以下、本発明に係る自転車シミュレーション装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自転車シミュレーション装置10の斜視図であり、図2は、図1に示す自転車シミュレーション装置10の各要素を分解した状態での斜視図である。本実施形態に係る自転車シミュレーション装置10(以下、「装置10」ともいう)は、実際に自転車を運転しているような疑似感覚を運転者(乗員)に与えることで、自転車における交通安全指導のほか、各種のゲーム機、トレーニング機器等に使用することができる。
図1に示すように、自転車シミュレーション装置10は、実際の自転車に類似した車体構造からなる模擬自転車(模擬車両)12と、模擬自転車12の運転に応じて運転者の前方の情景(映像)を表示するメインモニタ(前方表示部)14と、メインモニタ14を支持するフロントスタンド(スタンド)16と、運転者の後方の情景を表示するリヤモニタ(後方表示部)18と、自転車シミュレーション装置10の全体的な制御を行う制御装置(制御部)20とを備える。
図2に示すように、自転車シミュレーション装置10は、模擬自転車12と、メインモニタ14と、フロントスタンド16と、リヤモニタ18とを分割可能な構造(4分割構造)であり、各要素はボルト締結等によって分割及び組立を容易に行うことができる。
メインモニタ14は、フロントスタンド16の床面(地面)への固定側である固定部19の上部で支持された可動部であるモニタ位置調整機構22によって支持されることで、上下方向(高さ方向)での位置調整が可能となっている。メインモニタ14の左右側方には、それぞれ模擬自転車12を運転する運転者の左後方及び右後方の情景を表示する一対のサブモニタ24、24が設けられている。フロントスタンド16は、パイプ状の本体枠17と、本体枠17の底部に設けられた脚部13や車輪21等によって構成された固定部19を有し、略水平面を構成するアッパープレート23の上方に、可動部であるモニタ位置調整機構22を介してメインモニタ14が取り付けられる。
制御装置20は、フロントスタンド16のアンダープレート25に配置されており、模擬自転車12の各部に取り付けられたセンサによって運転者の操作情報(走行情報)が入力されることで、フロントスタンド16やサブモニタ24、リヤモニタ18に状況に応じた各種の映像を表示する。
リヤモニタ18は、フロントスタンド16の下部に連結されて模擬自転車12の下部まで延びたメインフレーム(フレーム部材)26に連結部28で連結されたパイプ状のリヤスタンド(後方スタンド)30により、模擬自転車12の右側後方に設けられる。図3に示すように、リヤモニタ18は、モニタ位置調整機構22によるメインモニタ14の調整範囲hの略中央位置に対応して設置されると共に、図4に示すように、模擬自転車12の車体前後方向での中心線CLから一方側(本実施形態では車体右側)に多少オフセットした位置に設置されている。
図1に示すように、模擬自転車12は、床面及びフロントスタンド16の下部に固定されて当該模擬自転車12の車体を構成するメインフレーム26と、メインフレーム26にサドルポスト(サドル側パイプ)32を介して連結されるサドル34と、メインフレーム26に連結されるハンドルポスト(ハンドル側パイプ)36に固着されたヘッドパイプ38を支軸として回動可能なハンドル40と、ゴム製等のタイヤによって床面に固定されるダミーの後輪42とを有し、車体後方側に駆動部43が配置されている。サドル34は、サドル位置調整機構(サドル調整機構)44によって上下方向(高さ方向)での位置調整が可能であり、ハンドル40は、ハンドル位置調整機構(ハンドル調整機構)46によって上下方向(高さ方向)での位置調整が可能である。
メインフレーム26は、フロントスタンド16の下部に一対の連結部47、47によって両端側が連結されて床面に固定される支持パイプ48と、支持パイプ48の中央部から車体後方側へと延びて床面に這わされるアンダーパイプ50と、アンダーパイプ50から前傾斜及び後傾斜でそれぞれ上方に延びるハンドル側ベースパイプ52及びサドル側ベースパイプ54と、ハンドル側ベースパイプ52及びサドル側ベースパイプ54の間を連結するセンターフレーム56と、ハンドル側ベースパイプ52及び支持パイプ48の間を連結する一対のフロントフォーク58、58とから構成されて模擬自転車12の車体を構成している。さらに、メインフレーム26は、支持パイプ48でフロントスタンド16と連結されることで、該フロントスタンド16と一体的に設けられた当該自転車シミュレーション装置10のメインフレームとしての機能も有する。
