JP5162491B2 - 車両の後部座席制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車(以下、単に車両と記す)の後部座席制御装置に係り、特に車両の旋回時に前輪の転蛇角と車速とに基づいて左右の後輪の転蛇角を操舵する後輪操舵装置を備えた車両の後部座席の乗り心地を制御する装置に関する。
車両が旋回するとき、ヨーレート等の車両状態量を計測して、運転する乗員のハンドル操舵に対する車両の挙動を所望の挙動にする技術が開示されている(特許文献1参照)。関連する技術として、前輪の転蛇角と車速とに基づいて左右の後輪の転蛇角を操舵する後輪操舵装置を備えることによって、車両の走行状態を安定化する技術が開示されている(特許文献2参照)。これらの技術は、例えば特許文献3で開示されているように、旋回運動を行っている車両の運動方程式に基づき伝達関数を求めて、車両の挙動を演算する手段を適用することができる。
一方、車両の同乗者の乗り心地を改善する技術が開示されている(特許文献4参照)。また、同乗者の乗り心地を決定する上で重要な要因であるシートの硬さを調整することができる技術が開示されている(特許文献5)。
特開2003−81117号公報 特開2008−238898号公報 特開2008−24233号公報 特開2005−128631号公報 特開平11−128021号公報
特許文献1や特許文献2において開示された技術は、車両が旋回して走行するとき、運転を行う乗員にとって自分の意図する車両の挙動を実現することができるため好適となる。しかし、かかる技術は運転席を基準に車両の挙動を制御していることから、運転席から離れた後部座席の同乗者にとって違和感を感ずるおそれがある。すなわち、同乗者は、通常の車両に乗車することに慣れており、かかる制御技術が適用された車両に乗車した場合、通常と異なる車両の挙動を体験するためである。特にヨーコントロールの制御量が大きい場合には、後部座席の同乗者が車酔いをするほどの違和感を感ずるおそれがある。
一方、特許文献4において開示された技術は、同乗者がある場合に運転操作の是非を判定し、これを車両に備えられた表示手段に表示して運転する乗員に対して注意喚起するものである。かかる技術を前記した制御技術が適用された車両に備えたとしても、同乗者の乗り心地を改善するためには乗員の運転技能に依存せざるを得なかった。
本発明は前記課題を鑑みてなされたもので、車両旋回時に後部座席の乗員が感ずる違和感を緩和する制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、車両に備えられた後部座席の状態を制御する制御装置である。この装置は、車両の後部座席への乗員の乗車を検出する乗員検出手段と、車両の挙動にかかる車両状態量を検出する状態量検出手段と、車両状態量から車両の旋回を検出する旋回検出手段と、前記車体の懸架に供される減衰力可変ダンパの減衰力の制御量を調整する減衰力制御手段と、を備えている。前記後部座席への乗員の乗車が検出され、かつ、前記旋回が検出されたとき、旋回時に検出された車両状態量に応じて、減衰力の制御量を調整するよう構成されている。
かかる構成によって、後部座席に乗員が乗車しているとき、例えば、旋回時に車両に横加速度が加わるような状況では、制御量(ゲイン)を高くして可変ダンパの減衰力を硬くすることでロールが抑制される。ロールの抑制によって、後部座席に乗車している乗員が感じる横加速度を低減することができる。
本発明の他の形態は、さらに前記後部座席に備えられたシートの硬さまたは高さのいずれか、もしくは、両方を変化させるシート調整手段と、を備える。前記後部座席への乗員の乗車が検出され、かつ、前記旋回が検出されたとき、旋回時に検出された車両状態量に応じて前記シートの硬さまたは高さのいずれか、もしくは、両方を変化させるよう制御する。
かかる構成は、車両が旋回時に車両状態量に応じて後部座席のシートの状態を変化させるため、後部座席の乗員は車両の挙動に違和感を感ずることを緩和することができる。特にヨーレート等をコントロールして車両の旋回特性が制御される場合に好適となる。
前記車両状態量は、車速と、横加速度と、ヨーレートおよびロールレートのいずれか、もしくは、両方を検出して、後部座席のシートの状態を変化させるための制御を実行させることができる。
本発明にかかる制御装置は、前輪の転蛇角と車速とに基づいて左右の後輪の転蛇角を操舵する後輪操舵装置を備えた車両に搭載することが好適である。
