JP3735450B2 - 磁気共鳴診断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気共鳴現象を利用して被検体内部の物理状態、特に、被検体内部の温度分布を取得し、これを表示することによって、温熱障害が発現する疾病の診断が可能な磁気共鳴診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にはMRI(Magnetic Resonance Imaging)と略称される磁気共鳴診断装置によって、X線コンピュータ断層撮影では描出が困難であった病変をも診断可能としている。しかし、診断は主に得られる形態画像を基に行われるため、疾病によっては、病状が悪化した重篤な状態で初めて病変部が検出される例も珍しくない。
【0003】
これに対して、最近、MRIを用いて生体内の機能画像、代謝画像を得ようとする試みが行われている。脳機能を評価するために、刺激に伴う脳血流の変化を検出する脳機能MRIはその最たる例であり、また、拡散強調画像により、虚血性疾患の早期診断が試みられている。
【0004】
一方、生体内の温度は多くの生理機能を反映しているため、温度を非侵襲的に計測することにより、疾病が早期に診断できる可能性が指摘されている。血行障害、疼痛、炎症性疾患はもとより、腫瘍によって生体内の温度分布が正常状態と異なるため、通常のMRI等で取得される形態画像を用いた診断に比べ、早期に疾病を診断できる可能性がある。
【0005】
生体内の温度変化を非侵襲に計測するために、種々の画像計測法が試みられている。X線コンピュータ断層撮影、超音波診断、マイクロ波診断、さらにはMRIで計測できる温度依存パラメータとして、緩和時間、拡散係数を用いた方法が提案されている。しかし、これらの方法で計測される物理パラメータの温度依存性が物質によって異なることから、正確な温度分布を取得することが困難であることが示されている。
【0006】
最近、MRIで計測できる温度依存パラメータとして、特定の分子内の核種の共鳴周波数が温度によって変化する性質があり、この性質を利用して温度を計測する技術が注目されている。特に、水分子のプロトンの共鳴周波数は、温度に依存して、摂氏1度あたり、“−0.01ppm”変化することが確認されており、この温度依存性を利用して温度分布を計測する技術が、物質毎の温度校正曲線を予め取得しておく必要がないため実用性を備えた方法として報告されている(Y.Ishihara et al,Proc.11th Ann.Sientific Meeting SMRM,4803,1992)。また、生体は、約60パーセントの水から構成されているため信号の検出感度の点からも有利である。
【0007】
この方法は、温度に依存して共鳴周波数が変化すると、この変化が位相変化として保存されることを利用して、例えば、図8に示されたFE(フィールドエコー)法のパルスシーケンスを用いて、温度変化過程の中で別時刻に収集された2枚の位相画像θ(r) の画素ごとの位相差に基づいて、変動温度の空間分布ΔT(r) を次式に従って算出する。なお、rを空間ベクトル、αを水プロトンの共鳴周波数の温度依存性、γを核磁気回転比、τをエコー時間、B0 を静磁場強度とする。
【0008】
Figure 0003735450
このような変動温度を取得する方法は、特願平8−80290号公報にも記載されているように、温熱負荷を加えた場合の温度変化をもとに疾病を診断する場合や、温熱療法を行う際の温度モニタとしては非常に有用である。
【0009】
しかし、水プロトンの位相は、温度の変動だけで変化するわけでなく、局所的な磁場不均一性等の温度以外の様々な影響を受けて変化する。従って、水分子のプロトンの時間的な位相変化しか検出することができないため、ある時刻からの相対的な温度変化、つまり温度が何度上昇したか、あるいは何度下降したかという情報しか計測することしかできなかった。
【0010】
