以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る攪拌分離槽10を有する使用済紙おむつの処理装置1を備える使用済紙おむつの処理システム101を説明する。図1は、使用済紙おむつの処理システム101(以下、単に「処理システム101」という。)の模式的系統図である。紙おむつDは、主要材料である母材分としてのパルプPLと、吸水性物質分としてのポリマーPMと、テープや不織布や防水シート等のプラスチック分としてのビニールV(第1の物質)とを含んで構成されている。本実施の形態では、パルプPL及びポリマーPLをまとめて「脱プラ原料P」という場合もある。脱プラ原料Pは、再生用物質の一形態であり、第2の物質に相当する。処理システム101は、汚物(し尿)を含んだ使用済の紙おむつDから、ポリマーPM、パルプPL、ビニールVを分離し、再生可能な資源を取り出すシステムである。なお、処理システム101で処理される際、ポリマーPMは薬品によって吸水性が失われている。処理システム101は、使用済紙おむつの処理装置1(以下、単に「処理装置1」という。)と、洗浄装置としてのすすぎ洗浄装置40とを備えている。処理装置1は、攪拌分離槽10と、第1の回収槽としての重汚水槽11と、第2の回収槽としての軽汚水槽12と、分別装置20と、制御装置60とを備えている。主要機器を、攪拌分離槽10、重汚水槽11、軽汚水槽12として、攪拌分離装置を構成している。
ここで図2を参照して、攪拌分離槽10の構成を説明する。図2は、攪拌分離槽10の縦断面図である。攪拌分離槽10は、予備洗浄が行われずに裁断された使用済の紙おむつDを洗浄すると共にビニールVを粗方取り除くものである。攪拌分離槽10は、処理用液体としての処理液体Qを収容する収容容器10cと、脱プラ原料Pが拡散した処理液体Qを通すがほとんどのビニールVは通さない大きさの孔が複数形成された多孔板10pと、ビニールVを収容容器10cの外へ導出する導出管10dと、脱プラ原料Pが拡散した処理液体Qを収容容器10cの外へ排出する第1の排出管としての重汚水排出管18及び第2の排出管としての軽汚水排出管19と、収容容器10c内の処理液体Qを水平方向成分が旋回すると同時に鉛直方向成分が上昇及び下降するように流動させて攪拌する攪拌装置としてのミキサー10mとを有している。
収容容器10cは、円筒状の部材の下部に、円錐状の部材がその頂点を下にして接続した形状となっている。収容容器10cは、円筒状の部材の軸線が鉛直になるように配置され、円錐状の部材の頂点が円筒状の部材の軸線の延長線上に位置するように構成されている。円筒状の部材の軸線の延長線上には、導出管10dが設けられている。導出管10dは、円錐状の部材の頂部を貫通し、一端が収容容器10cの内部に突き出ており、他端は収容容器10cの外側に延びている。導出管10dの他端の先には、導出された処理液体QからビニールVを除去するビニール除去スクリーン10eが設置されている。ビニール除去スクリーン10eでビニールVが除去されて残った処理液体Qは、配管10erを介して軽汚水槽12(図1参照)に導入されるように構成されている。導出管10dには、収容容器10cの外側で、流路を開閉する開閉弁10vが配設されている。開閉弁10vは、本実施の形態ではピンチバルブが用いられている。多孔板10pは、本実施の形態ではパンチングメタルが用いられており、収容容器10cの外周の側壁の内側から導出管10dの一端に向かって下り勾配となるように設けられている。
図3に、多孔板10pの設置態様をより詳細に示す。図3(a)は攪拌分離槽10の平面図、図3(b)は多孔板10pまわりの部分側面断面図である。多孔板10pは、複数に分割されたものが収容容器10cの周方向に配列されて放射状に傾斜させて設置されており、本実施の形態では、12分割された三角形状の部材が導出管10dを囲むように配列されて構成されている。また、本実施の形態では、ミキサー10mによって処理液体Qが旋回する方向(円形断面の収容容器10cの周方向)R(図3(b)参照)において、平らに配置された多孔板10paと、順次高くなるように傾けて配置された多孔板10pbと、順次低くなるように傾けて配置された多孔板10pcとで1単位の多孔板10pUが構成され、この1単位の多孔板10pUが旋回方向Rに繰り返して配列されている。多孔板10pbと多孔板10pcとで、両者の接続部が頂上となる突部10prが形成される。1単位を構成する各多孔板10pa、10pb、10pcは、旋回方向Rに辿って見れば、平らであったり、上りあるいは下りといった高さに変化が現れるが、放射状に配設された多孔板10pの放射線(ある一点から四方八方に広がっている線)の方向(円形断面の収容容器10cの半径方向)に辿って見ると、どの部分でも収容容器10cの外周から中心に向かって下り勾配に傾斜して設置されている。
図2に示すように、収容容器10cは、多孔板10pによって、多孔板10pよりも上方の攪拌部10tと下方の沈殿部10sとに区画されている。攪拌部10tには、ミキサー10mが配設されている。ミキサー10mは、垂直に立設する軸10maと、軸10maの端部に取り付けられて軸10maを軸線まわりに回転させるモータ10meと、攪拌部10t内で処理液体Qの旋回流れを作り出すフィン10mfとを有している。軸10maは、その軸線が収容容器10cの円筒状部材の軸線と一致するように設置されている。フィン10mfは、収容容器10c内の処理液体Qを、旋回方向R(図3参照)に流動させながら上方にも向けて動かすことができる羽根形状に形成されている。フィン10mfは、多孔板10pの近くで軸10maに取り付けられている。
導出管10dは、攪拌部10tに開口しており、沈殿部10sには直接開口していない。このように構成されていることにより、沈殿部10sの処理液体Qが直接(攪拌部10tを経由せずに)導出管10dに流入することがないようになっている。収容容器10cの沈殿部10sの部分には、脱プラ原料Pが拡散した処理液体Qを排出する2つの排出口10hが形成されている。排出口10hは、収容容器10cの円錐状の部材の頂点付近に形成されている。2つの排出口10hのうち、一方の排出口10haには第1の排出管としての重汚水排出管18が接続されており、他方の排出口10hbには第2の排出管としての軽汚水排出管19が接続されている。重汚水排出管18は、重汚水槽11(図1参照)内における所定の高液位の直近上方で他端が開口する長さまで下方に延びている。直近上方とは、所定の高液位に対し、上方であって極力近い位置である。軽汚水排出管19も、重汚水排出管18に倣い、軽汚水槽12(図1参照)内における所定の高液位の直近上方で他端が開口する長さまで下方に延びている。このように構成することで、重汚水排出管18及び軽汚水排出管19の下端の静水頭を大きくすることができ、排出時間の短縮化を図ることができる。重汚水排出管18には、流路を開閉する第1の開閉弁としての開閉弁18vが配設されている。軽汚水排出管19には、流路を開閉する第2の開閉弁としての開閉弁19vが配設されている。開閉弁18v及び開閉弁19vは、本実施の形態ではピンチバルブあるいはバタフライ弁が用いられている。
