JP5147540B2 - 有機物分析法および有機物分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、水溶液中の有機物の溶解状態または分散状態を分析する有機物分析法および有機物分析装置に関する。
食品分野や医療分野を始め、多方面において商品や製品における安全・安心の確保が極めて重要になってきている。そのため、安全・安心を維持管理する一手段として高度な分析技術が求められており、例えば有機物を含む水溶液を有する商品や製品の場合、製造工程または製造後の水溶液中における有機物の溶解状態や分散状態といった品質に関する情報を得る技術が求められている。
水溶液中の有機物の定性分析法としては、紫外可視分析法、蛍光分析法、赤外吸収分光法、ラマン分析法、核磁気共鳴分析法、質量分析法、ガスクロマトグラフ分析法、液体クロマトグラフ分析法が知られている。特に有機物の非破壊検査法として一般的である赤外吸収分光法において代表的なフーリエ変換赤外吸収分光法は、3〜150THz領域のスペクトルを測定することで有機物の特定を行うことができるため、多分野で利用されている。
しかし、フーリエ変換赤外吸収分光法等の上述の方法は、水溶液中の有機物の溶解状態または分散状態を、分子レベルあるいはクラスターレベルで検知することには適していなかった。ここで、クラスターレベルとは、数個から1000個程度の分子からなる微粒子(塊)のことである。
一方、赤外吸収分光法よりも長波長の周波数領域を含むテラヘルツ波(0.1〜10THzの電磁波)を用いると、赤外吸収分光法とは異なる性質の分析が行えることが分かってきている(例えば、非特許文献1等)。テラヘルツ波は近年まで未開拓な電磁周波数帯であったが、技術向上により応用開拓が可能となり、多分野への利用が検討されている。
具体例としては、テラヘルツ波が可視光や赤外光に比べて水に対する感度が高いことを利用して、植物や食品中の水分を計測できることが報告されている(例えば、非特許文献2等)。また、無機塩のイオン対の検出に利用できることが報告されている(例えば、非特許文献3等)。
味戸克裕,富田勲,R.Rungsawang,上野祐子,「テラヘルツ分光を用いた化学センシング」,Electrochemistry,電気化学会,2006年、74,P.506−511. テラヘルツテクノロジー動向調査委員会編,「テラヘルツ技術」,株式会社オーム社,平成18年,P.127−134. R.Rungsawang,上野祐子,味戸克裕,「Detecting a Sodium Chloride Ion Pair in Ice Using Terahertz Time−domain Spectroscopy」,Anal.Sci.,2007年,23,P.917−920.
しかし、テラヘルツ波は上述したように水に対する感度が高いため、水の状態変化を捉えることができる反面、既存技術では水溶液中の有機物の溶解状態または分散状態を分子レベルで分析することが困難であった。そのため、水溶液中の有機物の溶解状態または分散状態を分析することができる定性分析法が望まれている。
そこで本発明は、水溶液中の有機物の溶解状態または分散状態を分析することができる有機物分析法および有機物分析装置を目的とする。
本発明の有機物分析法は、有機物を含む水溶液における該有機物の溶解状態または分散状態を分析する定性分析法であって、前記水溶液中に1種以上の無機塩を添加、混合する混合工程と、前記無機塩が添加、混合された水溶液を凍結させて凍結試料を得る凍結工程と、前記凍結試料に、前記無機塩から生じるイオンと前記有機物との間、または前記イオンと前記有機物とそれらの周囲の水分子との間に形成される弱い相互作用により形成されたクラスターにおける、該相互作用のエネルギーに共鳴する周波数を含む電磁波を照射し、前記凍結試料を透過した電磁波を測定することにより得られる吸収特性スペクトルから前記相互作用のエネルギーとの共鳴によるピークによって前記有機物の溶解状態または分散状態を検知する検知工程とを含むことを特徴とする方法である。