すなわち、2枚の位相画像θ(r) の位相差には、温度依存性による位相変化分だけでなく、磁場不均一性等による位相変化分も加算されている。このため、上記のような相対的な温度の変動分だけしか計測することができず、つまり絶対温度を計測することはできず、もともと生体内で炎症を呈していたり、体温異常を生じている部分を生体温度から直接検出して病変部位を同定することができなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、被検体内部の絶対温度を計測できる磁気共鳴診断装置の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、静磁場中におかれた被検体に、第1のRFパルスを印加して、温度に依存して共鳴周波数の差が変化する2種類の分子内の特定核種の磁化、あるいは2つ以上のサイトを持つ1分子内の特定核種の磁化を励起し、続いて、前記第1のRFパルスから所定時間後に第2のRFパルスを印加して、前記励起された磁化の位相の進み遅れを反転し、前記反転された磁化から磁気共鳴信号を検出する磁気共鳴診断装置において、前記第1のRFパルスから前記所定時間後の基準時刻に対して、前記第2のRFパルスの印加時刻を変化させて、一方の分子、あるいは1分子内の1つのサイトの特定核種の磁化の位相と、他方の分子、あるいは1分子内の他のもう1つのサイトの特定核種の磁化の位相とが揃う、又は反転する特定の状態で前記磁気共鳴信号が得られる場所を特定することにより、絶対温度の空間分布を生成する。
【0013】
また、本発明は、静磁場中におかれた被検体に、第1のRFパルスを印加して、温度に依存して共鳴周波数の差が変化する2種類の分子内の特定核種の磁化、あるいは2つ以上のサイトを持つ1分子内の特定核種の磁化を励起し、続いて、前記第1のRFパルスから所定時間後に第2のRFパルスを印加して、前記励起された磁化の位相の進み遅れを反転し、前記反転された磁化から磁気共鳴信号を検出する磁気共鳴診断装置において、前記第1のRFパルスから前記所定時間後の基準時刻に対して、前記磁気共鳴信号を検出する時刻を変化させて、一方の分子、あるいは1分子内の1つのサイトの特定核種の磁化の位相と、他方の分子、あるいは1分子内の他のもう1つのサイトの特定核種の磁化の位相とが揃う、又は反転する特定の状態で前記磁気共鳴信号が得られる場所を特定することにより、絶対温度の空間分布を生成する。
【0014】
さらに、本発明は、静磁場中におかれた被検体に第1のRFパルスを印加して、温度に依存して共鳴周波数の差が変化する2種類の分子内の特定核種の磁化、あるいは2つ以上のサイトを持つ1分子内の特定核種の磁化を励起し、続いて、前記第1のRFパルスから時間τ後に第2のRFパルスを印加して、前記励起された磁化の位相の進み遅れを反転し、そして前記第1のRFパルスから2・τ後に前記反転された磁化から磁気共鳴信号を検出する実行する磁気共鳴診断装置において、前記第1のRFパルスから時間τ後の基準時刻に対して前記第2のRFパルスの印加時刻を順次変化させながら磁気共鳴信号を繰り返し検出し、一方の分子、あるいは1分子内の1つのサイトの特定核種の磁化の位相と、他方の分子、あるいは1分子内の他のもう1つのサイトの特定核種の磁化の位相とが2・τの時刻に揃う又は反転する特定の状態で、磁気共鳴信号が得られたときの前記基準時刻と前記第2のRFパルスの印加時刻との時間差に基づいて、絶対温度を計算する。
(作用)
2種類の分子内の特定核種、あるいは1分子内の2つ以上のサイトの特定核種の磁化の間の共鳴周波数の差は、温度に依存して変化する。この変化は既知であり、特定温度に応じた共鳴周波数の差に従って、基準時刻と第2のRFパルスの印加時刻との間に適当な時間差を与えておく。この時間差を与えた状態で、2・τのエコー時間に得られる信号を見ると、特定温度にある場所だけが、共鳴周波数の差による位相差が補償されて、2種類の分子内の特定核種、あるいは1分子内の2つ以上のサイトの特定核種の磁化の位相は揃う又は反転する特定の状態、つまり磁気共鳴信号が最大又は最小値を示す状態になっている。従って当該状態にある場所が、予め適当に設定した基準時刻と第2のRFパルスの印加時刻との時間差に応じた絶対温度にあることを判断することができる。もちろん、ここでは2種類の分子内の特定核種の間の位相差を扱っており、2種類の分子は同じ場所に在り、局所的な磁場不均一性による位相ズレを同じように受けるので、この影響を受けることもない。