再び図1に戻って処理装置1の説明を続ける。重汚水槽11及び軽汚水槽12は、攪拌分離槽10の下方に設けられている。重汚水槽11及び軽汚水槽12は、重汚水槽11が重汚水排出管18側に、軽汚水槽12が軽汚水排出管19側になるように配置されている。このように構成されていることにより、開閉弁18vを開けると処理液体Qが重汚水槽11に流入し、開閉弁19vを開けると処理液体Qが軽汚水槽12に流入することとなる。本実施の形態では、予備洗浄されていない使用済紙おむつDを初めて洗浄した処理液体Qあるいはし尿の含有量が許容範囲に低減されるまで洗浄した処理液体Qを重汚水槽11へ導入し、し尿の含有量が許容範囲に低減された後に洗浄した処理液体Qを軽汚水槽12へ導入することを想定しており、重汚水槽11へ導入される処理液体Qを重汚水Q1といい、軽汚水槽12へ導入される処理液体Qを軽汚水Q2ということとする。
軽汚水槽12の上方には再生用物質抽出分別機としての振動スクリーン15が設置されている。振動スクリーン15は、重汚水槽11内の重汚水Q1を導入し、重汚水Q1内に含まれる脱プラ原料Pを分別する機器である。振動スクリーン15は、分別した脱プラ原料Pを軽汚水槽12内に落下させることができるように、軽汚水槽12の上方に配設されている。重汚水槽11には、重汚水Q1を振動スクリーン15へ導く重汚水搬送管16の一端が接続されており、重汚水搬送管16の他端は振動スクリーン15の上方で開口している。重汚水搬送管16は、振動スクリーン15に接続されていてもよい。重汚水搬送管16には、重汚水Q1を振動スクリーン15へ圧送する重汚水ポンプ13が配設されている。振動スクリーン15には、重汚水Q1から脱プラ原料Pが除かれた後の処理液体Qである濃汚水Q3を流す被処理液管82の一端が接続されている。被処理液管82の他端は、濃汚水Q3を浄化する汚水処理槽81に接続されている。汚水処理槽81は、浄化槽81Bと、濃汚水Q3の浄化槽81Bへの供給流量を調節するために浄化槽81Bの前段に設けられる流量調整槽81Aと、濃汚水Q3が浄化された処理液体Qである処理済水Q4を貯留する貯留槽81Cとに分割されていてもよい。このように分割すると、汚水処理槽81への濃汚水Q3の導入流量の変動にかかわらず浄化処理を平準化することができると共に、処理済水Q4の需要の変化に対応することができる。汚水処理槽81(貯留槽81C)には、また、処理済水Q4の一部を排水Yとして系外に排出する排水管89の一端と、処理済水Q4を流す浄化液管84の一端とが接続されている。浄化液管84には、処理済水Q4を圧送する浄化液ポンプ85が配設されている。軽汚水槽12には、軽汚水Q2を流す軽汚水搬送管17の一端が接続されている。軽汚水搬送管17には、軽汚水Q2を圧送する軽汚水ポンプ14が配設されている。
分別装置20は、脱プラ原料Pを含んでいる軽汚水Q2を、脱プラ原料Pと分別水Q5(軽汚水Q2から脱プラ原料Pが除去された処理液体Q)とに分別し、分別水Q5を再び攪拌分離槽10で使用可能にする装置であり、分別液体槽としての循環水槽21と、再生用物質含有液体分別機としての分別スクリーン23と、分別液体管としての分別水管24とを含んで構成されている。
分別スクリーン23は、処理液体Qを通すが脱プラ原料Pは通さないスクリーンを有しており、軽汚水Q2から脱プラ原料Pが除かれた分別水Q5を導出し、残った脱プラ原料Pを側方から搬出することができるように構成されている。分別スクリーン23には、軽汚水搬送管17の端部が接続されており、軽汚水槽12から搬送されてきた軽汚水Q2を分別スクリーン23内に導入することができるように構成されている。また、分別スクリーン23には、分別水Q5を循環水槽21に導く配管23Dが接続されている。さらに、分別スクリーン23には、脱プラ原料Pを洗浄する液体を導入する配管28が接続されている。配管28の他端には浄化液管84の他端が接続されており、処理済水Q4を脱プラ原料Pの洗浄用の液体とするために分別スクリーン23に導入することができるように構成されている。また、分別スクリーン23には、脱プラ原料Pを洗浄した後の液体を循環水槽21に導く配管23Eが接続されている。分別スクリーン23の下方には、分別スクリーン23の側方より搬出された脱プラ原料Pから水分を除去する脱水機29が設けられている。脱水機29には、脱プラ原料Pから除去した水分を循環水槽21に導く配管29Dが接続されている。
循環水槽21は、分別スクリーン23で分別された分別水Q5を受けやすくするために、分別スクリーン23の近傍に配置されているとよい。循環水槽21は、攪拌分離槽10で攪拌洗浄を行う際に用いられる処理液体Qの量(攪拌洗浄時水量)以上の有効容量を持つ大きさに形成されていると、少なくとも1回の攪拌洗浄に必要な水量を確保することができるため好ましく、攪拌洗浄時の処理液体Qの不足を回避する観点からは攪拌洗浄時水量の2倍以上の有効容量を持つことがより好ましく、設置スペースを抑制する観点からは攪拌洗浄時水量の5倍以下の有効容量であることが好ましい。循環水槽21の下部には、分別水管24の一端が接続されている。分別水管24の他端は、開閉弁10v(図2参照)よりも上流側の導出管10dに接続されている。分別水管24は、処理用液体供給管の一形態である。また、分別水管24が導出管10dに接続される態様を、導出管10dの軸直角断面が現れる平面視において、分別水管24の軸線の仮想延長線が導出管10dの中心を外れ、分別水管24が導出管10dの外周の接線に重なるようにすると、分別水管24から導出管10dに流入した分別水Q5が旋回しながら導出管10d内を流れることとなるため好ましい。分別水管24には、攪拌分離槽10に向けて分別水Q5を圧送する分別水ポンプ25が配設されている。また、分別水ポンプ25よりも下流側(好ましくは導出管10dの直近)の分別水管24には、流路を開閉する開閉弁24v(図2参照)が配設されている。
制御装置60は、処理装置1の運転を制御する。制御装置60は、ミキサー10mのモータ10me(図2参照)、ビニール除去スクリーン10e、振動スクリーン15、及び分別スクリーン23の動力源と信号ケーブルで接続されており、これらの発停を制御することができるように構成されている。また、制御装置60は、重汚水ポンプ13、軽汚水ポンプ14、分別水ポンプ25、及び浄化液ポンプ85の動力源と信号ケーブルで接続されており、これらの発停を制御することができるように構成されている。また、制御装置60は、開閉弁10v、18v、19v、24v(図2参照)とそれぞれ信号ケーブルで接続されており、流路の開閉を制御することができるように構成されている。