前記構成において、シート調整手段は、後部座席に予め設定された乗員の座席位置の両側に設けることができる。さらに、シート調整手段は、予め設定された後輪操舵装置を備えない車両における旋回時の車両状態量に基づきシートの硬さまたは高さのいずれか、もしくは、両方を変化させることが好ましい。
本発明によれば、車両旋回時に後部座席の乗員が感ずる違和感を緩和する後部座席の状態を制御する装置を提供することができる。
本発明の第一実施形態にかかる4輪自動車の概略構成図である。 本発明の第一実施形態にかかるダンパの縦断面図である。 本発明の第一実施形態にかかる制御装置の概略構成を示す機能ブロック図である。 本発明の第一実施形態にかかる目標減衰力設定処理の手順を示すフローチャートである。 通常車両と後輪操舵装置(RTC)を備えた車両の運動特性に基づいて、両者の舵角に対するヨーレート特性の周波数に対するゲイン(dB)と位相(deg)について比較を示したチャートである。 通常車両と後輪操舵装置(RTC)を備えた車両の運動特性に基づいて、両者の舵角に対する横G特性の周波数に対するゲイン(dB)と位相(deg)について比較を示したチャートである。 本発明の第二実施形態にかかる制御装置の概略構成を示す機能ブロック図である。 本発明の第二実施形態にかかるシート調整プロセスのフローチャートである。
[第一実施形態]
以下、本発明にかかる後部座席制御装置を車両に適用した一実施形態について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本発明の第一実施形態に係る自動車の概略構成について説明する。説明にあたり、4本の車輪やそれらに対して配置された部材、すなわち、タイヤやサスペンション等については、それぞれ数字の符号に前後左右を示す添字を付して、例えば、車輪3fl(左前)、車輪3fr(右前)、車輪3rl(左後)、車輪3rr(右後)と記すとともに、総称する場合には、例えば、車輪3と記す。
図1を参照すると、自動車(車両)Vはタイヤ2が装着された4つの車輪3を備えており、これら各車輪3がサスペンションアームや、スプリング、MRF式減衰力可ダンパ(以下、単にダンパと記す)4等からなるサスペンション5によって車体1に懸架されている。自動車Vには、サスペンションシステムの制御主体であるECU(Electronic Control Unit)7や、EPS(Electric Power Steering:電動パワーステアリング)8が設置されている。
また、自動車Vには、車速を検出する車速センサ9、横加速度を検出する横Gセンサ10、前後加速度を検出する前後Gセンサ11、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ12、ロールレートを検出するロールレート15等が車体1の適所に設置されるとともに、ダンパ4の実ストローク速度Ssを検出するストロークセンサ13と、ホイールハウス付近の上下加速度を検出する上下Gセンサ(上下運動量検出手段)14とが各車輪3ごとに設置されている。
次に図2を参照すると、本実施形態のダンパ4は、モノチューブ式(ド・カルボン式)であり、MRFが充填された円筒状のシリンダチューブ21と、このシリンダチューブ21に対して軸方向に摺動するピストンロッド22と、ピストンロッド22の先端に装着されてシリンダチューブ21内を上部油室24と下部油室25とに区画するピストン26と、シリンダチューブ21の下部に高圧ガス室27を画成するフリーピストン28と、ピストンロッド22等への塵埃の付着を防ぐカバー29と、フルバウンド時における緩衝を行うバンプストップ30と、を主要構成要素としている。
シリンダチューブ21は、下端のアイピース21aに嵌挿されたボルト31を介して、車輪側部材であるトレーリングアーム35の上面に連結されている。また、ピストンロッド22は、上下一対のブッシュ36とナット37とを介して、その上端のスタッド22aが車体側部材であるダンパベース(ホイールハウス上部)38に連結されている。
図2に示すように、ピストン26には、上部油室24と下部油室25とを連通する環状連通路39と、環状連通路39の内側に配設されたMLVコイル40とが設けられている。ECU7からMLVコイル40に電流が供給されると、環状連通路39を流通するMRFに磁界が印可されて強磁性微粒子が鎖状のクラスタを形成し、環状連通路39内を通過するMRFの見かけ上の粘度が上昇する。かかる構成によって、ダンパの減衰力が調整されている。
