以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現する物質として具体的な化合物を例示する場合があるが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
本発明の容器用蓋材は、特定の積層体(以下、「ガスバリア性積層体」という場合がある)を用いて形成される。すなわち、本発明の容器用蓋材はガスバリア性積層体を含む。なお、蓋材のすべてがガスバリア性積層体を用いて形成されてもよいし、一部がガスバリア性積層体以外の材料によって形成されていてもよい。蓋材の面積のたとえば50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または100%には、ガスバリア性積層体が用いられる。
本発明の蓋材は、一例では、ツバ部を有する容器の蓋に用いられる。容器の一例は、内容物を収納するための凹部(収納部)と、その凹部の開口部の端から外側に向かってフランジ状に延びるツバ部とを有する。この容器は、真空成形や圧空成形などによって形成できる。本発明の蓋材は、この容器の凹部を覆って凹部の内部を密閉するように、ツバ部に接着される。接着の方法の好ましい例は、ヒートシールによる接着である。内容物を容器に封入する際には、容器の凹部に内容物を充填したのち、蓋材で凹部を覆い、ツバ部と蓋材とをヒートシールすればよい。以下、本発明に用いられるガスバリア性積層体について詳細に説明する。
[ガスバリア性積層体]
本発明で用いられるガスバリア性積層体は、基材と、基材に積層された少なくとも1つのガスバリア性を有する層とを含む。その層(以下、「ガスバリア層」という場合がある)は、化合物(L)の加水分解縮合物と、重合体(X)とを含む組成物からなる。化合物(L)は、加水分解性を有する特性基を含有する少なくとも1種の化合物であり、典型的には、加水分解性を有する特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物である。重合体(X)は、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体である。以下、重合体(X)に含まれる、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を「官能基(F)」という場合がある。重合体(X)の官能基(F)に含まれる−COO−基の少なくとも一部が、2つ以上のアミノ基を含有する化合物(P)で中和および/または反応されている。さらに官能基(F)に含まれる−COO−基の少なくとも一部が2価以上の金属イオンで中和されている。換言すれば、上記官能基の少なくとも一部が2価以上の金属イオンと塩を構成している。上記組成物において、[化合物(P)に含まれるアミノ基の当量]/[重合体(X)の官能基に含まれる−COO−基の当量]の比は、0.2/100〜20.0/100の範囲にある。なお、[化合物(P)に含まれるアミノ基の当量]/[重合体(X)の官能基に含まれる−COO−基の当量]は、「化合物(P)に含まれるアミノ基のモル数]/[重合体(X)の官能基に含まれる−COO−基のモル数]と読み替えることが可能である。
ガスバリア層は、基材の少なくとも一方の面に積層されている。ガスバリア層は、基材の片面のみに積層されてもよいし、基材の両面に積層されてもよい。本発明で用いられるガスバリア性積層体は、ガスバリア層以外の層を含んでもよい。
化合物(L)の加水分解縮合物および重合体(X)が組成物に占める割合は、たとえば50重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、または98重量%以上である。
[加水分解縮合物]
ガスバリア層を構成する組成物は、化合物(L)の加水分解縮合物を含む。化合物(L)が加水分解されることによって、化合物(L)の特性基の少なくとも一部が水酸基に置換される。さらに、その加水分解物が縮合することによって、金属原子が酸素を介して結合された化合物が形成される。この縮合が繰り返されると、実質的に金属酸化物とみなしうる化合物となる。ここで、この加水分解・縮合が起こるためには、化合物(L)が加水分解性を有する特性基(官能基)を含有していることが重要であり、それらの基が結合していない場合、加水分解、縮合反応が起こらないか極めて緩慢である。そのため、その場合には本発明の効果を得ることは困難である。なお、Siは、半金属元素に分類される場合があるが、この明細書では、Siを金属として説明する。
該加水分解縮合物は、たとえば、公知のゾルゲル法で用いられる手法を用いて特定の原料から製造できる。該原料には、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解・縮合したもの、化合物(L)が完全に加水分解しその一部が縮合したもの、あるいはこれらを組み合わせたものが用いられる。これらの原料は、公知の方法で製造してもよいし、市販されているものを用いてもよい。特に限定はないが、たとえば2〜10個程度の分子が加水分解・縮合することによって得られる縮合物を、原料として用いることができる。具体的には、たとえば、テトラメトキシシランを加水分解・縮合させて、2〜10量体の線状縮合物としたものを原料として用いることができる。
加水分解性を有する特性基の例としては、以下の式(I)のOR1、X1として例示される基が挙げられる。
化合物(L)は、加水分解性を有する特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(A)を含む。典型的な化合物(A)は、以下の式(I)で表される少なくとも1種の化合物である。
M1(OR1)qR2 p-q-rX1 r・・・(I)
[式(I)中、M1はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、Ga、Y、Ge、Pb、Sb、V、Ta、W、LaまたはNdを表す。R1はアルキル基を表す。R2はアルキル基、アラルキル基、アリール基またはアルケニル基を表す。X1はハロゲン原子を表す。pはM1の原子価と等しい。qは0〜pの整数を表す。rは0〜pの整数を表す。1≦q+r≦pである。]
式中、M1は、Si、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、Ga、Y、Ge、Pb、Sb、V、Ta、W、LaおよびNdから選択される原子を表すが、好ましくはSi、Al、TiまたはZrであり、特に好ましくはSi、AlまたはTiである。また、R1が表すアルキル基は、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられ、好ましくは、メチル基またはエチル基である。X2が表すハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、塩素原子が好ましい。また、R2が表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−オクチル基などが挙げられ、アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、トリチル基などが挙げられる。また、R2が表すアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基などが挙げられ、アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基などが挙げられる。
式(I)で表される化合物の具体例には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、クロロトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン等のシランアルコキシド;ビニルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン等のハロゲン化シラン;チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンメチルトリイソプロポキシド等のアルコキシチタン化合物;テトラクロロチタン等のハロゲン化チタン;アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムメチルジイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、ジエトキシアルミニウムクロリド等のアルコキシアルミニウム化合物;ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムメチルトリイソプロポキシド等のアルコキシジルコニウム化合物等が挙げられる。式(I)で表される化合物(A)の好ましい例には、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランが含まれる。
化合物(L)は、加水分解性を有する特性基と、カルボキシル基との反応性を有する官能基で置換されたアルキル基とが結合している金属原子を含む少なくとも1種の化合物(B)を含んでもよい。典型的な化合物(B)は、以下の式(II)で表される少なくとも1種の化合物である。化合物(B)を含有させることによって、ボイル処理前後やレトルト処理前後における、ガスバリア性積層体の酸素バリア性や透明性などの変化が更に少なくなる。
M2(OR3)nX2 kZ2 m-n-k・・・(II)
[式(II)中、M2はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、Ga、Y、Ge、Pb、Sb、V、Ta、W、LaまたはNdを表す。R3はアルキル基を表す。X2はハロゲン原子を表す。Z2は、カルボキシル基との反応性を有する官能基で置換されたアルキル基を表す。mはM2の原子価と等しい。nは0〜(m−1)の整数を表す。kは0〜(m−1)の整数を表す。1≦n+k≦(m−1)である。]
式(II)中、M2は、Si、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、Ga、Y、Ge、Pb、Sb、V、Ta、W、LaおよびNdから選択される原子を表す。M2は、好ましくはSi、Al、TiまたはZrであり、特に好ましくはSiである。また、R3が表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基またはエチル基である。X2が表すハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、塩素原子が好ましい。また、Z2が有する、カルボキシル基との反応性を有する官能基としては、エポキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基、オキサゾリン基またはカルボジイミド基などが挙げられ、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基またはハロゲン原子が好ましく、例えばエポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。このような官能基で置換されるアルキル基としては、R3について例示したものが挙げられる。
式(II)で表される化合物の具体例には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリクロロシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリクロロシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリクロロシラン、γ−ブロモプロピルトリメトキシシラン、γ−ブロモプロピルトリエトキシシラン、γ−ブロモプロピルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリクロロシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリクロロシランなどが含まれる。式(II)で表される化合物の好ましい例は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランである。
化合物(L)が上記式(I)で表される少なくとも1種の化合物(A)と上記式(II)で表される少なくとも1種の化合物(B)とを含む場合、組成物において、[式(I)で表される化合物に由来するM1原子のモル数]/[式(II)で表される化合物に由来するM2原子のモル数]の比が、99.5/0.5〜80.0/20.0の範囲にあることが好ましい。この比が、99.5/0.5より大きくなると、ガスバリア性積層体の耐熱水性が低下する場合がある。また、この比が80.0/20.0より小さくなると、ガスバリア性積層体のガスバリア性が低下する場合がある。この比は、98.0/2.0〜89.9/10.1の範囲にあることがより好ましい。
なお、[式(I)で表される化合物に由来するM1原子のモル数]は加水分解縮合物の生成に用いた[式(I)で表される化合物のモル数]に実質的に等しく、[式(II)で表される化合物に由来するM2原子のモル数]は、加水分解縮合物の生成に用いた[式(II)で表される化合物のモル数]に実質的に等しい。そのため、以下の説明では、上記比を、[式(I)で表される化合物のモル数]/[式(II)で表される化合物のモル数]に置き換えて説明する場合がある。
化合物(L)に占める、式(I)で表される化合物および式(II)で表される化合物の割合(式(II)で表される化合物を含まない場合には、式(I)で表される化合物の割合)は、たとえば80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、95モル%以上、98モル%以上、99モル%以上、または100モル%である。
化合物(L)の加水分解縮合物において縮合される分子の数は、加水分解・縮合に際して使用する、水の量、触媒の種類や濃度、加水分解縮合を行う温度などによって制御できる。
ガスバリア層を構成する組成物では、ガスバリア性積層体のガスバリア性がより良好となる観点から、[化合物(L)に由来する無機成分の重量]/[化合物(L)に由来する有機成分の重量と重合体(X)に由来する有機成分の重量との合計]の比が20.0/80.0〜80.0/20.0の範囲にあることが好ましく、30.0/70.0〜69.9/30.1の範囲にあることがより好ましい。
化合物(L)に由来する無機成分の重量は、該組成物を調製する際に使用する原料の重量から算出することができる。すなわち、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解縮合したもの、化合物(L)が完全に加水分解しその一部が縮合したもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどが完全に加水分解・縮合して金属酸化物になったと仮定し、その金属酸化物の重量を化合物(L)に由来する無機成分の重量とみなす。
金属酸化物の重量の算出をより具体的に説明すると、式(I)で表される化合物(A)がR2を含まない場合、それが完全に加水分解・縮合したときには、組成式が、M1Op/2で表される化合物となる。また、式(I)で表される化合物(A)がR2を含む場合、それが完全に加水分解・縮合したときには、組成式が、M1O(q+r)/2R2 (p-q-r)で表される化合物となる。この化合物のうちM1O(q+r)/2の部分が金属酸化物である。R2については、化合物(L)に由来する有機成分とする。また、化合物(B)についても同様に算出する。このとき、Z2については、化合物(L)に由来する有機成分とする。
なお、金属イオンを含まないイオン(たとえばアンモニウムイオン)によって重合体(X)が中和されている場合、そのイオン(たとえばアンモニウムイオン)の重量も、重合体(X)に由来する有機成分の重量に加えられる。
[化合物(P)]
2つ以上のアミノ基を含有する化合物(P)は、化合物(L)および重合体(X)とは異なる化合物である。化合物(P)の具体例には、アルキレンジアミン類、ポリアルキレンポリアミン類、脂環族ポリアミン類、芳香族ポリアミン類、ポリビニルアミン類等が含まれるが、ガスバリア性積層体のガスバリア性がより良好となる観点からアルキレンジアミンが好ましい。
化合物(P)の具体例には、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、キシリレンジアミン、キトサン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等が含まれる。化合物(P)は、ガスバリア性積層体のガスバリア性がより良好となる観点から、好ましくはエチレンジアミン、プロピレンジアミンおよびキトサンからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、たとえばそれらのいずれか1つである。
ガスバリア層を構成する組成物において、[化合物(P)に含まれるアミノ基の当量]/[重合体(X)の官能基に含まれる−COO−基の当量]の比は、0.2/100〜20.0/100の範囲(たとえば0.2/100〜19.4/100の範囲)にある。この範囲では、ガスバリア性積層体が良好なガスバリア性を示す。上記比が0.2/100より小さいと、ガスバリア性積層体の耐熱水性が低くなり、レトルト後のガスバリア性が低下する。一方、上記比が20.0/100より大きいと、ガスバリア性積層体のレトルト処理前後のガスバリア性が低下する。上記比は、前記した理由から、好ましくは1.0/100〜4.9/100の範囲にある。
[化合物(Q)]
