JP5146765B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池システムに関し、特に複数の燃料電池セルが同一平面上に配置された平面スタック型の燃料電池システムに関する。
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで挟持した構造の電極−電解質膜接合体(Membrane and Electrode Assembly。以下、MEAという。)を備えている。液体燃料を直接アノードに供給するタイプの燃料電池は、直接型燃料電池と呼ばれる。その発電メカニズムは、供給された液体燃料がアノードに担持された触媒上で分解してプロトン、電子及び中間生成物を生成し、生成した陽イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、生成した電子が外部負荷を経てカソード側に移動し、そしてプロトンと電子がカソードで空気中の酸素と反応して反応生成物を生じることによって発電するというものである。例えば、液体燃料としてメタノール水溶液をそのまま使用するダイレクトメタノール型燃料電池(以下、DMFCという。)では、下式1で表される反応がアノードで起こり、下式2で表される反応がカソードで起こる。
(化学式1);CHOH + HO →CO + 6H + 6e
(化学式2);6H + 6e + 3/2O → 3H
液体燃料を使用した固体高分子電解質型燃料電池は、小型、軽量化が容易であるために、今日では携帯機器をはじめとした種々の電子機器用電源としての研究開発が活発に進められている。例えば、PCのような電子機器の電源として用いるためには、単一のMEAでは出力が小さく、必要とする電圧を得られないため、複数の燃料電池セルを連結することになる(以下、燃料電池システムの発電における最小ユニットを燃料電池セルと呼び、その燃料電池セルの集合体を燃料電池スタックと呼ぶ)。このような複数の燃料電池セルで構成された燃料電池システムとしては、燃料電池の単位セルがセルの厚み方向に積層したバイポーラ型と、燃料電池の単位セルが平面的に並ぶ平面スタック型とが知られている。
ノート型PCのように、携帯することを念頭に置いた機器においては、厚さに対する制約があるため、薄く構成される平面スタック型の方が向いている。平面スタック型において、複数の燃料電池セルが平面的に配置され、隣接した燃料電池セルを集電体などで接続することによって、高い電圧および出力を得ることができる。平面スタック型を用いる場合、燃料電池システム全体が携帯機器のフットプリントに納まる程度に小型であることが望ましい。
ところで、燃料電池システムでは、カソードに常に酸素を供給しつづける必要がある。平面スタック型の燃料電池システムでは、酸素を供給する手法として、(A)燃料電池スタックを筐体内部に搭載させ、筐体と燃料電池スタックとの間の空間に小型ファンを用いて空気を強制的に供給する、(B)カソード面を大気に開放して自然吸気させる、などの手法が知られている。ただし、(B)カソード面を大気開放する自然吸気型の構造は、カソード面を被覆させると発電できないため、燃料電池自身を携帯機器内部に収納するような構造にすることが難しい。また、燃料電池を収めることだけを目的とした筐体を別個に設けたとしても、その筐体に設けられた通気孔を塞がないようにする配慮が必要である。これに対し、(A)燃料電池自体を筐体などに収め、小型ファンなどで空気を強制送風させる手法では、吸気部分および排気部分を塞がない限りは安定して発電することができる。従って、携帯機器の電源として有利な点が多い。
燃料電池を携帯機器に内蔵するためには、燃料電池システムはできるだけ小型であることが求められる。そのためには、燃料電池スタックは小型・薄型である必要があり、ひいては燃料電池セルのカソード電極と、それに対面する筐体の内側との距離は、できる限り近いことが好ましい。しかし、消費電力の大きな燃料電池システムにおいては、燃料電池スタックと筐体との間の空間を空気流が流れる過程において、多数の燃料電池セル上を空気が通過することになる。そのため、吸気部分に近い側の燃料電池セルでは、常に新鮮な空気にさらされるために空気は比較的低湿度であり温度は低くなるのに対し、排気部分に近い側の燃料電池セルでは、いくつものカソードから発せられた熱や水分が送られてくるため、温度および湿度は高くなる傾向がある。
このような状況下においては、同じ燃料電池スタックにありながら、その発電環境が低温・低湿度の燃料電池セルと、高温・高湿度の燃料電池セルとが隣接して共存することになる。温度、湿度が不均一となると、部分的な結露を起源としたフラッディングが起こりやすい。従って、複数の燃料電池セルにおいて、温度、湿度を均一にして発電環境を均一にする技術が求められる。
フラッディングを防止するためには、燃料電池スタックと筐体との間の空間に送風するガス(酸化剤ガス)の流量を強くすることが考えられる。しかしながら、アノード側からMEAを通じてカソード側に周りこんだ燃料成分や、カソード生成水が、空気流と共に外部へ放出されることになり、結果的に燃料が無駄に消費されて、燃料単位量あたりの発電時間が減少してしまう。従って、発電効率を落とさずに、発電環境を均一にする技術の提供が望まれる。
上記と関連して、特開2000−164229号公報は、燃料電池セルの乾燥を防ぐために、電池反応部を通過した既反応ガスと電池反応部を通過する前の未反応ガスを、保水性の多孔質体を介して接触させることにより、温度及び湿度交換を行う温湿度交換手段を備え、反応ガスの少なくとも一方は、多孔質体と接するように設けられた少なくとも一層のメッシュ状のガス供給経路内を流通するように構成することが記載されている。
また、特開2004−14149号公報には、カバー板に設けられた空気孔を通して大気中の酸素が正極と接することが記載されている。
また、特開2000−331703号公報には、燃料電池における水の回収利用を円滑に行うための技術が開示されている。即ち、特許文献3には、燃料電池の酸化反応により生成する水蒸気を凝集手段により液化して凝縮水とし、その凝縮水を脱塩処理する手段を設け、燃料電池の排ガス側から脱塩手段までの間の排気・回収ラインに、燃料電池の空気極へと供給される空気を燃料電池への供給前に水蒸気又は/及び凝縮水に接触させる気液接触手段、を設けることが記載されている。