図3は本実施形態における車両の制御装置の機能ブロック図である。なお、本実施形態では前輪の転蛇角と車速とに基づいて左右の後輪の転蛇角を操舵する後輪操舵装置(以下 RTC:Rear Toe Control と称す。)を備えた車両について説明する。なお、以降の説明においてRTCを備えた車両をRTC車両、場合によって前後輪操舵車と称し、通常の前輪操舵のみの車両を通常車両と称する。
本実施形態の後部座席制御装置は、ECU(電子制御ユニット)7によって実現できる。ECU7は、一種のコンピュータであり、演算を実行するプロセッサ(CPU)、各種データを一時記憶する記憶領域およびプロセッサによる演算の作業領域を提供するランダム・アクセス・メモリ(RAM)、プロセッサが実行するプログラムおよび演算に使用する各種のデータが予め格納されている読み出し専用メモリ(ROM)、およびプロセッサによる演算の結果およびエンジン系統の各部から得られたデータのうち保存しておくものを格納する書き換え可能な不揮発性メモリを備えている。不揮発性メモリは、システム停止後も常時電圧供給されるバックアップ機能付きRAMで実現することができる。
ECU7の制御機能は、シートセンサ16(乗員検出手段),車両の挙動にかかる車両状態量を検出するヨーレートセンサ12(状態量検出手段)、ロールレートセンサ15(状態量検出手段)および車両の横加速度を検出する横Gセンサ10(状態量検出手段)から出力される信号を受け取る入力インタフェース120と、後部座席検出部101(乗員検出手段)と、旋回検出部102(旋回検出手段)と、後部座席乗り心地調整部103(減衰力調整手段およびシート調整手段)と、ダンパ減衰力またはシート状態を変化させる制御信号等をアクチュエータ130(減衰力調整手段およびシート調整手段)へ出力する出力インタフェース121と、から構成されている。そして、ECU7は、後部座席検出部101と、旋回検出部102と、後部座席乗り心地調整部103の機能を実現させるようにプログラムされている。
入力インタフェース120は、ECU7と車両の各部とのインタフェース部であり、様々な箇所から送られてくる車両状態量を示す情報を受け取って信号処理を行い、アナログ情報はデジタル信号に変換し、これらをECU7の後部座席検出部101、旋回検出部102、後部座席乗り心地調整部103およびRTC等の制御機器(図示せず)へ受け渡す。図3では、シートセンサ16、ヨーレートセンサ12、ロールレートセンサ15および横Gセンサ10からの情報が示されているが、これに限定されるものではなく、図1で前記したようにその他種々の情報が入力される。
シートセンサ16は、後部座席のシートベルト着脱を検出する、もしくは、特許文献4に開示されているように後部座席に重量センサを設けて、所定以上の重量が加わったか、否かを検出するように構成することができる。ヨーレートセンサ12は車両が上下軸方向に回転する速度であるヨーレートを検出する。ロールレートセンサ15は車両が前後軸方向に回転する速度であるロールレートを検出する。横Gセンサ10は車両の左右方向に作用する加速度を検出する。なお、車両の旋回の検出にあたっては、ヨーレートセンサ12とロールレートセンサ15は、いずれか一方のセンサを備える構成とすることができ、以降の説明においてはヨーレートセンサ12のみの検出結果を適用した構成について説明を行う場合があるが、ヨーレートセンサ12のみに限定されることはない。
後部座席検出部101は、入力インタフェース120を介してシートセンサ16の信号を取得し、車両の後部座席に乗員乗車の有無を判定する。判定は、前記したようにシートベルトの着脱の検出結果、もしくは、重量センサの検出結果を元に実行される。後部座席検出部101は、後部座席に乗員がある場合、「乗員がある」旨の信号を後部座席乗り心地調整部103へ送出する。
旋回検出部102は、入力インタフェース120を介してヨーレートセンサ12(および/またはロールレートセンサ15)の信号を取得し、車両が旋回しているか、否かを判定する。旋回検出部102は、ヨーレートセンサ12(および/またはロールレートセンサ15)が検出した信号によって車両が旋回していると判定したとき、「車両が旋回している旨」の信号とともにヨーレートセンサ12(および/またはロールセンサ15)と横Gセンサ10から検出された信号を後部座席乗り心地調整部103に送出する。