ガスバリア層を構成する組成物は、2つ以上の水酸基を含有する化合物(Q)を含んでもよい。この構成によれば、ガスバリア性積層体の、伸長後のガスバリア性が向上する。より具体的には、化合物(Q)を添加することによって、ガスバリア性積層体が伸長されてもガスバリア層がダメージを受けにくくなり、その結果、伸長された後でも高いガスバリア性を保持し、印刷、ラミネートなどの加工時のテンションによる伸長、食品が充填された容器が落下した時の伸長などが起きた後の状態においても、ガスバリア性積層体のガスバリア性が低下しにくくなる。
化合物(Q)は、化合物(L)および重合体(X)とは異なる化合物である。化合物(Q)には、低分子量の化合物および高分子量の化合物が含まれる。化合物(Q)の好ましい例には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、でんぷんなどの多糖類、でんぷんなどの多糖類から誘導される多糖類誘導体、といった高分子化合物が含まれる。
[カルボン酸含有重合体(重合体(X))]
ガスバリア層を構成する組成物は、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体の中和物を含む。その重合体(重合体(X))を、以下、「カルボン酸含有重合体」という場合がある。
カルボン酸含有重合体の中和物は、カルボン酸含有重合体の官能基に含まれる−COO−基の少なくとも一部を2価以上の金属イオンで中和することによって得られる。カルボン酸含有重合体は、重合体1分子中に、2個以上のカルボキシル基または1個以上のカルボン酸無水物基を有する。具体的には、アクリル酸単位、メタクリル酸単位、マレイン酸単位、イタコン酸単位などの、カルボキシル基を1個以上有する構成単位を重合体1分子中に2個以上含有する重合体を用いることができる。また、無水マレイン酸単位や無水フタル酸単位などのカルボン酸無水物の構造を有する構成単位を含有する重合体を用いることもできる。カルボキシル基を1個以上有する構成単位および/またはカルボン酸無水物の構造を有する構成単位(以下、両者をまとめて「カルボン酸含有単位(G)」という場合がある)は、1種類または2種類以上がカルボン酸含有重合体に含まれていてもよい。
また、カルボン酸含有重合体の全構成単位に占めるカルボン酸含有単位(G)の含有率を10モル%以上とすることによって、ガスバリア性が良好なガスバリア性積層体が得られる。この含有率は、20モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましく、70モル%以上であることが特に好ましい。なお、カルボン酸含有重合体が、カルボキシル基を1個以上含有する構成単位と、カルボン酸無水物の構造を有する構成単位の両方を含む場合、両者の合計が上記の範囲であればよい。
カルボン酸含有重合体が含有していてもよい、カルボン酸含有単位(G)以外の他の構成単位は、特に限定されないが、アクリル酸メチル単位、メタクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位、メタクリル酸エチル単位、アクリル酸ブチル単位、メタクリル酸ブチル単位等の(メタ)アクリル酸エステル類から誘導される構成単位;ギ酸ビニル単位、酢酸ビニル単位などのビニルエステル類から誘導される構成単位;スチレン単位、p−スチレンスルホン酸単位;エチレン単位、プロピレン単位、イソブチレン単位などのオレフィン類から誘導される構成単位などから選ばれる1種類以上の構成単位を挙げることができる。カルボン酸含有重合体が、2種以上の構成単位を含有する場合、該カルボン酸含有重合体は、交互共重合体の形態、ランダム共重合体の形態、ブロック共重合体の形態、さらにはテーパー型の共重合体の形態のいずれであってもよい。
カルボン酸含有重合体の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(アクリル酸/メタクリル酸)を挙げることができる。カルボン酸含有重合体は、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種の重合体であってもよい。また、上記したカルボン酸含有単位(G)以外の他の構成単位を含有する場合の具体例としては、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体のケン化物などが挙げられる。
カルボン酸含有重合体の分子量は特に制限されないが、得られるガスバリア性積層体のガスバリア性が優れる点、および落下衝撃強さなどの力学的物性が優れる点から、数平均分子量が5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることがさらに好ましい。カルボン酸含有重合体の数平均分子量の上限は特に制限がないが、一般的には1,500,000以下である。
また、カルボン酸含有重合体の分子量分布も特に制限されるものではないが、ガスバリア性積層体のヘイズなどの表面外観、および後述する溶液(U)の貯蔵安定性などが良好となる観点から、カルボン酸含有重合体の重量平均分子量/数平均分子量の比で表される分子量分布は1〜6の範囲であることが好ましく、1〜5の範囲であることがより好ましく、1〜4の範囲であることがさらに好ましい。
[中和(イオン化)]
カルボン酸含有重合体の中和物は、カルボン酸含有重合体のカルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基(官能基(F))の少なくとも一部を2価以上の金属イオンで中和することによって得られる。換言すれば、この重合体は、2価以上の金属イオンで中和されたカルボキシル基を含む。
官能基(F)を中和する金属イオンは2価以上であることが重要である。官能基(F))が未中和または1価のイオンのみによって中和されている場合には、良好なガスバリア性を有する積層体が得られない。2価以上の金属イオンの具体例としてはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、2価の鉄イオン、3価の鉄イオン、亜鉛イオン、2価の銅イオン、鉛イオン、2価の水銀イオン、バリウムイオン、ニッケルイオン、ジルコニウムイオン、アルミニウムイオン、チタンイオンなどを挙げることができる。たとえば、2価以上の金属イオンは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオンおよびアルミニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つのイオンであってもよい。
カルボン酸重合体の官能基(F)に含まれる−COO−基は、たとえば10モル%以上(たとえば15モル%以上)が2価以上の金属イオンで中和されている。カルボン酸含有重合体中のカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基が2価以上の金属イオンで中和されることによって、本発明で用いられるガスバリア性積層体は、良好なガスバリア性を示す。
なお、カルボン酸無水物基は、−COO−基を2つ含んでいるとみなす。すなわち、aモルのカルボキシル基とbモルのカルボン酸無水物基とが存在する場合、それに含まれる−COO−基は、全体で(a+2b)モルである。官能基(F)に含まれる−COO−基のうち、2価以上の金属イオンで中和されている割合は、好ましくは60モル%以上100モル%以下であり、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上である。中和されている割合を高めることによって、より高いガスバリア性を実現できる。
官能基(F)の中和度(イオン化度)は、ガスバリア性積層体の赤外吸収スペクトルをATR法(全反射測定法)で測定するか、または、ガスバリア性積層体からガスバリア層をかきとり、その赤外吸収スペクトルをKBr法で測定することによって求めることができる。また、蛍光X線測定によるイオン化に用いた金属元素の蛍光X線強度の値によっても求めることができる。
赤外吸収スペクトルでは中和前(イオン化前)のカルボキシル基またはカルボン酸無水物基のC=O伸縮振動に帰属されるピークは1600cm-1〜1850cm-1の範囲に観察され、中和(イオン化)された後のカルボキシル基のC=O伸縮振動は1500cm-1〜1600cm-1の範囲に観察されるため、赤外吸収スペクトルにおいて両者を分離して評価することができる。具体的には、それぞれの範囲における最大の吸光度からその比を求め、予め作成した検量線を用いてガスバリア性積層体におけるガスバリア層を構成する重合体のイオン化度を算出することができる。なお、検量線は、中和度が異なる複数の標準サンプルについて赤外吸収スペクトルを測定することによって作成できる。
ガスバリア層の膜厚が1μm以下であり、かつ基材がエステル結合を含む場合、ATR法による赤外吸収スペクトルでは基材のエステル結合のピークが検出され、ガスバリア層を構成するカルボン酸含有重合体(=重合体(X))の−COO−のピークと重なるため、イオン化度を正確に求めることができない。そこで、膜厚が1μm以下のガスバリア層を構成する重合体(X)のイオン化度は、蛍光X線測定の結果に基いて算出する。
具体的には、エステル結合を含まない基材上に積層したガスバリア層を構成する重合体(X)のイオン化度を、赤外吸収スペクトルによって測定する。次に、イオン化度が測定された積層体について、蛍光X線測定によって、イオン化に用いた金属元素の蛍光X線強度を求める。続いて、イオン化度のみが異なる積層体について同様の測定を実施する。イオン化度と、イオン化に用いた金属元素の蛍光X線強度との相関を求め、検量線を作成する。そして、エステル結合を含む基材を用いたガスバリア性積層体について蛍光X線測定を行い、イオン化に用いた金属元素の蛍光X線強度から、上記検量線に基づいてイオン化度を求める。
また、ガスバリア層を構成する組成物は、所望により、本発明の効果を損なわない範囲内において、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩のような無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩のような有機酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナートのようなアセチルアセトナート金属錯体、チタノセンなどのシクロペンタジエニル金属錯体、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物、架橋剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を含有していてもよい。また、ガスバリア層を構成する組成物は、金属酸化物の微粉末やシリカ微粉末などを含有していてもよい。
[基材]
ガスバリア性積層体で用いられる基材としては、熱可塑性樹脂フィルムや熱硬化性樹脂フィルム等の様々な材料からなる基材を用いることができる。たとえば、熱可塑性樹脂フィルムや熱硬化性樹脂フィルムといったフィルム;布帛や紙類等の繊維集合体;木材;金属酸化物などからなる所定形状のフィルムを用いることができる。中でも、熱可塑性樹脂フィルムは、食品包装材料に用いられるガスバリア性積層体の基材として特に有用である。また、基材は紙層を含んでもよい。
熱可塑性樹脂フィルムとしては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体などのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリアリレート、再生セルロース、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー樹脂等を成形加工したフィルムを挙げることができる。食品包装材料に用いられる積層体の基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、またはナイロン66からなるフィルムが好ましい。食品包装材料に用いられる積層体の基材としては、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)が好ましく、ナイロン6およびナイロン66が最も好ましい。ナイロン6およびナイロン66は力学的物性に優れている。そのため、[基材であるナイロン6またはナイロン66とガスバリア層とを含む多層膜]/接着材層/シーラント層、という構成を有する積層体は、力学的物性の観点から好ましい。この積層体は1回のラミネート工程で作製できるため、環境負荷が少なく、生産性が高い。さらに、この積層体は原料の量が少なくてすむ。力学的物性の観点から、基材であるポリアミドフィルムの厚さは、好ましくは15μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。ポリアミドフィルムの厚さは、たとえば50μm以下である。
ガスバリア層がなくポリアミドフィルムが積層体の最表面に配置されている場合、レトルト殺菌処理などの高温加熱処理によってポリアミドフィルムが劣化し、ポリアミドフィルムの力学的物性が著しく低下する。しかし、ガスバリア層がポリアミドフィルムの外側に存在する場合、ガスバリア層がポリアミドフィルムの劣化を防止するため、レトルト殺菌処理後でもポリアミドフィルム本来の力学的物性が維持される。この観点からも、基材としてポリアミドフィルムを用いることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよいし、無延伸フィルムであってもよいが、ガスバリア性積層体の印刷、ラミネートなどの加工適正が優れていることから、延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸フィルムとしては、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チューブラ延伸法のいずれの方法で製造された二軸延伸フィルムであってもよい。
また、ガスバリア性積層体は、基材とガスバリア層との間に配置された接着層(H)をさらに含んでもよい。この構成によれば、基材とガスバリア層との接着性を高めることができる。接着性樹脂からなる接着層(H)は、基材の表面を公知のアンカーコーティング剤で処理するか、基材の表面に公知の接着剤を塗工することで形成できる。様々な接着性樹脂について検討した結果、ウレタン結合を含有し、窒素原子(ウレタン結合の窒素原子)が樹脂全体に占める割合が0.5〜12重量%の範囲である接着性樹脂が好ましいことを見出した。そのような接着性樹脂を用いることによって、基材とガスバリア層との接着性を特に高めることができる。基材とガスバリア層とを接着層(H)を介して強く接着することによって、本発明で用いられるガスバリア性積層体に対して印刷やラミネートなどの加工を施す際に、ガスバリア性や外観が悪化することを抑制できる。接着性樹脂に含まれる窒素原子(ウレタン結合の窒素原子)の含有率として2〜11重量%の範囲であることがより好ましく、3〜8重量%の範囲であることがさらに好ましい。
ウレタン結合を含有する接着性樹脂としては、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを混合し反応させる二液反応型ポリレタン系接着剤が好ましい。
接着層(H)を厚くすることによってガスバリア性積層体の強度を高めることができる。しかし、接着層(H)を厚くしすぎると、外観が悪化する。接着層(H)の厚さは、0.03μm〜0.18μmの範囲にあることが好ましい。この構成によれば、本発明で用いられるガスバリア性積層体に対して印刷やラミネートなどの加工を施す際に、ガスバリア性や外観が悪化することを抑制でき、さらに、本発明で用いられるガスバリア性積層体を用いた包装材の落下強度を高めることができる。接着層(H)の厚さは、0.04μm〜0.14μmの範囲にあることがより好ましく、0.05μm〜0.10μmの範囲にあることがさらに好ましい。
本発明で用いられるガスバリア性積層体では、積層体に含まれるガスバリア層の厚さの合計が、1.0μm以下であることが好ましく、たとえば0.9μm以下である。ガスバリア層を薄くすることによって、印刷、ラミネートなどの加工時におけるガスバリア性積層体の寸法変化を低く抑えることができる。また、ガスバリア層を薄くすることによって、ガスバリア性積層体の柔軟性が増し、ガスバリア性積層体の力学的特性を、基材に用いているフィルム自体の力学的特性に近づけることができる。本発明で用いられるガスバリア性積層体では、積層体に含まれるガスバリア層の厚さの合計が、1.0μm以下(たとえば0.9μm以下)の場合でも、20℃で85%RH雰囲気における酸素透過度を、1.1cm3/(m2・day・atm)以下(たとえば1.0cm3/(m2・day・atm)以下)とすることが可能である。ガスバリア層の1層の厚さは、ガスバリア性積層体のガスバリア性が良好となる観点から、0.05μm以上(たとえば0.15μm以上)であることが好ましい。また、ガスバリア層の合計の厚さは0.1μm以上(たとえば0.2μm以上)であることがさらに好ましい。ガスバリア層の厚さは、ガスバリア層の形成に用いられる溶液の濃度や、塗工方法によって制御できる。
また、本発明の積層体は、基材とガスバリア層との間に、無機物からなる層(以下、「無機層」という場合がある)を含んでもよい。無機層は、無機酸化物などの無機物で形成できる。無機層は、蒸着法などの気相成膜法で形成できる。
無機層を構成する無機物は、酸素や水蒸気などに対するガスバリア性を有するものであればよく、好ましくは透明性を有するものである。たとえば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸窒化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫、またはそれらの混合物といった無機酸化物で無機層を形成できる。これらの中でも、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムは、酸素や水蒸気などのガスに対するバリア性が優れる観点から好ましく用いることができる。
