(第1実施形態)
以下、本発明に係る留置針を図面を用いて詳しく説明する。図1ないし図5は、同発明の第1実施形態に係る留置針Aを示している。この留置針Aは、患者の血管に留置される外針10と、外針10の内部に挿入可能で、患者の身体に穿刺可能な鋭利な先端部を有する内針20と、内針20の後部に取り付けられる吸引具25と、内針20の先端部を保護するための針先保護具30とで構成されている。外針10は、細管状のカニューレ11と、カニューレ11の基端部(図1の右側に位置する後端部であり、以下、カニューレ11の先端側(左側)を前側、カニューレ11の基端部側(右側)を後側として説明する。)に連結されたハウジング12とを備えている。
カニューレ11は先端部から後端部に貫通する流路を構成する内腔13を備えており、カニューレ11の先端部11aの外周面には、前端側が先細りになるようにテーパが設けられている。また、カニューレ11の後端部11bは、後端側が徐々に太くなるように形成されている。このカニューレ11は、患者の血管内に留置されて、血管から血液を取り出したり、血管に薬液等を供給したりするために用いられる。また、ハウジング12は、カニューレ11の後端部11bに固定されたハウジング前部12aと、ハウジング12の後部側部分を構成するハウジング後部12bとを組み付けて略円筒状に形成されている。
ハウジング前部12aの前端部は、カニューレ11の後端部11bとの間に滑らかな面を形成して連結できるように細く形成され、ハウジング前部12aの後部側部分は徐々に太くなるように形成されている。また、ハウジング後部12bの前部側部分はハウジング前部12aの後端部と同じ太さに形成され、ハウジング後部12bの後部側を構成する開口部14はハウジング後部12bの前部側部分よりも細く、ハウジング前部12aの前端部よりも太くなるように形成されている。さらに、この開口部14は、雌ルアー形状に形成され、前部側から後部側に行くほど徐々に太くなっている。そして、ハウジング後部12bの前部側部分と開口部14との間は後方にいくほど径が小さくなった筒状に形成されている。
このため、ハウジング12の内部は、軸方向に沿った前部側部分から略中央にかけての部分が内径の大きな空間部15aに形成され、後部側部分が内径がやや小さな空間部15bに形成されている。そして、ハウジング12の内周面における空間部15aと空間部15bとの間の部分は、テーパ状の傾斜面16に形成されている。また、空間部15aの前部側部分もハウジング前部12aの形状に沿って、前部から後部に向って徐々に太くなるように形成されている。
内針20は、ステンレス製の金属針21と、金属針21の基端側部分(図示の右側に位置する後端部)に固定されたハブ22を備えている。金属針21は細管状の注射針からなっており、先端部21aが軸方向に対して傾斜して形成された先鋭部で構成されている。また、金属針21の先端側部分は、金属針21の他の後部側部分よりもわずかに太く形成されており、その境界部に段部21bが形成されている。この金属針21は、カニューレ11の先端部11aを患者の血管に挿入する際に、その挿入がスムーズに行えるようにするためのもので、外針10の後端部から外針10内に差し込まれ、カニューレ11の先端部11aの開口から先端部21aを外部に突出させた状態で使用される。この場合、金属針21の先端部21aは、ハウジング12の内部およびカニューレ11の内部を通過してカニューレ11の先端部11aから外部に突出する。
ハブ22は、内針20を持つための把持部として機能する部分であり、金属針21の後端部の外周部を被覆するようにして金属針21に固定されている。このハブ22は、金属針21を固定するハブ本体22aと、ハブ本体22aの後部側に形成され、後方に向って開口した凹部を備えた筒状の取付部22bとで構成されている。なお、取付部22bは、雌ルアー形状に形成され、前部側から後部側に行くほど徐々に太くなっている。
そして、ハブ本体22aの前端周縁部にフランジ状の鍔部23が形成されている。なお、金属針21は、接着部24を介してハブ本体22aに接着固定されている。吸引具25は、注射器で構成されており、気体や液体を収容できるシリンダー部26内に、ピストン部27を移動可能な状態で挿入して構成されている。そして、シリンダー部26の先端部を構成する雄ルアー28をハブ22の取付部22b内に差し込むことにより、吸引具25は内針20に組み付けられている。