また、本発明の有機物分析法は、前記無機塩が、前記水溶液中で、亜鉛、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、リン、バナジウム、ストロンチウムもしくはアンモニウムのいずれかの陽イオン、またはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水酸、亜硫酸、炭酸、硝酸、リン酸もしくはホウ酸のいずれかの陰イオンを生じる塩であることが好ましい。
また、前記有機物が、前記水溶液中に溶解もしくは分散する1種以上の有機化合物、および/または、一酸化炭素、二酸化炭素、ギ酸からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
また、前記有機化合物が、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸、エーテル類、エステル類、アミン類、ニトロ化合物、スルホン酸、油脂からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
また、本発明の有機物分析装置は、前記有機物分析法を用いて、前記相互作用のエネルギーとの共鳴によるピークによって前記有機物の溶解状態または分散状態を検知するための分析装置であって、周波数0.1〜10THzの周波数領域の電磁波を励起する励起光を発生する光源と、前記励起光により電磁波を発生させて前記凍結試料に照射し、前記凍結試料を透過した電磁波を測定する分光器と、前記無機塩が添加、混合された水溶液を凍結させて前記凍結試料を得る低温チャンバとを備えている装置である。
また、本発明の有機物分析装置は、さらに、無機塩を収容する無機塩容器および該無機塩容器から送られる無機塩と前記水溶液とを混合する攪拌器を有する試料前処理器と、前記凍結試料の厚さを測定する厚さ測定手段と、前記分光器、前記低温チャンバおよび前記厚さ測定手段を制御し、かつスペクトル計算を行って吸収特性スペクトルを得る制御・計算手段とを備えていることが好ましい。
本発明の有機物分析法および有機物分析装置によれば、水溶液中の有機物の溶解状態または分散状態を分析することができる。
[有機物分析装置]
本発明の有機物分析装置は、有機物を含む水溶液における該有機物の溶解状態または分散状態を分析する定性分析装置である。
図1は、本発明の有機物分析装置の実施形態の一例を示した模式図である。
本実施形態の有機物分析装置10(以下、分析装置10という)は、図1に示すように、周波数0.1〜10THzの周波数の電磁波を励起する励起光50を発生する光源12と、励起光50により電磁波52を発生させて凍結試料40に照射するパルス発生器24および凍結試料40を透過した電磁波を検出する検出器26を有する分光器14と、無機塩が添加された水溶液を凍結させて凍結試料40を得る低温チャンバ16とを備えている。
また、本実施形態の分析装置10は、さらに、無機塩を収容する無機塩容器28および該無機塩容器28から送られる無機塩と水溶液とを混合する攪拌器30を有する試料前処理器18(図2)と、凍結試料40の厚さを測定する厚さ測定手段20と、分光器14、低温チャンバ16および厚さ測定手段20を制御し、かつスペクトル計算を行って吸収特性スペクトルを得る制御・計算手段22とを備えている。
凍結試料40は、検出対象である有機物を含有する水溶液に無機塩を添加、混合して凍結させた試料である。
光源12は、0.1〜10THzの周波数領域の電磁波(テラヘルツ波)を励起する励起光50を発生させることができれば特に限定されず、例えば、フェムト秒レーザ励起光を発生するパルスレーザやチタンサファイアレーザ等が挙げられる。
分光器14は、励起光50により電磁波52を発生させて凍結試料40に照射するパルス発生器24と、凍結試料40を透過した電磁波を検出する検出器26とを有している。
パルス発生器24は、光源12からの励起光50を受け、電磁波52(テラヘルツ波)を発生することができるものであれば特に限定されず、例えば、非線形光学結晶、光伝導アンテナ、半導体、量子井戸、高温伝導薄膜等が挙げられる。