図3に示すように、ヘッドパイプ38の下方には、樹脂等のケースで覆われた第1制御ボックス60が取り付けられている。第1制御ボックス60の内部には、ハンドル40の回動動作に適度な手応えを与えるハンドル抵抗発生器やハンドル40の舵角を検知するセンサ(図示せず)等が収納されている。
ハンドル側ベースパイプ52及びフロントフォーク58の間に形成された略三角形状の空間には、樹脂等のケースで覆われた第2制御ボックス62が取り付けられている。第2制御ボックス62の内部には、ハンドル40に設けられた前輪ブレーキレバー64の揺動動作に適度な手応えを与えるブレーキ抵抗発生器や前輪ブレーキワイヤ66の摺動量によって前輪ブレーキの操作量を検知するセンサ(図示せず)等が収納されている。後輪ブレーキレバー68(図1参照)からの後輪ブレーキワイヤ70は、第2制御ボックス62を抜けて後輪側へと延びている(図3参照)。これら第1制御ボックス60及び第2制御ボックス62は、ハーネス72等を介してメインモニタ14や制御装置20と接続されている。
図5に示すように、駆動部43は、サドル側ベースパイプ54から後方に延びた左右一対のトラス構造で後輪42を支持するパイプ状のアンダーステー74及びアッパーステー76によって支持されている。アンダーステー74の前端部には、回転軸(クランク軸)78の左右に連結された一対のクランク80、80と、各クランク80、80の先端に設けられたペダル82、82とが回転可能に軸支されている。
従って、駆動部43では、運転者がペダル82を漕ぐと、クランク80に結合されたフロントスプロケット(スプロケット)84に巻き掛けられた無端状のドライブチェーン86が駆動される。ドライブチェーン86は、ペダル82の車体後方側に回転可能に取り付けられたフライホイール88の回転軸89に設けたリヤスプロケット(図示せず)に巻き掛けられており、これにより、運転者のペダル操作に伴ってフライホイール88が回転駆動される。なお、ドライブチェーン86に代えて、樹脂や金属等のベルトを用いてもよい。
フライホイール88の車体前方側には、該フライホイール88の外周面に接して従動回転するローラ90を有するペダル負荷調整機構92が取り付けられており、フライホイール88の回転抵抗を調整することによって、ペダル82の回転に必要な踏力、すなわちペダル負荷の変更が可能となっている。
フライホイール88の回転軸89と該回転軸89に取り付けられる前記リヤスプロケットとの間には一方向クラッチ(図示せず)が配設されており、通常の自転車と同様の惰性走行を再現することができる。また、車体側に取り付けられたセンサ(図示せず)でフライホイール88の回転速度を検知することにより、模擬自転車12の疑似的な速度が制御装置20において算出される。さらに、フライホイール88には、後輪ブレーキレバー68からの後輪ブレーキワイヤ70(図3参照)によって操作されるドラムブレーキ94が取り付けられており、実際に回転駆動されるフライホイール88を制動することで、実走行に近いリヤブレーキ操作感を得ることができる。
このようなフライホイール88は、アンダーステー74及びアッパーステー76に固定される支持板96に対し、回転軸89を中心として回転自在に軸支されている。フライホイール88に制動力を与えるドラムブレーキ94は、後輪ブレーキレバー68の操作により後輪ブレーキワイヤ70に連結された揺動アーム98が車体前方に引かれると、ケースの内周面にブレーキシュー(図示せず)が押し付けられて摩擦力が発生する構成である。なお、ブレーキシステムは、ディスク式ブレーキや、フライホイールの外周部を挟むカンチ式のリムブレーキ等を使用する構成としてもよい。
図1に示すように、模擬自転車12では、駆動部43は、樹脂等のカバー99によって覆われており、運転者の衣服等がドライブチェーン86等に接触することが防止されると共に、当該自転車シミュレーション装置10の外観も向上している。