また、外針10のハウジング12内には、針先保護具30が設置されている。この針先保護具30は、図6ないし図9に示したように、本体31と、本発明の一対の可動係合部を構成する可動被把持部32および可動把持部33とで構成されている。本体31は、円筒状に形成されており、その後端部(ハウジング12内に設置されたときに開口部14側に位置する端部)の内周部が他の部分よりも細径になった細径部31aに形成され、細径部31aと他の前部側周面31bとの間に段部が形成されている。この細径部31aは、金属針21の先端側部分は通さないが、金属針21の先端側部分以外の部分は通せる大きさに形成されている。
また、本体31の軸方向の中央よりもやや前部側部分における対向する部分に、軸方向の位置をややずらして軸方向に延びる窓部34a,34bが形成されている。この窓部34a,34bは、ともに前部側の幅が広く後部側の幅が狭くなった貫通穴部で構成されている。そして、窓部34aの後端縁部に可動被把持部32の基端部32aがヒンジ連結され、窓部34bの後端縁部に可動把持部33の基端部33aがヒンジ連結されている。可動被把持部32の外側部32bは、図6および図7の状態では、針先保護具30をハウジング12内に設置したときに、傾斜面16に沿うように外部側に向って突出している。また、先端の被把持部32cは基端部32aよりも幅広に形成され、被把持部32cの内面は、本体31の内部側に向って突出する突部に形成されている。
また、可動把持部33の外側部33bは、図6および図7の状態では、針先保護具30をハウジング12内に設置したときに、ハウジング12の傾斜面16に沿うように外部側に向って突出しており、先端の把持部33cは基端部33aよりも幅広に形成されている。そして、把持部33cの内面には、本体31の内部側に向って突出し、可動被把持部32の被把持部32cを前後から挟んで固定できる一対の突部が形成されている。この図6および図7の状態の針先保護具30の内部における可動被把持部32および可動把持部33に対応する部分には、金属針21が挿通可能になっている。
そして、針先保護具30内に金属針21が位置しているときには、被把持部32cおよび把持部33cが金属針21の外周面に当接して、可動被把持部32の外側部32bおよび可動把持部33の外側部33bは、本体31の外側に向って突出した状態になる。また、針先保護具30の内部における可動被把持部32および可動把持部33に対応する部分に金属針21が位置してなく、外側部32bおよび外側部33bが、本体31の内部側に押圧されて本体31の周面と同じ位置になったときには、図9に示したように、被把持部32cと把持部33cとが係合する。
そして、外針10のハウジング12内設置された針先保護具30に内針20の金属針21を通し、針先保護具30内に金属針21の後端側を位置させた状態で、金属針21の先端部21aを、カニューレ11の先端部11aからわずかに突出させることにより、図1および図2に示した留置針Aが得られる。この場合、内針20の鍔部23が、外針10のハウジング12における開口部14の後端に当接する。
この構成において、留置針Aを使用する場合には、まず、図1および図2に示した状態の留置針Aにおけるカニューレ11の先端部11aを金属針21の先端部21aとともに患者の穿刺部分、例えば腕に穿刺して血管まで到達させる。ついで、ハブ22の後部に取り付けられた吸引具25のピストン部27をシリンダー部26から後退させる。これによって、血管内の血液が、金属針21内に浸入して、金属針21におけるハブ22のハブ本体22aに対応する部分に入り込み、さらに、血液はシリンダー部26内に吸引される。この結果、ハブ22およびシリンダー部26内の色が赤くなるため、金属針21の先端部21aが血管に到達したことを確認できる。
ついで、内針20をそのままにした状態で、外針10をもう少し前部側に押して、外針10の先端部11aをさらに血管内で前部側に進めていく。そして、外針10の先端部11aを患者の血管に留置したままの状態で、図3に示したように、内針20を吸引具25とともに外針10の後部側に引いていく。これによって、金属針21がカニューレ11から後退して金属針21の先端部21aはハウジング12内の針先保護具30内に位置するようになる。さらに、内針20を吸引具25とともに外針10の後部側に引いていき、金属針21の段部21bが、針先保護具30の細径部31aに到達すると、金属針21と針先保護具30とが段部21bと細径部31aとを介して係合する。
