JP5145526B2 - 刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体 - Google Patents

刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体 Download PDF

Info

Publication number
JP5145526B2
JP5145526B2 JP2008130783A JP2008130783A JP5145526B2 JP 5145526 B2 JP5145526 B2 JP 5145526B2 JP 2008130783 A JP2008130783 A JP 2008130783A JP 2008130783 A JP2008130783 A JP 2008130783A JP 5145526 B2 JP5145526 B2 JP 5145526B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
stimulus
noble metal
magnetic fine
responsive
fine particle
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008130783A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009281728A (ja
Inventor
孝夫 山本
徳幸 大西
智史 清野
貴 中川
健史 土井
卓也 木下
朋子 高野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JNC Corp
Osaka University NUC
Original Assignee
JNC Corp
Osaka University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JNC Corp, Osaka University NUC filed Critical JNC Corp
Priority to JP2008130783A priority Critical patent/JP5145526B2/ja
Publication of JP2009281728A publication Critical patent/JP2009281728A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5145526B2 publication Critical patent/JP5145526B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Hard Magnetic Materials (AREA)
  • Compounds Of Iron (AREA)

Description

本発明は、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体、及び該刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を使用した被検物質の捕集方法に関する。
粒子径が1μm以下のナノサイズの粒子(ナノ粒子)を含む微粒子は、従来、主として吸着剤、電子素子材料、触媒などの用途を期待してその研究・開発がなされてきた。現在知られているナノ粒子には、例えば金属(金、銀、銅、白金など)、半導体(CdSe、CdSなど)、磁性材料(γ−Fe、Feなど)、コロイド材料などがある。
また、特に近年、金属酸化物などの粒子表面に金属粒子を担持させた複合微粒子(複合ナノ粒子)の研究・開発が種々進められており、これらの複合ナノ粒子は、そのサイズの微小さ及び表面積の大きさから、医療・診断分野、バイオテクノロジー分野、環境関連分野などへの応用が期待されている。
複合ナノ粒子については、これまでにも数多くの文献等で報告されており、例えば、磁性金属酸化物微粒子と貴金属ナノ粒子とからなる貴金属・磁性金属酸化物複合微粒子が挙げられる(特許文献1)。該特許文献1にはさらに、貴金属・磁性金属酸化物複合微粒子の貴金属ナノ粒子表面に官能基を付与できることが開示されており、この官能基を利用して、核酸、タンパク質、抗体、酵素、細胞、標識剤、医薬品有効成分化合物などを前記複合微粒子に化学結合させることが開示されている。
このような技術の進歩に伴い、ナノ粒子や複合ナノ粒子に化学結合した核酸やタンパク質等の目的の披検物質を、より効率良くかつ特異的に分離、捕集できる方法の開発が求められている。
ナノ粒子を利用して、目的とする物質を分離、捕集する方法は、例えばWO2002/16528号パンフレット、WO2002/16571号パンフレット、特開2005−82538号公報に開示されている。これらの文献には、温度応答性ポリマーが固定された磁性粒子が開示されており、該温度応答性ポリマーにビオチン結合させ、該ビオチンに標的タンパク質を結合させた後に温度変化による刺激を与えることにより、温度応答性ポリマーが固定された磁性粒子を凝集させ、ここから標的タンパク質を精製することが開示されている。
WO2004/083124号パンフレット WO2002/16528号パンフレット WO2002/16571号パンフレット 特開2005−82538号公報
上記従来技術を背景として、本発明は、医薬品、抗原、抗体、レセプター、ハプテン、酵素、タンパク質、ペプチド、糖、核酸、ホルモン、病原体及び毒素などの被検物質をより効率良くかつ特異的に分離、捕集できる複合体を提供することを課題の一つとする。また、本発明は、該複合体を利用して、被検物質を効率良くかつ特異的に分離、捕集できる、医療・診断分野、バイオテクノロジー分野、環境関連分野などへの利用に適した手段を提供することを課題の一つとする。
本発明者が上記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、貴金属と磁性微粒子との複合体と刺激応答性ポリマーとを官能基を介して固定させることで、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を形成させ、これに刺激応答性ポリマーに応じた好適な刺激を与えることにより、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を短時間で凝集、回収できることを見出した。本発明は上記知見に基づきさらに検討を重ねた結果完成されたものであり、下記に掲げるものである。
[1]貴金属と磁性微粒子との複合体と、刺激応答性ポリマーとが官能基を介して固定されてなる、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体。
[2]貴金属と磁性微粒子との複合体が、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム及びレニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と、γ−Fe及びFeからなる群から選ばれる少なくとも1種の磁性微粒子とからなる、前記[1]項記載の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体。
[3]刺激応答性ポリマーが、温度応答性ポリマーである、前記[1]項または前記[2]項記載の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体。
[4]温度応答性ポリマーが、下限臨界溶液温度を有するポリマーまたは上限臨界溶液温度を有するポリマーである、前記[3]項記載の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体と、リンカー分子との結合物であり、該リンカー分子は上記複合体を構成する貴金属と結合しており、かつ被検物質と結合可能な官能基及び/または親和性部位を有している、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体とリンカー分子との結合物。
[6]前記[5]項記載の結合物を含む、医薬品、抗原、抗体、レセプター、ハプテン、酵素、タンパク質、ペプチド、糖、核酸、ホルモン、病原体及び毒素からなる群より選択される被検物質の分析試薬。
