<実施の形態1>
図1は、本実施の形態に係る液晶表示装置の全体構造を示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係る液晶表示装置は、液晶表示パネル50と、駆動回路51と、光源53と、光源制御回路54とを備える。
液晶表示パネル50は、液晶層1と、透明なCF基板2と、透明なTFT基板3とを備える。液晶表示パネル50のCF基板2とTFT基板3は、周辺部において互いにシールされており、それら基板の間に液晶が封入されて液晶層1が形成されている。CF基板2およびTFT基板3には、例えば、ガラス基板が用いられる。液晶表示パネル50の表示領域55には、複数の画素56がマトリックス状に配列される。
光源53は、液晶表示パネル50の背面側から正面方向(図1の上方向)へ光を照射する。光源53には、例えば、一端にランプやLEDを設置した導光板、または、面発光型のLEDを用いる。光源制御回路54には、駆動回路51から画像の表示に関する信号が入力される。光源制御回路54は、その信号に応じて光源53を点滅したり明暗を変化させたりする。こうして、光源制御回路54は、光源53を制御する。
駆動回路51は、液晶表示パネル50を制御する。駆動回路51のデータ入力部52には、表示すべき画像データに対応する電気信号が入力される。駆動回路51は、入力された電気信号に基づいて、液晶表示パネル50の画素56の光透過率を、画素56ごとに制御する。こうして、液晶表示パネル50から出射される光の明暗が、画素56ごとに制御されることにより、表示領域55に画像が表示される。なお、駆動回路51は、表示領域55外側のTFT基板3上に形成されていてもよい。
図2は、本実施の形態に係る液晶表示装置の液晶表示パネル50の画素56の構造を示す断面図である。上述したように、液晶表示パネル50は、液晶層1と、CF基板2と、TFT基板3とを備える。液晶表示パネル50は、CF基板2側に、カラーフィルタ21と、透明導電膜22と、配向膜23と、位相差層24と、オーバーコート層25と、配向膜26と、偏光板27とを備える。また、液晶表示パネル50は、TFT基板3側に、有機膜31と、共通電極32と、画素電極33と、反射画素電極34と、配向膜35と、偏光板36とを備える。
本実施の形態に係る液晶表示装置では、画素56ごとに透過領域4および反射領域5が設けられ、透過領域4では光源53の光を透過した場合に白表示し、反射領域5では液晶表示装置外部からの光を反射した場合に白表示する。
本実施の形態に係る液晶表示装置が備える一方の基板(第2の基板)であるCF基板2,他方の基板(第1の基板)であるTFT基板3は、互いに対向する対向面を有し、当該対向面それぞれに透過表示領域6,8と反射表示領域7,9とが位置を揃えて配置される。本実施の形態では、CF基板2の透過表示領域6は、透過領域4に配置されたCF基板2の対向面であり、CF基板2の反射表示領域7は、反射領域5に配置されたCF基板2の対向面である。同様に、TFT基板3の透過表示領域8は、透過領域4に配置されたTFT基板3の対向面であり、TFT基板3の反射表示領域9は、反射領域5に配置されたTFT基板3の対向面である。液晶層1は、TFT基板3と、CF基板2のオーバーコート層25との間に挟まれて形成される。
CF基板2とTFT基板3のうち、まず、TFT基板3側の構成について説明する。共通電極32および画素電極33は、TFT基板3の透過表示領域8上に、有機膜31を介して形成される。これら画素電極33と共通電極32は、それぞれが異なる配線から電圧を印加されると、TFT基板3面と平行方向の横電界を発生する。こうして、本実施の形態に係る液晶表示装置が備える共通電極32および画素電極33からなる電極対は、有機膜31を介して、TFT基板3の透過表示領域8上に形成され、横電界を発生する。共通電極32および画素電極33は、この横電界により、液晶層1の液晶分子11の配向方向を制御する。
本実施の形態に係る液晶表示装置が備える電極である反射画素電極34は、有機膜31を介して、TFT基板3の反射表示領域9上に形成される。本実施の形態に係る反射表示領域9は、液晶表示装置外部からCF基板2を介して入射された光を、正面側(図2上側)に向けて反射する。反射画素電極34下の有機膜31表面には、凹凸形状が形成されており、その有機膜31上に形成された反射画素電極34表面も凹凸形状となる。本実施の形態に係る液晶表示装置は、反射画素電極34の凹凸形状により、液晶表示装置外部からの光を広い角度に反射し、光を拡散させることで視野角を広げている。なお、この図には示していないが、本実施の形態では、有機膜31とTFT基板3との間に、反射画素電極34の下方に、反射画素電極34と接続する電極と絶縁膜を介して補助容量電極が形成されている。
