JP5160008B2 - 超分極化造影剤を用いた温度またはpH値の生体内測定のためのMR法 - Google Patents
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Description
本発明は、磁気共鳴画像(MRI)法に関する。
【0002】
MRIは、非侵入性であり、診断中の患者をX線のような潜在的に有害な放射に曝すことがないため、医師にとって非常に魅力的な診断技術である。
【0003】
投与と生体内でのMR信号測定に先立って、核スピンがゼロではない核(例えば3He)を含む試薬の生体外における核スピン分極化を含む技術が開発されてきた。この種の技術には、投与可能なMRイメージング剤において核スピンがゼロではない核を生体外で核スピン分極化するために、分極化剤、例えば従来のOMRI造影剤または超分極化ガス、を使用するものがある。分極化剤とは、MRイメージング剤の生体外での分極の実施に適したすべての試薬を意味する。
【0004】
生体外での核スピン分極化を含むMRI法は、分子構造中に、均一な磁場でMR信号を放出できる核(例えば13Cまたは15NのようなMRイメージング核)であって、長いT1緩和時間、好ましくはこれに加えて長いT2緩和時間を示しうる核を含む核スピン分極化MRイメージング剤を用いることによって改善できる。このような試薬を、以下、「高T1剤」と呼ぶ。高T1剤は、1H2Oを含まない用語であり、一般には水溶性であり、37℃、磁場7TのD2O中で6秒以上、好ましくは8秒以上、より好ましくは10秒以上、さらに好ましくは15秒以上、よりさらに好ましくは30秒以上、特に好ましくは70秒以上、それ以上に好ましくは100秒以上のT1値を有する。MRイメージング核が自然の状態で最も豊富な同位体でなければ、高T1剤の分子は、その自然の同位体存在度よりも多い量のMRイメージング核を含むこと(即ち、上記核を「豊富化」したものであること)が好ましい。
【0005】
活性なMR核の超分極化は様々な方法、例えば、希ガスからの分極転移、または本出願人による過去に公開された出願に述べられた以下の方法のうちの1つ、「畜力(brute force)」(WO−A−99/35508)、ダイナミック核分極、即ちDNP(WO−A−98/58272)、パラ水素、即ちp−H2(WO−A−99/24080)、により実施できる。
【0006】
さらに、MRイメージングのようなMR分析における超分極化MR造影剤の使用には、従来のMR技術に対し、MR信号強度が比例する核分極化がMR装置における磁界強度と実質的に無関係という利点がある。現在、MRイメージング装置において得られる磁場は最大約8Tであるが、臨床上、MRイメージングイメージング装置は約0.2〜1.5Tの磁場強度で使用可能である。超電導磁石および複合磁性体が大容量高磁場磁石には必要とされるため、この磁石は高価なものとなる。超分極化造影剤を用いる場合は、磁場強度がそれほど重要ではないため、地球の磁場(40〜50μT)から達成しうる最高磁場までのすべての磁場でイメージを形成することが可能である。しかし、患者からのノイズが電子的なノイズよりも支配的になり始める超高磁場(一般に、イメージング核の共鳴周波数が1〜20MHzとなう磁場強度)を使用する利点は特にはないから、超分極化造影剤の使用により、低コストで低磁場強度の磁石を用いながらもパフォーマンスが高いイメージングを実施できる可能性はある。
【0007】
例えばWO−A−99/35508(ナイコムドイメージングAS)により、生理的に許容される溶剤に溶かし、引き続き超分極化溶液として調査中のサンプルに投与するに先立ち、MRイメージング剤(高T1剤)を、固体の状態で核スピン分極化できることが見出されている。さらに、この分極化を分極化剤を用いて行うときには、分極化剤の全部、実質的に全部、または少なくとも一部を、投与に先立って、MRイメージング剤から分離しておいてもよい。
【0008】
上記に開示したMRイメージング剤(高T1剤)をサンプルに投与し、そのサンプルを、イメージング中の選択された核において核スピン移動が励起されるように選択した周波数の放射に曝し、サンプルから磁気共鳴信号を検出することにより、その検出した信号から、イメージ、ダイナミックフローデータ、拡散データ、潅流データ、生理学的データ、または代謝データを得ることが可能となる。この生理学的データには、温度、pH,pO2、pCO2、およびイオン濃度、好ましくはpHおよび温度が含まれる。