[7]前記[5]項記載の結合物を構成するリンカー分子と被検物質とを結合させる工程、及び、該結合物を構成している刺激応答性ポリマーに適した刺激を与えることにより、前記結合物を凝集させる工程、を含む、被検物質の捕集方法。
[8]被検物質が、医薬品、抗原、抗体、レセプター、ハプテン、酵素、タンパク質、ペプチド、糖、核酸、ホルモン、病原体及び毒素からなる群より選ばれ、刺激応答性ポリマーに適した刺激が温度変化による刺激である、前記[7]項記載の捕集方法。
本発明によれば、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を構成している刺激応答性ポリマーに応じた刺激を刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体に適宜与えることにより、短時間で刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を回収することができる。このため、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体に、または該複合体に結合させた官能基に、あるいは該複合体に結合させたリンカー分子に、核酸、糖、ペプチド、タンパク質等の被検物質を結合させ、その後に上記複合体を構成している刺激応答性ポリマーに応じた刺激を好適に与えることにより、被検物質が結合した刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を従来より短時間かつ効率良く、分離、回収することができる。
以下、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体及び該複合体を利用した被検物質の分離・捕集方法について説明する。
1.本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体
本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体は、貴金属と、磁性微粒子と、刺激応答性ポリマーを含む。該刺激応答性ポリマーは、貴金属に固定されていてもよく、磁性微粒子に固定されていてもよく、また貴金属及び磁性微粒子の両者に固定されていてもよい。
刺激応答性ポリマーの貴金属への固定方法は限定されず、当該分野で公知の方法で行うことができる。例えば、官能基を介して刺激応答性ポリマーと貴金属とを固定することができる。官能基としては貴金属に結合可能な官能基であれば限定されず、チオール、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、イミノ、エーテル結合(エーテル)、カルボン酸残基(カルボキシラート)、リン酸残基、スルフィド残基などの基が例示される。当該官能基として好ましくはチオール及びアミノであり、さらに好ましくはチオールである。当該官能基を、刺激応答性ポリマーと貴金属のいずれが有していてもよいが、好ましくは刺激応答性ポリマーに官能基が導入されていることである。
刺激応答性ポリマーへの官能基の導入は、当該分野で公知の方法で行うことができる。導入する方法としては、例えば、重合後に刺激応答性を発現する、重合可能な単量体(例えばN−イソプロピルアクリルアミドなどのモノマー)と、官能基を有する重合可能な単量体(例えばアクリル酸などのモノマー)とを共重合する方法や、官能基を有する連鎖移動剤を用いて刺激応答性を発現する重合可能な単量体を重合する方法が挙げられる。
貴金属への官能基の導入は、当該分野で公知の方法で行うことができる。導入する方法としては、例えば、貴金属に結合可能な官能基を一つ以上とそれ以外の官能基を構造単位に有する化合物を貴金属に固定化する方法が挙げられる。
このような官能基であれば、刺激応答性ポリマーと貴金属とを溶液中で混合するだけで、該官能基を介して刺激応答性ポリマーを貴金属に固定することができる。
前記溶液、また前記溶液中での混合温度及び混合時間も限定されず、使用する刺激応答性ポリマー、貴金属及び官能基の種類に応じて適宜変更すればよい。溶液としては、イオン交換水、緩衝液、生理食塩水などが例示される。混合温度としては、例えば、温度応答性ポリマーを用いる場合には、用いるポリマー特有の凝集温度条件に合わせる必要があり、下限臨界溶液温度を有するポリマーでは、ポリマーの凝集温度未満、上限臨界溶液温度を有するポリマーでは、凝集温度を上回る温度で分散させた状態で反応させるのが好ましい。また、刺激応答性ポリマーが貴金属に固定されたかどうかについての確認方法も限定されない。例えば、貴金属はその表面プラズモン吸収が可視領域にある。このため、遠心分離やろ過などで貴金属・ポリマー複合体と、固定化されていない上清のフリーの刺激応答性ポリマーとを分離した後、刺激応答性ポリマーに適した刺激を与えた後に該プラズモン観測を行うことにより、貴金属の凝集が認められれば、刺激応答性ポリマーが貴金属に固定されていると判断される。
刺激応答性ポリマーの磁性微粒子への固定方法は、官能基を介して固定されていれば限定されず、当該分野で公知の方法で行うことができる。
例えば、特開2005−82538号公報に記載の方法に従って行うことができる。例えば、多価アルコールまたは多価アルコール誘導体(以下、「多価アルコール類」と略すことがある。)を介して刺激応答性ポリマーと磁性微粒子とを固定することができる。この場合、例えば磁性微粒子の表面に固定された多価アルコール類に、刺激応答性ポリマーをグラフト重合させることができる。また、例えば刺激応答性ポリマーとグラフト重合された多価アルコール類に、磁性微粒子を結合させることができる。このように、本発明においては、「官能基を介して固定」するとは、官能基そのものを介して固定するだけでなく、官能基を有する物質、例えば、多価アルコール類を用いる場合、多価アルコール構造中の水酸基を介して固定してもよい。また、官能基を介して刺激応答性ポリマーにグラフト重合された多価アルコール類に、磁性微粒子を結合させることができる。また、磁性微粒子の表面に固定された多価アルコール類に、刺激応答性ポリマーの側鎖または末端に導入された官能基を結合させることができる。
上記方法の手順としては、例えば特開2005−82538号に記載の方法に従うと、以下のものが例示される。
方法1
1)多価アルコール類を磁性微粒子の表面に固定するか、または多価アルコール類の溶液中で磁性微粒子を調製する。
2)刺激応答性ポリマーが得られる単量体と、前記多価アルコール類が固定された磁性微粒子とを混合し、グラフト重合を行う。
3)重合未反応物を除去し、刺激応答性ポリマーが固定された磁性微粒子を分離する。
方法2
1)多価アルコール類と刺激応答性ポリマーが得られる単量体とを混合してグラフト重合を行う。
2)刺激応答性ポリマーが固定された多価アルコール類の溶液中で磁性微粒子を調製する。
3)多価アルコール類の未反応物を除去し、刺激応答性ポリマーが固定された磁性微粒子を分離する。
方法3
1)多価アルコール類と刺激応答性ポリマーが得られる単量体とを混合して、刺激応答性ポリマー上の官能基を介してグラフト重合を行う。
2)刺激応答性ポリマーが固定された多価アルコール類の溶液中で磁性微粒子を調製する。
3)多価アルコール類の未反応物を除去し、刺激応答性ポリマーが固定された磁性微粒子を分離する。
方法4
1)多価アルコール類を磁性微粒子の表面に固定するか、または多価アルコール類の溶液中で磁性微粒子を調製する。
2)刺激応答性ポリマーの末端またはポリマー側鎖に反応性の官能基を導入したポリマーを調製し、精製する。
3)磁性微粒子の表面に固定された多価アルコール類と、刺激応答性ポリマーに導入された官能基とをグラフト重合等により結合させる。
4)未結合ポリマーを除去し、刺激応答性ポリマー固定化磁性微粒子を分離する。
上記グラフト重合は、当該分野で公知の方法で行うことができる。例えば、グラフト重合は、特開2005−82538号公報に記載されているように、多価アルコール上の活性水素により、または多価アルコールに導入された反応性の官能基、または重合性の官能基により行うことができる。
前記多価アルコールとしては少なくとも上記方法のように刺激応答性ポリマーと磁性微粒子とを固定できるものであれば限定されず、デキストラン、ポリビニルアルコール、マンニトール、ソルビトールなどが例示される。また、前記多価アルコールとして、グリシジルメタクリレート重合体のようにエポキシを有し、開環後多価アルコール構造体を形成する化合物も例示される。
