JP5151045B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置に関する。
従来、発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子とも略記する)が挙げられる。無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。
一方、有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光する化合物を含有する発光層を陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・リン光)を利用して発光する素子であり、数V〜数10V程度の電圧で発光が可能であり、更に自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
将来の実用化に向けた有機EL素子の開発としては、更に低消費電力で効率よく、高輝度に発光する有機EL素子が望まれており、例えば、スチルベン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、またはトリススチリルアリーレン誘導体に微量の蛍光体をドープし、発光輝度の向上、素子の長寿命化を達成する技術が知られ、また8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これに微量の蛍光体をドープした有機発光層を有する素子、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これにキナクリドン系色素をドープした有機発光層を有する素子等が知られている。
上記に開示されている技術では、励起一重項からの発光を用いる場合、一重項励起子と三重項励起子の生成比が1:3であるため、発光性励起種の生成確率が25%であることと光の取り出し効率が約20%であるため、外部取り出し量子効率(ηext)の限界は5%とされている。
一方、プリンストン大より、励起三重項からのリン光発光を用いる有機EL素子の報告がされて以来、室温でリン光を示す材料の研究が活発になってきている。
励起三重項を使用すると内部量子効率の上限が100%となるため、励起一重項の場合に比べて原理的に発光効率が4倍となり、冷陰極管とほぼ同等の性能が得られ照明用にも応用可能であり注目されている。
一方、有機EL素子の発光輝度と発光寿命の向上のために、発光層と陰極の間に発光層からの正孔の移動を制限する正孔阻止層を設けることが提案されている。この正孔阻止層により、正孔を発光層中に効率よく蓄積することによって、電子との再結合確率を向上させ、発光の高効率化を達成することができる。正孔阻止材料としてフェナントロリン誘導体やトリアゾール誘導体の単独使用が有効であると報告されている。また、ある特定のアルミニウム錯体を正孔ブロック層に使用して、長寿命な有機EL素子を実現している。
このように正孔阻止層の導入により、リン光性化合物を使用した有機EL素子では緑色では内部量子効率としてほぼ100%が、寿命についても2万時間が達成されているが、発光輝度についてはまだ改善の余地が残っている。
また、青〜青緑色のリン光性化合物をドーパントとして用いた場合、CBPのようなカルバゾール誘導体をホスト化合物として使用した例があるが、その外部取り出し量子効率が6%と不十分な結果であり(例えば、非特許文献1参照。)、改良の余地が残っている。青色に関しては、蛍光性化合物からの発光を利用したものであるが、カルバゾール誘導体の分子の真中のビアリール部位に連結基を導入して、青色の色純度に優れ、長寿命な有機EL素子が作製されている(例えば、特許文献1参照。)。更に、前記化合物に加えて特定の五配位の金属錯体を正孔阻止層に使用し、リン光性化合物をドーパントとして使用した場合に、更なる長寿命化が達成されている(例えば、特許文献2参照。)。発光ホストとして、イミダゾール誘導体やインドール誘導体の開示もある(例えば、特許文献3、4参照。)また、正孔阻止材料としてピラゾール誘導体やイミダゾール誘導体の開示もある(例えば、特許文献5、6参照。)。
更に、他にもカルバゾール誘導体を用いた有機EL素子が作製されている。しかしながら、上記カルバゾール誘導体は実用化に耐えうる発光効率と耐熱性を有するまでには至っていない。今後の実用化に向けた有機EL素子では、更に低消費電力で効率よく高輝度に発光し、更に長寿命である有機EL素子の開発が望まれている。特に青色リン光発光の有機EL素子において、高効率で長寿命に発光する素子が求められている。
特開2000−21572号公報 特開2002−8860号公報 特開2002−100476号公報 特開2002−305084号公報 特開2004−331588号公報 特開2004−146368号公報 第62回応用物理学会学術講演会予稿集12−a−M8
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、高い発光効率を示し、発光寿命が長く、且つ駆動電圧の上昇が少ない有機EL素子、該有機EL素子を用いた照明装置及び表示装置を提供することである。
本発明の上記課題は、下記の構成により達成された。
1 .発光ホストまたは正孔阻止材料として、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 0005151045
(式中、Ar11は芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表し、 11 は水素原子または置換基を表し、R 12 及びR 13 は水素原子を表し、nは2〜6の整数を表す。)
2.発光ホストまたは正孔阻止材料として下記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 0005151045
(式中、Arは芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表し、 21 は水素原子または置換基を表し、R 22 及びR 23 は水素原子を表し、mは0または1の整数を表し、nは2〜6の整数を表す。Lはnが2のとき単なる結合手、または2価の連結基を表し、nが3以上のときn価の連結基を表す。)
3.前記一般式(2)のmが1であることを特徴とする前記2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
4.前記一般式(2)のmが1、Arが1,4−フェニレン基であることを特徴とする前記2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
5.前記一般式(2)のLが3価の連結基であることを特徴とする前記2〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
6.前記3価の連結基Lが下記群から選ばれることを特徴とする前記5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 0005151045
(群中、Arは芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表す。)