【0015】
また、これとは逆に、基準時刻と第2のRFパルスの印加時刻との時間差を変えながら磁気共鳴信号を収集しておき、この信号が最大又は最小値を示すときの時間差を特定し、この特定した時間差から絶対温度を計算するようにしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に関わる磁気共鳴診断装置の構成を示すブロック図である。同図において、静磁場磁石1とその内側に設けられた勾配コイル2及びシムコイル4により、図示しない被検体に一様な静磁場とそれと同一方向で互いに直交するx,y,z三方向に線形勾配磁場分布を持つ勾配磁場が印加される。勾配コイル2は、勾配コイル電源5により駆動され、シムコイル4はシムコイル電源6により駆動される。勾配コイル2の内側に設けられたプローブコイル3は、送信部7から、高周波信号が供給されることによって被検体に高周波磁場パルス(以下、RFパルスと略す)を印加し、被検体からの磁気共鳴信号を受信する。プローブコイル3は送受両用でも、送受別々に設けても良い。プローブコイル3で受信された磁気共鳴信号は、受信部9で検波された後、データ収集部12に転送され、ここでA/D変換されてから計算機システム13に送られ、データ処理がなされる。
【0017】
以上の勾配コイル電源5、シムコイル電源6、送信部7、受信部9、およびデータ収集部12は、全てシーケンス制御部11によって制御され、またシーケンス制御部11は計算機システム13によって制御される。計算機システム13はコンソール14からの指令により制御される。データ収集部12から計算機システム13に入力された磁気共鳴信号に基づいて、絶対温度の空間的分布(絶対温度画像)が生成される。この絶対温度画像データはディスプレイ15に送られ、表示される。
【0018】
次に絶対温度の空間的分布を生成するための処理について説明する。まず、前提条件として、特定核種、ここでは 1H(プロトン)を対象原子核として選定する。この 1Hは、様々な分子に含まれており、生体内の存在量の絶対的に多い水分子と脂肪分子にも当然含まれている。また、この 1Hの共鳴周波数は、分子の化学的性質に応じて変化する。これは周知の通り、化学シフトと呼ばれている現象である。この化学シフトによって、水分子内の 1Hの共鳴周波数と、脂肪分子内の 1Hの共鳴周波数とは、定常状態で、3.5ppm程度相違する。このような共鳴周波数の差は、温度に依存して変化する。これは、脂肪分子内の 1Hの共鳴周波数は、温度依存性を示さないが、水分子内の 1Hの共鳴周波数は、温度依存性を示すことに起因している。具体的には、水分子の 1Hが水素結合を持つため、共鳴周波数は温度依存性を示すのに対して、脂肪のCH2 基は水素結合を持たないため温度依存性を持たない。両者の温度依存性による共鳴周波数の差は、−0.01(ppm/摂氏1度)であることが報告されている。例えば、水分子内の 1Hの共鳴周波数と、脂肪分子内の 1Hの共鳴周波数との差は、摂氏35度では、3.3ppmになる。
【0019】
以下に、このような既知の前提条件を活用して、絶対温度を計測する方法を具体的に説明する。図2には、一般的、ここでは基準とするスピンエコー法のパルスシーケンスを示している。図3にこの基準的なスピンエコー法のパルスシーケンスによるスピンの挙動変化を示している。スピンエコー法は、周知の通り、まず、フリップ角が90゜のRFパルスで、目的スライス内の 1Hのスピンを90゜倒して、横磁化を生じさせて、励起状態にする。そして、この90゜パルスからτ1 時間後(この90゜パルスからτ1 時間後の時刻を“基準時刻”と称する)に、180゜パルスを印加して、スピンの進み遅れを反転させて、90゜パルスから、2・τ1 時間後(この90゜パルスから2・τ1 時間後の時刻を“エコー時間”と称する)に、スピンエコーを発生させる、つまり、巨視的には、磁場の不均一によるスピンのばらつきが元の揃った復帰し、また微視的には、水分子内の 1Hのスピン位相と脂肪分子内の 1Hのスピン位相とが揃った状態で、磁気共鳴信号が最大値で発生するというものである。
