JP5152202B2 - ポジトロンct装置 - Google Patents

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Description

この発明は、被検体内に投与されたポジトロン放射性薬剤から放出される放射線を検出してポジトロンの分布画像を画像として生成するポジトロンCT装置に関する。
ポジトロンCT装置、すなわちPET(Positron Emission Tomography)装置は、陽電子(Positron)、すなわちポジトロンの消滅によって発生する複数本のγ線を検出して複数個の検出器でγ線を同時に検出したときのみ(つまり同時計数したときのみ)被検体の画像を再構成するように構成されている。
このPET装置では、放射性薬剤を被検体に投与した後、対象組織における薬剤蓄積の過程を経時的に測定することで、様々な生体機能の定量測定が可能である。したがって、PET装置によって得られる画像は機能情報を有する。
具体的には、被検体として人体を例に採って説明すると、被検体の体内にポジトロン(陽電子)放射性の同位元素(例えば15O、18F、11Cなど)を注入し、これらから放出されるポジトロンが電子と結合する際に発生するγ線を検出する。このγ線の検出を、被検体の長手方向の軸である体軸周りを取り囲むようにしてリング状に配置された多数のγ線検出器からなる検出器列により行う。そして、コンピュータにより通常のX線CT(Computed Tomography)と同様の手法で計算を行って面内で特定し、被検体のイメージを作成する。
画像を再構成するときには、下記のような手法が用いられる(例えば、非特許文献1、2参照)。先ず、視野(FOV: Field of View)内の3次元のボクセル(voxel)で構成される画素をν(j=0,1,…,J−1)、i番目のLOR(Line Of Response)をL(i=0,1,…,I−1)で表す。LORとは、同時計数する2つの検出器を結ぶ仮想上の直線のことである。画素が3次元のボクセルからなる場合には、LORは、各ボクセルから発生して、反対方向に放射された2個のγ線フォトンを検出した2つの検出器を結ぶチューブ(Tube)状領域のことである。
さて、PET画像の再構成では、ボクセルνから発生したγ線フォトンがLOR(L)で検出される確率aijが重要な役割を果たす。このaijは、「システム行列」と呼ばれる。画像再構成の定式化については、上述した非特許文献1、2を参照されたい。
ijを厳密に計算することは困難であるが、各Lについて、その両端の検出器内部にサンプリング点を取って、νから生じたγ線フォトンが検出器の微小領域で検出される確率aij (s)の和を、下記(4)式で近似する手法が用いられている(例えば、非特許文献3参照)。
Nakamura T, Kudo H: Derivation and implementation of ordered-subsets algorithms for list-mode PET data, IEEE Nuclear Science Symposium Conference Record: 1950-1954, 2005 Tanaka E, Kudo H: Subset-dependent relaxation in block-iterative algorithms for image reconstruction in emission tomography. In: Phys Med Biol 48, 1405-1422, 2003 高橋悠,山谷泰賀,小林哲哉,他 :近接撮影型DOI-PETの画像再構成における観測系モデルの検討.JAMIT AnnualMeeting 2006 講演予稿集,OP10-7 H. Tonami, K. Kitamura, M. Satoh, T. Tsuda, and Y. Kumazawa, "Sophisticated 32×32×4-Layer DOI Detector for High Resolution PEM Scanner," IEEE Medical Imaging Conference Record, pp. 3803-3807, 2007.