そして、さらに、内針20を吸引具25とともに外針10の後部側に引いていくと、金属針21の先端側部分に針先保護具30を係合させたまま内針20は吸引具25とともに外針10から後退していく。この際、まだ針先保護具30内における可動被把持部32と可動把持部33とに対応する部分に金属針21が位置しているときには、可動被把持部32と可動把持部33は、金属針21によって、本体31の外側に付勢されてハウジング12内の傾斜面16に沿った状態になっている。そして、針先保護具30が金属針21と係合して、ハウジング12の外部に向って移動し始めると、まず、可動被把持部32の外側部32bが傾斜面16の後部側部分によって本体31の内部側に付勢されて、図3に示した状態になる。
ついで、可動把持部33の外側部33bが傾斜面16の後部側部分によって本体31の内部側に付勢されて図4の状態になる。そして、可動被把持部32および可動把持部33が傾斜面16を通過して、ハウジング12の空間部15b内に入ったときには、被把持部32cと把持部33cとが完全に係合した状態になる。この場合、可動被把持部32の被把持部32cまたは可動把持部33の把持部33cとの少なくとも一方が可撓性を備えており、可撓性を備えた部分が撓むことで被把持部32cと把持部33cとが係合できる。
そして、さらに、内針20を吸引具25とともに外針10の後部側に引いていくと、内針20は、金属針21の先端に針先保護具30を係合させたまま吸引具25とともに外針10から後退して、図5の状態になる。この場合、金属針21の先端部21aは、針先保護具30内における被把持部32cと把持部33cとが係合した部分と、細径部31aとの間に位置するようになる。このため、操作者が金属針21の先端部21aに触れて怪我をしたりすることがなくなり安全である。
つぎに、ハウジング12の開口部14に、薬液等の供給装置(図示せず)から延びるチューブ部材(図示せず)の接続部を接続する。このようにして、チューブ部材をハウジング12に接続した状態で、チューブ部材の基端部に接続された供給装置を作動させて、薬液等を血管に供給する。以上のようにして、留置針Aの使用が行われる。なお、外針10から抜き取られた内針20は、所定の場所に廃棄される。
このように、本実施形態に係る留置針Aでは、針先保護具30を、円筒状の本体31と、本体31の周面に対向して設けられた窓部34a,34bの縁部にそれぞれヒンジ連結された可動被把持部32と可動把持部33とで構成している。そして、針先保護具30内に金属針21を通したときには、金属針21によって、可動被把持部32と可動把持部33とは本体31の外側に向って付勢される。また、針先保護具30における可動被把持部32と可動把持部33とに対応する部分から金属針21を後退させた状態で、内針20とともに針先保護具30を外針10から引き抜く方向に移動させると、可動被把持部32と可動把持部33とはハウジング12の傾斜面16によって、本体31の内側に向って付勢される。
そして、針先保護具30がハウジング12から引き抜かれるときには、可動被把持部32の被把持部32cと可動把持部33の把持部33cとが係合して本体31の前端側部分を塞ぐように構成されている。したがって、外針10から外された金属針21の先端部21aが露出するように、針先保護具30を内針20の後部側に移動させようとしても、金属針21の先端部21aが被把持部32cと把持部33cとの係合部分に当たるだけで、金属針21の先端部21aは露出できない。このため、操作者が金属針21の先端部21aに触れて怪我をすることがなくなり安全性が高まる。また、この場合の操作が、外針10に対して内針20を引っ張るだけで済むため簡単である。
また、その際、内針20に係る抵抗が可動被把持部32と可動把持部33を本体31の内側に付勢するときにハウジング12の傾斜面16から受ける反力だけであるためわずかな力である。このため、スムーズな操作が可能になる。また、この場合の可動被把持部32と可動把持部33とは、窓部34a,34bの縁部に回転可能に連結されているだけでよく、弾性等の特性がなくとも連結可能である。また、可動被把持部32と可動把持部33は、一体成形により本体31と一体的に形成することができる。このため、針先保護具30の構造が簡単になるとともに、容易かつ安定した製造が可能になる。