【0020】
このようなスピンエコー法のパルスシーケンスの中の180゜パルスの印加時刻を、図4に示すように、基準時刻τ1 からΔτだけずらすと、基準シーケンスのエコー時間(2・τ1 )では、水分子内の 1Hの共鳴周波数と、脂肪分子内の 1Hの共鳴周波数との違いに応じて、両者のスピン位相は、ずれてしまう(図5)。本実施形態は、このような位相ズレが起こる現象を積極的に利用して、絶対温度を計測しようとするものである。
【0021】
次に、本実施形態による絶対温度の計測方法について、図6を参照して、具体的に説明する。まず、場所(r)における、水分子内の 1Hの共鳴周波数と、脂肪分子内の 1Hの共鳴周波数との差を、Δδ(T(r))ppmと表記するものとする。なお、理解を容易にするために、対象とする 1Hから生じる磁気共鳴信号の中で、水と脂肪分子からの信号成分が支配的であると仮定する。すると、上述したように、基準的なシーケンスでは、エコー時間(2・τ1 )には、両磁化ともに再集束しスピンエコーを発生する。信号取得を2τ1 時間を中心に行うと、観測される信号は、次の(1)式のように表現される。なお、T(r) を温度分布、Mを検出信号の振幅値、MA を水分子に関する検出信号の振幅値、MB を脂肪分子に関する検出信号の振幅値とする。
【0022】
M(T(r) )=MA (T(r) )+MB (T(r) ) …(1)
次に、図3に示したように、180゜パルスの印加時刻を基準時刻からずらした場合、エコー時間(2・τ1 )で再集束せずに、磁場の不均一性だけでなく、両者の共鳴周波数差と2・Δτとの積に応じた位相だけシフトされて検出され、次の(2)式のように表現される。なお、φ(T(r) )を検出信号の位相、φB (T(r) )=γ・Δδ(T(r) )・2・Δτ・B0 、φF (r) =γ・ΔF(r) ・2・Δτ・B0 とする。
【0023】
Figure 0003735450
この(2)式から、φB (T(r))が2πの整数倍をとる点(場所)r0 では、観測される信号値の絶対値は、両者の位相が揃った状態で観測される(1)式で表した信号値の絶対値と略同一となり、次の(3)式で与えられる。なお、φF (r) =γ・ΔF(r) ・2・Δτ・B0 とする。
【0024】
Figure 0003735450
従って、その点r0 における共鳴周波数差は、次の(4)式で与えられる。なお、Δδ(T(r0 ) )=2π/(γ・2・Δτ・B0 )である。n=1,2,・・(1以上の整数)である。
【0025】
γ・Δδ(T(r0 ) )・Δτ・B0 =2・π・n …(4)
上述したように、水と脂肪分子の 1Hの共鳴周波数差の温度依存性は既知であるので、点r0 における温度を、次に(5)式で算出することができる。なお、αを化学シフト温度依存性(ppm/摂氏1度)とする。
【0026】
T(r0 )=Δδ(T(r0 ))/α …(5)
図4のパルスシーケンスによって得られた信号値が、基準的シーケンスで位相の揃った状態で得られる信号値と略同じになるのは、(4)式の条件を満たす場合のみであるが、全ての点で(4)式を満たすのは、各点の温度が同一であり、かつ、静磁場の不均一性が無い場合のみである。発明者が算出したいのは各点の絶対温度である。
【0027】
従って、特定温度に応じた共鳴周波数の差に従って、基準時刻と180゜パルスの印加時刻との間のズレ時間Δτを適切に与えておき、この時間差を与えた状態で、2・τのエコー時間に得られる信号を見ると、特定温度にある場所だけが、共鳴周波数の差による位相差が補償されて、2種類の分子内の特定核種の位相は揃う状態、つまり磁気共鳴信号が最大値を示す状態になっている。従って当該状態にある点が、予め適当に設定したΔτに応じた絶対温度にあることを判断することができる。
【0028】