7.前記一般式(2)のLが4価の連結基であることを特徴とする前記2〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
8.前記4価の連結基Lが下記群から選ばれることを特徴とする前記7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 0005151045
(群中、Arは芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表す。
.リン光性ドーパントを含有することを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
10.前記リン光性ドーパントがイリジウム錯体系化合物または白金錯体系化合物であることを特徴とする前記に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
11.前記1〜10のいずれか1項に記載の有機エレクトルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。
12.前記1〜10のいずれか1項に記載の有機エレクトルミネッセンス素子を有することを特徴とする照明装置。
本発明によって、高い発光効率を示し、発光寿命が長く、且つ駆動電圧の上昇が少ない長い有機EL素子、該有機EL素子を用いた照明装置及び表示装置を提供することができた。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、請求項1〜10のいずれか1項に規定の構成にすることにより、高い発光輝度を示し、発光効率が高く、また発光寿命の長く、駆動電圧の上昇が少ない有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができた。更に前記特性を示す有機EL素子を用いて、高輝度、高寿命の表示装置、照明装置を得ることができた。
本発明者等は、上記の問題点を鋭意検討の結果、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子材料を少なくとも1種用いることにより、外部量子取り出し効率が高く、且つ寿命(半減寿命ともいう)の長い有機EL素子が得られることを見出した。
従来、フェニルイミダゾール誘導体やフェニルピラゾール誘導体を発光ホスト、または正孔阻止材料として使用する場合、窒素原子上で結合して、連結基として芳香族炭化水素環基等を介すことにより、ビス体やトリス体を形成させた化合物が使用されていた。本発明では、イミダゾール誘導体、更に好ましくはフェニルイミダゾール誘導体のある特定の炭素原子上で結合して、連結基として芳香族炭化水素環基等を介すことにより、ビス体やトリス体、更に他の誘導体を形成させた化合物により従来の性能を上回る効果が得られた。
以下、本発明に係る各構成要素の詳細について、順次説明する。
本発明に係る一般式(1)において、Ar11は芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表すが、芳香族炭化水素環基はアリール基とも言い、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等が挙げられ、芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等が挙げられる。
11 表す置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの置換基は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。
本発明に係る一般式(2)において、Arは芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表すが、一般式(1)におけるAr11と同義である。 21 表す置換基も 11 表す置換基と同義である
11、R21としてはアルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基であることが好ましい。
Lは、nが2のとき単なる結合手または2価の連結基を表す。また、nが3以上のときn価の連結基を表す。例えば、nが3のとき、Lは3価の連結基を表し、nが4のとき、Lは4価の連結基を表す。
2価の連結基としては、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレンなどの炭化水素基のほか、ヘテロ原子を含むものであってもよく、またチオフェン−2,5−ジイル基や、ピラジン−2,3−ジイル基のような、芳香族複素環を有する化合物(ヘテロ芳香族化合物ともいう)に由来する2価の連結基であってもよいし、酸素や硫黄などのカルコゲン原子であってもよい。また、アルキルイミノ基、ジアルキルシランジイル基やジアリールゲルマンジイル基のようなヘテロ原子を会して連結する基でもよい。
単なる結合手とは、連結する置換基同士を直接結合する結合手である。
本発明において、3価の連結基としては前記化3が挙げられ、4価の連結基としては前記化4が挙げられる。
mは0または1の整数を表すが、本発明においては、mが1であることが好ましく、更にはArが1,4−フェニレン基であることが好ましい。
本発明に係る有機EL素子材料は発光ホスト、または正孔阻止材料として有機EL素子に用いられ、それぞれ発光層、正孔阻止層に含まれることが好ましい。
本発明に係る有機EL素子材料が発光ホストとして発光層に含有される場合、発光層に含有される全化合物の70質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、本発明に係る有機EL素子材料が正孔阻止材料として正孔阻止層に含有される場合、正孔阻止層に含有される全化合物の99質量以上100質量%以下であることが好ましい。
以下、本発明に係る一般式(1)、(2)で表される化合物及び参考とされる化合物を具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
Figure 0005151045
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本発明に係る化合物の合成例を下記に示す。
化合物(1)の合成
500ml四つ口フラスコに1,3−フェニレンジボロン酸を3.4g、2−ブロモ−1−フェニルイミダゾールを10.0g、更にTHF300mlを入れ、これに炭酸カリウム7.0g、水25mlの溶液を加え、室温で攪拌下約30分窒素吹き込みを行った。Pd(Pph341.0gを加えて、徐々に加熱して5時間煮沸還流して反応終了とした。これを食塩水で洗って、硫酸マグネシウムで脱水後濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、化合物(1)を4.2g得た。構造は1H−NMRとMassにて確認した。
他の本発明に係る化合物も上記に準じて、合成することができる。
《有機EL素子材料の有機EL素子への適用》
本発明に係る有機EL素子材料を用いて本発明の有機EL素子を作製する場合、有機EL素子の構成層(詳細は後述する)の中で、発光層または正孔阻止層に本発明に係る有機EL素子材料を用いることが好ましい。また、発光層中では上記のように発光ドーパントとして好ましく用いられる。
