JP5137258B2 - 推進性能向上装置 - Google Patents
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Description
また、特許文献2のように、これを小型船舶に適用し、フィンをプロペラ軸の上方のみに設け、フィンの直径をプロペラ直径の55%以上110%以内に限定したものも知られている。
なお、大型船、中型船においては、特許文献3の図13に示すように、ボッシング製作時にルートフィンを鋳物で作製しておき、そのルートフィンにフィンを溶接する方法が採用され、小型船においては、フィンを直接ボッシングに溶接する方法が採用されている。
次に、プロペラ軸より上部のスターンフレーム直後の流れを整流するものとして、整流板があるが、従来のものは船体中心線上に取り付けられているので、プロペラに流入する流れをプロペラ回転方向と逆方向に偏向する作用が弱かった。
さらに、従来のリアクションフィンにおいては、フィン先端がプロペラ翼先端と同程度に突出しているため、水面上を流れてくる流木等の異物がプロペラ回転により水面下に巻き込まれて衝突したり、係留用ロープがフィンと接触したりし、特に、水平方向のフィンが損傷する虞があった。
また、小型船でボッシングに直接フィンを溶接するタイプのものでは、航行中、船体の上下揺れ、縦揺れにより、水平方向フィンにかかる流体力が大きくなる(その他に船体周りの流れによる流体力も働くが、この力は相対的に小さい。)ため、その流体力に耐えるためには、水平方向フィンの長さは最大1.6m程度が限度であった。そして、上記特許文献2ではフィンの直径をプロペラ直径の55〜110%(推進性能向上の見地からは100〜110%、同文献図9参照)としているため、フィン設置の対象となる船舶のプロペラは最大4.2m程度が限度であった。
そこで、本発明は、このような課題を解決し、製作コストが安く、推進性能の向上が図られ、異物衝突によるフィン損傷の危険が少なく、かつ設置できる船舶の対象が広い推進性能向上装置を提供するものである。
なお、上記「幅方向やや下向き」とは「フィンの後縁の中心線と鉛直上方に向かう線とのなす角が92〜110度の範囲内の向き」を意味し、以下、本明細書において全て同じ意味で用いる。
次に請求項2記載の推進性能向上装置は、請求項1記載の推進性能向上装置において、前記幅方向やや下向きフィンは、プロペラ翼上昇舷側におけるひねり角が反対舷側におけるひねり角より大きいことを特徴とするものである。
次に請求項3記載の推進性能向上装置は、請求項2記載の推進性能向上装置において、前記幅方向やや下向きフィンは、その先端に、長さがフィン先端翼長さと同一であり、かつフィン先端翼断面よりプロペラの回転方向と逆向き方向に張り出した翼端板を有し、その翼端板のフィン先端翼断面からの突出量の幅方向平均値がフィン先端翼断面の最大厚さの1〜2倍であることを特徴とするものである。
すなわち、従来、最も流れの速い箇所で且つプロペラ半径方向に流速変化の大きいところに置かれ、抵抗増加が大きかったフィンに替えて、流速の遅い範囲にフィンを配置することにより、フィンの抵抗増加を減少させると共に、より有効にプロペラ前方でプロペラ回転方向と逆向きの旋回流を発生させて、プロペラによる旋回流を減少させることにより、推進性能が向上する。
また、幅方向やや下向きフィンの先端に、プロペラ回転方向と逆向きに張り出した翼端板を取り付けることにより、フィン翼端を通過する流れを防止し、フィンによる流れの偏向効果が強まり、推進性能が向上する。
次に、本発明においては、鉛直線に沿ってプロペラ翼上昇舷側に折り曲げられた1枚の板を、プロペラ軸上部のスターンフレームに、船体中心線からプロペラ翼下降舷側にずらして設置した整流板を採用しており、この整流板により、より強いプロペラ旋回流と逆向きの偏向流れを発生させることができるので、推進性能が向上する。
次に、本発明に係る装置においては、幅方向やや下向きフィンの長さが従来のものと比べ半分程度となる。フィンは飛行機の翼と同じ厚みを持つ翼で、複板構造となっており、このフィンの長さが短くなると、材料費、加工費が低減され、製作コストが下がる。全てのフィンが同じ長さである従来例に比して、本発明に係る装置では、フィンがほぼ1本少なくなったのと同じだけ製作コストが低減する。さらに、ボッシングに直接フィンを溶接する方法によってフィンを取り付けた場合、船体の縦揺れ、上下揺れ等の流体力は、幅方向やや下向きフィンに最も強く作用し、そのフィンのボッシング取付部から先端までの長さは約1.6mが限度である。ところが、本発明においては、幅方向やや下向きフィンの半径をプロペラ半径の35〜55%としているため、小型船のみならず、プロペラ直径が約5mまでの中型船にも溶接構造で設置できる。