無機層の好ましい厚さは、無機層を構成する無機酸化物の種類によって異なるが、通常、2nm〜500nmの範囲である。この範囲で、ガスバリア性積層体のガスバリア性や機械的物性が良好となる厚さを選択すればよい。無機層の厚さが2nm未満である場合、酸素や水蒸気などのガスに対する無機層のバリア性の発現に再現性がなく、無機層が充分なガスバリア性を発現しない場合がある。無機層の厚さが500nmを超える場合は、ガスバリア性積層体を引っ張ったり屈曲させたりした場合にガスバリア性が低下し易くなる。無機層の厚さは、好ましくは5〜200nmの範囲であり、さらに好ましくは10〜100nmの範囲である。
無機層は、基材上に無機酸化物を堆積させることによって形成できる。形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)などを挙げることができる。これらの中でも、真空蒸着法は、生産性の観点から好ましく用いることができる。真空蒸着を行う際の加熱方法としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式および誘導加熱方式のいずれかが好ましい。また、無機層と基材との密着性および無機層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着してもよい。また、無機層の透明性を上げるために、蒸着の際、酸素ガスなどを吹き込んで反応を生じさせる反応蒸着法を採用してもよい。
ガスバリア層の微細構造は特に限定されるものではないが、ガスバリア層が以下に記載する微細構造を有する場合には、ガスバリア性積層体を伸長した際におけるガスバリア性の低下などが抑えられるため好ましい。好ましい微細構造としては、海相(α)および島相(β)からなる海島構造である。島相(β)は、海相(α)に比べて、化合物(L)の加水分解縮合物の割合が高い領域である。
海相(α)と島相(β)とは、それぞれ、さらに微細構造を有することが好ましい。たとえば、海相(α)は、主にカルボン酸含有重合体の中和物からなる海相(α1)と、主に化合物(L)の加水分解縮合物からなる島相(α2)とによって構成される海島構造をさらに形成していてもよい。また、島相(β)は、主にカルボン酸含有重合体の中和物からなる海相(β1)と、主に化合物(L)の加水分解縮合物からなる島相(β2)とによって構成される海島構造をさらに形成していてもよい。島相(β)中における[島相(β2)/海相(β1)]の比率(体積比)は、海相(α)中における[島相(α2)/海相(α1)]の比率よりも大きいことが好ましい。島相(β)の径は、好ましくは30nm〜1200nmの範囲であり、より好ましくは50〜500nmの範囲であり、さらに好ましくは50nm〜400nmの範囲である。島相(β2)および島相(α2)の径は、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは30nm以下であり、さらに好ましくは20nm以下である。
上記のような構造を得るためには、化合物(L)とカルボン酸含有重合体との架橋反応に優先して、化合物(L)の適切な加水分解縮合が起こる必要がある。そのために、特定の化合物(L)をカルボン酸含有重合体と適切な比率で使用する、化合物(L)をカルボン酸含有重合体と混合する前に予め加水分解縮合させておく、適切な加水分解縮合触媒を使用する、などの方法を取るなどの方法が採用できる。
また、特定の製造条件を選択すると、化合物(L)の加水分解縮合物の割合が高い領域がガスバリア層の表面に層状に形成されることが見出された。以下、ガスバリア層表面に形成された化合物(L)の加水分解縮合物の層を「スキン層」ということがある。スキン層が形成されることによって、ガスバリア層表面の耐水性が向上する。化合物(L)の加水分解縮合物からなるスキン層は、疎水的な特性をガスバリア層表面に付与し、水に濡れた状態のガスバリア層同士を重ねてもそれらが膠着しない特性をガスバリア性積層体に付与する。さらに驚くことに、疎水的な特性を有するスキン層がガスバリア層の表面に形成されても、その表面に対する印刷用インクなどの濡れ性は良好である。製造条件によって、ガスバリア層のスキン層の有無、あるいは形成されるスキン層の状態が異なる。鋭意検討した結果、本発明者らは、ガスバリア層と水との接触角と、好ましいスキン層との間に相関があり、その接触角が以下の条件を満たすときに、好ましいスキン層が形成されることを見出した。ガスバリア層と水との接触角が20°未満のときはスキン層の形成が不充分なことがある。この場合、ガスバリア層の表面が水によって膨潤しやすくなり、水に濡れた状態で積層体同士を重ねておくと、まれにそれらが膠着する場合がある。また、接触角が20°以上のときはスキン層形成が充分であり、ガスバリア層の表面は水によって膨潤しないため、膠着は起きない。ガスバリア層と水との接触角は好ましくは、24°以上であり、さらに好ましくは26°以上である。また、接触角が65゜より大きいとスキン層が厚くなりすぎ、ガスバリア性積層体の透明性が低下する。したがって、接触角は65゜以下であることが好ましく、60゜以下であることがより好ましく、58゜以下であることがさらに好ましい。
ガスバリア性積層体は、基材上に積層されたポリオレフィン層をさらに含んでもよい。なお、「基材上に積層」とは、基材に直接積層されている場合に加え、他の層を介して基材に積層されている場合を含む。たとえば、ガスバリア性積層体を構成する層のうち容器側となる層には、熱シール性を付与するために、ポリオレフィン層(以下、「PO層」と記載することがある)を用いてもよい。以下では、基材と基材上に形成されたガスバリア層とを含む多層膜を、ガスバリア性多層膜という場合がある。なお、このガスバリア性多層膜も、本発明で用いられるガスバリア性積層体の1種である。
ガスバリア性積層体は、基材上に積層されたポリオレフィン層をさらに含んでもよい。なお、「基材上に積層」とは、基材に直接積層されている場合に加え、他の層を介して基材に積層されている場合を含む。たとえば、ガスバリア性積層体を構成する層のうち容器側となる層には、熱シール性を付与するために、ポリオレフィン層(以下、「PO層」と記載することがある)を用いてもよい。以下では、基材と基材上に形成されたガスバリア層とを含む多層膜を、ガスバリア性多層膜という場合がある。なお、このガスバリア性多層膜も、本発明で用いられるガスバリア性積層体の1種である。
ガスバリア性多層膜には、様々な特性(たとえば熱シール性)を付与するための層が積層されていてもよい。たとえば、ガスバリア性積層体は、ガスバリア性多層膜/接着層/ポリオレフィン層、または、ポリオレフィン層/接着層/ガスバリア性多層膜/接着層/ポリオレフィン層、といった構成を有してもよい。すなわち、ガスバリア積層体は、一方の最表面に配置されたポリオレフィン層を含んでもよい。また、ガスバリア積層体は、一方の最表面に配置された第1のポリオレフィン層と、他方の最表面に配置された第2のポリオレフィン層とを含んでもよい。第1のポリオレフィン層と第2のポリオレフィン層とは同じでもよいし、異なってもよい。
たとえば、ガスバリア性積層体は、容器の外側となる層から容器の内側となる層に向かって、ガスバリア性多層膜/PO層、無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/PO層、ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/PO層、ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/ポリアミド層/PO層、ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/PO層、ポリアミド層/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/PO層、ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/PO層、ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、ポリアミド層/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/ポリアミド層/PO層、ポリエステル層/ガスバリア性多層膜/PO層、ポリエステル層/ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、ポリエステル層/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/PO層、ポリエステル層/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、ポリエステル層/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/PO層、ポリエステル層/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/ポリアミド層/PO層、ガスバリア性多層膜/EVOH層/PO層、ガスバリア性多層膜/EVOH層/ポリアミド層/PO層、PO層/EVOH層/ガスバリア性多層膜/PO層、PO層/EVOH層/ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、PO層/ガスバリア性多層膜/EVOH層/PO層、PO層/ガスバリア性多層膜/EVOH層/ポリアミド層/PO層、ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/EVOH層/PO層、ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/EVOH層/PO層、ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/EVOH層/ポリアミド層/PO層、ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/EVOH層/PO層、紙層/PO層/ガスバリア性多層膜/PO層、紙層/PO層/ガスバリア積層体層/ポリアミド層/PO層、紙層/PO層/ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/PO層、紙層/PO層/ガスバリア性多層膜/EVOH層/PO層、紙層/PO層/ガスバリア積層体層/EVOH層/ポリアミド層/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性多層膜/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア積層体層/ポリアミド層/PO層、PO層/紙層/PO層/ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性多層膜/EVOH層/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア積層体層/EVOH層/ポリアミド層/PO層、という構成を有してもよい。特に好ましいガスバリア性積層体の構成は、ガスバリア性多層膜/PO層という構成である。これらの構成において、ガスバリア性多層膜の基材として、たとえばポリアミドフィルムを用いることができる。このような構成を有する蓋材は、加熱殺菌後や、加熱殺菌/輸送後の酸素バリア性に特に優れる。これらの蓋材を構成する層と層との間には、接着層を設けてもよい。また、ガスバリア性積層体のガスバリア層が基材の片面にある場合、ガスバリア層は、基材よりも内側(容器側)にあってもよいし、基材よりも外側にあってもよい。ポリオレフィン層、ポリアミド層、ポリエステル層、無機蒸着フィルム層、EVOH層、紙層について、以下に説明する。
上記ポリオレフィン(PO)層としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、アイオノマー、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンープロピレン共重合体等から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる層を用いることができる。また、上記少なくとも1種の樹脂を押し出して得られるフィルムを用いることができる。これらのポリオレフィン層は、延伸または無延伸のいずれでもよい。好ましいポリオレフィン層としては、低密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、またはポリプロピレンからなる層、またはこれらの樹脂をフィルム化したシートが挙げられる。直鎖状(線状)低密度ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる層またはシートがより好ましい。成型加工の容易さ、耐熱性などの観点から、上記積層体を構成するいずれのPO層も、無延伸低密度ポリエチレン、無延伸直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、または無延伸ポリプロピレンからなることが好ましく、無延伸直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、または無延伸ポリプロピレンからなることがさらに好ましい。
特に、ガスバリア性積層体を構成する層のうち最も容器側に配置されるPO層は、無延伸低密度ポリエチレン、無延伸直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、または無延伸ポリプロピレンからなることが好ましい。
また、上記PO層は、イージーピール性のポリオレフィンからなるものであってもよい。イージーピール性のポリオレフィンとしては既知ものを使用することができる。例えば、ポリオレフィンからなるベース樹脂に、そのベース樹脂に対して非相溶系あるいは部分相溶系の熱可塑性樹脂をポリマーブレンドすることによって得られる混合樹脂を使用できる。ベース樹脂として使用できるポリオレフィンとしては、PO層の材料として上述した樹脂を使用できる。
ベース樹脂の種類にもよるが、ベース樹脂に対して非相溶系あるいは部分相溶系の熱可塑性樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体のような酸共重合物やエチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体のようなエステル化物、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどを用いることができる。また、上述した熱可塑性樹脂以外にも、酸変性物など様々な樹脂の使用が可能である。これらの樹脂は、ベース樹脂と同様に単体で用いてもよいし、複数の樹脂をブレンドして用いてもよい。
ベース樹脂と、ベース樹脂に対して非相溶系あるいは部分相溶系の熱可塑性樹脂との好ましい組合せとしては、ポリプロピレン/ポリスチレン、ポリプロピレン/ポリエチレンを挙げることができる。
上記PO層の厚さは特に限定されないが、機械的強靱性、耐衝撃性、耐突き刺し性等の観点から、10μm〜200μmの範囲にあることが好ましく、20μm〜150μmの範囲にあることがより好ましい。
上記ポリアミド層としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、およびナイロンMXD6樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を押し出して得られるフィルムを用いることができる。これらのポリアミド層は、延伸または無延伸のいずれであってもよい。好ましいポリアミド層としては、ナイロン6またはナイロン66からなるフィルム(たとえば一軸または二軸延伸フィルム)が挙げられる。
上記ポリアミド層の厚さは特に限定されないが、機械的強靱性、耐衝撃性、耐突き刺し性等の観点から、5μm〜200μmの範囲にあることが好ましく、5μm〜100μmの範囲にあることがより好ましい。
上記ポリエステル層としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリブチレンナフタレートから選ばれる少なくとも1種の樹脂を押し出して得られるフィルムを用いることができる。これらのポリエステル層は、延伸または無延伸のいずれでもよい。好ましいポリエステル層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートをフィルム化、または延伸して得られるシートである。
上記ポリエステル層の厚さは特に限定されないが、機械的強靱性、耐衝撃性、耐突き刺し性等の観点から、5μm〜200μmの範囲にあることが好ましく、5μm〜100μmの範囲にあることがより好ましい。
上記無機蒸着フィルム層としては、延伸フィルム上に、無機層を蒸着したフィルムを用いることができる。延伸フィルムとしては、一軸あるいは二軸延伸された、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフィンフィルム等を用いることができる。無機層には、上述した無機層を用いることができる。