(発光ホストと発光ドーパント)
発光層中の主成分であるホスト化合物である発光ホストに対する発光ドーパントとの混合比は、好ましくは質量で0.1〜30質量%未満の範囲に調整することである。
但し、発光ドーパントは複数種の化合物を混合して用いてもよく、混合する相手は構造を異にする、その他の金属錯体やその他の構造を有するリン光性ドーパントや蛍光性ドーパントでもよい。
ここで、発光ドーパントとして用いられる金属錯体と併用してもよい発光ドーパントについて述べる。発光ドーパントは大きく分けて、蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。
前者(蛍光性ドーパント)の代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
後者(リン光性ドーパント)の代表例としては、好ましくは元素周期表で8族、9族、10族の遷移金属元素を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、白金化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
具体的には以下の特許公報に記載されている化合物である。
国際公開第00/70655号パンフレット、特開2002−280178号公報、特開2001−181616号公報、特開2002−280179号公報、特開2001−181617号公報、特開2002−280180号公報、特開2001−247859号公報、特開2002−299060号公報、特開2001−313178号公報、特開2002−302671号公報、特開2001−345183号公報、特開2002−324679号公報、国際公開第02/15645号パンフレット、特開2002−332291号公報、特開2002−50484号公報、特開2002−332292号公報、特開2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、特開2002−338588号公報、特開2002−170684号公報、特開2002−352960号公報、国際公開第01/93642号パンフレット、特開2002−50483号公報、特開2002−100476号公報、特開2002−173674号公報、特開2002−359082号公報、特開2002−175884号公報、特開2002−363552号公報、特開2002−184582号公報、特開2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、特開2002−226495号公報、特開2002−234894号公報、特開2002−235076号公報、特開2002−241751号公報、特開2001−319779号公報、特開2001−319780号公報、特開2002−62824号公報、特開2002−100474号公報、特開2002−203679号公報、特開2002−343572号公報、特開2002−203678号公報等。
以下に、具体例の一部を示す。
Figure 0005151045
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(発光ホスト)
本発明に用いられる発光ホストとは、発光層に含有される化合物のうちで室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.01未満の化合物を表す。
本発明に係る発光層においては、発光ホストとして公知の発光ホストを複数種併用して用いてもよい。発光ホストを複数種用いることで電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。これらの公知の発光ホストとしては正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、発光の長波長化を防ぎ、なお且つ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
本発明の有機EL素子に用いられる化合物が発光ホストとして用いられる場合、併用して他の発光ホストを併用してもよい。併用する発光ホストとしては構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、またはカルボリン誘導体や該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体等が挙げられる。中でも、カルバゾール誘導体、カルボリン誘導体や該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体が好ましく用いられる。
これらの化合物は正孔阻止材料として使用することも好ましい。
また、本発明に用いられる発光ホストは低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
発光ホストの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が好適である。例えば、特開2001−257076号公報、特開2002−308855号公報、特開2001−313179号公報、特開2002−319491号公報、特開2001−357977号公報、特開2002−334786号公報、特開2002−8860号公報、特開2002−334787号公報、特開2002−15871号公報、特開2002−334788号公報、特開2002−43056号公報、特開2002−334789号公報、特開2002−75645号公報、特開2002−338579号公報、特開2002−105445号公報、特開2002−343568号公報、特開2002−141173号公報、特開2002−352957号公報、特開2002−203683号公報、特開2002−363227号公報、特開2002−231453号公報、特開2003−3165号公報、特開2002−234888号公報、特開2003−27048号公報、特開2002−255934号公報、特開2002−260861号公報、特開2002−280183号公報、特開2002−299060号公報、特開2002−302516号公報、特開2002−305083号公報、特開2002−305084号公報、特開2002−308837号公報等。
また、発光層は発光ホストとして更に蛍光極大波長を有する発光ホストを含有していてもよい。この場合、他の発光ホストとリン光性ドーパントから蛍光性ドーパントへのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は蛍光極大波長を有する他の発光ホストからの発光も得られる。蛍光極大波長を有する発光ホストとして好ましいのは、溶液状態で蛍光量子収率が高いものである。ここで、蛍光量子収率は10%以上、特に30%以上が好ましい。具体的な蛍光極大波長を有する発光ホストとしては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素等が挙げられる。蛍光量子収率は、前記第4版実験化学講座7の分光IIの362頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定することができる。