また、前記多価アルコール誘導体も少なくとも上記方法により刺激応答性ポリマーと磁性微粒子とを固定できるものであれば限定されず、修飾により、多価アルコールにカルボキシル、アミノ、エポキシ、チオール、メタクリルまたはアクリル等の反応性官能基や重合性基が導入されたものが例示される。
前記磁性微粒子と多価アルコール類との結合は、当該分野で公知の方法で行うことができる。例えば、特開2005−82538号公報に記載されているように、米国特許第4452773号に記載されている方法に従い、すなわちデキストラン50重量%水溶液(10ml)中に、塩化第二鉄・六水和物(1.51g)及び塩化第一鉄・四水和物(0.64g)混合水溶液(10ml)を加えて攪拌し、60〜65℃の水浴中で、7.4(V/V)%アンモニア水溶液をpH10〜11程度になるように滴下しながら加熱し、15分反応させることにより得ることができる。また、前記磁性微粒子と多価アルコール類との結合は、デキストランに代えてポリビニルアルコール等を用いても同様に行うことができる。
刺激応答性ポリマーへの官能基の導入は、前述と同様に行うことができる。
また、刺激応答性ポリマーの磁性微粒子への固定は、カップリング剤などにより磁性微粒子表面に導入された官能基と、刺激応答性ポリマーに導入された、前記官能基に対応する官能基とを結合させることにより行うこともできる。カップリング剤としてはシランカップリング剤が例示でき、これらにより導入される官能基としては、カルボキシル、アミノ、エポキシ、シラノールなどの基が例示される。
磁性微粒子表面に導入された官能基と、刺激応答性ポリマーに導入された官能基との結合方法は限定されず、例えば縮合剤などを使用する一般的な結合方法により行うことができる。
また、この場合、刺激応答性ポリマーが磁性微粒子に固定されたかどうかについての確認方法も限定されないが、例えば、前述と同様に、刺激応答性ポリマーと磁性微粒子とを固定させた後、遠心分離やろ過などで磁性微粒子・ポリマー複合体と、固定化されていない上清のフリーの刺激応答性ポリマーを分離した後、刺激応答性が確認(磁気回収の可否)できれば、刺激応答性ポリマーが磁性微粒子に固定できたと判断される。
刺激応答性ポリマーを貴金属及び磁性微粒子の両者に固定させる場合、その方法は刺激応答性ポリマーをこれらに結合させることができる限り限定されないが、例えば貴金属と磁性微粒子表面の両方に結合可能な官能基をポリマーに導入することにより、これら両方にポリマーを結合させることが可能である。あるいは、貴金属及び磁性微粒子に導入した官能基の両方に結合可能な官能基をポリマーに導入することにより、これら両方にポリマーを結合させることが可能である。例えば、ポリマーにチオールやアミノを導入し、これを貴金属及びマレイミドやエポキシを導入した磁性微粒子に結合させることにより、刺激応答性ポリマーを貴金属及び磁性微粒子の両者に固定させることが可能である。
この場合も、刺激応答性ポリマーが、貴金属及び磁性微粒子に固定されたかどうかについての確認方法は限定されない。例えば、前述と同様に、刺激応答性ポリマーと貴金属及び磁性微粒子とを固定させた後、遠心分離やろ過などで固定化されていない上清のフリーの刺激応答性ポリマーを分離した後、刺激応答性が確認(磁気回収の可否)できれば、刺激応答性ポリマーが磁性微粒子に固定できたと判断される。また、別の方法としては、前述と同様に、刺激応答性ポリマーと貴金属及び磁性微粒子とを固定させた後、遠心分離やろ過などで固定化されていない上清のフリーの刺激応答性ポリマーを分離した後、刺激応答性ポリマーに適した刺激を与えた後に該プラズモン観測を行うことにより、貴金属の凝集が認められれば、刺激応答性ポリマーが貴金属に固定されていると判断される。この場合、これらの方法を併用して、貴金属及び磁性微粒子に刺激応答性ポリマーが固定されたかどうかを確認してもよい。
本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体は、貴金属と磁性微粒子とを結合させた後に、これに刺激応答性ポリマーを固定させることにより作製してもよく、また刺激応答性ポリマーを磁性微粒子に固定させた後に、これに貴金属を固定させることにより作製してもよく、さらには刺激応答性ポリマーを貴金属に固定させた後に、これに磁性微粒子を固定させることにより作製してもよい。本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体は、好ましくは貴金属と磁性微粒子とを結合させた後に、刺激応答性ポリマーを固定させることにより作製されるか、刺激応答性ポリマーを磁性微粒子に固定させた後に、貴金属を固定させることにより作製され、さらに好ましくは、貴金属と磁性微粒子とを結合させた後に、刺激応答性ポリマーを固定させることにより作製される。
本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を、貴金属と磁性微粒子とを結合させた後に、刺激応答性ポリマーを固定させることにより作製する場合、貴金属と磁性微粒子との結合は、当業者に公知の種々の方法により行うことができる。例えば、WO2004/083124に記載の方法により得ることができる。具体的には、WO2004/083124に従うと、貴金属と磁性微粒子との結合は、貴金属イオンまたは貴金属錯体を含有する液に磁性微粒子を分散させるか、または該磁性微粒子を与える金属イオンを該液に添加し、次いで得られる液に超音波または電離放射線を照射することにより行うことができる。
貴金属と磁性微粒子との複合体に刺激応答性ポリマーを結合させる方法は限定されず、前述の方法に従い行うことができる。例えば刺激応答性ポリマーの末端またはポリマー側鎖に反応性の官能基を導入し、当該官能基を介して刺激応答性ポリマーを複合体に結合させることにより行うことができる。当該官能基としては前記貴金属と磁性微粒子との複合体に結合可能な官能基であれば限定されず、チオール、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、イミノ、エーテル結合(エーテル)、カルボン酸残基(カルボキシラート)、リン酸残基、スルフィド残基などの基が例示される。官能基として好ましくはチオール及びアミノであり、さらに好ましくはチオールである。また、貴金属と磁性微粒子との複合体に刺激応答性ポリマーを結合させるにあたり、前述の通り、多価アルコール類、シランカップリング剤等を用いてもよい。
また、貴金属と磁性微粒子との複合体に刺激応答性ポリマーが結合されたかどうかの確認方法についても限定されないが、例えば、前述と同様に、貴金属と磁性微粒子との複合体と刺激応答性ポリマーとを結合させて刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を形成させた後、遠心分離やろ過などで結合されていない上清のフリーの刺激応答性ポリマーを分離した後、刺激応答性が確認(磁気回収の可否)できれば、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体が形成されている、すなわち貴金属と磁性微粒子との複合体に刺激応答性ポリマーが結合されていると判断される。
また、前述の通り、貴金属はその表面プラズモン吸収が可視領域にあり、前記刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体は貴金属を含有しているため、刺激応答性ポリマーに適した刺激を与えた後に該プラズモン観測を行うことにより、貴金属の凝集が認められれば、貴金属と磁性微粒子との複合体に刺激応答性ポリマーが結合されていると判断される。
また、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を、刺激応答性ポリマーを磁性微粒子に固定させた後に、貴金属を固定させることにより作製する場合も、刺激応答性ポリマーの磁性微粒子への固定化は、前述のように行うことができる。刺激応答性ポリマーが固定された磁性微粒子への貴金属の結合は当業者に公知の種々の方法により行うことができる。例えば、刺激応答性ポリマーが固定された磁性微粒子と貴金属とを混合して、γ線を照射することにより、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を作製することもできる。