しかしながら、PET装置では、高分解能化に対する要望が強く、そのためにはLORの個数Iやボクセル数Jを大きくする必要がある。この場合、非常に多くのaijを計算する必要があり、画像再構成時間の増大を招く。特に、上述したような画素が3次元のボクセルからなる場合には、LORの個数Iやボクセル数Jの増大に伴って、画像再構成時間の増大が顕著になる。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、画像再構成の高速化を実現することができるポジトロンCT装置を提供することを目的とする。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、この発明のポジトロンCT装置は、被検体内に投与されたポジトロン放射性薬剤から放出される放射線を検出して電気信号を出力する複数の検出器と、前記電気信号に基づいて、2つの前記検出器において放射線が同時観測されたことを検出する同時計数回路と、前記同時計数回路の出力に基づいて、システム行列を算出するシステム行列算出手段と、当該システム行例に基づいて、前記ポジトロンの分布画像を画像として生成する再構成手段とを有するポジトロンCT装置であって、前記同時計数する2つの検出器を結ぶ仮想上の直線である同時計数LORと画素との交叉範囲を求める交叉範囲算出手段を更に有し、前記システム行列算出手段は、前記交叉範囲に含まれる前記システム行列中の要素を演算することによりシステム行列を求めることを特徴とするものである。
この発明のポジトロンCT装置によれば、交叉範囲算出手段は、同時計数する2つの検出器を結ぶ仮想上の直線である同時計数LORと画素との交叉範囲を求める。システム行列の算出に際して、従来では視野内にある全データのシステム行列中の要素を演算して、システム行列を求めていたのに対して、この発明のポジトロンCT装置によれば、システム行列算出手段は、システム行列の算出に際して、上述した交叉範囲に含まれるシステム行列中の要素を演算して、システム行列を求めている。そして、そのシステム行列に基づいて、ポジトロンの分布画像を画像として再構成手段は生成する。したがって、システム行列の算出に先立って必要なデータが従来の視野内にある全データから交叉範囲分のデータへ低減して、システム行列の算出に必要な初期化作業が交叉範囲の算出のみで済んで効率化され、交叉範囲分のデータへ低減した分だけ交叉範囲を記憶する記憶手段へのアクセスの効率が改善し、システム行列の計算も効率化される。その結果、画像再構成の高速化を実現することができる。
また、この発明のポジトロンCT装置の一例は、上述した画素は3次元のボクセルからなり、上述した交叉範囲算出手段は、LOR両端にある検出器に外接する平行六面体で近似して3次元の交叉範囲を求めることである。3次元の交叉範囲を求めるには、LOR両端にある検出器を含み、かつできるだけ小さい平行六面体を考える。この場合には、上述した検出器に外接する平行六面体が、最も小さい平行六面体となり、この平行六面体と交叉するボクセルをLORと交叉する可能性のあるボクセルとする近似を行うことで3次元の交叉範囲を求めることができる。
上述した平行六面体では、平行六面体を形成する各々の面が長方形あるいは正方形であるのが好ましい。このように平行六面体を設定することで、LORが直交する平行六面体の断面も長方形あるいは正方形となり、その断面の各辺もボクセル境界面と平行になる。そして、サイズも、その「長辺×短辺×視野(FOV)の一辺」の3次元配列となり、上述したシステム行列の算出に必要な初期化作業に関するプログラム作成が簡略化される。
この発明に係るポジトロンCT装置によれば、交叉範囲算出手段は、同時計数する2つの検出器を結ぶ仮想上の直線である同時計数LORと画素との交叉範囲を求め、システム行列算出手段は、システム行列の算出に際して、上述した交叉範囲に含まれるシステム行列中の要素を演算して、システム行列を求めている。その結果、画像再構成の高速化を実現することができる。
実施例に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の側面図およびブロック図である。 γ線検出器の概略斜視図である。 (a)、(b)は、微小領域への吸収確率の説明に供するγ線検出器での同時計数を示した模式図である。 LORと交叉する可能性のあるボクセルと保持用配列との説明に供する模式図である。 γ線検出器に外接する平行六面体の模式図である。 外接六面体およびボクセルの断面に関する模式図である。
符号の説明
3 … γ線検出器
10 … 交叉範囲算出部