上記EVOH層としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体を鹸化した樹脂を押し出して得られるフィルムを用いることができる。EVOH層は、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、または無延伸フィルムのいずれでもよいが、二軸延伸フィルムが好ましい。EVOH層の厚さは特に限定されないが、ガスバリア性、機械的強靭性、加工適性等の観点から、5μm〜200μmの範囲にあることが好ましく、5μm〜100μmの範囲にあることがより好ましい。
上記紙層に用いられる紙としては、クラフト紙、上質紙、模造紙、グラシン紙、パーチメント紙、合成紙、白板紙、マニラボール、ミルクカートン原紙、カップ原紙、アイボリー紙等挙げられる。
ポリオレフィン層、ポリアミド層、ポリエステル層、無機蒸着フィルム層、EVOH層、紙層は、ドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、ホットメルトラミネーション法等の周知の方法によって他の層と貼り合わせてもよい。たとえば、無延伸ポリオレフィンフィルム、延伸ポリオレフィンフィルム、無延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリアミドフィルムと他の層(フィルム)とを貼り合わせてもよい。また、周知のTダイ押出し法等によって、他の層(フィルム)上に、PO層やポリアミド層を形成してもよい。ポリオレフィン層と他の層との間に、接着層を配置してもよい。接着層は、アンカーコート剤、接着剤、接着性樹脂などを用いて形成できる。
[ガスバリア性積層体の製造方法]
以下、本発明で用いられるガスバリア性積層体を製造するための方法について説明する。この方法によれば、本発明で用いられるガスバリア性積層体を容易に製造できる。本発明の製造方法に用いられる材料、および積層体の構成は、上述したものと同様であるので、重複する部分については説明を省略する場合がある。
本発明の製造方法は、工程(i)および(ii)を含む。
工程(i)は、重合体(X)と、化合物(L)の加水分解縮合物とを含む組成物からなる層を基材上に形成する工程である。その層は、基材上に直接形成されるか、または他の層を介して基材上に形成される。その組成物において、重合体(X)の官能基(F)に含まれる−COO−基の少なくとも一部が、2つ以上のアミノ基を含有する化合物(P)によって中和および/または反応されている。その組成物において、[化合物(P)に含まれるアミノ基の当量]/[重合体(X)の官能基(F)に含まれる−COO−基の当量]の比は、0.2/100〜20.0/100の範囲にある。
化合物(L)に含まれる化合物、およびそれらの化合物の割合については、ガスバリア層を構成する組成物について説明したものと同様である。
工程(ii)は、2価以上の金属イオンを含む溶液に、工程(i)で形成された層を接触させる工程である(以下、この工程をイオン化工程という場合がある)。たとえば、形成した層に2価以上の金属イオンを含む溶液を吹きつけたり、基材と基材上の層とをともに2価以上の金属イオンを含む溶液に浸漬したりすることによって行うことができる。工程(ii)によって、重合体(X)の官能基(F)に含まれる−COO−基の少なくとも一部が中和される。
以下、工程(i)について詳細に説明する。なお、化合物(P)とカルボン酸含有重合体とを混合すると、両者が反応してしまい溶液(U)の塗工が困難になることがあるため、工程(i)は、化合物(P)と酸(R)とを含む溶液(S)を調製する工程(i−a)を含むことが好ましい。溶液(U)の調整方法としては、溶液(U)が塗工できれば特に制限されるものではないが、例えば以下の方法を挙げることができる。
方法(1)として、重合体(X)を溶解させた溶液に、化合物(L)、溶液(S)および必要に応じて溶媒を添加して混合する方法を採用できる。また、方法(2)として、溶媒存在下または無溶媒下で化合物(L)からオリゴマー(V)(加水分解縮合物の1種)を調製し、オリゴマー(V)に重合体(X)を溶解させた溶液および溶液(S)を混合する方法も採用することができる。なお、化合物(L)やオリゴマー(V)は、単独で溶液に加えてもよいし、それらを溶解させた溶液の形態で溶媒に加えてもよい。
溶液(U)の調整方法としては、上記(2)の方法を用いることによって、ガスバリア性が特に優れたガスバリア性積層体が得られる。以下、(2)の方法について、より具体的に説明する。
上記(2)の方法において、工程(i)は、(i−a)化合物(P)と酸(R)とを含む溶液(S)を調製する工程と、(i−b)化合物(L)を加水分解、縮合して得られるオリゴマーを含む溶液(T)を調製する工程と、(i−c)溶液(S)と溶液(T)と重合体(X)とを含む溶液(U)を調製する工程と、(i−d)溶液(U)を基材に塗工して乾燥させることによって上記の層を形成する工程と、を含んでもよい。工程(i−a)と工程(i−b)とは、どちらを先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
工程(i−a)では、化合物(P)と酸(R)とを含む溶液(S)を調製する。化合物(P)のアミノ基を酸(R)で中和しておくことによって、カルボン酸含有重合体と混合してもゲル化しないようになる。化合物(P)のアミノ基と酸(R)とからなる塩と、カルボン酸重合体の−COO−基との交換反応で生成した酸(R)は、工程(i−d)の乾燥工程においてガスバリア層から取り除かれることが好ましい。交換反応の結果、化合物(P)のアミノ基とカルボン酸含有重合体の−COO−基とで中和反応が起こり、中和された塩の一部は引き続きアミド化反応によりアミド基になる。これらの中和反応およびアミド化反応によってカルボン酸含有重合体は架橋され、耐熱水性が発現される。
酸(R)は特に限定されないが、工程(i−d)の乾燥工程においてガスバリア層から取り除き易いという観点から、好ましい酸(R)として、例えば塩酸、硝酸、炭酸、酢酸などを挙げることができ、中でも塩酸が好ましい。溶液(S)における酸(R)の使用量は、[酸(R)の当量]/[化合物(P)のアミノ基の当量]の比が、0.5/1以上となる量であればよい。0.5/1以上の条件を満たせばカルボン酸含有重合体との混合時のゲル化を防ぐことができる。ガスバリア性積層体のガスバリア性がより良好となる観点から、[酸(R)の当量]/[化合物(P)のアミノ基の当量]の比は、0.5/1〜10/1の範囲にあることが好ましく、0.7/1〜5/1の範囲にあることがより好ましく、0.7/1〜2/1の範囲にあることがさらに好ましい。
工程(i−b)は、たとえば、化合物(A)、または化合物(A)および化合物(B)を含む化合物(L)を、加水分解、縮合して得られるオリゴマー(V)を含む溶液(T)を調製する工程である。化合物(L)、酸触媒、水、および必要に応じて有機溶媒を含む反応系中において、化合物(L)を加水分解、縮合させることによってオリゴマー(V)を得ることが好ましい。具体的には、公知のゾルゲル法で用いられている手法を適用できる。化合物(L)としては、化合物(L)が予め加水分解、縮合されているものでもよい。以下、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解縮合したもの、および化合物(L)が完全に加水分解しその一部が縮合したものから選ばれる少なくとも1つの化合物を、「化合物(L)系成分」という場合がある。
工程(i−b)で用いる酸触媒としては、公知の酸を用いることができ、例えば塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、酪酸、炭酸、シュウ酸、マレイン酸等が挙げられる。それらの中でも、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、乳酸、酪酸が特に好ましい。酸触媒の好ましい使用量は、使用する酸の種類によって異なるが、化合物(L)の金属原子1モルに対して、1×10-5〜10モルの範囲にあることが好ましく、1×10-4〜5モルの範囲にあることがより好ましく、5×10-4〜1モルの範囲にあることがさらに好ましい。酸触媒の使用量がこの範囲にある場合、ガスバリア性が高いガスバリア性積層体が得られる。
また、工程(i−b)で用いる水の使用量は、化合物(L)の種類によって異なるが、化合物(L)の加水分解性を有する特性基1当量に対して、0.05〜10当量の範囲にあることが好ましく、0.1〜5当量の範囲にあることがより好ましく、0.2〜3当量の範囲にあることがさらに好ましい。水の使用量がこの範囲にある場合、ガスバリア性が特に優れるガスバリア性積層体が得られる。なお、工程(i−b)において、塩酸のように水を含有する成分を使用する場合には、その成分によって導入される水の量も考慮して水の使用量を決定することが好ましい。
さらに、工程(i−b)の反応系においては、必要に応じて有機溶媒を使用してもよい。使用される有機溶媒は化合物(L)が溶解する溶媒であれば特に限定されない。たとえば、有機溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール等のアルコール類が好適に用いられ、化合物(L)が含有するアルコキシ基と同種の分子構造(アルコキシ成分)を有するアルコールがより好適に用いられる。具体的には、テトラメトキシシランに対してはメタノールが好ましく、テトラエトキシシランに対してはエタノールが好ましい。有機溶媒の使用量は特に限定されないが、化合物(L)の濃度が好ましくは1〜90重量%、より好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは10〜60重量%となる量であることが好ましい。
工程(i−b)において、反応系中において化合物(L)の加水分解、縮合を行う際に、反応系の温度は必ずしも限定されないが、通常2〜100℃の範囲であり、好ましくは4〜60℃の範囲であり、さらに好ましくは6〜50℃の範囲である。反応時間は触媒の量、種類等の反応条件に応じて相違するが、通常0.01〜60時間の範囲であり、好ましくは0.1〜12時間の範囲であり、より好ましくは0.1〜6時間の範囲である。また、反応は、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴンといった各種の気体の雰囲気下で行うことができる。
工程(i−b)において、化合物(L)は、全量を一度に反応系に添加してもよいし、少量ずつ何回かに分けて反応系に添加してもよい。いずれの場合でも、化合物(L)の使用量の合計が、上記の好適な範囲を満たしていることが好ましい。
工程(i−c)は、工程(i−b)で得られたオリゴマー(V)を含む溶液(T)と、工程(i−a)で調製した溶液(S)と、重合体(X)と、を含む溶液(U)を調製する工程である。溶液(U)は、溶液(T)、重合体(X)(=カルボン酸含有重合体)、溶液(S)、および必要に応じて水および/または有機溶剤を用いて調製することができる。たとえば、(1)カルボン酸含有重合体を溶解させた溶液に溶液(S)を混合し、その後溶液(T)を添加して混合する方法を採用できる。また、(2)カルボン酸含有重合体を溶解させた溶液に溶液(S)を混合し、その溶液を溶液(T)に添加して混合する方法も採用できる。さらに、(3)カルボン酸含有重合体を溶解させた溶液を、溶液(T)に添加して混合した後に、溶液(S)を添加して混合する方法も採用できる。
上記した(1)、(2)、(3)の各方法において、添加する溶液(T)、カルボン酸含有重合体を溶解させた溶液、溶液(S)は、一度に添加しても良いし、分割して添加しても良い。
工程(i−c)における、カルボン酸含有重合体を溶解させた溶液は以下の方法により調製できる。使用する溶媒は、カルボン酸含有重合体の種類に応じて選択すればよい。たとえば、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などの水溶性の重合体の場合には、水が好適である。イソブチレン−無水マレイン酸共重合体やスチレン−無水マレイン酸共重合体などの重合体の場合には、アンモニア、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ性物質を含有する水が好適である。また、カルボン酸含有重合体の溶解の妨げにならない限り、メタノール、エタノール等のアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のグリコール誘導体;グリセリン;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタンなどを併用することも可能である。
溶液(U)に含まれるカルボン酸含有重合体においては、官能基(F)に含まれる−COO−基の一部(たとえば0.1〜10モル%)が1価のイオンによって中和されていてもよい。1価イオンによる官能基(F)の中和度は、ガスバリア性積層体の透明性が良好となる観点から、0.5〜5モル%の範囲にあることがより好ましく、0.7〜3モル%の範囲にあることがさらに好ましい。1価のイオンとしては、たとえば、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどが挙げられ、アンモニウムイオンが好ましい。
溶液(U)における溶液(T)、重合体(X)(=カルボン酸含有重合体)、溶液(S)の混合比率は、得られるガスバリア層の組成物が前記した組成に関する要件を満たしていれば特に制限はない。
溶液(U)の固形分濃度は、溶液(U)の保存安定性、および溶液(U)の基材に対する塗工性の観点から、3重量%〜20重量%の範囲にあることが好ましく、4重量%〜15重量%の範囲にあることがより好ましく、5重量%〜12重量%の範囲にあることがさらに好ましい。
溶液(U)の保存安定性、およびガスバリア性積層体のガスバリア性の観点から、溶液(U)のpHは、1.0〜7.0の範囲にあることが好ましく、1.0〜6.0の範囲にあることがより好ましく、1.5〜4.0の範囲にあることがさらに好ましい。
溶液(U)のpHは、公知の方法で調整でき、たとえば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、酪酸、硫酸アンモニウムといった酸性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、ピリジン、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウムといった塩基性化合物を添加することによって調整できる。このとき、溶液中に1価の陽イオンをもたらす塩基性化合物を用いると、カルボン酸含有重合体のカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基の一部を1価のイオンで中和することができる。
工程(i−d)について説明する。工程(i−c)で調製される溶液(U)は、時間の経過とともに状態が変化し、最終的にはゲル状の組成物となる。溶液(U)がゲル状になるまでの時間は、溶液(U)の組成に依存する。基材に溶液(U)を安定的に塗工するためには、溶液(U)は、長時間にわたってその粘度が安定し、その後、徐々に粘度上昇するようなものであることが好ましい。溶液(U)は、化合物(L)系成分の全量を添加した時を基準として、25℃で2日間静置した後においても、ブルックフィールド粘度計(B型粘度計:60rpm)で測定した粘度が1N・s/m2以下(より好ましくは0.5N・s/m2以下で、特に好ましくは0.2N・s/m2以下)となるように組成を調整することが好ましい。また、溶液(U)は、25℃で10日間静置した後においても、その粘度が1N・s/m2以下(より好ましくは0.1N・s/m2以下で、特に好ましくは0.05N・s/m2以下)となるように組成を調整することがより好ましい。また、溶液(U)は、50℃で10日間静置した後においても、その粘度が1N・s/m2以下(より好ましくは0.1N・s/m2以下で、特に好ましくは0.05N・s/m2以下)となるように組成を調整することがさらに好ましい。溶液(U)の粘度が上記の範囲にある場合、貯蔵安定性に優れるとともに、得られるガスバリア性積層体のガスバリア性がより良好になることが多い。
溶液(U)の粘度が上記範囲内になるように調整するには、例えば、固形分の濃度を調整する、pHを調整する、カルボキシメチルセルロース、でんぷん、ベントナイト、トラガカントゴム、ステアリン酸塩、アルギン酸塩、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの粘度調節剤を添加するといった方法を用いることができる。
また、基材への溶液(U)の塗工を容易にするために、溶液(U)の安定性が阻害されない範囲で、溶液(U)に均一に混合することができる有機溶剤を添加してもよい。添加可能な有機溶剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルビニルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のグリコール誘導体;グリセリン;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
また、溶液(U)は、所望により、本発明の効果を損なわない範囲内において、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩のような無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩のような有機酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナートのようなアセチルアセトナート金属錯体、チタノセンなどのシクロペンタジエニル金属錯体、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物、架橋剤、上述したアミノ基を二つ以上含む化合物(P)、上述した水酸基を二つ以上含む化合物(Q)、及びそれ以外の高分子化合物、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を含んでいてもよい。また、溶液(U)は、金属酸化物の微粉末やシリカ微粉末などを含んでいてもよい。