また、特開2000−331699号公報には、小型・軽量で且つ発電効率の高い固体高分子型の燃料電池システムを提供する技術が開示されている。即ち、特許文献4には、酸化剤ガスをカソードに供給する経路に、酸化剤ガスとカソードから排出されるカソード排ガスとが導入されるとともにこれらを熱交換させることによりカソード排ガス中に含まれる水分を凝集させる水凝集器を備え、その水凝集器における、その酸化剤ガスの排出口そのカソード排ガスの排出口とを連結するように連続して設けられたガス透過性の吸水部材を有する燃料電池システム、が記載されている。
また、特開2005−108713号公報には、長時間に渉って安定した発電が可能な燃料電池を提供するための技術が開示されている。即ち、特許文献5には、起電部から排出された水を効率よく回収し、発電反応に再利用するために、カソード流路を複数の分岐流路に分岐し、これらの分岐流路をカソード冷却器によって冷却することが記載されている。
また、特開2003−282131号公報には、セルパック内部への円滑な空気の供給が可能であり、外部からの異物の流入を効果的に抑制できるDMFCセルパックを提供するための技術が記載されている。即ち、特許文献6には、MEAのカソードに接触する上部側板状部材及び/または下部側板状部材の各内面に空気チャンネルが形成されていることによって、いずれか一方で使用者や使用環境による空気供給の遮断が発生しても他の部分から空気チャンネルを通じて空気が供給されるようになっている、ことが記載されている。
また、特開2004−241367号公報には、カソードで生じた生成水を再利用するための技術が記載されている。即ち、特許文献7には、MEAとセパレータとを有し、セパレータのMEA対向面に反応ガス流路が形成された燃料電池において、セパレータの少なくとも一部に多孔質部を形成し、その多孔質部の反応ガス流路背面に冷却用ガス流路を形成した燃料電池、が記載されている。
しかしながら上述の何れの文献においても、携帯機器に求められる要求である省スペース化、低消費電力が達成された上でカソード排気に含まれる水分を再利用することは解決されていない。
従って、本発明の目的は、MEAの発電環境を均一にすることのできる燃料電池システムを提供することにある。
本発明の他の目的は、携帯機器に求められる省スペース化、低消費電力化の達成された上で、MEAの発電環境を均一にすることのできる燃料電池システムを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、携帯機器に求められる省スペース化、低消費電力化が達成された上で、カソード排気に含まれる水分を再利用することのできる燃料電池システムを提供することにある。
本発明に係る燃料電池システムは、同一平面上に複数の燃料電池セルが配置された燃料電池スタックと、燃料電池スタックを、燃料電池スタックとの間に空気流空間を空けて被覆する筐体と、空気流空間内に、複数の燃料電池セルの各々に酸化剤ガスを供給するための空気流を形成させる空気流発生部と、空気流空間から排出された排ガスが、空気流発生部を介して再び空気流空間に導入されるように形成された送風経路と、を具備する。
上述した構成に依れば、空気流空間から排出された排ガスは、燃料電池スタックのカソード生成水を含んでいるので、高湿度となっている。また、発電反応の発熱により、その排ガスは温められている。その排ガスを、空気流発生部を介して再び空気流空間に供給することで、乾燥し易く冷却されて低温となり易い位置に配置された燃料電池セルを加湿し、温度を維持することができる。
また本発明において、空気流空間は、空気流空間に酸化剤ガスを取り入れるためのスタック吸気開放部と、空気流空間からのその排ガスを排出するためのスタック排気開放部と、によって開放されている。送風経路は、スタック排気開放部からの排ガスを、空気流発生部を介して、スタック吸気開放部の少なくとも一部から空気流空間へ再び導風するように設けられている。空気流空間は、スタック吸気開放部の一部で送風経路に連通し、スタック吸気開放部の他の部分で外部と連通している。スタック排気開放部からの排ガスと、外部の空気と、がスタック吸気開放部から空気流空間へと供給される。
また、空気流発生部は、ファンを有していることが好ましい。また、ファンは、燃料電池スタックの平面方向に、燃料電池スタックと平行に配置されていることが好ましい。このようにファンが配置されていることによって、厚さ方向に対するスペースが省略化される。
また、本発明の他の形態において、複数の燃料電池セルは、複数の列となるように配置されており、空気流空間は、その複数の列の間において、空気流を整流するための仕切りによって分割されていることが好ましい。ここで、送風経路は、その複数の列のうちの一の列から排気された排ガスが、空気流発生部を介して、その複数の列のうちの他の列に供給されるように設けられている。
更に、上述の燃料電池システムにおいて、空気流発生部はファンを有し、空気流発生部、燃料電池スタック、及び送風経路は同一平面上に配置され、空気流発生部、燃料電池スタック、及び送風経路は、単一の筐体に納められていることが好ましい。ここで、その一の列の燃料電池セル上の空気流空間は、送風経路を介して空気流発生部に連通している。また、空気流発生部は、送風経路を介して、その他の列の燃料電池セル上の空気流空間と連通している。
本発明に依れば、MEAの発電環境を均一にすることのできる燃料電池システムが提供される。
本発明に依れば、更に、携帯機器に求められる省スペース化、低消費電力化の達成された上で、MEAの発電環境を均一にすることのできる燃料電池システムが提供される。
本発明に依れば、更に、携帯機器に求められる省スペース化、低消費電力化が達成された上で、カソード排気に含まれる水分を再利用することのできる燃料電池システムが提供される。
第1の実施形態に係る燃料電池スタックの上面図である。 ファンの構造を示す上面図である。 ファンの構造を示す側面図である。 ファンの構造を示す斜視図である。 ファンの構造を示す斜視図である。 空気流発生部の構造を示す上面図である。 空気流発生部の構造を示す側面図である。 空気流発生部の構造を示す斜視図である。 空気流発生部の構造を示す斜視図である。 ダクトの構造を示す図である。 ダクトの配置を示す斜視図である。 ダクトの配置を示す斜視図である。 ダクトの配置を示す斜視図である。 燃料電池セルの構造を示す断面図である。 第2の実施形態に係る燃料電池システムの上面図である。 比較例1の燃料電池システムの上面図である。 実験結果を示す図である。