後部座席乗り心地調整部103は、旋回時に検出された車両状態量に応じて、減衰力の制御ゲインを調整するダンパ調整部50と、後部座席に備えられたシートの硬さまたは高さのいずれか、もしくは、両方を変化させるシート調整部60と、から構成されている。本実施形態では、ダンパ調整部の作用について説明し、シート調整部60については第二実施形態で説明する。
後部座席乗り心地調整部103は、後部座席検出部101から送出された「乗員がある」旨の信号と、旋回検出部102から送出された「旋回している旨」の信号およびヨーレートセンサ12等が検出した信号(ゲイン)を受け取る。後部座席乗り心地調整部103のダンパ調整部50は、受け取った信号に応じてダンパの減衰力の制御ゲインを算出しする。算出された制御ゲインは出力インタフェース121を介してアクチュエータ130に送出される。ここで、アクチュエータ130はダンパ調整機構もしくはシート調整機構の上位概念としている。
ダンパ調整部50は、前記した各センサ9〜14等が接続する入力インタフェース120を介して入力されたヨーレートセンサ12等の検出信号に応じて各ダンパ4の目標減衰力を後記するプロセスに基づき設定して、設定された制御量を出力インタフェース121を介して各ダンパ4が備えるアクチュエータ130に出力する。
ダンパ調整部50は、自動車が走行を開始すると、所定の処理インターバル(例えば、2ms)をもって、図4のフローチャートにそのプロセスを示す目標減衰力設定処理を実行する。このプロセスはECU7のCPUにより実行される。
ECU7の後部座席検出部101は、シートセンサ16が検出した信号を取得して、後部座席に乗員が乗車しているか、否か判定する(ステップS101)。判定は、前記したようにシートベルトの着脱の検出結果、もしくは、重量センサの検出結果を元に実行される。
後部座席に乗員が乗車している場合(ステップS101:Yes)、旋回検出部102はヨーレートセンサ12(および/またはロールレートセンサ15)の信号を取得し、車両が旋回しているか、否かを判定する(ステップS102)。
車両が旋回していると判定された場合(ステップS102:Yes)、ダンパ調整部50は、目標減衰力設定処理を開始すると、ステップS103で、横Gセンサ10、前後Gセンサ11、および上下Gセンサ14から得られた車体1の各加速度や、車速センサ(図示せず)から入力した車速、操舵角センサ(図示せず)から入力した操舵速度等に基づき自動車Vの運動状態を判定する。次に、ダンパ調整部50は、自動車Vの運動状態に基づき、ステップS104で各ダンパ4のロール制御目標値Drを算出する。
制御目標値Drの算出にあたっては、ダンパ調整部50は、予め取得されてECU7のメモリに格納された通常車両の運動状態とRTC車両の運動状態とを比較する。そして、ダンパ調整部50は、運動状態を比較した結果、RTC車両と通常車両に差が生ずるとき、RTC車両の制御量を通常車両の制御量に近づけるように制御目標値Drを算出する構成としている。マップ等を参照することによって制御目標値Drを算出する構成としてもよい。
ダンパ調整部50は、ステップS105で出力インタフェース121に目標減衰力を出力する。出力された目標減衰力は、電流に変換され、各ダンパのアクチュエータ130に送出される。例えば、旋回時に車両に横加速度が加わるような状況では、制御量(ゲイン)を高くして可変ダンパの減衰力を硬くすることでロールが抑制される。かかるプロセスによって、ダンパの減衰力は後部座席の乗員の乗り心地を向上するモードに変更される。
次に、後部座席乗り心地調整部103が実行する制御量の算出の根拠について説明する。車両の運動特性は式(1)の運動方程式で表すことができる。式(1)、(2)は、特許文献3等に開示されているように一般的に知られている通常車両の運動方程式である。
mV(β+γ)=−K(β+L/V・γ−δ)−K(β−L/V・γ) (1)
Iγ=−L(β+L/V・γ−δ)+L(β−L/V・γ) (2)
式(1)、(2)において、mは車両の質量、Vは車両の速度、βは横滑り角、γはヨーレート、Kは前輪のタイヤコーナリングパワー、Kは後輪のタイヤコーナリングパワー、Lは車両重心点と前車軸間の距離、Lは車両重心点と後車軸間の距離、δは前輪の舵角、Iはヨーイング慣性モーメントである。
式(1)、(2)をラプラス変換すると式(3)、(4)となる。なお、sはラプラス演算子である。
(mVs+K+K)β+(mV+(K−K)/V)γ=Kδ (3)
(L−L)β+(Is+(K −K )/V)γ=Lδ (4)
式(3)、(4)を連立方程式とすると、特性多項式Δは式(5)となる。
Figure 0005162491
