘削部等での掘削壁面に強い泥膜が形成され得る。このため大深度地下開発、インフラ整備、工事等において多用される各種掘削工法等において直面する大土圧、大水圧に対応して十分に崩落や滑落等の事故を防ぎ、安定液としての役割を十分に果たせる機能を有するものである。
請求項2,3,4,5によれば、磁力により吸着できる材料を増重材として使用しているため、一旦溶液使用後、磁性体を回収して、後で繰り返し使用が可能であり、回収率も良く、極めて経済的な安定液を提供できる。
請求項6,7によれば、本粒径により、浮遊粒子の分離沈降が防止され、所望期間浮遊させることが出来、安定液の作用を長期間保持させることが可能である。
請求項8によれば、各種掘削工法等において、掘削壁面等に薄く、強力な泥膜の形成により、過酷な条件下、例えば大土圧、大水圧を引き起こす大深度地下工事、地下水条件の酷しい工事等において地中崩壊を防止し、安定工法が達成し得る。
以上より、本発明方法は、土留掘削工法、くい工法、泥水シールド工法、注入工法、大深度掘削方法、掘削物の比重分離工法等各種の工法に使用可能である。
又、この方法によると、粒径、鉄分含有量等にもよるが、安定液中Fs量の約90%は磁力により吸着できる。このため、排出物の残渣量は少なく、運搬量は少ない、ベントナイト液体を運搬しないので費用も安く、公害が少ない等の効果がある。
請求項9によれば、高価な磁性体を繰り返し使用することが出来、安定液コストの低減化を図ることが出来る。
請求項10によれば、極めて簡単に土砂混合物と磁性体を分離することが出来、安定液コストの低減化を図ることが出来る。
本発明において使用される比重の高い物質としては、フェロアロイ、就中フェロシリコン、鉄粉等の磁性のある物質を使用する。
比重の高い物質としては、鉄分含有のFsを利用し、使用後、Fsを磁力吸着、Fsを取得し、残渣を廃棄する。安定液は、比重の大きい粒子を液中に長時間浮遊させるために、基本的にStokesの定理により、粒径を小さくすること、粘度を大きくすること、粒子比重と安定液比重の差を小さくすることにより、液比重、液粘度、粒子比重、粒径及び補助剤の最適な数値を決める。
所望液比重の安定液を製造する場合、浮遊粒子の分離沈降防止の課題がある。フェロシリコン等の比重を大きくするほど沈降が早くなる。粒子を所望期間浮遊させ、沈降を防止する必要がある。浮遊粒子は高価なので回収する必要がある。安定液の適用範囲を広げるために出来るだけ大きい比重の安定液を製造する必要がある。
安定液の使用により、Fs比重を選択する。Fs規格、FeSi45、密度5.1g/cm、FeSi75、密度2.8などを通常使用する。安定液比重が大きくなるためには、Fs粒子比重が大きいこと、それのみでなく、比重の大きい粒子が液中で沈降しないこと、もしくは遅いこと、そのためには、粒径は小さく、また粒子沈降が遅いためには、粒子比重と疑似液比重の差が小さく、また安定液の粘度は施工可能な範囲で小さいことが望ましい。
図3において、粘度J=yをy軸、液比重K=xをx軸にとると、y=2612.8x−4902.5の関係式が成り立つ。この際、決定係数R=0.7933である。この関係図を図3に示す。
図4において、粘度J=yをy軸、粒径M=xをx軸にとると、y=−128.74x+10607の関係式が成り立つ。この際、決定係数R=0.6138である。この関係図を図4に示す。
図3、図4の関係図に示すように、液比重3.0を得るためには、液粘度は4000mPas以下が望ましく、図4の関係図に示すように、粒子径は60μm以下が望ましい。液比重2.0に対しては、粘度100mPas以上、粒径100μm以下が望ましい。この範囲内で、必要期間粒子が沈降しない安定液を製造することが出来る。
図1は、ベントナイト溶液の濃度による乾燥減量を示した実例で、図中Aは、ベントナイト溶液濃度10%、Bは同5%の夫々の乾燥減量図である。
これにより、溶液濃度が薄い程、乾燥度が良くなり、使用後の残存量は減少する。公害源としての減量を達成できることが示されている。
次いで、フェロシリコンと土砂混合物の分離について説明する。
図2は、Fsと土砂混合物の分離機構の概略図である。これら分離機構は通常、安定液工法において使用される土砂分離機内又はそれと連撃乃至連動する如く設置して使用するのが便である。中央に鋼製のドラムEがあり、該ドラムEの内部には、磁石が装着してある。その上部に材料投入ホッパーFがある。ドラムE下部には、ドラムEと離れて削りヘラGを付着し、ドラムEに磁力付着したFsを削り落とす。
掘削混合物は、材料投入ホッパーFに投入され、ドラムEの表面に沿って流下する。Fsは、ドラムEの内部の磁力でドラムEに吸着され、削りヘラGで削られて、Fsは落下容器Iに落下する。残渣物は、落下容器Hに落下する。このようにしてFsと、残渣物は分離される。
