JP5153303B2 - ガス発生剤組成物 - Google Patents

Description

本発明は、エアバッグ用ガス発生器に使用できるガス発生剤に関する。

エアバッグ用ガス発生器には、軽量化と小型化の要請がある。軽量化する方法としては、使用するガス発生剤の燃焼温度を低下させることで、質量増加の大きな要因となっているクーラントフィルタ量を減少させる方法が知られている。

硝酸アンモニウムは、安価でガス発生効率が高く、ガス発生剤の燃料や酸化剤として公知の成分である。しかし、燃焼性は高くなく（線燃焼速度が低い）、酸化力の大きな酸化剤や高エネルギーの添加剤と併用すると、燃焼温度が高くなるという問題がある。

また、硝酸アンモニウムは、ガス発生器の使用ガス温度範囲で相転移があり、その相転移に伴う体積膨張や収縮によるガス発生剤のクラック発生を防止するために相安定化処理が必要であるという問題がある。

このような問題を解決するため、従来から硝酸カリウム、過塩素酸カリウム等のカリウム化合物で硝酸アンモニウムを相安定化する技術が知られている。しかし、これらのカリウム化合物の酸素バランスは（＋）であり、同様に酸素バランスが（＋）である硝酸アンモニウムと組み合わせると、全体の酸素バランスを燃焼性能の良い０ｇ／ｇ程度にすることが困難になり、発生するガスに有害ガスが含まれるという問題がある。

特許文献１には、金属硝酸塩による硝酸アンモニウムの相安定化が開示されているが、燃焼温度の低減効果は不十分である。

特許文献２には、硝酸第二銅と硝酸カリウムの組み合わせによる相安定化が開示されているが、硝酸アンモニウムと銅の反応によりアンモニアが発生するため、作業環境が悪化するおそれがある。

特許文献３は、炭素数２〜８のカルボン酸ナトリウム又はカリウム塩による硝酸アンモニウムの燃焼温度の低減と燃焼促進効果が開示されているが、炭素数８以上のカルボン酸については燃焼促進効果が低下すると記載されている。

特許文献４は、シュウ酸カリウムによる硝酸アンモニウムの相安定化が開示されているが、シュウ酸カリウムは熱安定性が低いという問題がある。

特許文献５は、キレート剤としてＥＤＴＡ金属塩を添加したガス発生剤が開示されているが、含窒素有機化合物と酸化剤の組み合わせを有効成分とするものであり、硝酸アンモニウムは酸化剤として多数の内の一つとして例示されているのみである。

特許文献６は、硝酸アンモニウムにカーボンブラックや活性炭のような炭素粉末を混合し、燃焼性を向上させることが開示されているが、この技術では、硝酸アンモニウムの相安定化及び燃焼温度低減は達成できない。
特開２０００−３３８２４１号公報 特表２００６−５２０３１２号公報 特開２００６−７６８３２号公報 特開平１０−２５９０８５号公報 特開平８−２１７５８７号公報 特開平１１−９２２６５号公報

本発明は、硝酸アンモニウムを含有しており、燃焼温度が低く、燃焼速度が高いガス発生剤組成物を提供することを課題とする。

本発明は、課題の解決手段として、下記の各発明を提供する。
１．硝酸アンモニウムとＥＤＴＡカリウム塩を含有するガス発生剤組成物。
２．ＥＤＴＡカリウム塩が、ＥＤＴＡ二カリウム塩二水和物及び／又はＥＤＴＡ三カリウム塩二水和物である請求項１記載のガス発生剤組成物。
３．更にカルボキシメチルセルロース又はその塩、グアガム、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドから選ばれる１又は２種以上のバインダーを含有する請求項１又は２記載のガス発生剤組成物。
４．更に水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、第一リン酸アンモニウム、酸性白土、活性炭、カーボンブラックから選ばれる１又は２種以上の添加剤を含有する請求項１〜３のいずれか１項記載のガス発生剤組成物。
５．更に活性炭及び／又はカーボンブラックを含有する請求項１〜４のいずれか１項記載のガス発生剤組成物。

本発明のガス発生剤組成物は、燃焼温度が低く、燃焼速度が高い。このため、エアバッグ用ガス発生器に使用した場合、クーラントフィルタの減量化による小型化ができるようになる。

本発明の組成物で用いる硝酸アンモニウムは、燃料と酸化剤の両方として機能する成分である。組成物中の硝酸アンモニウムの含有量は、３５〜９５質量％が好ましく、５０〜８５質量％がより好ましい。

本発明の組成物で用いるＥＤＴＡカリウム塩は、硝酸アンモニウムの燃焼促進剤として機能する成分である。ＥＤＴＡカリウム塩は、ＥＤＴＡ二カリウム塩二水和物、ＥＤＴＡ三カリウム塩二水和物又はこれらを併用したものが好ましい。

組成物中のＥＤＴＡカリウム塩の含有量は、５〜６５質量％が好ましく、１５〜５０質量％がより好ましい。

本発明の組成物には、必要に応じて更にバインダーを含有させることができる。バインダーとしては、カルボキシメチルセルロース又はその塩、グアガム、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドから選ばれる１又は２種以上を挙げることができる。