次に、モニタ位置調整機構22と、サドル位置調整機構44及びハンドル位置調整機構46と、ペダル負荷調整機構92と、リヤモニタ18の配置構造とについて順に説明し、当該自転車シミュレーション装置10の作用を説明する。
先ず、メインモニタ14(サブモニタ24)の高さ位置調整のためのモニタ位置調整機構22について説明する。図6は、メインモニタ14の背面側に設けられたモニタ位置調整機構22及びその周辺部の一部省略斜視図であり、図7は、モニタ位置調整機構22及びその周辺部の一部省略平面図である。また、図8は、モニタ位置調整機構22及びその周辺部の一部省略部分断面側面図である。
図6〜図8に示すように、モニタ位置調整機構22は、メインモニタ14の背面側が固定され、メインモニタ14の幅方向の両端側に一対設けられて上下方向に延びた平面視略T字状の可動レール100、100と、可動レール100を収納可能な中空の固定レール102、102と、可動レール100、100の各上部間を水平方向に連結する操作バー(水平バー)104と、可動レール100と共に一体的に上下動可能であって該可動レール100の側方を覆う平面視略U字状のケース106、106と、ケース106の背面に上下方向に沿って複数(例えば、3個)開口形成された位置決め孔部108と、位置決め孔部108に対して挿入可能且つ離脱可能なストッパピン(位置決めピン)110を有するストッパピン機構112とを有する。
固定レール102及びストッパピン機構112は、フロントスタンド16の固定側フレームである本体枠17に固定される一方、可動レール100及びケース106は、床面及び模擬自転車12への固定側である本体枠17に対して上下動可能である。
メインモニタ14は、その背面側が可動レール100、100間に渡って固定されたブラケット(ゲージ)114に対してボルト締結によって固定され、これにより、可動レール100と一体的に上下動可能(図2及び図3参照)且つ可動レール100(ブラケット114)に対して着脱可能(図2参照)である。
図7に示すように、可動レール100は、メインモニタ14の幅方向に幅広で扁平な平板部100aと、平板部100aのメインモニタ14側の面に突出した棒体部100bとを有するT字状(凸字状)の部材である。可動レール100は、棒体部100bに、操作バー104、ケース106及びブラケット114が固定されることにより、メインモニタ14を上下方向に移動させることができる。
可動レール100を収納する固定レール102は、少なくとも可動レール100が突き出る上部が開口しており、その上部開口部には、可動レール100に対してフリクションを与えると共に、その円滑な動作をガイドするフリクション部材116が設けられている。フリクション部材116は、可動レール100の平板部100aを覆う形状であり、固定レール102に対して上下動する可動レール100に適度な摩擦抵抗を付与すると共に、前記上部開口部でのガタツキを防止するものであり、樹脂等によって形成される。なお、図6に示すように、フリクション部材116は、前記上部開口部にだけ設置する以外にも、該上部開口部の下方に設置してもよく、また、固定レール102の下部に開口部を設けた場合には、その開口部にも設置してもよい。
操作バー104は、人手で把持するのに適した形状からなる水平な丸棒であり、メインモニタ14を上下動させる際には、該操作バー104を把持して操作することで、メインモニタ14の高さ位置を容易に変更することができる。
ケース106は、可動レール100の棒体部100bに固定されて平板部100aの外側を覆うものであり、その内部空間には、可動レール100(メインモニタ14)の円滑な上下動を補助するためのダンパ118が配設される。
ダンパ118は、可動レール100と並列されてケース106内を上下方向に延びており、シリンダ部118aの端部(上端)が可動レール100の棒体部100bに固定された平面視略L字状の支持ブラケット120に固定され(図7参照)、シリンダ部118aから伸縮するロッド118bの端部(下端)がフロントスタンド16の本体枠17に固定される(図1参照)。これにより、ダンパ118は、固定側である固定レール102に対する可動レール100の移動を補助することができ、重量物であるメインモニタ14を操作バー104によって片手で容易に移動させることが可能となっている。ダンパ118には、例えばエアダンパやオイルダンパを用いることができる。