引き続き図1を参照して、処理システム101が備える洗浄装置としてのすすぎ洗浄装置40の構成を説明する。すすぎ洗浄装置40は、処理装置1で抽出した脱プラ原料PをパルプPLと吸水性が失われたポリマーPMとに分離してパルプPLを抽出する装置であり、拡散槽としてのすすぎ濃調槽41と、母材分分離手段としての精選スクリーン42と、母材分分別機としてのパルプ分別スクリーン43と、洗浄液体導入管としての工業用水管74と、洗浄液体導出管としてのすすぎ洗浄液体管47と、吸水性物質分分別機としてのポリマー分別スクリーン94と、後述する循環手段とを備えている。
すすぎ濃調槽41は、脱水機29から(脱水機29が省略される場合は分別スクリーン23から)脱プラ原料Pを受け入れて、洗浄液体Sに脱プラ原料Pが拡散したすすぎ原料水S4を生成する槽である。すすぎ濃調槽41は、脱プラ原料Pが拡散したすすぎ原料水S4をポンプで搬送可能な濃度にすることができる量の洗浄液体Sを収容可能な有効容量に構成されている。すすぎ原料水S4の濃度は、すすぎ濃調槽41内の洗浄液体Sの量を多くすることで薄く、洗浄液体Sの量を少なくすることで濃くすることができ、すすぎ濃調槽41で濃度を調節することができる。すすぎ濃調槽41の下部には、すすぎ原料水管44の一端が接続されている。すすぎ原料水管44の他端は、精選スクリーン42に接続されている。すすぎ原料水管44には、精選スクリーン42に向けてすすぎ原料水S4を圧送するすすぎ原料水ポンプ45が配設されている。
精選スクリーン42は、すすぎ原料水S4を導入し、すすぎ原料水S4に拡散している脱プラ原料PからパルプPLを抽出する装置である。精選スクリーン42は、パルプPLを通すがポリマーPMは通さないスクリーンを有しており、すすぎ原料水S4からパルプPLが除かれたポリマー含有水S5と、抽出されたパルプPLを含むパルプ水S6とを導出することができるように構成されている。精選スクリーン42には、すすぎ原料水管44と、ポリマー含有水S5を流すポリマー含有水管42Mと、パルプ水S6をパルプ分別スクリーン43に導くパルプ水管42Lと、後述するすすぎ洗浄液体管47Aとが接続されている。ポリマー含有水管42Mは、ポリマー含有水S5を、ポリマーPMを抽出するポリマー分別スクリーン94へ導くように敷設されている。ポリマー分別スクリーン94には、ポリマー含有水S5からポリマーPMを除去した後の水分をすすぎ濃調槽41に導く配管94Dが接続されている。
パルプ分別スクリーン43は、精選スクリーン42からパルプ水S6を導入すると共に工業用水管74を介して工業用水Wを導入し、パルプPLを洗浄すると共にパルプPLに付着している洗浄液体Sを除去する装置である。パルプ分別スクリーン43は、典型的には、精選スクリーン42よりも下方、かつ、すすぎ濃調槽41よりも上方に配設されている。パルプ分別スクリーン43には、パルプ水管42L及び工業用水管74のほか、パルプPLから除去した洗浄液体Sをすすぎ洗浄水タンク46へ導く配管43Dと、パルプPLから除去した洗浄液体Sをすすぎ濃調槽41へ向けて導出する配管43Eとが接続されている。パルプ分別スクリーン43の下方には、パルプ分別スクリーン43の側方より搬出されたパルプPLからさらに水分を除去する脱水機49が設けられている。脱水機49には、パルプPLから除去した水分をすすぎ濃調槽41に導く配管49Dが接続されている。本実施の形態では、パルプ分別スクリーン43で除去された洗浄液体Sを流す配管43Eが、配管49Dに接続されているが、配管43Eが洗浄液体Sを直接すすぎ濃調槽41へ導くように構成されていてもよい。
すすぎ洗浄水タンク46は、パルプ分別スクリーン43でパルプPLから除去された洗浄液体Sを一旦貯留し、洗浄液体Sを、状況に応じて、すすぎ濃調槽41、処理装置1、あるいは精選スクリーン42へ分配するバッファタンクである。すすぎ洗浄水タンク46の内部には、決められた液位を越えた洗浄液体Sをすすぎ濃調槽41へ導くオーバーフロー管46Fが設けられている。すすぎ洗浄水タンク46の下部には、洗浄液体Sを処理装置1及び精選スクリーン42へ向けて流すすすぎ洗浄液体管47の一端が接続されている。すすぎ洗浄液体管47には、洗浄液体Sを圧送するすすぎ洗浄液体ポンプ48が配設されている。すすぎ洗浄液体管47は、すすぎ洗浄液体ポンプ48の下流側で、2本のすすぎ洗浄液体管47A、47Bに分岐している。すすぎ洗浄液体管47Aは、精選スクリーン42の上部に接続されている。すすぎ洗浄液体管47Bは、処理装置1の配管28に接続されている。なお、本実施の形態では、パルプ水管42L、配管43D、43E、すすぎ原料水管44、すすぎ洗浄水タンク46、すすぎ洗浄液体管47、配管49Dを含めて循環手段を構成している。
引き続き図1乃至図3を参照して処理システム101の作用について説明する。なお、処理装置1の作用の説明は処理システム101の作用の一環として説明し、攪拌分離槽10の作用の説明は処理装置1の作用の一環として説明する。処理システム101で処理される紙おむつDは、本実施の形態では、使用状況によって変動があるが、し尿が約6〜8割(典型的には7割程度)を占めており、1日の処理量は例えば10tである。紙おむつDは、攪拌分離槽10に投入される前に裁断される。紙おむつDは、裁断前に洗浄しなくてよく、収集された状態のままのものを裁断にかけることができる。
ここで図4を併せて参照して、処理装置1における処理の手順も併せて説明する。図4は、処理装置1における処理の手順を示すフローチャートである。使用済紙おむつDの処理を開始する際、裁断された紙おむつDが収容容器10cに投入される前に、収容容器10c内に処理液体Qが導入される(St1)。その際、各開閉弁10v、18v、19v、24vは閉じた状態になっている。なお、収容容器10cへの処理液体Qの導入は、開閉弁24vを開いて分別水ポンプ25を起動することで循環水槽21内の分別水Q5を導入することにより、導出管10dを介して行われる。また、収容容器10cへ処理液体Qを導入する際には、ポリマーPMのさらなる吸水を妨げるための薬品も投入される。収容容器10cに処理液体Qが導入されたら、収容容器10c内に、裁断された紙おむつDが投入される(St2)。なお、収容容器10c内に処理液体Q(及び薬品)を導入する工程(St1)と収容容器10c内に裁断された紙おむつを投入する工程(St2)とは、同時に行われてもよく、順序が逆でもよい。