次に、代表的な有機EL素子の構成について述べる。
《有機EL素子の構成層》
本発明の有機EL素子の構成層について説明する。
本発明の有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(vi)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(vii)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
《阻止層(電子阻止層、正孔阻止層)》
本発明に係る阻止層(例えば、電子阻止層、正孔阻止層)について説明する。
本発明においては、正孔阻止層、電子阻止層等に本発明に係る有機EL素子材料を用いることが好ましく、特に好ましくは正孔阻止層に用いることである。
本発明に係る有機EL素子材料を正孔阻止層、電子阻止層に含有させる場合、請求項1〜10のいずれか1項に記載されている本発明の有機EL素子材料を、正孔阻止層や電子阻止層等の層構成成分として100質量%の状態で含有させてもよいし、他の有機化合物等と混合してもよい。
本発明に係る阻止層の膜厚としては好ましくは3〜100nmであり、更に好ましくは5〜30nmである。
《正孔阻止層》
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
正孔阻止層としては、例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載の正孔阻止(ホールブロック)層等を本発明に係る正孔阻止層として適用可能である。また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子は構成層として正孔阻止層を有し、該正孔阻止層が前記カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を含有することが好ましい。
《電子阻止層》
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。
また本発明においては、発光層に隣接する隣接層、即ち正孔阻止層、電子阻止層に上記の本発明に係る有機EL素子材料を用いることが好ましく、特に電子阻止層に用いることが好ましい。
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料を含み、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては特に制限はなく、従来、光導伝材料において正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
正孔輸送材料は正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更には米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
この正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この正孔輸送層は上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層もしくは複数層を設けることができる。
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、下記の材料が知られている。
更に、電子輸送層は陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、カルボリン誘導体、または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体等が挙げられる。更に上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引性基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も電子輸送材料として用いることができる。
更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
この電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この電子輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
次に、本発明の有機EL素子の構成層として用いられる注入層について説明する。
《注入層》:電子注入層、正孔注入層
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記のごとく陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
注入層とは駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
陽極バッファー層(正孔注入層)は特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層(電子注入層)は特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
この注入層は上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。注入層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この注入層は上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
《陽極》
本発明の有機EL素子に係る陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
《陰極》
一方、本発明に係る陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させることにより作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10〜1000nm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば、発光輝度が向上し好都合である。
《基体(基板、基材、支持体等ともいう)》
本発明の有機EL素子に係る基体としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明のものであれば特に制限はないが、好ましく用いられる基板としては、例えば、ガラス、石英、光透過性樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい基体は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物もしくは有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、水蒸気透過率が0.01g/m2・day・atm以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し効率は1%以上であることが好ましく、より好ましくは2%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用してもよい。