図1は、本発明にかかる推進性能向上装置の実施例1を示す側面図(右舷側)である。船体1の船尾中心部にはスターンフレーム2が設けられており、プロペラ4の軸5を支持するためのボッシング3が取り付けられている。そのボッシング3にフィン7〜10が取り付けられている(図1には左舷側に取り付けられたフィン7、8は図示されていない。)。また、ボッシング3より上のスターンフレーム2には整流板11が取り付けられている。
図2中11は整流板であるが、これについては後述する。
斜め上方のフィン8、9は、その半径がプロペラ半径と同一である。斜め上方フィンにおいては、その半径は、プロペラ半径の85〜115%が望ましい。
幅方向やや下向きフィン7、10はその半径がプロペラ半径の55%となっている。幅方向やや下向きフィンのスパン方向で先端から根本(基端)にかけて、流れが上向きから下向きに変わり、且つ先端での速い流れから基端に向って遅くなる。したがって、フィンの抵抗増加を抑え、且つ旋回流を発生させるためには、幅方向やや下向きフィンの半径は、プロペラ半径の35〜55%が望ましい。
整流板11は、図1に示すようにスターンフレーム2とプロペラ4との間に設けられるが、プロペラ軸芯よりプロペラ半径の70%だけ上の高さ位置(図1のB−B線上)において、整流板11の後端とプロペラ翼前端との距離(図3に示す「l」)が、プロペラ直径の10〜30%となるように、その長さ(L)を定める。
次に、上下の取り付け範囲についてであるが、整流板の上端は、プロペラ上端位置から、それよりプロペラ半径の10%だけ高い位置までの範囲にあること、下端は、ボス近傍が望ましい。また、応力集中を避けるために、上下の取付端部には図1に示すようにRを付ける。
次に整流板11を折り曲げる位置(図3に示す「D」点、以上「折り曲げ位置」)は、上記B−B線上で船体に近い板片11aの長さ(L1)を整流板の長さ(L)の30〜50%とする。
本実施例では、上記lは、プロペラ直径の25%、板片11aの長さ(L1)は、Lの31.8%である。
次に整流板11のスターンフレーム2への取付方法及び曲げ角度は以下のとおりである。
すなわち、板片11aは、プロペラ軸芯よりプロペラ半径の70%だけ上の高さ位置において、船体中心線からスターンフレーム2の後端半径(r)の20〜40%(本実施例では25%)ほどプロペラ翼下降舷側(右舷側)にずれた位置(図3に示す「C」点)において、整流板11の前端から30〜50%(本実施例では31.8%)の長さ位置(図3に示す「D」点)が船体中心線上に位置するよう、やや斜めに取り付けられる。そして、図3に示すように、D点で、後半部11bがプロペラ翼上昇舷側(左舷側)に折り曲げられている。
図3に示すように、折り曲げ位置後半部の板片11bは船体中心線に対して10〜20度の角度α(本実施例では、15度)を有する。
このように、一枚の板をプロペラ回転方向と逆方向に折り曲げると、板に反り(キャンバー)を持たせたことと同様に、プロペラに流入する流れをプロペラ回転方向と逆向きに偏向させることができ推進性能が向上する。また、船体中心よりプロペラ翼下降側にずらせて整流板を配置することにより、図3に示すように右舷側では船体表面に沿った流れの向きがさほど変化せずに整流板表面を流れるため、整流効果がある。また、他方、左舷側では、船体表面に沿った流れが、11a、11bによって順次方向を変えられるため、比較的スムーズに流向の変化が実現でき推進性能が向上する。
また、フィン7先端部には、翼端板12が取り付けられている。すなわち、翼端板は図5及び図7a,bに示すように、フィン先端のプロペラ翼が回転により向かってくる側(左舷側では下側)に突出して取り付けられる。図5に示すように、フィン7の翼断面形状は、流れが当たる下側面(正面)の膨らみは小さく、背面の膨らみが大きいため、翼端板がないと、正面の圧力が背面の圧力より大きく、フィン先端付近では、正面から背面への流れが生じ、フィンの整流効果が妨げられるが、翼端板を先端翼の下側(正面側)に突出させて設けることにより、流れがフィンの先端を横切って反対側の面(背面)側に流れこむことを防止しており、あたかもフィンの長さ(スパン)が長くなったのと同一な効果がある。
以上のような効果を得るためには、翼端板の長さはフィン先端の断面の長さと同一で、その平均突出幅(フィン先端から幅方向に突出している翼端板の幅の平均値)はフィン先端断面の最大厚さの1〜2倍が良い。
また、フィン10先端部には、翼端板12が取り付けられている。すなわち、翼端板は図6及び図7a,bに示すように、フィン先端のプロペラ翼が回転により向かってくる側(右舷側では上側)に突出して取り付けられる。翼端板12の作用効果については、フィン7について既に説明したとおりである。但し、フィン10の場合は、流れがフィンの上側(膨らみが小さい正面側)に当たるため、フィン7の場合とは上下の関係が逆である。
