JP5138964B2 - 潤滑油組成物及びその製造方法 - Google Patents
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しかしながら、この効果は新油時には大きいものの、走行距離が増加するに従い徐々に消失する。実際の自動車においては、エンジン油を充填後早い場合で数千km走行、長くても1万kmの走行で燃費向上効果は消失する。これはモリブテン化合物自体が消失あるいはモリブテン化合物による摩擦低減効果を発揮させるのに必要な摩耗防止剤の消失によるためである。これら化合物の消失は、熱や酸化によるモリブデン化合物の分解や走行に伴い発生する他化合物の劣化物等による分解が原因である。
長寿命性能に関して、市販のエンジン油は長くても2万km程度で交換する必要がある。エンジン油を交換せずに自動車を使用できることが、エンジン油の廃棄物が低減でき最も理想的であり、なるべく交換期間を長くすることによって交換回数が減り、該廃棄物の低減に寄与することが可能となる。エンジン油が交換を必要とする理由は、モリブデン化合物同様に、エンジン油に配合される添加剤が消失してしまうためである。これら添加剤の消失は、熱や酸化による添加剤自身の分解や走行に伴い発生する他化合物の劣化物等により分解されてしまうためである。
従って、省燃費性やその他の必要性能を長期に渡り維持するためには、エンジン油に使用される添加剤の寿命をいかに長くすることができるかが課題である。また、エンジン油以外の他の潤滑油においても、配合される添加剤が消失し、その機能が低下するため、長期に渡りその性能を維持できる技術が望まれている。なお、近年の長寿命潤滑油としては、ジチオリン酸亜鉛に代えて特定のリン化合物を含有する潤滑油組成物が提案されている(例えば特許文献3参照)。
本発明の別の課題は、長期にわたり潤滑性能の低下が抑制され、長期間の使用を可能とした、含有されるマイクロカプセルの分散状態を有効に維持した潤滑油組成物を、効率良く製造する潤滑油組成物の製造方法を提供することにある。
本発明の製造方法は、上記工程(1)〜(4)を含むので、長期にわたり潤滑性能の低下が抑制され、長期間の使用を可能とした、含有されるマイクロカプセルの分散状態を有効に維持した潤滑油組成物を、効率良く製造することができる。
本発明の組成物に用いる潤滑油基油は特に制限はなく、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油及び/又は合成系基油が使用できる。
鉱油系基油としては、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、フィッシャートロプシュプロセス等により製造されるGTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される潤滑油基油が例示できる。
潤滑油基油の動粘度は、100℃において、通常1〜10mm2/s、好ましくは2〜6mm2/s、更に好ましくは3〜5mm2/sであり、40℃において、通常15〜40mm2/s、好ましくは18〜30mm2/s、更に好ましくは20〜25mm2/sである。
潤滑油基油の%CAは通常10以下、好ましくは3以下である。また、%CPは、通常50以上、好ましくは60以上、特に好ましくは70以上である。
%CA及び%CPは、ASTM D 3238−85に準拠した方法(n−d−M環分析)により求められる、芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率及びパラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率をそれぞれ意味する。
潤滑油用添加剤は、マイクロカプセルにその種類の一部若しくは全部を内包させることができ、また、必ずしも潤滑油用添加剤の全てをマイクロカプセルに内包させる必要はなく、マイクロカプセル外の潤滑油基油に配合することもできる。
マイクロカプセルの粒径は特に限定されないが、通常0.05〜5μm、好ましくは0.1〜4μmである。
粘度指数向上剤の配合割合は、組成物全量基準で通常0.1〜20質量%である。
アルキル基又はアルケニル基としては、直鎖状でも分枝状でも良く、好ましいものとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基が挙げられる。