工程(i−c)で調製された溶液(U)は、工程(i−d)において基材の少なくとも一方の面に塗工される。溶液(U)を塗工する前に、基材の表面を公知のアンカーコーティング剤で処理するか、基材の表面に公知の接着剤を塗布してもよい。溶液(U)を基材に塗工する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。好ましい方法としては、たとえば、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キスコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法などが挙げられる。
工程(i−d)で溶液(U)を基材上に塗工した後、溶液(U)に含まれる溶媒を除去することによって、イオン化工程前の積層体(積層体(I))が得られる。溶媒の除去の方法は特に制限がなく、公知の方法を適用できる。具体的には、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法などの方法を単独で、または組み合わせて適用できる。乾燥温度は、基材の流動開始温度よりも15〜20℃以上低く、かつカルボン酸含有重合体の熱分解開始温度よりも15〜20℃以上低い温度であれば特に制限されない。乾燥温度は、70℃〜200℃の範囲にあることが好ましく、80〜180℃の範囲にあることがより好ましく、90〜160℃の範囲にあることがさらに好ましい。溶媒の除去は、常圧下または減圧下のいずれで実施してもよい。
本発明で用いられるガスバリア性積層体では、ガスバリア層の表面に、化合物(L)の加水分解性縮合物からなるスキン層が形成されていることが好ましい。また、前記したように、スキン層が厚くなりすぎることは、ガスバリア性積層体の透明性が低下するために好ましくない。適度の厚さを有するスキン層を形成する方法について、以下に記載する。本発明者らが鋭意検討した結果によれば、スキン層の形成の有無、およびスキン層の形成の状態は、化合物(L)の加水分解性縮合物の反応度、化合物(L)の組成、溶液(U)に使用されている溶媒、溶液(U)を基材に塗工した後の溶液(U)の乾燥される速度などに依存する。例えば、ガスバリア層表面に対する水の接触角を測定し、接触角が前記した所定の範囲より小さい場合には、工程(i−b)、工程(i−c)の反応時間を長くすることによって、接触角を大きくすること(すなわち適切なスキン層を形成すること)が可能である。逆に接触角が前記した所定の範囲より大きい場合には、工程(i−b)、工程(i−c)の反応時間を短くすることによって、接触角を小さくすることが可能である。
工程(ii)において、上記の工程によって得られる積層体(I)を、2価以上の金属イオンを含む溶液(以下、溶液(IW)という場合がある)に接触させること(イオン化工程)によって、ガスバリア性積層体(積層体(II))が得られる。なお、イオン化工程は、本発明の効果を損なわない限り、どのような段階で行ってもよい。たとえば、イオン化工程は、包装材料の形態に加工する前あるいは加工した後に行ってもよいし、さらに包装材料中に内容物を充填して密封した後に行ってもよい。
溶液(IW)は、溶解によって2価以上の金属イオンを放出する化合物(多価金属化合物)を、溶媒に溶解させることによって調製できる。溶液(IW)を調製する際に使用する溶媒としては、水を使用することが望ましいが、水と混和しうる有機溶媒と水との混合物であってもよい。そのような有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルビニルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のグリコール誘導体;グリセリン;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタン等の有機溶媒が挙げられる。
多価金属化合物としては、ガスバリア性積層体に関して例示した金属イオン(すなわち2価以上の金属イオン)を放出する化合物を用いることができる。たとえば、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシム、酢酸鉄(II)、塩化鉄(II)、酢酸鉄(III)、塩化鉄(III)、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸銅(II)、酢酸銅(III)、酢酸鉛、酢酸水銀(II)、酢酸バリウム、酢酸ジルコニウム、塩化バリウム、硫酸バリウム、硫酸ニッケル、硫酸鉛、塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン(KAl(SO4)2)、硫酸チタン(IV)などを用いることができる。多価金属化合物は、1種類のみを用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい多価金属化合物としては、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛が挙げられる。なお、これらの多価金属化合物は、水和物の形態で用いてもよい。
溶液(IW)における多価金属化合物の濃度は、特に制限されないが、好ましくは5×10-4重量%〜50重量%の範囲にあり、より好ましくは1×10-2重量%〜30重量%の範囲にあり、さらに好ましくは1重量%〜20重量%の範囲にある。
溶液(IW)に積層体(I)を接触させる際において、溶液(IW)の温度は、特に制限されないが、温度が高いほどカルボキシル基含有重合体のイオン化速度が速い。その温度は、たとえば30〜140℃の範囲にあり、好ましくは40℃〜120℃の範囲にあり、さらに好ましくは50℃〜100℃の範囲にある。
溶液(IW)に積層体(I)を接触させた後、その積層体に残留した溶媒を除去することが望ましい。溶媒の除去の方法は、特に制限がなく、公知の方法を適用できる。具体的には、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法といった乾燥法を単独で、または2種以上を組み合わせて適用できる。溶媒の除去を行う温度は、基材の流動開始温度よりも15〜20℃以上低く、かつカルボン酸含有重合体の熱分解開始温度よりも15〜20℃以上低い温度であれば特に制限されない。乾燥温度は、好ましくは40〜200℃の範囲にあり、より好ましくは60〜150℃の範囲にあり、さらに好ましくは80〜130℃の範囲にある。溶媒の除去は、常圧下または減圧下のいずれで実施してもよい。
また、ガスバリア性積層体の表面の外観を損なわないためには、溶媒の除去を行う前または後に、積層体の表面に付着した過剰の多価金属化合物を除去することが好ましい。多価金属化合物を除去する方法としては、多価金属化合物が溶解していく溶剤を用いた洗浄が好ましい。多価金属化合物が溶解していく溶剤としては、溶液(IW)に用いることができる溶媒を用いることができ、溶液(IW)の溶媒と同一のものを用いることが好ましい。
本発明の製造方法では、工程(i)の後であって工程(ii)の前および/または後に、工程(i)で形成された層を120〜240℃の温度で熱処理する工程をさらに含んでもよい。すなわち、積層体(I)または積層体(II)に対して熱処理を施してもよい。熱処理は、塗工された溶液(U)の溶媒の除去がほぼ終了した後であれば、どの段階で行ってもよいが、イオン化工程を行う前の積層体(すなわち積層体(I))を熱処理することによって、表面の外観が良好なガスバリア性積層体が得られる。熱処理の温度は、好ましくは120℃〜240℃の範囲にあり、より好ましくは140〜240℃の範囲にあり、さらに好ましくは160℃〜220℃の範囲にある。熱処理は、空気中、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下などで実施することができる。熱処理を施すことによって、化合物(P)のアミノ基とカルボン酸含有重合体の−COO−基とのアミド化反応がより進行する。その結果、ボイル処理後やレトルト処理後における酸素バリア性および外観(透明性など)により優れ、苛酷なレトルト条件でレトルト処理した後も良好な酸素バリア性および外観(透明性など)を示すガスバリア性積層体が得られる。
また、本発明の製造方法では、積層体(I)または(II)に、紫外線を照射してもよい。紫外線照射は、塗工された溶液(U)の溶媒の除去がほぼ終了した後であれば、いつ行ってもよい。その方法は、特に限定されず、公知の方法を適用できる。照射する紫外線の波長は、170〜250nmの範囲にあることが好ましく、170〜190nmの範囲及び/又は230〜250nmの範囲にあることがより好ましい。また、紫外線照射に代えて、電子線やγ線などの放射線の照射を行ってもよい。
熱処理と紫外線照射は、どちらか一方のみを行ってもよいし、両者を併用してもよい。熱処理及び/又は紫外線照射を行うことによって、積層体のガスバリア性能がより高度に発現する場合がある。
基材とガスバリア層との間に接着層(G)を配置するために、溶液(U)の塗工前に、基材の表面に処理(アンカーコーティング剤による処理、または接着剤の塗布)を施してもよい。その場合、工程(i)(溶液(U)の塗工)の後であって上記熱処理および工程(ii)(イオン化工程)の前に、溶液(U)が塗工された基材を、比較的低温下に長時間放置する熟成処理を行うことが好ましい。熟成処理の温度は、30〜200℃の範囲にあることが好ましく、30〜150℃の範囲にあることがより好ましく、30〜120℃の範囲にあることがさらに好ましい。熟成処理の時間は、0.5〜10日の範囲にあることが好ましく、1〜7日の範囲にあることがより好ましく、1〜5日の範囲にあることがさらに好ましい。このような熟成処理を行うことによって、基材とガスバリア層との間の接着力がより強固となる。この熟成処理ののちに、さらに上記熱処理(120℃〜240℃の熱処理)を行うことが好ましい。
本発明の蓋材は、たとえば、上記ガスバリア性積層体を所定の形に切り取ることによって形成できる。
本発明の蓋材は、高い酸素バリア性を有し、その酸素バリア性は湿度に依存しない。また、ボイル殺菌処理やレトルト殺菌処理などの加熱殺菌処理、輸送などによる酸素バリア性の低下が少ない。さらに、本発明の蓋材は、環境への悪影響が少ない。本発明の蓋材は、ミートボールやハンバーグ等の蓄肉加工品、筍や豆の水煮等の野菜加工品、山菜、水産物の加工品、乳幼児用等の流動食、ペットフード、米飯、ヨーグルト、フルーツのシロップ漬け、フルーツゼリー、プリン、味噌、ぜんざいなどを内容物とする蓋付き容器の蓋材として使用することができる。本発明の蓋材によれば、内容物の変質を長期間にわたって防ぐことができる。本発明の蓋材は、レトルト殺菌処理が高温で長時間行われることがある蓄肉加工品、ペットフードなどの蓋付き容器の蓋材として好適に使用できる。
本発明の容器用蓋材は、ガスバリア層の厚さの合計が1μm以下であり、且つ、レトルト処理前の酸素透過度が0.7cm3/(m2・day・atm)以下であってもよい。また、本発明の容器用蓋材は、ガスバリア層の厚さの合計が1μm以下であり、且つ、135℃で60分間レトルト処理を行った後の酸素透過度が1.2cm3/(m2・day・atm)以下であってもよい。酸素透過度の測定条件については、実施例で説明する。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。なお、以下の実施例において積層体の層構成を表記する際に、物質名のみを表記し、「層」の表記を省略することがある。
[積層体およびラミネート体の作製および評価]
以下で述べる積層体およびラミネート体を作製して評価した。評価は、以下の(1)〜(8)の方法で行った。
(1)レトルト処理前の酸素バリア性
酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」)を用いて酸素透過度を測定した。温度20℃、酸素圧1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件下で、酸素透過度(単位:cc/m2/day/atm)を測定した(cc=cm3)。キャリアガスとしては2体積%の水素ガスを含む窒素ガスを使用した。このとき、湿度を85%RHとし、酸素供給側とキャリアガス側とを同一の湿度とした。基材の片面のみにガスバリア層を形成した積層体については、酸素供給側にガスバリア層が向きキャリアガス側に基材が向くように積層体をセットした。
(2)10%伸長後でレトルト処理前の酸素バリア性
まず、積層体を30cm×21cmに切り出した。次に、切り出した積層体を、23℃、50%RHの条件で手動伸長装置を用いて10%伸長し、伸長状態で5分間保持した。その後、上記と同様の手法で酸素透過度を測定した。
(3)接触角
積層体を温度20℃、湿度65%RHの条件下で24時間調湿を行った。その後、自動接触角計(協和界面科学製、DM500)を用いて、温度20℃、湿度65%RHの条件で2μLの水をガスバリア層上に滴下した。そして、日本工業規格(JIS)−R3257に準拠した方法で、ガスバリア層と水との接触角を測定した。
(4)引っ張り強伸度、ヤング率
積層体を温度23℃、湿度50%RHの条件下で24時間調湿を行った。その後、積層体を、MD方向およびTD方向に対して15cm×15mmに切り出した。切り出した積層体について、温度23℃、湿度50%RHの条件で、JIS−K7127に準拠した方法によって、引っ張り強伸度およびヤング率を測定した。
(5)乾熱収縮率
積層体を10cm×10cmに切り出し、MDおよびTDにおける長さをノギスで測定した。この積層体を、乾燥機中において80℃で5分間加熱し、加熱後のMDおよびTDにおける長さを測定した。そして、以下の式から乾熱収縮率を測定した。
乾熱収縮率=(la−lb)/lb*100
[式中、lbは加熱前の長さを表す。laは加熱後の長さを表す。]
(6)金属イオンによるカルボキシル基の中和度(イオン化度)
[FT−IRによるイオン化度の算出]
数平均分子量150,000のポリアクリル酸を蒸留水に溶解し、所定量の水酸化ナトリウムでカルボキシル基を中和した。得られたポリアクリル酸の中和物の水溶液を、基材上に、イオン化度の測定の対象となる積層体のガスバリア層と同じ厚さになるようにコートし、乾燥させた。基材には、2液型のアンカーコート剤(三井武田ケミカル株式会社製、タケラック626(商品名)およびタケネートA50(商品名)、以下「AC」と略記することがある)を表面にコートした延伸ポリアミドフィルム(ユニチカ株式会社製、エンブレム ON−BC(商品名)、厚さ15μm、以下「OPA」と略記することがある)を用いた。このようにして、カルボキシル基の中和度が、0、25、50、75、80、90モル%の標準サンプル[積層体(ポリアクリル酸の中和物からなる層/AC/OPA)]を作製した。これらのサンプルについて、フーリエ変換赤外分光光度計(Perkin Elmer製、Spectrum One)を用いて、ATR(全反射測定)のモードで、赤外吸収スペクトルを測定した。そして、ポリアクリル酸の中和物からなる層に含まれるC=O伸縮振動に対応する2つのピーク、すなわち、1600cm-1〜1850cm-1の範囲に観察されるピークと1500cm-1〜1600cm-1の範囲に観察されるピークとについて、吸光度の最大値の比を算出した。そして、算出した比と、各標準サンプルのイオン化度とを用いて検量線1を作成した。
基材として延伸ポリアミドフィルム(上記「OPA」)を用いた積層体について、フーリエ変換赤外分光光度計(Perkin Elmer製、Spectrum One)を用いて、ATR(全反射測定)のモードで、ガスバリア層に含まれるC=O伸縮振動のピークを観察した。イオン化前のカルボン酸含有重合体のカルボキシル基のC=O伸縮振動に帰属されるピークは、1600cm-1〜1850cm-1の範囲に観察された。また、イオン化された後のカルボキシル基のC=O伸縮振動は1500cm-1〜1600cm-1の範囲に観察された。そして、それぞれの範囲における最大の吸光度からその比を算出し、その比と上記検量線1とを用いてイオン化度を求めた。
[蛍光X線によるイオン化度の算出]
基材として前述したOPAを用いた積層体について、FT−IRの測定よりイオン化度の異なる標準サンプルを作製した。具体的には、イオン化度(イオン:カルシウムイオン)が0〜100モル%間で約10モル%ずつ異なる11種類の標準サンプルを作製した。各々のサンプルについて、波長分散型蛍光X線装置(株式会社リガク製、ZSXminiII)を用いて、カルシウム元素の蛍光X線強度を測定し、予めFT−IRで測定したイオン化度から検量線2を作成した。得られた検量線2を用いて、各種条件で作製した積層体のカルシウムイオン化度を算出した。
他の金属イオン(マグネシウムイオンや亜鉛イオン等)でイオン化する場合に関しても、上記と同様の方法で検量線2を作成し、イオン化度を算出した。
OPA以外の基材を用いた積層体(PETなど)についても、蛍光X線強度測定により得られた検量線2を用いて、イオン化度を算出した。
(7)加水分解縮合物および重合体(X)の重量
上述した方法によって、化合物(L)に由来する無機成分の重量、および、化合物(L)に由来する有機成分の重量と重合体(X)に由来する有機成分の重量との合計を算出した。
(8)レトルト処理後の酸素バリア性
ラミネート体(サイズ:12cm×12cm)を2枚作製した。そして、その2枚を、無延伸ポリプロピレンフィルム(トーセロ株式会社製、RXC−18(商品名)、厚さ50μm、以下「CPP」と略記することがある)が内側になるように重ねあわせたのち、ラミネート体の3辺をその端から5mmまでヒートシールした。ヒートシールされた2枚のラミネート体の間に蒸留水80gを注入したのち、残された第4辺を同様にヒートシールした。このようにして、蒸留水が中に入ったパウチを作製した。