そして、翼端板の長さはフィン先端の断面の長さと同一で、その平均突出幅はフィン先端断面の最大厚さの1〜2倍が良いことはフィン7と同様である。
図7bに示すように、翼端板12は、フィン7、10の先端部に溶接により固着される。
斜め上方向のフィンは、その半径がプロペラ半径の85〜115%であり、幅方向やや下向きフィンは、その半径がプロペラ半径の35〜55%であり、前記整流板は、鉛直状の折れ曲がった一枚の板からなり、その取付位置はプロペラ軸芯よりプロペラ半径の70%だけ上の高さ位置において、船体中心線からスターンフレーム後端半径の20〜40%、プロペラ翼下降舷側にずれていて、その折れ曲がった後半部が船体中心面に対して10〜15度の角度を有しており、上記フィン及び整流板により、プロペラ翼上昇舷側に流れやすく、かつプロペラ回転方向と逆方向の旋回流を発生させることを特徴としている。
同装置は、新造船では建造課程の最後の段階である塗装直前に取り付けることが可能であり、既存船でも比較的簡単に装着可能である。また、幅方向やや下向きフィンの半径が短く、船体中心面から測ったフィンの範囲はプロペラ半径の35〜55%であり、頻繁に係留ロープが使われる特に小型内航船などの推進性能向上装置として利用されやすい。
また、幅方向やや下向きフィンの半径がプロペラ半径の35〜55%であるので、船体の上下運動によるフィンに働く流体力が小さくなり、フィンの強度的な安全性が増す。
2 スターンフレーム
3 ボッシング
4 プロペラ
5 プロペラ軸
6 舵
7 左舷側幅方向やや下向きフィン
8 左舷側斜め上方フィン
9 右舷側斜め上方フィン
10 右舷側幅方向やや下向きフィン
11 整流板
11a 整流板の折り曲げ位置より前半部
11b 整流板の折り曲げ位置より後半部
12 翼端板
DP プロペラ直径
RP プロペラ半径
α 整流板の板片11bが船体中心面となす角度
θ 幅方向やや下向きフィンのひねり角
l プロペラ軸芯よりプロペラ半径の70%だけ上の高さ位置におけるプロペラ前縁と整流板後端との距離
L プロペラ軸芯よりプロペラ半径の70%だけ上の高さ位置における整流板11の長さ
L1 プロペラ軸芯よりプロペラ半径の70%だけ上の高さ位置における整流板前端から折り曲げ位置までの長さ
Claims (3)
- プロペラ前方に設けたひねり角を有する翼断面形状をもつフィンと船尾中心線近くに取り付けられた整流板とからなる推進性能向上装置であって、前記フィンはボッシングに幅方向やや下向き(「幅方向やや下向き」とはフィンの後縁の中心線と鉛直上方に向かう線とのなす角が92〜110度の範囲内にあることである。)及び斜め上方向に左右各二つずつ放射線状に設けられており、斜め上方向のフィンは、その先端とプロペラ軸芯との距離であるフィンの半径がプロペラ直径の85〜115%であり、幅方向やや下向きフィンは、その半径がプロペラ半径の35〜55%であり、前記整流板は、前端がプロペラ軸上部のスターンフレームに取り付けられ、プロペラ軸芯よりプロペラ半径の70%だけ上の高さ位置において、鉛直状の後端と、プロペラ翼前端との距離がプロペラ半径の10〜30%となるように、その高さ位置における整流板の長さ(L)が定められており、その高さ位置において前端から30〜50%の位置である折り曲げ位置において、その後半部がプロペラ翼上昇舷側に鉛直状に折り曲げられた一枚の板であって、その前端の取付位置が、上記高さ位置において、船体中心線からスターンフレーム後端半径の20〜40%だけ、プロペラ翼下降舷側にずれた位置にあり、前記折り曲げ位置が船体中心面に位置するように取り付けられていて、折り曲げ位置より後半部が船体中心面に対し、10〜20度の角度(α)を有しており、前記フィン及び前記整流板によって、プロペラに流入する流れがプロペラ翼上昇舷側に流れやすく、かつプロペラ回転方向と逆方向の旋回流を発生させることを特徴とする推進性能向上装置。
- 前記幅方向やや下向きフィンは、プロペラ翼上昇舷側におけるひねり角が反対舷側におけるひねり角より大きいことを特徴とする請求項1記載の推進性能向上装置。
- 前記幅方向やや下向きフィンは、その先端に、長さがフィン先端翼長さと同一であり、かつフィン先端翼断面よりプロペラの回転方向と逆向き方向に張り出した翼端板を有し、その翼端板のフィン先端翼断面からの突出量の幅方向平均値がフィン先端翼断面の最大厚さの1〜2倍であることを特徴とする請求項2記載の推進性能向上装置。
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