式(5)の特性多項式Δを用いて、操舵角に対するヨーレートの伝達関数γ/δと、操舵角に対する横加速度の伝達関数Gy/δを求める。ここで、Gyは横加速度を表し、横滑り角βと横Gyとは式(6)の関係にある。
Gy=(β+γ)V (6)
操舵角に対するヨーレートの伝達関数は式(7)となる。
γ/δ=(1/(1+AV))・(V/L)・((mLV/L)s+1)/Δ (7)
操舵角に対する横加速度の伝達関数は式(8)となる。
Gy/δ=(1/(1+AV))・(V/L)・(Is/L+Ls/V+1)/Δ (8)
ここでAはスタビリティファクターである。
次にRTC車両の運動方程式を式(9)、(10)に示す。
mV(β+γ)=−K(β+L/V・γ−δ)−K(β−L/V・γ+δ) (9)
Iγ=−L(β+L/V・γ−δ)+L(β−L/V・γ+δ) (10)
式(9)、(10)は、式(1)、(2)の右辺の最終項に後輪の舵角δが付加されている。
ここで、RTC車両の後輪操舵量は前輪操舵量に依存するものであるため、式(11)のように表すことができる。
δ=Hδ (11)
ここで、Hは前輪操舵量に応じた後輪操舵量にかかる係数である。
式(9)、(10)、(11)および式(5)の特性多項式Δを用いて、RTC車両における前輪操舵角に対するヨーレートの伝達関数γ/δと、前輪操舵角に対する横加速度の伝達関数Gy/δを求める。RTC車両における前輪操舵角に対するヨーレートの伝達関数は、式(12)のように表すことができる。
(γ/δ)RTC=(1/(1+AV))・(V/L)・((1−H)・((1+λ)(mLV/L)s+1))/Δ (12)
RTC車両における前輪操舵角に対する横加速度の伝達関数は、式(13)のように表すことができる。
(Gy/δ)RTC=(1/(1+AV))・(V/L)・(1−H)・((1+λ)Is/L+(1+λ)Ls/V+1)/Δ (13)
ここで、λは式(14)、λは式(15)、λは式(16)のように表すことができる。
λ=((L−L)/L)・(H/(1−H)) (14)
λ=((K+K)/K)・(H/(1−H)) (15)
λ=(L/L)・(H/(1−H)) (16)
通常車両(前輪操舵車)とRTC車両(前後輪操舵車)の運動特性に基づいて、両者の舵角に対するヨーレート特性の比較の一例を図5に、両者の舵角に対する横加速度特性(横G特性と言う)の比較の一例を図6に示す。図5、図6は周波数に対するゲイン(dB)と位相(deg)について比較を行っている。
図5および図6を参照すると、舵角に対するヨーレート特性および舵角に対する横G特性は、通常車両とRTC車両とは異なっている。本実施形態は、RTC車両の特性を通常車両の特性に近づけるようダンパの制御量を調整する構成としている。
具体的には、後部座席乗り心地調整部103は、予め取得されてECU7のメモリに格納された前記ゲインに対応する通常車両の運動状態とRTC車両の運動状態とを比較する。そして、後部座席乗り心地調整部103は、運動状態を比較した結果、RTC車両と通常車両に差が生ずるとき、RTC車両の制御量を通常車両の制御量に近づけるように制御目標値Drを算出するよう構成している。
本実施形態のかかる構成によって、車両が低速で走行し、後輪が前輪と逆位相で操舵される場合であって後輪操舵量が大きいときには運動特性の変化についてダンパを柔らかくすることで抑制することができる。これは、車両の運動特性の観点から危険な領域ではないため、後部座席に乗車した乗員にとって優しいダンパ特性にするものである。
一方、車両が高速で走行し、前輪と後輪が同位相で操舵されるときは車両の不安定度が大きくなる。この場合、低速時と比較して車両挙動の変化は小さい方が望ましいため、ダンパを硬くすることで車両挙動の安定化を図ることができる。このように、本実施形態は、車両旋回時に後部座席の乗員が感ずる違和感を緩和する後部座席の状態を制御することを実現する。
[第2実施形態]
本発明の第二実施形態について図面を参照して説明する。図7は本実施形態にかかる制御装置の概略構成を示す機能ブロック図である。図8は本実施形態にかかるシート調整プロセスのフローチャートである。なお、前記した第一実施形態と共通する構成については説明を省略する場合がある。