配向膜35は、透過表示領域8上側では、有機膜31、共通電極32、画素電極33上に形成され、反射表示領域9上側では、反射画素電極34上に形成される。この配向膜35、および、後述する配向膜26は、それらの膜に接する液晶層1の液晶分子11を一定方向に配向させるためのものである。
次に、CF基板2側の構成について説明する。図2に示すように、本実施の形態に係る液晶表示装置が備えるカラーフィルタ21は、CF基板2とオーバーコート層25との間に形成される。本実施の形態では、カラーフィルタ21は、CF基板2の透過表示領域6上および反射表示領域7上に形成される。カラーフィルタ21は、色材膜であり、例えば、青、赤、緑の色のいずれかの光を透過する樹脂からなる。
本実施の形態に係る液晶表示装置が備える透明導電膜22は、CF基板2の透過表示領域6および反射表示領域7と、オーバーコート層25との間に形成され、反射画素電極34との間に縦電界を発生する。また、本実施の形態では、透明導電膜22は、カラーフィルタ21とオーバーコート層25との間に形成される。また、本実施の形態に係る透明導電膜22は、CF基板2の透過表示領域6上および反射表示領域7上のカラーフィルタ21上に形成され、反射画素電極34との間に縦電界を発生する。透明導電膜22および反射画素電極34は、CF基板2およびTFT基板3それぞれの基板面と垂直方向の縦電界を発生することにより、液晶層1の液晶分子11をこれら基板と垂直に立ち上がらせる制御を行う。
CF基板2の透過表示領域6上側および反射表示領域7上側の透明導電膜22上には、位相差層24の遅相軸を定める配向膜23が設けられている。本実施の形態に係る液晶表示装置が備える位相差層24は、CF基板2の反射表示領域7上側の透明導電膜22とオーバーコート層25との間に形成され、1/4波長(以下、可視光の波長をλとして、λ/4と記すこともある)の位相差を生じさせる。位相差層24の遅相軸は、配向膜23により定められ、本実施の形態では、CF基板2側の偏光板27の透過軸と45°の角度をなす配置で設けられている。
本実施の形態に係る液晶表示装置が備えるオーバーコート層25は、CF基板2の透過表示領域6上側および反射表示領域7上側に形成される。図に示すように、オーバーコート層25は、液晶層1側に平坦な面を有する。液晶層1の液晶分子11を一定方向に配向させる配向膜26は、透過表示領域6上側および反射表示領域7上側のオーバーコート層25上に形成される。
液晶層1は、TFT基板3とオーバーコート層25との間に挟まれて形成される。液晶層1の液晶分子11には、正の誘電異方性を有するポジ型液晶を用いる。こうして、本実施の形態に係る液晶層1は、ポジ型液晶を有し、TFT基板3とオーバーコート層25との間に挟まれて形成される。本実施の形態に係る液晶表示装置では、TFT基板3の透過表示領域8とオーバーコート層25との間の液晶層1の厚みと、TFT基板3の反射表示領域9とオーバーコート層25との間の液晶層1の厚みとは略等しくしている。また、上述したように、オーバーコート層25は、液晶層1側に平坦な面を有している。このため、液晶層1は、透過表示領域6,8と反射表示領域7,9との境界に段差がない構造となる。
配向膜26,35は、紙面の手前奥行方向に対して5〜15°ずれた方向にラビングされている。TFT基板3の配向膜35のラビング方向は、CF基板2の配向膜26ラビング方向と180°変えている。これら配向膜26,35により、図2に示すように、液晶分子11は、ホモジニアス配向する。
こうして、液晶分子11は、配向膜26,35により、共通電極32と画素電極33との間に生じる横電界に沿うように配向される。有機膜31を介して透過表示領域8上に互いに対向して形成された共通電極32および画素電極33は、液晶層1内に、TFT基板3の基板面と平行方向の横電界を発生する。この横電界は、液晶分子11を液晶表示パネル50の面に平行な面内で回転させる。液晶分子11が回転すると、液晶層1を通過する光の偏光の状態が変化する。こうして、共通電極32および画素電極33は、横電界を発生することにより、液晶層1を通過する光の偏光の状態を制御する。共通電極32および画素電極33の横電界の強度は、図1の駆動回路51によって制御される。