ストッパピン機構112は、固定レール102の上部開口部のやや下方で本体枠17に固定されている。ストッパピン機構112は、ボルト122で本体枠17に固定されるハウジング124と、ハウジング124の中心を水平方向に貫通した貫通孔に挿通されたストッパピン110とを有する。ストッパピン110は、その基端側に人手で把持し易い操作ボール125が設けられ、その先端は略半球状であってケース106の位置決め孔部108に挿脱可能である。このストッパピン110は、ハウジング124内に挿入されている部位の周囲にコイルスプリング(弾性部材)126が外嵌されており、該コイルスプリング126により、常時、ケース106側へと付勢されている。
従って、メインモニタ14の上下位置を固定している状態では、ストッパピン110がコイルスプリング126の付勢作用下にケース106の所定の位置決め孔部108に挿入されており、メインモニタ14の上下位置が確実に固定されている(図8参照)。
一方、メインモニタ14を上下方向に移動させる際には、例えば右手で操作ボール125を把持し、コイルスプリング126の付勢に抗してストッパピン110を手前に引き寄せることにより、該ストッパピン110を位置決め孔部108から離脱させ、同時に操作バー104を左手で把持して引き上げ又は引き下げることで、可動レール100やケース106、つまりメインモニタ14を容易に上下動させることができる。そして、所望の高さにメインモニタ14が設置された後は、該高さ位置に対応した位置決め孔部108にストッパピン110を挿入することで当該高さ位置にメインモニタ14を固定することができる(図8及び図9参照)。この際、メインモニタ14の上下動は、ダンパ118によって補助されているため、操作バー104の操作は片手で容易に行うことができると共に、メインモニタ14(可動レール100)が必要以上に動きすぎることを押さえることができ、一層スムーズな上下動が可能となる。
この場合、ケース106の上下方向で、例えば3箇所設けられる位置決め孔部108について、例えば、メインモニタ14を最も高く設定する位置決め孔部108の近傍には、「大人用」又は「身長180〜170cm用」と表示し、メインモニタ14を中間的な高さに設定する位置決め孔部108の近傍には、「高・中学生用」又は「身長170〜150cm用」と表示し、メインモニタ14を最も低い高さに設定する位置決め孔部108の近傍には、「子供用」又は「身長150cm以下用」と表示しておくことも有効である。
以上より、このようなモニタ位置調整機構22では、運転者の体格に合った見易い視点調整を容易に行うことができる。また、フリクション部材116を設けたことにより、可動レール100の移動が一層スムーズになると共に、調整時や調整後のガタツキの発生を有効に防止することができる。
なお、本実施形態の場合、ストッパピン機構112は、メインモニタ14を背面側から見た方向で右側の可動レール100及びケース106等に対応して設置されているが、ストッパピン機構112はボルト122の取り外しのみで容易に本体枠17に対して着脱できることから、左側の可動レール100及びケース106等に対応した位置にストッパピン機構112を設置してもよい。これにより、当該自転車シミュレーション装置10の設置条件、例えば壁や他の機器等の配置等に応じてストッパピン機構112の設置位置を変更することができる。
図6に示すように、可動レール100の外側はケース106で保護されているが、さらに、固定レール102の外側は本体枠17に固定したカバー128で覆われている。つまり、可動レール100とケース106は、カバー128の内側で摺動自在に構成されていて(図7参照)、且つ、ダンパ118は、その可動側である上部がケース106内に収納され、その固定側である下部がカバー128内に収納される。このため、モニタ位置調整機構22によってメインモニタ14の高さ位置がどのような位置に調整された場合にも、可動レール100や固定レール102、ダンパ118がケース106とカバー128により外部に露出することが防止されている。