紙おむつDが投入されたら、制御装置60はミキサー10mのモータ10meを起動して、裁断された紙おむつDが投入された処理液体Qを攪拌する(St3)。モータ10meが起動するとフィン10mfが軸10maの周りに旋回方向Rへ回転する。すると、処理液体Qは、フィン10mfの構造上、水平方向成分において旋回方向Rに回転すると共に、鉛直方向成分において軸10ma付近で上昇し外周付近で下降するように流動する。紙おむつDが投入された処理液体Qが攪拌されることにより、ビニールVが剥離すると共に、パルプPL及びポリマーPM並びにし尿が処理液体Qに拡散又は溶解する。処理液体Qが攪拌される際、2枚の多孔板10pb、10pcで突部10prが形成されているので、処理液体Qの水平方向成分の流れが旋回流方向Rに上向き傾斜している多孔板10pbに衝突して、紙おむつDの分解が促進される。剥離されたビニールVは、密度の差から、概ね処理液体Qの表面に上昇する傾向にあるが、処理液体Q中にとどまるものも存在する場合もある。このとき、処理液体Q中にとどまるビニールVが多孔板10pに付着して多孔板10pの孔を閉塞する場合も考えられるが、少なくとも、多孔板10pbの裏側の多孔板10pcには処理液体Qの流れが衝突せずにビニールVの付着が回避されるため、多孔板10pのすべての孔がビニールVで塞がれてしまうことを回避することができる。
攪拌(St3)が終了したら、制御装置60は、開閉弁18vを開にして、収容容器10c内の処理液体Qを重汚水槽11に抜き出す(St4)。このとき、処理液体Qは、沈殿部10sから重汚水排出管18に流入することになるので、多孔板10pを通過した後の処理液体Qが重汚水槽11に排出されることなり、重汚水槽11内の処理液体Q(重汚水Q1)は原則としてビニールVが含まれていないこととなる。収容容器10c内の処理液体Qを重汚水槽11に抜き出す工程(St4)においては、収容容器10c内の処理液体Qのすべてを抜き出そうとしても、拡散したパルプPL及びポリマーPMによって粘度が増加している(パルプPL及びポリマーPMがすべて多孔板10pの孔を通過するほどほぐれていない)ため、多くのパルプPL及びポリマーPMが、ビニールVと共に、多孔板10p上に残ることとなる。他方、使用済紙おむつDの6〜8割を占めるし尿は、処理液体Qに溶解して重汚水槽11に抜き出される割合が多くなる。処理液体Qを重汚水槽11に抜き出す工程(St4)では、パルプPL及びポリマーPMを可能な限り抜き出さず、し尿を可能な限り抜き出すことが好ましい。1回の重汚水槽11への抜き出しではし尿が十分に抜けきれず、次に処理液体Qを補充したときに許容範囲を超えるし尿が含まれる場合は、重汚水槽11への抜き出し及び処理液体Qの補充を複数回繰り返してもよい。つまり、重汚水槽11への抜き出し及び処理液体Qの補充は、収容容器10c内の処理液体Qの汚れ具合に応じて複数回繰り返してもよい。処理液体Qを重汚水槽11に抜き出したら、開閉弁18vを閉じる。重汚水槽11に排出された重汚水Q1の処理については後述する。
制御装置60は、開閉弁18vを閉じたら、処理液体Qを収容容器10cに補充する(St5)。ここでの処理液体Qの補充は、多孔板10p上に残っているパルプPL及びポリマーPMを、多孔板10pの孔を通過させることができるように処理液体Q中に拡散させると共に、ビニールVから十分に剥離させることができるようにする観点から適切な量の処理液体Qが収容容器10cに導入される。処理液体Qを補充する工程(St5)の際は、ポリマーPMのさらなる吸水を妨げるための薬品を投入しなくてよい。収容容器10cへの処理液体Qの補充は、開閉弁24vを開いて分別水ポンプ25を起動することで循環水槽21内の分別水Q5を導入することにより、導出管10dを介して行われる。このように、導出管10dを介して処理液体Qの補充を行うことにより、導出管10dに入り込んでいるパルプPL等を再び攪拌部10tへ戻すことができ、沈殿部10sにおけるパルプPLの捕集率を上昇させることが可能になる。また、分別水管24から導出管10dに流入した分別水Q5が旋回しながら導出管10d内を流れることとすることで、パルプPL等の攪拌部10tへの戻し率を向上させることができる。
処理液体Qが補充されたら、制御装置60は、ミキサー10mのモータ10meを起動して、攪拌部10tの処理液体Qを攪拌する(St6)。すると、多孔板10p上に残存していたパルプPL及びポリマーPMが、補充された処理液体Qに拡散することとなる。なお、ここでの攪拌(St6)においても、1回目の攪拌(St3)と同様に、処理液体Qの流れが2枚の多孔板10pb、10pcで形成された突部10prの表側の多孔板10pbに衝突するため、紙おむつDの分解が促進されつつ多孔板10pのすべての孔がビニールVで塞がれてしまうことを回避することができる。
攪拌(St6)が終了したら、制御装置60は、開閉弁19vを開にして、収容容器10c内の処理液体Qを軽汚水槽12に取り出す(St7)。このとき、処理液体Qは、沈殿部10sから軽汚水排出管19に流入することになるので、多孔板10pを通過した後の処理液体Qが軽汚水槽12に排出されることなり、軽汚水槽12内の処理液体Q(軽汚水Q2)は原則としてビニールVが含まれていないこととなる。収容容器10c内の処理液体Qを軽汚水槽12に取り出す工程(St7)においては、本実施の形態では、収容容器10c内の処理液体Qの一部を取り出したところで開閉弁19vを閉じる。なお、収容容器10cに入っていた処理液体Qの全部を軽汚水槽12に取り出すこととしてもよい。軽汚水槽12に排出された軽汚水Q2の処理については後述する。
制御装置60は、開閉弁19vを閉じたら、収容容器10c内の処理液体Qの軽汚水槽12への取り出し(St7)が、所定の回数に達したか否かを判断する(St8)。所定の回数は、典型的には、収容容器10c内に残存しているパルプPLの量が、許容できる程度まで低減したか(軽汚水槽12に取り出されたか)という観点から決定される。収容容器10c内に残存しているパルプPLの量は、処理液体Qを軽汚水槽12へ取り出す前の収容容器10c内のパルプPL等の濃度及び軽汚水槽12へ取り出される1回当たりの処理液体Qの量に基づいて、あらかじめ把握されている。換言すれば、軽汚水槽12へ取り出される1回当たりの処理液体Qの量が決まっているときに、処理液体Qの補充(St5)及び取り出し(St7)を何回行えば残存するパルプPLの量が許容できる程度まで低下するかが、あらかじめ把握されている。本実施の形態では、所定の回数を6回としている。処理液体Qの取り出しが所定の回数に達したか否かを判断する工程(St8)で、所定の回数に達していないときは、パルプPL及びポリマーPM並びにビニールVの洗浄過程に応じた適切な量(一般に、処理液体Qの取り出し回数が多くなるほど1回あたりに補充する処理液体Qの量が少なくて済む)の処理液体Qを収容容器10cに補充する工程(St5)に戻り、以下、攪拌工程(St6)、処理液体Qの軽汚水槽12への取り出し工程(St7)、処理液体Qの取り出しが所定の回数に達したか否かを判断する工程(St8)を繰り返す。