以下に、図面を参照して、本発明の燃料電池システム1について説明する。
(第1の実施形態)
(構成)
図1は、本実施の形態に係る燃料電池システム1の構造を示す概略図である。図1において、燃料電池スタック15の上面図と、この上面図のDD’に沿った断面図及びCC’に沿った断面図が描かれている。尚、上面図において、内部の構成は、筐体やダクトに覆われているので、実際には見えないが、説明の便宜上から、透視させて示している。
燃料電池システム1は、複数の燃料電池セル11がフレーム10上に平面的に配置された燃料電池スタック15、燃料電池スタック15を収納する筐体14、空気流を形成させるための空気流発生部100、及びダクト80を有している。燃料電池スタック15と筐体14との間には空間(空気流空間27)が設けられている。空気流空間27は、一端25で空気流発生部100に連通し、他端24においてダクト80内部の空間と連通している。また、ダクト80内部と空気流発生部100とは連通している。これにより、空気流空間27の一端25から、空気流発生部100、及びダクト80内部を介して空気流空間27の他端24へ接続される送風経路90(DD’断面図の矢印)が形成されている。また、燃料電池システム1には、図示していないが、燃料をためておくための燃料マザータンク、燃料を流すためのポンプ、電気エネルギーを取り出すための配線も設けられている。これらの各構成の詳細について、以下に詳述する。
(全体構成)
燃料電池スタック15は、フレーム10上に複数の燃料電池セル11が配置されたものである。本実施の形態では、6個の燃料電池セル11が、2列×3行で並べられている。燃料電池セル11の構成については後述するが、全ての燃料電池セル11は、カソード面を上向き(フレーム10の反対側向き)として配置されている。また、燃料電池セル11は、列方向に直列に接続されている。図1DD’断面図における符号40は集電体40であり、燃料電池セルの列間を電気的に接続するものである。全ての燃料電池セル11が電気的に直列に接続されている。燃料電池スタック15には、取り出し用端子152、151が接続されており、取り出し用端子151、152を介して電力が外部へ取り出されるようになっている。
筐体14は、筐体本体140と蓋70とを有している。筐体本体140は、断面がコの字状であり、燃料電池スタック15が載置される底面と、その底面から立ちあがる2つの側面とを有している。底面は、2列×3行の燃料電池スタック15の形状に対応した矩形状である。側面は、底面の対向する2辺にのみ設けられており、他の2辺には側面は設けられていない。
蓋70は、筐体本体140の側面によって支えられるようにして、筐体本体140の上に配置されている。蓋70と燃料電池スタック15とは、接触しておらず、空間が設けられている。この空間が空気流空間27である。空気流空間27は、燃料電池スタック15の各燃料電池セル11に設けられたカソードと接している。これにより、空気流空間27を流れる空気は、カソードに酸化剤ガスとして供給される。また、空気流空間27は、筐体本体140の側面の設けられていない2面において開放されている。この2面の開放部が、それぞれ、空気流空間27に酸化剤ガスを供給するためのスタック吸気開放部24、空気流空間27から排ガスを排出するためのスタック排気開放部25となっている。
尚、蓋70と筐体本体140とは一体であってもよい。また、着脱自在のセパレート型のようなものであってもよい。蓋70の材質としては、燃料電池スタック15で発生した熱が放出され易いように、ステンレスやアルミなどの金属を母体とし、その表面を絶縁性のビニールなどで被覆することが好ましい。また、蓋70と、後述するファンカバー52上部の面はできるだけ同じ高さであり、平滑であることが好ましい。
空気流発生部100の構成について詳述する。空気流発生部100は、ファン51と、ファン51を覆うファンカバー52を有している。
図2A〜Dは、ファン51の構成を示す図である。図2Aは、ファン51の上面図、図2Bは側面図、図2Cは排気側の斜め方向から見たときの図、図2Dは吸気側の斜め方向から見たときの図である。
図2A〜Dに示されるように、ファン51は、ファン本体57(図2Bにのみ描かれている)、及びファン本体57を覆うように設けられてファン本体57を支持するファン支持体58を有している。ファン本体57は羽根状であり、回転することによって気流を発生させる。ファン支持体58には、ファン本体57が回転したときに気流の吸込み側となる面に設けられたファン吸気口55と、ファン本体57の気流吐き出し側においてファン吸気口55に対して垂直方向を向いて設けられたファン排気口56と、を有している。このような構造により、ファン51は、気流を、上側(ファン吸気口55側)から吸込み、横側(ファン排気口56)から吐出する。
図3A〜Dは、ファン51がファンカバー52で覆われた状態を示す図である。即ち、空気流発生部100の構成を示す図である。図3Aは、空気流発生部100の上面図、図3Bは側面図、図3Cは排気側の斜め方向から見たときの斜視図、図3Dは吸気側の斜め方向から見たときの斜視図である。図3A〜Dにおいて、ファン51は実際にはファンカバー52に覆われていて見えないが、説明のために透視させて描かれている。
図3Bに示されるように、ファンカバー52は、ファン51の上面を若干の空間をあけて被覆するように配置されいてる。ファンカバー52の側部には、ファンカバー吸気口53と、ファンカバー排気口54とが、夫々対向する面に設けられている。ファンカバー吸気口53は、ファン51の上側の空間に接続されている。一方、ファンカバー排気口54は、ファン排気口56に対応する側面に設けられている。
このような構成によって、空気流発生部100は、ファンカバー吸気口53から気流を吸い込み、ファンカバー排気口54から排気する。即ち、ファン本体57自体は上方から気流を吸引して下方へ排気するが、空気流発生部100全体としては、ファン支持体58やファンカバー52に設けられた開口の位置によって、横方向から吸気して、吸気側とは反対方向から排気するように構成されている。
再び図1を参照して、空気流発生部100の配置について説明する。空気流発生部100は、燃料電池スタック15と同一平面上になるように寝かせて配置されている。ここで、ファンカバー吸気口53が、スタック吸気開放部25に面するように配置されている。尚、スタック排気開放部25とファンカバー吸気口53との間の空間は連結部材によって閉じられている。このような構成により、スタック排気開放部25から排気された排ガスは、ファンカバー吸気口53からファンカバー52内部へ吸引される。ファン51を通った排ガスは、ファンカバー排気口54を介して、燃料電池スタック15の反対側の側部から空気流発生部100の外へ吐出されるようになっている。