また、この場合、刺激応答性ポリマーが固定された磁性微粒子として、マグナビート株式会社から発売されている温度応答性磁性ナノ粒子、Therma−Max(登録商標)を利用することもできる。
この場合も、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体が形成されたかどうかについての確認方法は限定されず、例えば、前述と同様に、刺激応答性の確認(磁気回収の可否)を行うことにより、またプラズモン観測を行い貴金属の凝集を確認することにより、刺激応答性ポリマーが固定された磁性微粒子に貴金属が結合されているか否かを判断することができる。
また、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を、刺激応答性ポリマーを貴金属に固定させた後に、磁性微粒子を固定させることにより作製する場合、刺激応答性ポリマーの貴金属への固定化は、前述のように行うことができる。刺激応答性ポリマーが固定された貴金属への磁性微粒子の結合は当業者に公知の種々の方法により行うことができる。例えば、上述と同様に、刺激応答性ポリマーが固定された貴金属と磁性微粒子とを混合して、γ線を照射することにより、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を作製することもできる。
この場合も、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体が形成されたかどうかについての確認方法は限定されず、例えば、前述と同様に、刺激応答性の確認(磁気回収の可否)を行うことにより、またプラズモン観測を行い貴金属の凝集を確認することにより、刺激応答性ポリマーが固定された貴金属に磁性微粒子が結合されているか否かを判断することができる。
2.貴金属
本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を構成する貴金属としては、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム及びレニウムが挙げられる。該貴金属としては金及び銀が好ましく、金がさらに好ましい。これらの貴金属は、その表面プラズモン吸収が可視領域にあり、これを有する本発明の複合体は、該プラズモン観測によってその存在の有無、凝集の程度を容易に確認できる。また、その表面プラズモン吸収スペクトルの変化を測定することにより、例えば、これらの貴金属を有する本発明の複合体の表面に被検物質が結合したかどうか、またその結合の程度を、より容易に確認できる。
本発明に利用する貴金属は主に粒子の形態で磁性微粒子表面に接合乃至担持している。この場合、貴金属の大きさは使用目的に応じて適宜変更されることから制限されないが、平均粒子径1〜500nmが例示でき、より好ましくは平均粒子径1〜100nm程度である。
3.磁性微粒子
本発明において用いられる磁性微粒子は、磁性を有する限り限定されない。該磁性微粒子としては、例えば磁性金属酸化物粒子が挙げられ、酸化鉄(磁鉱、マグヘマイト、フェライトなどのFeを主成分とする磁性酸化物など)の微粒子が例示できる。該磁性微粒子としては、好ましくは、γ−Fe、Feなどが例示できる。その他の金属の酸化物、例えばコバルト、ニッケルなどの酸化物、これらの金属の金属間化合物またはこれらの金属と鉄との金属間化合物(例えばCoPt、FePtなど)の酸化物、またはこれら各金属の合金(例えばCo/Ni、Co/Fe、Ni/Feなどの2元合金、Co/Fe/Niなどの3元合金など)の酸化物も、本発明における磁性微粒子として利用することができる。また、炭素鋼、タングステン鋼、KS鋼及び希土類コバルト磁石なども例示される。
本発明に利用する磁性微粒子の大きさは、使用目的に応じて適宜変更されることから制限されないが、平均粒子径1nm〜1μmが例示できる。該磁性微粒子の大きさは、好ましくは平均粒子径1〜500nm程度、より好ましくは1〜200nm程度、さらに好ましくは1〜100nm程度を挙げることができる。
4.貴金属と磁性微粒子の大きさの関係
貴金属と磁性微粒子の大きさの関係は、貴金属の平均粒子径をA、磁性微粒子の平均粒子径をBとしたとき、好ましくは0.001<A/B<500、より好ましくは0.001<A/B<100、さらに好ましくは0.1<A/B<10と表すことができるが、これらの関係は磁気回収の際に使用される磁気の強さにも依存する。例えば、磁気回収の際に使用される磁気の強さが弱い場合には、磁性微粒子の比率が小さくなりすぎると磁気回収の効率が落ちる。この点から、貴金属と磁性微粒子の大きさの関係は、使用される磁気の強さに応じて適宜変更される。
5.刺激応答性ポリマー
本発明において使用できる刺激応答性ポリマーとしては、温度変化、pH変化、塩濃度変化、光、電気等の刺激に応答するポリマーが例示される。刺激応答性ポリマーとして好ましくは、温度変化の刺激に応答するポリマー、すなわち温度応答性ポリマーである。前記温度応答性ポリマーは、下限臨界溶液温度を有するポリマーと上限臨界溶液温度を有するポリマーとに分類できる。
下限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、以下のものが例示される;
N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリン等のN置換(メタ)アクリルアミド誘導体からなるポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリビニルメチルエーテル、(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン誘導体;ポリオキシエチレンソルビタンラウレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル誘導体;(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)(メタ)アクリレート類;及び(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(メタ)アクリレート類等のポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸エステル誘導体等である。また、これらの重合体及びこれらの少なくとも2種の単量体からなるコポリマーも利用できる。これらのなかでも、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリンからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体からなるポリマーが好ましく利用できる。
上限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、以下のものが例示される;
アクリルアミド、アセチルアクリルアミド、ビオチノールアクリレート、N−ビオチニル−N′−メタクロイルトリメチレンアミド、アクロイルグリシンアミド、アクロイルザルコシンアミド、メタクリルザルコシンアミド、アクロイルニペコタミド及びアクロイルメチルウラシル等からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体からなるポリマーである。また、これらの少なくとも2種の単量体からなるコポリマーも利用できる。これらのなかでも、アクリルアミド、アセチルアクリルアミド、ビオチノールアクリレート、N−ビオチニル−N′−メタクロイルトリメチレンアミド、アクロイルグリシンアミド、アクロイルザルコシンアミド、メタクリルザルコシンアミド、アクロイルニペコタミド及びアクロイルメチルウラシルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく利用できる。
6.本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体への被検物質の結合