次に、そのパウチをレトルト処理装置(日阪製作所製、フレーバーエース RCS−60)に入れ、120℃、30分、0.15MPaの条件でレトルト処理を施した。レトルト処理後、加熱を停止し、レトルト処理装置の内部温度が60℃になった時点で、レトルト処理装置からパウチを取り出した。そして、20℃、65%RHの室内でパウチを1時間放置した。その後、ヒートシールされた部分をはさみで切り取り、ラミネート体の表面に付着した水を、紙タオルを軽く押し付けることによって拭き取った。その後、20℃、85%RHに調整したデシケータ内にパウチを1日以上放置した。このようなレトルト処理がされたラミネート体の酸素透過度を測定することによって、レトルト処理後の酸素バリア性を評価した。
酸素透過度は、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」)を用いて測定した。具体的には、酸素供給側にガスバリア層が向きキャリアガス側にCPPが向くように積層体をセットし、温度20℃、酸素供給側の湿度85%RH、キャリアガス側の湿度85%RH、酸素圧1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件下で酸素透過度(単位:cc/m2/day/atm)を測定した。
<積層体(1)>
数平均分子量150,000のポリアクリル酸(PAA)を蒸留水で溶解し、水溶液中の固形分濃度が13重量%であるPAA水溶液を得た。続いて、このPAA水溶液に、13%アンモニア水溶液を加え、PAAのカルボキシル基の1モル%を中和して、PAAの部分中和水溶液を得た。
また、[エチレンジアミン(EDA)に含まれるアミノ基]/[HCl]の当量比が1/1となるように、EDAに1N−HClを加え、EDA塩酸塩水溶液(S1)を得た。
続いて、[テトラメトキシシラン(TMOS)に由来する無機成分の重量]/[PAAの部分中和物の重量]の比が30.0/70.0となり、[EDAのアミノ基]/[PAAのカルボキシル基]の当量比が0.2/100となるように、混合液(U1)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解した。続いて、これにTMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で1時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T1)を得た。次に、混合液(T1)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物の水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、さらに上記EDA塩酸塩水溶液(S1)1.27重量部を加え、固形分濃度が5重量%の混合液(U1)を得た。
一方、酢酸エチル67重量部に溶解させた2液型のアンカーコート剤(三井武田ケミカル株式会社製:タケラックA−626(商品名)1重量部およびタケネートA−50(商品名)2重量部)を、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーP60(商品名)、厚さ12μm、以下「PET」と略記することがある)上にコートし、乾燥させることによってアンカーコート層を有する基材(AC/PET)を作製した。この基材のアンカーコート層上に、乾燥後の厚さが0.4μmとなるようにバーコータによって混合液(U1)をコートし120℃で5分間乾燥した。続いて、同様の手順で基材の反対側の面にも塗工を行った。得られた積層体を、40℃で3日間エージングを行なった。次に、乾燥機を用い180℃で5分間、積層体に熱処理を施した。次に、積層体を、2重量%の酢酸カルシウム水溶液(85℃)に12秒間浸漬し、その後、110℃で1分乾燥を行った。このようにして、ガスバリア層(0.4μm)/AC(0.1μm)/PET(12μm)/AC(0.1μm)/ガスバリア層(0.4μm)という構造を有する積層体(1)を得た。
<積層体(2)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、[EDAのアミノ基]/[PAAのカルボキシル基]の当量比が1.0/100となるようにした以外は積層体(1)と同様の仕込み比で、混合液(U2)を調製した。具体的には、まず、積層体(1)の混合液(T1)と同様の組成および方法で調製した混合液(T2)を蒸留水567重量部、メタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S2)6.3重量部を加え、固形分濃度が5重量%の混合液(U2)を得た。
混合液(U2)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(2)を得た。
<積層体(3)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、積層体(1)と同様の仕込み比で、反応時間のみを変えて、混合液(U3)を調製した。
具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解した。そこへTMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T3)を得た。次に、混合液(T3)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S3)1.27重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U3)を得た。
混合液(U3)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、ガスバリア性積層体(3)を得た。
<積層体(4)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、[EDAのアミノ基]/[PAAのカルボキシル基]の当量比が19.4/100となるようにした以外は積層体(3)と同様の仕込み比で、混合液(U4)を調製した。具体的には、まず、積層体(3)の混合液(T3)と同様の組成および方法で調製した混合液(T4)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S4)127重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U4)を得た。
混合液(U4)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(4)を得た。
<積層体(5)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、[EDAのアミノ基]/[PAAのカルボキシル基]の当量比が4.9/100となるようにした以外は積層体(3)と同様の仕込み比で、混合液(U5)を調製した。具体的には、まず、積層体(3)の混合液(T3)と同様の組成および方法で調製した混合液(T5)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、EDA塩酸塩水溶液(S5)32重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U5)を得た。
混合液(U5)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、ガスバリア性積層体(5)を得た。
<積層体(6)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、[EDAのアミノ基]/[PAAのカルボキシル基]の当量比が1.0/100となるようにした以外は積層体(3)と同様の仕込み比で、混合液(U6)を調製した。具体的には、まず、積層体(3)の混合液(T3)と同様の組成および方法で調製した混合液(T6)を蒸留水567重量部、メタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S6)6.3重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U6)を得た。
混合液(U6)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(6)を得た。
<積層体(7)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。続いて、[TMOS]/[γ−グリシドキシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMOS)]のモル比が99.5/0.5、[TMOSおよびGPTMOSに由来する無機成分]/[GPTMOSの有機成分とPAAの部分中和物]の重量比が30.0/70.0、[EDAのアミノ基]/[PAAのカルボキシル基]のモル比が1.0/100となるように、混合液(U7)を調製した。具体的には、まず、TMOS49.6重量部およびGPTMOS0.4重量部を、メタノール50重量部に溶解した。そこへTMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう、蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T7)を得た。続いて、混合液(T7)を、蒸留水566重量部およびメタノール284重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)352重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S7)6.3重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U7)を得た。
混合液(U7)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(7)を得た。
<積層体(8)>
TMOS/GPTMOSのモル比が80.0/20.0となるようにした以外は積層体(7)と同様の仕込み比で、混合液(U8)を調製した。具体的には、まず、TMOS36重量部およびGPTMOS14重量部を、メタノール50重量部に溶解した。そこへTMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.0重量部と0.1Nの塩酸7.4重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T8)を得た。続いて、混合液(T8)を、蒸留水520重量部およびメタノール301重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)267重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S8)4.8重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U8)を得た。
混合液(U8)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(8)を得た。
<積層体(9)>
TMOS/GPTMOSのモル比が89.9/10.1となるようにした以外は積層体(7)と同様の仕込み比で、混合液(U9)を調製した。具体的には、まず、TMOS42.6重量部およびGPTMOS7.4重量部を、メタノール50重量部に溶解した。そこへTMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.2重量部と0.1Nの塩酸7.8重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T9)を得た。続いて、混合液(T9)を、蒸留水542重量部およびメタノール293重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)308重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S9)5.5重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U9)を得た。
混合液(U9)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(9)を得た。
<積層体(10)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。続いて、[TMOS]/[GPTMOS]のモル比が98.0/2.0となり、[TMOSおよびGPTMOSに由来する無機成分]/[GPTMOSの有機成分とPAAの部分中和物]の重量比が32.4/67.6となり、[EDAのアミノ基]/[PAAのカルボキシル基]のモル比が1.1/100となるように、混合液(U10)を調製した。具体的には、まず、TMOS48.5重量部およびGPTMOS1.5重量部を、メタノール50重量部に溶解した。そこへTMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T10)を得た。続いて、混合液(T10)を、蒸留水562重量部およびメタノール293重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)308重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S10)6.2重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U10)を得た。
混合液(U10)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(10)を得た。
<積層体(11)>
TMOSとGPTMOSのモル比が99.9/0.1となるようにした以外は積層体(7)と同様の仕込み比で、混合液(U11)を得た。具体的には、まず、TMOS49.9重量部およびGPTMOS0.1重量部を、メタノール50重量部に溶解した。そこへTMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T11)を得た。続いて、混合液(T11)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S11)6.3重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U11)を得た。
混合液(U11)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(11)を得た。
<積層体(12)>
TMOS/GPTMOSのモル比が70.0/30.0となるようにした以外は積層体(7)と同様の仕込み比で、混合液(U12)を調製した。具体的には、まず、TMOS30重量部およびGPTMOS20重量部を、メタノール50重量部に溶解した。そこへTMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を2.9重量部と0.1Nの塩酸7.0重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T12)を得た。続いて、混合液(T12)を、蒸留水500重量部およびメタノール310重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)229重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S12)4.1重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U12)を得た。
混合液(U12)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(12)を得た。
<積層体(13)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、[TMOSおよびGPTMOSに由来する無機成分]/[GPTMOSの有機成分とPAAの部分中和物]の重量比が20.0/80.0となるようにした以外は積層体(10)と同様の仕込み比で、混合液(U13)を調製した。具体的には、まず、積層体(10)の混合液(T10)と同様の組成および方法で混合液(T13)を得た。続いて、混合液(T13)を、蒸留水842重量部およびメタノール405重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)595重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S13)10.6重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U13)を得た。
混合液(U13)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(13)を得た。