液晶層1に対して反対側のCF基板2の表面上には、透過領域4と反射領域5に共通の偏光板27が設けられ、液晶層1に対して反対側のTFT基板3の表面上には、透過領域4と反射領域5に共通の偏光板36が設けられる。この偏光板27,36のうち一方の偏光板の透過軸は、液晶層1の液晶配向方向と平行となるように配置し、他方の偏光板の透過軸は、液晶配向方向と垂直となるように配置する。
図2には図示しないが、液晶表示パネル50のTFT基板3側(図2の下側)には、図1の光源53が配置される。この光源53からの光は、透過領域4では、TFT基板3の偏光板36を経て直線偏光となり、液晶層1を経た後、カラーフィルタ21を通る。このカラーフィルタ21で特定の波長の光が強い着色され、CF基板2の偏光板27を通じて、液晶表示パネル50の正面側(図2上側)に光が出射する。液晶表示パネル50から正面側に出射される光の強度は、偏光板27,36の透過軸の方向と、液晶層1を通過する際に変化する光の偏光の状態により変わる。液晶層1の偏光の状態は、上述したように、共通電極32および画素電極33により制御される。そのため、共通電極32および画素電極33は、横電界を制御して、液晶表示パネル50から正面側に出射される光の強度を変更する。
このように、本実施の形態に係る液晶表示装置は、透過領域4では、液晶表示パネル50と平行な面内で液晶分子11を回転させて、正面側に出射される光を制御する横電界方式のIPS方式を採用している。一方、本実施の形態に係る液晶表示装置は、反射領域5では、上述したように、液晶表示パネル50とほぼ垂直な方向に液晶分子11を立ち上がらせて、正面側に出射される光を制御する縦電界方式のECB方式を採用している。
図3は、透過領域4における液晶表示パネル50の構造を示す断面図である。この図を用いて、液晶層1、オーバーコート層25、共通電極32、画素電極33、透明導電膜22の距離関係を説明する。なお、本実施の形態に係る液晶表示パネル50は、図に示すように、CF基板2側に黒色樹脂からなるブラックマトリックス層28をさらに備える。このブラックマトリックス層28は、カラーフィルタ21の各色を表示する画素56ごとに、遮光部として形成される。図に示すように、カラーフィルタ21は、平面視においてブラックマトリックス層28により囲われている。
上述の共通電極32および画素電極33からなる電極対同士は、互いに距離d1だけ離れて形成されている。CF基板2とTFT基板3との間には、液晶層1の厚みd2を決める図示しないスペーサが配置されている。透明導電膜22と、共通電極32および画素電極33との間の距離d3は、液晶層1、配向膜23,26、オーバーコート層25それぞれの厚みの和である。このうち、配向膜23,26の厚みは、例えば、100nm程度であり、液晶層1の厚みd2や、オーバーコート層25の厚みd4の1/10以下であるため無視できる。そのため、透明導電膜22と、共通電極32および画素電極33との間の距離d3は、液晶層1の厚みd2と、オーバーコート層25の厚みd4との和で決まる。
本実施の形態では、透過領域4の透過率を最大にするため、液晶層1の厚みd2が、液晶層1の液晶の複屈折Δnとの積、つまり、d2×Δnがおよそλ/2となるように設計する。IPS方式の液晶表示パネルに用いられる液晶の複屈折Δnの範囲を、0.08〜0.11程度とし、可視光の波長λを560nmとすると、液晶層1の厚みd2の範囲は、2.5〜3.5μmとなる。このように、液晶層1の厚みd2の自由度が小さいため、オーバーコート層25の厚みd4で調整することにより、液晶層1の厚みd2と、オーバーコート層25の厚みd4との和が、画素電極33と共通電極32との距離d1よりも大きくする。
このように形成することで、本実施の形態に係る液晶表示装置は、透過表示領域6上の透明導電膜22と、共通電極32および画素電極33からなる電極対との間の距離d3(≒d2+d4)は、画素電極33と共通電極32との間の距離d1よりも大きくしている。なお、画素電極33の高さと、共通電極32の高さとが互いに異なる電極構造を有する場合には、それらの電極のうち透明導電膜22に近い方の電極と透明導電膜22との間の距離を、上述の距離d3とする。