他方、処理液体Qの取り出しが所定の回数に達したか否かを判断する工程(St8)において、所定の回数に到達しているときは、制御装置60は、必要に応じて、開閉弁24vを開くと共に分別水ポンプ25を起動して、ビニールVを取り出すための分別水Q5(残水)を収容容器10cに供給する(St9)。その後、制御装置60は、導出管10dの開閉弁10vを開にし、攪拌部10t内の処理液体Qと共にビニールVを、導出管10dを介して収容容器10cの外に導出する(St10)。このとき、多孔板10pが収容容器10cの外周から中心部の導出管10dに向かって下り勾配に配設されているので、ビニールVが、多孔板10p上に残存することが低減されて導出管10dから導出される。この説明を以下に補足する。開閉弁10vを開けると、まず、攪拌部10t内の液位が低下して行く。液位が低下し、収容容器10cの外周と多孔板10pとの接続点よりも下になると、多孔板10pの孔を介して攪拌部10tと連通している沈殿部10sの液位も低下して行く。このとき、処理液体Qの導出口は導出管10dだけとなっているため、導出管10dと直接連通している攪拌部10tを介して、沈殿部10sの処理液体Qも収容容器10cの外に導出されることとなる。このとき、沈殿部10s内の処理液体Qは、沈殿部10sから攪拌部10tにほぼ水平(あるいはやや斜め下方)に移動するため、仮に多孔板10pに貼り付いているビニールVがあったとしても、沈殿部10sから攪拌部10tへ移動する処理液体Qによって剥離される。このような作用により、ビニールVが、多孔板10p上に残存することが低減されて、導出管10dから導出される。
上述の、収容容器10cでの処理と並行して、あるいは適宜のタイミングで、重汚水槽11に抜き出された重汚水Q1の処理、軽汚水槽12に取り出された軽汚水Q2の処理、導出管10dから導出された処理液体Qの処理が、以下のように行われる。導出管10dから導出された処理液体Qは、ビニール除去スクリーン10eに導入される。ビニール除去スクリーン10eに導入された処理液体Qは、ふるいにかけられてビニールVが捕捉され、ビニールVが除去された処理液体Qは配管10erで軽汚水槽12へ導かれる。導出管10dから導出される処理液体Qは、所定の回数処理液体Qが補充されて希釈されたものであるので、既に軽汚水槽12に取り出されている処理液体Qよりも清浄であり、脱プラ原料Pも含まれているので、軽汚水槽12へ導くのが好ましい。
重汚水槽11内に排出された重汚水Q1は、重汚水ポンプ13の起動により、重汚水搬送管16を介して振動スクリーン15に搬送される。振動スクリーン15に導入された重汚水Q1は、ふるいにかけられ、重汚水Q1に含まれていた脱プラ原料Pが軽汚水槽12に投入され、脱プラ原料Pが抽出されて残った濃汚水Q3は被処理液管82へ導出される。被処理液管82を流れる濃汚水Q3は、汚水処理槽81に導入され、浄化されて、処理済水Q4となる。浄化された処理済水Q4は、汚水処理槽81(貯留槽81C)に貯留され、一部が排水Yとして排水管89を介して処理システム101の外部へ排出され、制御装置60からの指令によって浄化液ポンプ85が起動されたときに、分別スクリーン23へ向けて浄化液管84を流れる。
軽汚水槽12内に排出された軽汚水Q2は、軽汚水ポンプ14の起動により、軽汚水搬送管17を介して分別スクリーン23に搬送される。分別スクリーン23に導入された軽汚水Q2は、すすぎ洗浄装置40のすすぎ洗浄水タンク46から送られてきた洗浄液体S及び/又は汚水処理槽81からの処理済水Q4により洗浄されると共に、スクリーンを通過する際に脱プラ原料Pが捕捉され、捕捉された脱プラ原料Pは、本実施の形態では脱水機29を介して、すすぎ濃調槽41に投入される。他方、分別スクリーン23で脱プラ原料Pが抽出された後の処理液体Qは、配管23D及び/又は配管23Eを流れて循環水槽21に導入されて分別水Q5として貯留される。循環水槽21に貯留された分別水Q5は、制御装置60からの指令によって分別水ポンプ25が起動されたときに、攪拌分離槽10の導出管10dへ向けて分別水管24を流れる。
すすぎ濃調槽41に投入された脱プラ原料Pは、すすぎ濃調槽41に貯留されていた洗浄液体Sに拡散されてすすぎ原料水S4となり、すすぎ原料水ポンプ45に搬送されて精選スクリーン42に導入される。精選スクリーン42では、すすぎ原料水S4に拡散しているパルプPLとポリマーPMとの分離が行われる。このとき、スクリーンの目詰まり防止のために、すすぎ洗浄液体管47Aを介して、洗浄液体Sを精選スクリーン42に導入するとよい。精選スクリーン42に導入される洗浄液体Sは、スクリーンの目詰まりを防ぐことができる流量で足り、連続的に導入することとしても間欠的に導入することとしてもよい。精選スクリーン42では、すすぎ原料水S4をスクリーンに通し、ポリマーPMが拡散したポリマー含有水S5と、パルプPLが拡散したパルプ水S6とに分けられる。ポリマー含有水S5は、ポリマー含有水管42Mを流れてポリマー分別スクリーン94に至り、ここでポリマーPMが抽出され、ポリマーPM抽出後の残りの洗浄液体Sはすすぎ濃調槽41に投入される。ポリマー分別スクリーン94で抽出されたポリマーPMは、例えば他の用途の原料として適宜再利用に供される。
精選スクリーン42で分離抽出されたパルプ水S6は、パルプ分別スクリーン43に導入される。パルプ水S6は、パルプ分別スクリーン43にて、工業用水Wで洗浄された後、付着している洗浄液体S(洗浄に用いられた工業用水Wを含む)が除去される。パルプ分別スクリーン43で除去された洗浄液体Sは、配管43Dを介してすすぎ洗浄水タンク46へ導入され、あるいは、配管43E及び配管49Dを介してすすぎ濃調槽41に導入される。すすぎ洗浄水タンク46に導入された洗浄液体Sは、すすぎ洗浄液体ポンプ48により、すすぎ洗浄液体管47Aを介して精選スクリーン42に搬送されると共に、すすぎ洗浄液体管47B(及び配管28)を介して分別スクリーン23に搬送される。精選スクリーン42へ搬送される洗浄液体Sは、上述のようにスクリーンの目詰まりを防ぐことができる流量であり、分別スクリーン23へ搬送される洗浄液体Sは、典型的には、パルプ分別スクリーン43に導入された工業用水Wと同等の流量である。すすぎ洗浄水タンク46から精選スクリーン42及び分別スクリーン23への洗浄液体Sの配分は、不図示の流量調節弁やオリフィス等を設けることで行うことができる。他方、パルプ分別スクリーン43で洗浄液体Sが除去されたパルプPLは、脱水機49に投入されて脱水された後に取り出される。脱水機49における脱水が終了したパルプPLは、紙おむつの原料等として再利用される。脱水機49でパルプPLから除去された洗浄液体Sは、収集され、配管49Dを介してすすぎ濃調槽41に導入される。すすぎ濃調槽41に導入された洗浄液体Sは、再びすすぎ原料水S4に利用される。このように洗浄液体Sが循環されるので、すすぎ原料水ポンプ45の流量を変えることで、すすぎ濃調槽41に戻ってくる洗浄液体Sの流量を変化させ、すすぎ原料水S4の濃度を調節することができる。