(第2実施形態)
図10ないし図12は、本発明の第2実施形態に係る留置針Bを示している。この留置針Bでは、外針40のハウジング42は、ハウジング42の前部側部分を構成するハウジング前部42aと、ハウジング42の後部側部分を構成するハウジング後部42bとを組み付けて略円筒状に形成されている。そして、ハウジング42の内部は、ハウジング前部42aの前端側部分からハウジング後部42bの略中央にかけての部分が内径の大きな空間部45aに形成され、後部側部分が、空間部45aの前部側部分よりも内径がやや小さな空間部45bに形成されている。なお、空間部45bの内径は、前部側から後部側に行くにしたがって徐々に大きくなるように形成されている。そして、ハウジング42の内周面における空間部45aと空間部45bとの間の部分は、軸方向の長さが短いテーパ状の傾斜面46に形成されている。
また、留置針Bが備える針先保護具50は、図13ないし図16に示したように、本体51と、可動被把持部52と、可動把持部53とで構成されている。本体51は、円筒状に形成されており、その後端部(ハウジング42内に設置されたときに後端開口側に位置する端部)の内周部が他の部分よりも細径になった細径部51aに形成され、細径部51aと他の前部側周面51bとの間に段部が形成されている。また、本体51の軸方向の中央よりもやや前部側部分における対向する部分に、軸方向に延びる窓部54a,54bが形成されている。この窓部54a,54bは、ともに長方形の通穴部で構成されている。
そして、窓部54aの前端縁部に可動被把持部52の基端部52aがヒンジ連結され、窓部54bの前端縁部に可動把持部53の基端部53aがヒンジ連結されている。可動被把持部52の外側部52bは、図13および図14の状態では、ハウジング42の傾斜面46に沿うように外部側に向って突出している。また、後端(自由端)の被把持部52cは、可動被把持部52の前部側部分よりも幅の狭い突部で構成されている。
また、可動把持部53の外側部53bは、図13および図14の状態では、ハウジング42の傾斜面46に沿うように外部側に向って突出している。そして、後端の把持部53cは、幅方向の中央に、後部および上下部が開放された凹部を設けることにより形成された一対の突部で構成されている。この把持部53cは、可動被把持部52の被把持部52cを左右(図14および図16の状態における前後)から挟んで固定できるように構成されている。この留置針Bのそれ以外の部分の構成については、前述した留置針Aの対応する部分と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
この留置針Bを使用する場合には、前述した留置針Aの場合と同様の操作を行う。この場合も、まず、図10に示した状態の留置針Bにおけるカニューレ11の先端部11aを金属針21の先端部21aとともに患者の腕に穿刺して血管まで到達させたのちに、外針10をもう少し前部側に押して、外針10の先端部11aを血管に到達させる。そして、外針10の先端部11aを患者の血管に留置したままの状態で、図11に示したように、内針20を吸引具25とともに外針10の後部側に引いていく。そして、金属針21をカニューレ11から後退させて金属針21の先端部21aをハウジング42内の針先保護具50内に位置させたのち、さらに、内針20を後部側に引いて、金属針21の段部21bと針先保護具50の細径部51aとを係合させる。
そして、さらに、内針20を吸引具25とともに外針10の後部側に引いていくことにより、金属針21の先端側部分に針先保護具50を係合させたまま内針20を吸引具25とともに外針10から後退させていく。この際、まだ針先保護具50内における可動被把持部52と可動把持部53とに対応する部分に金属針21が位置しているときには、可動被把持部52と可動把持部53は、金属針21によって、本体51の外側に付勢されてハウジング42内の傾斜面16等の内周面に沿った状態になっている。そして、針先保護具50が金属針21と係合して、ハウジング42の外部に向って移動し始めると、まず、可動被把持部52の外側部52bと可動把持部53の外側部53bとが傾斜面46によって本体51の内部側に付勢されて、図11に示した状態になる。