尚、空気流発生部100としては、シロッコファン、軸流ファン、クロスフローファン、及びターボファンなども用いることができる。但し、携帯機器に搭載することを考慮した場合、薄型径流ファンなどの消費電力の小さなものを用いることが好ましい。
続いて、ダクト80について説明する。図4は、ダクト80の形状を示す斜視図である。ダクト80は、ダクト本体83とガイド81とから形成されている。ダクト本体83は矩形状の部材と、その対向する2辺に設けられたダクト側壁82とによって形成されている。ガイド81は、矩形状の部材の他の2辺に夫々接続され、下方向へ円弧を描くように曲げられて延びている。また、ガイド81において、ダクト側壁82の位置に対応した部分には、側壁が設けられている。
再び図1を参照する。上述のような構成を有するダクト80が、ダクト本体83を蓋70及びファンカバー52の上面に配置されている。ダクト80の長手方向の長さは、蓋70とファンカバー52とを併せた長さに一致している。ダクト80と蓋70との間にはダクト側壁81の厚さ分の空間が形成されている。ダクト80と蓋70との間の空間は、ファンカバー52側に設けられたガイド81によって、ファンカバー排気口54に接続されている。また、スタック吸気開放部24側に設けられたガイド81によって、スタック吸気開放部24の一部に接続されている。
図5は、ダクト80の配置をファンカバー52側から見て説明するするための斜視図である。図中、矢印は排ガスの流れる方向を示している。説明の便宜上、ファンカバー52の構成の一部を透視させて示している。ガイド81がファンカバー52の側部に配置されていることによって、ファンカバー52内部は、ガイド81を介して、ダクト本体83内部の空間(ダクト83と蓋70とで形成された空間)に連通している。即ち、ファンカバー排気口54から排出された排ガスは、ガイド81内を通ってガイド本体83側へと折り返される。
図6は、ダクト80の配置をスタック吸気開口部24側から見て説明する斜視図である。図5同様、矢印が排ガスの流れる方向を示している。また、説明の便宜状上、燃料電池スタック15の構成の一部を透視させて示している。ダクト80内を流れてきた排ガスは、ガイド81によって折り返されて、再びスタック吸気開放部24から空気流空間27内へ導入される。なお、ガイド81は、スタック吸気開放部24を完全に覆うように設けられているのではなく、スタック吸気開放部24の一部に接続されている。これにより、スタック吸気開放部24からは、ダクト80内を流れてきた排ガスに加えて、外部からの空気も取りこまれるようになっている。
上述のような構成により、図1のDD’の断面図に示されるように、空気流発生部100が気流を発生させると、空気流空間27内の空気は、空気流発生部100を介してダクト80へ排出され、更にスタック吸気開放部24から再び空気流空間27へ導入される。このようにして、燃料電池スタック15から排出された排ガスが再び燃料電池スタック15へ供給される送風経路90が形成されている。
送風経路90を介して空気流空間27へ再供給される排ガスは、各燃料電池セル11のカソードで生成した生成水を含むために高湿度となっている。また、発熱する燃料電池スタック15上を通過してきたために温められている。この排ガスがスタック吸気開放部24から再供給されるので、乾燥し易く、冷却されて低温となり易いスタック吸気開放部24近傍(上流側)の燃料電池セル11を加湿し、温める事ができる。よって、上流側の燃料電池セル11と下流側の燃料電池セル11との発電環境を、温度及び湿度の観点から均一にする事ができる。
尚、ダクト本体83は、筒状であり、内部を排気ガスが通過する構成としてもよいが、上述のようにダクト本体83を蓋70の上に載せて、蓋70が送風経路90の底面となる構造としたほうが、ダクト80内部の温度を空気流空間27と近くすることができるのでこのましい。また、厚みを低減する上でも好ましい。
ダクト本体83の材質としては、例えば、プラスチック製や金属製の板等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。但し、高湿度の排気が通過することになるので、結露した際に腐食し易い金属製のものを用いた場合には、表面をビニル等でコーティングすることが好ましい。
ダクト側壁82に関しては、ダクト本体83と同じ材質でもよいが、例えば、厚さ0.1〜1.0mm程度のウレタン素材などの気密性のある材料を、幅0.5〜3.0mm程度の帯状に裁断し、ダクト本体83を成す平板に貼り付けるような簡単な構造であってもよい。ウレタン素材を用いる場合、吸水性のある素材を用いることによって、ダクト80内部で結露した水を吸水させ、排気の流れが滞ることを防ぐことも可能である。また、ダクト側壁82自体には気密性がなくても、外側から気密性のあるテープなどで塞げば、ダクト80としての効果は得る事ができる。更には、部分的にダクト側壁82が無い部分を設け、送風経路90内に外気を取り入れる箇所を設けてもよい。これにより、排ガスの湿度が必要以上に高くなる事を避け、結露を防止することができる。このように、ダクト側壁82としては、必要に応じてその材質の持つ機能を利用することができる。
ガイド81に関しては、丸めても折れ曲がりにくく、比較的柔らかな塩化ビニルなどのプラスチック素材が適している。但し、塩化ビニル等のプラスチック素材に限定されるものではない。また、その形状は、図4に示したように、板状の材料を円弧状に丸め、側方をテープなどで塞いだ構造が基本となるが、その形状に関してもここで述べたようなものに限定されるものではない。燃料電池スタック15のカソード31面を通過してきた空気(空気流空間27から排出された排ガス)が、ダクト80に導風され、更に、スタック吸気開放部24の一部から再度空気流空間27に再供給されるような形状・構造であればよい。
また、空気流空間27から排気された排ガスの全てをダクトを介して燃料電池スタック15に供給する必要はない。ガイド81とファンカバー排気口54との間や、ガイド81とスタック吸気開放部24との間には隙間があり、必要に応じて送風経路90を通過する排ガスの一部が、外気に排出されるように構成されていてもよい。特に、ダクト80からスタック吸気開放部24に導風する際には、ダクト80を通過した排ガスを全てスタック吸気開放部24に導く必要は無く、一部の排ガスをガイド81の隙間などから常に逃してやるような構造でもいい。