11 … システム行列算出部
12 … 再構成部
… i番目のLOR
A´ … (交叉範囲を示す)保持用配列
ij … 確率(システム行列中の要素)
ν … ボクセル
HEX … 平行六面体
M … 被検体
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。図1は、実施例に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の側面図およびブロック図であり、図2は、γ線検出器の概略斜視図である。
本実施例に係るPET装置は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板1を備えている。この天板1は、上下に昇降移動、被検体Mの体軸Zに沿って平行移動するように構成されている。このように構成することで、天板1に載置された被検体Mは、後述するガントリ2の開口部2aを通って、頭部から順に腹部、足部へと走査されて、被検体Mの画像を得る。なお、走査される部位や各部位の走査順序については特に限定されない。
天板1の他に、本実施例に係るPET装置は、開口部2aを有したガントリ2と、γ線検出器3とを備えている。γ線検出器3は、被検体Mの体軸Z周りを取り囲むようにしてリング状に配置されており、ガントリ2内に埋設されている。γ線検出器3は、この発明における検出器に相当する。
その他にも、本実施例に係るPET装置は、天板駆動部4とコントローラ5と入力部6と出力部7とメモリ部8と同時計数回路9と交叉範囲算出部10とシステム行列算出部11と再構成部12とを備えている。天板駆動部6は、天板1の上述した移動を行うように駆動する機構であって、図示を省略するモータなどで構成されている。交叉範囲算出部10は、この発明における交叉範囲算出手段に相当し、システム行列算出部11は、この発明におけるシステム行列算出手段に相当し、再構成部12は、この発明における再構成手段に相当する。
コントローラ5は、本実施例に係るPET装置を構成する各部分を統括制御する。コントローラ5は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。
入力部6は、オペレータが入力したデータや命令をコントローラ5に送り込む。入力部6は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。出力部7はモニタなどに代表される表示部やプリンタなどで構成されている。
メモリ部8は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。本実施例では、同時計数回路9で同時計数された計数値(カウント)や同時計数した2つのγ線検出器3からなる検出器対やLORといった同時計数に関するデータや、交叉範囲算出部10で求められた交叉範囲分のデータや、システム行列算出部11で求められたシステム行列や、再構成部12で処理された画像などについてはRAMに書き込んで記憶し、必要に応じてRAMから読み出す。特に、本実施例では、交叉範囲算出部10で求められた交叉範囲分のデータが記憶可能な交叉範囲メモリ部8aをメモリ部8内のメモリ領域内に有しており、交叉範囲分のデータを交叉範囲メモリ部8aに書き込んで記憶し、システム行列算出部11によるシステム行列の算出時に交叉範囲メモリ部8aから読み出す。ROMには、各種の核医学診断を含めて撮像を行うためのプログラム等を予め記憶しており、そのプログラムをコントローラ5が実行することでそのプログラムに応じた核医学診断をそれぞれ行う。
交叉範囲算出部10とシステム行列算出部11と再構成部12とは、例えば上述したメモリ部8などに代表される記憶媒体のROMに記憶されたプログラムあるいは入力部6などに代表されるポインティングデバイスで入力された命令をコントローラ5が実行することで実現される。
放射性薬剤が投与された被検体Mから発生したγ線をγ線検出器3のシンチレータブロック31(図2を参照)が光に変換して、変換されたその光をγ線検出器3の光電子増倍管(PMT: Photo Multiplier Tube)33(図2を参照)は増倍させて電気信号に変換する。その電気信号を画像情報(画素値、すなわちγ線検出器3で同時計数されたカウント値)として同時計数回路9に送り込む。