もちろん、ここでは水と脂肪分子内の 1Hの間の位相差を扱っており、これらは同じ場所に在り、局所的な磁場不均一性による位相ズレを同じように受けるので、この影響を受けることもない。
【0029】
ところで、効率的に絶対温度分布を計測するには、Δτを変化させてパルスシーケンスを実行する回数を減じることが必要である。このため、計測したい絶対温度の必要な分解能、ならびに、取得可能な画像S/Nを考慮してΔτを変化させる割合、回数を決定することが必要となる。
【0030】
例えば、上述したように、水と脂肪との間の共鳴周波数差は、摂氏35度では約3.30(ppm)に変化する。従って、1.5テスラの磁石を用いた場合に、Δτを4.74(ms)に設定すると、180゜パルスの印加時刻を基準時刻からずらしたにも関わらず、両者の位相が揃って、最大値に近いレベルで磁気共鳴信号が発生する場所が存在する。この場所こそが、摂氏35度の場所であると推定できるる。
【0031】
ここで、温度分解能として、摂氏1度刻みで温度画像を得たい場合、摂氏36度となる場所をスライス内から抽出したい場合には、Δτを4.73(ms)に設定することで可能である。
【0032】
なお、上述の説明では、Δτを適当に与えて、水分子の 1Hのスピン位相と脂肪分子の 1Hのスピン位相とが揃う状態の場所をΔτに応じた絶対温度であると特定したが、特定温度の点で両者の位相が反転する(逆向きになる)、つまり、φB (T(r))がπの奇数倍をとるようにΔτを与えておけば、与えたΔτに応じた絶対温度の点からの磁気共鳴信号は、両者が打ち消しあって、最小となるため、これに基づいて与えたΔτに応じた絶対温度の点を抽出することができる。
【0033】
また、これまでの説明では、エコーを観測する中心時刻2τ1 を固定とし、180度パルスの印加時刻をΔτずらすことで温度を検出する方法を示してきたが、基準時刻を一定として、エコーを観測する中心時刻をずらせても、相対的には同様の効果が観測されるので、そのようなパルスシーケンスを用いることもできる。
【0034】
なお、実際には、図2,4のシーケンスで得られる信号値は、緩和時間等の影響により微妙に異なるため、図2の基準的シーケンスで得られる信号値(最大値)との比較では、予定した絶対温度の点の抽出精度が若干低下するおそれがある。これを回避するような方法を次に説明する。
【0035】
図7にこの方法の手順を示している。この方法では、Δτを、微小な刻み時間τd ずつ変化させながら、図4のシーケンスを繰り返し実行し、これによりΔτの変化に対する磁気共鳴信号の信号値を点(画素)ごとに収集し、これを補間や曲線近似やスムージング手法をなめらかな変化曲線にしてからその中で信号値が最大(又は最小)となるΔτをピックアップし、このピックアップしたΔτから、各点の絶対温度を計算することができる。この方法は、画像S/Nが劣化する場合には温度推定精度が、先に説明した方法よりも統計的に有利になる。
【0036】
尚、絶対温度計測の精度を向上するには、上記信号が最大となるΔτmax から信号が最小となるΔτmin の間で、τd を時間を順次変化させた複数のパルスシーケンスを実行することが望ましい。
【0037】
このように水と脂肪を使って、絶対温度を計測したが、生体内の水と、脂肪が同一計測対象内(同一画素)に含まれる場合には、これまでの議論を用いて絶対温度が計測可能である。しかし、計測対象部位によっては水と脂肪が同一画素内から検出することが困難である場合がある。このような場合には、水分子と脂肪分子との混合物質を体外から投与することにより対処可能である。その例として、口腔、食道、胃内の温度を計測することが考えられる。この場合、水と脂肪を臓器内に均一に分布させたいのであるが、脂肪が疎水性であることから、水と脂肪とを分離した状態で投与した場合には必ずしも同一画素に両者を分布させることが困難である。そこで、水と脂肪とを乳化させたエマルションを体外から投与することが考えられる。このようなエマルションには、油が水中に分散したもの、水が油中に分散したものがあり、近年では、0.1μm以下のマイクロエマルションが開発され、静脈注射液として体内へ投与することも可能となっている。このため、エマルションが到達可能な臓器であれば絶対温度を計測することが可能である。例えば、このようなエマルションとして、マヨネーズ等の食用物質を胃へ投与すれば、胃内の温度を計測することが可能となる。このような状況の下で、温度を計測すれば、胃内の炎症、腫瘍等の発現有無を検査することができる。