また、スタック吸気開放部24は、完全にガイド81で被覆するような構成にしてしまうと、外部から新鮮な空気が供給されなくなってしまう。このため、ガイド81は、スタック吸気開放部24の一部分のみを被覆するように設けられる。スタック吸気開放部24の全開放面積に対して、ガイド81が接続している部分の面積の割合は、特に限定されないが5〜80%程度が適当である。また、複数の燃料電池セル11の列に渉ってカソード排気を再供給する際には、燃料供給経路などの影響で温度が上昇し易いカソード31を持つ燃料電池セル11がある列には、比較的ガイド81の割り当てを小さくし、温度が高くなりにくく、空気流空間の湿度が低下し易い列にはガイド81の割り当てを大きくするなどして、発電環境を最適化する事もできる。
ダクト本体83部分における断面形状は、例えば長方形のように、最も厚さを制限した中でも効果を発揮できる形状がよいが、携帯機器の内部構造によって制限が生じる場合には、複数の小さな円筒状の構造などを用いる事もでき、特に限定されない。また、断面積は、ダクト80内部空間における排ガスの流速や湿度を考慮して、漸増・漸減させるようにしてもよい。また、ダクト80内部での結露を考慮した場合、結露した水がダクト80内部でカソード排気の流れを妨げる事が無いように、ダクト80内部にプラスチック製などのメッシュを添付した構造とし、結露した水がメッシュに沿って広がるような効果を得る事もできる。メッシュは、ガイド81の内側に貼っても効果的であり、ガイド81を通じて結露水を燃料系統に戻す事もできる。メッシュに関しては、プラスチック製や金属製のものを用いる事ができる。特に、メッシュ径を規定することはないが、好ましくは、40〜200メッシュ程度のものがよい。更に、吸水性を持つ素材を使用することによって、ダクト80内での結露に起因する気流のを抑制することもできる。
空気流発生部100を燃料電池スタック15と同一平面上に配置することで、厚み方向のスペースを省スペース化させることができるが、厚み方向のスペースに余裕がある場合には、必ずしも同一平面上に配置する必要は無い。図7は、空気流発生部100の配置を変形させた例について示している。図7に示される変形例においては、空気流発生部100(ファンカバー52)が、蓋70の上に配置されている。このように、燃料電池スタック15の上側に空気流発生部100を配置してもよい。また、空気流発生部100をダクト80内部に埋設するように配置してもよい。更に、正圧で送風するシステムにおいては、スタック排気開放部25側ではなくて、スタック吸気開放部25側に空気流発生部100を配置してもよい。
尚、本実施の形態では、空気流発生部100は空気流空間27に対して負圧となることで空気流空間27内の気体が吸引される場合について説明したが、空気流発生部100側が正圧となり、空気流空間27内へ気体を送出するような構成としてもよい。即ち、ファン51を上下逆に配置して、送風の向きを逆にしてもよい。このような構成としても、空気流空間27からの排ガスの少なくとも一部が、再び空気流空間27内へと戻され、加温・加湿効果を享受できることは、当業者にとっては自明的であろう。
(燃料電池セル)
続いて、各燃料電池セル11の構成についての詳細を説明する。図8は、図1のCC’断面を拡大して示す図である。即ち、図8には燃料電池セル11の構成が詳細に描かれている。各燃料電池セル11は、MEA13、カソード集電体41、アノード集電体42、燃料タンク部12、及び複数のシール部材43を有している。
既述のように、燃料タンク部12は、フレーム10に設けられた凹部である。燃料タンク部12には、MEA13に供給される液体燃料(メタノール)が蓄えられる。また、燃料タンク部12には、ウィッキング材60が挿入されている。ウィッキング材60は、燃料供給補助の目的で挿入される。ウィッキング材60の素材としては、発泡ウレタン等が例示される。尚、燃料がMEAに安定的に供給されるのであれば、ウィッキング材60は必ずしも必要では無い。
MEA13は、燃料タンク部12の上部開口を覆うように配置されている。MEA13は、略正方形の形状である。MEA13は、固体高分子電解質膜33、アノード32、及びカソード31を有している。固体高分子電解質膜33の片面にアノード32が、他面にカソード31が配置されており、アノード32とカソード31によって固体高分子電解質膜33が挟持された構成となっている。
MEA13は、アノード32側を下向き(燃料タンク部12側)として配置されている。MEA13のアノード32側にはアノード集電体42が、カソード31側にはカソード集電体41が、夫々周縁部に配置されている。アノード集電体42及びカソード集電体31は枠状である。アノード集電体42及びカソード集電体41は、MEA13の端部を挟むようにして配置されている。即ち、アノード32は、アノード集電体42の内側にあたる中央部で燃料タンク部12に接している。また、カソード31は、カソード集電体41の内側にあたる中央部で、上部の空間に接している。ここで、カソード31上部の空間が、空気流空間27である。
シール部材43は、各構成部材の隙間を埋めるように適宜配置される。シール部材43によって、燃料電池セル11から液体燃料が漏れないようになっている。
このような構成により、燃料タンク部12に蓄えられた液体燃料が、アノード32に供給される。一方、カソード31へは、空気流空間27から空気が供給される。これにより発電反応が発生し、発生した電力はアノード集電体42及びカソード集電体41によって取り出される。
尚、MEA13は、固体高分子電解質膜33の両面に、カーボン母体の触媒層を塗布した、カーボンもしくは金属製導電性シート状電極を、触媒を塗布した面を固体高分子電解質膜33に向けるようにして配置することで得る事ができる。また燃料電池セル11は、MEA13を両面から2枚の集電体で挟みこみ、液体燃料を供給するアノード32側を燃料タンク部12側に向けてフレーム10上に固定することで得る事ができる。
固体高分子電解質膜33に関しては、プロトンを伝導することができるものならば、その材質は限定されない。また、カソード31及びアノード32の触媒層に関しては、白金微粒子を主成分とする触媒金属を担持させたものを用いることができる。特に、アノード32側に関しては、一酸化炭素の被毒を防ぐために、ルテニウムなどの他金属成分を白金と共に担持させる事が好ましい。また、フレーム10上にMEA13を搭載する際には、集電体を含めたMEA13をねじ止めや接着により固定することができる。但し、この固定方法に関して限定されるものではない。