尚、この削りヘラGは、自動又は手動にてドラムEに接触或いは離間自在とさせてある。又、この削りヘラGの接触は、材料投入ホッパーFからの掘削混合物投下を止めた期間に行うのが便であるが、残渣物が混在しても問題ない。残渣物を落下容器Iに投下し、ドラムEの横から下部に削りヘラGを接離自在とし、Fsを落下容器Hに収容することも出来る。
液比重2.0粘度、200mPasの安定液を得るために、Fs材料として、比重5.1、粒径100μm以下、粒径50μm以下50%以上を、混合量1mに対して、Fs1250kg、水746kg、ポリマー(RB−35)を2.4kg、ベントナイト25kg、(メッシュ300)を混合し、安定液を製造した。
安定液の比重は、2.02であり、粘度は153mPasであった。簡易圧力計による3kg/cm,30分間加圧後の浸潤液量は15.4ml、ph=10.5、マッドケーキ厚は0.43cmであった。
安定液、粒子沈降実験は、容器5cm径、100cm高のシリンダー、液比重2.0の沈降深さは、72hr経過後で10cm、168hr後で20cmであった。このように、安定液の比重が長時間確保されることが確認された。安定液使用後のFs回収には、図2のように、材料投入ホッパーFの混合物は、ドラムEでFsは磁力吸着されて、落下容器Iに落下し、混合物のFs以外の残渣物は、落下容器Hに落ちて分離される。磁力吸着には、9000ガウスの磁石を使用した。
液比重3.0粘度、3000mPasの安定液を得るために、Fs材料として、比重6.5、粒径50μm以下を、混合量1mに対して、Fs2343kg、水629kg、ポリマー(RB−35)を3.13kg、ベントナイト31.25kg(メッシュ300)を混合し、安定液を製造した。
安定液の比重は、3.0であり、粘度は2950mPasであった。簡易圧力計による3kg/cm,30分間加圧後の浸潤液量は3.0ml、ph=10.5、マッドケーキ厚は0.36cmであった。
安定液、粒子沈降実験は、容器5cm径、100cm高のシリンダー、液比重3.0の沈降深さは、72hr経過後で10cm、168hr後で20cmであった。このように、安定液の比重が長時間確保されることが確認された。Fs混合物の磁力回収率は90%であった。安定液使用後のFs回収には、図2のように、材料投入ホッパーFの混合物は、ドラムEでFsは磁力吸着されて、落下容器Iに落下し、混合物のFs以外の残渣物は、落下容器Hに落ちて分離される。磁力吸着には、9000ガウスの磁石を使用した。
本発明一実施例による安定液のベントナイト重量/時間の乾燥減量図 本発明一実施例を示すFsと土砂混合物の分離機構の概略図 本発明一実施例による安定液の粘度/液比重の関係図 本発明一実施例による安定液の粘度/粒径の関係図
E 鋼製ドラム
F 材料投入ホッパー
G 削りヘラ
H 落下容器
I 落下容器
A 10%ベントナイト
B 5%ベントナイト
C ベントナイト重量
D 時間
J 粘度
K 液比重
L 粘度/液比重
M 粒径
N 粘度/粒径

Claims (10)

  1. 掘削工法等において使用される安定液であって、磁力によって吸着できる磁性体を混入して、液比重、粘度、粒径を下記数1、2により安定液比重を1.01〜3.0に保持することを特徴とする高比重安定液。
    (数1) y=2612.8x−4902.5 y=粘度 x=液比重
    (数2) y=−128.74x+10607 y=粘度 x=粒径
  2. 磁力によって吸着できる磁性体は、鉄粉であることを特徴とする請求項1に記載の高比重安定液。
  3. 磁力によって吸着できる磁性体は、フェロアロイであることを特徴とする請求項1に記載の高比重安定液。
  4. 磁力によって吸着できる磁性体は、フェロシリコンであることを特徴とする請求項1又は3に記載の高比重安定液。
  5. 掘削工法において使用される安定液であって、混合量1mに対し磁力によって吸着できる磁性体1000kg〜3000kg、水500kg〜1000kg、ポリマー1〜5kgを含有する請求項1に記載の高比重安定液であって磁力によって吸着できる磁性体は、フェロシリコン又は鉄粉であることを特徴とする高比重安定液。
  6. 安定液に使用される磁性体の粒径は、最大100μm以下で50μm径以下粒子を50%以上含有することを特徴とする請求項5に記載の高比重安定液。
  7. 安定液の粘度は、3000mPas以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の高比重安定液。
  8. 請求項1から7の高比重安定液を掘削孔内に供給し、掘削作業を行うことを特徴とする掘削工法。
  9. 使用した安定液は、磁力装着回転ドラムの外周に回転方向と同方向に供給し該ドラムに磁性体を吸着し、他の土砂混合物と分離することを特徴とする請求項8に記載の掘削工法。
  10. 安定液内の磁力によって吸着出来る磁性体は、ドラム外周に磁力により付着回収し、繰り返し使用することを特徴とする請求項9に記載の掘削工法。
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