具体的には、被検体Mに放射性薬剤を投与すると、ポジトロン放出型のRIのポジトロンが消滅することにより、2本のγ線が発生する。同時計数回路9は、シンチレータブロック31(図2を参照)の位置とγ線の入射タイミングとをチェックし、被検体Mの両側にある2つのシンチレータブロック31でγ線が同時に入射したときのみ、送り込まれた画像情報を適正なデータと判定する。一方のシンチレータブロック31のみにγ線が入射したときには、同時計数回路10は棄却する。つまり、同時計数回路9は、上述した電気信号に基づいて、2つのγ線検出器3においてγ線が同時観測されたことを検出する。
同時計数回路9に送り込まれた画像情報を、交叉範囲算出部10やシステム行列算出部11や再構成部12に送り込む。再構成部12は、システム行列算出部11で求められたシステム行列に基づいて再構成して、被検体Mの画像を求める。具体的には、システム行例に基づいて、ポジトロンの分布画像を画像として再構成部12は生成する。画像を、コントローラ5を介して出力部7に送り込む。このようにして、再構成部12で得られた画像に基づいて核医学診断を行う。交叉範囲算出部10やシステム行列算出部11の具体的な機能については後述する。
γ線検出器3は、図2に示すようにシンチレータブロック31と、そのシンチレータブロック31に対して光学的に結合されたライトガイド32と、そのライトガイド32に対して光学的に結合された光電子増倍管(以下、単に「PMT」と略記する)33とを備えている。シンチレータブロック31を構成する各シンチレータ素子は、γ線の入射に伴って発光することでγ線から光に変換する。この変換によってシンチレータ素子はγ線を検出する。シンチレータ素子において発光した光がシンチレータブロック31で十分に拡散されて、ライトガイド32を介してPMT33に入力される。PMT33は、シンチレータブロック31で変換された光を増倍させて電気信号に変換する。その電気信号は、上述したように画像情報(画素値)として同時計数回路9(図1を参照)に送り込まれる。
次に、交叉範囲算出部10やシステム行列算出部11の具体的な機能について、図3〜図6を参照して説明する。図3は、微小領域への吸収確率の説明に供するγ線検出器での同時計数を示した模式図であり、図4は、LORと交叉する可能性のあるボクセルと保持用配列との説明に供する模式図であり、図5は、γ線検出器に外接する平行六面体の模式図であり、図6は、外接六面体およびボクセルの断面に関する模式図である。図3、図5ではγ線検出器3として、シンチレータブロック31のみを図示して、ライトガイド32やPMT33については図示を省略する。
下記(1)式〜(4)式について、上述した非特許文献3を参照して説明する。図3(a)に示すように、ボクセルνから発生したγ線フォトンがi番目のLOR(L)でaijの確率で検出されるとする。対象となるチューブ状のL(図3では一点鎖線で図示)に対して間隔ΔLでS本のサブLOR(図3(b)では二点鎖線で図示)を描いた図は、図3(b)となる。このとき対象となるLも含めてS本のサブLORによって分割される微小領域の個数もSとなる。なお、図3(b)では、各々のサブLORを平行に図示したが、必ずしも平行である必要はない。また、サブLORは等間隔である必要はない。
ここで、視野内の位置rから放出されたγ線がi番目の投影データとなる確率は、「検出器応答関数(DRF: Detector Response Function)」と呼ばれ(図3(b)では「DRF」で表記)、h(r)で表す。シンチレータ素子の線減弱係数をμとし、シンチレータ素子A内でのγ線の経路長をDiAとし、シンチレータ素子Aへの入射前のシンチレータブロック31(図2を参照)内での経路長をD´iAとし、注目素子B内でのγ線の経路長をDiBとし、注目素子Bへの入射前のシンチレータブロック31(図2を参照)内での経路長をD´iBとすると、DRFは、下記(1)式のように表される。
Figure 0005152202
上記(1)式で求められたh(r)を、図3(b)に示すように、ある微小領域sではhisで表し、対象となるLも含めて各々のサブLORがボクセルνと交わる長さをljsで表すと、システム行列中の要素(すなわち確率aij)は、上述した長さljsをDRF(his)で重み付けて足し合わせた下記(2)式で表される。
Figure 0005152202
上記(2)式中のhis,ljsの積(his・ljs)によって、γ線が検出器の微小領域sで検出される吸収確率aij (s)は下記(3)式のように表される。
Figure 0005152202
したがって、上記(2)式、(3)式をまとめると、吸収確率aij (s)の和によってaijは下記(4)式のように表される。
Figure 0005152202