尚、アノード32への燃料供給に関しては、液体燃料を直接供給する直液法について説明したが、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)などを介した気化供給などの方法を用いる事もできる。アノード32側への燃料供給方法に関しては、ここで示した方法のみに限定されるものではない。
上述のような燃料電池セル11を複数個配列し、集電体同士を電気的に接続することで、燃料電池スタック15が形成される。
以上説明したように、本実施の形態に係る燃料電池システム1を用いれば、空気流空間27からの排ガスを、気流発生部100を介して再度空気流空間27へ送り込む事で、比較的乾燥し易く冷却され易い位置の燃料電池セルを加温、加湿することができる。即ち、燃料電池セル11間の発電環境が、温度、湿度の点で均一化される。
その結果、カソード生成水や、MEAを通じた燃料揮発を抑制することができるので、投じた燃料あたりの発電効率が増大する。また、加温によって、燃料電池スタック15の温度を上げて出力させることもできる。更には、ダクト80を通じて、燃料成分の回収も可能となる。
この時、排ガスの循環経路途中に気流発生部100を配置しているので、気流発生部100が気流を発生させるために必要なエネルギーは僅かで済む。よって、低消費電力で排ガスの再利用を行う事ができる。
また、気流発生部100を燃料電池スタック15の平面方向に配置させた場合には、厚み方向に対する省スペース化にもなるので、携帯機器用の電源として有利である。
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システム1について説明する。図9は、本実施の形態に係る燃料電池システム1の構成を示す図である。第1の実施形態と比較して、ダクト80が設けられていない点、空気流空間27内に仕切り26が設けられている点で異なっている。尚、燃料電池セル11の構成などは第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
仕切り26は、2列×3行に配置された燃料電池セル11の列間を分割するように設けられている。仕切り26によって、空気流空間27は、第1の空気流空間27Aと、第2の空気流空間27Bとに分割されている。
仕切り26は、気流の流れを整流することのできる材料である。すなわち、仕切り26によって、第1の空気流空間27Aと第2の空気流空間27Bとでは空気流が分別される。これにより、第1の空気流空間27Aと第2の空気流空間27Bとは、夫々独立したスタック吸気開放部24A、Bと、スタック排気開放部25A、Bとを有している。即ち、一の開放部が、仕切り26により、スタック吸気開放部24Aとスタック排気開放部25Bに分割され、他の開放部がスタック排気開放部25Aとスタック吸気開放部24Bとに分割されている。
仕切り26としては、空気流をある程度分別することができれば、完全に分別させる必要はない。このような素材としては、発泡ウレタン素材などを挙げることができる。仕切り26が通気性を持つ場合、仕切り26を介して燃料電池セル26の列間で熱交換を行うことができるので、燃料電池スタック15の温度分布が均一化される。
気流発生部100は、スタック排気開放部25Aで燃料電池スタック15に隣接するように配置されている。気流発生部100は燃料電池スタック15と同一平面上に設けられている。気流発生部100は、第1の実施形態のそれに対して、ファンカバー排気口54と、ファン排気口56(図9では図示されていない)とが設けられている向きにおいて変更されている。本実施の形態では、ファンカバー排気口54およびファン排気口56は、ファンカバー吸気口53の向きと直交する方向を向くように設けられている。即ち、第1の空気流空間27Aを流れてきた排ガスは、空気流発生部100において、流れの向きが平面方向で90°変化する。
ファンカバー排気口54とスタック吸気開放部24Bとの間は、接続部材が設けられることにより、閉じられた空間となっている。その閉じられた空間を介して、気流発生部100は、排気側でスタック吸気開放部24Bと連通している。
尚、空気流空間や、閉じられた空間の上部(厚み方向側)は、蓋70によって覆われている。
この図9中において、矢印は気流の流れる方向(送風経路90)を示している。気流発生部100が駆動すると、スタック吸気開放部24Aから第1の空気流空間27A内に空気が供給される。第1の空気流空間27Aからの排ガスは、気流発生部100及びスタック吸気開放部24Bを介して、第2の空気流空間27Bへ供給される。第2の空気流空間27Bを流れたガスは、スタック排気開放部25Bを介して外部へ排出される。
本実施の形態に依れば、第2の空気流空間27Bのスタック吸気開放部24B近傍の燃料電池セル11では、第1の空気流空間27Aで加湿されて加温された排ガスが供給されてくるので、乾燥や冷却を防ぐ事ができる。
また、厚み方向にダクト80を有していないので、第1の実施形態と比較して、更に厚み方向に対するスペースを省略することが出きる。よって、省スペース化の要求される携帯機器用の電源として、更に有利である。
尚、本実施の形態では、気流発生部100とスタック吸気開放部24Bとの間の空間は閉じられているとして説明したが、必要に応じて、新鮮な空気(酸素を多量に含む空気)を取り入れるために、一部を開口させて外部から空気が流入させる構成としてもよい。第1の空気流空間27Aからの排ガスの少なくとも一部が第2の空気流空間27Bへ供給されれば、第2の空気流空間27Bの上流側において加温、加湿効果を得る事ができる。
(実施例の説明)
以下、本発明を具体例を挙げて説明するために、本発明者らによって行われた実験結果を実施例として、比較例と比較しつつ説明する。
(実施例1)