次に図5を参照して、本発明の実施の形態に係る処理システム101(図1参照)の変形例を説明する。図5は、変形例に係る処理システムが備える洗浄装置としての中間洗浄装置30の系統図である。中間洗浄装置30は、処理システム101(図1参照)において、すすぎ洗浄装置40(図1参照)の代わりに設置される。処理装置1(図1参照)の構成は、処理システム101(図1参照)と同様である。中間洗浄装置30は、すすぎ洗浄装置40(図1参照)と同様、処理装置1で抽出した脱プラ原料PからパルプPLを抽出する装置であるが、パルプPLの分離のレベルがすすぎ洗浄装置40(図1参照)と異なっている。中間洗浄装置30は、拡散槽としての中間濃調槽31と、母材分分離手段としての液体サイクロン32と、母材分分別機としての中間分別スクリーン33と、洗浄液体導入管としての工業用水管74と、洗浄液体導出管としての中間洗浄液体管37と、吸水性物質分分別機としてのポリマー分別スクリーン93と、後述する循環手段とを備えている。本変形例に係る処理システムの中間洗浄装置30では、処理システム101(図1参照)におけるすすぎ洗浄装置40(図1参照)のすすぎ濃調槽41、精選スクリーン42、パルプ分別スクリーン43、すすぎ洗浄液体管47、ポリマー分別スクリーン94、及び配管94Dが、それぞれ、中間濃調槽31、液体サイクロン32、中間分別スクリーン33、中間洗浄液体管37、ポリマー分別スクリーン93、配管93Dに対応する。
中間濃調槽31は、脱水機29(図1参照)から脱プラ原料Pを受け入れて、洗浄液体Sに脱プラ原料Pが拡散した中間原料水S1を生成する槽である。中間濃調槽31は、脱プラ原料Pが拡散した中間原料水S1をポンプで搬送可能な濃度にすることができる量の洗浄液体Sを収容可能な有効容量に構成されている。中間濃調槽31の下部には、中間原料水管34の一端が接続されている。中間原料水管34の他端は、液体サイクロン32に接続されている。中間原料水管34には、液体サイクロン32に向けて中間原料水S1を圧送する中間原料水ポンプ35が配設されている。
液体サイクロン32は、中間原料水S1を導入し、中間原料水S1に拡散している脱プラ原料PからパルプPLを抽出する装置である。液体サイクロン32は、逆三角錐状に形成されており、導入した中間原料水S1を逆三角錐の側壁に沿って旋回させることにより、主にパルプPLを含むパルプ含有水S3が上部から導出され、主にポリマーPMを含むポリマー水S2が下部から導出されるように構成されている。液体サイクロン32には、逆三角錐の側面に、中間原料水管34が接続されている。中間原料水管34は、液体サイクロン32に導入された中間原料水S1が逆三角錐の側面に沿うような向きで、液体サイクロン32に接続されている。液体サイクロン32の底部には、ポリマー水S2をポリマー分別スクリーン93に導くポリマー水管32Mが接続されている。液体サイクロン32の上部には、パルプ含有水S3を中間分別スクリーン33に導くパルプ含有水管32Lが接続されている。
中間分別スクリーン33は、液体サイクロン32からパルプ含有水S3を導入すると共に工業用水管74から工業用水Wを導入してパルプPLを洗浄すると共にパルプPLを抽出する装置である。中間分別スクリーン33は、典型的には、液体サイクロン32よりも下方、かつ、中間濃調槽31よりも上方に配設されている。中間分別スクリーン33には、パルプ含有水管32L及び工業用水管74のほか、パルプPLを抽出して残った洗浄液体Sを中間洗浄水タンク36へ導く配管33Dと、パルプPLを抽出して残った洗浄液体Sを中間濃調槽31へ向けて導出する配管33Eとが接続されている。中間分別スクリーン33の下方には、中間分別スクリーン33の側方より搬出されたパルプPLからさらに水分を除去する脱水機39が設けられている。脱水機39には、パルプPLから除去した水分を中間濃調槽31に導く配管39Dが接続されており、本実施の形態では、配管33Eが配管39Dに接続されている。中間洗浄水タンク36は、すすぎ洗浄水タンク46(図1参照)と同様に構成されており、すすぎ洗浄水タンク46まわりにおける、オーバーフロー管46F、すすぎ洗浄液体管47、すすぎ洗浄液体ポンプ48が、それぞれ、オーバーフロー管36F、中間洗浄液体管37、中間洗浄液体ポンプ38に対応する。ただし、中間洗浄液体管37は、すすぎ洗浄液体管47(図1参照)のように分岐しておらず、処理装置1の配管28(図1参照)に接続されている。なお、本実施の形態では、パルプ含有水管32L、配管33D、33E、中間原料水管34、中間洗浄水タンク36、配管39Dを含めて循環手段を構成している。
上述のように構成された変形例に係る処理システムでは、処理装置1(図1参照)内の作用は、処理システム101(図1参照)と同様である。処理装置1(図1参照)の分別スクリーン23(図1参照)で捕捉された脱プラ原料Pは、中間濃調槽31に投入される。中間濃調槽31に投入された脱プラ原料Pは、中間濃調槽31に貯留されていた洗浄液体Sに拡散されて中間原料水S1となり、中間原料水ポンプ35に搬送されて液体サイクロン32に導入される。液体サイクロン32に導入された中間原料水S1は、側壁に沿って旋回し、繊維状のパルプPLと粒状のポリマーPMとの形状の相違あるいは比重差により、ポリマーPMを含むポリマー水S2が底部に落下し、パルプPLを含むパルプ含有水S3が上方へ排出される。なお、液体サイクロン32と精選スクリーン42(図1参照)との特性の相違から、パルプ含有水S3の方がパルプ水S6(図1参照)よりも、混入する細かいビニールVのくずが多くなる傾向にある。