組成物中のバインダーの含有量は、硝酸アンモニウムとＥＤＴＡカリウム塩の合計１００質量部に対して０．１〜１５質量部が好ましく、３〜１０質量部がより好ましい。

本発明の組成物には、必要に応じて、更に燃焼温度を低減させるための添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、第一リン酸アンモニウム、酸性白土から選ばれる１又は２種以上を挙げることができる。

組成物中の燃焼温度を低減させるための添加剤の含有量は、硝酸アンモニウムとＥＤＴＡカリウム塩の合計１００質量部に対して１〜３０質量部が好ましく、５〜２０質量部がより好ましい。

本発明の組成物には、必要に応じて、更に燃焼促進させるための添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、活性炭、カーボンブラック又はこれらを併用したものを挙げることができる。

組成物中の燃焼促進させるための添加剤の含有量は、硝酸アンモニウムとＥＤＴＡカリウム塩の合計１００質量部に対して１〜３０質量部が好ましく、５〜２０質量部がより好ましい。

本発明のガス発生剤組成物は、所望の形状に成型することができ、単孔円柱状、多孔円柱状又はペレット状の成型体にすることができる。

これらの成型体は、ガス発生剤組成物に水又は有機溶媒を添加混合し、押出成型する方法（単孔円柱状、多孔円柱状の成型体）又は打錠機等を用いて圧縮成型する方法（ペレット状の成型体）により製造することができる。単孔円柱状、多孔円柱状のものは、孔が長さ方向に貫通しているもの、孔が貫通せずに窪みを形成しているもののいずれでもよい。

本発明のガス発生剤組成物又はそれから得られる成型体は、例えば、各種乗り物の運転席のエアバック用インフレータ、助手席のエアバック用インフレータ、サイドエアバック用インフレータ、インフレータブルカーテン用インフレータ、ニーボルスター用インフレータ、インフレータブルシートベルト用インフレータ、チューブラーシステム用インフレータ、プリテンショナー用ガス発生器に適用できる。

また本発明のガス発生剤組成物又はそれから得られる成型体を使用するインフレータは、ガスの供給が、ガス発生剤からだけのパイロタイプと、アルゴン等の圧縮ガスとガス発生剤の両方であるハイブリッドタイプのいずれでもよい。

更に本発明のガス発生剤組成物又はそれから得られる成型体は、雷管やスクイブのエネルギーをガス発生剤に伝えるためのエンハンサ剤（又はブースター）等と呼ばれる着火剤
として用いることもできる。

実施例１、２及び比較例１〜４
表１に示すそれぞれの組成（実施例１、２は、酸素バランス０ｇ／ｇ）の成分を目開き３００μmの篩いに３回通して良く混合した（比較例１は単体であるの混合不要）。その後、成型後のストランド長さが１２．７ｍｍになるように計算した量を所定の金型の臼側に充填し、杵側端面から、油圧ポンプで圧力１４．７MPaにて５秒間圧縮保持させた。その後、取り出して、外径９．６ｍｍの円柱状ストランドを得た。この円柱状ストランドの側面と一つの端面にエポキシ樹脂系化学反応形接着剤コニシ株式会社製「ボンドクイック30」を塗布後、室温で２時間以上硬化させ、サンプルとして用いた。なお、比較例３、４は、特許文献３（特開２００６−７６８３２号公報）の実施例１、７である。

（１）燃焼温度
熱化学平衡計算シュミレーションプログラムを用い、理論計算で計算した。

（２）線燃焼速度
実施例及び比較例の円柱状ストランドを内容積１ＬのＳＵＳ製密閉ボンブ内に設置して、ボンブ内を完全に窒素置換しながら、７．３５MPaにまで加圧安定させた。その後、ストランド端面に接触させたニクロム線に所定の電流を流し、そのエネルギーにより着火、燃焼させた。ボンブ内の経時圧力挙動は、記録計のチャートにて確認し、燃焼開始から圧力上昇ピークまでの経過時間をチャートの目盛りから確認し、燃焼前のストランド長さをこの経過時間で除して算出した数値を燃焼速度とした。

実施例１、２から明らかなとおり、硝酸アンモニウムとＥＤＴＡカリウム塩を組み合わせることで、燃焼温度を低減させ、燃焼速度を高めることができた。

Claims (5)

1. 硝酸アンモニウムとＥＤＴＡカリウム塩を含有するガス発生剤組成物。
2. ＥＤＴＡカリウム塩が、ＥＤＴＡ二カリウム塩二水和物及び／又はＥＤＴＡ三カリウム塩二水和物である請求項１記載のガス発生剤組成物。
3. 更にカルボキシメチルセルロース又はその塩、グアガム、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドから選ばれる１又は２種以上のバインダーを含有する請求項１又は２記載のガス発生剤組成物。
4. 更に水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、第一リン酸アンモニウム、酸性白土から選ばれる１又は２種以上の添加剤を含有する請求項１〜３のいずれか１項記載のガス発生剤組成物。
5. 更に活性炭及び／又はカーボンブラックを含有する請求項１〜４のいずれか１項記載のガス発生剤組成物。