照明用途で用いる場合には、発光ムラを低減させるために粗面加工したフィルム(アンチグレアフィルム等)を併用することもできる。
多色表示装置として用いる場合は、少なくとも2種類の異なる発光極大波長を有する有機EL素子からなるが、有機EL素子を作製する好適な例を説明する。
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
まず適当な基体上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの膜厚になるように蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層等の有機化合物を含有する薄膜を形成させる。
この有機化合物を含有する薄膜の薄膜化の方法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から真空蒸着法またはスピンコート法が特に好ましい。更に層ごとに異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6〜10-2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚0.1〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
これらの層の形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
《表示装置》
本発明の表示装置について説明する。本発明の表示装置は上記有機EL素子を有する。
本発明の表示装置は単色でも多色でもよいが、ここでは多色表示装置について説明する。多色表示装置の場合は発光層形成時のみシャドーマスクを設け、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で膜を形成できる。
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においては、シャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
また作製順序を逆にして、陰極、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた多色表示装置に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。更に交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
多色表示装置は表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレイにおいて、青、赤、緑発光の3種の有機EL素子を用いることによりフルカラーの表示が可能となる。
表示デバイス、ディスプレイとしては、テレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。
発光光源としては家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これに限定するものではない。
《照明装置》
本発明の照明装置について説明する。本発明の照明装置は上記有機EL素子を有する。
本発明の有機EL素子に共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよく、このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより上記用途に使用してもよい。
また、本発明の有機EL素子は照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。または、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
以下、本発明の有機EL素子を有する表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
図1は有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
ディスプレイ1は複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。制御部Bは表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
図2は表示部Aの模式図である。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。図においては、画素3の発光した光が白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示していない)。
画素3は走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を適宜同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
次に、画素の発光プロセスを説明する。
図3は画素の模式図である。
画素は有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサ13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
図3において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサ13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
画像データ信号の伝達により、コンデンサ13が画像データ信号の電位に応じて充電されると共に、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12はドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて、電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしてもコンデンサ13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて、駆動トランジスタ12が駆動して有機EL素子10が発光する。
即ち、有機EL素子10の発光は複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
ここで、有機EL素子10の発光は複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。また、コンデンサ13の電位の保持は次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
図4はパッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図4において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子がなく、製造コストの低減が計れる。