液体サイクロン32の底部に落下したポリマー水S2は、ポリマー水管32Mを流れ、ポリマー分別スクリーン93にてポリマーPMが抽出され、ポリマーPM抽出後の残りの洗浄液体Sは中間濃調槽31に投入される。ポリマー分別スクリーン93で抽出されたポリマーPMは、例えば他の用途の原料として適宜再利用に供される。液体サイクロン32の上方に排出されたパルプ含有水S3は、パルプ含有水管32Lを介して中間分別スクリーン33に導入される。パルプ含有水S3は、中間分別スクリーン33にて、工業用水Wで洗浄された後、付着している洗浄液体S(洗浄に用いられた工業用水Wを含む)が除去される。中間分別スクリーン33で除去された洗浄液体Sは、配管33Dを介して中間洗浄水タンク36へ導入され、あるいは、配管33E及び配管39Dを介して中間濃調槽31に導入される。中間洗浄水タンク36に導入された洗浄液体Sは、中間洗浄液体ポンプ38により、中間洗浄液体管37(及び配管28)を介して分別スクリーン23(図1参照)に搬送される。分別スクリーン23へ搬送される洗浄液体Sは、典型的には、中間分別スクリーン33に導入された工業用水Wと同等の流量である。他方、中間分別スクリーン33で洗浄液体Sが除去されたパルプPLは、脱水機39に投入されて脱水された後に取り出される。脱水機39における脱水が終了したパルプPLは、紙おむつの原料等として再利用される。脱水機39でパルプPLから除去された洗浄液体Sは、収集されて中間濃調槽31に導入される。中間濃調槽31に導入された洗浄液体Sは、再び中間原料水S1に利用される。
次に図6を参照して、本発明の別の実施の形態に係る処理システム102を説明する。図6は、処理システム102の模式的系統図である。処理システム102は、処理システム101(図1参照)と比較して、処理装置1とすすぎ洗浄装置40との間に、図5に示す中間洗浄装置30が設けられている点が異なっている。処理システム102では、中間洗浄装置30が第1の洗浄装置として、すすぎ洗浄装置40が第2の洗浄装置として機能し、処理装置1とすすぎ洗浄装置40との間に中間洗浄装置30を設けることで、取り出されるパルプPLの清浄度をより向上させることができると共に、取り出されたパルプPLに混入するパルプPL以外の物質を低減することができる。
また、処理システム102では、分別スクリーン23で分別されて脱水機29で脱水された脱プラ原料Pが中間濃調槽31に投入され、中間分別スクリーン33で分別されて脱水機39で脱水されたパルプPL(又は残存するポリマーPMを含む脱プラ原料P)がすすぎ濃調槽41に投入されるように構成されている。また、変形例に係る処理システムの中間洗浄装置30(図5参照)では中間分別スクリーン33に接続されていた工業用水管74(図5参照)に代えて、処理システム102ではすすぎ洗浄液体管47Bが中間分別スクリーン33に接続されている。換言すれば、処理システム101(図1参照)では処理装置1の配管28に接続されていたすすぎ洗浄液体管47Bが、配管28ではなく中間分別スクリーン33に接続されている。処理システム102の、上記以外の構成は、処理システム101(図1参照)と同様である。
上述のように構成された処理システム102は、処理装置1、中間洗浄装置30、すすぎ洗浄装置40における作用は、処理システム101(図1参照)の処理装置1及びすすぎ洗浄装置40、並びに変形例に係る処理システムの中間洗浄装置30(図5参照)における作用と同じである。概観すると、処理システム102は、最も汚れた紙おむつDが最初に処理装置1で処理され、最終的に取り出すパルプPLは、処理装置1から中間洗浄装置30、すすぎ洗浄装置40へと送られるにしたがって段階的に清浄度が増して行く。他方、最も清浄な工業用水Wが最初にすすぎ洗浄装置40のパルプ分別スクリーン43に導入され、すすぎ洗浄装置40で循環利用された後は、中間洗浄装置30、処理装置1の順に段階的に利用されて、最終的には排水Yが汚水処理槽81から排出される。このように、処理システム102は、システム全体で見れば、出入りする液体が、汚水処理槽81から排出された排水Yの流量に相当する工業用水Wがすすぎ洗浄装置40に導入されることで足り、途中での洗浄や攪拌処理には液体の流れの上流側から導入された液体S、Qが効率よく循環利用されるので、工業用水Wの使用量を最小限に抑制することができる。
図7の系統図を参照して、上述したパルプPLの流れ及び液体W、S、Qの流れの概要を説明する。図7では、左から右に向かって、処理装置1、中間洗浄装置30、すすぎ洗浄装置40が配設されている。概観すると、図7において、紙おむつDを構成する物質は、その流れが破線で示されており、左端の処理装置1に使用済紙おむつDが投入され、使用済紙おむつDに含まれるパルプPLは攪拌洗浄されながら左から右へ流れて右端のすすぎ洗浄装置40から取り出される。他方、図7において、洗浄や処理に用いられる液体は、その流れが実線で示されており、右端のすすぎ洗浄装置40に工業用水Wが投入され、右から左へ流れて左端の処理装置1から排出される。すすぎ洗浄装置40に投入された工業用水Wは、洗浄液体Sとしてすすぎ洗浄装置40内を循環し、これによってパルプPLの洗浄及び搬送が行われる。すすぎ洗浄装置40を循環する洗浄液体Sのうち、投入された工業用水Wに相当する流量が中間洗浄装置30に導入される。中間洗浄装置30に導入される洗浄液体Sは、すすぎ洗浄装置40に投入される工業用水Wよりも清浄度が低くなっているが、中間洗浄装置30に投入されるパルプPLはすすぎ洗浄装置40に投入されるパルプPLよりも汚れているので、洗浄を行うことができる。
中間洗浄装置30に導入された洗浄液体Sは、中間洗浄装置30内を循環することでパルプPL及びポリマーPMの洗浄及び搬送を行い、導入された洗浄液体Sに相当する流量が処理装置1に導入される。処理装置1に導入される洗浄液体Sは、すすぎ洗浄装置40及び中間洗浄装置30で使用されたものであるが、し尿を含む使用済紙おむつDの処理装置1における処理に用いることができる清浄度である。処理装置1に導入された洗浄液体Sは、処理液体Qとして処理装置1内を循環することで使用済紙おむつDの攪拌、分離、洗浄が行われる。処理装置1内を循環する処理液体Qのうち、導入された洗浄液体Sに相当する流量が汚水処理槽81を介して処理システム102外へ排出される。
以上のように、処理システム102は、洗浄装置あるいは処理装置の単元で液体S、Qを循環させ、出入りする液体W、S、Qを最小限に抑制した、持続可能なシステムである。なお、本実施の形態では、パルプPLの洗浄が中間洗浄装置30及びすすぎ洗浄装置40の二段で行われることとしたが、図7から予測可能なように、最終的に取り出されるパルプPLに求められる清浄度や異物混入度に応じて、中間洗浄装置30及び/又はすすぎ洗浄装置40を多段に構成することができる。多段に構成しても、単位時間に消費する液体(工業用水W)の量は、二段あるいは一段に構成した場合と同等である。