【0038】
このような温熱異常疾患の検査には、上記の水と脂肪の他、1分子内のあるサイト、例えば水酸基、と、CH3 基、あるいは、CH2 基を持ち、かつ、生体に悪影響を及ぼさない物質であればこれらの物質中の水酸基とCH2 基等との化学シフト差を利用して上記の如く絶対温度計測が可能となる。
【0039】
また、本実施形態は、スピンエコー法を基にした全てのパルスシーケンスを利用して絶対温度を計測することができる。Δτを種々変化させてパルスシーケンスを実行する必要があるため、特に、EPI(エコープレナーイメージング)、FSE(高速スピンエコー)法を応用したパルスシーケンスが有効である。
本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0040】
【発明の効果】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。2種類の分子間で、あるいは1分子内の2つのサイト間で特定核種の共鳴周波数の差が、温度に依存して変化するものがある。この変化は既知であり、特定温度に応じた共鳴周波数の差に従って、基準時刻と第2のRFパルスの印加時刻との間に適当な時間差を与えておく。この時間差を与えた状態で、2・τのエコー時間に得られる信号を見ると、特定温度にある場所だけが、共鳴周波数の差が補償されて、2種類の分子間で、あるいは1分子内の2つのサイト間で特定核種の位相は揃う又は反転する特定の状態、つまり磁気共鳴信号が最大又は最小値になっている。これに従って当該状態にある場所が、予め適当に設定した基準時刻と第2のRFパルスの印加時刻との時間差に応じた絶対温度にあることを判断することができる。もちろん、ここでは2種類の分子間で、あるいは1分子内の2つのサイト間で特定核種の間の位相差を扱っており、2種類の分子あるいは1分子内の2つのサイトは同じ場所に在り、局所的な磁場不均一性による位相ズレを同じように受けるので、この影響を受けることもない。
【0041】
また、これとは逆に、基準時刻と第2のRFパルスの印加時刻との時間差を変えながら磁気共鳴信号を収集しておき、この信号が最大又は最小値を示すときの時間差を特定し、この特定した時間差から絶対温度を計算するようにしてもよい。
このように絶対温度を計測することができるため、生体内の体温異常に基づく疾患、例えば、炎症性疾患、腫瘍等を早期に診断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気共鳴診断装置の構成を示すブロック図。
【図2】基準的なスピンエコーシーケンスを示す図。
【図3】図2の基準的なパルスシーケンスによる水と脂肪の各磁化の挙動を示す図。
【図4】特定温度の場所を特定するために、180゜パルスの印加時刻が変化されたスピンエコーシーケンスを示す図。
【図5】図4のパルスシーケンスによる水と脂肪の各磁化の挙動を示す図。
【図6】本実施形態による絶対温度を計測する手順を示すフローチャート。
【図7】本実施形態による絶対温度を計測する手順を示すフローチャート。
【図8】従来の相対的温度を計測するために一般的に用いられるフィールドエコーシーケンスを示す図。
【符号の説明】
1…静磁場磁石、
2…勾配コイル、
3…プローブコイル、
4…シムコイル、
5…勾配コイル電源、
6…シムコイル電源、
7…送信部、
9…受信部、
11…シーケンス制御部、
12…データ収集部、
13…計算機システム、
14…コンソール、
15…ディスプレイ。

Claims (8)