以上は透過領域4の構成の位置関係について説明した。一方、反射領域5では、図2に示すように、CF基板2の透明導電膜22と、TFT基板3の反射画素電極34との間に、液晶層1、および、配向膜23,26,35、および、位相差層24、および、オーバーコート層25が存在する。透明導電膜22と反射画素電極34との間に印加された電圧は、これら各層、各膜に分圧される。そのため、オーバーコート層25の厚みd4が変わると、液晶層1に印加される電圧も変わる。
そこで、上述の条件(d2+d4>d1)を満たす範囲で、オーバーコート層25の厚みd4を調整することにより、反射領域5における電圧の分圧比を調整する。本実施の形態では、透過領域4の液晶表示パネル50の透過率を最大にする電圧を、反射領域5の透明導電膜22と反射画素電極34との間に印加して縦電界を発生したときに、液晶層1の位相差がλ/4となるように厚みd4を調整する。これにより、本実施の形態に係る液晶表示パネル50は、透過領域4の電圧−透過率特性と、反射領域5の電圧−透過率特性とを揃えたものになっている。
図4は、本実施の形態に係る液晶表示装置の液晶表示パネル50の動作を示す断面図である。共通電極32および画素電極33は、本実施の形態では、後述するように櫛型に形成されているため、以下、これら電極をあわせて櫛型電極32,33と記すこともある。また、透明導電膜22と反射画素電極34とをあわせて上下電極22,34と記すこともある。
図4(a)は、透過領域4では櫛型電極32,33同士の間、および、反射領域5では上下電極22,34の間に電圧を印加しない非駆動状態を示す。非駆動状態では、液晶層1の液晶は水平配向、つまり、ホモジニアス配向状態となる。図4(b)は、透過領域4では櫛型電極32,33同士の間、および、反射領域5では上下電極22,34の間に電圧を印加した駆動状態を示す。駆動状態では、図の矢印に示すように、透過領域4では横電界が生じ、反射領域5では縦電界が生じる。
駆動状態にすると、図4(b)に示すように、透過領域4および反射領域5それぞれにおいて、液晶分子11が電界方向を示す電気力線に沿って回転する。このとき、液晶配向方向と電極奥行き方向とを5〜15°ずらしているため、これら電極間に電圧を印加したときの液晶分子11の回転方向が一様に定まり、ドメインの発生を抑えられる。電圧印加をなくし、非駆動状態に戻すと、図4(a)のように、液晶層1中の液晶分子11は、配向膜26,35に従ったホモジニアス配向に戻る。次に、非駆動状態、駆動状態それぞれでの透過領域4、反射領域5それぞれの光の進み方について説明する。
図4(a)の非駆動状態の透過領域4では、TFT基板3下側の光源53から発せられた光は、偏光板36を通過して直線偏光となる。この直線偏光と液晶層1の軸は一致しているため、偏光板36を通過した光の偏光状態は変化することなくCF基板2の偏光板27に到達する。上述したように、CF基板2の偏光板27と、TFT基板3の偏光板36は、互いに透過軸が直交するように設けたため、この到達した直線偏光は、透過軸が直交するCF基板2の偏光板27に全て吸収される。このため、非駆動状態では、透過領域4において黒表示となる。
一方、図4(a)の非駆動状態の反射領域5では、液晶表示装置外部の光は、CF基板2の偏光板27を通過して直線偏光となる。この直線偏光は、CF基板2のλ/4の位相差を生じさせる位相差層24を通過して円偏光となる。この円偏光が、λ/2の位相差を生じさせる液晶層1を通過し、反射画素電極34で反射され、再度、液晶層1を通過すると、元の円偏光とは回転方向が異なる円偏光となる。反射してきた円偏光が、再度、CF基板2のλ/4の位相差を生じさせる位相差層24通過すると、元の直線偏光とは軸が直交する直線偏光となるため、CF基板2の偏光板27に到達した直線偏光は、偏光板27に全て吸収される。このため、非駆動状態では、反射領域5においても黒表示となる。
次に、図4(b)の駆動状態の透過領域4では、櫛型電極32,33同士の間に電圧が印加されて、液晶分子11が液晶表示パネル50と水平な面内で回転している。このとき、透過領域4では、TFT基板3下側の光源53から発せられた光は、偏光板36を通過して直線偏光となる。この直線偏光は、λ/2の位相差を生じさせる液晶層1を通過して、元の直線偏光とは軸が異なる直線偏光となり、CF基板2の偏光板27に到達する。この到達した直線偏光は、CF基板2の偏光板27を通過できる。このため、駆動状態では、透過領域4において白表示となる。