また本発明に係る有機EL材料は照明装置として、実質白色の発光を生じる有機EL素子に適用できる。複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて、混色により白色発光を得る。複数の発光色の組み合わせとしては、青色、緑色、青色の3原色の3つの発光極大波長を含有させたものでもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有したものでもよい。
また複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のリン光または蛍光で発光する材料を複数組み合わせたもの、蛍光またはリン光で発光する発光材料と、発光材料からの光を励起光として発光する色素材料との組み合わせたもののいずれでもよいが、本発明に係る白色有機EL素子においては、発光ドーパントを複数組み合わせ混合するだけでよい。発光層もしくは正孔輸送層あるいは電子輸送層等の形成時のみマスクを設け、マスクにより塗り分ける等単純に配置するだけでよく、他層は共通であるのでマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で例えば電極膜を形成でき、生産性も向上する。この方法によれば、複数色の発光素子をアレー状に並列配置した白色有機EL装置と異なり、素子自体が発光白色である。
発光層に用いる発光材料としては特に制限はなく、例えば、液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、本発明に係る金属錯体、また公知の発光材料の中から任意のものを選択して組み合わせて白色化すればよい。
このように、本発明に係る白色発光有機EL素子は、前記表示デバイス、ディスプレイに加えて、各種発光光源、照明装置として、家庭用照明、車内照明、また露光光源のような一種のランプとして、また液晶表示装置のバックライト等、表示装置にも有用に用いられる。
その他、時計等のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体等の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等、更には表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等広い範囲の用途が挙げられる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
《有機EL素子1−1の作製》
陽極としてガラス上にITOを150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製:NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をiso−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方5つのタンタル製抵抗加熱ボートにα−NPD、H4、Ir−12、BCP、Alq3をそれぞれ入れ、真空蒸着装置(第1真空槽)に取り付けた。更に、タンタル製抵抗加熱ボートにフッ化リチウムをタングステン製抵抗加熱ボートにアルミニウムをそれぞれ入れ、真空蒸着装置の第2真空槽に取り付けた。
まず、第1の真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で透明支持基板に膜厚20nmの厚さになるように蒸着し、正孔注入/輸送層を設けた。
更に、H4の入った前記加熱ボートとIr−12の入ったボートをそれぞれ独立に通電して、発光ホストであるH4と発光ドーパントであるIr−12の蒸着速度が100:6になるように調節し、膜厚30nmの厚さになるように蒸着し、発光層を設けた。
次いで、BCPの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で厚さ10nmの正孔阻止層を設けた。
更にAlq3の入った前記加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で膜厚20nmの電子輸送層を設けた。
次に、電子輸送層まで成膜した素子を真空のまま第2真空槽に移した後、電子輸送層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクが配置されるように、装置外部からリモートコントロールして設置した。第2真空槽を2×10-4Paまで減圧した後、フッ化リチウム入りのボートに通電して、蒸着速度0.01〜0.02nm/秒で膜厚0.5nmの陰極バッファー層を設け、次いでアルミニウムの入ったボートに通電して、蒸着速度1〜2nm/秒で膜厚150nmの陰極をつけ、有機EL素子1−1を作製した。
《有機EL素子1−2〜1−10の作製》
有機EL素子1−1の作製において、表1に記載のように発光ホストH4を変更した以外は同様にして、有機EL素子1−2〜1−10を作製した。
Figure 0005151045
《有機EL素子の評価》
得られた有機EL素子1−1〜1−10を評価するに際しては、作製後の各有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚み300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを上記陰極上に重ねて前記透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図5、図6に示すような照明装置を形成して評価した。
図5は照明装置の概略図を示し、有機EL素子101はガラスカバー102で覆われている(なお、ガラスカバーでの封止作業は、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行った)。図6は照明装置の断面図を示し、図6において、105は陰極、106は有機EL層、107は透明電極付きガラス基板を示す。なお、ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
(外部取り出し量子効率)
有機EL素子を室温(約23〜25℃)、2.5mA/cm2の定電流条件下による点灯を行い、点灯開始直後の発光輝度(L)[cd/m2]を測定することにより、外部取り出し量子効率(η)を算出した。ここで、発光輝度の測定はCS−1000(コニカミノルタセンシング製)を用いた。外部取り出し量子効率は、有機EL素子1−1を100とする相対値で表した。
(発光寿命)
有機EL素子を室温下、2.5mA/cm2の定電流条件下による連続点灯を行い、初期輝度の半分の輝度になるのに要する時間(τ1/2)を測定した。発光寿命は有機EL素子1−1を100と設定する相対値で表した。
得られた結果を表1に示す。
Figure 0005151045
表1から、本発明に係る化合物を発光ホストとして用いて作製した有機EL素子は、比較例の有機EL素子に比べ、高い発光効率と発光寿命の長寿命化が達成できることが明らかである。
実施例2
《有機EL素子2−1の作製》