なお、コハク酸イミドとしては、イミド化に際しては、ポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した、式(1)のようないわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した、式(2)のようないわゆるビスタイプのコハク酸イミドがあるが、そのいずれでも、またこれらの混合物でも使用可能である。
このホウ素化合物による変性の方法は何ら限定されるものでなく、任意の方法が可能であるが、例えば、上述の含窒素化合物又はそれらの誘導体に、ホウ酸、ホウ酸塩又はホウ酸エステル等のホウ素化合物を作用させて、含窒素化合物又はそれらの誘導体中に残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化する方法が挙げられる。
無灰分散剤の配合割合は、組成物全量基準で通常0.1〜10質量%である。
金属清浄剤の配合割合は、組成物全量基準で、通常0.1〜10質量%である。
摩耗防止剤又は極圧剤の配合割合は、組成物全量基準で、通常0.01〜5質量%である。
潤滑油用添加剤としての前記摩擦調整剤としては、例えば、脂肪酸エステル系、脂肪族アミン系、脂肪酸アミド系等の無灰摩擦調整剤、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェート等の金属系摩擦調整剤が挙げられる。
摩擦調整剤の配合割合は、組成物全量基準で、通常0.01〜5質量%である。
酸化防止剤の配合割合は、組成物全量基準で、通常0.1〜5質量%である。
潤滑油用添加剤としての腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物が挙げられる。
腐食防止剤の配合割合は、組成物全量基準で、通常0.01〜5質量%である。
潤滑油用添加剤としての消泡剤としては、例えば、シリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリシレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール、アルミニウムステアレート、オレイン酸カリウム、N−ジアルキル−アリルアミンニトロアミノアルカノール、イソアミルオクチルホスフェートの芳香族アミン塩、アルキルアルキレンジホスフェート、チオエーテルの金属誘導体、ジスルフィドの金属誘導体、脂肪族炭化水素のフッ素化合物、トリエチルシラン、ジクロロシラン、アルキルフェニルポリエチレングリコールエーテルスルフィド、フルオロアルキルエーテルが挙げられる。
消泡剤の配合割合は、組成物全量基準で、通常0.0005〜1質量%である。
均一な粒径を有するマイクロカプセルを製造するためには、マイクロカプセルの製造条件を適宜調整することが好ましいが、粒度分布を有するマイクロカプセルから、遠心分離法やフィルター法によって均一な粒径を有するマイクロカプセルを分離してもよい。
なお、マイクロカプセルの膜材については、特に制限はないが、アミノアルデヒド樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等の合成高分子系の膜材が挙げられる。ここで、アミノアルデヒド樹脂壁膜カプセルは、例えば尿素、チオ尿素、アルキル尿素、エチレン尿素、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、グアニジン、ビウレット、シアナミド等の少なくとも1種のアミン類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、グルタールアルデヒド、グリオキザール、フルフラール等の少なくとも1種のアルデヒド類、あるいはそれらを縮合して得られる初期縮合物等を使用したin-situ重合法によって製造される。ポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂壁膜カプセルは、例えば、多価イソシアネートと水、多価イソシアネートとポリオール、イソチオシアネートと水、イソチオシアネートとポリオール、多価イソシアネートとポリアミン、イソチオシアネートとポリアミン等を使用した界面重合法によって製造される。また、ポリアミド樹脂壁膜カプセルは、例えば酸クロライドとアミン等の界面重合法によって製造される。これらの中では、アミノアルデヒド樹脂として、メラミンとホルムアルデヒドとを原料とするメラミン樹脂であることが好ましい。なお、メラミン樹脂の原料としてはメラミンとホルムアルデヒドとをアルカリ条件下で縮合させて得られるメチロールメラミンを使用すると、反応工程が1段階減るため、特に好ましい。メチロールメラミンは、加熱することで重縮合を起こしメラミン樹脂が得られる。