本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体には、糖、ペプチド、タンパク質、抗原、抗体、レセプター、ハプテン、酵素、細胞、核酸、ホルモン、病原体、毒素、標識剤、医薬品などの被検物質を結合させることができる。具体的には、前記複合体には直接または官能基を介して、あるいは前記被検物質に結合可能な官能基及び/または前記被検物質に対する親和性部位を含むリンカー分子を介して、被検物質を結合させることができる。ここで、該複合体への被検物質の結合とは、複合体への被検物質の特異的な結合ないし吸着を意味し、必ずしも共有結合である必要はなく、イオン的、生化学的親和性(アフィニティー)を利用した結合であってもよい。例えば、抗原と抗体の結合、酵素と基質の結合、アビジン−ビオチンなどの特異的な結合が例示できる。
前記複合体への被検物質の結合は、好ましくは、官能基を介して、あるいは前記被検物質に結合可能な官能基及び/または前記被検物質に対する親和性部位を含むリンカー分子を介して、行われる。この場合、前記複合体への被検物質の結合は、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体に官能基を結合させてこれらの結合物を得て、その後に該結合物と被検物質とを結合させることにより行われる。また、前記複合体への被検物質の結合は、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体に被検物質に結合可能な官能基及び/または前記被検物質に対する親和性部位を含むリンカー分子を結合させてこれらの結合物を得て、その後に、該結合物と被検物質とを結合させることにより行われる。より好ましくは、前記複合体への被検物質の結合は、前記被検物質に結合可能な官能基及び/または前記被検物質に対する親和性部位を含むリンカー分子を介して、行われる。
前記複合体への被検物質の結合が、前記官能基を介して、あるいは被検物質に結合可能な官能基及び/または前記被検物質に対する親和性部位を含む前記リンカー分子を介して行われる場合、前記官能基または前記リンカー分子は、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を構成する貴金属及び磁性微粒子のいずれに付与してもよく、また貴金属及び磁性微粒子の両者に付与してもよい。
前記官能基、被検物質に結合可能な官能基としては、金属と結合し得る基、具体的にはアミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、チオール(−SH)、イミノ、エーテル結合(エーテル)、カルボン酸残基(カルボキシラート)、リン酸残基、スルフィド残基などの基を例示できる。上記官能基の付与は、当業界において既に知られている任意の方法により実施できる。
例えば、前記複合体への被検物質の結合が、被検物質に結合可能な官能基を含むリンカー分子を介して行われ、その官能基として−SHを用いる場合、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体への−SHの付与は、リンカー分子として線状アルカンジチオール、グルタチオン、ホスホロチオエートなどを用いて常法に従って実施できる。
一例を挙げれば、被検物質がグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質である場合は、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体とグルタチオンを混合して刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体とグルタチオンとを結合させた後、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を磁気により捕集し、分離した残りの上澄み液を捨て、必要により水や緩衝溶液を加えて分散し、磁気により捕集することを繰り返して洗浄し、被検物質であるグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質に結合可能なリンカーであるグルタチオンを有する刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を得ることができる。
また、前記親和性部位とは、被検物質と特異的な結合ないし吸着をする成分を意味し、親和性部位における被検物質の結合は、前述のように共有結合であっても、イオン的、生化学的親和性を利用した結合であってもよい。
上記官能基やリンカー分子と、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を構成する刺激応答性ポリマーとは、いずれも貴金属表面または磁性微粒子表面、あるいは両表面に結合するものである。すなわち、該官能基またはリンカー分子と該刺激応答性ポリマーとは、これらの表面を奪い合う関係となる場合もある。従って、官能基またはリンカー分子と刺激応答性ポリマーとは、その互いの役割を妨げない程度にバランスをとって固定または付与することが好ましい。
7.本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を使用した被検物質の捕集方法
本発明は、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を用いた被検物質の捕集方法を提供する。刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体に直接被検物質を結合させる場合、本発明の被検物質の捕集方法は、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体と被検物質とを結合させる工程、及び、前記複合体を構成している刺激応答性ポリマーに適した刺激を与えることにより、前記複合体を凝集させる工程を含む。
また、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体に官能基を介して被検物質を結合させる場合、本発明の被検物質の捕集方法は、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体との結合物を構成する官能基と被検物質とを結合させる工程、及び、該結合物を構成している刺激応答性ポリマーに適した刺激を与えることにより前記複合体または結合物を凝集させる工程、を含む。
また、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体にリンカー分子を介して被検物質を結合させる場合、本発明の被検物質の捕集方法は、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体との結合物を構成するリンカー分子と被検物質とを結合させる工程、及び、該結合物を構成している刺激応答性ポリマーに適した刺激を与えることにより、前記結合物を凝集させる工程、を含む。
さらに詳細には、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を用いた被検物質の捕集は、以下のように実施することができる。
例えば、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体とリンカー分子との結合物を使用して被検物質を捕集する場合、該結合物と被検物質とを混合し、これらを結合させる。その後、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を構成している刺激応答性ポリマーに好適な刺激を与えて、被検物質が結合した刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を凝集させる。これにより、被検物質を捕集できる。その後、必要に応じて、凝集した刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体から、さらに、被検物質を分離、精製することもできる。
刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体に直接結合させて被検物質を捕集する場合、また刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体と官能基との結合物を使用して被検物質を捕集する場合も、同様にして被検物質を捕集、更に分離、精製することができる。
ここで使用される刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体、官能基、リンカー分子、また対象となる被検物質等は前述の通りである。