また、処理システム102は、以下に説明するように、保守(点検、清掃)を行う際にも工業用水Wの使用量を抑制することができる。まず、攪拌分離槽10内のビニールVを導出するために導出管10dから処理液体Qを導出して空になった収容容器10cの保守を行う。このとき、開閉弁18v、19vを開いて沈殿部10sの処理液体Qを排出してから収容容器10cの保守を行ってもよい。次に、重汚水槽11の重汚水Q1を、汚水処理槽81を介して排出すると共に、軽汚水槽12の軽汚水Q2を循環水槽21に搬送し、重汚水槽11及び軽汚水槽12を空にしてこれらの保守を行う。このとき、循環水槽21の液位が高くなりすぎる場合は、既に保守が完了した収容容器10cへ分別水管24を介して循環水槽21内の分別水Q5を搬送すればよい。
次に、循環水槽21の分別水Q5を収容容器10cへ搬送し、循環水槽21の保守を行う。このとき、収容容器10cの液位が高くなりすぎる場合は、開閉弁18v及び/又は開閉弁19vを開にして、重汚水槽11及び/又は軽汚水槽12へ処理液体Qを排出するとよい。循環水槽21の保守が終了したら、中間濃調槽31の洗浄液体Sを、中間洗浄水タンク36を介して循環水槽21へ搬送し、中間濃調槽31の保守を行う。次に、すすぎ濃調槽41の洗浄液体Sを、すすぎ洗浄水タンク46を介して中間濃調槽31へ搬送し、すすぎ濃調槽41の保守を行う。そして、保守が完了した処理システム102を再び作動させる際には、パルプ分別スクリーン43を介して工業用水Wをすすぎ濃調槽41へ導入すればよい。
このように、保守が完了した装置には、処理液体及び洗浄液体の流れの上流側の液体Q、Sが導入されることとなるので、清浄のレベルを低下させることなく、液体Q、Sを転送することができ、処理システム102に出入りする液体を最小限に抑制することができる。このように、処理システム102は、処理の際も、保守の際も、出入りする液体Q、Sを最小限に抑制してできる限り循環利用させることとした、持続可能なシステムである。この効果は、洗浄装置が一段少ない処理システム101(図1参照)及び中間洗浄装置30を備えた変形例に係る処理システム(図1及び図5参照)においても、同様に奏することができる。
以上の説明では、攪拌分離槽10が1つである状態を例にしたが、同様の構成の攪拌分離槽10を2つ設け、一方が作動中に他方を準備中の状態として、使用済紙おむつDを連続的に処理することができるように構成してもよい。この場合、複数の攪拌分離槽10のそれぞれにおいて、重汚水排出管18の下端が重汚水槽11の上方で開口し、軽汚水排出管19の下端が軽汚水槽12の上方で開口する配置となる。
以上の説明では、多孔板10pに突部prが形成されていることとしたが、突部prが形成されていなくてもよい。突部prがなくフラットであると、ビニールVの排出の際にビニールVが多孔板10p上に残存することを低減することができる。また、多孔板10pがパンチングメタルであるとしたが、多孔板10pに形成された孔は、円形のほかに楕円状やスリット状でもよく、つまり、脱プラ原料Pを通すがビニールVを通さなければよい。
以上の説明では、攪拌分離槽10が有する攪拌装置として、垂直に立設する軸10maの上端にモータ10meが取り付けられたミキサー10mを用いることとしたが、処理液体Q中に沈めて用いられる水中ミキサーを、水平方向成分の旋回流と鉛直方向成分の上下流とを作り出すことができるように複数設置することとしてもよい。攪拌装置として水中ミキサーを用いることとすると、収容容器10c上部の開口に、使用済紙おむつDを投入する際の障害が緩和される。
以上の説明では、攪拌分離槽10の収容容器10cが円筒状の部材を含んで構成されているとしたが、円筒状以外の、例えば図8に示す角柱状の部材で構成されていてもよい。図8は、変形例に係る攪拌分離槽710の構成を説明する図であり、(a)は側面断面図、(b)は概略平面図である。攪拌分離槽710は、収容容器710cが、底板が一本調子で斜めに傾斜した、矩形の四角柱状に形成されている。多孔板710pは、矩形に形成され、底板の傾斜とは逆方向に傾斜させて、収容容器710cの底板と、底板の最下部と交差する側面とに、対向する両辺がそれぞれ接続されて取り付けられている。多孔板710pの、収容容器710cの底板に接する辺に直交する2つの辺も、収容容器710cの側壁に接続されている。このように多孔板710pが取り付けられることで、収容容器710cの内部が、上側の攪拌部10tと、下側の沈殿部10sとに区画されている。また、導出管10dが、収容容器710cの底板と多孔板710pとが接する位置、すなわち攪拌部10tの最下部に一端がくるように設けられている。導出管10dの他端は収容容器710cの外側に延びている。沈殿部10sの最下部には、重汚水排出管18と、軽汚水排出管19とが接続されている。なお、図示は省略しているが、攪拌分離槽710も、攪拌分離槽10(図2参照)と同様、ミキサー10m(図2参照)を有している。上記のように構成された攪拌分離槽710でも、沈殿部10sの液位が低下して行くようになると、沈殿部10s内の処理液体Qが、沈殿部10sから攪拌部10tにほぼ水平(あるいはやや斜め下方)に移動し、仮に多孔板710pに貼り付いているビニールVがあったとしても、沈殿部10sから攪拌部10tへ移動する処理液体Qによって剥離される。
以上の説明では、処理済水Q4を流す浄化液管84の他端が、分別スクリーン23に接続されていることとしたが、開閉弁10vよりも上流側の導出管10dに接続し、導出管10dを介して処理済水Q4を収容容器10cに導入することとしてもよい。処理済水Q4を、導出管10dと分別スクリーン23のどちらに導くかは、処理済水Q4の清浄度に応じて決定するとよい。
以上の説明では、分別水ポンプ25の作動により分別水Q5を処理装置1に搬送することとしたが、収容容器10cよりも上方の分別水管24の経路中に高架タンクを設け、重力により分別水Q5を処理装置1に供給することとしてもよい。このようにすると、分別水ポンプ25の作動のタイミングを収容容器10c内への処理液体Qの導入のタイミングと合わせなくて済むため、分別水ポンプ25の発停回数及び/又は分別水ポンプ25の容量を減少させることができる。
以上の説明では、処理システム102(図6参照)において、中間洗浄装置30用のポリマー分別スクリーン93と、すすぎ洗浄装置40用のポリマー分別スクリーン94とが、それぞれ別々に設けられているとしたが、ポリマー分別スクリーン93を、中間洗浄装置30とすすぎ洗浄装置40とで兼用としてポリマー含有水管42Mをポリマー分別スクリーン93に接続し、ポリマー分別スクリーン94を省略することとしてもよい。このようにすると、システム構成を簡略化することができる。他方、中間洗浄装置30用のポリマー分別スクリーン93と、すすぎ洗浄装置40用のポリマー分別スクリーン94とを、それぞれ別々に設けることとすると、中間洗浄装置30及びすすぎ洗浄装置40のそれぞれで循環する洗浄液体Sのバランスを調整しやすい。