【0009】
上記で述べた方法では、サンプル測定の間、測定されるべきBo場不均一性(Bo-field inhomogeneity)が必要になる(ここで、Boは初期磁場である)。ここでは、MRイメージング剤(高T1剤)を、同じ分子内に2つの超分極化核を含み、それぞれの超分極化核がpHや温度のようなパラメータに対して異なる感度を有しながらも、好ましくは同じ種のMRイメージング核であるように選択すると、「内部参照(internal reference)」が効果的に位相シフトとして現れ、Bo場不均一性を測定するためのセパレートフィールドマッピングスキャンが不要となることが見出された。
【0010】
従って、本発明の側面の一つからは、好ましくは人間または人間ではない動物(例えば、ほ乳類、は虫類、または鳥類)であるサンプルのMR測定方法であって、
(i)高T1剤であってその分子構造中にMRイメージング核として同じ型であって同様の信号振幅を有する少なくとも2つの超分極化可能核を同一分子内に含み、かつ上記核からの2つの共鳴線の周波数差δνが上記サンプルの温度、pH、pO 2 、pCO 2 、イオン濃度のいずれかに依存するMRイメージング剤を核スピン分極化する工程と、
(ii)上記核スピン分極化MRイメージング剤を上記サンプルに投与する工程と、
(iii)上記サンプルを、選択した核における核スピン転移を引き起こすように選択した周波数の放射に曝す工程と、
(iv)シフトしたデータ取得による単発RARE取得シーケンス(single-shot RARE acquisition sequence)を用いて上記サンプルから磁気共鳴信号を検出し、処理する工程と、を含み、
励起および検出の工程( iii )および( iv )において前記核がすべて同一のシーケンスで励起されて検出され、さらに
(v)場合によって、上記検出した信号から、イメージ、ダイナミックフローデータ、拡散データ、生理学的および/または代謝データを生成する工程、を含む測定方法が提供される。
【0011】
このように、本発明は、その分子構造にMRイメージング核として同じタイプであって同様の信号振幅を有する超分極化が可能な核を少なくとも2つ含み、かつ上記核からの2つの共鳴線の周波数差δνが上記サンプルの温度、pH、pO 2 、pCO 2 、イオン濃度のいずれかに依存するMRイメージング剤の核スピン分極化(ここでは「超分極化」(hyperpolarising)ともいう)と、核スピン分極化したMRイメージング剤(好ましくは溶液内で、さらに場合により細分化した粒子状で、また好ましくは分極化への移行に際して含まれる種の一部、より好ましくは実質的に全部、を欠く形態で)の、好ましくはボーラス注射による投与と、シフトしたデータ取得を伴う単発RARE取得シーケンスを用いた生体内でのMR信号の生成および測定の実施、という一連の工程を含む。こうして得たMR信号は、都合のよいことに、従来の処理により、フロー、拡散、生理学的または代謝データを含む2、3、または4次元データへと変換できる。
【0012】
ここでは、「超分極化(hyperpolarised)」は、室温および1Tにおいて、好ましくは0.1%、より好ましくは1%、さらに好ましくは10%を超える分極度への分極化を意味する。
【0013】
ここでは、「生理的に許容される溶剤(physiologically tolerable solvent)」は、例えば、水、生理食塩水のような水溶液、パーフルオロカーボンなどのように、人間、または人間ではない動物に許容されるすべての溶剤、溶剤混合物、または溶液を意味する。
【0014】
本発明の方法の工程(i)で示される周波数差は、Kもしくは0.1pH単位あたり0.5Hzよりも大きいことが好ましく、Kあたりもしくは0.1pH単位あたり1Hzよりも大きいことがさらに好ましく、Kあたりもしくは0.1pH単位あたり2Hzよりも大きいことがさらに好ましく、Kあたりもしくは0.1pH単位あたり5Hzよりも大きいことがさらに好ましく、Kあたりもしくは0.1pH単位あたり10Hzから50Hzであることが最も好ましい。
【0015】
温度およびpHの少ない干渉は完全には避けがたいが、この周波数差は、本来、温度またはpHに敏感である。
【0016】