検出器26は、凍結試料40を透過した電磁波を検出できるものであれば特に限定されず、例えば、光伝導アンテナ等が挙げられる。
低温チャンバ16は、凍結機能を有するものであれば特に限定されず、チャンバ内の温度を−190℃〜室温の範囲で任意の温度に調節維持できるものであることが好ましい。また、凍結機能は、無機塩の析出を抑えることが容易になる点から、凍結速度が10℃/分以上であることが好ましく、30℃/分以上であることがより好ましい。このような低温チャンバ16としては、例えば、日本サーマル社製のチャンバ等が挙げられる。
試料前処理器18は、無機塩を収容する無機塩容器28および該無機塩容器28から送られる無機塩と水溶液とを混合する攪拌器30とを有している。
無機塩容器28は、無機塩を収容することができる容器であれば特に限定されず、例えば、ステンレス製、あるいはガラス製の容器等が挙げられる。
攪拌器30は、水溶液に添加した無機塩を攪拌混合できるものであれば特に限定されない。攪拌器30としては、例えば、モーター駆動で攪拌するスターラー、振動で攪拌するシェーカー等が挙げられる。
厚さ測定手段20は、凍結試料40の厚さを測定できるものであれば特に限定されず、例えば、ミツトヨ製ノギス等が挙げられる。
制御・計算手段22は、分光器14、低温チャンバ16および厚さ測定手段20を制御し、かつスペクトル計算を行って吸収特性スペクトルを得る手段である。
制御・計算手段22における制御としては、例えば、低温チャンバ16を制御して凍結試料40の調製および測定時の温度を制御し、分光器14および厚さ測定手段20の制御により測定を制御するもの等が挙げられる。また、制御・計算手段22における計算としては、検出器26における検出値からスペクトル計算を行い、吸収特性スペクトルを得るものが挙げられる。スペクトル計算としては、検出値からフーリエ変換により連続スペクトルを得て、その連続スペクトルを厚さ測定手段20から送られる凍結試料40の厚さ情報を基に単位厚さあたりに正規化するもの等が挙げられる。
制御・計算手段22としては、このような制御および計算が行えるものであれば特に限定されない。
尚、本発明の有機物分析装置は、図1および図2に例示した分析装置10には限定されない。例えば、凍結試料40を透過した電磁波を測定して吸収特性スペクトルを得ることができる装置であれば、試料前処理器18、厚さ測定手段20、制御・計算手段22を備えていないものであってもよい。
[有機物分析方法]
本発明の有機物分析方法は、有機物を含む水溶液における該有機物の溶解状態または分散状態を分析する定性分析法である。
本発明の有機物分析方法は、前記水溶液中に1種以上の無機塩を添加、混合する混合工程と、前記無機塩が添加、混合された水溶液を凍結させて凍結試料を得る凍結工程と、前記凍結試料に、前記無機塩から生じるイオンと前記有機物との間、または前記イオンと前記有機物とそれらの周囲の水分子との間に形成される弱い相互作用により形成されたクラスターにおける、該相互作用のエネルギーに共鳴する周波数を含む電磁波を用いて吸収特性スペクトルを測定して有機物の溶解状態または分散状態を検知する検知工程とを含む方法である。ここで、本発明における弱い相互作用とは、水素結合、ファンデルワールス結合、π電子相互作用、静電相互作用等の相互作用のことである。
以下、本発明の有機物分析法の実施形態の一例として前述の分析装置10を用いた方法について詳細に説明する。
(混合工程)
混合工程は、有機物を含む水溶液に1種以上の無機塩を添加、混合する工程である。本実施形態では、試料前処理器18において、無機塩容器28に収容されている無機塩が、攪拌器30に収容されている前記水溶液に添加され、攪拌されることにより混合される。攪拌器30による無機塩の混合は、無機塩が前記水溶液に十分に溶解される程度に行えばよく、無機塩の種類および濃度等により攪拌速度や攪拌時間を調節すればよい。
本発明における検出対象である有機物は、前記水溶液中で、無機塩から生じるイオンとの間、または該イオンおよび周囲の水分子との間に弱い相互作用を生じてクラスターを形成するものであれば特に限定されず、水溶液中に溶解もしくは分散する1種以上の有機化合物、および/または、一酸化炭素、二酸化炭素、ギ酸からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