無灰分散剤としては、前述の無灰分散剤が例示でき、特に、炭素数8〜400の炭化水素基を有するコハク酸イミド系分散剤、炭素数8〜400の炭化水素を有するポリアミン系分散剤又はこれらの2種以上の混合物が好ましい。
また、組成物全量基準では、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜10質量%である。上記範囲外では、本発明の所望の効果が低下する恐れがある。
工程(1)において、潤滑油用添加剤を内包したマイクロカプセルは、上述の材料を用いて水中に分散してマイクロカプセルを調製することにより得ることができる。
混合物(a)の調製は、例えば、まず、上記水中に分散したマイクロカプセルを、遠心分離機等によって沈降させ、上澄み液を取り除き、エタノール等のアルコールを添加する一連の操作を繰返して水分をほとんど除去する。次いで、ヘプタン等の油溶性の鎖状炭化水素化合物を添加してアルコールと同様な操作を繰返す方法等により行うことができる。
工程(2)において混合物(b)の調製は、上述の潤滑油基油と、上述の無灰分散剤及び/又はポリエーテル系界面活性剤、必要により上述の潤滑油用添加剤の少なくとも1種以上とを公知の方法により混合することにより行うことができる。
工程(3)において混合は、公知の方法で行うことができる。また、工程(3)において、必要に応じて混合物(a)及び(b)以外の、上述の潤滑油用添加剤の少なくとも1種を混合することもできる。
工程(4)において、油溶性の鎖状炭化水素化合物の除去は、例えば、混合物を真空ポンプ等の減圧器を用いて減圧することにより行うことができる。
なお、本発明の製造方法において、マイクロカプセルの製造法は上述したとおりであるが、本発明においては、水性媒体と、潤滑油添加剤を含む疎水性芯物質を乳化させる工程と、該工程により得られた乳化液に上述の膜材を反応させる工程を含むことが好ましい。ここで、水性媒体としては、例えばイソブチレン−無水マレイン酸共重合体のような乳化分散剤を、例えば5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%含有する水溶液が挙げられる。また、潤滑油添加剤を含む疎水性芯物質としては、上述の潤滑油添加剤を上述の潤滑油基油等の疎水性媒体に溶解したものが挙げられる。
また、該水性媒体と該疎水性芯物質を乳化させる工程としては、これらを混合し、例えば5〜90℃、好ましくは40〜80℃にて、高速回転型攪拌機等を用いて乳化させることができる。さらに、乳化液に膜材を反応させる工程においては、上述のマイクロカプセルの膜材の原料を、例えば10〜90質量%、好ましくは50〜80質量%含む水溶液の形で、該乳化液と好ましくは5〜45℃の低目の温度で攪拌しながら添加し、その後昇温し、好ましくは50〜80℃、より好ましくは55〜65℃で、例えば1〜10時間、好ましくは2〜6時間反応させる。なお、乳化分散剤の量を多くすると粒径がより小さなマイクロカプセルを得ることができ、少なくするとマイクロカプセル粒径が大きくなるため、上記疎水性物質と乳化分散剤の有効成分との混合割合(質量比)を、好ましくは50:1〜1:0.1、より好ましくは20:1〜5:1とすることが望ましい。
実施例1〜3及び比較例1〜4
(マイクロカプセルの製造)
乳化分散剤としてイソブチレン−無水マレイン酸共重合体の22質量%水溶液(日昇工業製「MICRON8020」)45.5質量部および水154.5質量部を混合し、水性媒体Aを得た。次に表1に示したジチオリン酸亜鉛30質量部を潤滑油用水素化分解基油70質量部に溶解させ、疎水性芯物質Bを得た。