本発明では、分極化剤の使用により分極化を達成できる。MRイメージング剤に核スピン分極をもたらす種は、分極の転移が一旦起これば、そのMRイメージング剤から可能な限り完全に分離することが好ましい。分極化転移剤の少なくとも80%を分離することが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上、を分離するとよい。
【0017】
本発明の方法の分離工程では、その組成物から分離化転移剤の実質的に全部を(または、少なくとも生理的に許容される程度にまで減少するように)できるだけ素早く分離することが望まれる。当該分野では多くの物理的、化学的分離法や抽出技術が知られており、これらを、分極化転移剤とMRイメージング剤とを素早くかつ効率的に分離するために用いることができる。
【0018】
上記のように、本発明による方法は、生理学的データ(pH、pO2、pCO2、温度またはイオン濃度)、好ましくはpHおよび温度データを得るために用いることができる。これらの好ましいデータは、他の従来の方法を経て得ることもできるが、これらの方法にはいくつかの欠点がある。可能な他の方法(および本発明の方法と比較した欠点)には、以下のものがある。
【0019】
−Mo磁化、T1緩和時間またはT2緩和時間の変化(低い感度/測定の精度も低い)
−拡散係数の変化(間接的方法/拡散係数は温度変化以外の理由により変化しうる/サンプルの動きに敏感)
−化学シフトを測定する局所的分光法(乏しい解像度/温度やpHのマッピングに不適)
−化学シフトイメージング(乏しい解像度/データ取得に時間を要する)
この分野での以前の特許には、NMRによる温度評価の可能性(例えば、US−A−4558279、US−A−5207222、US−A−5327884、US−A−5378987、US−A−5690909およびWO−A−97/20193参照)、NMRによるpH値の評価の可能性(例えば、US−A−5210290およびUS−A−5639906参照)、さらには両方の可能性(例えばUS−A−0095124)に言及したものがある。しかし、これら以前の特許は、ここでクレームしたように、2つの超分極可化能な核を含む超分極化MRイメージング剤をサンプルに投与し、引き続き、単発RARE取得シーケンスを用いて生体内でのMR信号の生成および測定を行う技術には言及していない。
【0020】
本発明による方法の工程(iv)は、スピンエコーシーケンスを含んでいる。例えば、NMR信号は、周波数差δνにより分離した2つの共鳴線を示す物質から生じうる(添付図面の図1を参照)。共鳴線の強度が同じであれば、共鳴線の相対的な相シフトは、信号の増幅および信号の完全相殺のいずれかを生じさせうる。この技術は、臨床的MRIで「相内/相外」技術("in-phase / out-of-phase" technique)として知られており、エコー時間(TE)により位相のずれを検出できるため、グラディエントエコーイメージング(gradient echo imaging)とともに用いられている。
【0021】
「相内/相外」技術によるイメージコントラストの程度は、2つのスピン群(spin populations)の間の位相の相対性に依存するが、絶対相には依存しない。従って、BO不均一性および/またはサンプルの動きのためにイメージを修正する必要はない。この技術のさらなる利点は、単一のイメージを経てコントラストが得られることにあり、それ故、本発明の方法が2つのイメージの間の温度差の測定に限られることはない。
【0022】
上述したように、BO不均一性のために修正する必要はないが、一般に、傾斜エコーイメージングは、例えば、腹部における、または足部近傍における磁化率(susceptibility)の変化への感度を欠点とする。この問題は、特に、周波数の相違が小さいまたは化学変化が小さい、即ちδνが小さいNMRラインを分離するときに必要とされるような、長いエコー時間を用いるときに顕著となる。ここでは、180°パルスの最焦点化を含むスピンエコーシーケンスを用いることにより、磁化率変化の感度の問題が緩和されることが見出された。従来は、180°パルスがスピンを再同期化し、化学シフト効果を解消するため、2つのスピン群の相の相違を検出するためにスピンエコーシーケンスを用いることはできなかった。この場合、データはスピンエコーと同時に取得される。しかし、読み出しの傾斜とデータの取得とをスピンエコーに対する時間τにより転置すれば、スピンエコーシーケンスを位相の相対的な差異を検出するために用いることができる。