ついで、可動被把持部52および可動把持部53が傾斜面46を通過して、ハウジング42の空間部45b内に入ったときには、被把持部52cと把持部53cとが完全に係合した状態になる。そして、内針20を吸引具25とともに、さらに外針10の後部側に引いていくと、内針20は、金属針21の先端に針先保護具50を係合させたまま吸引具25とともに外針10から後退して、図12の状態になる。つぎに、ハウジング42の開口部14に、薬液等の供給装置から延びるチューブ部材の接続部を接続して、チューブ部材の基端部に接続された供給装置を作動させて、薬液等を血管に供給する。
この留置針Bでは、被把持部52cが可動被把持部52の後端部に形成され、把持部53cが可動把持部53の後端部に形成されている。したがって、被把持部52cと把持部53cとが係合する部分と、本体51の前端部との間の長さが長くなって、金属針21の先端部21aが本体51の前端部から遠のくため、さらに、金属針21の先端部21aが針先保護具50の前端部から出難くなる。また、金属針21の先端部21aが露出するように、針先保護具50を内針20の後部側に移動させようとした場合には、金属針21の先端部21aが被把持部52cと把持部53cとの係合部分を押圧して、被把持部52cと把持部53cとの係合をより強固にする。このため、安全性がさらに高まる。この留置針Bのそれ以外の作用効果については、前述した留置針Aと同様である。
(第3実施形態)
図17ないし図19は、本発明の第3実施形態に係る留置針Cを示している。この留置針Cが備える針先保護具60は、図20ないし図23に示したように、本体61と、一対の可動係合部62,63とで構成されている。本体61は、円筒状に形成されており、その後端部(図20ないし図23の右側の端部)の内周部が他の部分よりも細径になった細径部61aに形成され、細径部61aと他の前部側周面61bとの間に段部が形成されている。また、本体61の軸方向の中央よりもやや前部側部分における対向する部分に、軸方向に延びる窓部64a,64bが形成されている。この窓部54a,54bは、ともに前部側の幅が広く後部側の幅が狭くなった貫通穴部で構成されている。
そして、窓部64aの後端縁部に可動係合部62の基端部62aがヒンジ連結され、窓部64bの後端縁部に可動係合部63の基端部63aがヒンジ連結されている。可動係合部62の外側部62bは、図20および図21の状態では、本体61の外側に向って突出している。また、可動係合部62の前端(自由端)には、可撓性を有する平面状の係合片62cが形成されている。また、可動係合部63の外側部63bは、図20および図21の状態では、本体61の外側に向って突出している。そして、可動係合部63の前端(自由端)には、可撓性を有する平面状の係合片63cが形成されている。
この係合片62c,63cは、一対の可動係合部62,63が、本体61の内部側に付勢されたときに、窓部64a,64bの前端縁部に当接して撓んだ状態で、本体61の内部に入る。そして、係合片62c,63cが本体61内に入ったのちには、係合片62c,63cは窓部64a,64bの前端縁部によって、本体61の外部側に出ることを防止されるように構成されている。この留置針Cのそれ以外の部分の構成については、前述した留置針Aの対応する部分と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
この留置針Cを使用する場合には、前述した留置針Aの場合と同様の操作を行う。この場合も、前述した第1,2実施形態と同様、外針10の先端部11aを患者の血管に留置して、図17に示した状態から、内針20を吸引具25とともに外針10の後部側に引いて図18に示した状態にする。そして、金属針21の先端部21aをハウジング42内の針先保護具60内に位置させたのち、さらに、内針20を後部側に引いて、金属針21の段部21bと針先保護具60の細径部61aとを係合させる。
そして、さらに、内針20を後部側に引いて、金属針21の先端側部分に針先保護具60を係合させたまま内針20を吸引具25とともに外針10から後退させる。この際、まだ針先保護具60内における可動係合部62,63に対応する部分に金属針21が位置しているときには、可動係合部62,63は、金属針21によって、本体61の外側に付勢されてハウジング12内の傾斜面16に沿った状態になっている。そして、針先保護具60が金属針21と係合して、ハウジング12の外部に向って移動し始めると、可動係合部62,63の外側部62b,63bが傾斜面16によって本体61の内部側に付勢される。