陽極としてガラス上にITOを150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製:NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をiso−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方5つのタンタル製抵抗加熱ボートに、α−NPD、H2、Ir−13、BCP、Alq3をそれぞれ入れ、真空蒸着装置(第1真空槽)に取り付けた。更に、タンタル製抵抗加熱ボートにフッ化リチウムをタングステン製抵抗加熱ボートにアルミニウムをそれぞれ入れ、真空蒸着装置の第2真空槽に取り付けた。
まず、第1の真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で透明支持基板に膜厚20nmの厚さになるように蒸着し、正孔注入/輸送層を設けた。
更に、H2の入った前記加熱ボートとIr−13の入ったボートをそれぞれ独立に通電して、発光ホストであるH2と発光ドーパントであるIr−13の蒸着速度が100:6になるように調節し、膜厚30nmの厚さになるように蒸着し、発光層を設けた。
次いで、BCPの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で厚さ10nmの正孔阻止層を設けた。
更に、Alq3の入った前記加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で膜厚20nmの電子輸送層を設けた。
次に、電子輸送層まで成膜した素子を真空のまま第2真空槽に移した後、電子輸送層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクが配置されるように、装置外部からリモートコントロールして設置した。第2真空槽を2×10-4Paまで減圧した後、フッ化リチウム入りのボートに通電して、蒸着速度0.01〜0.02nm/秒で膜厚0.5nmの陰極バッファー層を設け、次いでアルミニウムの入ったボートに通電して、蒸着速度1〜2nm/秒で膜厚150nmの陰極をつけ、有機EL素子2−1を作製した。
Figure 0005151045
《有機EL素子2−2〜2−7の作製》
有機EL素子2−1の作製において、表2に記載のように発光ホストを変更した以外は同様にして、有機EL素子2−2〜2−7を作製した。
《有機EL素子の評価》
得られた有機EL素子2−1〜2−7を評価するに際しては、作製後の各有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚み300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを上記陰極上に重ねて前記透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図5、図6に示すような照明装置を形成して評価した。
外部取り出し量子効率を実施例1と同様の方法で評価を行った。外部取り出し量子効率は、有機EL素子2−1を100として各々相対値で表した。得られた結果を表2に示す。
Figure 0005151045
表2から、本発明に係る化合物を発光ホストとして用いて作製した有機EL素子は、比較例の有機EL素子に比べ、高い発光効率を達成できることが明らかである。
実施例3
《有機EL素子3−1〜3−8の作製》
実施例1における有機EL素子1−1の作製において、H4をCBPに置き換えた以外は、有機EL素子1−1と同様にして有機EL素子3−1を作製した。
有機EL素子3−1の作製において、正孔阻止材料として用いているCBPを下表に示す化合物に置き換えた以外は、有機EL素子3−1と同じ方法で3−2〜3−8を作製した。
Figure 0005151045
《有機EL素子の評価》
実施例1と同様にして、有機EL素子3−1〜3−8の外部取り出し量子効率の評価を行った。電圧上昇の評価は以下のとおりに行った。
(電圧上昇)
有機EL素子3−1〜3−8を室温下、2.5mA/cm2の定電流条件下による連続点灯を行い、初期輝度の半分の輝度になった時の駆動電圧の初期駆動電圧からの上昇分を測定した。なお、下表に記載の外部取り出し量子効率、電圧上昇の測定結果は、有機EL素子3−1を100とした時の相対値で表した。
Figure 0005151045
表3から、本発明に係る化合物を正孔阻止材料として用いて作製した有機EL素子は、比較例の有機EL素子に比べ、高い発光効率と低い電圧上昇を達成できることが明らかである。
実施例4
《有機EL素子4−1〜4−6の作製》
実施例3における有機EL素子3−1の作製において、CBPをH2に置き換えた以外は、有機EL素子3−1と同様にして有機EL素子4−1を作製した。
有機EL素子4−1の作製において、正孔阻止材料として用いているH2を下表に示す化合物に置き換えた以外は、有機EL素子4−1と同じ方法で4−2〜4−6を作製した。
《有機EL素子の評価》
実施例1と同様にして、有機EL素子4−1〜4−6の外部取り出し量子効率の評価を行った。
Figure 0005151045
表4から、本発明に係る化合物を正孔阻止材料として用いて作製した有機EL素子は、比較例の有機EL素子に比べ、高い発光効率を達成できることが明らかである。
実施例5
《有機EL素子5−1の作製》
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を100nm製膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行なった。
この基板を市販のスピンコータに取り付け、PVK60mgを1,2−ジクロロエタン10mlに溶解した溶液を用い、1000rpm、30秒の条件下、スピンコート(膜厚約40nm)、60℃で1時間真空乾燥し、正孔輸送層とした。
次に、CBP(60mg)及びIr−13(3.0mg)をトルエン6mlに溶解した溶液を用い、1000rpm、30秒の条件下、スピンコートし(膜厚約40nm)、60℃で1時間真空乾燥し、発光層とした。
更に、この基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにBCPを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにAlq3を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、BCPの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記発光層の上に蒸着して膜厚10nmの正孔阻止の役割も兼ねた電子輸送層を設けた。
その上に、更にAlq3の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記電子輸送層の上に蒸着して、更に膜厚40nmの電子注入層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
引き続き、フッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子5−1を作製した。
《有機EL素子5−1〜5−8の作製》