【0024】
単一の90°RFパルスのみが用いられる単発RARE取得シーケンスは、本発明の方法において利用できる(添付図面の図3参照)。実際には、超分極化物質を用いると、縦方向の磁化が回復しないという事実により、複数の90°パルスを適用することはできない。従って、単発RAREシーケンスは、本発明による方法における超分極化物質の使用と全く矛盾がない。
【0025】
単発RAREシーケンスは、標準的なRAREシーケンスに基づくものであるが、以下、さらに詳細に説明することとする。文字は、添付図面の図3の文字に対応している。
【0026】
A)シフトデータの取得
シフトはパラメータτにより示される。このシフトは位相に敏感なイメージングに前もって必要である。
【0027】
B)単発RARE取得
単発技術は、非常に長いT1時間を有する物質のイメージング、例えば13Cイメージング、の実施を可能とする。ここに説明するスピンエコー技術は、磁化率の人為的結果(artefacts)を抑制する。
【0028】
C)データを取得しない特別の180°パルス
特別の180°パルスが、センタードフェーズエンコーディング(centred-phase encoding)との組み合わせにより、誘導エコーから生じる人為的結果を抑制する(ステップD参照)。
【0029】
D)センタードフェーズエンコーディング
エコー時間が長いときのT2緩和により相の一致が徐々に失われるという影響を最小化する。
【0030】
E)スピン作製
例えば13Cイメージングとともに用いるプロトンデカップリングによりいくらかの改善(急峻化するラインによる)がありうる。
【0031】
F)フリップバック
スキャン後に縦方向の磁化の一部を復活させる。これは、T1緩和時間が長く、それ故、信号ノイズ比を増加するために数回のスキャンを平均化するときに有用である。
【0032】
このシーケンスにおける新しい変更は、シフトデータ取得段階(A)にあり、これにより、位相に敏感な信号検出が可能となる。標準的なRAREまたはSEシーケンスでは、データ取得がシフトすることはなく、データはスピンエコーと同時に取得される。従って、上述したシーケンスは、本発明の別の側面を形成する。
【0033】
単発RARE取得シーケンスを選択すると超分極化物質のイメージングが可能となるが、イメージング原理自体は超分極化核が存在することを要しない。従って、本発明のさらに別の側面を形成するシーケンスは、すべての核スピンがゼロではない核(例えば1H、3Li、13C、15N、19F、29Siまたは31P)からの生理学的データ、特にpHおよび温度データ、を生成するために用いることができる。
【0034】
本発明の方法に用いることができる適切なMRイメージング剤は、以下の特徴を満たす。
−イメージング剤は、周波数差δνにより分離した2つの共鳴線を有する。
−周波数差δνは、好ましくは、サンプルの温度およびpHのいずれかに依存する。
−2つの共鳴線それぞれの信号強度は、同様、好ましくは同じである。
−イメージング剤は、好ましくは0.5秒を超える、より好ましくは1秒を超える、さらに好ましくは5秒を超える、長いT2緩和時間を示す。
【0035】
適切なMRイメージング剤は、例えば高T1剤であるが、プロトンのような核を含有していてもよい。しかし、他の核スピンがゼロではない核(例えば1Hと同様、19F、3Li、13C、15N、29Siまたは31P)、好ましくは1H、13C、15N、19F、29Siおよび31P核、も有用であり、特に13C、15N、19Fおよび31P核が好ましい。この場合、イメージが生成されるMR信号は、実質的に、MRイメージング剤それ自体のみから生成される。
【0036】
上述したように、1H、13C、15N、19F、および31Pは、本発明の方法における使用に最も適した核である。1H核は、自然に豊富で高い濃度で存在し、すべての核のなかで最高の感度を有するという利点がある。13C核は、この核からのほとんどすべての信号が、生理学的データ、特に温度およびpHのデータ、の生成に有用な超分極化共鳴線からとなるために、利点がある。超分極化13C核からの信号のバックグラウンドは小さく、例えば1H核からのものよりもずっと小さい。19F核は、高い感度(例えば1H核の感度の88%)を有し、1H核の94%の磁気回転比を有し、バックグラウンド信号が生じない。