<積層体(14)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、[TMOSおよびGPTMOSに由来する無機成分]/[GPTMOSの有機成分とPAAの部分中和物]の重量比が80.0/20.0となるようにした以外は積層体(10)と同様の仕込み比で、混合液(U14)を調製した。具体的には、まず、積層体(10)の混合液(T10)と同様の組成および方法で混合液(T14)を得た。続いて、混合液(T14)を、蒸留水211重量部およびメタノール135重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)32重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S14)0.6重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U14)を得た。
混合液(U14)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(14)を得た。
<積層体(15)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、[TMOSおよびGPTMOSに由来する無機成分]/[GPTMOSの有機成分とPAAの部分中和物]の重量比が69.9/30.1となるようにした以外は積層体(10)と同様の仕込み比で、混合液(U15)を得た。具体的には、まず、積層体(10)の混合液(T10)と同様の組成および方法で混合液(T15)を得た。続いて、混合液(T15)を、蒸留水241重量部およびメタノール148重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)59重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S15)1.0重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U15)を得た。
混合液(U15)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(15)を得た。
<積層体(16)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、[TMOSおよびGPTMOSに由来する無機成分]/[GPTMOSの有機成分とPAAの部分中和物]の重量比が10.0/90.0となるようにした以外は積層体(10)と同様の仕込み比で、混合液(U16)を得た。具体的には、まず、積層体(10)の混合液(T10)と同様の組成および方法で混合液(T16)を得た。続いて、混合液(T16)を、蒸留水1683重量部およびメタノール766重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)1346重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S16)24重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U16)を得た。
混合液(U16)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(16)を得た。
<積層体(17)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、[TMOSおよびGPTMOSに由来する無機成分]/[GPTMOSの有機成分とPAAの部分中和物]の重量比が90.0/10.0となるようにした以外は積層体(10)と同様の仕込み比で、混合液(U17)を得た。具体的には、まず、積層体(10)の混合液(T10)と同様の組成および方法で混合液(T17)を得た。続いて、混合液(T17)を、蒸留水188重量部およびメタノール125重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)11重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S17)0.2重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U17)を得た。
混合液(U17)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(17)を得た。
<積層体(18)>
[プロピレンジアミン(PDA)に含まれるアミノ基]/[HCl]の当量比が1/1となるようPDAに1N−HClを加え、PDA塩酸塩水溶液(S18)を得た。EDA塩酸塩水溶液をPDA塩酸塩水溶液(S18)に変えた以外は積層体(10)の混合液(U10)と同様の組成および方法で、混合液(U18)を得た。
混合液(U18)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(18)を得た。
<積層体(19)>
[キトサンに含まれるアミノ基]/[HCl]の当量比が1/1となるようキトサンに1N−HClを加え、キトサン塩酸塩水溶液(S19)を得た。EDA塩酸塩水溶液をキトサン塩酸塩水溶液(S19)に変えた以外は積層体(10)の混合液(U10)と同様の組成および方法で、混合液(U19)を得た。
混合液(U19)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(19)を得た。
<積層体(20)>
[ヘキサメチレンジアミン(HMDA)に含まれるアミノ基]/[HCl]の当量比が1/1となるようHMDAに1N−HClを加え、HMDA塩酸塩水溶液(S20)を得た。EDA塩酸塩水溶液をHMDA塩酸塩水溶液(S20)に変えた以外は積層体(10)の混合液(U10)と同様の組成および方法で、混合液(U20)を得た。
混合液(U20)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(20)を得た。
<積層体(21)>
積層体(21)の作製には、積層体(10)の混合液(U10)と同様の組成および方法で得た混合液(U21)を使用した。
混合液(U21)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理を行い、積層体を得た。この積層体を0.1重量%の酢酸カルシウム水溶液(85℃)に12秒間浸漬することによって、イオン化を行った。次に、この積層体を積層体(1)と同様に乾燥することによって、積層体(21)を得た。
<積層体(22)>
積層体(22)の作製には、積層体(10)の混合液(U10)と同様の組成および方法で得た混合液(U22)を使用した。
混合液(U22)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理を行い、積層体を得た。この積層体を0.2重量%の酢酸カルシウム水溶液(85℃)に6秒間浸漬することによって、イオン化を行った。次に、この積層体を積層体(1)と同様に乾燥することによって、積層体(22)を得た。
<積層体(23)>
積層体(23)の作製には、積層体(10)で得られた混合液(U10)と同様の組成および方法で得た混合液(U23)を使用した。
混合液(U23)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理を行い、積層体を得た。この積層体を0.2重量%の酢酸カルシウム水溶液(85℃)に12秒間浸漬することによって、イオン化を行った。次に、この積層体を積層体(1)と同様に乾燥することによって、積層体(23)を得た。
<積層体(24)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。一方、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、PVA117(商品名)、以下、「PVA」と略記する場合がある)を10重量%となるよう蒸留水に加え、85℃で3時間加熱することによってPVA水溶液を得た。
[PVAの水酸基]/[PAAのカルボキシル基]の当量比が18.2/100となるようにPVA水溶液を加えた以外は積層体(6)と同様の仕込み比で、混合液(U24)を得た。
具体的には、まず、積層体(6)の混合液(T6)と同様の組成および方法で得られた混合液(T24)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S24)6.3重量部を加え、続いて上記10重量%PVA水溶液51重量部を加えた。このようにして、固形分濃度5重量%の混合液(U24)を得た。
混合液(U24)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(24)を得た。
<積層体(25)>
積層体(25)の作製には、積層体(10)の混合液(U10)と同様の組成および方法で得た混合液(U25)を使用した。混合液(U25)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理を行い、積層体を得た。この積層体を2重量%の酢酸マグネシウム水溶液(85℃)に12秒間浸漬することによって、イオン化を行った。次に、この積層体を、積層体(1)と同様に乾燥することによって、積層体(25)を得た。
<積層体(26)>
積層体(26)の作製には、積層体(10)の混合液(U10)と同様の組成および方法で得た混合液(U26)を使用した。混合液(U26)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理を行い、積層体を得た。この積層体を2重量%の酢酸亜鉛水溶液(85℃)に12秒間浸漬することによって、イオン化を行った。次に、この積層体を、積層体(1)と同様に乾燥することによって、積層体(26)を得た。
<積層体(27)>
積層体(27)の作製には、積層体(10)の混合液(U10)と同様の組成および方法で得た混合液(U27)を使用した。混合液(U27)を用いることおよびコートを片面のみにしたこと以外は積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(27)を得た。
<積層体(28)>
積層体(28)の作製には、積層体(6)の混合液(U6)と同様の組成および方法で得た混合液(U28)を使用した。混合液(U28)を用いることおよび基材を延伸ポリアミドフィルム(上記「OPA」)にした以外は積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(28)を得た。
<積層体(29)>
積層体(29)の作製には、積層体(10)の混合液(U10)と同様の組成および方法で得た混合液(U29)を使用した。
混合液(U29)を用いること以外は積層体(28)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(29)を得た。
<積層体(30)>
積層体(30)の作製には、積層体(6)の混合液(U6)と同様の組成および方法で得た混合液(U30)を使用した。混合液(U30)を用い、積層体(28)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(30)を得た。
<積層体(31)>
積層体(31)の作製には、積層体(10)の混合液(U10)と同様の組成および方法で得た混合液(U31)を使用した。
混合液(U31)を用いること以外は積層体(28)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(31)を得た。
<積層体(32)>
積層体(32)の作製には、積層体(10)の混合液(U10)と同様の組成および方法で得た混合液(U32)を使用した。混合液(U32)を用いることおよびコートを片面のみにしたこと以外は積層体(28)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(32)を得た。
<積層体(33)>
PAAの部分中和物の水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。続いて、TMOS/GPTMOSのモル比が89.9/10.1、[TMOSおよびGPTMOSに由来する無機成分]/[GPTMOSの有機成分とPAAの部分中和物]の重量比が31.5/68.5となるように、混合液(U33)を調製した。具体的には、まず、TMOS46重量部およびGPTMOS8重量部を、メタノール50重量部に溶解した。続いて、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となりpHが2以下となるよう蒸留水を3.2重量部と0.1Nの塩酸7.8重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T33)を得た。続いて、混合液(T33)を、蒸留水61重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)308重量部を速やかに添加し、固形分濃度13重量%の混合液(U33)を得た。
一方、酢酸エチル67重量部に溶解させた2液型のアンカーコート剤(三井武田ケミカル株式会社製:タケラックA−626(商品名)1重量部およびタケネートA−50(商品名)2重量部)を、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(上記「PET」)上にコートし、乾燥させることによってアンカーコート層を有する基材(AC(0.1μm)/PET(12μm))を作製した。この基材のアンカーコート層上に、乾燥後の厚さが1.0μmとなるようにバーコータによって混合液(U33)をコートし、120℃で5分間乾燥した。同様の手順で、基材の他方の面にもコートを行った。得られた積層体について、40℃で3日間エージングを行った。次に、その積層体に対し、乾燥機を用い180℃で5分間熱処理を施した。次に、その積層体を2重量%の酢酸カルシウム水溶液(85℃)に12秒間浸漬することによってイオン化を行い、その後、50℃で5分間乾燥した。このようにして、ガスバリア層(1.0μm)/AC(0.1μm)/PET(12μm)/AC(0.1μm)/ガスバリア層(1.0μm)という構造を有する積層体(33)を得た。
<積層体(34)>
積層体(34)の作製には、積層体(33)の混合液(U33)と同様の組成および方法で得た混合液(U34)を使用した。また、基材をOPAにした以外は、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(34)を得た。
<積層体(35)>
固形分濃度を5重量%にした以外は積層体(33)の混合液(U33)と同様の組成および方法で混合液(U35)を得た。具体的には、まず、積層体(33)の混合液(T33)と同様の組成および方法で調製した混合液(T35)を、蒸留水542重量部およびメタノール293重量部で希釈した。得られた混合液を攪拌しながら、これにPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)308重量部を速やかに添加し、固形分濃度5重量%の混合液(U35)を得た。
混合液(U35)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(35)を得た。
<積層体(36)>
積層体(35)の混合液(U35)と同様の組成および方法で混合液(U36)を得た。混合液(U36)を用いること以外は積層体(28)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(36)を得た。
<積層体(37)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。一方、[EDAのアミノ基]/[PAAのカルボキシル基]の当量比が0.1/100となるようにした以外は積層体(3)と同様の仕込み比で、混合液(U37)を調製した。具体的には、まず、積層体(3)の混合液(T3)と同様の組成および方法で調製した混合液(T37)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した。得られた混合液を攪拌しながら、これにPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S37)0.6重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U37)を得た。
混合液(U37)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(37)を得た。
<積層体(38)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。一方、[EDAのアミノ基]/[PAAのカルボキシル基]の当量比が29.0/100となるようにした以外は積層体(3)と同様の仕込み比で、混合液(U38)を調製した。具体的には、まず、積層体(3)の混合液(T3)と同様の組成および方法で調製した混合液(T38)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した。得られた混合液を攪拌しながら、これにPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S38)190重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U38)を得た。
混合液(U38)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(38)を得た。
<積層体(39)>