また、前記有機化合物は、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸、エーテル類、エステル類、アミン類、ニトロ化合物、スルホン酸、油脂からなる群から選択される少なくとも1種以上であることがより好ましい。
本発明における無機塩は、前記水溶液中に溶解してイオンを生じ、有機物と該イオンとの間、または該イオンと有機物とそれらの周囲の水分子との間に弱い相互作用を生じてクラスターを形成するものであれば特に限定されない。
無機塩としては、有機物の溶解状態または分散状態の検知に優れる点から、前記水溶液中で、亜鉛、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、リン、バナジウム、ストロンチウムもしくはアンモニウムのいずれかの陽イオン、またはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水酸、亜硫酸、炭酸、硝酸、リン酸もしくはホウ酸のいずれかの陰イオンを生じる塩であることが好ましい。
無機塩は1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記水溶液中に添加する無機塩の添加量は、1質量%〜飽和濃度までとすればよく、図3に示すように無機塩の種類によっても異なるが、無機塩が添加された水溶液の全質量100質量%に対して、無機塩の濃度が1〜50質量%となるようにすることが好ましい。また、前記濃度が10質量%以上である場合には、無機塩の種類によらず得られる吸収特性スペクトルが顕著になり検知が容易になる。また、前記濃度が5質量%以下である場合には、無機塩の種類によらず水溶液に無機塩を溶解させることが容易になる。
(凍結工程)
凍結工程は、無機塩を添加した前記水溶液を凍結させて凍結試料40を得る工程である。凍結試料40を得る方法としては、例えば、試料前処理器18により無機塩を混合した前記水溶液を試料ホルダ等に滴下し、それを低温チャンバ16内に設置して、低温チャンバ16内の温度を低下させて凍結させる方法等が挙げられる。
前記水溶液を凍結する速度は、10℃/分以上であることが好ましく、30℃/分以上であることがより好ましい。前記水溶液を凍結する速度が10℃/分以上であれば、凍結により無機塩が析出することを抑制することが容易になるため、有機物の溶解状態または分散状態を正確に検知しやすい。
凍結試料40の厚さは特に限定されず、分光器14や厚さ測定手段20の性能、大きさ等に応じて決定することができる。ただし、凍結試料40の厚さが薄すぎると、有機物および無機塩の量が少なくなりすぎて得られる吸収特性スペクトル中のピークが小さくなることで、溶解状態または分散状態を検知し難くなるおそれがある。また、凍結試料40の厚さが厚すぎると、電磁波52が凍結試料40を透過しにくくなる。加えて、電磁波52と凍結試料40の厚さとの干渉とを考慮すると、凍結試料40の厚さは1〜3mmとすることが好ましい。
(検知工程)
検知工程は、凍結試料40に電磁波52を照射して、該凍結試料40を透過した電磁波を測定して有機物の溶解状態または分散状態を検知する工程である。
凍結試料40に照射する電磁波52は、無機塩から生じたイオンと有機物との間、または該イオンと有機物とそれらの周囲の水分子との間に形成される弱い相互作用により形成されたクラスターにおける、該相互作用のエネルギーに共鳴する周波数を含む電磁波である。これら弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数を含む電磁波52としては、例えば、0.1〜10THzの周波数領域の電磁波(テラヘルツ波)が挙げられる。
凍結試料40に照射された電磁波52は、無機塩が水溶液に溶解することにより生じるイオンと有機物との間、または該イオンと有機物とそれらの周囲の水分子の間に生じる前記相互作用のエネルギーと共鳴する。そして、凍結試料40を透過した電磁波が検出器26により検出される。また同時に、検出器26には励起光50の一部を照射して、サンプリング検出する。