8.本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体の用途
本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体は、液媒に分散可能で、安定した分散状態を維持し得る。また、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体及び結合物は人体に対して安全であり、またその製造工程で有害な試薬などを利用する必要もないため、医療分野などへの適用の際の安全性に優れたものである。
このため、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体、及び該複合体とリンカー分子等との結合物は、医療・診断分野でまた、バイオテクノロジー分野、環境関連分野などの広範な各種分野においても、新しい材料としても有用である。
例えば、本発明は、本発明の複合体及び/または結合物を含む各種疾患の診断剤;各種物質(医薬品有効成分化合物、抗原、抗体、レセプター、ハプテン、酵素、タンパク質、ペプチド、糖、核酸、ホルモン、病原体、毒素など)の分析試薬;細胞などの分離・精製剤(細胞標識剤、酵素固定剤、タンパク質精製剤など)を提供する。本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体、さらに前記結合物は、前述のように液媒に分散可能で、均一系とみなし得る分散液を提供できるものであり、また微粒子形態に基づく広い表面積を有しているため、上記診断剤、分析試薬、分離・精製剤などに含有されることにより、迅速且つ高精度に所望の結果を提供できる。しかも、本発明の複合体及び/または結合物の分離、回収は、該複合体及び/または結合物に対して、これらを構成する刺激応答性ポリマーに好適な刺激を与えることにより容易に行い得る。
これらの診断剤、分析試薬、分離・精製剤における本発明の複合体及び/または結合物の含有割合は特に限定されず、前述の通り、本発明の複合体及び/または結合物を利用して、被検物質を効果的に捕集できるかぎり限定されない。これらの診断剤、分析試薬、分離・精製剤には、前記複合体及び/または結合物のほかに、前記複合体及び/または結合物による被検物質の捕集を妨げない範囲で、診断や分析、さらに分離・精製などにおいて従来使用されている任意の物質、例えば各種緩衝液等が含有されていてもよい。これらの診断剤、分析試薬、分離・精製剤は、本発明の複合体及び/または結合物からなるものであってもよい。
また、本発明の複合体及び/または結合物は、そのままで、またはこれを適当な担体に担持させた形態で、各種のクロマトグラフィー、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーに利用することができる。
さらに、本発明の複合体及び/または結合物は、土壌改質、水質もしくは大気の浄化などに利用することもできる。その応用例としては、例えば、環境ホルモンを捕捉できるリンカー分子が結合された本発明の複合体の利用例を挙げることができる。この応用例によれば、土壌に大量に含まれる他の化合物(フミン質やフルボ酸など)は捕捉せずに、環境ホルモンだけを選択的にかつ効率良く捕捉することができる。このように、本発明の複合体の利用によれば、効率的な土壌の浄化が可能である。また、本発明の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体は、上記土壌改質と同様にして、水質もしくは大気の浄化にも適用可能である。
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.貴金属と磁性微粒子との結合
本実験では、貴金属として金を、磁性微粒子として磁性酸化鉄ナノ粒子(γ−Fe)を使用した。具体的には、1重量%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液50mL中に、磁性酸化鉄ナノ粒子(Nanophase Technologies Corporation社製、Feナノ粒子、平均粒子径23nm) 49.2mg、HAuCl 8.5mg(Auとして4.9mg、濃度が0.5mMとなる量)及び2−プロパノール 0.5mLを加えて分散液を調製した。なお、磁性酸化鉄ナノ粒子は、ビーズミル分散処理を行ったものを用いていた。ビーズミル処理は、壽工業株式会社製のUAM−015を用いた。分散処理条件は、ビーズ径30μm、回転周波数50Hz、原料酸化鉄のスラリー濃度を10g/Lとした。得られた磁性酸化鉄ナノ粒子分散液の二次粒子径は79nmで、非常に良好な分散性を示し、永久磁石による磁気捕集はできなかった。
この分散液をガラス製バイアルビン(容量70mL)に封入後、線量率約3kGy/hで攪拌しながら室温にて3時間γ線を照射した。γ線照射の条件は次の通りとした。
放射線源:コバルト60γ線源(γ線光量子のエネルギー:1.25MeV)
線源強さ:約7000キュリー
このようにして金と磁性酸化鉄ナノ粒子(γ−Fe)との複合体(以下、金磁性酸化鉄複合体)が分散した液を得た。得られた金磁性酸化鉄複合体は透過型電子顕微鏡で生成を確認した。得られた金磁性酸化鉄複合体は非常に分散性がよく、冷蔵庫で50日間保存した後にもまったく沈降が見られなかった。
2.刺激応答性ポリマーの調製
本実験では、刺激応答性ポリマーとして、以下の方法で製造した下限臨界溶液温度を有するポリマーを使用した。
下限臨界溶液温度を有するポリマーは、不活性ガス(N)の存在下、モノマーとしてNIPAMを用い、溶媒としてTHFを用い、4,4´-アゾビス(4−シアノ吉草酸)を開始剤として用いて、90℃で、8時間、フリーラジカル重合を行うことで得られた。分子量が異なるポリマーは、モノマー対開始剤の仕込み時のモル比を調整することで製造した。モノマー対開始剤のモル比が、100、200、500の場合、それぞれ数平均分子量で、7000、12000、30000のポリマーが得られた。これらの下限臨界溶液温度を有するポリマーは、開始剤由来のカルボキシルを有しており、NHSと室温で反応させることでPNIPAM−NHSが得られた。
また、トリメチルアミン(Triethylamine)の存在下、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM-NHS)とシスタミン二塩酸塩(Cystamine Dihydrochloride)を用い、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(N,N-Dimethyl formamide)用いて、室温で24時間反応させ、PNIPAM−cystamineを合成し、下限臨界溶液温度を有するポリマーにチオールを導入した。本実施例では、数平均分子量30000の下限臨界溶液温度を有するポリマー、数平均分子量12000の下限臨界溶液温度を有するポリマー及び数平均分子量7000の下限臨界溶液温度を有するポリマーの3種を使用した。
数平均分子量は、20℃、溶媒として0.1M 硝酸ナトリウムを用いて、GPCで測定した。
3.貴金属と磁性微粒子との複合体への刺激応答性ポリマーの固定化
数平均分子量30000の下限臨界溶液温度を有するポリマー0.075グラム(0.0025ミリモル)を金磁性酸化鉄複合体の分散液2.5ミリリットルに添加し、室温で24時間反応させ、Au−S結合により下限臨界溶液温度を有するポリマーを固定化した。同様方法で数平均分子量12000、7000の下限臨界溶液温度を有するポリマーを用いて固定化した。(図1)
4.貴金属と磁性微粒子との複合体への刺激応答性ポリマーの固定化の確認
得られた粒子分散液に、ネオジム磁石(表面磁束密度0.45T)で磁気捕集を行った。42℃のウオーターバス中で粒子分散液を加温し、粒子を凝集させた後での磁気捕集に要する時間は、PNIPAMの数平均分子量30000で1分、数平均分子量12000で10分、数平均分子量7000で30分であった。これにより、貴金属と磁性微粒子との複合体と刺激応答性ポリマーとの、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体が得られ、かつ該刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体を磁気捕集できることを確認した。
金磁性酸化鉄複合体への温度応答性ポリマーの固定化のモデル図を示す。