図7を参照すると、後部座席乗り心地調整部103が有するシート調整部60は、後部座席検出部101から送出された「乗員がある」旨の信号と、旋回検出部102から送出された「旋回している旨」の信号およびヨーレートセンサ12と横Gセンサ10が検出した信号(ゲイン)を受け取る。その後、シート調整部60は、取得されたヨーレートのゲインYGRTC、横加速度のゲインGGRTCと、予め取得されてECU100のメモリに格納された前記ゲインに対応する通常車両のヨーレートのゲインYGN,横加速度のゲインGGNとを比較する。シート調整部60は、ゲインを比較した結果、RTC車両と通常車両のゲインに差が生ずるとき、ゲインYGRTC,GGRTCをゲインYGN、GGNに近づけるようにシート調整を実行する制御量を算出する。
シート調整の制御量は、シート調整を実行するアクチュエータ130に送出される信号である。シートはシートの硬さおよび高さのいずれか一方、もしくは、両方が調整することができるように構成されており、シート調整部60は、前記した算出結果に基づく制御量ACTの信号を出力インタフェース121を介してアクチュエータ130に送出する。
アクチュエータ130は出力インタフェース121を介して、シート調整部60から送出された信号を受け取り、シート調整を実行する。アクチュエータ130は、後部座席に予め設定された乗員の座席位置の両側に設けるよう構成することが好ましい。かかる構成を適用することによって、シートの左右の微妙な調整を実現することができる。アクチュエータ130は、駆動モータや弾性材を利用してシート硬さや高さを調整するように構成することができる。シート調整の技術は特許文献5に開示された技術を適用することができ、詳細な説明は省略する。
再び、図5および図6を参照すると、舵角に対するヨーレート特性および舵角に対する横G特性は、通常車両とRTC車両とは異なっている。そこで、本実施形態は、RTC車両の特性を通常車両の特性に近づけるよう後部座席のシートの硬さおよび高さの一方、もしくは両方を調整する構成としている。
シート調整は前記したように、シート調整部60がヨーレートセンサ12(および/またはロールレートセンサ15)と横Gセンサ10から検出された信号を処理して、シート制御量を算出する。シート制御量は、後部座席に予め設定された乗員の座席位置の両側に設けられているアクチュエータ130に送出される。アクチュエータ130は制御量に従い、特許文献5に開示された技術等を適用して、シートの硬さおよび高さの一方、もしくは両方を調整する。
すなわち、一例をあげれば、右旋回時にRTC車両の傾き量(ヨーレート、ロールレート、横G等の検出結果から算出)が通常車両よりも大きいときには、後部座席であって乗員が着座したシートの左を固く(座面を高く)し、右は柔らかく(座面を低く)する。なお、このシート調整度合いは、乗員ごとに異なることが想定され、後部座席に乗車する乗員が通常車両に乗車するのと同等に感じるレベルに手動で調節できるように構成しても良い。
本実施形態にかかる構成は、車両が旋回時に車両状態量に応じて後部座席のシートの状態を変化させるため、後部座席の乗員は車両の挙動に違和感を感ずることを緩和することができる。特にヨーレート等をコントロールして車両の旋回特性を制御するRTC車両において好適となる。
次に図8を参照して本実施形態におけるシート調整プロセスについて説明する。このプロセスはECU7のCPUにより実行される。図8および図7を併せて参照すると、ECU7の後部座席検出部101は、シートセンサ16が検出した信号を取得して、後部座席に乗員が乗車しているか、否か判定する(ステップS201)。判定は、前記したようにシートベルトの着脱の検出結果、もしくは、重量センサの検出結果を元に実行される。
後部座席に乗員が乗車している場合(ステップS201:Yes)、旋回検出部102はヨーレートセンサ12(および/またはロールレートセンサ15)の信号を取得し、車両が旋回しているか、否かを判定する(ステップS202)。
車両が旋回していると判定された場合(ステップS202:Yes)、シート調整部60は、ヨーレートセンサ12と横Gセンサ10が検出した信号であるヨーレートのゲインYGRTCおよび横加速度のゲインGGRTCを受け取る。その後、シート調整部60は、取得されたそれぞれのゲインYGRTC、GGRTCと、予め取得されてECU7のメモリに格納された通常車両の対応するゲインYGN,GGNとを比較する。
シート調整部60は、ゲインを比較した結果、差を有するとき、ゲインYGRTC,GGRTCをゲインTGN、GGNに近づけるようにシート調整を実行する制御量を算出する(ステップS203)。調整量は、例えば、ECU7のメモリに車両の傾き量(ヨーレート、ロールレート、横Gの検出結果から算出された量)とシート硬さ(高さ)のマップを予め格納しておき、このマップを参照して算出することができる(ステップS204)。図8にマップの一例を示す。