次に、サドル位置調整機構44及びハンドル位置調整機構46について説明する。図10は、模擬自転車12の側面図であり、2点鎖線によりサドル34及びハンドル40の移動範囲を図示している。
図10〜図12に示すように、ハンドル位置調整機構46は、ハンドルポスト36の上下方向に沿って複数形成された高さ調整用の貫通孔(調整孔)130と、ハンドル側ベースパイプ52の上端開口部の近傍に形成されたボルト挿通孔132と、該ボルト挿通孔132に挿通される位置決めボルト134と、位置決めボルト134に対して略直角方向に設置される押さえボルト136とを備える。位置決めボルト134及び押さえボルト136の各頭部には、それぞれ締結用ノブ134a、136aが設けられている。締結用ノブ134a、136aは、人手で把持してボルトを回転させるのに適した形状となっている。
各貫通孔130はハンドルポスト36を模擬自転車12の車体左右方向に貫通し、ボルト挿通孔132はハンドル側ベースパイプ52を車体左右方向に貫通している。つまり、位置決めボルト134は、ボルト挿通孔132及び貫通孔130に対して車体左右方向へと挿通され(図11参照)、挿通先端側がハンドル側ベースパイプ52の側面に溶接等によって固着された固定ナット137に締結されることで、ハンドルポスト36及びハンドル側ベースパイプ52を左右両側から締付け、ハンドル40を任意の高さ位置に固定することができる。この際、ハンドル40の高さ位置を固定する位置決めボルト134は、ハンドルポスト36を貫通して配置されるため、単にハンドルポスト36を外側から押圧するような構造に比べて、固定強度を大幅に高めることができ、ハンドル40のガタツキも抑制することができる。
図11及び図12に示すように、ハンドルポスト36を貫通する貫通孔130は、位置決めボルト134の円滑な挿入をガイドするため、位置決めボルト134の挿入基端側の縁部に、図11に示す平面視で略台形状からなる円錐状の座繰り130aが形成され、位置決めボルト134の挿入先端側の縁部に端面をカットした面取り130bが形成されている。一方、ボルト挿通孔132の位置決めボルト134の挿入基端側の縁部には、前記座繰り130aに対応した拡径部132aが形成されている。
さらに、位置決めボルト134の基端側にはカラー138が挿入されており、該カラー138のテーパ面138aが、位置決めボルト拡径部132a及び座繰り130aが連続したテーパ部に対応して配置されることにより、位置決めボルト134は、ボルト挿通孔132及び貫通孔130に安定して挿通・固定される。
図11及び図12に示すように、押さえボルト136は、前方に傾斜しているハンドル側ベースパイプ52及びハンドルポスト36の後方側に溶接等によって固着された固定ナット140に螺入される。押さえボルト136は、固定ナット140に対応してハンドル側ベースパイプ52に形成された孔部142を介して、その先端のボール部分(金属球)がハンドルポスト36の側面に当接可能である。
従って、押さえボルト136は、位置決めボルト134で所定の高さ位置に設定されたハンドルポスト36をハンドル側ベースパイプ52の内周面に押さえ付け、そのガタツキを防止することができる。この際、ハンドル側ベースパイプ52及びハンドルポスト36が前方に傾斜しているため、ハンドルポスト36はハンドル側ベースパイプ52内で前方に荷重がかかる。そこで、押さえボルト136はハンドルポスト36を後方から押さえ付けることで、より効果的にガタツキを防止することができる。
なお、サドル位置調整機構44は、上記したハンドル位置調整機構46と略同用な構成からなることから、ハンドル位置調整機構46の各構成要素の参照符号に「S」を付して、その詳細な説明は省略する。
すなわち、サドル位置調整機構44は、サドルポスト32の上下方向に沿って複数形成された高さ調整用の貫通孔(調整孔)130Sと、サドル側ベースパイプ54の上端開口部の近傍に形成されたボルト挿通孔132Sと、該ボルト挿通孔132Sに挿通される位置決めボルト134Sと、位置決めボルト134Sに対して略直角方向に設置される押さえボルト136Sとを備え、位置決めボルト134Sが所定の貫通孔130S及びボルト挿通孔132Sに挿通させて固定ナット137Sに締結されることで、サドル34を任意の高さ位置に調整することができる。当然、サドル位置調整機構44でも、サドルポスト32には、座繰り130aや面取り130b、カラー138、固定ナット140等が設けられている。