そして、検出器26から、凍結試料40を透過した電磁波を検出した検出値と前記サンプリング検出の検出値とがデータとして制御・計算手段22に送られ、フーリエ変換により、電磁波52の周波数成分の連続スペクトルに変換される。併せて、低温チャンバ16内の温度および厚さ測定手段20から制御・計算手段22に送られた凍結試料40の厚さの値を基に、得られた連続スペクトルを分析実施温度における単位厚さあたりに正規化して吸収特性スペクトルを得る。前記正規化は、凍結試料40の厚さと吸収特性スペクトルの吸収強度との比例関係を利用する。具体的には、厚さ測定手段20で測定された凍結試料40の厚さで、その吸収特性スペクトルを除算したものである。
また、純水を凍結させた氷を調製して参照試料とし、該参照試料に対して前述の検知工程と同様の測定を行って吸収特性スペクトルを得て、前記正規化した吸収特性スペクトルから参照試料の吸収特性スペクトルを減算することで、凍結試料40の吸収特性スペクトルを得る。
検知工程における低温チャンバ16内の温度は、凍結試料40が解凍されない条件であれば特に限定されない。ただし、測定温度が低いほど熱的ゆらぎが少なく、シャープなスペクトルが得られる。また、温度に応じて吸収特性スペクトルが変化することがあるため、複数の温度条件で吸収特性スペクトルを得ることが好ましい。
検知工程における低温チャンバ16内の温度は、4〜300Kであることが好ましい。
本発明の有機物分析法では、凍結試料40に照射する電磁波52は、有機物の溶解状態または分散状態を検知できる範囲であれば以下の理由により、0.5THz未満および3THzを超える周波数領域の吸収特性スペクトルのデータを除去して分析することもできる。0.5THz未満の周波数領域は、凍結試料40の界面で起こる多重反射等の影響による誤差が大きくなる傾向がある。一方、3THzを超える周波数領域は、高周波側ほど、吸収強度が強くなるのに応じてノイズレベルが大きくなる傾向がある。
そのため、場合によってはそれらの吸収特性スペクトルにおける前述の周波数領域の誤差が大きくなって、有機物と溶解状態または分散状態を分析し難くなるおそれがある。したがって、本発明の有機物分析法に不適当な周波数領域のスペクトルデータを除去して測定を行ってもよい。具体的には、0.5〜3THzの周波数領域の電磁波を用いて測定を行う方法が挙げられる。
また、検知工程では、装置のレーザの出力安定性や光学部品の熱作用等により、そのベースラインが変化することがあるため、誤差の大きい周波数領域で、定数もしくは該周波数に対して一定の関係を有する値を加算または減算することによりベースラインの補正を行うことが好ましい。これにより、水溶液中の有機物の溶解状態または分散状態をより正確に分析することができる。
以上のように、凍結試料40を透過した電磁波から吸収特性スペクトルが得られる。得られた吸収特性スペクトルには、水溶液に有機物が充分に溶解または分散している場合、無機塩から生じたイオンと前記有機物との間、または該イオンと有機物とそれらの周囲の水分子との間の弱い相互作用により形成されたクラスターにおける、該相互作用のエネルギー(固有振動)との共鳴によるピークが得られる。これにより、検出対象の有機物の水溶液中における溶解状態または分散状態を検知することができる。
従って、有機物を含む水溶液における該有機物の溶解状態または分散状態の分析は、例えば、予め検出対象となる有機物と検知に用いる無機塩とを含有する標準凍結試料の吸収特性スペクトルを測定して、その有機物における前記相互作用のエネルギーとの共鳴によるピークの位置を求めておき、凍結試料40の吸収特性スペクトルと標準凍結試料の吸収特性スペクトルのピークを比較することにより行うことができる。
また、検出対象の有機物を含む水溶液を純水により一定の割合で希釈して複数の凍結試料40を調製し、それらの凍結試料40から得た各吸収特性スペクトルにおいて、有機物の濃度と吸収特性スペクトル上のピークの強度との相関関係(比例関係)から前記相互作用のエネルギーとの共鳴によるピークを確認することで、水溶液中の有機物の溶解状態または分散状態を検知してもよい。