有機EL素子5−1の作製において、発光層のCBPを表5に示す化合物に置き換えた以外は、有機EL素子5−1と同じ方法で有機EL素子5−2〜5−8を作製した。
《有機EL素子の評価》
以下のようにして作製した有機EL素子5−1〜5−8の評価について、外部取り出し量子効率を実施例1と同様の方法で評価を行った。有機EL素子5−1を100として各々相対値で表した。得られた結果を表5に示す。
Figure 0005151045
表5から、本発明に係る化合物を発光ホストとして用いて作製した有機EL素子は、比較例の有機EL素子に比べ、高い発光効率を達成できることが明らかである。
実施例6
《フルカラー表示装置の作製》
(青色発光素子の作製)
実施例1の有機EL素子1−4を青色発光素子として用いた。
(緑色発光素子の作製)
実施例2の有機EL素子2−1において、Ir−13をIr−1に変更した以外は同様にして緑色発光素子を作製し、これを緑色発光素子として用いた。
(赤色発光素子の作製)
実施例2の有機EL素子2−1において、Ir−13をIr−9に変更した以外は同様にして赤色発光素子を作製し、これを赤色発光素子として用いた。
上記で作製した赤色、緑色、青色発光有機EL素子を同一基板上に並置し、図1に記載のような形態を有するアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製した。図2には、作製した前記表示装置の表示部Aの模式図のみを示した。即ち、同一基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と並置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。前記複数画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。このように赤、緑、青の画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示装置を作製した。
このフルカラー表示装置は駆動することにより、輝度が高く、高耐久性を有し、且つ鮮明なフルカラー動画表示が得られることが分かった。
実施例7
《白色発光素子及び白色照明装置の作製》
実施例1の透明電極基板の電極を20mm×20mmにパターニングし、その上に実施例1と同様に正孔注入/輸送層としてα−NPDを25nmの厚さで成膜し、更に化合物(20)の入った前記加熱ボートとIr−12の入ったボート及びIr−9の入ったボートをそれぞれ独立に通電して、発光ホストである化合物(20)と発光ドーパントであるIr−12及びIr−9の蒸着速度が100:5:0.6になるように調節し、膜厚30nmの厚さになるように蒸着し、発光層を設けた。
次いで、BCPを10nm成膜して正孔阻止層を設けた。更に、Alq3を40nmで成膜し電子輸送層を設けた。
次に、実施例1と同様に電子注入層の上に、ステンレス鋼製の透明電極とほぼ同じ形状の正方形穴あきマスクを設置し、陰極バッファー層としてフッ化リチウム0.5nm及び陰極としてアルミニウム150nmを蒸着成膜した。
この素子を実施例1と同様な方法及び同様な構造の封止缶を具備させ、図5、図6に示すような平面ランプを作製した。
この平面ランプに通電したところほぼ白色の光が得られ、照明装置として使用できることが分かった。
有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。 表示部Aの模式図である。 画素の模式図である。 パッシブマトリクス方式フルカラー表示装置の模式図である。 照明装置の概略図である。 照明装置の模式図である。
符号の説明
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサ
A 表示部
B 制御部
102 ガラスカバー
105 陰極
106 有機EL層
107 透明電極付きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤

Claims (12)

  1. 発光ホストまたは正孔阻止材料として、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0005151045
    (式中、Ar11は芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表し、 11 は水素原子または置換基を表し、R 12 及びR 13 は水素原子を表し、nは2〜6の整数を表す。)
  2. 発光ホストまたは正孔阻止材料として、下記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0005151045
    (式中、Arは芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表し、 21 は水素原子または置換基を表し、R 22 及びR 23 は水素原子を表し、mは0または1の整数を表し、nは2〜6の整数を表す。Lはnが2のとき単なる結合手、または2価の連結基を表し、nが3以上のときn価の連結基を表す。)
  3. 前記一般式(2)のmが1であることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記一般式(2)のmが1、Arが1,4−フェニレン基であることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記一般式(2)のLが3価の連結基であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記3価の連結基Lが下記群から選ばれることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0005151045
    (群中、Arは芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表す。)
  7. 前記一般式(2)のLが4価の連結基であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 前記4価の連結基Lが下記群から選ばれることを特徴とする請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0005151045
    (群中、Arは芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表す。)
  9. リン光性ドーパントを含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 前記リン光性ドーパントがイリジウム錯体系化合物または白金錯体系化合物であることを特徴とする請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機エレクトルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機エレクトルミネッセンス素子を有することを特徴とする照明装置。
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