一方、図4(b)の駆動状態の反射領域5では、上下電極22,34の間に電圧が印加されて、液晶分子11が液晶表示パネル50の面に対して立ち上がる。このとき、反射領域5では、液晶表示装置外部の光は、CF基板2の偏光板27を通過して直線偏光となる。この直線偏光は、CF基板2のλ/4の位相差を生じさせる位相差層24を通過して円偏光となる。この円偏光が、λ/4の位相差を生じさせる液晶層1を通過し、反射画素電極34で反射され、再度、液晶層1を通過すると、元の円偏光と同じ回転方向の円偏光となる。反射してきた円偏光が、再度、CF基板2のλ/4の位相差を生じさせる位相差層24を通過すると、元の直線偏光と軸が一致する直線偏光となるため、CF基板2の偏光板27に到達した直線偏光は、偏光板27を通過することができる。このため、駆動状態では、反射領域5においても白表示となる。
図5は、一の画素56の領域(以下、画素領域と記すこともある)におけるTFT基板3の構成を示す平面図である。図の上側には透過領域4、下側には反射領域5が示されており、それぞれの領域の電極が電気的に接続されている。画素電極33は、反射画素電極34と接続されている。ソース線Sの電位は、TFT57を介して、画素電極33および反射画素電極34に伝えられる。
本実施の形態では、TFT基板3の透過領域4には、平面視で櫛型の形状を有し、その櫛の歯同士が相互に組み合わさった上述の共通電極32と画素電極33とが、インターデジタル型の配置で設けられている。共通電極32の櫛の歯と、画素電極33の櫛の歯とが、互いに近接して平行に設けられており、また、その間隔は一定となるように設けられている。そのため、共通電極32の櫛の歯と、画素電極33の櫛の歯との間それぞれには、面内ではおおむね同じ方向に均一な強度を有する電界が発生する。
なお、共通電極32と画素電極33の形状は、これに限ったものではなく、面内での電界方向が複数となるように、櫛の歯の方向を複数有する共通電極32と画素電極33とを組み合わせた構造としてもよい。また、画素電極33の歯と共通電極32の歯との間にそれぞれ発生する電界方向と電界強度とがおおむね同じとなるのであれば、それぞれが櫛型でなくてもよい。例えば、一方の電極が魚骨のような形状を有し、他方の電極の櫛の歯がその骨同士の間に位置するような構成してもよい。その構成であれば、歯それぞれの距離が一定で、かつ、互いに平行となる構成となるため、電界方向と電界強度とをおおむね同じにすることができる。また、上述の構成では、共通電極32の櫛の歯と、画素電極33の櫛の歯は、相互に平行な直線形状とした。しかし、これに限ったものではなく、それぞれの歯が曲線形状で、かつ、歯同士の間隔が一定の共通電極32、画素電極33であってもよい。
TFT基板3の反射領域5には、面状の反射画素電極34が形成される。この反射画素電極34は、上述したように、CF基板2の透明導電膜22との間に縦電界を発生する。反射画素電極34の下層には、図示しない絶縁膜を介して上述の補助容量電極37が形成されている。反射領域5では、液晶表示パネル50に入射した外部光を反射し、当該反射光を光源に用いるため、反射画素電極34には、反射率の高い金属で形成することが望ましい。
なお、本実施の形態では、上述のように、外部光を反射する反射画素電極34を用いたが、これに限ったものではない。例えば、反射画素電極34の代わりに、透明な材料からなる電極を形成し、その電極の下層に透明な材料からなる絶縁膜を形成し、その絶縁膜の下層に反射率の高い補助容量電極37を形成する構成であってもよい。また、透過領域4の画素電極の材料と、反射領域5の画素電極の材料とを同一にした場合には、同一の工程で作成することができ、プロセスが簡便となる。
透過領域4と反射領域5とからなる画素領域内には、ソース線S、後述するゲート線、後述するコモン線が接続される。これらの線を通じて、図1に示した駆動回路51から、画素領域に電気信号が送られる。画素領域内には、ゲート線の信号に応じてオンオフが制御されるTFT57が設置される。TFT57のソースはソース線Sに、ドレインは反射画素電極34に、ゲートはゲート線に接続される。ゲート線からの電気信号によって、TFT57はオンとなり、ソース線Sの電位が反射画素電極34および画素電極33に伝えられる。共通電極32は、コモン線に接続されており、一定の電圧が印加される。こうして、画素電極33および反射画素電極34の電位は、ソース線Sから与えられ、共通電極32の電位は、コモン線から与えられる。なお、反射領域5では、反射画素電極34の下層に補助容量電極37を設置しているので、次にTFT57をオンとする信号が入力されるまで、画素電極33および反射画素電極34の電位は保持される。