図10に示すように、サドル位置調整機構44では、押さえボルト136Sがサドルポスト32を押さえ付ける方向が、車体後方側を向いており、上記ハンドル位置調整機構46での押さえボルト136と反対方向となっている。これは、サドル側ベースパイプ54及びサドルポスト32が後方に傾斜していることに対応したものであり、つまり、サドルポスト32はサドル側ベースパイプ54内で後方に荷重がかかるため、前方から押さえ付けることで、より効果的にガタツキを防止することができるからである。
自転車シミュレーション装置10では、このようなサドル位置調整機構44及びハンドル位置調整機構46を備えたことにより、図13及び図15に示すように、大きな体格の運転者D1や小さな体格の運転者D2、一般的(中間的)な体格の運転者D0に対して、サドル34やハンドル40、メインモニタ14の高さ位置を適切に調整することができる。すなわち、図15に示すように、大きな体格の運転者D1に対しては、ハンドル40を高い位置(5)に設定し、サドル34を高い位置(5)又は(6)に設定し、メインモニタ14を最高位置に設定するとよく、小さな体格の運転者D2に対しては、ハンドル40を低い位置(1)又は(2)に設定し、サドル34を低い位置(1)又は(2)に設定し、メインモニタ14を最低位置に設定するとよく、その中間的な体格の運転者D0に対しても同様である。
この際、ハンドル40及びサドル34の高さ調整数(調整段数)を規定する貫通孔130、130Sは、サドル位置調整機構44では、例えば6個設けられ、ハンドル位置調整機構46では、例えば5個設けられる。つまり、本実施形態の場合、ハンドル40の高さ調整段数は5段階であり、サドル34の高さ調整段数は6段階となっている。このように、調整段数をハンドル40よりもサドル34の方が多く設定しておくことにより、ハンドル40の高さ位置に応じてサドル34の高さ位置をより細かく調整することができるため、運転者は一層適切なポジショニングを得ることができる。しかも、サドル34は、ペダル82との位置関係も考慮する必要があることから、ハンドル40側よりもサドル34側の調整段数を多く設定しておくことで、より最適なポジショニングが可能となる。また、上記のように、ハンドル40の調整段数が5段階であり、サドル34の調整段数が6段階であると、ほとんどの体格の運転者に適切な乗車ポジションの設定が可能となる。
すなわち、ハンドル40とサドル34の両方に高さ位置を所定数設定したので、従来技術のように高さをリニアに可変するものに対して、簡易で安定的な固定構造が採用でき、運転者による調整もスピーディに行うことができる。また、ハンドル40の調整可能な高さ位置がサドル34よりも少なく設定してあるので、人の体格(足の長さ等)に合わせたサドル34の位置調整が広範囲で行えるため、ペダル漕ぎ運転に違和感がなく、ハンドル40の位置は、運転者が腕を曲げたり、角度を変えたりして少ない位置に対応が可能となり、ハンドル位置調整機構46もシンプルに構成することができる。
図13から諒解されるように、ハンドルポスト36の移動軸は前傾斜であり、ヘッドパイプ38とハンドル40とが一体的に高さ調整される。このため、小さな体格の運転者D2に対応させるため、ハンドル40の高さ位置を低く調整する際には、ハンドル40が単に鉛直方向で低くなるだけでなく、サドル34側にも次第に近接するように調整されるため、サドル34とハンドル40との間隔が近くなり、小さな体格の運転者D2にとって一層適切なポジショニングが可能となっている。当然、ハンドル40を高い位置に設定した場合には、サドル34とハンドル40との距離が遠くなるため、大きな体格の運転者D1によっても適切なポジショニングが容易であり、他の体格の運転者にとっても同様である。しかも、サドル34の移動軸は後傾斜であることから、ハンドル40及びサドル34の高さ位置調整によるサドル34とハンドル40との間隔は、一層適切に調整されることになる。
次に、ペダル負荷調整機構92について説明する。