Claims (8)

  1. 貴金属と磁性微粒子との複合体と、刺激応答性ポリマーとが官能基を介して固定されてなる、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体。
  2. 貴金属と磁性微粒子との複合体が、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム及びレニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と、γ−Fe及びFeからなる群から選ばれる少なくとも1種の磁性微粒子とからなる、請求項1に記載の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体。
  3. 刺激応答性ポリマーが、温度応答性ポリマーである、請求項1または請求項2に記載の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体。
  4. 温度応答性ポリマーが、下限臨界溶液温度を有するポリマーまたは上限臨界溶液温度を有するポリマーである、請求項3に記載の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体と、リンカー分子との結合物であり、該リンカー分子は上記複合体を構成する貴金属と結合しており、かつ被検物質と結合可能な官能基及び/または親和性部位を有している、刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体とリンカー分子との結合物。
  6. 請求項5記載の結合物を含む、医薬品、抗原、抗体、レセプター、ハプテン、酵素、タンパク質、ペプチド、糖、核酸、ホルモン、病原体及び毒素からなる群より選択される被検物質の分析試薬。
  7. 請求項5記載の結合物を構成するリンカー分子と被検物質とを結合させる工程、及び、該結合物を構成している刺激応答性ポリマーに適した刺激を与えることにより、前記結合物を凝集させる工程、
    を含む、被検物質の捕集方法。
  8. 被検物質が、医薬品、抗原、抗体、レセプター、ハプテン、酵素、タンパク質、ペプチド、糖、核酸、ホルモン、病原体及び毒素からなる群より選ばれ、刺激応答性ポリマーに適した刺激が温度変化による刺激である、請求項7に記載の捕集方法。
JP2008130783A 2008-05-19 2008-05-19 刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体 Active JP5145526B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008130783A JP5145526B2 (ja) 2008-05-19 2008-05-19 刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008130783A JP5145526B2 (ja) 2008-05-19 2008-05-19 刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009281728A JP2009281728A (ja) 2009-12-03
JP5145526B2 true JP5145526B2 (ja) 2013-02-20