図6は、本実施の形態に係る液晶表示装置の構造を示す平面図である。この図6には、画像信号処理回路58、走査回路59、信号回路60、透明導電膜制御回路61、CF基板2の透明導電膜22、TFT基板3のTFT57が示されている。この図に示される画像信号処理回路58および走査回路59および信号回路60および透明導電膜制御回路61は、図1に示した駆動回路51を構成する。この図では、透明導電膜22は、破線で示されている。本実施の形態に係る透明導電膜22は、マトリックス状に配列された複数の画素56からなる表示領域55の全体に、四角形状のパターンを有する透明導電膜22が対向して設けられている。
画素56それぞれは、走査回路59からのコモン線C1〜C5、および、ゲート線G1〜G5と接続され、信号回路60からのソース線S1〜S5と接続される。この図において、コモン線C2〜C4、ゲート線G2〜G4、ソース線S2〜S4の符号は、省略している。この図に示されるソース線S1〜S5は、上述のソース線Sに相当する。この図では、図の左上の画素56においてのみ、配線と、共通電極32および画素電極33およびTFT57との接続関係を図示しているが、他の画素56も同様であるため、他の画素56については図示を省略している。
表示すべき画像データは、画像信号処理回路58のデータ入力部52に入力され、画像信号処理回路58で液晶表示パネル50の特性に応じた信号補償などが行われる。そして、画像データに対応した電気信号が、走査回路59と信号回路60とに出力される。その電気信号に応じて、走査回路59は、ゲート線G1〜G5に順次走査するように信号を出力し、ゲート線G1〜G5に接続された画素56のTFT57を順次オンオフにする。ゲート線G1〜G5からの信号により、TFT57がオンとなった画素56の画素電極33には、ソース線S1〜S5を介して信号回路60から電位が供給される。一方、画素56の共通電極32には、走査回路59からコモン線C1〜C5を介して一定の電位が与えられる。なお、本実施の形態では、共通電極32(コモン電極)の電位は、コモン線C1〜C5を介して走査回路59から供給されるものとしたが、別の回路から供給されるようにしてもよい。
透明導電膜制御回路61は、破線で示した透明導電膜22の電位を制御する。本実施の形態では、透明導電膜制御回路61は、走査回路59と接続され、透明導電膜22の電位が、コモン線C1〜C5の電位と同じになるようにしている。これにより、反射領域5に縦電界を生じさせることができるため、反射領域5の液晶駆動が可能となる。
図7〜図9は、本実施の形態に係る液晶表示装置の液晶表示パネル50の製造工程を示す断面図である。まず、図7(a)に示すように、CF基板2に、例えば、印刷法や写真製版の方法を用いて、色素や顔料を有する樹脂でカラーフィルタ21のパターン、黒色の樹脂を用いてブラックマトリックス層28のパターンを形成する。次いで、図7(b)に示すように、カラーフィルタ21およびブラックマトリックス層28の表面上に、例えば、スパッタ法や蒸着法により、ITO(Indium Tin Oxide)やAZO(ZnO2+Al2O3)からなる透明導電膜22を形成する。透明導電膜22にITOを用いた場合、その厚みは、例えば、200nm以下でもよい。
次いで、図7(c)に示すように、透明導電膜22上に水平配向性の配向膜23を塗布焼成して、ラビング法により配向処理する。ここで、配向膜23は、位相差層24の遅相軸方向を定める。次いで、図7(d)に示すように、位相差層24を形成する。この位相差層24を形成する工程として、まず、光反応性のアクリル基を分子末端に有する液晶(光反応性液晶)と、反応開始剤を含む有機溶媒とを配向膜23上に塗布し、過熱して有機溶媒を除いて感光性樹脂膜を形成する。この時点で、光反応性液晶は、配向膜23の配向処理方向に配向される。次に、紫外光を照射して、光反応性液晶のアクリル基を光重合し、成膜化して位相差層24を形成する。上述の塗布時の溶液濃度および塗布条件を適宜調整して、位相差層24の膜厚を調整し、位相差層24のリタデーションをλ/4にする。
このとき、図3で説明したように、透過表示領域8上の透明導電膜22と、共通電極32および画素電極33との間の距離d3が、画素電極33と共通電極32との間の距離d1よりも長くなるように、オーバーコート層25の厚みd4を調整する。それとともに、液晶層1側に平坦な面を有するようにオーバーコート層25を形成する。こうして、オーバーコート層25は、位相差層24の厚みにより生じる透過表示領域6,8と反射表示領域7,9との境界の段差を平滑化する。