図5に示すように、ペダル負荷調整機構92は、フライホイール88の外周面に当接して従動回転され、該フライホイール88に当接負荷を与えるローラ90と、ローラ90を略中央部の回転軸150によって軸支する負荷レバー(ローラ支持部材)152と、負荷レバー152の上端部に接続されたスプリング(弾性部材)154と、スプリング154が発生する付勢力の強さを調整するための調整ボルト(荷重調整ねじ)156とを有する。負荷レバー152は、その下端部が車体フレーム(サドル側ベースパイプ54)に固着されたブラケット158に設けられた揺動軸(回動軸)160によって揺動可能に軸支されている。
ローラ90は、外周にゴム製のライニングを取り付けた構成であり、ゴムの弾性によるダンパー効果によって、フライホイール88に実走行に近い回転抵抗を付与することができ、これにより模擬自転車12では実車に近いペダル82の踏み心地を得ることができる。
調整ボルト156は、その頭部に締結用ノブ156aが設けられると共に、略中央部が車体側(アッパーステー76)に固定された取付ステー162を貫通しており、その先端がスプリング154が接続されたジョイントナット164に螺入されている。
従って、ペダル負荷調整機構92では、締結用ノブ156aを把持して調整ボルト156のジョイントナット164への締め付け状態を適宜変更することにより、スプリング154による負荷レバー152の引き寄せ力が変更され、これによりローラ90のフライホイール88への接触抵抗が増減され、ペダル82の負荷を容易に変更することができる。
すなわち、ペダル負荷調整機構92では、簡単かつ軽量な機構によってペダル82の負荷を調整することができ、また、模擬自転車12の略中央に当該ペダル負荷調整機構92が配設されることで、自転車シミュレーション装置10の小型化が可能となる。
しかも、図1及び図5から諒解されるように、調整ボルト156の締結用ノブ156aは、サドルポスト32(サドル34)近傍の後側下方でカバー99の上方外部に配置されている。このため、調整ボルト156の操作を楽な姿勢で容易に行うことができる。また、運転者や管理者等が容易にペダル負荷調整機構92を操作することができ、例えば模擬自転車12の運転中であっても運転者又は運転者以外の者によって調整を行うことができる。
さらに、調整ボルト156(スプリング154)が上方側に配置されることで、下端が揺動軸160によって軸支される負荷レバー152の寸法を可及的に大きくすることができるため、負荷レバー152のレバー比を十分に確保でき、調整ボルト156の操作トルクが小さくなり、力の弱い者であっても容易にペダル負荷を調整することができる。つまり、負荷レバー152は、作用点であるローラ90の回転軸150を略中央に有し、回転軸150よりも下方に回動支点である揺動軸160を有し、回転軸150よりも上方に力点であるスプリング154との接続部を有することにより、調整ボルト156の調整に要する力(トルク)を有効に低減している。
また、ペダル負荷調整機構92では、調整ボルト156以外の構成要素は、カバー99内に収納されているため、運転者の衣服等が負荷レバー152やスプリング154等に接触することが防止されると共に、当該自転車シミュレーション装置10の外観も向上している。
次に、リヤモニタ18の配置構造について説明する。
図1〜図4に示すように、リヤモニタ18を支持するリヤスタンド30は、メインフレーム26のアンダーパイプ50の端部に連結部28で連結される連結パイプ(連結部)170と、連結パイプ170の他端側を鉛直方向に立ち上げて、その上端側にリヤモニタ18が固定される鉛直パイプ(保持部)172と、鉛直パイプ172の立ち上げ基端部周辺を補強して、リヤモニタ18を安定して支持するために床面に固定される円環パイプ(保持部)174とから構成されている。
図1及び図4に示すように、連結パイプ170は、連結部28に近い部分が模擬自転車12の車体前後方向に沿っており、その後方側が屈曲して模擬自転車12の後輪42の前方から車体右後方へと延びている。
図2及び図5に示すように、連結部28において、メインフレーム26のアンダーパイプ50と連結パイプ170とは、アンダーパイプ50側が棒状パイプである一方、連結パイプ170側がスリット170aを有する中空パイプであり、該連結パイプ170に前記アンダーパイプ50の端部を差し込み、連結パイプ170の外周から連結ボルト176で締結されることで互いに連結される。