実施例1に用いた燃料電池システムは、図1に示された構成のものである。燃料電池セルの構造について以下に説明する。先ず、炭素粒子(ライオン社製のケッチェンブラックEC600JD)に粒子径が3〜5nmの範囲内にある白金微粒子を重量比で50%担持させた触媒担持炭素微粒子を用意した。この触媒担持炭素微粒子1gにデュポン社製の5重量%ナフィオン溶液(商品名;DE521、「ナフィオン」はデュポン社の登録商標)を加え、攪拌して、カソード形成用の触媒ペーストを得た。この触媒ペーストを基材としてのカーボンペーパー(東レ社製のTGP−H−120)上に1〜8mg/cmの塗工量で塗布し、乾燥させて、4cm×4cmのカソード31を作製した。一方、白金微粒子に代えて粒子径が3〜5nmの範囲内にある白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金微粒子(Ruの割合は50at%)を用いた以外は上記カソード形成用の触媒ペーストを得る条件と同じにして、アノード形成用の触媒ペーストを得た。この触媒ペーストを用いた以外は上記カソードの作製条件と同じ条件で、アノード32を作製した。
次に、デュポン社製のナフィオン117(数平均分子量は250000)からなる8cm×8cm×厚さ180μmの膜を固体高分子電解質膜33として用意した。この膜の厚さ方向の一方の面に上記カソード31をカーボンペーパーが外側となる向きで配置した。他の面に上記アノード32をカーボンペーパーが外側となる向きで配置した。そして、各カーボンペーパーの外側からホットプレスした。これによりカソード31及びアノード32が固体高分子電解質膜33に接合したMEA(電極−電解質膜接合体)13が得られた。
次に、カソード31とアノード32の上に、ステンレス鋼(SUS316)からなる外寸法6×6cm、厚さ1mm、幅11mmの矩形枠状の枠板からなる集電体41,42を配置した。なお、固体高分子電解質膜33とアノード集電体42との間に、シリコンゴム製の外寸法6×6cm、厚さ0.3mm、幅10mmの矩形枠状の枠板からなるシール部材43を配置した。また、固体高分子電解質33とカソード集電体41との間などに、その他のシール部材として、シリコンゴム製の外寸法6×6cm、厚さ0.3mm、幅10mmの矩形枠状の枠板からなるシール部材43を配置した。集電体41,42の外にはみ出した固体高分子電解質膜33は切断した。
燃料電池システム1を構成するフレーム10として、外寸19.5cm×14.5cm×厚さ1cmのアクリル製のものを用意した。フレーム10内部には、燃料電池セル11を2列×3行で並べられるように、6個の凹部を燃料電池タンク部12として形成させた。燃料が、スタック燃料インレット21から供給され、全ての燃料電池セル11に燃料を通過した後、スタック燃料アウトレット22から排出させるような流路構造とした。各燃料タンク部12は、内寸法4×4cm、深さ5mmの容器であり、燃料タンク部12の内部には、燃料保持材として、ウレタン素材からなるウィッキング材60を挿入した。
MEA13、カソード集電体41、アノード集電体42、シール部材43を、上記の燃料タンク部12に配置し、所定数のネジによりネジ止めして一体化し、実施例1に係る燃料電池セル11および燃料電池セル12の集合体である燃料電池スタック15を得た。
電気的には、隣接する燃料電池セル11の集電体を介して直列接続した。図1において、左下に位置する燃料電池セルからマイナスの端子152、右下に位置する燃料電池セルからプラスの端子151を取り出した。
上記のようにして形成させた燃料電池スタック15を、底面が厚さ1mm×奥行き20cm×幅15cmのアルミニウム製の筐体14に載置した。アルミニウム製の筐体14表面は、ポリプロピレン製粘着シートを貼り、絶縁した。短辺方向の両脇は、図1に示したように折り曲げて衝立となっており、燃料電池スタックの上面は、蓋70で被覆した。
燃料電池スタック15を、筐体14および蓋70で被覆することによって、燃料電池スタックの上下には開放部分が形成される。この開放部分においては、カソード31と蓋70の距離は1.2mm程度であった。このように形成させた開放部分、すなわち空気流空間27の一方から空気を導入し、他方から排出することによって、燃料電池セル11のカソード31面上に空気流を形成できるようにした。また、小型のファン51を用い、ファン吸気口55とファン排気口56の二つの開放部をもつファンカバー52で覆うことで、空気流を整流できる様にした。
ファンカバー52と蓋70の上面部分のつなぎ目には段差が無いようにした。また、そのつなぎ目には気密するためにプラスチックテープを貼った。そして、図1断面図に示したように、ダクト80を、ファンカバー52および蓋70の上に設置した。ダクト側壁82としては、厚さ0.5mmのウレタン材を幅1mmで裁断し、気密性を持たせた。二つあるガイド81は、それぞれファンカバー排気口54およびスタック吸気開放部24に接続した。ガイド81は、図1(DD’断面図)のように円弧状に丸めており、その側面はテープで塞いだ。
以上のように、新鮮な空気がガイド81を割り当てていないスタック吸気開放部24から吸気され、カソード31を通過したカソード排気は、ダクト80を通じて再供給される構造とした。
(実施例2)
実施例2で用いた燃料電池セルの構造について以下に説明する。MEAの作製方法および構造は実施例1と同様であり、燃料電池スタック15の構造も実施例1と同様である。その他の条件も、後述で触れない限り同様である。
実施例2に関しては、ダクト側壁82の一部に開放部分を設けた。具体的には、ダクト80の長さを3分割する箇所で、片側2箇所ずつ、計4箇所の隙間を設けた。隙間の幅は、2mmとした。
(実施例3)
実施例3で用いた燃料電池セルの構造について以下に説明する。MEAの作製方法および構造は実施例1と同様であり、燃料電池スタック15の構造も実施例1と同様である。その他の条件も、後述で触れない限り同様である。
実施例3に関しては、図7に示したように、ダクト80の中央部分にファン51を設置した。このような構造の場合、空気流空間29を流れる空気の速さが遅くなるため、発電時の風量を、実施例1および実施例2の1.5倍にした。
(実施例4)
実施例4で用いた燃料電池セルの構造について以下に説明する。MEAの作製方法および構造は実施例1と同様であり、燃料電池スタック15の構造も実施例1と同様である。その他の条件も、後述で触れない限り同様である。本実施例では、筐体14の構造を以下の様に工夫した。
実施例4に関しては、図9に示したように、2列からなる燃料電池セル11の右側列の後方にファン51を設置した。右側列と左側列の間には、空気流を仕切るための仕切26を設けた。ファン51による排気を、送風方向と垂直にして、左側の列に送風されるようにした。そのため、発電時においては、右側列には外気がそのまま送風され、左側列には右側列のカソード排気が送風される。
(比較例1)