上記水性媒体Aと疎水性芯物質Bを60℃にて高速回転型攪拌機(特殊機化工業製「TKオートホモミクサーROBO MICS」)を用いて乳化し、体積平均粒径3.0μmの乳化液を得た。さらに該乳化液を40℃に保ちながら攪拌し、メチロールメラミンの70質量%水溶液(HOPAX社製「HP−304」)35.7質量部を乳化液に添加し、その後乳化液の温度を60℃に昇温させ、3時間反応させて体積平均粒子径3.1μmのマイクロカプセルスラリーを得た。
上記のようにして得られたマイクロカプセルスラリーから、マイクロカプセルを、遠心分離機により沈降させ、その上澄みを取り除き、エタノールに置換した。この作業を数回繰返し、水分をほとんど除去した後に、同様な作業でエタノールからヘプタンに置換を行った。該ヘプタンの上澄みを取り除き、ヘプタン置換マイクロカプセルを調製した。
一方、表1に示す界面活性剤及び/又は無灰分散剤としてのポリブテニルコハク酸イミド等を、水素化精製鉱油に配合溶解した混合物を調製した。
該混合物と、ヘプタン置換マイクロカプセルとを混合し、真空ポンプで減圧することによりヘプタンを除去し、マイクロカプセルが水素化精製鉱油に分散された潤滑油を調製した。
得られた潤滑油について、マイクロカプセルの凝集の有無を目視及び光学顕微鏡により観察した。また、シリンダー型の試験片を使用し、荷重400N、油温120℃、振幅幅1.5mm、振動数50HzにてSRV試験を行い、新油時及び劣化試験後の潤滑油の摩擦係数を測定した。なお、劣化試験は供試油にNO2を1000ppmおよびNOを200ppm含むガスを135ml/分で吹き込みつつ、120℃に48時間保持し実施した。また、劣化試験開始時および24時間後に、供試油100gに対し水2gを滴下し、室温で1時間攪拌を実施した。結果を表1に示す。表1中のMCはマイクロカプセルの略である。
2)メラミン樹脂の膜材により形成。カプセルの組成は22質量%がジアルキルジチオリン酸亜鉛(Zn含有量8.2質量%、リン含有量6.3質量%)アルキル基:2−エチルヘキシル基、51.2質量%が1)の基油、残りの主成分が膜材のメラミン樹脂。
3)メラミン樹脂の膜材により形成。カプセルの組成は73.2質量%が1)の基油、残りの主成分が膜材のメラミン樹脂。
4)ジアルキルジチオリン酸亜鉛(Zn含有量8.2質量%、リン含有量6.3質量%)アルキル基:2−エチルヘキシル基。
5)ポリオキシレンドデシルエーテル
6)ポリオキシレンオレイルエーテル
7)ビスポリブテニルコハク酸イミド(ビスタイプ、ポリブテニル基の数平均分子量1300、窒素含有量1.6質量%)
Claims (5)
- 潤滑油用添加剤を内包したマイクロカプセルと油溶性の鎖状炭化水素化合物との混合物(a)を準備する工程(1)と、
潤滑油基油に、少なくとも無灰分散剤及び/又はポリエーテル系界面活性剤を配合した混合物(b)を準備する工程(2)と、
混合物(a)及び混合物(b)を混合する工程(3)と、
工程(3)で調製した混合物から、混合物(a)に含まれる鎖状炭化水素化合物を除去する工程(4)と、
を含むことを特徴とする、潤滑油用添加剤を内包したマイクロカプセルが分散した潤滑油組成物の製造方法。 - 工程(1)で準備する混合物(a)が、水中に分散した、前記潤滑油用添加剤を内包したマイクロカプセルを沈降させた後、上澄み液を取り除き、アルコールを添加する一連の操作を繰り返して水分をほとんど除去し、次いで、上澄み液を取り除き、油溶性の鎖状炭化水素化合物を添加する一連の操作を繰り返してアルコールをほとんど除去することにより得たものである請求項1記載の製造方法。
- 無灰分散剤が、コハク酸イミド系分散剤及びポリアミン系分散剤の少なくとも1種を含む請求項1又は2記載の製造方法。
- マイクロカプセルの壁材が、メラミン系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- マイクロカプセルに内包させる潤滑油用添加剤が、分散剤、清浄剤、極圧剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、腐食防止剤、消泡剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤及び防錆剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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