図1、図2及び図5に示すように、リヤモニタ18からのハーネス178は、鉛直パイプ172内から連結パイプ170内へと通されて、該連結パイプ170の端部近傍に形成された孔部170bから外部に取り出されて立ち上げられ、その先端のUSBコネクタ(コネクタ)178aが模擬自転車12の下部に設けられたUSB端子(コネクタ)180に接続される。USB端子180に結線後のハーネス184は、模擬自転車12前方に設けたUSBコネクタ186に接続され、メインモニタ14の下方に設けた制御装置20から延びるハーネス(188)のUSBコネクタ(コネクタ)190と結線され、これによりリヤモニタ18をメインフレーム26側(フロントスタンド16)に配置された制御装置20で表示制御することができる。このようにリヤモニタ18からの配線(ハーネス)が各コネクタを介して制御装置20へと接続されることにより、当該自転車シミュレーション装置10の各部の分解及び組立を一層簡便に行うことができる。つまり、リヤスタンド30、模擬自転車12、メインモニタ14の各々をコネクタで分離でき、各々を分解するときの配線の処理が容易となる。この場合、図14に示すように、USB端子180からのハーネス184は、センターフレーム56内から第2制御ボックス62内へと通って、模擬自転車12の前方へと導出される。センターフレーム56、ハンドル側ベースパイプ52及び第2制御ボックス62へのハーネス184の出入口には、ゴム製等のグロメット192a〜192dをそれぞれ配設しておくことで、ハーネス184を保護することができる。
なお、USBコネクタ178a等が外れた場合には、メインモニタ14にその箇所を表示し、再接続されることで再起動させるとよい。勿論、リヤモニタ18と制御装置20とは、USB接続以外の接続方法で接続してもよい。
このようなリヤスタンド30を用いてリヤモニタ18を配置することにより、車体とリヤモニタ18の位置関係をリヤスタンド30を接続するだけで所望の位置にセットすることができ、運搬等の必要なときにリヤスタンド30を模擬自転車12等から連結部28により容易に分割することができ、収納スペースや運搬時のサイズも小さくすることができる。勿論、上記したように、当該自転車シミュレーション装置10では、リヤスタンド30以外の部位、つまり模擬自転車12、フロントスタンド16及びメインモニタ14もそれぞれ分割することができる4分割構造となっているため、収納や運搬が一層容易となっている。この場合、連結部28は、中空パイプである連結パイプ170側に棒状パイプであるアンダーパイプ50を差し込むだけのシンプルな構造であるため、組み立てや取り外しが容易となっている。
また、リヤスタンド30は、模擬自転車12の車体下方から後輪42の前方を通り、車体の右後方位置から上方に立ち上げて設置されることにより、リヤモニタ18が運転者の真後ろではなく、側方にオフセットして配置されるため、通常の自転車の交通に合わせた位置に該リヤモニタ18を配置することができる。さらに、リヤスタンド30は、車両のメインフレーム26と連結しており、倒れに強くされており、スタンド中空部に配線を通すことにより、配線の保護、邪魔にならない態様となっている。さらに、車体側のコネクタであるUSB端子180が、ペダル82の下後方近傍に設けられることにより、運転者の足がくる付近の地面には配線がないため、配線が一層邪魔にならないという利点がある。
リヤスタンド30は、シンプル且つ軽量な構造でありながら、連結部28や円環パイプ174を設けることで、安定して床面上に設置可能である。この際、連結パイプ170や鉛直パイプ172がパイプ部材であり、その内部にリヤモニタ18からのハーネス178が通されることで、該ハーネス178が邪魔になることがない。
また、連結パイプ170は、連結部28に近い部分が模擬自転車12の車体前後方向に沿っており、その後方側が屈曲して模擬自転車12の後輪42の前方から車体右後方へと延びていることにより、リヤモニタ18が運転者の真後ろに設置されることがなく、視認性も良好である。
本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。