  1. 静磁場中におかれた被検体に、第1のRFパルスを印加して、温度に依存して共鳴周波数の差が変化する2種類の分子内の特定核種の磁化、あるいは2つ以上のサイトを持つ1分子内の特定核種の磁化を励起し、続いて、前記第1のRFパルスから所定時間後に第2のRFパルスを印加して、前記励起された磁化の位相の進み遅れを反転し、前記反転された磁化から磁気共鳴信号を検出する磁気共鳴診断装置において、
    前記第1のRFパルスから前記所定時間後の基準時刻に対して、前記第2のRFパルスの印加時刻を変化させて、一方の分子、あるいは1分子内の1つのサイトの特定核種の磁化の位相と、他方の分子、あるいは1分子内の他のもう1つのサイトの特定核種の磁化の位相とが揃う、又は反転する特定の状態で前記磁気共鳴信号が得られる場所を特定することにより、絶対温度の空間分布を生成することを特徴とする磁気共鳴診断装置。
  2. 静磁場中におかれた被検体に、第1のRFパルスを印加して、温度に依存して共鳴周波数の差が変化する2種類の分子内の特定核種の磁化、あるいは2つ以上のサイトを持つ1分子内の特定核種の磁化を励起し、続いて、前記第1のRFパルスから所定時間後に第2のRFパルスを印加して、前記励起された磁化の位相の進み遅れを反転し、前記反転された磁化から磁気共鳴信号を検出する磁気共鳴診断装置において、
    前記第1のRFパルスから前記所定時間後の基準時刻に対して、前記磁気共鳴信号を検出する時刻を変化させて、一方の分子、あるいは1分子内の1つのサイトの特定核種の磁化の位相と、他方の分子、あるいは1分子内の他のもう1つのサイトの特定核種の磁化の位相とが揃う、又は反転する特定の状態で前記磁気共鳴信号が得られる場所を特定することにより、絶対温度の空間分布を生成することを特徴とする磁気共鳴診断装置。
  3. 前記基準時刻に対する前記第2のRFパルスの印加時刻のズレ時間を、特定温度での前記共鳴周波数の差に従って設定することにより、前記特定の状態で前記磁気共鳴信号が得られる場所を、前記特定温度の場所として特定することを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴診断装置。
  4. 前記一方の分子、あるいは1分子内の1つのサイトの特定核種の共鳴周波数は温度依存性を示さず、前記他方の分子、あるいは1分子内の他のもう1つのサイトの特定核種の共鳴周波数は温度依存性を示すことを特徴とする請求項1又は2記載の磁気共鳴診断装置。
  5. 前記特定核種はプロトンであり、前記一方の分子は脂肪分子であり、前記他方の分子は水分子であることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気共鳴診断装置。
  6. 前記2種類の分子の混合物質を前記被検体に投与することを特徴とする請求項1又は2記載の磁気共鳴診断装置。
  7. 前記一方の分子は脂肪分子であり、前記他方の分子は水分子であり、前記脂肪分子と前記水分子との混合物質を乳化状態で前記被検体に投与することを特徴とする請求項1又は2記載の磁気共鳴診断装置。
  8. 静磁場中におかれた被検体に第1のRFパルスを印加して、温度に依存して共鳴周波数の差が変化する2種類の分子内の特定核種の磁化、あるいは2つ以上のサイトを持つ1分子内の特定核種の磁化を励起し、続いて、前記第1のRFパルスから時間τ後に第2のRFパルスを印加して、前記励起された磁化の位相の進み遅れを反転し、そして前記第1のRFパルスから2・τ後に前記反転された磁化から磁気共鳴信号を検出する実行する磁気共鳴診断装置において、
    前記第1のRFパルスから時間τ後の基準時刻に対して前記第2のRFパルスの印加時刻を順次変化させながら磁気共鳴信号を繰り返し検出し、一方の分子、あるいは1分子内の1つのサイトの特定核種の磁化の位相と、他方の分子、あるいは1分子内の他のもう1つのサイトの特定核種の磁化の位相とが2・τの時刻に揃う又は反転する特定の状態で、磁気共鳴信号が得られたときの前記基準時刻と前記第2のRFパルスの印加時刻との時間差に基づいて、絶対温度を計算することを特徴とする磁気共鳴診断装置。
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