算出された制御量に基づきアクチュエータ130は後部座席を調整する。シート調整は、例えば、乗員の左右前後量を調整するときシートバックの硬さを座席の左右で変更することによって達成できる。また、乗員の左右上下量を調整するときシートクッションの硬さを左右で変更することによって達成できる。なお、具体的なアクチュエータの作動については特許文献5に開示されている技術で実行することができるため詳細は省略する。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において改変して用いることができる。例えば、特許文献1で開示されているようなパワーステアリング装置を制御してヨーコントロールする場合についても、本発明を適用することができる。また、シート調整はヨーレート、ロールレート、横Gに限定されず、例えばピッチレートに基づいて調整する制御量を算出する構成としてもよい。
1 車体
3 車輪
4 ダンパ
7 ECU
10 横Gセンサ
12 ヨーレートセンサ
15 ロールレートセンサ
16 シートセンサ
50 ダンパ調整部
60 シート調整部
101 後部座席検出部
102 旋回検出部
103 後部座席乗り心地調整部
120 入力インタフェース
121 出力インタフェース
130 アクチュエータ
V 自動車

Claims (6)

  1. 車両の後部座席への乗員の乗車を検出する乗員検出手段と、
    前記車両の挙動にかかる車両状態量を検出する状態量検出手段と、
    前記車両状態量から前記車両の旋回を検出する旋回検出手段と、
    前記車両の前輪の転蛇角と車速とに基づいて左右の後輪の転蛇角を操舵する後輪操舵装置と、
    前記車体の懸架に供される減衰力可変ダンパの減衰力の制御量を調整する減衰力制御手段と、
    前記後部座席に備えられたシートの硬さおよび高さのいずれかまたは両方を変化させるシート調整手段とを備え、
    前記後部座席への乗員の乗車が検出され、かつ、前記旋回が検出されたとき、前記減衰力制御手段は、旋回時に検出された車両状態量に応じて前記制御量を調整し、前記シート調整手段は、予め設定された前記後輪操舵装置を備えない車両における旋回時の前記車両状態量に基づき前記シートの硬さおよび高さのいずれかまたは両方を変化させることを特徴とする車両の制御装置。
  2. 車両の後部座席への乗員の乗車を検出する乗員検出手段と、
    前記車両の挙動にかかる車両状態量を検出する状態量検出手段と、
    前記車両状態量から前記車両の旋回を検出する旋回検出手段と、
    前記車両の前輪の転蛇角と車速とに基づいて左右の後輪の転蛇角を操舵する後輪操舵装置と、
    前記車体の懸架に供される減衰力可変ダンパの減衰力の制御量を調整する減衰力制御手段とを備え、
    前記後部座席への乗員の乗車が検出され、かつ、前記旋回が検出されたとき、前記減衰力制御手段が、旋回時に検出された車両状態量に応じて、予め設定された前記後輪操舵装置を備えない車両における旋回時の制御量に近づけるように前記制御量を調整することを特徴とする車両の制御装置。
  3. 前記後部座席に備えられたシートの硬さおよび高さのいずれかまたは両方を変化させるシート調整手段をさらに備え、
    前記後部座席への乗員の乗車が検出され、かつ、前記旋回が検出されたとき、前記シート調整手段は、旋回時に検出された車両状態量に応じて前記シートの硬さおよび高さのいずれかまたは両方を変化させることを特徴とする請求項2に記載の車両の制御装置。
  4. 前記シート調整手段は、予め設定された前記後輪操舵装置を備えない車両における旋回時の前記車両状態量に基づき前記シートの硬さおよび高さのいずれかまたは両方を変化させることを特徴とする請求項3に記載の車両の制御装置。
  5. 前記シート調整手段は、前記後部座席に予め設定された乗員の座席位置の両側に設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の制御装置。
  6. 前記車両状態量は、車速と、ヨーレートおよびロールレートのいずれか、もしくは、両方であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
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