【0037】
MRイメージング核がプロトン以外である場合(例えば、13C、19Fおよび15Nである場合)には、バックグラウンド信号からの干渉は実質的になく(例えば自然に存在する13Cおよび15Nは無視できる)、イメージコントラストが高くなって有利である。これは、MRイメージング核それ自体が、当該MRイメージング核の自然存在度よりも豊富化されているときに特に顕著となる。従って、本発明による方法は、生成されるイメージに重要な空間的重み付けを提供できるという利点を有する。
【0038】
一実施形態では、本発明による方法により得たイメージに重ねて立体的な(例えば解剖学上の)情報を得るために、サンプル(例えば身体)の「元来のイメージ(native image)」(即ち、MRイメージング剤の投与に先立って得たもの、または従来のMR測定におけるように前もっての分極化なしに投与したMRイメージング剤について得たもの)を生成させてもよい。「元来のイメージ」は、13Cおよび15Nの身体内での存在率が低いために、13Cまたは15Nがイメージング核となっている場合には、通常、利用できない。この場合は、13Cまたは15Nのイメージを重ねる解剖学的な情報を得るために、プロトンMRイメージを採用してもよい。
【0039】
勿論、MRイメージング剤は、サンプルが生体である場合には、生理的に許容されるか、あるいは、生理学的に許容される投与可能形態で提供されなければならない。好ましいMRイメージング剤は、水性媒体(例えば水)に溶解し、目的とする最終用途が生体内でのものである場合には、勿論、無毒のものである。
【0040】
都合のよいことに、MRイメージング剤は、一度分極化すると、イメージング処理をゆったりとした時間をかけて行うことができる程度に十分に長い期間、存続する。一般に、MRイメージング剤が、5秒以上、好ましくは10秒以上、さらに好ましくは30秒以上、よりさらに好ましくは70秒以上、特に好ましくは100秒以上(例えば、1Tの水中37℃、濃度が1mM以上での値)のT1値(0.01〜5Tの磁場強度および20〜40℃の温度での値)を有すれば、投与形態(例えば注射液)におけるMRイメージング剤は、十分な分極化を維持するであろう。MRイメージング剤は、長いT2緩和時間を有する試薬であると有利である。
【0041】
これに代えて、T2値が、対象とする生理学的データに敏感であってもよい。
【0042】
固体のMRイメージング剤(例えば13Cまたは15N豊富化固体)は、非常に長いT1緩和時間を示し得るため、本方法における使用に特に好ましい。
【0043】
生体内での使用については、分極化した固体MRイメージング剤が投与可能な媒体(例えば、水または生理食塩水)に溶かされ、患者に投与され、従来のMRイメージングが行われる。従って、固体のMRイメージング剤は、投与可能な媒体への処方の容易のために、素早く溶解する(例えば水溶性)ことが好ましい。MRイメージング剤は、生理的に許容されるキャリア(例えば、水、またはリンゲル液)に、少なくとも1mMの濃度までは、1mM/3T1以上、好ましくは1mM/2T1以上、特に好ましくは1mM/T1以上の速度で溶解することが好ましい。固体MRイメージング剤が凍っている場合には、投与可能な媒体を、好ましくは混合後の媒体の温度が37℃近くにまでなるように、加熱してもよい。
【0044】
分極化MRイメージング剤は、液体の状態で(単独でまたは追加のMRイメージング剤のような追加成分とともに)投与してもよい。液体の媒体では、気体の媒体と比較して、分極が非常によく保持される。従って、液体については通常T1およびT2が短いけれども、拡散によるT2 *効果は液体にとっては105倍だけ重要ではない。
【0045】
MRイメージング剤は、長いT1緩和時間を有する核(例えば15Nおよび/または13C核)が豊富化されていることが好ましい。好ましいのは、自然存在度、即ち例えば約1%、を超える量の13Cを、2つの特定の位置において(豊富化の程度がほぼ同じであるように)有する13C豊富化MRイメージング剤である。これらの炭素の位置では、5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは25%以上、特に好ましくは50%以上、よりさらに好ましくは99%(例えば99.9%)を超える13Cが存在することが好ましい。13C核は、化合物におけるすべての炭素原子の2%を超える量であることが好ましい。MRイメージング剤は、カルボニル基または所定の第4級炭素における13C核が典型的には2秒を超える、好ましくは5秒を超える、特に好ましくは30秒を超える、T1緩和時間を有しうるのであれば、カルボニル基または第4級炭素の位置において13Cが豊富化されていることが好ましい。13C豊富化化合物は、特に13C核に隣接して、重水素でラベリングするとよい。