積層体(38)と同様の仕込みで反応時間のみを変えて、混合液(U39)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解した。続いて、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で1時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T39)を得た。得られた混合液(T39)を蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後に、攪拌しながら、これにPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S38)190重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U39)を得た。
混合液(U39)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(39)を得た。
<積層体(40)>
積層体(40)の作製には、積層体(10)の混合液(U10)と同様の組成および方法で得た混合液(U40)を使用した。
混合液(U40)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理を行って積層体(40)を得た。この積層体(40)に対して、イオン化および乾燥は行わなかった。
<積層体(41)>
PAAの部分中和物水溶液およびEDA塩酸塩水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、[EDAのアミノ基]/[PAAのカルボキシル基]の当量比が20.0/100となるようにした以外は積層体(3)と同様の仕込み比で、混合液(U41)を調製した。具体的には、まず、積層体(3)の混合液(T3)と同様の組成および方法で調製した混合液(T41)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S41)131重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U41)を得た。
混合液(U41)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(41)を得た。
<積層体(42)>
数平均分子量150,000のポリアクリル酸(PAA)を蒸留水で溶解し、水溶液中の固形分濃度が13重量%であるPAA水溶液を得た。続いて、このPAA水溶液に、13%アンモニア水溶液を加え、PAAのカルボキシル基の1モル%を中和して、PAAの部分中和水溶液を得た。
また、[エチレンジアミン(EDA)に含まれるアミノ基]/[HCl]の当量比が1/1となるように、EDAに1N−HClを加え、EDA塩酸塩水溶液(S42)を得た。
続いて、[TMOS]/[GPTMOS]のモル比が98.0/2.0となり、[TMOSおよびGPTMOSに由来する無機成分]/[GPTMOSの有機成分とPAAの部分中和物]の重量比が32.4/67.6となり、[EDAのアミノ基]/[PAAのカルボキシル基]のモル比が1.1/100となるように、混合液(U42)を調製した。具体的には、まず、TMOS48.5重量部およびGPTMOS1.5重量部を、メタノール50重量部に溶解した。そこへTMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T42)を得た。続いて、混合液(T42)を、蒸留水562重量部およびメタノール293重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)308重量部を速やかに添加し、さらにEDA塩酸塩水溶液(S42)6.2重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U42)を得た。
一方、酢酸エチル67重量部に溶解させた2液型のアンカーコート剤(三井武田ケミカル株式会社製:タケラックA−626(商品名)1重量部およびタケネートA−50(商品名)2重量部)を、延伸ポリアミドフィルム(ユニチカ株式会社製、エンブレムON(商品名)、厚さ25μm、以下「OPA25」と略記することがある)上にコートし、乾燥させることによってアンカーコート層を有する基材(AC/OPA25)を作製した。この基材のアンカーコート層上に、乾燥後の厚さが0.4μmとなるようにバーコータによって混合液(U42)をコートし120℃で5分間乾燥した。続いて、同様の手順で基材の反対側の面にも塗工を行った。得られた積層体を、40℃で3日間エージングを行なった。次に、乾燥機を用い180℃で5分間、積層体に熱処理を施した。次に、積層体を、2重量%の酢酸カルシウム水溶液(85℃)に12秒間浸漬し、その後、110℃で1分乾燥を行った。このようにして、ガスバリア層(0.4μm)/AC(0.1μm)/OPA25(25μm)/AC(0.1μm)/ガスバリア層(0.4μm)という構造を有する積層体(42)を得た。
[積層体の評価結果]
作製した積層体を、上述した方法によって評価した。また、積層体の基材として用いた、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)および延伸ポリアミドフィルム(OPA)について、積層体と同様の評価を行った。積層体の作製条件を表1に示す。
積層体および基材の評価結果を表2に示す。なお、積層体(42)についての評価は行わなかった。
積層体(34)のガスバリア層の合計の厚さは2.0μmである。このようにガスバリア層の合計の厚さが厚い(たとえば1.0μmより大きい)と、積層体の物理的特性が、基材(PET)の物理的特性とは大きく異なり、加工性が低下してしまう。そのため、ガスバリア層を厚くすると、生産性が低下してしまうという問題が生じる。一方、積層体(1)〜(27)および(41)のように、ガスバリア層の合計の厚さが薄い積層体は、基材(PET)に近い物理的特性を示し、加工性が良好である。そのため、生産性よく容器用蓋材を製造するためには、ガスバリア層の合計の厚さを薄く(たとえば1.0μm以下)とすることが重要である。
[ラミネート体の作製]
積層体(1)を用いて、ラミネート体を作製した。まず、延伸ポリアミドフィルム(OPA)、及び無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)のそれぞれの上に、2液型の接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、A−385(商品名)およびA−50(商品名))をコートして乾燥させた。そして、これらと積層体(1)とをラミネートした。このようにして、積層体(1)/接着剤/OPA/接着剤/CPPという構造を有するラミネート体(1)を得た。また、他の積層体についても、ラミネート体(1)と同様にラミネート体を作製して評価した。ラミネート体の作製に用いた積層体と、ラミネート体の評価結果について、表3に示す。
[容器用蓋材の作製および評価]
上述した積層体を用いて容器用蓋材を作製して評価した。容器用蓋材の評価は、以下の方法(1)〜(4)によって実施した。
蓋材の測定および評価は、次に示す方法(1)〜(5)によって実施した。
(1)酸素透過度
実施例および比較例で得られたレトルト殺菌処理前後の容器用蓋材、および輸送試験後の容器用蓋材の酸素透過度を評価した。レトルト処理後の蓋付き容器は室温雰囲気下(20℃、65%RH)に24時間以上放置した。その後、容器(東洋製罐株式会社製、ハイレトフレックス HR78−84)の底部に穴を開けて水を抜き、さらに48時間以上室温雰囲気下(20℃、65%RH)に放置した。その後、キャリアガス用の金属パイプ2本が接続された金属治具を、上記容器に空けた穴にセットし、エポキシ接着剤を使用して、金属治具と容器の隙間からガスが漏れないように金属治具を容器に固定した。キャリアガス用金属パイプの反対の末端は酸素透過度測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」)に接続した。金属パイプが取り付けられた蓋材付き容器の周囲はポリエステル層/接着層/EVOH層/PO層の構成からなるラミネートフィルムをヒートシールしてできた袋で覆い、この袋を2本の金属パイプに紐で固定した。その袋と金属パイプとの隙間はエポキシ樹脂で埋めて、気密性を高めた。次に、袋の1ケ所に穴を開け、窒素ガスおよび酸素ガスを供給するためのパイプをその穴に挿入した。穴から外気が流入しないように、粘着テープを使用して気密性を高めた。
まず、キャリアガスとして、調湿された窒素ガスをパイプを通じて袋内に流入させた。袋の中に流入された窒素ガスのうち、一部は蓋材を透過して蓋材付き容器の中に移動し、一部は袋を透過し外部へ移動し、一部は2ケ所の接続部分から外部へ漏れた。キャリアガス中に含まれる酸素ガスは、キャリアガスによってセンサー部に運ばれ、その酸素濃度が測定された。窒素ガスは、酸素濃度が低下して一定値になるまで流し続けた。酸素濃度が一定となった時点の酸素濃度を酸素透過度のゼロ点として設定した。酸素濃度が一定値になった後、袋に挿入されたパイプに流すガスを、調湿された窒素ガスから調湿された酸素ガスに切り替え、これによって蓋付き容器の外部に酸素を供給した。そして、蓋材を透過してキャリアガスによってセンサー部に運ばれた酸素の濃度を測定した。酸素透過度(単位:cm3/(m2・day・atm))は、温度20℃、酸素供給側の湿度65%RH、キャリアガス側の湿度65%RH、酸素圧1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件下で測定した。
(2)外観変化
実施例および比較例で得られた蓋付き容器について、レトルト殺菌処理前後の蓋材の外観を観察した。そして、レトルト殺菌処理前後の外観変化について、以下の基準で評価した。蓋材の外観は、水が充填された状態の蓋付き容器の蓋材部を目視によって観察した。
評価5:レトルト殺菌処理前後で全く変化がない。
評価4:実用上問題のないレベルであるが、よく観ればわずかに白化している。
評価3:実用上問題のないレベルであるが、薄く白化している。
評価2:薄く白化しており、実用上問題になる可能性がある。
評価1:完全に白化しており、実用上問題になる。
(3)レトルト試験
実施例および比較例で得られた蓋付き容器をレトルト殺菌装置(株式会社日阪製作所製、RCS−60−10RSTXG−FAM)の棚に載せた。そして、蓋付き容器が完全に熱水に浸漬する熱水式レトルト殺菌処理を以下の条件で実施した。
(a)レトルト処理温度、時間、圧力:135℃、60分、0.25MPa
(4)輸送試験
実施例および比較例で得られた蓋付き容器を、上記(a)の条件でレトルト殺菌処理した。レトルト殺菌処理後の容器各々50個をダンボール箱(15×35×45cm)に入れた。蓋付き容器とダンボール箱の隙間には、緩衝材を詰めた。そして、蓋付き容器が入ったダンボール箱をトラックに積み、岡山県と東京都の間を10往復させる輸送試験を実施した。
<実施例1>
積層体(1)上に、2液型の接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、A−520(商品名)およびA−50(商品名))をコートして乾燥したものを準備し、これと延伸ポリアミドフィルム(OPA)とをラミネートすることによってラミネート体を得た。続いて、そのラミネート体のOPA上に、2液型の接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、A−520(商品名)およびA−50(商品名))をコートして乾燥したものを準備し、これとポリプロピレンフィルム(トーセロ株式会社製、RXC−21(商品名)、厚さ70μm、以下「CPP」と略記することがある)とをラミネートした。このようにして、積層体(1)/接着剤層/OPA層/接着剤層/CPP層、という構成を有するラミネート体(A1)を得た。
ラミネート体(A1)から、容器用蓋材として、直径88mmの円形の積層体を切り取った。また、直径が78mmで、フランジ部の幅が6.5mmで、高さが30mmの円柱状のオレフィン層/スチール層/オレフィン層の3層で構成される容器(東洋製罐株式会社製 ハイレトフレックス HR78−84)を準備した。この容器に水をほぼ満杯に充填し、ラミネート体(A1)からなる蓋材を、フランジ部にヒートシールした。このようにして、実施例1の蓋付き容器を得た。
<実施例2〜18>
積層体(1)の代わりに他の積層体を用いることを除いて実施例1と同様にラミネート体(A2)〜(A18)を作製した。具体的には、積層体(2)〜(8)を用いてラミネート体(A2)〜(A8)を作製した。積層体(10)を用いてラミネート体(A9)を作製した。積層体(12)を用いてラミネート体(A10)を作製した。積層体(13)を用いてラミネート体(A11)を作製した。積層体(14)を用いてラミネート体(A12)を作製した。積層体(16)を用いてラミネート体(A13)を作製した。積層体(17)を用いてラミネート体(A14)を作製した。積層体(18)を用いてラミネート体(A15)を作製した。積層体(19)を用いてラミネート体(A16)を作製した。積層体(24)を用いてラミネート体(A17)を作製した。積層体(41)を用いてラミネート体(A18)を作製した。
そして、ラミネート体(A1)の代わりにラミネート体(A2)〜(A18)を用いることを除いて実施例1と同様に、実施例2〜18の蓋付き容器を作製した。
<実施例19>
積層体(28)上に、2液型の接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、A−520(商品名)およびA−50(商品名))をコートして乾燥したものを準備し、これとポリプロピレンフィルム(CPP)とをラミネートした。このようにして、積層体(28)/接着剤層/CPP層、という構成を有するラミネート体(A19)を得た。ラミネート体(A1)の代わりにラミネート体(A19)を用いることを除いて実施例1と同様に、実施例19の蓋付き容器を作製した。
<実施例20〜22>
積層体(28)の代わりに積層体(29)、(32)または(42)を用いることを除いて実施例19と同様にラミネート体(A20)、(A21)および(A22)を作製した。ラミネート体(A1)の代わりにラミネート体(A20)、(A21)または(A22)を用いることを除いて実施例1と同様に、実施例20、21および22の蓋付き容器を作製した。
<実施例23>
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーP60、厚さ12μm(上記PET))上に、2液型の接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、A−520(商品名)およびA−50(商品名))をコートして乾燥したものを準備し、これと積層体(10)とをラミネートしてラミネート体を得た。続いて、そのラミネート体の積層体(10)上に、2液型の接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、A−520(商品名)およびA−50(商品名))をコートして乾燥したものを準備し、これとポリプロピレンフィルム(CPP)とをラミネートした。このようにして、PET層/接着剤層/積層体(10)/接着剤層/CPP層、という構成を有するラミネート体(A23)を得た。ラミネート体(A1)の代わりにラミネート体(A23)を用いることを除いて実施例1と同様に、実施例23の蓋付き容器を作製した。
<実施例24>
積層体(10)の代わりに積層体(29)を用いることを除いて実施例23と同様にラミネート体(A24)を作製した。ラミネート体(A1)の代わりにラミネート体(A24)を用いることを除いて実施例1と同様に、実施例24の蓋付き容器を作製した。
<参考例1>
積層体(1)の代わりに積層体(33)を用いることを除いて実施例1と同様にラミネート体(R1)を作製した。ラミネート体(A1)の代わりにラミネート体(R1)を用いることを除いて実施例1と同様に、参考例1の蓋付き容器を作製した。
<比較例1、3、4および5>
積層体(1)の代わりに積層体(35)、(37)、(38)または(40)を用いることを除いて実施例1と同様にラミネート体(C1)、(C3)、(C4)および(C5)を作製した。そして、ラミネート体(A1)の代わりにラミネート体(C1)、(C3)、(C4)または(C5)を用いることを除いて実施例1と同様に、比較例1、3、4および5の蓋付き容器を作製した。
<比較例2>
積層体(28)の代わりに積層体(36)を用いることを除いて実施例19と同様に、ラミネート体(C2)を作製した。ラミネート体(A1)の代わりにラミネート体(C2)を用いることを除いて実施例1と同様に、比較例2の蓋付き容器を作製した。
[容器用蓋材の評価結果]
実施例、参考例および比較例で用いた積層体の作製条件を表4に示す。
実施例、参考例および比較例で用いたラミネート体の構成、および容器用蓋材の評価結果を表5に示す。
参考例1の蓋材はレトルト処理前後の酸素バリア性が高かったが、これはガスバリア層が実施例の2倍以上であるためである。参考例1の蓋材は、輸送試験による酸素バリア性の低下が大きかった。また、参考例1の蓋材では、レトルト処理によって外観がわずかに白化した。
上述したように、生産性よく容器用蓋材を製造するためには、ガスバリア層の合計の厚さを薄くする必要がある。しかし、ガスバリア層の合計の厚さが実施例と同じである比較例1〜5の蓋材では、レトルト処理前および/またはレトルト処理後の酸素バリア性が低かった。また、比較例1〜3の蓋材では、レトルト処理によって外観がわずかに白化した。
これに対して、[化合物(P)に含まれるアミノ基の当量]/[重合体(X)の官能基に含まれる−COO−基の当量]の比が0.2/100〜20.0/100の範囲にある実施例の蓋材は、レトルト処理前、レトルト処理後、輸送試験後のいずれの状態でも高い酸素バリア性を示した。また、レトルト処理による外観の劣化は見られなかった。
以上のように、ガスバリア性積層体単独の評価と同様に、所定のガスバリア層を用いた蓋材は、優れた特性を示した。