これによって、係合片62c,63cは、窓部64a,64bの前端縁部に当接して撓んだ状態で、本体61の内部に入る。そして、内針20を吸引具25とともに、さらに外針10の後部側に引いていくと、内針20は、金属針21の先端に針先保護具60を係合させたまま吸引具25とともに外針10から後退して、図19の状態になる。つぎに、ハウジング12の開口部14に、薬液等の供給装置から延びるチューブ部材の接続部を接続して、チューブ部材の基端部に接続された供給装置を作動させて、薬液等を血管に供給する。
この留置針Cでは、一対の可動係合部62,63の係合片62c,63cが窓部64a,64bの縁部に係合したときに、一対の可動係合部62,63間に形成される隙間が金属針21の直径よりも小さくなるようにした状態で本体61の内部が塞がれるようにしている。したがって、係合片62c,63cどうしを係合させる必要がなくなり、一対の可動係合部62,63を本体61の内部側に付勢するための力が小さくてもよくなる。この留置針Cのそれ以外の作用効果については、前述した留置針Aと同様である。
(第4実施形態)
図24および図25は、本発明の第4実施形態に係る留置針が備える針先保護具70を示している。この針先保護具70は、本体71と、一対の可動係合部72,73とで構成されている。本体71は、円筒状に形成されており、その後端部(図24および図25の右側の端部)の内周部が他の部分よりも細径になった細径部71aに形成され、細径部71aと他の前部側周面71bとの間に段部が形成されている。また、本体71の軸方向の中央よりもやや前部側部分における対向する部分に、軸方向に延びる窓部74a,74bが形成されている。この窓部74a,74bは、互いの長手方向の長さが異なる長方形の貫通穴部で構成されており、それぞれの前端部の軸方向の位置が同じで、後端部の位置が、窓部74aよりも窓部74bの方が後方に位置している。
そして、窓部74aの後端縁部に可動係合部72の基端部72aがヒンジ連結され、窓部74bの後端縁部に可動係合部73の基端部73aがヒンジ連結されている。可動係合部72の係合部本体76は、基端部72a側の肉厚部76aと、先端側の薄肉部76bとで構成されている。そして、肉厚部76aの幅は、窓部74aの幅よりもわずかに小さく設定され、薄肉部76bの幅は、薄肉部76b一方の面が、窓部74aの幅方向の略中央に対応する位置に位置するように小さく設定されている。
このため、係合部本体76における一方の面の肉厚部76aと薄肉部76bとの境界部に段部76cが形成されている。なお、薄肉部76bの厚みは、肉厚部76aの厚みの1/2よりもやや薄く形成されている。また、可動係合部72の外側部72bは、図26に示した状態では、本体71の外側に向って突出している。そして、係合部本体76の薄肉部76bにおける段部76c側の面には、楔状の係合突起72cが形成されている。
また、可動係合部73の係合部本体77は、基端部73a側の肉厚部77aと、先端側の薄肉部77bとで構成されている。そして、肉厚部77aの幅は、窓部74bの幅よりもわずかに小さく設定され、薄肉部77bの幅は、薄肉部77bの他方の面が、窓部74bの幅方向の略中央に対応する位置に位置するように小さく設定されている。このため、係合部本体77における他方の面の肉厚部77aと薄肉部77bとの境界部に段部77cが形成されている。なお、薄肉部77bの厚みは、肉厚部77aの厚みの1/2よりもやや薄く形成されている。また、可動係合部73の外側部73bは、図26に示した状態では、本体71の外側に向って突出している。そして、係合部本体77の薄肉部77bにおける段部77c側の面には、可動係合部72の係合突起72cと係合可能な楔状の係合突起73cが形成されている。
また、本体71の外周面には、リング部材78が本体71の軸方向に移動可能に取り付けられている。このため、図26ないし図31に示したように、リング部材78を本体71の後端側から前端側に移動させることにより、可動係合部72,73を、窓部74a,74b内を通過させて本体71の内部に押し込むことができる。また、この針先保護具70が取り付けられる外針のハウジング後端には、リング部材78を固定するための凹部(図示せず)が形成されている。この針先保護具70を備えた留置針のそれ以外の部分の構成については、前述した留置針Aの対応する部分と同一である。