Family

ID=41452350

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008130783A Active JP5145526B2 (ja) 2008-05-19 2008-05-19 刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5145526B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7981688B2 (en) 2007-03-08 2011-07-19 University Of Washington Stimuli-responsive magnetic nanoparticles and related methods
US8426214B2 (en) 2009-06-12 2013-04-23 University Of Washington System and method for magnetically concentrating and detecting biomarkers
US9080933B2 (en) 2009-11-09 2015-07-14 University Of Washington Through Its Center For Commercialization Stimuli-responsive polymer diagnostic assay comprising magnetic nanoparticles and capture conjugates
JP5867248B2 (ja) * 2012-03-30 2016-02-24 Jnc株式会社 酵素複合体
JP6887299B2 (ja) * 2017-05-12 2021-06-16 旭化成株式会社 金属粒子環状構造体、組成物、積層体、及び金属粒子環状構造体の製造方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4979492B2 (ja) * 2003-03-17 2012-07-18 国立大学法人大阪大学 貴金属・磁性金属酸化物複合微粒子およびその製造法
JP4518767B2 (ja) * 2003-09-09 2010-08-04 チッソ株式会社 刺激応答性ポリマー固定化磁性微粒子及びこれを用いた吸着材
JP2007071832A (ja) * 2005-09-09 2007-03-22 Shiseido Co Ltd 修飾金粒子
JP2007078595A (ja) * 2005-09-16 2007-03-29 Hitachi Maxell Ltd 機能性粒子及びその製造方法
JP5026251B2 (ja) * 2007-12-28 2012-09-12 オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス株式会社 検出対象の検出方法及び定量方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009281728A (ja) 2009-12-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4518767B2 (ja) 刺激応答性ポリマー固定化磁性微粒子及びこれを用いた吸着材
US7169618B2 (en) Magnetic particles and methods of producing coated magnetic particles
JP5678565B2 (ja) 磁性微粒子およびその製造方法
US8426214B2 (en) System and method for magnetically concentrating and detecting biomarkers
US8105493B2 (en) Aggregation and dispersion methods of magnetic particles, separation and detection methods using the same and detection kit
US8084275B2 (en) Magnetic composite body, production method thereof, method for removing substance with mannose on its surface, and method for concentrating substance with mannose on its surface
JP5326443B2 (ja) 凍結乾燥可能な温度応答性磁性微粒子
US9429570B2 (en) Stimuli-responsive polymer diagnostic assay comprising magnetic nanoparticles and capture conjugates
WO2016179053A1 (en) Stable nanomagnetic particle dispersions
JP5145526B2 (ja) 刺激応答性貴金属・磁性微粒子複合体
JP4945959B2 (ja) 熱応答性磁性微粒子、その製造方法及び該微粒子を用いた吸着材
EP3054297A1 (en) Fluorescence-labeled particle
JP5428166B2 (ja) 磁性粒子の凝集及び分散方法並びにこれを用いた分離、検出方法及び検出用キット
EP3054283B1 (en) Method for detecting target substance
Rashid et al. Surface modification and bioconjugation of anti-CD4 monoclonal antibody to magnetic nanoparticles as a highly efficient affinity adsorbent for positive selection of peripheral blood T CD4+ lymphocytes
EP2638399B1 (en) Stimuli-responsive polymer diagnostic assay comprising magnetic nanoparticles and capture conjugates
JP2004157072A (ja) 免疫反応測定に用いられる高感度磁性マーカー
JP5182069B2 (ja) チオール基を有する刺激応答性磁性微粒子及びその利用
JP5691161B2 (ja) タンパク質の精製方法
JP2008232716A (ja) 磁性粒子及びその製造方法
JP4903449B2 (ja) 磁性複合体およびその製造方法、マンノースを表面に有する物質の除去方法及びマンノースを表面に有する物質の濃縮方法
US20200399401A1 (en) Bioconjugates of Antibodies and Fuctionalized Magnetic Nanoparticles
WO2006085668A1 (en) Magnetic composite body, production method thereof, method for removing substance with mannose on its surface, and method for concentrating substance with mannose on its surface

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110519

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20110520

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120510

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120522

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120925

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20121023

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121023

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20121023

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5145526

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151207

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250