【0046】
好ましい13C豊富化化合物は、13C核が、1またはそれ以上の、O、S,CのようなMR非活性核または二重結合により囲まれているものが好ましい。
【0047】
さらに別の側面から、本発明は、サンプルのMR測定方法であって、MRイメージング剤を核スピン分極することにより形成した核スピン分極化MRイメージング剤を予め投与する方法を提供する。ここで、上記イメージング剤は、高T1剤であって、その分子構造中にMRイメージング剤として同じ型であって同様の信号振幅を有する少なくとも2つの超分極化可能核を同じ分子内に含み、上記核からの2つの共鳴線の周波数差δνが上記サンプルの温度、pH、pO 2 、pCO 2 、イオン濃度のいずれかに依存する。上記方法は、
i)上記サンプルを、選択した核において核スピン転移が引き起こされるように選択した周波数の放射に曝す工程と、
(ii)シフトしたデータ取得による単発RARE取得シークエンスを用いて上記サンプルから磁性共鳴信号を検出し、処理する工程と、を含み、
励起および検出の工程 iii )および iv )において前記核がすべて同一のシーケンスで励起されて検出され、さらに
(iii)場合によって、イメージ、ダイナミックフローデータ、生理学的および/または代謝データを、上記サンプルから生成する工程、
を含んでいる。
【0050】
本発明による方法では、達成される超分極化は、MRイメージング剤の超分極化溶液が、引き続いて如何なる形態でサンプルに投与されようと、そのサンプルにおいて診断に有効なコントラストの増強を達成できるに十分な程度であるべきである。一般に、分極化の程度は、MRIが行われる温度および磁場での平衡値よりも少なくとも2倍以上、好ましくは10倍以上、より好ましくは100倍以上、さらに好ましくは1000倍以上、例えば50000倍以上、とすることが好ましい。
【0051】
本発明の方法において使用されるMRイメージング剤は、都合のよいことに、従来の調剤、獣医学上のキャリアまたは賦形剤に処方できる。
【0052】
生体内でのイメージングに使用するためには、処方は、実質的に等浸透圧であることが好ましいが、イメージングゾーンにおけるMRイメージング剤の濃度が1マイクロモル濃度から10Mとなるに足りる濃度で投与するとよい。しかし、正確な濃度および投薬量が、有毒性、MRイメージング剤の臓器ターゲッティング能力および投与の経路に依存することは勿論である。
【0053】
非経口の投与形態では、勿論、無菌であって生理的に受け入れられない薬剤が除外されているべきであり、投与に際して刺激や他の有害な効果を最小化するためには低い浸透性を有するべきなので、処方は、等浸透圧またはわずかに高い浸透圧とするとよい。
【0054】
MRイメージング剤を注射する場合には、分極化が緩和して消失する前に、脈管の樹脂状分岐のより大きい範囲が視認できるように、一連の投与位置に同時に注射するとよい。
【0055】
本発明の方法により用いるMRイメージング剤の投与量は、用いるMRイメージング剤、対象とする組織または器官、および測定機器の正確な特性により変化することになる。投与量は、検出可能なコントラスト効果を達成できる限りにおいて、できるだけ少量に保持することが好ましい。一般に、投与の最大量は、毒性による制限に依存するであろう。
【0056】
ここで参照したすべての公報の内容を、参照のため、ここに組み込むこととする。
【0057】
本発明は、以下の非制限的な実施例と添付する図面を参照して例示される。
[実施例1]