従来において、各Lについてボクセル数Jに等しい配列A(図4を参照)を用意し、上記(4)式を用いてaij (s)を加算していけば、システム行列中の要素であるaijを求めることができる。しかし、実際には、上述したようにLORの形状が細いチューブ状であるので、大半のボクセルνはLOR(L)と交叉せず、これら交叉しないボクセルνに対応するaijは“0”である。そこで、本実施例では、交叉範囲算出部10(図1を参照)は、LOR(L)と交叉する可能性のあるボクセルνを事前にリストアップして、これに対応するaijのみを保持する配列A´(図4を参照)を用意して、上記(4)式を用いてaij (s)を加算してaijを求める。
より具体的に説明すると、図4に示すように、画像全体を示す視野内のボクセル数Jに等しい配列Aにおいて、交叉範囲算出部10(図1を参照)は、LOR(L)とボクセルνとの交叉範囲を求めるために交叉範囲を示す保持用配列A´を求める。LOR(L)と交叉する可能性のあるボクセルνを、図4では斜線のハッチングで示す。
上述した交叉範囲を求めるには、図5に示すように、LOR両端にある検出器3,3に外接する平行六面体HEXで近似して3次元の交叉範囲を求める。3次元の交叉範囲を求めるには、LOR両端にある検出器3,3を含み、かつできるだけ小さい平行六面体HEXを考える。この場合には、上述した検出器3,3に外接する平行六面体HEXが、最も小さい平行六面体となり、この平行六面体HEXと交叉するボクセルνをLOR(L)と交叉する可能性のあるボクセルνとする近似を行うことで3次元の交叉範囲を求めることができる。すなわち、図4に戻って説明すると、平行六面体HEXを含む最小範囲のボクセルνの集合体が、図4の斜線のハッチングで示す交叉範囲となる。
上述した平行六面体HEXでは、好ましくは、平行六面体を形成する各々の面を長方形あるいは正方形と設定する。このように平行六面体HEXを設定することで、図6に示すように、LOR(L)が直交する平行六面体HEXの断面も長方形あるいは正方形となり、その断面の各辺(図6では太枠で表記)もボクセル境界面と平行になる。このときの交叉範囲の断面も、図6では斜線のハッチングで示す。そして、サイズも、その「長辺×短辺×視野(FOV)の一辺」(断面が正方形の場合には、「(断面の一辺)×視野(FOV)の一辺」)の3次元配列となり、システム行列の算出に必要な初期化作業に関するプログラム作成が簡略化される。
このように求められた保持用配列A´を交叉範囲分のデータとして、交叉範囲メモリ部8a(図1を参照)に書き込んで記憶する。そして、システム行列算出部11(図1を参照)によるシステム行列の算出時に交叉範囲メモリ部8aから読み出す。上述したように、交叉範囲メモリ部8aから読み出された交叉範囲分のデータ(保持用配列A´)を用意し、上記(4)式を用いてaij (s)を加算していけば、システム行列算出部11はシステム行列中の要素であるaijを求めることができる。
再構成部12は、システム行列算出部11で求められたシステム行列に基づいて再構成する。システム行列に基づいた再構成について、上述した非特許文献1を参照して説明する。ここでは、list-mode DRAMA法(Dynamic Row-Action Maximum Likelihood Algorithm)を適用して説明する。再構成される画素値をxとし、γ線検出器3で同時計数されるT個のLORをi(t)(t=0,1,…T−1)とする。この同時計数したLORをM個のサブセットに分割して、各サブセットをSq(q=0,1,…,M−1)とすると、システム行列中の要素であるaijを用いて、xは、下記(5)式〜(10)式で表される。
Figure 0005152202
なお、上記(6)式、(10)式中のλ(q)は緩和パラメータ(relaxation parameter)であり、上記(6)式、(7)式中のCは規格化行列(normalization matrix)である。また、pqjは「Blocking Factor」と呼ばれる。上記(6)式は、システム行列算出部11(図1を参照)で求められたaijと、先に求められたx (k,q)とを用いて、x (k,q+1)を求めることを意味している。したがって、aijとx (k,0)とを用いて、上記(6)式に繰り返し代入することで、x (k,1),…,x (k,M−1)が逐次に求められ、最終的に求められたx (k,M−1)を上記(8)式に代入することでx (k+1)に繰り上げる。そして、そのx (k+1)を上記(5)式に代入することでx (k+1,0)として、同様に、aijとx (k+1,0)とを用いて、上記(6)式に繰り返し代入することで、x (k+1,1),…,x (k+1,M−1)が逐次に求められる。このように、xの上付き添え字を示すkは、上記(6)式を示す逐次近似式における逐次近似の回数である。なお、初期値であるx (0)についてはx (0)>0とする。