比較例1で用いた燃料電池セルの構造について以下に説明する。MEAの作製方法および構造は実施例1と同様であり、燃料電池スタック15の構造も実施例1と同様である。その他の条件も、後述で触れない限り同様である。
比較例1に関しては、図10のように、ダクト80のない通常の送風方法とした。そのため、スタック吸気開放部24には、常に外気が取り込まれ、カソード排気はそのままスタック排気開放部25、ファン51を通じて外気に放出される。
(実験結果)
実施例1〜4および比較例1について、以下のような発電試験を行った。10vol%メタノール水溶液1000mLを10mL/minの流速で各燃料電池スタック15に循環供給させ、25℃、50%の大気環境にて、100mA/cmの電流密度に相当する電流値で3時間発電試験を行った。そのときの電圧の変化を0.5、1、2、3時間ごとにモニターした。図11は、各条件における結果を示している。
比較例1においては、終始安定して発電していたものの、空気流の上流にあたるMEA13が外気で冷やされやすく、また、カソード31の湿度が低く、乾燥気味であったため、実施例1〜4に比較すると電圧が低かった。また、カソード排気はそのまま外気に排出されたため、燃料利用率は10.0g/hであり、後述の実施例と比較すると劣っていた。
実施例1では、カソード31を通過することによって暖められた高湿度のカソード排気が、そのまま再供給されるため、空気流の上流に位置するMEA13の温度が十分にあがり、かつ適度な湿度となったため、全体的に電圧が高くなった。燃料利用率に関しても、空気流空間29の湿度が十分に高くなったため、カソード生成水蒸発およびMEA13を通じた燃料成分の揮発が抑制でき、投じた燃料が無駄なく消費できた。
実施例2に関しては、傾向としては実施例1と同様の結果となったが、ダクト側壁82に隙間があいているため、温度上昇が抑制され、実施例1と比較して電圧自体はやや低くなった。但し、空気流空間29の水分の絶対量が減ったため、筐体14内部における結露が抑制され、2時間から3時間にかけての電圧の低下が起こらなかった。また、比較例1と比較すると、燃料利用率は、比較例1と比較すると良好な値(少ない値)を示したが、実施例1よりはやや劣っていた。実施例1と比較して劣るのは、ダクト側壁82に隙間を設けたので、カソード排気が外気中に排出され易くなった為であると考えられる。
実施例3では、ほとんど実施例1と同じ結果であった。但し、2時間から3時間の間で、若干の電圧低下が見られた。これは、ファン51が直接に送風する構造ではないために、若干の結露が起こった為であると考えられる。燃料利用効率に関しては、カソード排気を循環させているため、実施例1とほぼ同様の値を得た。
実施例4では、発電の初期に、空気流の上流でやや乾燥気味であったが、発電の継続に伴って発電に適した湿度条件となった。そのため、電圧は1時間以降では安定した電圧を得ることができた。ただし、発電の継続に伴って、ファン51よりも下流部分で結露が多くなったため、全体的には電圧が高かったものの、2時間から3時間にかけて電圧が低下した。燃料利用効率は、カソード排気を循環させないため、実施例1と比較するとやや劣る値であったが、比較例1と比べると十分によい値であった。
このように、実施例1〜4に示した本発明の方法を用いると、カソード31における乾燥が低減され、また、スタック温度も高くなるため、全体的な出力が高くなる。そのため、必要な電圧をより低い電流値で得ることができ、さらには、カソード生成水の揮発やMEAを通じた燃料揮発も抑制されるため、投じた燃料あたりの発電時間が向上する。その結果、従来方法よりも安定した発電を、長時間継続することが可能となる。この方法は、平面スタック型燃料電池のように、高い消費電力を必要とする燃料電池スタックにおいて有効であり、PCなどの比較的高出力を必要とする携帯機器への燃料電池搭載を可能とする。

Claims (6)

  1. 同一平面上に複数の燃料電池セルが配置された燃料電池スタックと、
    前記燃料電池スタックの片面を空気流空間を介して被覆する筐体と、
    前記空気流空間内に空気流を形成させる空気流発生部と、
    前記空気流空間から排出された排ガスが、前記空気流発生部を介して再び前記空気流空間に導入されるように設けられた送風経路と、
    を具備する
    燃料電池システム。
  2. 請求1に記載された燃料電池システムであって、
    前記空気流空間は、スタック吸気開放部と、スタック排気開放部とにおいて開放されており、
    前記送風経路は、前記スタック排気開放部を、前記空気流発生部を介して、前記スタック吸気開放部の少なくとも一部分に連通させるように設けられ、
    前記空気流空間は、前記スタック吸気開放部の一部で前記送風経路に連通し、前記スタック吸気開放部の他の部分で外部と連通しており、
    前記スタック排気開放部からの排ガスと、外部の空気とが前記スタック吸気開放部から前記空気流空間へと供給される
    燃料電池システム。
  3. 請求1又は2に記載された燃料電池システムであって、
    前記空気流発生部は、ファンを有している
    燃料電池システム。
  4. 請求項3に記載された燃料電池システムであって、
    前記ファンは、前記燃料電池スタックの平面方向に、前記燃料電池スタックと平行に配置されている
    燃料電池システム。
  5. 請求1に記載された燃料電池システムであって、
    前記複数の燃料電池セルは、複数の列を有するように配置され、
    前記空気流空間は、前記複数の列の間において、空気流を整流する仕切りによって分割され、
    前記送風経路は、前記複数の列のうちの一の列から排気された排ガスが、前記空気流発生部を介して、前記複数の列の内の他の列に供給されるように設けられている
    燃料電池システム。
  6. 請求5に記載された燃料電池システムであって、
    前記空気流発生部は、ファンを有し、
    前記空気流発生部、前記燃料電池スタック、及び前記送風経路は同一平面上に配置され、
    前記空気流発生部、前記燃料電池スタック、及び前記送風経路は、単一の前記筐体に納められ、
    前記空気流空間は、前記一の列において前記空気流発生部の吸気側に連通し、前記他の列において、前記空気流発生部の排気側に連通している
    燃料電池システム。
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