図3に示したRAREシーケンスを用い、水と酢酸との混合物から仮想体のイメージを得た。得たイメージを図4に示す。図4上部左のイメージは、16の平均およびτ=0msを用いて作成した。信号−ノイズ比はスキャンタイム1分について260であった。すべての管が同じコントラストを有している。図4上部右のイメージは、16の平均およびτ=1msを用いて作成した。信号−ノイズ比はスキャンタイム1分について240であった。最も暗い管は50%の水と50%の酢酸とを含んでおり、この管からの信号はほぼ完全にキャンセルされていた。図4下部左のイメージは単発イメージ(スキャンタイム0.6秒)およびτ=0msを用いて作成した。信号−ノイズ比は80であった。すべての管が同じコントラストを有している。図4下部右のイメージは、単発イメージ(スキャンタイム0.6秒)およびτ=1msを用いて作成した。信号−ノイズ比はスキャンタイム1分について85であった。最も暗い管は50%の水と50%の酢酸とを含んでいる。
[実施例2]
50%の水と50%のアセトンとの混合物を含む2つの別の仮想体を調製した。1つの仮想体は17℃に保持した磁石の内部に設置し、他方は7℃に冷却した。冷却した仮想体を磁石の内部に設置し、2番目の仮想体を冷却器から取り出して2分後から2つの仮想体のイメージングを開始した。図5A左側の冷却した仮想体では強度が低くなっている。図5B〜Fは、すべて、5分間ごとに連続して、即ち、冷却器から取り出してから7,12,17,22,27分後にそれぞれ得た。一定の温度である右手の仮想体は、すべてのイメージを通して一定の強度で明るいのに対し、冷却した仮想体からの強度は、時間と共に暖まるにつれて増加している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、周波数差δνで分離した2つの共鳴線を示す物質からのNMR信号を示す。
【図2】 (削除)
【図3】 図3は、本発明による方法で使用される単発RAREシーケンスを示す。
【図4】 図4は、図3に示したRAREシーケンスを用いたときの水と酢酸との混合物についての仮想体(phantom)のイメージのいくつかの例である。
【図5】 図5は、時間を経過して冷えたサンプルからの仮想体のイメージの例である。
Claims (6)
- 核スピン分極化されたMRイメージング剤が予め投与されているサンプルのMR測定方法であって、上記MRイメージング剤が、高T1剤であってその分子構造中に少なくとも2つの超分極化可能な核を同一分子内に有し、前記核からの2つの共鳴線の間の周波数差δνが前記サンプルの温度及びpHのいずれかに依存するものであり、当該方法が、
(i)前記サンプルに向けて、スピン分極核で核スピン転移が起こるように選択した周波数の放射を発信する工程と、
(ii)データ取得をシフトさせたシングルショットRARE取得シーケンスを用いて、前記サンプルからの磁気共鳴信号を検出し、処理する工程と
を含んでいて、前記工程(i)及び(ii)において前記核のすべてが同一のシーケンスで励起され、検出される、測定方法。 - 前記核が2つの13C核である、請求項1記載の測定方法。
- 前記高T1剤が、37℃、磁場7TのD2O中で、少なくとも6秒のT1値を有する、請求項1又は請求項2記載の測定方法。
- 工程(i)における周波数差が、K又は0.1pH単位当たり0.5Hzよりも大きい、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の測定方法。
- 前記MRイメージング剤が、自然存在量を超える量の13C核を2つの特定の位置に含み、前記13C核の量が前記イメージング剤の全炭素原子の2%を超える、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の測定方法。
- 高T1剤であってその分子構造中に少なくとも2つの超分極化可能な核を同一分子内に有し、前記核からの2つの共鳴線の間の周波数差δνが前記サンプルの温度及びpHのいずれかに依存するMRイメージング剤であって、
(i)核スピン分極化された前記MRイメージング剤が予め投与されている前記サンプルに向けて、スピン分極核で核スピン転移が起こるように選択した周波数の放射を発信する工程と、
(ii)データ取得をシフトさせたシングルショットRARE取得シーケンスを用いて、前記サンプルからの磁気共鳴信号を検出し、処理する工程と
を含み、前記工程(i)及び(ii)において前記核のすべてが同一のシーケンスで励起され、検出されるサンプルのMR測定方法に使用される、MRイメージング剤。
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