この針先保護具70を備えた留置針における可動係合部72,73が係合する状態を図26ないし図31を用いて説明する。まず、図26に示した状態(使用時においては、外針のハウジング内に収容され、内部に金属針が挿通した状態)から、リング部材78を本体71の前部側に移動させて図27に示した状態にする。これによって、リング部材78の先端部は、可動係合部73の基端部73aに当接したのち、可動係合部73を前方に押していく。この結果、可動係合部73は基端部73aを中心として回転して本体71内に入っていく。この場合、図27に示したように、可動係合部73の薄肉部77bと係合突起73cは、可動係合部72の薄肉部76bの凹部側部分に入りこむようにして移動する。
さらに、リング部材78を本体71の前部側に移動させると、リング部材78の先端部が可動係合部72の基端部72aに当接したのち、可動係合部72を前方に押していく。これによって、可動係合部72は基端部72aを中心として回転して、図28に示したように、本体71内に入っていく。この場合、可動係合部72の係合突起72cは、可動係合部73の係合突起73cの外側を回りこむようにして移動する。そして、図29に示したように、リング部材78の後端部を、本体71における可動係合部72の基端部72aに対応する部分を通過させ、さらに、リング部材78の後端部を、本体71における可動係合部72の外側部72bに対応する部分を通過させて、図30に示した状態にする。
これによって、可動係合部72の係合突起72cと、可動係合部73の係合突起73cとは、本体71の中心軸近傍に位置するようになり、その軸方向の位置も略同じ位置になる。この結果、係合突起72cと係合突起73cとは係合する。そして、図31に示したように、リング部材78を本体71の前部側に移動させても、係合突起72cと係合突起73cとの係合状態は維持される。すなわち、この係合突起72cと係合突起73cとの係合状態は、係合位置が本体71の中心軸から所定距離だけ離れた位置にならない限り維持される。
また、この場合、リング部材78の軸方向の長さを長くして、図31の状態で、リング部材78の後端部が係合突起72cと係合突起73cとの係合部分よりも後方に位置するようにすることができる。これによると、係合突起72cと係合突起73cとの係合が不慮に外れても。可動係合部72,73はリング部材78によって覆われた状態になるため、本体71の外部側に突出することがなくなる。したがって、内針の針先の保護がさらに安定する。この針先保護具70を留置針に取り付けて使用する際の操作については、前述した各実施形態と同じであるため説明は省略する。また、この針先保護具70を備えた留置針によっても、前述した各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、本発明に係る留置針は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、留置針A等の外針10を血管に留置するものとしているが、本発明に係る留置針は、血管に限らず、胸腔、胸膜腔、胆肝、腎盂、膀胱などの体内の部位に対しても使用することができる。この場合、体内の所定部位に薬液等を供給するだけでなく、体内の所定部位から体液等を取り出すことにも用いることができる。また、前述した第4実施形態ではリング部材78を用いて、可動係合部72,73を本体71の内部側に付勢するようにしたが、リング部材78を用いず、ハウジングの内部を押圧手段とすることができる。同様に、前述した第1〜第3実施形態における押圧手段としてリング部材を用いることもできる。
さらに、留置針A等を構成する材料としては種々のものを使用することができる。例えば、外針10、内針20の金属針21以外の部分および針先保護具30等は、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ナイロン、シリコーン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリエチレン等の各材料を用いて形成することができる。また、カニューレ11は、フッ素樹脂、ポリウレタン等の材料を用いて形成することができる。さらに、留置針A等を構成する各部材の形状や配置等についても、本発明の技術的範囲内で適宜変更することができる。