次に、位相差層24が、反射表示領域7の範囲に形成されるようにパターニングする。まず、図8(a)に示すように、位相差層24の上にレジスト40を塗布して、反射表示領域7の範囲と同じ範囲となるようにパターニングする。それから、図8(b)に示すように、レジスト40が塗布されていない部分の位相差層24を、酸素プラズマでアッシングして除去する。その後、図8(c)に示すように、レジスト40を除去し、図9(a)に示すように、CF基板2上側にオーバーコート層25を塗布形成する。最後に、図示しないが、オーバーコート層25の上に、液晶層1の液晶を配向させるための、例えば、ポリイミドからなる上述の配向膜26を形成する。
以上、CF基板2側の工程について説明した。次に、TFT基板3側の工程を、図9(b)を用いて説明する。まず、TFT基板3上に図示しない上述のコモン線C1〜C5と、補助容量電極37と、ゲート線G1〜G5とを形成する。そして、TFT57のゲート絶縁膜となる無機絶縁膜、TFT57の半導体層となるa−Siを形成した後、ソース線S1〜S5とドレイン電極を形成する。そして、有機膜31を、TFT57およびこれら各配線上に形成し、反射表示領域9の有機膜31の表面に凹凸を形成する。その後、透過表示領域8では、有機膜31上に共通電極32および画素電極33を形成し、反射表示領域9では、凹凸を形成した有機膜31に反射画素電極34を形成する。その後、図示しないが、TFT基板3上側に、例えば、ポリイミドからなる上述の配向膜35を形成する。なお、本実施の形態ではa−Siからなる半導体層を有するTFTを用いたが、これに限らず、例えば、poly−Siからなる半導体層を有するTFTを用いてもよい。
最後に、図9(a)に示す工程で形成したCF基板2と、図9(b)に示す工程で形成したTFT基板3とを、図9(c)で示すように、スペーサ12を挟んで対向させる。そして、これら基板同士の間隔を一定にした状態で両基板の周辺部同士をシールし、これら基板の間に液晶を注入して液晶層1を形成する。最後に、液晶層1と反対側のCF基板2の表面上およびTFT基板3の表面上に、図示しない上述の偏光板27,36を形成する。以上の工程により、本実施の形態に係る液晶表示パネル50が形成される。
なお、本実施の形態では、CF基板2およびTFT基板3とは別部材の柱状のスペーサ12を用いたが、これに限ったものではなく、CF基板2またはTFT基板3に予め形成した柱状のスペーサを用いてもよい。また、ここでは、柱状のスペーサ12を用いたが、これに限ったものではなく、CF基板2またはTFT基板3に散布され、CF基板2とTFT基板3との間に挟まれる球状のスペーサを用いてもよい。
以上のように形成される本実施の形態に係る液晶表示装置によれば、オーバーコート層25は、液晶層1側に平坦な面を有している。そして、TFT基板3の透過表示領域8とオーバーコート層25との間の液晶層1の厚みと、TFT基板3の反射表示領域9とオーバーコート層25との間の液晶層1の厚みとは略等しくしている。これにより、位相差層24の厚みにより生じていた透過表示領域6,8と反射表示領域7,9との境界における液晶層1の段差は平滑化される。そのため、当該境界における液晶配向不良を低減して、コントラストを向上させ、かつ、視野角を広げることができる。
さらに、本実施の形態に係る液晶表示装置によれば、CF基板2のカラーフィルタ21およびブラックマトリックス層28を覆うように、透明導電膜2を形成している。これにより、CF基板2側の外部からの静電気の影響を低減することができる。そのため、櫛型電極32,33、および、上下電極22,34に必要以上の電界を印加する必要がなくなるため、消費電力を抑えることができる。また、カラーフィルタ21やブラックマトリックス層28内の不純物が、液晶層1へ溶出することを防止することができる。
また、本実施の形態では、透過表示領域8上の透明導電膜22と、共通電極32および画素電極33との間の距離d3は、画素電極33と共通電極32との間の距離d1よりも長くしている。これにより、透過領域4において不要な縦電界を軽減することができるため、透過領域4における表示むらを減少させることができる。また、櫛型電極32,33に必要以上の電界を印加する必要がなくなるため、消費電力を抑えることができる。