以上説明した本発明の有機物分析法および有機物分析装置は、水溶液中の有機物の溶解状態または分散状態を分析することができる。
これは、無機塩を利用して、無機塩から生じたイオンと有機物との間、または該イオンと有機物とその周囲の水分子との間の弱い相互作用により形成されたクラスターにおける、該相互作用のエネルギーに共鳴する電磁波を利用して分析を行うことで、溶解状態または分散状態にある有機物に由来する吸収強度が大きくなるためであると考えられる。
以下、実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
図1に例示した分析装置10を用いて、水溶液中の有機物の溶解状態の分析を行った。分析装置10は、光源12としてチタンサファイアレーザであるvitesse(100フェムト秒型、コヒレント社製)を用い、パルス発生器24(光伝導アンテナ、浜松ホトニクス社製)、検出器26(光伝導性アンテナ、浜松ホトニクス社製)を備えた分光器14に低温チャンバ16(冷却には液体窒素を使用)および厚さ測定手段20を取り付けたものを用いた。
[凍結試料の調製]
検出対象の有機物はエタノールとした。エタノールを純水で希釈し、エタノール濃度が1、2、3質量%である水溶液を各2本ずつ6本調製した。以下、エタノール濃度が1質量%の水溶液をそれぞれ水溶液A、水溶液B、2質量%の水溶液をそれぞれ水溶液C、水溶液D、3質量%の水溶液をそれぞれ水溶液E、水溶液Fとする。
ついで、試料前処理器18により、水溶液A、C、Eのそれぞれに無機塩である塩化ナトリウムを濃度が20質量%となるように添加して攪拌器30で1時間攪拌した後、これらの水溶液A、C、Eの0.1mLを直径6mmの試料ホルダに滴下し、低温チャンバ16内で室温から−30℃/分で−190℃まで冷却して厚さ約2mmの凍結試料(以下、凍結試料A、C、Eとする)とした。
また、水溶液B、D、Fについては、それらを電子レンジで10秒間(500W)加熱処理して室温まで冷却した後、水溶液A、C、Eと同様の方法で無機塩を混合して凍結試料(以下、凍結試料B、D、Fとする)を調製した。
また、これらと同量の純水を用いて氷を作製したものを参照試料とした。
[実施例1]
前述の試料調製により得られた凍結試料Aを厚さ測定手段20に設置し、0.1〜10.0THzの周波数領域の電磁波により測定を行い、単位試料厚さあたりに正規化して吸収特性スペクトルを得た。また、同様の測定により得た前記参照試料の吸収特性スペクトルの吸収強度を差し引き、凍結試料Aの吸収特性スペクトルを得た。また、凍結試料B〜Fについても凍結試料Aと同様の方法で、それぞれの凍結試料の吸収特性スペクトルを得た。
凍結試料A〜Fの吸収特性スペクトルを図4(a)〜(c)に示す。
図4(a)〜(c)に示すように、凍結試料A〜Fのそれぞれにおいて、1.5〜1.8THzに大きなピークが1つ現れた。凍結試料A、C、Eの比較および凍結試料B、D、Fを比較すると、この1.5〜1.8THzのピークはエタノールの濃度に依存していないことから、このピークは凍結試料中の水分子と無機塩(塩化ナトリウム)から生じたイオン対により形成されたクラスターにおける、イオンと水分子との間の弱い相互作用エネルギーによるピークであることがわかった。
また、凍結試料A、C、Eについては、1.5〜1.8THzのピークのみであり、それ以外にエタノールに関連するピークが得られていないことから、エタノールが充分に溶解していない、あるいは分子レベルで分散していないことがわかった。
一方、凍結試料B、D、Fについては、1.5〜1.8THzのピークの他に2THzに顕著なピーク(図4、矢印)が現れた。凍結試料B、D、Fを比較すると、2THzのピークの強度とエタノールの濃度には相関(比例関係)が見られた。このことは、このピークがエタノールに関連するピークであり、電子レンジによる加熱によりエタノールが水溶液に均一に溶解あるいは分子レベルで分散し、前記クラスターとの間で弱い相互作用が生じたことを示している。