以上をまとめると、初期値であるx (0)を決定して、決定されたx (0)を上記(5)式に代入することでx (0,0)として、aijと、そのx (0,0)を用いて、上記(6)式に繰り返し代入することで、x (0,1),…,x (0,M−1)が逐次に求められ、最終的に求められたx (0,M−1)を上記(8)式に代入することでx (1)に繰り上げる。以下、同様に、xを順に繰り上げる(x (0),x (1)…,x (k))。kの回数については特に限定されず、適宜に設定すればよい。このように最終的に求められたxをそれに対応するボクセルνごとに並べることで再構成部12(図1を参照)は再構成を行い、被検体Mの画像を求める。
なお、システム行列に基づいた再構成については、上述したDRAMA法に限定されず、スタティックな(つまり静的な)RAMLA法(Row-Action Maximum Likelihood Algorithm)でもよいし、ML−EM法(Maximum Likelihood Expectation Maximization)でもよいし、OSEM法(Ordered Subset ML-EM)でもよい。上記(6)式のような逐次近似式を用いた逐次近似法を用いて再構成するのが好ましい。
上述の構成を備えた本実施例に係るPET装置によれば、交叉範囲算出部10は、同時計数する2つの検出器を結ぶ仮想上の直線である同時計数LORと画素との交叉範囲を求める。システム行列の算出に際して、従来では視野内にある全データのシステム行列中の要素aijを演算して、システム行列を求めていたのに対して、本実施例に係るPET装置によれば、システム行列算出部10は、システム行列の算出に際して、交叉範囲メモリ部8aに記憶された交叉範囲に含まれるシステム行列中の要素aijを上記(4)式を用いて演算して、システム行列を求めている。そして、そのシステム行列に基づいて、ポジトロンの分布画像を画像として再構成部12は生成する。したがって、システム行列の算出に先立って必要なデータが従来の視野内にある全データ(配列A)から交叉範囲分のデータ(保持用配列A´)へ低減して、システム行列の算出に必要な初期化作業が交叉範囲の算出のみで済んで効率化され、交叉範囲分のデータへ低減した分だけ交叉範囲を記憶する交叉範囲メモリ部8aへのアクセスの効率が改善し、システム行列の計算も効率化される。その結果、画像再構成の高速化を実現することができる。
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した実施例では、ポジトロンCT装置(PET装置)単独であったが、PET装置とCT装置とを組み合わせたPET−CT装置にも適用することができる。
(2)上述した実施例では、画素は3次元のボクセルからなり、LOR両端にある検出器に外接する平行六面体で近似して3次元の交叉範囲を求めたが、画素は2次元のピクセル(pixel)からなる場合に適用してもよい。この場合には、LOR両端にある検出器に外接する平行四辺形あるいは長方形で近似して2次元の交叉範囲を求めればよい。

Claims (3)

  1. 被検体内に投与されたポジトロン放射性薬剤から放出される放射線を検出して電気信号を出力する複数の検出器と、前記電気信号に基づいて、2つの前記検出器において放射線が同時観測されたことを検出する同時計数回路と、前記同時計数回路の出力に基づいて、システム行列を算出するシステム行列算出手段と、当該システム行例に基づいて、前記ポジトロンの分布画像を画像として生成する再構成手段とを有するポジトロンCT装置であって、前記同時計数する2つの検出器を結ぶ仮想上の直線である同時計数LORと画素との交叉範囲を求める交叉範囲算出手段を更に有し、前記システム行列算出手段は、前記交叉範囲に含まれる前記システム行列中の要素を演算することによりシステム行列を求めることを特徴とするポジトロンCT装置。
  2. 請求項1に記載のポジトロンCT装置において、前記画素は3次元のボクセルからなり、前記交叉範囲算出手段は、前記LOR両端にある前記検出器に外接する平行六面体で近似して3次元の前記交叉範囲を求めることを特徴とするポジトロンCT装置。
  3. 請求項2に記載のポジトロンCT装置において、前記平行六面体を形成する各々の面が長方形あるいは正方形であることを特徴とするポジトロンCT装置。
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