なお、本実施の形態では、反射領域5における視野角特性向上のため、TFT基板3の反射表示領域9上の反射画素電極34に凹凸形状を設けるものとした。しかしこれに限ったものではなく、反射画素電極34を平面とする代わりに、CF基板2の偏光板27に光拡散性を持たせるものを用いてもよい。また、本実施の形態では、透過領域4にIPS方式を採用したが、FFS方式を用いてもよい。
<実施の形態2>
図10は、本実施の形態に係る液晶表示装置の液晶表示パネルの構造を示す断面図である。以下の実施の形態では、実施の形態1に係る液晶表示装置と同一の構成要素については、同一符号を付すものとし、その説明については省略する。図10に示すように、本実施の形態に係る液晶表示装置の液晶表示パネル50では、CF基板2の透過表示領域6上の透明導電膜22は、TFT基板3の透過表示領域8上の櫛歯状の画素電極33の上側にのみ線状に形成される。このようにすることで、透過領域4において不要な縦電界をさらに弱めることができるとともに、オーバーコート層25をさらに薄くすることができる。また、CF基板2の透過表示領域6上に線状の透明導電膜22が存在するため、CF基板2側の外部からの静電気の影響を低減することができる。ただし、カラーフィルタ21やブラックマトリックス層28からの不純物イオンに対する遮蔽効果は小さくなる。
<実施の形態3>
図11は、本実施の形態に係る液晶表示装置の液晶表示パネルの構造を示す断面図である。図11に示すように、本実施の形態に係る液晶表示装置の液晶表示パネル50では、透明導電膜22は、CF基板2の反射表示領域7上にのみに形成される。このように形成することで、透過領域4において不要な縦電界をさらに弱めることができるとともに、オーバーコート層25をさらに薄くすることができる。ただし、透過領域4では、CF基板2側の外部からの静電気の影響を受けやすくなり、また、カラーフィルタ21やブラックマトリックス層28からの不純物イオンに対する遮蔽効果は小さくなる。
<実施の形態4>
図12は、本実施の形態に係る液晶表示装置の液晶表示パネルの構造を示す断面図である。図12に示すように、本実施の形態に係る液晶表示装置の液晶表示パネル50では、CF基板2の透過表示領域6上の透明導電膜22上に、位相差層24の材質である感光性樹脂膜を等方化処理した等方層29が設けられている。本実施の形態に係る液晶表示装置の製造工程について説明する。
まず、実施の形態1に係る液晶表示装置の製造工程のうち、図7(a)〜(c)に示した工程を行う。そして、図7(d)に示した工程で用いる感光性樹脂膜として、UV硬化性液晶からなる感光性樹脂膜を用いる。そして、ベーク処理により、感光性樹脂膜を相転位温度(NI点)を超える温度まで加熱し、当該感光性樹脂膜を光学的に等方性にしておく。
この状態で、反射領域5のみを遮光するマスクを介して、感光性樹脂膜にUV光を照射して露光を行い、感光性樹脂膜を硬化させる。こうして、光学的に等方性の状態で感光性樹脂膜を硬化させた等方層29を、CF基板2の透過表示領域6上側に形成する。その後、感光性樹脂膜を常温に戻すと、感光性樹脂膜の未硬化部が異方性の状態に戻る。この状態で、感光性樹脂膜の全面にUV光を照射して、全面露光を行い、感光性樹脂膜を硬化させる。こうして、光学的に異方性を有する位相差層24を、CF基板2の反射表示領域7上側に形成する。その後は、実施の形態1に係る液晶表示装置の製造工程のうち、図9(a)〜(c)に示した工程と同様の工程を行う。
以上の工程により形成される本実施の形態に係る液晶表示装置によれば、透過領域4において感光性樹脂膜を除去する工程を省くことができる。ただし、等方層29に残留位相差が存在すると、透過領域4の表示特性が劣化する。
1 液晶層、2 CF基板、3 TFT基板、4 透過領域、5 反射領域、6,8 透過表示領域、7,9 反射表示領域、11 液晶、12 スペーサ、21 カラーフィルタ、22 透明導電膜、23,26,35 配向膜、24 位相差層、25 オーバーコート層、27,36 偏光板、28 ブラックマトリックス層、29 等方層、31 有機膜、32 画素電極、33 共通電極、34 反射画素電極、37 補助容量電極、40 レジスト、50 液晶表示パネル、51 駆動回路、52 データ入力部、53 光源、54 光源制御回路、55 表示領域、56 画素、57 TFT、58 画像信号処理回路、59 走査回路、60 信号回路、61 透明導電膜制御回路。