以上のように、本発明の有機物分析法および有機物分析装置により、水溶液中における有機物の溶解状態や分散状態を分子レベルで検知することができた。
本発明の有機物分析法および有機物分析装置は、水溶液中の有機物の溶解状態や分散状態を検知することができるため、食品分野や医療分野を始めとする様々な分野において商品の品質検査等の用途に好適に使用することができる。
本発明の有機物分析装置の実施形態の一例を示した模式図である。 本発明の有機物分析装置の試料前処理器の一例を示した模式図である。 水100gに対する各種無機塩の溶解度曲線を示した図である。 実施例1における凍結試料A〜Fの吸収特性スペクトルを示した図である。
符号の説明
10 有機物分析装置 12 光源 14 分光器 16 低温チャンバ 18 試料前処理器 20 厚さ測定手段 22 制御・計算手段 28 無機塩容器 30 攪拌器

Claims (6)

  1. 有機物を含む水溶液における該有機物の溶解状態または分散状態を分析する定性分析法であって、
    前記水溶液中に1種以上の無機塩を添加、混合する混合工程と、
    前記無機塩が添加、混合された水溶液を凍結させて凍結試料を得る凍結工程と、
    前記凍結試料に、前記無機塩から生じるイオンと前記有機物との間、または前記イオンと前記有機物とそれらの周囲の水分子との間に形成される弱い相互作用により形成されたクラスターにおける、該相互作用のエネルギーに共鳴する周波数を含む電磁波を照射し、前記凍結試料を透過した電磁波を測定することにより得られる吸収特性スペクトルから前記相互作用のエネルギーとの共鳴によるピークによって前記有機物の溶解状態または分散状態を検知する検知工程とを含むことを特徴とする有機物分析法。
  2. 前記無機塩が、前記水溶液中で、亜鉛、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、リン、バナジウム、ストロンチウムもしくはアンモニウムのいずれかの陽イオン、またはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水酸、亜硫酸、炭酸、硝酸、リン酸もしくはホウ酸のいずれかの陰イオンを生じる塩である、請求項1に記載の有機物分析法。
  3. 前記有機物が、前記水溶液中に溶解もしくは分散する1種以上の有機化合物、および/または、一酸化炭素、二酸化炭素、ギ酸からなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1または2に記載の有機物分析法。
  4. 前記有機化合物が、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸、エーテル類、エステル類、アミン類、ニトロ化合物、スルホン酸、油脂からなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の有機物分析法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の有機物分析法を用いて、前記相互作用のエネルギーとの共鳴によるピークによって前記有機物の溶解状態または分散状態を検知するための分析装置であって、
    周波数0.1〜10THzの周波数領域の電磁波を励起する励起光を発生する光源と、前記励起光により電磁波を発生させて前記凍結試料に照射し、前記凍結試料を透過した電磁波を測定する分光器と、前記無機塩が添加、混合された水溶液を凍結させて前記凍結試料を得る低温チャンバとを備える有機物分析装置。
  6. さらに、無機塩を収容する無機塩容器および該無機塩容器から送られる無機塩と前記水溶液とを混合する攪拌器を有する試料前処理器と、前記凍結試料の厚さを測定する厚さ測定手段と、前記分光器、前記低温チャンバおよび前記厚さ測定手段を制御し、かつスペクトル計算を行って吸収特性スペクトルを得る制御・計算手段とを備える、請求項5に記載の有機物分析装置。
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